不等式の証明の解法パターン全14型|型の見抜き方と入試実例(東北大・神戸大・静岡大・筑波大・横浜市立大・岡山大)


不等式の証明は、答えの数値が出ない分野です。だからどこまで書けば「示した」ことになるのかが分からないまま、式を右へ左へ動かして時間だけが過ぎていきます。けれども、やっていることはいつも一つ。証明したい大小関係を、「符号が最初から分かっている量」まで運ぶ。それだけです。理由なしに符号を断言できる量は、平方・絶対値・指数関数・正の数どうしの積といった、ごく少数しかありません。不等式の証明とはそこへ到達する運搬経路を選ぶ作業であり、このページの14型はその経路のカタログです。型は当てはめるための箱ではなく、「いまどの量の符号を確定させようとしているのか」を見失わないための道具として並べています。

このページの位置づけ——概観は第1層、深掘りはここ

不等式の証明は式と証明の解法パターン全16型でも扱っています(型11〜型16)。あちらが「単元を一望する地図」なら、こちらは「不等式の証明だけを掘り下げる坑道」です。単元全体の中での位置づけを先に確認したい方は、第1層からご覧ください。

このページでは、数Iの平方完成から数IIIの積分評価・平均値の定理まで、学年をまたいで「不等式の証明」だけを14の型に並べ直しました。同じ「差をとる」でも、文字が2つのときと自然数 が入っているときでは続きの手が変わります。その分岐まで見渡せるのが、この第2層です。

このページの14型

  1. 差をとって符号を調べる
  2. 平方完成(2乗の和にする)
  3. 相加相乗平均
  4. コーシー・シュワルツ
  5. 微分して最小値が0以上
  6. 数学的帰納法
  7. 積分で評価する(面積の比較)
  8. はさみうち
  9. 凸関数と接線
  10. 平均値の定理
  11. 等号成立条件の書き方
  12. 文字を減らしてから示す
  13. 対称性・順序の仮定
  14. 背理法で示す

1. 背骨——不等式の証明は「符号を断言できる量」まで運ぶ作業

不等式の証明が等式の証明より手強く感じられるのは、ゴールの姿がはっきりしないからです。等式なら「左辺を変形していったら右辺になった」で終わりだと誰にでも分かりますが、不等式ではどこまで変形すれば示したことになるのかが自明ではない。だから「なんとなく大きそう」で止まってしまいます。

ここをはっきりさせておきます。私たちが理由を述べずに符号を断言できる量は、ごくわずかしかありません。逆にいえば、不等式の証明とは示したい大小関係を、その数少ない「符号が既知の量」まで運ぶ運搬作業なのです。

無条件で符号を断言できる量——ここが証明のゴール地点

① 実数の平方 、平方の和 、偶数乗

② 絶対値 、平方根

③ 指数関数 、正の数の累乗

④ 正の数どうしの和・積、符号が確定した量の正の定数倍

⑤ 区間上で符号が一定な関数の定積分

この5つのどれかに到達できれば、そこで証明は終わり。以下の14型は、そこへ至る道順の分類です。

この見方をすると、なぜ真っ先に差をとるのかが腑に落ちます。「」はそのままでは①〜⑤のどれにも当てはまりません。ところが と書き直した瞬間、左辺は一つの量になり、あとはその符号を調べればよくなる。差をとるのは計算の都合ではなく、問題を「符号の判定」という単一の問いに書き換えるためなのです。

差の代わりにを使う道もあります。 のとき は同値だからです。足し算で書かれた式は差、掛け算で書かれた式は比——これが最初の分かれ道です。

不等式の変形には「向き」がある

等式なら両辺に何をしても等式のままですが、不等式はそうはいきません。負の数を掛けても逆数をとっても向きが変わり、2乗は両辺が同符号でなければ使えず、平方根は両辺が0以上でなければ外せません。一度でも条件を確かめずに変形すると、その先の議論はすべて無効になります。

だから答案は、示したい式を変形していくのではなく、符号が確定した式から出発して示したい式に到達する向きに書くのが安全です。頭の中では逆算してかまいませんが、清書では向きをそろえてください。

もう一つ、型を選ぶときにいちばん効く目印があります。文字が何個あるか、その文字が連続に動くのか自然数なのかです。1文字で連続なら差の関数の最小値を調べればよく、微分の出番(型05)。2文字以上でも条件式があれば1文字に減らせます(型12)。減らせないときは、対称なら と順序を仮定してよい(型13)。自然数 なら連続的な道具は使えないので帰納法(型06)、和の形なら階段状の和を面積と比べて積分にすり替える(型07)。「連続か離散か」「1文字か多文字か」の2×2で、使える型はほとんど決まります。

相加相乗平均(型03)やコーシー・シュワルツ(型04)は、この運搬作業の中継地点です。どちらも元をたどれば 、つまり平方から出てきます。暗記した公式ではなく、誰かがすでに①まで運び終えてくれた荷物なのです。

そして等号です。「いつ等しくなるか」を書けて初めて、その不等式が最良のものかどうかが決まります。最大最小を問われたとき、等号が実際に起こり得ることを示さなければ「その値をとる」とは言えません。不等式の答案は、大小を示した行ではなく、等号を論じた行で完成します。

最後に型そのものについて一言だけ。不等式を見た瞬間に「差をとって平方完成」「これは相加相乗」と手が動く人は、頭の回転が速いのではありません。過去に何百回も使われてきた「型」から予想して、思考する量を減らすことで、手際よく解法を思い付いている場合もあるのです。型は考えなくて済ませるための道具ではなく、考える範囲を狭めるための道具です。狭めたあとに、どの平方が作れるのか、どの関数を微分するのかを決めるのは、結局その場の自分自身。以下の14型も、そのつもりで読んでください。

2. 手順——型を選ぶまでの判断の流れ

1示すべきことを「一つの量の符号」に書き換える。足し算中心の式なら差 をとる。掛け算と累乗だけでできているなら比 を1と比べる。ここで初めて、問題が「この量の符号は?」という単一の問いになります。

2文字を数え、連続か離散かを見る。1文字で連続なら微分(型05)。多文字でも条件式があれば消して1文字へ(型12)。対称なら順序を仮定(型13)。自然数 が動くなら帰納法(型06)、和の形なら積分での評価(型07)。

3符号の判定を、軽い順に試す。因数分解 → 平方の和(型02) → 既知の不等式に帰着(型03・型04) → 増減で押さえる(型05・型09・型10) → 積分ではさむ(型07・型08)。上から順に試すのが最短です。

4等号を論じて閉じる。等号条件は使った型で決まります。平方なら中身が0、相加相乗なら2数が一致。等号が起こらないなら、その旨を書いて真の不等号にする(型11)。

3. 解法パターン全14型

型01 差をとって符号を調べる

01大小の比較を、一つの量の符号に変える

顔つき 「 を示せ」。ほぼすべての不等式証明の第一手。

中身  を作って因数分解する。因数の符号が一つずつ決まれば積の符号も決まる。両辺が正なら比 を1と比べてもよい。

なぜ効くか 「どちらが大きいか」は2つの量を見比べる問いですが、 を作った瞬間に1つの量の符号を判定する問いに変わります。残り13型は、その「差の符号をどう確定させるか」をめぐる各論です。

型02 平方完成(2乗の和にする)

02実数の2乗は、理由なしに0以上

顔つき 差が2次式。 のような対称な2次形式。

中身  を作る。3文字なら を狙う。作れなければ1文字について整理して判別式——最高次の係数が正で判別式が0以下なら常に0以上です。

なぜ効くか ゴール地点①へ最短で届く道であり、しかも等号条件が同時に手に入ります。平方の和が0になるのは各項が0のときだけなので、「 かつ 」のような条件が自動的に出る。判別式ルートは、平方の作り方が見えないときの代替です。

型03 相加相乗平均

03和と積が同時に出てきたら疑う

顔つき 正であることが保証されているのが使用条件。

中身  のとき 、等号は 。3数なら 掛けたら文字が消える組み合わせを探すのがコツです。

なぜ効くか 正体は型02です。——先に平方まで運んでおいてくれた荷物にすぎません。だから正の数にしか使えない。必ず「正であること」を先に断ってください。

型04 コーシー・シュワルツ

04「和の積」と「積の和」を比べる形

顔つき 2つの和の積が出てきたら候補。

中身 、等号は が比例するとき。答案では の判別式から導く一行を添えれば安全です。

なぜ効くか これも根は平方です。「すべての で0以上」という無限個の条件が、判別式という1個の条件に凝縮している——そこが効き目の源。ただし高校範囲では2数の相加相乗を組の数だけ足し上げるほうが答案が短くなることも多く、神戸大学の問題がその実例です。

型05 微分して最小値が0以上

05符号が分からないなら、増減なら分かる

顔つき 差に 、三角関数が混ざり、因数分解も平方完成もできない。文字は1つ。

中身  とおき、 の符号から増減を調べて最小値が0以上を示す。区間の端で になることが多く、その場合は「端点で0、そこから単調増加」で終わります。 の符号が読めなければもう一度微分する。

なぜ効くか 式の形からは符号が読めなくても、微分すると式が簡単になることがよくあるからです。 の符号は一目では分かりませんが、微分した の符号は で明らか。「1回微分して分からなければ、もう1回」——静岡大学と横浜市立大学の問題の骨格です。

型06 数学的帰納法

06離散の文字には、微分ではなく帰納法

顔つき 「すべての自然数 について示せ」。 個の和や 乗が出てくる。

中身  で確かめ、 を仮定して を示す。不等式の帰納法では、仮定をそのまま代入するのではなく「置き換えの材料」に使うのがふつうです。示したい式の一部を仮定で置き換え、残りを別の理由で押さえる。

なぜ効くか  は連続に動かないので微分も極限も使えません。使えるのは「1つ前との関係」だけで、それを制度化したのが帰納法。うまくいく問題では仮定が次のステップの「増減の根拠」に化けます数列・漸化式の解法パターン全16型)。

型07 積分で評価する(面積の比較)

07不等式は、積分してもそのまま残る

顔つき  のような和の評価。「(1) で示した不等式を用いて (2) を示せ」という誘導。

中身 区間 なら 連続な関数どうしなら、内部に真の不等号となる点が1つでもあれば積分後は真の不等号。和の評価では、階段状の長方形と曲線の下の面積を比べます。

なぜ効くか 直接いじれない量でも、積分の形に翻訳できれば被積分関数を押さえるだけで済むからです。しかも積分は関数の不等式を数値の不等式に変換する装置でもある(積分法(数III・計算)の解法パターン全18型)。

型08 はさみうち

08上からと下から、別々の理由で押さえる

顔つき 「 を示せ」という両側の不等式。極限を求めさせる問題。

中身 左側と右側は別の証明だと割り切って、それぞれ独立に作る。極限なら で両端が同じ値に収束することを言う。基準の数を1つ挟むのも同じ発想で、 のように中継点を置けば大小が決まります。

なぜ効くか 両側を1本の式変形で同時に出そうとすると、たいてい行き詰まります。上と下で使う道具が違うのがふつうだからです。分けてしまえば、それぞれは型01〜型07で処理できる一方向の不等式になります(極限の解法パターン全15型)。

型09 凸関数と接線

09下に凸なら、接線の上・弦の下

顔つき  といった基本の不等式。2点を結ぶ線分との比較。

中身 (下に凸)なら、グラフはどの接線よりも上、どの弦よりも下。上に凸ならすべて逆向き。答案では から接線の式を引いた関数を微分して増減を調べれば型05に落ちます。

なぜ効くか 凸性は1本ではなく無限個の不等式をまとめて生む性質だからです。接点をどこにとっても不等式が1本手に入るので、後から都合のよい接点を選べる。横浜市立大学の問題がその使い方です(微分法(数III)の解法パターン全18型)。

型10 平均値の定理

10差を、導関数1個に置き換える

顔つき  の形の差を評価したい。 のような形。

中身  で連続、 で微分可能なら、 をみたす の間に存在する。あとは の動ける範囲を押さえれば差の評価が出ます。 の値そのものは要りません。

なぜ効くか 扱えない差の形が、導関数の値1個に置き換わるからです。「傾きが一定以下なら移動距離も一定以下」という当たり前のことを、答案に書ける形にしたもの。型09の接線の不等式も、ここから導けます。

型11 等号成立条件の書き方

11等号を論じて、はじめて答案が閉じる

顔つき すべての不等式証明。とくに「等号が成立するための条件を求めよ」「最小値を求めよ」。

中身 平方の和なら各項が0、相加相乗なら2数が一致、複数の不等式を足し上げたならそのすべてで同時に等号。最後に、その条件をみたす値が実際に存在するかを確かめます。

なぜ効くか 「 だから最小値は3」と書けるのは、等号が実際に起こるときだけです。起こらなければ3は最小値ではありません。逆に「同時に等号が成立する値は存在しない」と分かれば、結論を真の不等号に強められる。等号の検討は、答えの精度そのものです。

型12 文字を減らしてから示す

12条件式は、代入して消すためにある

顔つき 「 のとき〜を示せ」のように条件式つき。文字が2つ以上ある。

中身 条件式を1文字について解いて代入し、1文字の問題に落とす。このとき残った文字の動ける範囲が必ず生まれるので書き落とさない。文字を と置き直して見通しをよくするのも同じ型です。

なぜ効くか 1文字になれば型05が無条件で使えるからです。多文字では増減表が書けませんが、1文字なら必ず書ける。ただし代入で生まれる範囲の制限を落とすと、示すべき区間の外まで議論してしまう——ここが唯一の落とし穴です。

型13 対称性・順序の仮定

13入れ替えても変わらないなら、順番を決めてよい

顔つき  を入れ替えても式が変わらない(対称式)。大小を先に決めると場合分けが減る問題。

中身 式が対称なら「 としてよい」と一行断って進む。対称でなくても、2数の大小を先に決めてしまえば絶対値が外せます。「一般性を失わない」と書くには、入れ替えても主張が変わらないことが必要です。

なぜ効くか 場合分けが 通りから1通りに減るからです。しかも順序を仮定すると のように符号が確定した因子が手に入り、型01の続きがすぐ書けます。筑波大学の問題がその実例です。

型14 背理法で示す

14示せないなら、否定して壊す

顔つき 「少なくとも1つは〜以上であることを示せ」「〜でないことを示せ」。結論が存在や否定の形をしている。

中身 結論を否定して仮定に加え、矛盾を導く。否定の作り方が要で、「少なくとも1つは 以上」の否定は「すべてが より小さい」。不等式の否定では等号の位置が入れ替わることに注意。

なぜ効くか 「少なくとも1つ」はどれが該当するか分からないので直接は示しにくい。ところが否定するとすべての項に使える不等式に変わり、辺々足す・掛けるが一斉にできます。使える式が増えるほうへ問題を書き換える——それが背理法の実質です(集合と論理の解法パターン全12型)。

4. 実際の入試で確かめる

全14型のうち、入試の実例がついているのは12型1マスが1つの型です。青いマスは、下にある入試の実例で確かめている型です金色のマスは、このページの追加演習が埋めている型ですこのページの型は、すべてどちらかで扱っています0102030405060708091011121314解法パターン14型入試の実例で確かめる12型追加演習が埋める2型12 + 2 = 14型。この図は下にある入試の実例が扱う型を数えたものです入試の実例は6問。実例の数と型の数は必ずしも一致しません

この単元の解法パターンは全14型で、下にある入試の実例6問で確かめているのは12型です。このページの追加演習が2型を埋めています。1問が複数の型にまたがることも、同じ型を複数の実例で扱うこともあるため、実例の数と型の数は必ずしも一致しません。

ここからは実際に出題された問題で型を確かめます。問題文は各大学が公表した入試問題を、解説のために引用したものです。解答・解説は数強塾が独自に作成したもので、大学公表の解答ではありません。掲載した式と数値は当塾で独立に解いたうえで Python(厳密計算と数値計算)で検算し、さらに別の担当者が別ルートで解き直して照合しています。

東北大学 2009年度 ―― 型01・型02・型11。差が「1次因子×平方の和」に割れる

【問題】東北大学 2009年度(平成21年度)前期日程(理系 第1問)

を実数とする。以下の問いに答えよ。

(1)  であるとき、 が成り立つことを示せ。

(2)  であるとき、 が成り立つことを示せ。

【解答の骨子】

(1) を代入。 (2) 差が と割れ、第1因子の符号は仮定が、第2因子の符号は平方の和が担う

(1)  を使いたいので、 で書き直します。

両辺に を加えて結論を得ます。(証明終)

(2) 方針。示すべきは (型01)。ここで (1) が効きます。(1) は「 なら差が0になる」と言っている——つまりこの差は を因数にもつはずで、誘導が因数分解の入口を教えてくれています。実際、対称式の恒等式

を代入すると、左辺は になり

が得られます(右辺を展開すれば左辺に一致)。

第2因子の符号。平方の和に書けます(型02)。

この分け方が見えなくても、 の2次式とみると最高次の係数は 、判別式は

ですから がどんな値でも0以上。平方完成の勘が働かないときの代替ルートです。

結論。仮定より第1因子は 、第2因子は0以上。0以上どうしの積は0以上なので 。(証明終)

等号。積が0になるのは、どちらかの因子が0のとき。すなわち のとき、または第2因子が0のとき——後者は かつ かつ 、つまり の場合で、 より が必要です。

この問題で使った型

型01・型02 「」を「」に直した瞬間、問題は1つの3次式の符号判定になります。 の符号が与えられていないので、場合分けではなく因数分解で符号を確定させるしかない、と方針が絞られる。第2因子は平方の和で、平方が見えなければ判別式——どちらの道でも という同じ量にたどり着きます

型11 等号は「第1因子が0」または「第2因子が0」。後者には という追加条件が付きます。因数分解で示した不等式は、等号条件も因数ごとに読めるのが利点です。

検算のしかた

恒等式  を展開すると厳密に0。平方の和による表現との差も、 を代入した差(=(1) の検算)も0。

数値で  の一様乱数400,000組のうち をみたすものを判定して違反0件(差の最小値 )。 を60等分した 点の全走査でも違反0件。

等号  で差はちょうど0。 で仮定の外。等号の例と仮定を外れる例を1つずつ作るのが確実な検算です。

神戸大学 2012年度 ―― 型03・型04・型11。2数の不等式を、組の数だけ足し上げる

【問題】神戸大学 2012年度(平成24年度)前期日程(文科系 第3問)

以下の問に答えよ。

(1) 正の実数 に対して が成り立つことを示し、等号が成立するための条件を求めよ。

(2)  を自然数とする。 個の正の実数 に対して

が成り立つことを示し、等号が成立するための条件を求めよ。

【解答の骨子】

(1) 差をとると 、等号は 。 (2) 左辺を展開すると「1が 個」と「 組」に分かれ、各組に (1) を使う。等号は

(1) 型01。 より なので、差を通分すると

分子は平方だから0以上、分母は正。よって 、等号は のとき。(証明終)

(2) 文字が 個ありますが、やることは (1) の使い回しだけ。左辺を とおいて展開します。

これを2種類に仕分けます。 の項は 個。 の項は の組ごとにペアで現れます。したがって

ここが急所です。括弧の中はまさに (1) の左辺の形。各ペアに (1) を として適用すれば 。ペアは 組なので

(証明終)

等号。足し上げた不等式がすべて同時に等号になるときだけ。つまり 。( では左辺が で、等号だけが起こる自明な場合です。)

コーシー・シュワルツなら。 と見て型04を使えば

の1行。ただしこの問題は (1) を用意してくれているので、答案は誘導に乗るのが自然です。強い公式を知っていることより、前問をどこに差し込むかを見抜くほうが得点になります。

この問題で使った型

型03・型04 (1) は相加相乗平均そのもの( は掛けると1)ですが、答案では差をとって平方にするほうが等号条件まで一度に書けて安全です。(2) の結論はコーシー・シュワルツと同じ内容で、 変数の不等式が、2変数の不等式を 回足しただけで出ると分かると多変数を怖がらなくなります。

型11 複数の不等式を足し上げたときの等号は「全部同時に等号」。ここを書き落とすと「等号成立条件を求めよ」に答えたことになりません。

検算のしかた

ペアに束ねる操作  が厳密に になることを確認。さらに と、3つのペアの の和が完全に一致(差が厳密に0)。ここが合えば束ね方の理屈は正しいと言えます。

数値で  から まで各60,000組、計480,000組の正の乱数 で判定して違反0件(最小値 は全部等しい場合の丸め誤差)。 をすべて にそろえると のいずれでも差が 未満で、等号条件も確認できます。具体例は のとき

静岡大学 2018年度 ―― 型05・型06・型08。帰納法の仮定が、次の関数の増減表になる

【問題】静岡大学 2018年度(平成30年度)前期日程(M3 第4問)

の範囲で、関数 を考える。

(1)  であることを示せ。

(2) すべての自然数 に対して、 であることを示せ。

(3)  が成り立つことを示せ。

(4)  を満たす について、 が成り立つことを示せ。

【解答の骨子】

全体を貫くのは2つ。微分すると添字が1つ下がる 原点では必ず0 。この2つだけで (1)〜(4) がすべて動きます。

準備。 に注意して項別に微分すると、

また 、どの でも です。

(1) 型05です。 より 、さらに 。よって は単調増加、 だから 。ゆえに も単調増加で、 より 。等号は のみ。(証明終)「1回微分して分からなければ、もう1回」の実演です。

(2)  は自然数なので帰納法(型06)。命題 を「すべての 」とします。

(i) から は成立。

(ii) )を仮定します。 に使うと

となり、仮定がそのまま の増減表になります は単調増加、 なので 。よって も成立し、すべての自然数 。(証明終)

(3) 差の関数を作ります(型01+型05)。 とおくと だから

と (2) の から 、よって 。これで 。(証明終) が打ち消しあって だけが残るのが急所です。

(4) (3) を一般化します。 に対し とおくと 、同じ計算で なので (2) が使えます)。よって 。これを繰り返し、最後に (3) を使うと

左端は (2)。 は単調増加なので では 。したがって

より 。はさみうちの原理(型08)から で、定義に戻せば

のときは両辺とも0で成立。)(証明終)

この問題で使った型

型06 心臓は 番目の不等式が、 番目の関数の導関数の符号そのものになっています。帰納法の仮定を「代入する材料」ではなく「増減の根拠」として使う、いちばん美しい形です。

型05・型08 (1) と (3) はどちらも「端点で0、そこから単調」という同じ論法。(4) は で挟むだけです。不等式の証明が、そのまま級数の収束の証明になる——不等式が何のためにあるのかが分かる設問です。

検算のしかた

骨組み  から まで厳密計算で確認し、すべて差が0。、一般化版 もすべて0。

数値で 桁落ちを避けるため有効200桁に設定し、 の3001点 × の計120,040点で を判定して違反0件(最小値は での0)。(4) の連鎖も を114,038点、 を39,000点で確認して違反0件。 では と実際に0へ落ちます。なお有効桁を60にすると 規模の負値が出ますが、これは丸め誤差で200桁では消えます。

筑波大学 2019年度 ―― 型08・型12・型13。上と下を、別の道具で押さえる

この問題は 指数・対数 のページでも扱っています。同じ問題でも、そちらは単元全体の中での位置づけ、ここではこのテーマに絞った読み方をしています。二つを見比べると、同じ問題文から引き出せるものが1つではないことが分かります。

【問題】筑波大学 2019年度(平成31年度)個別学力試験(第2問)

以下の問いに答えよ。

(1)  は正の実数とする。 がすべて 以下のとき

であることを示せ。

(2)  の大小を比較せよ。

(3)  が正の整数のとき

であることを示せ。

【解答の骨子】

(1) 分母を払って辺々加えるだけ。 (2) ——基準の数2を間に挟む。 (3) と置き、左は分子と分母の差、右は (1) の道具で別々に押さえる。

(1)  なので分母を払って 。辺々加えて で割って結論。(証明終) ※3つのうち1つでも真の不等号なら結論も真の不等号——この一言が (3) で効きます。

(2) 直接比べにくい2数は間に基準を1つ置くと決着します(型08)。 より

よって 。( と直し、 から比べても同じです。)

(3)  と置き直します(型12)。(2) より 順序が確定しているのが土台(型13)。左側は分子と分母の差をとります。

より かつ 。分母は正だから分子のほうが大きく、比は1より大きい。

右側。ここで (1) を として使います。まず底の変換公式より

したがって のとき

3つとも真の不等号で成り立ちます。よって を辺々加えて 、分母で割れば比は より小さい。

以上で 。(証明終)

この問題で使った型

型08 両側を1本の変形で同時に出そうとすると行き詰まります。左は差の符号、右は加比の理——道具がまるで違うので、最初から2本の証明だと決めてかかるのが正解。(2) の「2を挟む」も同じ発想の小型版です。

型12・型13  と置き直すだけで、対数の式が普通の文字式に変わります。そして (2) で と順序を確定させたことが、(3) の左側でも右側でも土台になる。設問 (2) は (3) の下ごしらえ——誘導の読み方がそのまま得点差になります。

検算のしかた

値の確認  で、確かに 。その比 以内で一致し、右側で使った の裏づけになります。

本体  から まで比を実際に計算し、すべて (違反0件)。実測値は

補題 (1) は条件をみたすように生成した300,000組で判定し違反0件。 と取ればより鋭い上界が得られ、これも から まで違反0件(ただし倍精度では 以降 の丸め誤差が両辺の差を上回るので、有効120桁で判定しています)。 は余裕をもたせた上界です。

横浜市立大学 2010年度 ―― 型07・型09。接線と弦ではさみ、積分して数値評価に変える

【問題】横浜市立大学 2010年度(平成22年度)(第Ⅳ問)

とする。以下の問いに答えよ。

(1)  をみたす に対して

を示せ。

(2) (1) を用いて

を示せ。

(3) (2) を用いて を示せ。

【解答の骨子】

(1) 左は原点の接線、右は2点 を結ぶ弦。下に凸なグラフは接線の上・弦の下(型09)。 (2) 両側をそのまま で積分(型07)。 (3) を代入して2乗する。

(1) 左側。 より 。等号は のみ。

(1) 右側。 とおくと

で、 だから は上に凸。 が単調減少なので が「減少してから増加」になることはなく、両端でともに0であることと合わせて 。等号は のみ。(証明終)

(2) 内部 では (1) の両側とも真の不等号なので、 で積分しても真の不等号のまま残ります(型07)。3つの積分は

より 。左から 、右を整理して

(証明終)

(3)  とします。下からは 、両辺正なので2乗して

上からは とおくと 、つまり より 。2乗して

よって 。(証明終)

この問題で使った型

型09 (1) の左は接線、右は弦。下に凸という1つの性質から、上下2本の不等式が同時に手に入るのが凸性の威力です。右側は「両端で0、かつ上に凸」だけで符号が決まり、増減表すら要りません。

型07 関数の不等式を積分すると数値の不等式になります。積分は「関数の大小」を「数の大小」に変換する装置——これが (2) から (3) への橋です。なお では にしかならず精度が足りません。 を小さくするほど評価は鋭くなるので、扱いやすい分数のうち小さい を選ぶ——「何を代入するか」まで込みで一つの型です。

検算のしかた

積分 3つの積分を厳密計算で再現(右端は )。そのうえで右側の整理 が厳密に0になることも確認。

数値で (1) は の400通り × 各区間2001点、計800,400点で判定して違反0件(右側で唯一出た の等号点での丸め誤差)。(2) も同じ400通りすべてで真の不等号(マージン最小 )。

結論  の間に が入ります。 では下限 ・上限 と両側が に迫り、 を小さくするほど鋭くなることも確かめられます。

岡山大学 2008年度 ―― 型07・型09。手の出ない差を、積分に翻訳してから押さえる

【問題】岡山大学 2008年度(平成20年度)(理系 第3問)

を0以上の実数、 を正の整数とするとき、次の問いに答えよ。

(1)

が成り立つことを示せ。

(2)  が成り立つことを示せ。

(3)  が成り立つことを示せ。

【解答の骨子】

(1) 部分積分。 が打ち消えるのが仕掛け。 (2) 接線の不等式 を入れて 乗。 (3) (1) を移項すると示したい差がそのまま積分になるので、被積分関数を (2) で押さえる。

(1)  の原始関数は 。さらに

が消えます。部分積分すると

境界項は なので、示す式になります。(証明終)

(2)  より なので、指数を1つ増やしても減りません(左側)。右側は型09。 より 。ここに を入れ、両辺正なので 乗して

(証明終)

(3)  なら両辺0で成立するので とします。(1) を移項して

(中かっこを でくくると残りが 。)ここが山場です。直接いじれなかった差が、積分という扱いやすい形に翻訳されました。あとは被積分関数を押さえるだけ。(2) を のかわりに に使うと 、他の因子 は0以上なので

定数になるのが急所です。(証明終)

この問題で使った型

型07 差 は直接いじっても手が出ませんが、(1) がこの差を積分に書き換えてくれます。積分の形になれば、被積分関数を既知の不等式で押さえる定石が使える。「差をとる」だけでは届かない場面の切り札です。

型09 (2) の核は 、つまり原点における接線の不等式です。教科書の基本不等式が、 へ近づく速さの評価にまで届く——基本を軽く見てはいけない理由がここにあります。

検算のしかた

等式 (1) を について を記号のまま厳密積分し、差はすべて0。(3) の書き換えも で差0。部分積分は符号を落としやすいので、記号のまま検算する価値があります。

数値で  の121通り × の4,840組で (2)(3) を判定して違反0件(余裕の最小値0は の自明な等号)。

代表値  を大きくすると差も上界もともに の速さで0に近づきます。

5. よくある質問

Q1. 不等式の証明で、まず何をすればいいのか分かりません。

A. 差をとってください。左辺から右辺を引いた式が0以上であることを示せばよい、と書き換えます。これで、2つの量を見比べる問題が、1つの量の符号を調べる問題に変わります。掛け算と累乗だけでできている式なら、差ではなく比を1と比べるほうが軽くなります。

Q2. 差をとったあと、符号が判定できません。

A. 軽い道具から順に試してください。まず因数分解、次に2乗の和にできないか、次に相加相乗平均などの既知の不等式に帰着できないか、それでも駄目なら微分して最小値を調べる、という順番です。文字が2つ以上でも、条件式があれば代入して1つに減らせます。

Q3. 等号成立条件は必ず書かないといけませんか。

A. 求めよと書かれていなくても書く癖をつけてください。最大値や最小値を答えるときは、等号が実際に起こることを示さないとその値になるとは言えません。逆に等号が起こらないと分かれば、結論をより強い形に書き直せます。複数の不等式を足し合わせたときは、そのすべてで同時に等号が成り立つ場合だけです。

Q4. 自然数についての不等式は、どう手をつければよいですか。

A. 自然数は連続に動かないので微分は使えません。使えるのは一つ前との関係だけで、それを形にしたのが数学的帰納法です。仮定をそのまま代入するのではなく、示したい式の一部を仮定で置き換える材料として使うのがふつうです。和の形なら、階段状の和を曲線の下の面積と比べて積分で評価する方法もあります。

Q5. 型を覚えれば初見の不等式も証明できますか。

A. 型は考えなくて済ませる道具ではなく、考える範囲を狭めるための道具です。過去に何百回も使われてきた型から予想して、思考する量を減らすことで、手際よく解法を思い付いている場合もあるのです。狭めたあとに、どの2乗を作るのか、どの関数を微分するのかを決めるのは、結局その場の自分自身です。

6. 次に読むページ

不等式の証明で手が止まってしまう人へ

不等式が苦手な生徒の答案を見ていると、計算力が足りないのではなく「いまどの量の符号を確定させようとしているのか」を言葉にできないまま式をいじっていることがほとんどです。数強塾では、式を書く前に「差をとるのか比をとるのか」「文字は何個で、連続か自然数か」を口に出させ、書き終えたら「等号はいつ起こるか」を必ず確認させます。これだけで証明問題は得点源に変わります。オンラインの完全1対1、プロ講師のみが担当します。

数強塾オリジナル演習 追加5題|型10・型11・型14を埋める

上の入試実例では型01〜09・11〜13 を扱いました。ここでは実例が手薄な型10(平均値の定理)・型14(背理法)を中心に、落としやすい型11(等号成立条件)を加えて5問埋めます。すべて自作問題で、答えは具体値で検算してあります。

型10 平均値の定理(対数をはさむ)
のとき、次の不等式を証明せよ。

解答・解説を見る

「差」と「はさむ」が同時に出てきたら平均値の定理を疑います。
と書き直すのが第一歩。関数の値の差の形になりました。
で微分可能で。区間 で平均値の定理を使うと、ある )が存在して

次が急所。 の範囲から をはさみます。
より(逆数をとると大小が逆転)

なので、各辺に掛けても不等号の向きは変わりません。
 (証明終)
(検算: のとき ✓)
【平均値の定理の使いどころ】この定理は「差 ÷ 差」を「1点での微分係数」に変える装置です。

の値はわからなくても、範囲さえわかれば をはさめる。そこが強みです。
【型08 はさみうちとの違い】はさみうちは両側から近づけて極限を出す技。平均値の定理は差を1点の傾きに翻訳する技。この問題のように、翻訳してからはさむ、と続けて使うのが典型です。

型10 平均値の定理(三角関数の評価)
任意の実数 に対して、 が成り立つことを証明せよ。

解答・解説を見る

のときは両辺 で成立。以下 とし、一般性を失わず としてよい(入れかえても両辺が変わらないから。型13)。
はすべての実数で微分可能、
平均値の定理より、ある )が存在して

絶対値をとると

ここで だから
 (証明終)
(検算: のとき左辺 、右辺 ✓。 なら ✓)
【等号はいつ成立するか】 が必要ですが、 は開区間 の中にあり、 をとる点はとびとびにしかありません。 のとき等号は成立しません(成立するのは のときだけ)。
【この不等式の意味】 のグラフはどこを見ても傾きが を超えない。だから横に 進んでも、縦にはそれ以上動けません。「傾きの上限が、値の変化の上限を決める」——平均値の定理の使い方として、最も応用が利く形です。

型14 背理法(少なくとも1つは〜以上)
正の実数 について、 のうち少なくとも1つは 以上であることを証明せよ。

解答・解説を見る

「少なくとも1つは〜」は背理法の合図です。否定を作ると「すべてが〜でない」となり、条件が3本そろって扱いやすくなります。
【否定を仮定する】3つとも 未満であると仮定する。

【3本を足す】

(左辺を組みかえました。 が1つずつ現れるので、同じ文字どうしを組めます)
【相加相乗で下から押さえる】 より も同じ。
よって左辺
【矛盾】 となり矛盾。
したがって、3つのうち少なくとも1つは 以上である。(証明終)
(検算: のとき3つともちょうど なら で確かに 以上 ✓)
【なぜ背理法が効くのか】もとの主張は「3つのうちどれか」なので、どれを狙えばよいかわかりません。ところが否定すると3本の不等式が同時に手に入る。足せる材料が3つそろうので、一気に矛盾が作れます。
【組みかえに気づくか】足したあと同じ文字どうしで組み直すのが急所。この一手を思いつけば、あとは相加相乗だけです。

型14 背理法(任意の正数で成り立つなら)
実数 について、「どんな正の数 に対しても が成り立つ」とする。このとき であることを証明せよ。

解答・解説を見る

「どんな〜に対しても」の否定は「ある〜が存在して」。まず結論のほうを否定します。
【否定を仮定する】 でない、すなわち と仮定する。
このとき
【都合のよい を作る】仮定は「どんな正の数でも」なので、こちらが好きな値を選べます
と置く( より、これは正の数)。
条件より 。右辺を整理すると

よって 。両辺を 倍して 、すなわち
【矛盾】これは仮定 に反する。
したがって である。(証明終)
(検算: で試すと、 のとき。たしかに「どんな でも」は成り立ちません ✓)
の選び方が肝】 を選んだのは、矛盾が出るぎりぎりまで小さくするため。 そのままだと となってこれも矛盾なので、実はどちらでも構いません。
【なぜ ではなく なのか】 のときも条件は成り立つ( は常に真)ので、等号を除くことはできません。結論に等号を含めるかどうかは、具体例で確かめるのが確実です。
この論法は大学で極限の議論の土台になります。

型11 等号成立条件(不等式を3本掛ける)
正の実数 について、 を証明せよ。また、等号が成立するのはどのようなときか答えよ。

解答・解説を見る

各カッコを相加相乗で押さえます。

すべて正の数どうしの不等式なので、辺々を掛けても向きは変わりません。

より ) (証明終)
【等号成立を丁寧に】掛け合わせた不等式が等号になるのは、3本すべてが同時に等号のときだけです。



3つを同時に満たすのは のとき。
【答】等号成立は のとき
(検算:、右辺も で等号 ✓。 なら ✓)
【ここを落とす答案が多い】不等式を複数使ったときは、「等号が同時に成立するか」を必ず確かめてください。同時に成立しなければ、その下界には到達できません——つまり最小値ではないことになります。
【掛けてよい条件】不等式を辺々掛けられるのはすべての辺が正のときだけです。負の数が混じると向きが狂います。この問題で と断ってあるのは、そのためです。

14の型は「符号を断言できる形」への4つの道

本文の背骨のとおり、不等式の証明は符号が言い切れる量まで運ぶ作業です。運び方で型を並べ直すと、こうなります。

運び方 着地する形 該当する型
式変形で運ぶ 2乗の和・因数の積 型01・02・12・13
既知の不等式で運ぶ 相加相乗・コーシー 型03・04・09
関数の性質で運ぶ 最小値・傾き・面積 型05・07・型10
論理で運ぶ 帰納法・矛盾 型06・型14

そして型08(はさみうち)と型11(等号成立)は、どの道でも使う共通の作法です。

平均値の定理を疑う3つの合図(型10)

  1. という「差」が出てくる
  2. その差を で割った形が現れる
  3. 導関数の値が、ある範囲に収まる

この3つがそろえば、ほぼ確実に の出番です。 の値は求まらなくてよい。範囲さえわかればはさめます。

背理法を選ぶ場面(型14)

結論の形 否定すると
少なくとも1つは〜 すべてが〜でない(条件が全部そろう)
〜でない(存在しない) 存在する(対象を1つ手に入れられる)
どんな〜でも ある〜が存在する

共通しているのは「否定すると、手で触れる材料が増える」こと。直接示そうとするとどこから手をつけるか決まらない問題ほど、背理法が効きます。

等号成立の書き方(型11)

不等式を2本以上使ったら、必ず次の1行を書いてください。

等号成立は、すべての不等式で同時に等号が成り立つとき

同時に成立しなければ、その値には到達できません。「 を示した」だけではただの下界であって最小値ではない、という区別です。

使った不等式 等号条件
相加相乗 項がすべて等しい
コーシー・シュワルツ 2つの組が比例
中身が
三角不等式 符号がそろう

検算の型

  1. 具体的な数を入れる ──  など。不等号の向きを確認
  2. 等号成立の値を代入し直す ── 両辺が本当に一致するか
  3. 極端な値で試す ──  に近い値、大きい値で破れないか

3つ目が効きます。条件の書き落とし を忘れたなど)は、負の値を入れた瞬間に見つかります。

「なぜそうなるのか」へ

不等式の証明は、微分と論理の土台を押さえると見通しがよくなります。

関連ページ

大学受験数学|不等式を差・積・関数で証明する

不等式証明の独自演習4問|等号条件まで書き切る

不等式証明は公式名を挙げるだけでなく、両辺の差が非負になる理由と等号条件を最後まで示します。平方、コーシー、因数分解、微分の四つの方法を使い分けます。

大学受験の不等式証明で「正の量を掛けたことを書かない」「必要条件だけで等号を決める」「平方根や対数の定義域を省く」という失点を防ぐ、方法選択型の演習です。

図は左右にスクロールして全体を確認できます。

曲線y=ln xと接線y=x-1の比較図xが正の範囲で自然対数の曲線y=ln xが直線y=x-1以下にあり、点1,0だけで接することを示す図。 (1,0)y=x-1y=ln xすべてのx>0で ln x≦x-1
xが正の範囲で自然対数の曲線y=ln xが直線y=x-1以下にあり、点1,0だけで接することを示す図。

問1|二乗の差へ変形する基本証明

難度:標準学習点:両辺の差を完全平方へ変える

すべての実数a,bについて(a+b)²≦2(a²+b²)を証明し、等号条件を求めよ。

問1「二乗の差へ変形する基本証明」の解答・詳しい考え方を開く

答え:差2(a²+b²)-(a+b)²=(a-b)²≧0。等号はa=b。

  1. 右辺から左辺を引く方針を取る。
  2. 2(a²+b²)-(a+b)²=2a²+2b²-a²-2ab-b²と展開する。
  3. 整理するとa²-2ab+b²=(a-b)²になる。
  4. 実数の平方は0以上なので元の不等式が成り立つ。
  5. 等号は(a-b)²=0、すなわちa=bのとき、かつそのときに限る。

誤答分析:(a-b)²≧0から不等式を導いた後、等号条件を「a=bなら成立」だけでなく必要十分として書く。

別計算による検算:左辺を展開してa²+2ab+b²≦2a²+2b²とし、2ab≦a²+b²へ移項すると、これも(a-b)²≧0と同値である。

問2|コーシーの不等式と等号条件

難度:標準〜発展学習点:正の変数の逆数を組にして評価する

正の実数a,b,cについて(a+b+c)(1/a+1/b+1/c)≧9を証明し、等号条件を求めよ。

問2「コーシーの不等式と等号条件」の解答・詳しい考え方を開く

答え:コーシーの不等式より9以上。等号はa=b=c。

  1. a,b,c>0なので平方根√a,√b,√cとその逆数を実数として扱える。
  2. コーシーの不等式(Σu²)(Σv²)≧(Σuv)²を使う。
  3. u=(√a,√b,√c)、v=(1/√a,1/√b,1/√c)と置く。
  4. 左辺は問題の積、右辺は(1+1+1)²=9となる。
  5. 等号条件u=kvからa=b=cを得、正の同値な場合に実際に等号となる。

誤答分析:等号条件を単に「比例」と書いて終えず、√a=k/√aからa=kが三変数で共通になることまで示す。

別計算による検算:積を展開すると3+a/b+a/c+b/a+b/c+c/a。a/b+b/a≧2など三組を足せば3+6=9以上となり、各組の等号からa=b=cを得る。

問3|分母を払って因数分解する証明

難度:発展学習点:正の量を掛ける理由と因数分解を明示する

正の実数x,yについてx²/y+y²/x≧x+yを証明し、等号条件を求めよ。

問3「分母を払って因数分解する証明」の解答・詳しい考え方を開く

答え:両辺の差は(x+y)(x-y)²/(xy)≧0。等号はx=y。

  1. x,y>0だからxy>0であり、不等号の向きを変えず両辺へxyを掛けられる。
  2. 示すべき式はx³+y³≧xy(x+y)となる。
  3. 左辺から右辺を引いてx³+y³-x²y-xy²を作る。
  4. 因数分解すると(x+y)(x-y)²となる。
  5. x+y>0かつ平方は0以上なので成立し、等号はx=yのときに限る。

誤答分析:分母を払う際、xyが正であることを書かないと不等号の向きが保証されない。

別計算による検算:元の差を通分すると[x³+y³-xy(x+y)]/(xy)=(x+y)(x-y)²/(xy)。分子・分母の符号から直接非負を確認できる。

問4|対数関数と接線の不等式

難度:発展学習点:導関数の符号から全域の最小値を示す

x>0についてln x≦x-1を証明し、等号条件を求めよ。

問4「対数関数と接線の不等式」の解答・詳しい考え方を開く

答え:x-1-ln x≧0。等号はx=1。

  1. 定義域x>0でg(x)=x-1-ln xと置く。
  2. 導関数はg'(x)=1-1/x=(x-1)/xである。
  3. x>0なので0<x<1ではg'<0、x>1ではg'>0となる。
  4. gはx=1まで減少し、その後増加するためx=1で最小となる。
  5. g(1)=0だからg(x)≧0、すなわちln x≦x-1で、等号はx=1だけである。

誤答分析:ln xの定義域x>0を省かない。停留点を求めただけで最小とせず、前後の導関数の符号を確認する。

別計算による検算:x≧1ではg(x)=∫[1,x](1-1/t)dtで被積分関数が非負。0<x≦1ではg(x)=-∫[x,1](1-1/t)dtで区間内の被積分関数が非正だから、どちらもg(x)≧0となる。


📝 この型が実際に出た入試問題(6問)

「不等式の証明」の型が実際の入試でどう出たかを、数強塾が全問解説を公開している年度から拾いました。各行の「解説を読む」から、その問題の解説へ直接移動できます。型を読んだあとに実出題で当てると、どこまで通用する判断なのかがはっきりします。

大学・年度 出題テーマ 難易度 解説
大阪大学 2015年度 文系第1問 不等式の証明(三角置換) 標準 解説を読む
大阪大学 2015年度 理系第2問 不等式の証明(文理共通) 標準 解説を読む
京都大学 2008年度 定積分の不等式 標準 解説を読む
東京大学 1995年度 定積分で定まる関数の凸性を示す不等式 標準 解説を読む
奈良女子大学 2016年度 【Ⅵ】(生活環境学部)互除法の構造と不等式の証明 解説を読む
順天堂大学(数学) 2016年度 第3問(不等式の証明・記述式) 解説を読む

難易度は数強塾の見立てです(「—」は難易度を掲載していない年度)。大学別の年度一覧と出題傾向は過去問解説の総索引から、この型の全体像は解法パターン事典のハブから確認できます。

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