二次方程式には解き方が3つあります。因数分解、平方根の考え方(平方完成)、そして解の公式。3つもあると混乱しそうですが、使い分けの基準ははっきりしています――因数分解できるならそれがいちばん速い。できなければ解の公式。特別な形なら平方根で一発。そして解の公式は、実は平方完成を一般の場合にやっておいたものにすぎません。このページは、二次方程式の解法を10の型に分けて並べた辞典です。型は当てはめるための箱ではなく、「この式は、3つのどれで解くのが最短か」を判断するための道具として並べています。
このページの10型
- 平方根の考え方で解く
- 平方完成して解く
- 因数分解して解く
- 解の公式
- 解き方の使い分け
- 解が与えられて係数を求める
- 解の個数(判別)
- 文章題(数の性質)
- 文章題(面積・長さ)
- 文章題(動く点・速さ)
1. 背骨——「積が0なら、どちらかが0」
二次方程式が解ける、たった1つの理由
または
だから なら または 。
因数分解して積の形にすれば、二次方程式は一次方程式2本に分かれます。
この性質は「0」だからこそ成り立ちます。 だからといって または とは言えません( もあるから)。「0」は特別で、掛けて0になるのは、どちらかが0のときだけです。
だから二次方程式を解くときは、まず右辺を0にする。 を としても何も言えません。 と移項してから ――この順番が絶対です。
2. 3つの解き方の使い分け
この順に試す
| 順 | 解き方 | 使える場面 |
|---|---|---|
| 1 | 平方根の考え方 | や の形 |
| 2 | 因数分解 | 「たして・かけて」で2数が見つかる |
| 3 | 解の公式 | 上の2つで無理なとき(いつでも使える) |
解の公式はいつでも使えますが、いつでも速いわけではありません。 を解の公式で解くと、判別式を計算して根号を外して…と手間がかかります。因数分解なら で即答。
逆に は因数分解できません(「たして3、かけて1」の整数はない)。ここで無理に探し続けるより、解の公式に切りかえるほうが速い。「30秒探して見つからなければ解の公式」と決めておくとよいでしょう。
3. 解法パターン全10型
型01 平方根の考え方で解く
01 なら
顔つき 、、。
中身 を必ずつける。 なら で 。
を忘れると解が半分になる これがこの型で最も多い失点です。2乗して になる数は と の2つ(平方根の型01)。 の形が見えたら、 を先に書いてから を書く――順序を決めておくと忘れません。
型02 平方完成して解く
02 の係数の半分を2乗して足す
顔つき 。
中身 の両辺に を足して 。あとは型01。
「半分を2乗」の理由 なので、 の係数は 。その半分が で、足すべきは 。展開の公式を逆に読んでいるだけです(展開の型02)。この操作を一般の についてやったものが、解の公式です。
型03 因数分解して解く
03右辺を0にしてから、積の形に
顔つき 、。
中身 より 。 は両辺を で割ってはいけない。
両辺を で割ると、解が1つ消える の両辺を で割ると だけになりますが、 も解です。正しくは 、 で 。「0で割るかもしれない操作」をしてはいけない――これは二次方程式で最も重要な注意です。
型04 解の公式
04
顔つき (因数分解できない)。
中身 を符号込みで読み取って代入する。
符号の読み取りで失敗する なら 。 としないこと。代入すると 。 を式の横に書き出してから代入する――この一手間で事故が防げます。最後に約分できないかも必ず確認してください。
型05 解き方の使い分け
05形を見て、最短の道を選ぶ
顔つき いろいろな形の二次方程式が並んだ問題。
中身 の項がない → 平方根。定数項がない → 共通因数でくくる。因数分解できる → 因数分解。それ以外 → 解の公式。
まず「整理してから」判断する はすでに積の形に見えますが、右辺が0でないので使えません。展開して 、因数分解して 。右辺を0にして、 の形に整えてから判断する――これが順序です。
型06 解が与えられて係数を求める
06解を代入して、係数の方程式にする
顔つき 「 が解であるとき の値と、もう1つの解」。
中身 を代入して を求め、 を戻してから方程式を解き直してもう1つの解を出す。
「もう1つの解」まで聞かれるのが定番 を求めて終わりにしないこと。 が決まれば方程式が確定するので、それを解けば2つの解が出ます。そのうち与えられていないほうが答え。中1・中2でも同じ型がありました(1次方程式の型07)が、二次では「もう1つの解」という続きが加わります。
型07 解の個数
07 の符号で決まる
顔つき 「解が1つになる の値」。
中身 なら2つ、 なら1つ(重解)、 なら解なし。
根号の中身が解の個数を決める 解の公式の の中身が正なら で2つ、0なら1つ、負なら(中学では)解なし。「解が1つ」=「重解」=「 の形」です。この量は高校で判別式と呼ばれ、放物線と 軸の交点の個数を表します(2次関数の型11)。
型08 文章題(数の性質)
08整数を文字で置いて、条件を式に
顔つき 「連続する2つの整数の積が になる」。
中身 と置いて 。解が条件に合うか必ず確認。
2つ出た解の両方を検討する 、 で 。「正の整数」という条件があれば だけですが、単に「整数」なら両方が答えです。問題文の条件を読み直して、どちらが適するかを判断する――これが二次方程式の文章題の急所です。
型09 文章題(面積・長さ)
09長さは正、変域にも注意
顔つき 「縦が横より3cm長い長方形の面積が cm」「道をつけた残りの面積」。
中身 長さを と置いて面積の式を立てる。 かつ、図形として成り立つ範囲。
負の解は必ず捨てる なら 。長さなので だけ。さらに「道の幅」なら、もとの長さより小さいという制限もつきます。解を求めたあと「この値で図が描けるか」を確かめる――これを飛ばすと、ありえない答えを書いてしまいます。
型10 文章題(動く点・速さ)
10時間の変域を先に決める
顔つき 「点 P、Q が同時に出発し、 秒後に三角形の面積が〜になる」。
中身 点が辺の上にいる時間の範囲を先に決め、その中で解を選ぶ。
変域を決めてから解く 「P は辺 AB(長さ8cm)上を毎秒1cmで動く」なら 。方程式の解が と出ても、 は変域外なので不適。変域を書いておかないと、どちらを選ぶべきか判断できません。中2の一次関数と同じ注意です(一次関数の型11)。
4. 例題で確かめる
この単元の解法パターンは全10型で、下にある例題5問で確かめているのは8型です。残りの2型は、ページ下部の演習で扱っています。1問が複数の型にまたがることも、同じ型を複数の例題で扱うこともあるため、例題の数と型の数は必ずしも一致しません。
ここからは、数強塾が作成したオリジナルの例題で型を確かめます。掲載しているすべての数値は Python(sympy)で検算しています。
例題1 ―― 型01〜型05。4つを解き分ける
【例題1】(数強塾オリジナル)
次の二次方程式を解きなさい。
(1) (2) (3) (4)
【解答】
(1) (2) (3) (4)
(1) 平方根の考え方(型01)。
(2) 「かけて 、たして 」の2数は と (型03)。
(3) 両辺を で割らず、右辺を0にします(型03)。
で割ると が消える
の両辺を で割ると だけになります。
しかし を代入すると で成り立ちます。 も立派な解です。
「0かもしれないもので割らない」――絶対に守ってください。
(4) 因数分解できないので解の公式(型04)。。
4問とも解き方が違うのは、出題の設計です。「どれで解くか」を判断させるのが狙い。まず右辺を0にして形を見る――これが判断の第一歩です。
(4) の は簡単になりません( は素数)。根号が残る答えでも正解です。数値では なので 。もとの式に代入すると、どちらも に近い値になります。
例題2 ―― 型02。平方完成の手順
【例題2】(数強塾オリジナル)
二次方程式 を、平方完成の考え方を使って解きなさい。
【解答】
①定数項を右辺に移します。
② の係数 の半分を2乗して、両辺に足します(型02)。
③平方根の考え方で解きます(型01)。
解の公式でも確かめる
を代入すると
一致します。解の公式は、この平方完成を一般の場合にやったものです。
と簡単にしてから約分する。ここを飛ばすと のままになり、答えとして不完全です(平方根の型02)。
解の公式を使ったあとは、必ず「根号の中を簡単に」と「約分」の2つを確認してください。この2手を忘れると、正しい計算をしても減点されます。
例題3 ―― 型06。解から係数を求める
【例題3】(数強塾オリジナル)
二次方程式 の解の1つが であるとき、次の問いに答えなさい。
(1) の値を求めなさい。 (2) もう1つの解を求めなさい。
【解答】
(1) (2)
(1) を代入します(型06)。
(2) を戻すと
「かけて 、たして 」の2数は と なので
は与えられているので、もう1つの解は 。
定数項から確かめる
2つの解の積は、因数分解の形 から定数項に等しい。
。もとの式の定数項と一致します。
2つの解の和は で、 の係数 の符号を変えたもの。これも一致します。
「解の和と積」で検算できる。 の2解を とすると、、。これは因数分解の形を展開すれば出てきます。
高校では解と係数の関係という名前で本格的に使いますが(複素数と方程式の型03)、中3の段階でも検算の道具として使えます。二次方程式を解いたら、和と積を確かめる習慣をつけてください。
例題4 ―― 型09。負の解を捨てる
【例題4】(数強塾オリジナル)
縦の長さが横の長さより cm 長い長方形があります。この長方形の面積が cm であるとき、横の長さを求めなさい。
【解答】
cm
横の長さを cm とします。縦は cm(型09)。
右辺を0にして
「かけて 、たして 」の2数は と なので
条件に合う解を選ぶ
は横の長さなので 。したがって は不適。
答えは cm です。「 は問題に合わない」と一言書くのが答案の作法です。
検算:横 cm、縦 cm。面積は cm。一致します。
「かけて96、たして4」の2数を見つけるコツ。 の約数のうち、差が になる組を探します。 で差は 。定数項が負なので符号は違い、和が正なので絶対値の大きいほうが正―― と です。
そして負の解を捨てる理由を書くのが大切です。「 より」の一言があるかどうかで、答案の質が変わります。数学の答えは、問題の状況に合っていなければ答えではありません。
例題5 ―― 型10。変域の中で解を選ぶ
【例題5】(数強塾オリジナル)
、 cm、 cm の直角三角形 ABC があります。点 P は A を出発して辺 AB 上を B に向かって毎秒 cm で動き、点 Q は B を出発して辺 BC 上を C に向かって毎秒 cm で動きます。2点は同時に出発します。
出発してから 秒後の三角形 PBQ の面積が cm になるのは何秒後ですか。
【解答】
秒後と 秒後
まず変域を決めます(型10)。P は 秒で B に、Q は 秒で C に着くので
次に、 秒後の長さを表します。
| 秒後の長さ | |
|---|---|
| cm | |
| cm | |
| cm |
三角形 PBQ は の直角三角形なので、面積は
両辺を2倍して
「かけて 、たして 」の2数は と なので
どちらも変域 の中にあるので、両方とも答えです。
検算
:、。面積 。○
:、。面積 。○
2つの答えは、たてとよこが入れかわった関係になっています。
この問題では、解が2つとも答えになる。負の解や変域外の解が出るとは限りません。「二次方程式だから片方は捨てる」と決めつけないでください。
そして変域を先に書いておく意味がここにあります。もし と出たら は変域外で不適。変域がなければ判断できません。動く点の問題では、必ず最初に「何秒まで動けるか」を書く――これが型10の鉄則です。
5. よくある質問
Q1. 3つの解き方のどれを使えばよいですか。
A. 右辺を0にして形を見てから判断してください。 の項がなければ平方根、因数分解できるなら因数分解、無理なら解の公式です。
Q2. を と答えたら×でした。
A. 両辺を で割ってしまったからです。 も解です。0かもしれないもので割ってはいけません。右辺を0にして因数分解してください。
Q3. 解の公式で符号を間違えます。
A. を式の横に書き出してから代入してください。 なら 。マイナスも含めて読み取ります。
Q4. 答えが根号のままでよいのですか。
A. よいです。ただし根号の中を簡単にし、約分できるならすること。この2つを忘れると減点されます。
Q5. 文章題で解を1つ捨てるか2つ残すか迷います。
A. 問題の状況に合うかで判断してください。長さや個数なら正のものだけ、動く点なら変域の中だけ。捨てた理由を一言書くのが答案の作法です。
6. 次に読むページ
- 中3数学の要点辞典 ―― 全単元の公式・定石・つまずきポイント。
- 中3 展開と因数分解の解法パターン全10型 ―― 因数分解で解くための土台。
- 中3 平方根の解法パターン全10型 ―― 根号の整理。
- 2次関数の解法パターン全20型(高校) ―― 判別式とグラフ。
- 解法パターン事典(総索引)
二次方程式でつまずいている人へ
二次方程式でつまずく生徒のほとんどは、計算力ではなく「どの解き方を選ぶかの判断」と「解を選ぶ根拠を書くこと」でつまずいています。数強塾では、式を見たらまず右辺を0にして形を言わせ、解き方を宣言してから計算に入らせています。そして文章題では、必ず変域や正負の条件を書かせています。オンラインの完全1対1で、プロ講師のみが担当します。
数強塾オリジナル演習|例題で扱わなかった2つの型を5問で
上の「例題1〜5」では型01〜06・09・10 を扱いました。ここでは残る型07(解の個数)と型08(数の性質の文章題)を5問で埋めます。型08では「解の吟味」——方程式の解のうち、どれが答えになるかを選ぶ作業を毎問くり返します。
型07 解の個数
次の方程式の解の個数を調べ、解があれば求めよ。
(1)
(2)
(3)
解答・解説を見る
根号の中身 を見ます。平方根が取れるのは 以上のときだけだからです。
(1) 。異なる2つの解
より
(2) 。重解
より
( なので「 または 」。どちらの道を通っても )
(3) 。実数の解はない
3つとも は共通で、定数項だけが と増えています。
グラフで言えば、放物線が上へ動いていく。 軸と2点で交わる → 接する → 交わらないと変化しているところです(交点が解になる理由)。
型07 文字入りの解の個数
方程式 について。
(1) 重解を持つときの と、そのときの解。
(2) 異なる2つの解を持つ の範囲。
(3) 実数の解を持たない の範囲。
解答・解説を見る
を使います。
(1) より
このとき なので
(重解は「軸の上」。軸は で一致しています——解の公式の意味)
(2) より
(3) より
(検算: なら で の2つ ✓ なら で解なし ✓)
を境に、解の個数が 2 → 1 → 0 と変わります。定数項を大きくすると放物線が上がっていく、という前問と同じ現象です。
型08 連続する整数の積
連続する2つの正の整数がある。その積が であるとき、この2つの整数を求めよ。
解答・解説を見る
小さいほうを とおくと、大きいほうは 。
たして 、かけて になる2数は と 。
または
【解の吟味】「正の整数」という条件があるので は不適。
より 12 と 13
(検算: ✓)
方程式の解が2つ出ても、答えが2つとは限りません。必ず問題文の条件に戻して確かめること。この一手を省くと、せっかく正しく解いても不正解になります。
( を素因数分解して と見つける手もあります。検算にも使えるので覚えておくと便利)
型08 2乗して比べる文章題
ある正の数に を加えて2乗すると、もとの数の 倍より 大きくなる。もとの数を求めよ。
解答・解説を見る
もとの数を とおく。日本語を左から順に式にします。
「 を加えて2乗する」→
「 倍より 大きい」→
、
または
【解の吟味】「正の数」なので は不適。
(検算:、 ✓)
ここで両辺を で割ってはいけません。 から としてしまうと、たまたま答えは合いますが、 という解を消しています。今回は不適だったので助かっただけで、 が答えになる問題では失点します。
型08 連続する3つの整数
連続する3つの整数がある。それらの2乗の和が であるとき、この3つの整数を求めよ。
解答・解説を見る
まん中を とおくのがコツ。3つは 。
と が消えて
、
【解の吟味】「整数」としか書かれていないので負のほうも答えになります。
5, 6, 7 または
(検算: ✓、 ✓)
いちばん小さい数を とおくと となり、。解けますが計算が重くなります。
まん中を文字にすると、対称性で項が消える。この置き方の工夫が、そのまま時間の差になります。
文章題は「解いて終わり」ではない
二次方程式の文章題では、解が2つ出るのに答えは1つという場面がくり返し現れます。次の4点を毎回チェックしてください。
| 確かめること | 合図になる言葉 | 捨てる例 |
|---|---|---|
| 正か負か | 長さ・人数・個数・正の数 | は長さになれない |
| 整数か | 個数・人数・連続する整数 | は人数になれない |
| 変域の中か | 動く点・「」 | は辺の上を出ている |
| 0でよいか | 正の数・ でない | が条件に反する |
捨てる解にも、必ず一言そえるのが答案の作法です。「 より は不適」と書けば、吟味したことが伝わります。黙って消すと、見落としたのか判断できません。
置き方の工夫で計算量が変わる
- 連続する3つの整数 → まん中を にする()。 が消えます
- 連続する2つの整数 → 小さいほうを に()
- 連続する偶数・奇数 → まん中を にして
- 2けたの整数 → 十の位 、一の位 として
対称に置けば、対称に消える。式を立てる前の30秒が、そのあとの3分を節約します。
「なぜそうなるのか」へ
二次方程式は「積が なら片方が 」というたった1つの事実の上に立っています。そこを押さえると、3つの解き方が1本につながります。
- なぜab=0ならa=0またはb=0なのか ── 型03の全根拠。右辺が でないと使えない理由もここに。
- なぜ解の公式はあの形になるのか ── 型02と型04は同じもの。平方完成を文字でやりきった結果が公式です。
- なぜ因数分解すると方程式が解けるのか ── なぜわざわざ積の形にするのか。
- なぜグラフの交点が連立方程式の解になるのか ── 型07。解の個数を、放物線と 軸の交点として数えられます。
- なぜ無理数という数が必要なのか ── 解が を含むとき、なぜ小数にしないのか。
関連ページ
要点辞典この単元の公式・定石・つまずきやすい所は 中3数学の要点辞典:二次方程式 にまとめてあります。
