中3数学 標本調査の解法8型|割合・捕獲再捕獲・12問の詳解

解法パターン事典 › 中3・標本調査

製品の不良品を推定するときは掛け算なのに、池の魚の総数を推定するときは割り算になる。どちらも「一部を調べる問題」ですが、分かっている量と求める量が違います。

問題:1日に作った15000個の製品から、どの300個の組も等確率になるよう重複なく300個を選び、全て検査したところ不良品は6個でした。この日の不良率と不良品数を推定してください。

答え:不良率は約2%、不良品数は約300個です。標本割合6/300=0.02を使い、15000×0.02=300と計算します。

方針:標本の該当数÷標本の大きさで割合を出し、既知の全体の大きさを掛けます。300は調べた標本数と同じ数になりましたが、両者の意味は違います。詳しい対応は問題2で確認できます。

このページは「どの式・判断を選ぶか」を8つに整理した辞典です。基本の9問と発展3問の全12問に、答え・ヒント・詳解を付けています。割合と比例式を知っている中学生から、群ごとの重みと最適配分を学ぶ大学段階まで、必要な節を選んで読めます。

標本調査の解法8型|先に求める量を決める

覚えること:母集団は調べたい対象全体、標本は選んだ一部、標本の大きさはその個数です。基本問題では単純無作為・非復元抽出を使い、同じ大きさの全ての組が等確率になるよう選びます。選んだ全対象を同じ基準で正確に測定できる条件も使います。

考えること:①対象と期間、②抽出方法と回答状況、③問われる割合・部分の数・未知の総数、④式の分母が0でないか、⑤答えの単位と丸め、⑥どこまで言えるか、の順で確かめます。無作為なら一回の標本が必ず母集団の縮図になるわけではありません。

型01|全数調査と標本調査の選択

一人一人の値が必要なら全員を調べる計画を考えます。全体の傾向が目的なら、一部で必要な精度を得られるかを考えます。時間・費用・調査負担・検査後に商品を残す必要も判断材料です。破壊検査が論理的に全数不可能なのではなく、目的によって一部を選びます。

型02|母集団・標本・標本の大きさ

工場の製品10000個から200個を選んだなら、母集団は対象10000個、標本は選ばれた200個、大きさは200です。選んだ人数と回答した人数が違うなら、両方を記録します。標本そのものと、その大きさである数を区別してください。

型03|無作為抽出の方法

固有の番号と適切な乱数、十分に混ぜた番号くじなどを用います。単純無作為抽出では各n個組が等確率です。先頭20人だけを選ぶ問題点は「規則があること」ではなく、残りに選ばれる機会がないことです。規則に従って確率的に選ぶ方法はあります。詳しくは問題5・11へ。

型04|標本から割合を推定する

200個中8個が該当なら、標本割合は8/200=0.04。母集団の該当割合を約4%と推定します。全体の個数が未知でも割合の推定式は計算できますが、測定・抽出が適切かは別に点検します。

型05|割合から該当数を推定する

母集団が10000個なら10000×8/200=400で約400個です。この式には全体の大きさが必要です。ただし、個数の推定法が全てこの一つとは限りません。標識の既知個数から未知の総数を出す型06と区別します。

型06|捕獲再捕獲で未知の総数を推定する

全体に印付きM個、再捕獲標本n個のうち印付きr個なら、rが正のとき総数をMn/rで推定します。閉じた集団、印の維持と識別、印の有無によらない捕獲などの条件を確認します。混ざることだけで全条件が満たされるわけではありません。

型07|標本の大きさと精度を比べる

同じ母集団・同じ単純無作為抽出・同じ測定条件なら、標本平均や割合の分散は、母分散が正なら標本を大きくすると減ります。今回の値が真値に必ず近づくことや、母集団の何%なら十分という一律の基準はありません。必要な誤差幅と費用も確認します。

型08|推定の限界を説明する

選ばれない人、場所・時刻の制限、自己選択、未回答、測定や質問の違いを点検します。偏りの可能性と、偏りが必ず起こる・必ず特定方向になるという断定を分けます。推定が真値と違うことだけでは計算間違いと判断できません。

\[\begin{gathered}\widehat p=\frac{k}{n},\qquad\widehat K=N\widehat p,\\\widehat N=\frac{Mn}{r}\quad(r>0).\end{gathered}\]

帽子は推定値という意味です。Kは全体の該当数、Nは全体の総数、kは標本内の該当数。捕獲再捕獲のrは再捕獲内の印付きです。真の割合を正確に知ったから式を使うのではなく、標本割合をその代わりに使って推定値を定義します。推定値をxと置けば、比例式の等号による計算と、現実の値への近似を分けて書けます。

8型と確認問題の対応図1|既存の8型を維持し、今の問題への入口を示しました。元の4例題と追加5問を合わせると8型全てを扱います。新しい発展問題も同じ判断へつながります。8つの判断を、問題で確かめる01 調査の選択問題102 用語の区別問題103 抽出方法問題5・1104 割合の推定問題2・605 個数の推定問題2・606 未知の総数問題3・7・1007 精度の比較問題4・8・1208 結論の限界問題4・98型は本ページの整理。問題数とは別。
図1|既存の8型を維持し、今の問題への入口を示しました。元の4例題と追加5問を合わせると8型全てを扱います。新しい発展問題も同じ判断へつながります。

4例題|何を根拠に判断するか

以下は学習用の設定です。計算例は上記の抽出・測定条件に従います。

問題1|調査の種類と用語を分ける

(1) 出荷品を残しながら電球を寿命まで点灯する検査と、一人一人の進路希望を把握する学校の調査では、全数・標本のどちらが目的に合いますか。(2) 市の有権者80000人から500人を選び調べる場合の母集団・標本・標本の大きさを答えてください。

答え:(1) 順に標本調査、全数調査。(2) 母集団は市の有権者80000人、標本は選ばれた500人、大きさは500です。
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全体の傾向でよいのか、全員の個別情報が必要かを見ます。

途中式と理由を読む

寿命検査は測定した品を使い切るため、売る品を残す目的には一部の検査が合います。全て使い切ってよい研究なら全数検査も可能で、「壊す検査は絶対に全数にできない」とは言えません。進路希望は個別の希望を知ることが目的なので、500人の平均のような集計で未調査の生徒の希望を代用できません。

後半では全80000人について結論を出したいので、そこが母集団。500人の集まりが標本で、人数500が大きさです。調査の目的によって誰を母集団とするかを先に決めます。全員へ依頼することと、実際に全員の回答を得ることも区別します。

問題2|15000個中の不良率と不良数

15000個から無作為に300個を選び全て調べると、不良は6個でした。不良率と、その日の全製品の不良品数を推定してください。

答え:不良率は約2%、不良品数は約300個です。
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6の分母は標本300。全体の数15000は次に使います。

途中式と理由を読む
\[\begin{gathered}\widehat p=\frac6{300}=0.02=2\%,\\\widehat K=15000\cdot0.02=300.\end{gathered}\]
\[\begin{gathered}\frac6{300}=\frac{x}{15000},\\300x=90000,\qquad x=300.\end{gathered}\]

比例式の変形では、正の分母300と15000を両辺に掛けました。300xは同じxが300個分。その両辺を300で割るとx一つ分になります。別解は全体が標本の15000/300=50倍なので、不良6個も50倍して300と推定する方法です。

標本数300と推定した不良数300は同じ数字でも意味が違います。検算は300/15000=6/300。これは対応する式が合う確認で、真の不良品がちょうど300個ある証明ではありません。標本内の不良率2%は観測した値、母集団の不良率約2%は推定です。

既知の全体から部分へ、既知の部分から全体へ図2(新規)|上は全体15000から不良個数を、下は印付き60から魚の総数を推定します。枠は手順の対応図で、面積に人数や魚の数の縮尺はありません。求める量で、掛ける・割るを選ぶ全体Nが既知 → 該当数Kを推定標本:6/300 = 0.0215000 × 0.02 = 300個印付きMが既知 → 全体Nを推定標本:5/80 = 1/1660 ÷ (1/16) = 960匹どちらも割合を使うが、未知の量が違う。
図2(新規)|上は全体15000から不良個数を、下は印付き60から魚の総数を推定します。枠は手順の対応図で、面積に人数や魚の数の縮尺はありません。

問題3|印付き60匹から魚の総数を推定する

60匹に印を付けて戻し、数日後80匹を再捕獲すると印付きは5匹でした。(1) 総数を推定してください。(2) 戻した後に時間を置く狙いと、ほかに必要な条件を説明してください。

答え:(1) 約960匹。(2) 印付きが混ざる機会を作ります。個体数・印の維持、捕まりやすさ等の条件も必要です。
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全体の印付き60と、標本の印付き5を対応させます。

途中式と理由を読む
\[\begin{gathered}\frac{60}{x}=\frac5{80},\\5x=60\cdot80=4800,\\x=960.\end{gathered}\]

80匹中の印付き割合は1/16。池全体でも印付き60匹が約1/16だとみなすため、60÷(1/16)=960です。真の総数Nが分かっていて60/Nを計算したのではなく、未知のNを推定しています。

時間を置くのは、放した場所に印付きが集中したまま捕まえる影響を減らす狙いです。ただし日数だけで無作為抽出は保証されません。閉じた集団、標識の維持・識別、印の有無で捕獲確率が変わらないこと、次の80匹を重複なく選ぶことなどを確認します。印の維持と集団の不変は「無作為抽出」という一つの語の言い換えではなく、別の仮定です。

検算60/960=5/80=1/16は推定式の確認です。仮に真の総数が960でも、次の80匹に必ず5匹の印付きが入るわけではありません。

問題4|600人中30人と120人では、どちらが十分か

全校600人の1日のスマートフォン使用時間を知りたいとします。ア:3年教室前を通る先着20人、イ:全員から乱数で30人、ウ:全員から乱数で120人を選ぶ方法を比較してください。イとウは各組が等確率で、選ばれた全員を同じ基準で測定するとします。

答え:アは選択場所と先着順に制限があります。イとウは同条件の単純無作為抽出で、母分散が正ならウの標本平均の分散は小さくなります。ただし120人なら十分とは人数だけで決められません。
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抽出方法と、必要な精度の二つを分けます。

途中式と理由を読む

アで各学年が何人含まれるかや、使用時間がどちらへ偏るかは与えられていません。先着20人が全校を代表する保証がない点を指摘します。イは5%、ウは20%を調べますが、その割合だけで小さすぎる・十分とは言えません。必要な誤差幅、母集団のばらつき、質問の定義、費用を確認します。

数学的な精度を一つ比べるため、母分散σ²は600で割る定義とします。単純無作為・非復元抽出による標本平均の分散と、σ²が正の場合の標準誤差の比は次のとおりです。

\[\begin{gathered}V(\bar X_n)=\frac{\sigma^2}{n}\frac{600-n}{599},\\\frac{V(\bar X_{120})}{V(\bar X_{30})}\\=\frac{480/120}{570/30}=\frac4{19},\\\frac{\mathrm{SE}_{120}}{\mathrm{SE}_{30}}=\sqrt{\frac4{19}}\approx0.459.\end{gathered}\]

標準誤差は標本平均の標準偏差です。一般の式は有限母集団N個からn個を抽出すると、分散σ²/nに補正(N−n)/(N−1)を掛けます。抽出の指示変数や各位置の共分散を使って導けます。詳しい導出は標本平均のばらつきへ進んでください。今回の計算で、120人の一回の平均が必ず30人の平均より真値に近いとは言えません。

同条件の標本平均の標準誤差の比図3(新規)|棒は標準誤差の比に比例します。120人の標準誤差は30人の約0.459倍ですが、一回の推定が必ず近くなることや必要精度を満たすことまでは示しません。30人と120人:標準誤差の比較n=30人相対値 1n=120人相対値 √(4/19) ≈ 0.459N=600、同じ単純無作為・非復元抽出。母分散が正の場合。30人を基準1とする。120人なら十分かは、必要精度も必要。
図3(新規)|棒は標準誤差の比に比例します。120人の標準誤差は30人の約0.459倍ですが、一回の推定が必ず近くなることや必要精度を満たすことまでは示しません。

抽出と計算を確かめる5問

問題5|1000人から50人を選ぶ

(1) 出席番号1〜50番、(2) 一様な乱数から重複を除いて50人、(3) 部活に入っている人だけから50人、(4) 全員分の同じ形の名前くじを十分に混ぜて戻さず50枚。このうち全校の単純無作為抽出になる方法を、条件とともに答えてください。

答え:(2)(4)は適切な手順なら単純無作為抽出です。(1)(3)は全校からの単純無作為抽出ではありません。
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誰が選ばれないかと、全ての50人組が等確率かを調べます。

途中式と理由を読む

(1)は51番以降の950人が選ばれません。名簿の順序の意味を推測しなくても判断できます。(3)も非加入者を除いています。睡眠時間などの平均がどちらへどれだけ偏るかは、実際の関係を知らないと断定できません。

(2)は番号1〜1000、範囲外・重複を再抽選する規則、一様な乱数が必要です。(4)は同じ形のくじ、十分な混合、名前を見て選ばない、戻さない条件を使います。どちらも各順序付き50人が同確率で、各50人組に対応する順序が同数なので、組も等確率になります。

個人の等確率だけでは足りません。4人からABまたはCDだけを半々で選べば、個人の包含確率は全員1/2でも、全6組は等確率でありません。また確率を使った不等確率抽出もあり、「選ばれやすさが違うなら全部無作為でない」という言い切りは避けます。問題11で例を確かめます。

問題6|2000製品から不良率を推定する

2000個から100個を単純無作為・非復元抽出し全て調べると、不良は3個でした。(1) 不良率、(2) 全体の不良個数を推定し、(3) なぜ推定と書くのか説明してください。

答え:(1) 約3%、(2) 約60個。(3) 標本内の観測を、未調査の部分へも広げているためです。
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割合は3/100。全体2000との倍率も使えます。

途中式と理由を読む
\[\begin{gathered}\widehat p=\frac3{100}=0.03,\\\widehat K=2000\cdot0.03=60.\end{gathered}\]

標本は全体の1/20なので、3個を20倍して60個とも計算できます。比例式なら3/100=x/2000、100x=6000、x=60です。単位は不良率なら%、個数なら個。別の100個では不良数が違う可能性がありますが、真の割合と必ず違うとも断定しません。

「約」「と推定する」などで役割を示します。推定値が小数だから無意味というわけではなく、途中計算の丸めを抑え、答えは問題の指定に合わせます。特定の一語を書かなければ必ず減点という採点基準は一般化しません。

問題7|印付き80匹・再捕獲120匹中15匹

80匹に印を付けて戻し、120匹の再捕獲中15匹に印がありました。総数を推定し、計算で使う仮定を挙げてください。

答え:約640匹です。閉鎖集団・標識の維持・適切な再捕獲などを確認します。
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15/120を、全体にいる印付き80匹の割合へ対応させます。

途中式と理由を読む
\[\begin{gathered}\frac{15}{120}=\frac18,\\\widehat N=\frac{80\cdot120}{15}=640.\end{gathered}\]

比例式80/x=15/120なら15x=9600、x=640。印付き80は全体に含まれており、魚を外から増やしたのではないので、640から80を引きません。

前提は、印が残って正しく識別されること、集団が期間中に変わらないこと、印の有無などで捕まりやすさが偏らないことです。混ざり方もこの捕獲条件を確かめる一要素です。印が一部消えれば観測rが減り、同じM,nで式の値が大きくなる方向に働きますが、現実の誤差には他の要因もあります。

80/640=15/120は対応の検算であり、真の640匹から120匹を捕れば必ず15匹と保証するものではありません。

問題8|再捕獲を240匹に増やしたら

問題7と同じ印付き80匹の条件で、240匹の再捕獲中28匹に印がありました。(1) 総数を十の位までの概数で推定してください。(2) 前の640と比べて、どちらが真の値に近いと判断できますか。

答え:(1) 約690匹。(2) この二つの観測だけでは、どちらが真値に近いか決められません。
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母集団の真値は未知です。大きい標本と、一回の結果の近さを区別します。

途中式と理由を読む
\[\begin{gathered}\widehat N=\frac{80\cdot240}{28}=\frac{4800}{7}\\\approx685.714\quad\longrightarrow\quad690.\end{gathered}\]

十の位まで残すので、一の位5を四捨五入します。640と690はともに推定値で、違っても矛盾ではありません。標本割合の分散が標本数とともに減る性質と、その逆数で作る総数推定の一回の誤差を混同しないでください。r=0では逆数の式は定義できず、推定量の性質も別に考える必要があります。

極端な例として2匹中1匹に印があれば80×2/1=160と計算されます。この値を「乱暴だから数式が誤り」とするのではなく、少数の観測では割合が大きく変動し、その逆数も大きく動くと読みます。どの規模で十分かは必要精度と調査モデルから判断します。

問題9|通学時間の調査で何が分からないか

全校600人の平均通学時間を調べます。(1) 徒歩通学者50人、(2) 朝7時までに登校した50人、(3) 全員に配り任意に提出された50人、の結果を使うときの問題点を説明してください。

答え:対象の限定、場所・時刻、未回答・自己選択を点検します。どちらへどれだけずれるかまでは、この条件だけで断定できません。
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除かれる人の通学時間が、観測した人と同じと考えてよいかを見ます。

途中式と理由を読む

(1)は徒歩以外の生徒が選ばれません。徒歩なら必ず短いとも限らず、全校平均との差の向きは未確認です。(2)は早く登校した人に限られます。遠距離通学や朝練などの理由を推測で事実にせず、登校時刻と通学時間が関係する可能性を考えます。

(3)は回答率50/600=1/12、約8.33%です。回答者が非回答者を代表する保証はありませんが、「回収に偏りの可能性があるなら一切意味がない」とまでは言えません。観測した50人の情報は残り、全校へ広げる際の仮定と限界を明示します。

方法を改善するなら全員の名簿から適切に選び、質問の定義と回収手順をそろえます。それでも全員の回答を必ず得られるとは保証できないので、実際の回答数・未回答理由を記録し、回答しない人を勝手に別の都合のよい人へ置き換えません。

式を選ぶ理由から、大学の調査設計へ

ここからは追加の確認問題です。問題10は割り算できない場合、問題11は群ごとの割合、問題12は分散を小さくする人数配分を扱います。問題12には高校の不等式・微分を使います。特定大学の過去問ではなく、調査の条件を考えるためのオリジナル問題です。

問題10|印付きが0匹だったら総数はどうなるか

80匹に印を付け、120匹を重複なく再捕獲しました。印付きは0匹でした。総数を80×120/0で求められますか。また、観測から言える総数の下限を答えてください。

答え:この割り算は定義できません。総数0や無限大と結論しません。少なくとも200匹います。
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印付き80匹と再捕獲120匹に重なりがありません。

途中式と理由を読む

0で割る式には値を定められません。一方、最初の印付き80匹とは別の120匹を確認したので、閉じた集団なら少なくとも200匹です。一般には重なりr匹を二重に数えないよう、M+n−r匹以上と分かります。

\[\begin{gathered}0\leqq r\leqq\min(M,n),\\N\geqq M+n-r.\end{gathered}\]

r=0は有限の集団でも起こります。例えば総数200匹で印付き80匹なら、残り120匹だけを再捕獲する組もあり、単純無作為抽出でその確率は正です。r=0だけで総数を一つに決めることはできません。もしこの問題でr=90と報告されたら、印付き全体80匹を超えており、式へ入れる前に記録を確認します。より詳しい確率モデルは捕獲再捕獲の比例式と限界へ進めます。

問題11|群ごとの調査人数が違うときの平均

全校600人をA群200人、B群400人に分けます。各群の中で独立に単純無作為・非復元抽出し、Aから30人、Bから90人を調べ、全員から回答を得ました。標本平均はAが20分、Bが50分でした。全校の平均通学時間をどう推定しますか。

答え:母集団の人数比1:2で重みを付け、40分と推定します。120人をそのまま平均した42.5分とは違います。
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全校におけるAの割合は1/3ですが、回答者におけるAの割合は1/4です。

途中式と理由を読む
\[\begin{gathered}\widehat\mu=\frac{200}{600}\cdot20+\frac{400}{600}\cdot50=40,\\\bar y_{\rm pooled}=\frac{30\cdot20+90\cdot50}{120}=42.5.\end{gathered}\]

全校はAが3分の1、Bが3分の2なので、群ごとの平均にその重みを掛けます。120人をまとめた平均ではAが4分の1に減り、Bが4分の3に増えています。この違いを補うのが母集団の人数による重みです。40分は推定値で、実際の全校平均と確認できたわけではありません。

各人の選ばれる確率はAが30/200=0.15、Bが90/400=0.225です。等確率でなくても、群を先に定め、それぞれで適切に抽出する層化抽出として扱えます。群内の標本平均の期待値はその群の真の平均なので、既知の人数比で足した推定量の期待値も全校平均になります。ここでの期待値は、調査を同じ設計で繰り返したときの確率的な平均です。

調べた後で都合よく群を作るだけで同じ性質が保証されるわけではありません。母集団の群別人数、抽出方法、未回答や測定の問題を確認します。母集団と標本・抽出方法で、単純無作為抽出との違いを確認できます。

問題12|同じ120人なら、どの群を多く調べるか

問題11と同じA群200人・B群400人です。計画時に母標準偏差がAは30分、Bは10分と分かっている仮想条件を考えます。各群内で独立に単純無作為・非復元抽出し、全員を正確に測定します。調査費用は一人当たり同じ。合計120人を、各群1人以上として配分するとき、重み付き平均の分散を最小にする整数配分を求めてください。

答え:A群72人・B群48人です。この条件で分散は約1.710分²。人数比例の40人・80人では約2.456分²です。
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ばらつきが大きい群には多く配分します。有限母集団の補正も含め、A/n+B/(120−n)を最小化します。

途中式と理由を読む

母分散は各群の偏差平方和をその群の人数で割った値と定義します。Aは900分²、Bは100分²です。これらは問題11の観測平均から求まる値ではなく、この問題で別に与えた計画用の条件です。

A群の標本数をn、B群を120−nとします。独立な二群の平均に重み1/3、2/3を掛けて足すので、分散にはそれぞれ重みの二乗が掛かります。

\[\begin{aligned}V(n)&=\frac19\frac{900}{n}\frac{200-n}{199}\\&\quad+\frac49\frac{100}{120-n}\frac{280+n}{399}.\end{aligned}\]

各分数の最後は非復元抽出の有限母集団補正です。例えばA群を全員調べれば200−n=0となり、A群の抽出による不確かさはなくなります。式をnに依存する部分と定数に分けます。

\[\begin{gathered}V(n)=\frac{A}{n}+\frac{B}{120-n}-C,\\A=\frac{20000}{199},\quad B=\frac{160000}{3591},\\C=\frac{100}{199}+\frac{400}{3591}.\end{gathered}\]

ここでA、Bは計算用の係数で、群の名前とは区別してください。まず人数を正の実数として考えます。コーシー・シュワルツの不等式を使うと、次の下限が得られます。

\[\begin{gathered}\left(\frac{A}{n_A}+\frac{B}{n_B}\right)(n_A+n_B)\\\geqq(\sqrt A+\sqrt B)^2,\\\frac{n_A}{n_B}=\frac{\sqrt A}{\sqrt B}\quad\text{で等号},\\n_A^*=\frac{120\sqrt A}{\sqrt A+\sqrt B}\approx72.0361.\end{gathered}\]

不等式は、二つのベクトル(√(A/nA), √(B/nB))と(√nA, √nB)の内積に適用したものです。等号では二つが比例するので、nA/nB=√(A/B)になります。微分でも次の式が得られ、最適値より小さいnでは負、大きいnでは正です。

\[V^{\prime}(n)=-\frac{A}{n^2}+\frac{B}{(120-n)^2}.\]

よって整数なら72と73を比べれば足ります。V(72)≈1.710213、V(73)≈1.710841なので、72人・48人が最小です。母集団の人数に比例させた40人・80人ではV(40)≈2.455609となります。

固定標本数を二つの群へ配分する図4(新規)|全幅は標本120人です。母集団の人数比2:4へ比例配分するだけが選択肢ではありません。問題12の既知の群内分散と等費用の条件では、72人・48人の配分で推定分散が最小です。同じ120人でも、配分を変えられる人数比に合わせる:40人+80人推定平均の分散 約2.456今回の分散を最小に:72人+48人推定平均の分散 約1.710青緑:A群200人、橙:B群400人群内の母標準偏差:A30分、B10分独立な群内SRS、同じ1人当たり費用。
図4(新規)|全幅は標本120人です。母集団の人数比2:4へ比例配分するだけが選択肢ではありません。問題12の既知の群内分散と等費用の条件では、72人・48人の配分で推定分散が最小です。

A群は人数が少なくても、通学時間のばらつきが大きいため相対的に多く調べる配分になりました。これは今回の母分散・人数・同額費用という条件での結果です。現実には母分散を事前調査などから見積もる必要があり、費用が群ごとに違う場合や全数調査の上限に達する場合は最適化の条件が変わります。「いつでも72対48」でも「大きい群を必ず多く調べる」でもありません。

中学で使った人数の割合が、大学では推定量の重みになります。高校の二乗・不等式・微分を使うと、その推定のばらつきを小さくする設計まで考えられます。

よくある疑問

標本調査はどの式を選べばよいですか。

割合は該当数÷標本数。全体の大きさが既知なら、その割合を掛けて該当数を推定します。捕獲再捕獲では既知の印付き総数を標本の印付き割合で割ります。対象・抽出条件・分母・単位を先に確認します。

標本の大きさが全体の20%なら十分ですか。

一律には決まりません。必要精度、ばらつき、抽出方法、未回答や測定を合わせて判断します。同じ適切な抽出でも、一回の結果が必ず真値に近いとは限りません。

全員が同じ確率で選ばれれば単純無作為抽出ですか。

それだけでは足りません。単純無作為抽出では同じ大きさの全ての組が等確率です。問題5のABまたはCDだけを選ぶ方法は、個人の確率は同じでも単純無作為抽出ではありません。

捕獲再捕獲で印付きが0匹なら総数は0ですか。

違います。Mn/rはr=0で定義できません。閉じた集団ならM+n匹以上という下限は分かりますが、総数を一つに決められません。

推定値が整数にならないときはどうしますか。

途中ではなるべく丸めず、最後に問題の指定に従います。問題8は十の位までの概数なので685.714…を690とします。標本数だけから丸め方が一意に決まるわけではありません。

全員にアンケートを配れば全数調査の結果ですか。

全数調査を計画しても、回答が一部なら全員の値は得られていません。配布数と回答数を区別し、未回答者へ結果を広げる条件を確認します。

学年ごとに標本数が違うときも全部まとめて平均しますか。

母集団の人数比と標本の人数比が違う場合は注意が必要です。問題11では群内で適切に抽出した平均を、母集団の人数比で重み付けします。

標本数は母集団の人数に比例させるのが最適ですか。

いつでも最適ではありません。群ごとのばらつきと費用にも依存します。問題12では同額費用・既知の母分散の条件で、分散を最小にする配分を不等式と微分で求めます。

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自分の式がどこで止まったかを相談する

「問題2で掛ける数が逆になる」「問題7で80を引いてしまう」「問題11の重みが分からない」など、問題番号と書いた途中式を添えると、相談したい点が伝わります。数強塾のマンツーマン数学指導について確認できます。

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制作・検証と出典

2026年9月7日更新。今回の改稿・作図・数学と表示の検証:Codex。人間講師による今回の個別監修完了は確認していません。既存9問の数値と8分類を保ち、条件と解説を見直しました。発展3問と図は本ページ用に構成し、問題集・特定大学の過去問を転載していません。

参照:Penn State STAT 506:層化抽出・重み付き平均・配分Penn State STAT 506:捕獲再捕獲。確認日2026年9月7日。外部の図・文章・例題は転載せず、条件を明示した独立計算と一般式の導出で検証しています。

要点辞典この単元の公式・定石・つまずきやすい所は 中3数学の要点辞典:標本調査 にまとめてあります。

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