条件付き確率は、確率の単元でいちばん誤解されやすい主題です。「〜という条件の下で」の一言が入っただけで、それまで正しく数えられていた人の答えが急に合わなくなる。理由ははっきりしています。この一言は、確率の分母をまるごと取り替えているからです。独立も反復試行も同じ話の別の側面で、独立とは「分母を取り替えても割合が変わらない」こと、反復試行とは「毎回、分母が元どおりに戻る」ことにほかなりません。このページは、その3つを12の型に分けて並べた辞典です。型は当てはめるための箱ではなく、「いま自分は、どの世界の中で割合を数えているのか」を見失わないための道具として並べています。横浜国立大学・神戸大学・滋賀大学・群馬大学・岡山大学・一橋大学の入試問題で、その働きを確かめます。
このページの位置づけ——概観は第1層、深掘りはここ
確率という単元の全体像は、第1層の確率の解法パターン全12型で概観できます。そこでは条件付き確率も反復試行も、12型のうちの1つずつとして要点だけを扱いました。このページは、その3つだけを取り出して12型に細分し、深掘りする第2層です。単元の地図がほしい方は第1層へ、分母をどこに置くかで迷っている方はこのページへ。全体の目次は解法パターン事典からどうぞ。
このページの12型
- 条件付き確率の定義(分母が変わる)
- 乗法定理
- 独立の判定
- 反復試行の確率
- 反復試行の確率が最大となる回数
- 原因の確率(結果から原因をたどる)
- くじの公平性(引く順番によらない)
- 復元抽出と非復元抽出
- 期待値と条件付き期待値
- 「少なくとも1回」と独立
- 独立でない試行の扱い
- 条件付き確率の落とし穴(全体集合の取り違え)
発展問題:12型の続きではなく、北大入試を使った独立解説です。北大の良問 038|玉の状態遷移と条件付き確率
1. 背骨——確率は「どの世界の中の割合か」で決まる
確率とは割合です。そして割合という言葉は、「何に対する割合か」を決めない限り値が定まりません。ふだん「さいころで1が出る確率は \(\dfrac16\)」と言えるのは、何も断らないまま全事象を分母に置く約束をしているからです。条件付き確率とは、その約束を破って分母を「条件をみたす世界」へ取り替える操作にほかなりません。新しい公式が増えたのではなく、暗黙にしていた分母の話が表に出てきただけなのです。
この4つで、テーマ全体が書ける
条件付き確率 \(P_A(B)=\dfrac{P(A\cap B)}{P(A)}\)(\(P(A)\gt 0\))
乗法定理 \(P(A\cap B)=P(A)\,P_A(B)\)
独立 \(P(A\cap B)=P(A)\,P(B)\)。これは \(P_A(B)=P(B)\) と同値
反復試行 確率 \(p\) の事柄が \(n\) 回中ちょうど \(k\) 回起こる確率は \({}_n\mathrm{C}_k\,p^{k}(1-p)^{n-k}\)
なぜ \(P(A)\) で割るのかを言えるようにしてください。条件 \(A\) の世界で起こりうるのは \(A\) の中身だけですが、その確率を全部足しても \(P(A)\) にしかなりません。確率は合計が1でなければ働かないので、\(P(A)\) で割って目盛りを引き直す。割り算は目盛りの付け替えにすぎないのです。だから分子と分母を同じ母数で数えておけば母数は約分で消え、結局は「条件をみたす個数」に対する「目的をみたす個数」の比になります。
独立とは何かも、言葉で言えるようにしてください。独立は「関係がない」という漠然とした話ではなく、「\(A\) が起きたと知らされても、\(B\) の見通しが変わらないこと」、式で書けば \(P_A(B)=P(B)\) です。両辺に \(P(A)\) を掛ければ \(P(A\cap B)=P(A)P(B)\)、つまり掛け算の公式は定義そのものではなく、独立であることの言い換えにすぎません。「確率だから掛ける」のではなく「分母が動かないから掛けてよい」のです。
ここから反復試行の公式も導けます。毎回が独立なら、ひとつの並びの確率は順番を入れ替えても \(p^{k}(1-p)^{n-k}\) のまま。あとは同じ値のものが何本あるかを数えるだけで、それが \({}_n\mathrm{C}_k\) です。逆に独立でないときは、2回目の確率が1回目を知る前には決まりません。分母が動くからです。ところが1回目の結果をひとつに固定すれば、その小さな世界の中では分母が確定します。場合分けとは、分母が動く状況を、分母が動かない世界の集まりに切り分ける操作なのです。
こうして12の型はすべて「分母をどこに置くか」という一本の背骨に刺さります。条件付き確率は分母を取り替える型、独立は分母が動かないと確かめる型、反復試行は分母が毎回戻ることを使う型、原因の確率は分母を「結果が起きた世界」に置く型。公式を12個覚えるのではなく、分母の置き方を12通り見ておく——それがこのページの読み方です。
そのうえで申し上げておきたいことがあります。型は考えなくて済ませる道具ではありません。難関大学の問題を手際よく解く人は、その場で無からひらめいているわけではない。過去に何百回も使われてきた「型」から予想して、思考する量を減らすことで、手際よく解法を思い付いている場合もあるのです。予想が当たるかは自分の頭で確かめるしかありません。型が減らすのは考える範囲であって考えることそのものではない——この順序さえ取り違えなければ、型は強力な味方になります。
この3つの取り違えで、ほとんどの失点が起きる
①\(P_A(B)\) と \(P(A\cap B)\) の混同 前者の分母は \(P(A)\)、後者の分母は全事象。「条件の下で」とあれば分母は必ず縮みます。
②独立と排反の混同 排反は \(P(A\cap B)=0\)。片方が起きたら他方は起きないのですから、これ以上なく強く影響し合っています。排反な事象は(確率が0でない限り)独立ではありません。
③「ちょうど \(k\) 回」と「\(k\) 回目までに」の混同 反復試行の公式が答えるのは前者だけ。後者は和をとるか余事象に回します。
2. 手順——型を選ぶまでの判断の流れ
1分母はどこかを最初に決める。「〜という条件の下で」「〜であったとき」があれば、分母は全事象ではなくその条件をみたす世界です(型01・型12)。
2試行は1回か、繰り返しか。繰り返しなら、次に問うのは「前の結果は、次の回の確率を変えるか」だけ。戻す抽出なら変わらず、中身が入れ替わる設定なら変わります(型08)。
3変わらないなら反復試行、変わるなら場合分け+乗法定理。前者は \({}_n\mathrm{C}_k\,p^{k}(1-p)^{n-k}\)(型04・型05・型10)、後者は1回目で場合分けして \(P(A)P_A(B)\) を足し合わせます(型02・型11)。
4結果を知らされて原因を問われていないか。時間をさかのぼる問いなら分母は結果側です(型06)。最後に、答えを「何に対する割合か」で言い直して検算します。
手が止まるのは公式を忘れたからではなく、分母をどこに置くかを決めないまま計算を始めたときです。答案の1行目に「全事象は \(6^{3}\) 通り」「条件をみたすのは106通り」と書く習慣を付けるだけで、この分野の失点は目に見えて減ります。そして分母を決めたら分子も同じ土俵で数えること。通り数と確率が混線した答案が本当に多いのです。
3. 解法パターン全12型
型01 条件付き確率の定義(分母が変わる)
01分母を、条件をみたす世界に取り替える
顔つき 「〜という条件の下で、〜となる確率」。
中身 \(P_A(B)=\dfrac{P(A\cap B)}{P(A)}\)。同じ母数で数えれば \(\dfrac{n(A\cap B)}{n(A)}\) と個数の比で済みます。
なぜ効くか 世界が \(A\) に縮んでも、その中の確率の合計は \(P(A)\) しかない。割るのは目盛りを1に戻すためです。すると全事象の総数は分子と分母で必ず約分されるので、最後まで割り算をせず個数のまま進められるという得が生まれます。
型02 乗法定理
02「まずこうなって、次にこうなる」を掛けていく
顔つき 「まずAが取り出し、次にBが取り出す」段階のある試行。
中身 \(P(A\cap B)=P(A)\,P_A(B)\)。3段階なら \(P(A)\,P_A(B)\,P_{A\cap B}(C)\)。
なぜ効くか 型01の分母を払っただけの式ですが向きが逆です。定義は同時確率から条件付き確率を作り、乗法定理は条件付き確率を積み上げて同時確率を作る。現実の試行は時間の順に進むので、後者が手の動きと一致します。だから枝に書く確率はそこまでの結果を前提とした条件付き確率でなければなりません。
型03 独立の判定
03知らされても見通しが変わらないなら独立
顔つき 「2個のさいころ」「2回続けて投げる」「AとBは独立か」。
中身 \(P(A\cap B)=P(A)P(B)\) を確かめる。同値な言い方は \(P_A(B)=P(B)\)。
なぜ効くか 独立と分かった瞬間に、複数回の試行をまとめて1つの同様に確からしい世界として扱えます。「独立だから掛ける」ではなく「独立だから母数を掛け算で作ってよい」——この順で理解すると、独立でない設定で何が使えなくなるのかが正確に分かります。
型04 反復試行の確率
04「1本の確率」×「何本あるか」に分ける
顔つき 「\(n\) 回中ちょうど \(k\) 回」「\(n\) 回目で初めて〜になる」。
中身 \({}_n\mathrm{C}_k\,p^{k}(1-p)^{n-k}\)。「\(n\) 回目でちょうど決着」なら最後の1回を固定し、残り \(n-1\) 回を数えます。
なぜ効くか 独立なので順番を入れ替えても1本の並びの確率は同じ。だから確率の計算が純粋な数え上げに化けます。数え上げ側と重み側が分離しているので、条件が追加されたときにいじるのは数え上げ側だけ。一橋大学と岡山大学の問題は、この一手で所要時間が何倍も変わります。
型05 反復試行の確率が最大となる回数
05差ではなく比をとって1と比べる
顔つき 「確率 \(p_k\) を最大にする \(k\)」「\(x_n\) が最大となる \(n\)」。
中身 \(\dfrac{p_{k+1}}{p_k}\) を計算し、1より大きいか小さいかで増減を判定する。
なぜ効くか 二項係数と累乗の積は差をとっても何も約分されません。ところが比をとれば階乗が大量に消え、多くは1次式の分数まで簡単になり、不等式1本で増減が確定します。掛け算でできている量は比で調べる——等比数列や対数微分と同じ発想です。失点はほとんど定義域の見落としで起きます。
型06 原因の確率(結果から原因をたどる)
06分母は「結果が起きた世界」ぜんぶ
顔つき 「取り出した玉が赤だった。それが袋Aから出た確率」。
中身 \(P_B(A_i)=\dfrac{P(A_i)\,P_{A_i}(B)}{\displaystyle\sum_j P(A_j)\,P_{A_j}(B)}\)。分母は結果に至る全経路の和。
なぜ効くか 時間は「原因→結果」に流れますが、確率の分母は「自分が知っていること」に取るのが鉄則です。結果を知らされた以上、世界は結果が起きた場合に縮んでいる。だから樹形図を書いて結果に届いた枝を全部拾い、そのうち目的の原因を通った枝の割合を出す。公式を覚えるより速く、正確です。
型07 くじの公平性(引く順番によらない)
07結果を見ないなら、何番目でも確率は同じ
顔つき 「\(n\) 本中 \(k\) 本が当たり。2番目に引く人が当たる確率」。
中身 何番目でも \(\dfrac{k}{n}\)。乗法定理で足しても出ますが、一列に並べたと考えるほうが速い。
なぜ効くか 無作為に並べて前から配ると考えれば、特定の位置に当たりが来る確率は位置によりません。肝心なのは前の人の結果を見ていないこと。見ていないなら世界は縮まず、条件付き確率になりません。逆に「1番目が当たった」と知らされた瞬間、確率は \(\dfrac{k-1}{n-1}\) に変わります。変わるのは、こちらの持つ情報のほうです。
型08 復元抽出と非復元抽出
08「戻すか戻さないか」は「分母が戻るか」の言い換え
顔つき 「取り出した玉をもとに戻す」「取り出した玉は戻さない」。
中身 戻すなら独立で反復試行へ。戻さないなら分母が減るので、乗法定理で順に掛けるか、まとめて組合せで数える。
なぜ効くか この一言は設定の描写というより「次の回の分母が元に戻るかどうか」の宣言です。戻らない場合には、さらに順序が答えに関係するかという判断が要ります。関係しないなら最後に手元にある組合せだけを一気に数えられ、関係するなら乗法定理で1回ずつ追う。ここを最初に決めると計算量が大きく変わります。
型09 期待値と条件付き期待値
09期待値の問題は、実質「分布を求めよ」
顔つき 「試合数の期待値を求めよ」「得点の期待値」。
中身 \(E[X]=\displaystyle\sum_k x_k\,p_k\)。とりうる値を全部挙げ、それぞれの確率を出して表を作る。
なぜ効くか 期待値そのものは足し算にすぎず、難しさは全部分布を作るところにあります。だから「期待値を求めよ」は「分布を求めよ」と読み替える。分布ができたら確率の合計が1になるかを必ず確かめます。これは検算ではなく作業の一部で、合わなければ場合分けに漏れがあります。
型10 「少なくとも1回」と独立
10反対側を数えるほうが軽いなら、迷わず余事象
顔つき 「少なくとも1回は当たる確率」。
中身 \(1-(1-p)^{n}\)。より一般に、数え上げる場合が少ないほうを数えて1から引く。
なぜ効くか 「少なくとも1回」は枝分かれしますが、その否定「1回も起こらない」はただ1通りの筋書きです。場合の数が最小になる方向を選ぶという判断が、ここに現れています。一発で書けるのは各回が独立だからで、独立でなければ余事象も掛け算になりません(そのときは型11へ)。
型11 独立でない試行の扱い
111回目を固定して、動かない小さな世界を作る
顔つき 「取り出した石の代わりに別の石を入れる」型の2段階試行。
中身 1回目の結果で場合分けし、(1回目の確率)\(\times\)(その下での2回目の確率)を作り、排反なので最後に足す。
なぜ効くか 独立でないとき確率をそのまま掛けられないのは、分母が動くからです。しかし1回目の結果をひとつに固定すれば、その世界の中では2回目の分母が確定します。「独立でない」は「解けない」ではなく「まだ場合分けが足りない」という合図なのです。
型12 条件付き確率の落とし穴(全体集合の取り違え)
12答えを出したら「何に対する割合か」を言い直す
顔つき 「〜という条件の下で〜となる確率」。分母を全事象のままにするのが罠。
中身 \(P_A(B)\neq P(A\cap B)\)。答案では、分母に何を置いたかを言葉で1行書く。
なぜ効くか この取り違えは検算で自動的に見つかります。第一に、\(P(A)\leqq 1\) で割るのだから \(P_A(B)\geqq P(A\cap B)\) が必ず成り立つ。条件を付けたのに値が小さくなったら誤りです。第二に、条件 \(A\) の下では \(B\) と「\(B\) でない」を足すと1になります。どちらも数秒で終わります。
4. 実際の入試で確かめる
この単元の解法パターンは全12型で、下にある入試の実例6問で確かめているのは9型です。このページの追加演習が3型を埋めています。1問が複数の型にまたがることも、同じ型を複数の実例で扱うこともあるため、実例の数と型の数は必ずしも一致しません。
ここからは実際に出題された問題で型を確かめます。問題文は各大学が公表した入試問題を、解説のために引用したものです。解答・解説は数強塾が独自に作成したもので、大学が公表した解答ではありません。掲載した数値はすべて、当塾で独立に解いたうえで Python(Fraction による厳密計算・全数え上げ・sympy による文字式の展開)で検算し、さらに別の担当者が独立に解き直して一致することを確かめています。
横浜国立大学 2019年度 ―― 型01・型12。分母を数え直すだけの問題
【問題】横浜国立大学 2019年度 前期日程
赤色、白色、黄色の3つのさいころを同時に投げ、それぞれのさいころの出た目を \(x,\ y,\ z\) とする。\(x\) と \(y\) の最小値を \(m\)、最大値を \(M\) とする。
(1) \(m \leqq z \leqq M\) となる確率を求めよ。
(2) \(m \leqq z \leqq M\) という条件の下で、\(M-m=3\) となる条件付き確率を求めよ。
【解答】
(1) \(\dfrac{53}{108}\) (2) \(\dfrac{12}{53}\)
(1) 全事象は \(6^{3}=216\) 通り。\(x,y\) を先に固定するのが要領です。\(m,M\) は \(x,y\) だけで決まるので、条件をみたす \(z\) の個数は \(M-m+1=\left|x-y\right|+1\) と \(\left|x-y\right|\) だけで決まります。\(\left|x-y\right|=d\) となる \((x,y)\) は \(d=0\) が6通り、\(d=1,2,3,4,5\) がそれぞれ \(10,8,6,4,2\) 通りですから
\(\sum\left(\left|x-y\right|+1\right)=\left(1\cdot 10+2\cdot 8+3\cdot 6+4\cdot 4+5\cdot 2\right)+36=70+36=106\)
よって \(\dfrac{106}{216}=\dfrac{53}{108}\)。
(2) \(A\) を「\(m\leqq z\leqq M\)」、\(B\) を「\(M-m=3\)」とおきます。いま分母は全事象ではなく \(A\) です。\(\left|x-y\right|=3\) は6通りで、そのそれぞれに \(z\) が4通りなので \(P(A\cap B)=\dfrac{24}{216}\)。したがって
\(P_A(B)=\frac{P(A\cap B)}{P(A)}=\frac{24/216}{106/216}=\frac{24}{106}=\frac{12}{53}\)
この問題で使った型
型01・型12 \(216\) が約分で消え、結局この問題は「106通りのうち24通り」と数えているだけになります。(2) を \(\dfrac{24}{216}=\dfrac19\) と答えるのが最も多い誤答で、分母は216ではなく106です。
検算のしかた
\(216\) 通りを全列挙すると条件をみたすのは106通り、うち \(M-m=3\) は24通りで、Fraction による厳密計算でも \(\dfrac{53}{108}\)、\(\dfrac{12}{53}\)。\(\sum\left|x-y\right|=70\) も和の計算で確認しました。さらに \(\dfrac{12}{53}+\dfrac{41}{53}=1\) と、分母が53のままで和が1になることが、分母を正しく取り替えた証拠です。
神戸大学 2013年度 ―― 型03・型04。反復試行で「偶数回だけ」を取り出す
この問題は 確率漸化式・漸化式の全型・確率漸化式・漸化式の全型 のページでも扱っています。同じ問題でも、そちらは単元全体の中での位置づけ、ここではこのテーマに絞った読み方をしています。二つを見比べると、同じ問題文から引き出せるものが1つではないことが分かります。
【問題】神戸大学 2013年度 前期日程
動点 P が、正方形 ABCD の頂点 A から出発し、さいころをふるごとに、次の規則により正方形のある頂点から他の頂点に移動する。
・出た目の数が2以下なら辺 AB と平行な方向に移動する。
・出た目の数が3以上なら辺 AD と平行な方向に移動する。
\(n\) を自然数とするとき、さいころを \(2n\) 回ふった後に動点 P が A にいる確率を \(a_n\)、C にいる確率を \(c_n\) とする。次の問いに答えよ。
(1) \(a_1\) を求めよ。
(2) さいころを \(2n\) 回ふった後、動点 P は A または C にいることを証明せよ。
(3) \(a_n,\ c_n\) を \(n\) を用いてそれぞれ表せ。
(4) \(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n,\ \lim_{n\to\infty}c_n\) をそれぞれ求めよ。
【解答】
(1) \(a_1=\dfrac59\) (3) \(a_n=\dfrac12\left\{1+\left(\dfrac19\right)^{n}\right\},\ c_n=\dfrac12\left\{1-\left(\dfrac19\right)^{n}\right\}\) (4) どちらも \(\dfrac12\)
横(AB 方向)に動く確率は \(\dfrac26=\dfrac13\)、縦(AD 方向)は \(\dfrac46=\dfrac23\)。毎回まっさらな条件で振られるので各回は独立です(型03)。以下 \(p=\dfrac13,\ q=\dfrac23\)。
(1) 2回で A に戻るのは(横, 横)か(縦, 縦)だけなので \(a_1=\left(\dfrac13\right)^{2}+\left(\dfrac23\right)^{2}=\dfrac59\)。
(2) A を \((0,0)\)、B を \((1,0)\)、C を \((1,1)\)、D を \((0,1)\) と表し、成分を \(2\) で割った余りで見ます。横の移動は第1成分を、縦の移動は第2成分を \(1\) だけ変えます(\(\bmod 2\))。\(2n\) 回のうち横が \(h\) 回、縦が \(2n-h\) 回なら位置は \(\left(h \bmod 2,\ (2n-h)\bmod 2\right)\)。\(h+(2n-h)=2n\) は偶数ですから\(h\) と \(2n-h\) の偶奇は一致し、位置は \((0,0)\) すなわち A か \((1,1)\) すなわち C に限られます。(証明終)
(3) (2) から「A にいる」と「横に動いた回数 \(h\) が偶数」は同じです。よって \(a_n=\displaystyle\sum_{h=0,2,4,\ldots,2n}{}_{2n}\mathrm{C}_h\,p^{h}q^{2n-h}\)、つまり反復試行の確率を偶数番目だけ足した和を求めればよい。ここで二項定理を2本立てるのが決定版です。
偶数番目だけを取り出す定石
\((q+p)^{2n}=\sum_{h=0}^{2n}{}_{2n}\mathrm{C}_h\,p^{h}q^{2n-h}=1,\qquad (q-p)^{2n}=\sum_{h=0}^{2n}{}_{2n}\mathrm{C}_h\,(-p)^{h}q^{2n-h}=\left(\frac13\right)^{2n}\)
辺々加えると \(h\) が奇数の項は打ち消し合い、偶数の項だけが2倍で残ります。引けば逆に奇数の項だけが残ります。
したがって \(a_n=\dfrac12\left\{1+\left(\dfrac13\right)^{2n}\right\}=\dfrac{9^{n}+1}{2\cdot 9^{n}}\)。(2) より \(a_n+c_n=1\) なので \(c_n=\dfrac{9^{n}-1}{2\cdot 9^{n}}\)。(\(n=1\) とすると \(a_1=\dfrac{10}{18}=\dfrac59\) で (1) と一致。)(4) \(\left(\dfrac19\right)^{n}\to 0\) ですから \(\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\dfrac12,\ \lim_{n\to\infty}c_n=\dfrac12\)。
この問題で使った型
型03・型04 各回が独立だと確認したからこそ \(2n\) 回全体を積で書けます。そして位置が「横に動いた回数の偶奇」だけで決まると見抜いた瞬間、\(2n\) 回の経路を追う必要がなくなります。なお漸化式でも解け、その道筋は漸化式の解法パターン全20型と確率漸化式の解法パターン全12型にあります。
検算のしかた
4頂点を状態として Fraction による厳密計算で \(2n=2,4,6,8\) 回まで回すと、A の確率は \(\dfrac59,\ \dfrac{41}{81},\ \dfrac{365}{729},\ \dfrac{3281}{6561}\) で \(\dfrac{9^{n}+1}{2\cdot 9^{n}}\) と完全に一致。C も \(\dfrac{9^{n}-1}{2\cdot 9^{n}}\) と一致し、B と D の確率はすべて \(0\) で (2) の主張も裏づけられました。
滋賀大学 2007年度 ―― 型03・型10。独立だから母数を掛け算で作れる
【問題】滋賀大学 2007年度 前期日程
大、小2個のさいころを同時に投げるとき、出た目の数をそれぞれ \(X,\ Y\) とする。\(X\) を実部、\(Y\) を虚部とする複素数 \(Z=X+Yi\) を作る。このとき、次の問いに答えよ。
(1) 1回投げて作られる複素数 \(Z\) が、\(Z\overline{Z}>16\) を満たす確率を求めよ。ただし、\(Z=X+Yi\) に対して \(\overline{Z}=X-Yi\) とする。
(2) 2回続けて投げて作られる複素数を、順に \(Z_1=X_1+Y_1i\)、\(Z_2=X_2+Y_2i\) とする。このとき、\(X_1\le2\) を満たし、積 \(Z_1Z_2\) の実部が0になる確率を求めよ。
【解答】
(1) \(\dfrac{7}{9}\) (2) \(\dfrac{31}{1296}\)
(1) \(Z\overline{Z}=X^{2}+Y^{2}\) ですから条件は \(X^{2}+Y^{2}\gt 16\)。ここは余事象で数えます(型10)。\(X\geqq 4\) なら \(X^{2}+Y^{2}\geqq 16+1=17\) で不適、\(Y\geqq 4\) も同様なので、\(X\leqq 3\) かつ \(Y\leqq 3\) だけ調べれば十分です。
\((X,Y)=(1,1),(1,2),(1,3),(2,1),(2,2),(2,3),(3,1),(3,2)\)
の8通り(\((3,3)\) は \(18\gt 16\) なので余事象には入りません)。全事象は \(36\) 通りですから \(1-\dfrac{8}{36}=\dfrac79\)。条件をみたす側を直接数えると28通り。8通りと28通りのどちらを書き出すか、という判断が型10です。
(2) \(Z_1Z_2=\left(X_1X_2-Y_1Y_2\right)+\left(X_1Y_2+Y_1X_2\right)i\) ですから、実部が0とは \(X_1X_2=Y_1Y_2\) のこと。2回の試行は独立なので(型03)、\(\left(X_1,Y_1,X_2,Y_2\right)\) の \(6^{4}=1296\) 通りが同様に確からしいとしてよい——ここが要です。\(X_1=1\) のときは \(X_2=Y_1Y_2\) で、積が \(1,2,3,4,5,6\) となる \((Y_1,Y_2)\) はそれぞれ \(1,2,2,3,2,4\) 通り、計14通り。\(X_1=2\) のときは \(2X_2=Y_1Y_2\) で、積が \(2,4,6,8,10,12\) となる \((Y_1,Y_2)\) はそれぞれ \(2,3,4,2,2,4\) 通り、計17通り。2つは排反ですから \(\dfrac{14+17}{1296}=\dfrac{31}{1296}\)。
この問題で使った型
型03・型10 「2回続けて投げる」なら独立、だから母数を \(6^{2}\times 6^{2}=1296\) と掛け算で作ってよい。当たり前に見えて、これが独立試行の積の法則そのものです。(1) は条件のまま数えると手数が3倍以上になり、不等号の向きを見て軽いほうから数える判断が効きます。
検算のしかた
(1) は36通りを全列挙して条件をみたすのが28通り、\(\dfrac{28}{36}=\dfrac79\)。(2) は1296通りを全列挙して31通りで、内訳も \(X_1=1\) が14通り、\(X_1=2\) が17通りと手計算に一致しました。合計だけでなく内訳まで一致させると、偶然の一致を排除できます。
群馬大学 2016年度 ―― 型02・型11。独立でない2段階試行の代表例
この問題は 確率 のページでも扱っています。同じ問題でも、そちらは単元全体の中での位置づけ、ここではこのテーマに絞った読み方をしています。二つを見比べると、同じ問題文から引き出せるものが1つではないことが分かります。
【問題】群馬大学 2016年度 前期日程
袋の中に4個の白の石と4個の黒の石が入っている。まずA君がこの袋から3個の石を無作為に取り出し、代わりに2個の白の石と1個の黒の石を袋に入れる。次にB君がこの袋から3個の石を無作為に取り出し、代わりに1個の白の石と2個の黒の石を袋に入れる。次の問いに答えよ。
(1) A君が1個の白の石と2個の黒の石を取り出す確率を求めよ。
(2) この試行の後に、袋の中の白の石と黒の石の個数が同じになる確率を求めよ。
【解答】
(1) \(\dfrac{3}{7}\) (2) \(\dfrac{177}{392}\)
(1) A君の取り出し方は \({}_8\mathrm{C}_3=56\) 通り、白1個・黒2個は \({}_4\mathrm{C}_1\cdot{}_4\mathrm{C}_2=24\) 通りですから \(\dfrac{24}{56}=\dfrac37\)。
(2) まず「同数」を式に翻訳します。取り出す数と入れる数がどちらも3個なので袋の中はつねに8個、だから「同数」とは白4個・黒4個のこと。A君が白 \(a\) 個を取り白2個・黒1個を入れると袋は白 \(6-a\) 個・黒 \(2+a\) 個、続けてB君が白 \(b\) 個を取り白1個・黒2個を入れると袋は白 \(7-a-b\) 個・黒 \(1+a+b\) 個。よって条件は \(7-a-b=4\)、すなわち \(a+b=3\) で、調べる場合が4通りに絞られました。
ここで大事なのはB君の確率がA君の結果で変わること。独立でないので、A君が白 \(a\) 個を取った世界に入ってからB君の確率を計算し、乗法定理でつなぎます(型02・型11)。A君の確率は \(\dfrac{{}_4\mathrm{C}_a\cdot{}_4\mathrm{C}_{3-a}}{56}\)、その下でのB君の確率は \(\dfrac{{}_{6-a}\mathrm{C}_b\cdot{}_{2+a}\mathrm{C}_{3-b}}{56}\) ですから、\((a,b)=(0,3),(1,2),(2,1),(3,0)\) について
\(\frac{4}{56}\cdot\frac{20}{56}+\frac{24}{56}\cdot\frac{30}{56}+\frac{24}{56}\cdot\frac{24}{56}+\frac{4}{56}\cdot\frac{10}{56}=\frac{80+720+576+40}{3136}=\frac{1416}{3136}=\frac{177}{392}\)
(B君側の \(20,30,24,10\) は順に \({}_6\mathrm{C}_3,\ {}_5\mathrm{C}_2\cdot{}_3\mathrm{C}_1,\ {}_4\mathrm{C}_1\cdot{}_4\mathrm{C}_2,\ {}_5\mathrm{C}_3\)。4つは排反なのでそのまま足せます。)
この問題で使った型
型02・型11 B君の袋はA君の結果で4通りに変わります。ところがA君の結果を1つに固定した瞬間、袋の中身は確定し、B君の確率はふつうの組合せで書ける。場合分けの正体は、動く分母を止めることです。条件が \(a+b=3\) という1本の式に化けたのも見どころで、最初に「同数」を翻訳しておくと調べる場合が一気に減ります。
検算のしかた
A君・B君の取り出しを Fraction による厳密計算ですべて展開し、白と黒の個数が一致するものを合計すると \(\dfrac{177}{392}\fallingdotseq 0.45153\)。各段階で袋の石が必ず8個に戻ることも毎回確認しました。「つねに8個」が崩れていたら翻訳の時点で誤りなので、この確認は非常に有効です。
岡山大学 2014年度 ―― 型04・型09。最後の1回を固定してから数える
この問題は 確率分布と統計的な推測 のページでも扱っています。同じ問題でも、そちらは単元全体の中での位置づけ、ここではこのテーマに絞った読み方をしています。二つを見比べると、同じ問題文から引き出せるものが1つではないことが分かります。
【問題】岡山大学 2014年度 前期日程
\(\mathrm{A}\) と \(\mathrm{B}\) が続けて試合を行い、先に3勝した方が優勝するというゲームを考える。1試合ごとに \(\mathrm{A}\) が勝つ確率を \(p\)、\(\mathrm{B}\) が勝つ確率を \(q\)、引き分ける確率を \(1-p-q\) とする。
(1) 3試合目で優勝が決まる確率を求めよ。
(2) 5試合目で優勝が決まる確率を求めよ。
(3) \(p=q=\dfrac13\) としたとき、5試合目が終了した時点でまだ優勝が決まらない確率を求めよ。
(4) \(p=q=\dfrac12\) としたとき、優勝が決まるまでに行われる試合数の期待値を求めよ。
【解答】
(1) \(p^{3}+q^{3}\) (2) \(6p^{3}(1-p)^{2}+6q^{3}(1-q)^{2}\) (3) \(\dfrac{47}{81}\) (4) \(\dfrac{33}{8}\)
(1) 3試合目で決まるのは \(\mathrm{A}\) か \(\mathrm{B}\) の3連勝だけですから \(p^{3}+q^{3}\)。
(2) 「5試合目で決まる」は「5試合目に勝者が3勝目を挙げる」と読み替えます(型04)。\(\mathrm{A}\) が優勝する場合、5試合目は \(\mathrm{A}\) の勝ち(確率 \(p\))で、最初の4試合でちょうど2勝しています。
引き分けは「勝たない」にまとめる
\(\mathrm{A}\) が勝たない確率は \(q+(1-p-q)=1-p\)。\(q\) と \(1-p-q\) を別々に扱おうとすると一気に煩雑になります。知りたいのは \(\mathrm{A}\) の勝ち数だけだからです。最初の4試合は \({}_4\mathrm{C}_2\,p^{2}(1-p)^{2}\)、これに5試合目の \(p\) を掛けて \(6p^{3}(1-p)^{2}\)。
このとき最初の4試合で \(\mathrm{B}\) の勝ちは高々2なので、途中で \(\mathrm{B}\) が3勝して終わることはありません。\(\mathrm{B}\) が優勝する場合も同様で、両者は排反ですから \(6p^{3}(1-p)^{2}+6q^{3}(1-q)^{2}\)。
(3) \(p=q=1-p-q=\dfrac13\) なので5試合の結果は \(3^{5}=243\) 通りが同様に確からしい。未決着とは「双方とも勝ち数が2以下」のことです。\(\mathrm{A}\) が \(a\) 勝、\(\mathrm{B}\) が \(b\) 勝、引き分け \(5-a-b\) 回の並びは \(\dfrac{5!}{a!\,b!\,(5-a-b)!}\) 通りなので
\(\sum_{a=0}^{2}\sum_{b=0}^{2}\frac{5!}{a!\,b!\,(5-a-b)!}=(1+5+10)+(5+20+30)+(10+30+30)=141\)
よって \(\dfrac{141}{243}=\dfrac{47}{81}\)。(4) \(p=q=\dfrac12\) なら引き分けはなく、試合数 \(N\) は3, 4, 5 のいずれか。期待値の問題は分布を作る問題でした(型09)。
\(P(N=3)=2\left(\frac12\right)^{3}=\frac14,\quad P(N=4)=2\cdot{}_3\mathrm{C}_2\left(\frac12\right)^{4}=\frac38,\quad P(N=5)=2\cdot{}_4\mathrm{C}_2\left(\frac12\right)^{5}=\frac38\)
(和が1になることを必ず確かめてください。)したがって \(E[N]=3\cdot\dfrac14+4\cdot\dfrac38+5\cdot\dfrac38=\dfrac{33}{8}\)。
この問題で使った型
型04・型09 「\(n\) 試合目で決着」=「\(n\) 試合目は勝者が勝つと固定し、残り \(n-1\) 試合でちょうど2勝」。最後の1回を固定するから、数え上げの対象が減るのです。固定を忘れて \({}_5\mathrm{C}_3\) と書くと、途中で決着している並びまで数えてしまいます。(4) は分布を作るところが本体です。
検算のしかた
sympy で \(p,q\) を文字のまま置き、勝敗の並びを深さ5まで再帰的に展開して「ちょうど \(n\) 試合目に決着する確率」を求めました。(1) は \(p^{3}+q^{3}\) と厳密に一致、(2) は自作の式との差を整理して \(0\)。(3) は \(\dfrac{47}{81}\)、(4) は期待値 \(\dfrac{33}{8}\)。文字式と数値の両方で一致すれば、まず間違いありません。
一橋大学 2005年度 ―― 型04・型05。定義域を落とすと最大の位置がずれる
【問題】一橋大学 2005年度 前期日程
A と B の2人があるゲームを繰り返し行う。1回ごとのゲームで A が B に勝つ確率は \(p\)、B が A に勝つ確率は \(1-p\) であるとする。\(n\) 回目のゲームで初めて A と B の双方が4勝以上になる確率を \(x_n\) とする。
(1) \(x_n\) を \(p\) と \(n\) で表せ。
(2) \(p=\dfrac12\) のとき、\(x_n\) を最大にする \(n\) を求めよ。
【解答】
(1) \(n\geqq 8\) のとき \(x_n={}_{n-1}\mathrm{C}_3\left\{p^{4}(1-p)^{n-4}+(1-p)^{4}p^{n-4}\right\}\)、\(n\leqq 7\) のとき \(x_n=0\) (2) \(n=8\)
(1) 1回で勝ち数が増えるのは一方だけですから、\(n\) 回目に勝った側はその回でちょうど4勝目を挙げたことになります。(もしすでに4勝以上なら、相手は \(n-1\) 回目までに4勝未満で、\(n\) 回目でも勝ち数は増えないため4勝未満のままとなり不適です。)A が \(n\) 回目に勝つ場合、A はちょうど4勝、B は \(n-4\) 勝で、最初の \(n-1\) 回のうち A が3勝する並びは \({}_{n-1}\mathrm{C}_3\) 通りですから \({}_{n-1}\mathrm{C}_3\,p^{4}(1-p)^{n-4}\)。B が勝つ場合も同様に \({}_{n-1}\mathrm{C}_3\,(1-p)^{4}p^{n-4}\) で、両者は排反です。さらに相手も4勝以上でなければならないので \(n-4\geqq 4\)、すなわち \(n\geqq 8\) が必要で、\(n\leqq 7\) では \(x_n=0\)。この定義域を書き落とすと (2) が丸ごと崩れます。
(2) \(p=\dfrac12\) のとき \(n\geqq 8\) で \(x_n=\dfrac{{}_{n-1}\mathrm{C}_3}{2^{\,n-1}}\)。ここで差ではなく比をとります(型05)。
\(\frac{x_{n+1}}{x_n}=\frac{{}_{n}\mathrm{C}_3}{2\,{}_{n-1}\mathrm{C}_3}=\frac{\dfrac{n(n-1)(n-2)}{6}}{2\cdot\dfrac{(n-1)(n-2)(n-3)}{6}}=\frac{n}{2(n-3)}\)
階乗が大量に約分され、1次式の分数まで簡単になりました。あとは1と比べるだけで \(\dfrac{n}{2(n-3)}\lt 1\iff n\gt 6\)。これは \(n\geqq 8\) でつねに成り立つので \(x_8\gt x_9\gt x_{10}\gt\cdots\) と単調に減少し、最大となるのは \(n=8\)(このとき \(x_8={}_7\mathrm{C}_3\left(\dfrac12\right)^{7}=\dfrac{35}{128}\))です。
この問題で使った型
型04・型05 「初めて〜になる」は最後の1回を固定する合図。そして定義域 \(n\geqq 8\) が生命線で、もし \(n\geqq 4\) から議論を始めると \(n=4,5\) では比が1より大きく、\(n=6\) ではちょうど1になるので、最大の位置を \(n=6,7\) と誤ります。(1) で定義域を明記することが (2) の正解に直結している——小問のつながりが美しい問題です。
検算のしかた
\(n=6,\ldots,12\) について勝敗の並び \(2^{n}\) 通りをすべて調べ、確率を \(p\) の多項式として求めて公式との差を sympy で整理すると、すべて \(0\) でした(\(n\leqq 7\) は \(0\)、\(n=8\) は \(70p^{4}(1-p)^{4}\)、\(n=9\) は \(56p^{4}(1-p)^{4}\))。\(p=\dfrac12\) では \(x_8=\dfrac{35}{128}\gt x_9=\dfrac{7}{32}\gt x_{10}=\dfrac{21}{128}\) で、比の議論の結論と一致します。
5. よくある質問
Q1. 条件付き確率で、分母に何を置けばよいか分かりません。
A. 「〜という条件の下で」の直前までに書かれていることが分母です。全事象の通り数で分子と分母を数えておけば、その通り数は約分で消えるので、実際には条件をみたす個数に対する目的の個数の比を出すだけになります。
Q2. 独立と排反の違いが、いつも分からなくなります。
A. 排反は同時に起こらないこと、独立は片方を知らされても他方の見通しが変わらないことです。排反な2つの事象は、片方が起きた瞬間に他方が起こらないと確定するので、むしろ強く影響し合っています。言葉が似ているだけで、中身は正反対に近いと思ってください。
Q3. 反復試行で、組合せの数をどこまで掛ければよいか迷います。
A. 決まっている回は数えない、と覚えてください。「ちょうど何試合目で決着する」のように最後の1回が指定されている場合、その回は動かせないので、組合せで数えるのは残りの回だけです。全部の回で数えると、途中で終わっている並びまで拾ってしまいます。
Q4. 確率が最大になる回数を求める問題で、いつも詰まります。
A. 差ではなく比をとってください。組合せと累乗の積は、比をとると階乗がほとんど約分され、多くの場合1次式の分数まで簡単になります。その分数を1と比べれば増減の境目が決まります。確率が0でない範囲を先に確定させることも忘れないでください。
Q5. 型を覚えれば初見の確率の問題も解けますか。
A. 型は考えなくて済ませる道具ではなく、考える範囲を狭めるための道具です。過去に何百回も使われてきた型から予想して、思考する量を減らすことで、手際よく解法を思い付いている場合もあるのです。ただし狭めた先で、分母をどこに取るか、何で場合分けするかは自分で決める必要があります。
北大の良問 036
先取勝数の確率を「最後の1勝」から数える|北大2012年理系第5問
先に 勝した側が勝者となる試合では、決着までの全並びを無秩序に列挙する必要はありません。Aが通算 敗で優勝するとき、最終試合は必ずAの勝ちです。その直前だけを組合せで数えると、 が同じ型で求まり、最後は差の因数分解で大小を判定できます。
問題
AとBの2チームが試合を行い、どちらかが先に 勝するまで試合をくり返す。各試合でAが勝つ確率を 、Bが勝つ確率を とし、 とする。AがBより先に 勝する確率を とおく。
- を と で表せ。
- を と で表せ。
- を と で表せ。
- のとき、 であることを示せ。
出典:北海道大学2012年度一般入試(前期日程)数学(理系学部)第5問。問題文の表記はウェブ表示用に一部調整しています。
段階別ヒント
ヒント1|何敗で決着したかに分ける
Aが先に 勝するとき、Bの勝数は のどれかです。互いに排反な場合なので、各確率を足します。
ヒント2|最後の試合は動かさない
Aが 勝 敗で優勝する全試合数は ですが、最後はAの勝ちに固定されます。並べ替えるのは、その直前の 試合です。
ヒント3|組合せ係数の場所
最後の直前までにAが 勝、Bが 勝していればよいので、Bの 勝の置き場所は 通りです。
ヒント4| まで同じ式へ代入する
では です。係数は順に となります。
ヒント5|大小比較は展開後に差を因数分解する
を作り、 を使います。正の因子と、符号を決める を分離できれば終わりです。
解答・解説
準備|一般の
Aが 勝に達したときのBの勝数を とします。 であり、最終試合はAの勝ちです。その直前の 試合にBの 勝を配置するので、
(1)
(2)
(3)
(4) と の比較
を使って差を整理します。
なら 、、 です。よって式(5)は正です。
(4)の結論:
境界 ではAとBが対称なので、どの でも です。式(5)も0になり、 と一致します。
別解1|最大 試合の多数決として数える
試合が早く終わった後も形式的に第 試合まで独立な勝敗を補うと考えます。Aが先に 勝することと、全 試合中でAが少なくとも 勝することは同値です。したがって、
を代入し、 で整理すると式(2)〜(4)と一致します。例えば です。
別解2|残り勝数の動的計画法
Aがあと 勝、Bがあと 勝で決着する状態からAが優勝する確率を と置くと、次の1試合で場合分けして
です。表を境界から埋めると がそれぞれ式(2)〜(4)になります。組合せによる閉じた式と、1試合ずつ戻る漸化式の2経路で同じ結果を確認できます。
解法を思いつくための再現手順
- 決着時の相手の勝数で分ける。 Aが 勝したとき、Bは 勝から 勝まで。
- 最後の試合をA勝に固定する。 先取条件を数え上げへ正確に入れる。
- 直前だけを並べる。 を使い、固定した最終試合は数えない。
- 確率を掛ける。 Aが計 勝、Bが計 勝なので 。
- について足す。 は排反だから総和を取る。
- 大小は差を取る。 を使い、符号の分かる因子へ分解する。
- 境界を確認する。 の対称性と、 の極限で向きを点検する。
よくある誤り
- 全 試合を並べる: 最終試合はA勝に固定です。 ではなく です。
- Bが 勝した場合まで足す: Aが先に 勝した時点でBは高々 勝です。
- とする: 組合せで並べるのは直前だけですが、確率には最後のA勝も含めるため です。
- 場合を重ねて数える: 「決着時のBの勝数 」は互いに排反なので、そこで分類すれば重複しません。
- の符号を取り違える: 示したいのは なので、 を作ると自然です。
- だけで終える: を使うため、上端 も正因子の確認に必要です。
独立検算
| 比較 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 境界で等しい | ||||
この問題で押さえること:「先に 勝したら優勝」の確率は、最終戦が必ず勝ちであることを固定し、その直前までの並びを組合せで数える。「最後の1勝を固定する」を押さえよう。
前提単元と次に解く問題
教材について:解答・解説・ヒント・図は数強塾が独自に作成した非公式教材で、北海道大学が公表した公式解答・公式見解ではありません。問題の著作権は北海道大学に帰属し、出典を明示して掲載しています。
北大の良問 038
玉の組成を状態遷移で追い、結果から前回を逆算する|北大2015年理系第4問
「同色なら据え置き、異色なら赤玉が1個増える」と読み替えると、袋の中身は少数の状態に圧縮できます。全確率で2回目の結果を求め、最後は結果を分母とする条件付き確率で、1回目の状態を逆算します。
問題
初めに赤玉2個と白玉2個が入った袋がある。その袋に対して以下の試行を繰り返す。
- まず同時に2個の玉を取り出す。
- その2個の玉が同色であればそのまま袋に戻し、色違いであれば赤玉2個を袋に入れる。
- 最後に白玉1個を袋に追加してかき混ぜ、1回の試行を終える。
\(n\) 回目の試行が終わった時点での袋の中の赤玉の個数を \(X_n\) とする。
- \(X_1=3\) となる確率を求めよ。
- \(X_2=3\) となる確率を求めよ。
- \(X_2=3\) であったとき、\(X_1=3\) である条件付き確率を求めよ。
出典:北海道大学2015年度一般入試(前期日程)数学(理系学部)第4問。理系保存問題PDF全3ページ・冊子印刷全3ページ・全5問・試験時間120分を目視し、対象のPDF第3ページ・冊子印刷第3ページ(頁下 ◇M10(188—100))で、初期の赤玉2個・白玉2個、3段階の試行、\(X_n\) の定義、3小問を照合しました。理系問題PDF SHA-256は 3a6d9ec5aea8fa7324024dc2d7629d72a558dcae04da4a7e3e72a1594a1b1d2f。文系保存問題PDF全3ページ・全4問・90分の第4問はトランプ配列の別問題です。文系問題PDF SHA-256は 8847285fdf40ed07b2cf4534f0ea13c6821a397bc2265eb9bbbe8d9b59d23578。対象問題に図・表・第三者の引用文はありません。問題の条件と記号を保ち、ウェブ表示のため句読点・空白・改行・数式組版だけを調整しています。
段階別ヒント
ヒント1|毎回必ず増える玉は何か
試行の最後に白玉1個を追加するため、玉の総数は1回ごとに1個増えます。赤玉の個数は、取り出した2個の色で決まります。
ヒント2|同色と異色に分ける
同色ならその2個を戻すので赤玉数は不変です。異色なら赤・白を1個ずつ取り出して赤玉2個を入れるので、赤玉数は1個増えます。
ヒント3|2回目は1回目の状態で分ける
\(X_2=3\) に至るのは、\(X_1=2\) から異色を引く場合と、\(X_1=3\) から同色を引く場合です。互いに排反なので足せます。
ヒント4|条件付き確率の分母を確定する
「\(X_2=3\) であったとき」なので、分母は \(P(X_2=3)\) です。分子は \(P(X_1=3,\,X_2=3)\) とします。
ヒント5|ラベル付き玉で別検算する
1回目の取り方は \(\binom42=6\) 通り、2回目はどの状態でも \(\binom52=10\) 通りです。各60通りを数えると、全確率とは独立に答えを確かめられます。
解答・解説
(1) \(P(X_1=3)\)
初めの袋は赤2個・白2個です。同色の2個を引く確率は、
\frac{\binom22+\binom22}{\binom42}=\frac{2}{6}=\frac13.
\tag{2}
\]
このとき試行後は赤2個・白3個で、\(X_1=2\) です。一方、異色を引く確率は \(1-\frac13=\frac23\) で、試行後は赤3個・白2個です。したがって、
(1)の答:
\boxed{P(X_1=3)=\frac23}.
\tag{3}
\]
(2) \(P(X_2=3)\)
1回目後の状態は次の2つです。
| 1回目後 | その確率 | 2回目に \(X_2=3\) となる条件 | 条件付き確率 |
|---|---|---|---|
| 赤2・白3(\(X_1=2\)) | \(1/3\) | 異色を引く | \(\dfrac{2\cdot3}{\binom52}=\dfrac35\) |
| 赤3・白2(\(X_1=3\)) | \(2/3\) | 同色を引く | \(\dfrac{\binom32+\binom22}{\binom52}=\dfrac25\) |
全確率の公式により、
\begin{aligned}
P(X_2=3)
&=P(X_1=2)P(X_2=3\mid X_1=2)\\
&\qquad+P(X_1=3)P(X_2=3\mid X_1=3)\\
&=\frac13\cdot\frac35+\frac23\cdot\frac25
=\frac7{15}.
\end{aligned}
\tag{4}
\]
(2)の答: \(\displaystyle \boxed{\frac7{15}}\)
(3) \(P(X_1=3\mid X_2=3)\)
分子の同時確率は、1回目で異色、2回目で同色を引く確率です。
P(X_1=3,\,X_2=3)=\frac23\cdot\frac25=\frac4{15}.
\tag{5}
\]
条件付き確率の定義と式(4)(5)から、
(3)の答:
\boxed{
P(X_1=3\mid X_2=3)
=\frac{P(X_1=3,\,X_2=3)}{P(X_2=3)}
=\frac{4/15}{7/15}=\frac47
}.
\tag{6}
\]
別解|ラベル付きの60通りを数える
玉を1個ずつ区別します。1回目の2個の選び方は \(\binom42=6\) 通り、2回目は状態によらず \(\binom52=10\) 通りなので、各履歴は全60通りで同確率です。
| 経路 | 1回目の選び方 | 2回目の選び方 | 履歴数 |
|---|---|---|---|
| \(X_1=2\to X_2=3\) | 同色 2通り | 異色 \(2\cdot3=6\) 通り | \(2\cdot6=12\) |
| \(X_1=3\to X_2=3\) | 異色 \(2\cdot2=4\) 通り | 同色 \(\binom32+\binom22=4\) 通り | \(4\cdot4=16\) |
よって \(X_2=3\) の履歴は \(12+16=28\) 通りで、
P(X_2=3)=\frac{28}{60}=\frac7{15},\qquad
P(X_1=3\mid X_2=3)=\frac{16}{28}=\frac47.
\tag{7}
\]
全確率と条件付き確率の主解と、等確率な有限集合の数え上げが同じ結果に到達しました。
解法を思いつくための再現手順
- 毎回の変化だけを言葉にする。 同色なら赤玉数は不変、異色なら1増える。
- 1回目の全状態を列挙する。 赤2・白3と赤3・白2の2状態しかない。
- 目的の状態へ入る矢印を逆向きに探す。 \(X_2=3\) へは、\(2\to3\) と \(3\to3\) の2本。
- 各経路を乗法定理で求める。 前回の状態の確率と、そこからの遷移確率を掛ける。
- 排反な経路を足す。 全確率で \(P(X_2=3)\) を作る。
- 「〜であったとき」を分母にする。 今回は \(P(X_2=3)\) が新しい全体。
- 数え上げで別検算する。 60履歴のうち28履歴、そのうち16履歴と確かめる。
よくある誤り
- 異色の2個を袋に戻した上で赤2個を足す: 異色のときは取り出した2個を戻さず、赤2個を入れます。そのため赤玉は1個だけ増えます。
- 白玉1個の追加を忘れる: 2回目の開始時には玉は5個です。分母は \(\binom52\) です。
- 異色を \(\binom52\) で数える: 赤 \(k\) 個と白 \(N-k\) 個から1個ずつ選ぶので、個数は \(k(N-k)\) です。
- \(X_2=3\) は \(X_1=3\) からだけと思う: \(X_1=2\) から異色を引いても3に至ります。
- (3)の分母を \(P(X_1=3)\) とする: 条件は \(X_2=3\) なので、分母は \(P(X_2=3)\) です。
- 試行を独立とみなす: 1回目の結果で2回目の袋の中身が変わるため、遷移確率も状態ごとに計算します。
独立検算
2回目後の赤玉数は \(2,3,4\) のいずれかで、それぞれの確率は次の通りです。
P(X_2=2)=\frac{2}{15},\qquad
P(X_2=3)=\frac{7}{15},\qquad
P(X_2=4)=\frac25.
\tag{8}
\]
和は \(\frac2{15}+\frac7{15}+\frac6{15}=1\) です。また、式(1)は \(k=0\) または \(k=N\) で異色遷移が0になり、全玉が同色なら赤玉数が変わらないという境界の動きと一致します。
前提単元と次に解く問題
権利・教材化の5条件:
- 著作権:入試問題の著作権が北海道大学に帰属することを前提に扱います。
- 出典と責任主体:北海道大学2015年度一般入試(前期日程)数学(理系学部)第4問と出典を明示し、掲載内容の責任は数強塾が負います。
- 組版による改変:初期の赤玉・白玉の個数、3段階の試行、\(X_n\) の定義、3小問を保ち、ウェブ表示のため句読点・空白・改行・数式組版を調整したことを明示します。
- 第三者素材:対象問題に図・表・第三者の引用文はありません。本教材にも第三者素材の転載・埋込み・トレースを行っていません。
- 独自解答と保存答案:解答・解説・ヒント・別解・検算は数強塾が問題PDFだけから独立に作成した非公式教材で、北海道大学の公式解答・公式見解ではありません。作成者・由来・掲載許諾を確認できない保存答案A01(全4ページ、本問相当なし、SHA-256
d1f002390157c3cc539e851b4a74875a7cfd4582c7e14706bb1b943038037657)とA02(全5ページ、本問相当はPDF第4ページ、SHA-256f21c19ffc4dddc95b85ea35b59ec6399232e7590d845776b184a4e133c144d21)は非表示・不使用とし、リンク・埋込み・転載・トレースを行いません。
北海道大学の「入試問題の利用について(数学・文系)」および「入試問題の利用について(数学・理系)」、ウェブサイト利用案内を確認しています。確認した利用条件には、利用報告や事前許諾を必須とする記載は確認されませんでした。保存PDFの文理区分・ページ数・SHA-256・原本位置・保存答案の監査状況は北海道大学2015年度ページにも記録します。保存問題PDFの大学公式オンライン配布元は確認できていません。最終照合:2026年8月25日。
6. 次に読むページ
- 確率の解法パターン全12型 ―― このページの親にあたる第1層。確率全体の概観。
- 確率漸化式の解法パターン全12型 ―― 同じ第2層。回数が増える設定を漸化式で処理する道。
- 場合の数の解法パターン全12型 ―― 分母と分子を数えるときの技術。
- 確率分布と統計的な推測の解法パターン全12型 ―― 二項分布と期待値のつながり。
- 解法パターン事典 ―― 全単元の型を一覧できるハブページ。
- 大学入試 過去問の全問解説 ―― 年度別・大学別の解説はこちら。
条件付き確率で答えが合わない人へ
このテーマでつまずく生徒のほとんどは、計算ができないのではありません。分母をどこに置いたかを、自分で言えないまま計算を始めているのです。数強塾では、式を書く前に「全体はどこか」「条件が付いたら分母はどう縮むか」を口に出させ、それから手を動かさせます。この順番が身につくと、条件付き確率は最も安定して得点できる分野に変わります。オンラインの完全1対1で、プロ講師のみが担当します。
数強塾オリジナル演習 追加5題|型06・07・08・12を埋める
上の入試実例では型01〜05・09〜12 を扱いました。ここでは実例が手薄な型06(原因の確率)・型07(くじの公平性)・型08(復元と非復元)を中心に、落としやすい型12を加えて5問埋めます。すべて自作問題で、答えは分数のまま検算してあります。
型06 原因の確率(結果から原因をたどる)
袋Aには赤玉3個と白玉2個、袋Bには赤玉1個と白玉4個が入っている。さいころを1回振り、出た目が1か2ならA、3以上ならBを選び、その袋から玉を1個取り出す。取り出した玉が赤であったとき、選ばれた袋がAであった確率を求めよ。
解答・解説を見る
時間の流れと逆向きに問われているのがこの型の特徴です。袋を選ぶのが先、玉を見るのが後なのに、玉の色から袋を推測しています。
まず順方向の確率を全部書き出す。
\(P(A)=\dfrac26=\dfrac13\)、\(P(B)=\dfrac46=\dfrac23\)
\(P(\text{赤}\mid A)=\dfrac35\)、\(P(\text{赤}\mid B)=\dfrac15\)
2つの道すじの確率
\(P(A\cap\text{赤})=\dfrac13\times\dfrac35=\dfrac15\)
\(P(B\cap\text{赤})=\dfrac23\times\dfrac15=\dfrac2{15}\)
赤が出る確率(分母になる)
\(P(\text{赤})=\dfrac3{15}+\dfrac2{15}=\dfrac5{15}=\dfrac13\)
【答】\(P(A\mid\text{赤})=\dfrac{1/5}{1/3}=\dfrac35\)
(検算:\(P(B\mid\text{赤})=\dfrac{2/15}{1/3}=\dfrac25\)。\(\dfrac35+\dfrac25=1\) ✓)
【手順は3行で固定】①道すじごとに確率を掛けて出す ②目的の結果が起きる確率を全部足して分母にする ③知りたい道すじを分子に置く。
袋Aが選ばれる確率はもともと \(\dfrac13\) でしたが、赤が出たと知った後は \(\dfrac35\) に上がりました。情報が入ると確率が変わる——これが条件付き確率の意味です。
型06 の発展 直感とずれる例
ある工場では、製品の60%を機械A、40%を機械Bが作る。不良品の割合はAが2%、Bが5%である。製品を1個取り出したところ不良品であった。この製品を作ったのがBである確率を求めよ。
解答・解説を見る
手順は前問と同じです。
\(P(A)=\dfrac35\)、\(P(B)=\dfrac25\)
\(P(\text{不良}\mid A)=\dfrac1{50}\)、\(P(\text{不良}\mid B)=\dfrac1{20}\)
\(P(A\cap\text{不良})=\dfrac35\times\dfrac1{50}=\dfrac3{250}\)
\(P(B\cap\text{不良})=\dfrac25\times\dfrac1{20}=\dfrac1{50}=\dfrac5{250}\)
\(P(\text{不良})=\dfrac8{250}=\dfrac4{125}\)
【答】\(P(B\mid\text{不良})=\dfrac{5/250}{8/250}=\dfrac58\)
(検算:不良率は全体で \(\dfrac4{125}=3.2\%\)。\(0.6\times2\%+0.4\times5\%=1.2\%+2\%=3.2\%\) ✓)
【ここが直感とずれる】Bの不良率5%はAの2.5倍ですが、答えは2.5倍ではなく \(\dfrac58\)。Aのほうが生産量が多いので、不良品の中にもAの製品がそれなりに混じるからです。
「率が高いほう」と「数が多いほう」は別物。この型で落とすのは、たいていここです。必ず実数(割合×母数)で比べてください。
型07 くじの公平性(引く順番によらない)
10本のくじの中に当たりが3本ある。A、B、Cの3人がこの順に1本ずつ引き、引いたくじは戻さない。Cが当たりを引く確率を求めよ。
解答・解説を見る
結論から言うと \(\dfrac3{10}\)。Aと同じです。
まじめに数えて確かめます。A・Bの結果で4通りに分かれます(○=当たり、×=はずれ)。
\(\text{○○×から}: \dfrac3{10}\cdot\dfrac29\cdot\dfrac18=\dfrac6{720}\)
\(\text{○×}: \dfrac3{10}\cdot\dfrac79\cdot\dfrac28=\dfrac{42}{720}\)
\(\text{×○}: \dfrac7{10}\cdot\dfrac39\cdot\dfrac28=\dfrac{42}{720}\)
\(\text{××}: \dfrac7{10}\cdot\dfrac69\cdot\dfrac38=\dfrac{126}{720}\)
合計 \(\dfrac{6+42+42+126}{720}=\dfrac{216}{720}=\dfrac3{10}\)
【答】\(\dfrac3{10}\)
【計算せずに言い切る方法】10本のくじをあらかじめ1列に並べておくと考えます。A・B・Cは上から順に取るだけ。
このとき「Cが当たる」とは3番目の位置に当たりがあること。10個の位置のうち当たりが3個ですから、どの位置も対等で \(\dfrac3{10}\)。
位置に区別がない——それが公平の正体です。この見方を持っていれば、\(100\) 人が引く問題でも即答できます。
型08 復元抽出と非復元抽出
赤玉4個、白玉6個が入った袋から玉を2個取り出す。(1) 1個取り出して色を見てから戻し、もう1度取り出すとき、2個とも赤である確率。(2) 2個を同時に取り出すとき、2個とも赤である確率。それぞれ求め、大小を比べよ。
解答・解説を見る
(1) 戻す場合(復元)
袋の中身は毎回同じ。2回は独立です。
\(\dfrac4{10}\times\dfrac4{10}=\dfrac{16}{100}=\dfrac4{25}=0.16\)
(2) 戻さない場合(非復元)
1個目が赤なら、残りは9個中3個が赤。独立ではありません。
\(\dfrac4{10}\times\dfrac39=\dfrac{12}{90}=\dfrac2{15}\fallingdotseq0.133\)
組合せで数えても同じです。
\(\dfrac{{}_4\mathrm{C}_2}{{}_{10}\mathrm{C}_2}=\dfrac6{45}=\dfrac2{15}\) ✓
【答】(1) \(\dfrac4{25}\)、(2) \(\dfrac2{15}\)。(1) のほうが大きい
【なぜ非復元のほうが小さいのか】1個目に赤を取ると、袋の中の赤の割合が\(\dfrac4{10}\) から \(\dfrac39\) へ下がるから。当たりを引くほど当たりにくくなる、と考えると自然です。
「同時に2個」=「戻さずに2個」です。同時に取ろうが順に取ろうが、2個の組が決まれば同じこと。ここを別物だと思うと、\({}_{10}\mathrm{C}_2\) を使ってよいか迷います。
型12 「少なくとも1個」で分母を取り違えない
赤玉2個、白玉2個が入った袋から2個を同時に取り出す。取り出した2個の中に少なくとも1個の赤玉が含まれていたとき、2個とも赤玉である確率を求めよ。
解答・解説を見る
条件付き確率は「分母をつくり直す」だけです。赤玉を \(R_1,R_2\)、白玉を \(W_1,W_2\) と区別して全部書き出します。
\({}_4\mathrm{C}_2=6\) 通り:\(R_1R_2,\;R_1W_1,\;R_1W_2,\;R_2W_1,\;R_2W_2,\;W_1W_2\)
少なくとも1個が赤なのは、\(W_1W_2\) を除く5通り。このうち2個とも赤は \(R_1R_2\) の1通り。
【答】\(\dfrac15\)
【\(\dfrac13\) と答えたくなる罠】「1個は赤だとわかった。残り1個が赤か白か」と考えると\(\dfrac13\) が出ます(残り3個のうち赤は1個)。これは「特定の1個を見たら赤だった」という別の条件の答えです。
今回の条件は「2個のうちどちらかは赤」。どちらの玉かは指定されていません。条件の言葉づかいで分母が変わります。
【事故を防ぐ手順】迷ったら玉に番号を振って全部書き出す。このやり方なら、\(6\) 通りを数えるだけでまず間違えません。型12で失点する答案は、ほぼ例外なく書き出さずに考えたものです。
条件付き確率は「どの世界の中の割合か」
12の型は多く見えますが、やっていることは2つだけです。
| やること | 式 | 該当する型 |
|---|---|---|
| 分母を取りかえる | \(P(A\mid B)=\dfrac{P(A\cap B)}{P(B)}\) | 型01・06・12 |
| 道すじの確率を掛ける | \(P(A\cap B)=P(A)\,P(B\mid A)\) | 型02・04・08・11 |
独立とは、この掛け算で\(P(B\mid A)\) が \(P(B)\) に化けること。それだけの意味です(型03)。化けなければ独立ではない、というだけで、難しい概念ではありません。
分母を間違える3つの場面
- 「少なくとも」 ── 余事象を引いて分母を作る(型10・12)
- 結果から原因 ── 結果が起きる確率を全部の道すじで足して分母にする(型06)
- 特定の1つ か どれか1つ か ── 言葉が違えば分母が違う(演習5)
検算の型
条件付き確率を出したら、その補集合の確率も出して、足して \(1\) になるかを確かめてください。演習1で \(\dfrac35+\dfrac25=1\) と確かめたのがそれです。20秒で、分母の取り違えの大半が見つかります。
反復試行では、\(r\) を \(0\) から \(n\) まで全部足すと \(1\) になることを使います(型04)。\(\displaystyle\sum_{r=0}^{n}{}_n\mathrm{C}_r\,p^r(1-p)^{n-r}=1\)。これは二項定理そのものです。
「なぜそうなるのか」へ
確率の型は、土台にある考え方を押さえると一気に減ります。12の型のうち半分は、次の記事で扱う内容の言いかえです。
- なぜ確率は場合の数の割り算で求められるのか ── すべての土台。「どの世界の中の割合か」を決めるのが確率です。
- なぜ割合は「くらべる量÷もとにする量」なのか ── 型01・06・12。分母を取りかえるとは、もとにする量を変えることでした。
- なぜ組合せではr!で割るのか ── 型08。同時に取り出す=順番を区別しない、の意味。
- なぜnCr=nC(n-r)なのか ── 型04。「当たる回数を選ぶ」と「はずれる回数を選ぶ」は同じ作業です。
- なぜパスカルの三角形に組合せの数が現れるのか ── 型04・05。反復試行の確率が山の形になる理由が、そのまま見えます。
- なぜ分数は割り算と同じなのか ── 条件付き確率の式が分数で書かれている理由。
関連ページ
高校数学・独立演習|条件付き確率
条件付き確率を標本空間から組み立てる4問
条件が付くと分母が変わることを出発点に、ベイズの定理、非復元抽出、独立、少なくとも1枚という条件を順に確かめます。
条件付き確率の求め方を、樹形図に相当する分解、場合の数、独立の定義まで往復して練習できる独自教材です。
図は左右にスクロールして全体を確認できます。
問1|陽性と分かった後の確率
ある集団では事象Dが起こる確率は1/10である。検査はDが起きているとき9/10の確率で陽性、Dが起きていないとき1/5の確率で陽性になる。無作為に1人を選び検査が陽性だったとき、Dが起きている条件付き確率を求めよ。各確率はこの集団で一定とする。
問1「陽性と分かった後の確率」の解答・詳しい考え方を開く
答え:1/3
- Dかつ陽性となる確率は (1/10)×(9/10)=9/100 である。
- Dでないかつ陽性となる確率は (9/10)×(1/5)=9/50 である。
- 陽性となる全確率は 9/100+9/50=27/100 である。
- 条件付き確率の分母を陽性全体に替え、P(D|陽性)=(9/100)/(27/100) とする。
- 分子・分母を9/100で割ると1/3を得る。
誤答分析:感度9/10をそのまま答える誤りは、Dでない人から出る陽性を分母へ入れていない。条件が『陽性の人の中』へ標本空間を狭める点が核心である。
別計算による検算:1000人の仮想集団で数え直す。Dの100人中90人、Dでない900人中180人が陽性なので、陽性270人中Dは90人、90/270=1/3となる。
問2|色が異なると分かった後の非復元抽出
袋に赤玉5個、青玉3個が入っている。玉を戻さずに1個ずつ3回取り出す。最初の2個の色が互いに異なることが分かっているとき、3個目が赤である条件付き確率を求めよ。各玉は同様に確からしく選ばれる。
問2「色が異なると分かった後の非復元抽出」の解答・詳しい考え方を開く
答え:2/3
- 最初の2個の色が異なるなら、取り出された内訳は順序によらず赤1個と青1個である。
- 袋に残る玉は赤4個、青2個の合計6個である。
- 条件を知った後の3回目は、この残った6個から同様に確からしく1個を選ぶ試行である。
- したがって赤を選ぶ確率は4/6である。
- 約分して2/3を得る。
誤答分析:最初の赤5個と全体8個を使って5/8とすると、条件によって赤1個と青1個が既に減った事実を反映できない。取り出した順序は不明でも残数は一意に決まる。
別計算による検算:条件を満たす最初の2回を赤青または青赤に分けても、どちらの場合も3回目直前は赤4・青2である。全確率の公式で同じ2/3を重み付き平均しても2/3となる。
問3|二つの事象の独立判定
区別できる公平な6面さいころを2個同時に投げる。事象Aを『出た目の和が偶数』、事象Bを『1個目の目が偶数』とする。AとBが独立かどうかを、確率を示して判定せよ。
問3「二つの事象の独立判定」の解答・詳しい考え方を開く
答え:AとBは独立である。P(A)=1/2、P(B)=1/2、P(A∩B)=1/4。
- 和が偶数になるのは2個の目がともに偶数またはともに奇数のときで、18通りだからP(A)=18/36=1/2である。
- 1個目が偶数となるのは3×6=18通りだからP(B)=1/2である。
- AかつBでは1個目が偶数で、和を偶数にする2個目も偶数である。よって3×3=9通りでP(A∩B)=9/36=1/4である。
- 積P(A)P(B)=(1/2)(1/2)=1/4はP(A∩B)と一致する。
- したがって独立の定義を満たし、AとBは独立である。
誤答分析:AとBが同じさいころの結果を使うだけで『独立ではない』と決めるのは誤りである。事象の関係は印象でなくP(A∩B)=P(A)P(B)で判定する。
別計算による検算:Bが起きたと固定すると1個目は偶数であり、Aが起きるには2個目が偶数ならよい。その条件付き確率は3/6=1/2=P(A)なので、条件付き確率の定義からも独立と確認できる。
問4|少なくとも1枚がエースという条件
ジョーカーを除く52枚のトランプから同時に2枚を無作為に選ぶ。少なくとも1枚がエースであることが分かっているとき、2枚ともエースである条件付き確率を求めよ。
問4「少なくとも1枚がエースという条件」の解答・詳しい考え方を開く
答え:1/33
- 順序を区別しない2枚の選び方はC(52,2)通りである。
- エースを1枚も含まない選び方は、非エース48枚から選ぶC(48,2)通りである。
- 少なくとも1枚がエースという条件を満たすのはC(52,2)−C(48,2)=1326−1128=198通りである。
- 2枚ともエースとなるのはC(4,2)=6通りである。
- 条件付き確率は6/198=1/33である。
誤答分析:『1枚がエース』を『特定の1枚がエース』と読み替えて残り51枚中3枚とする3/51は、2枚のどちらがエースか重なる場合を正しく扱わない。少なくとも1枚という条件全体を数える。
別計算による検算:順序つきで数えると条件を満たす組は52×51−48×47=396通り、両方エースは4×3=12通りである。12/396=1/33となり、組合せでの結果と一致する。
📝 この型が実際に出た入試問題(27問のうち24問を掲載)
「条件付き確率・独立・反復試行」の型が実際の入試でどう出たかを、数強塾が全問解説を公開している年度から拾いました。各行の「解説を読む」から、その問題の解説へ直接移動できます。型を読んだあとに実出題で当てると、どこまで通用する判断なのかがはっきりします。
| 大学・年度 | 出題テーマ | 難易度 | 解説 |
|---|---|---|---|
| 同志社大学 2025年度 | 〔Ⅰ〕玉の取り出しと条件付き確率/空間座標と2球面の接触 | 難 | 解説を読む |
| 同志社大学 2025年度 | 〔Ⅰ〕【空所補充】放物線の頂点の軌跡・共通接線/階乗を含む数列/さいころ4個 | やや難 | 解説を読む |
| 同志社大学 2025年度 | 〔Ⅰ〕【空所補充】2連勝で優勝する確率と無限級数/複素数平面の楕円と の像 | やや難 | 解説を読む |
| 同志社大学 2025年度 | 〔Ⅱ〕【記述式】戻さずに取り出す玉——対称性と「比で最大を探す」技法 | やや難 | 解説を読む |
| 明治大学 2025年度 | 〔Ⅰ〕3. 3つの袋と条件付き確率 | 標準 | 解説を読む |
| 法政大学 2025年度 | 〔Ⅱ〕【記述】4色の玉で動く点の確率 | 標準 | 解説を読む |
| 関西大学 2025年度 | 〔Ⅳ〕小問集合(対数不等式・極限・既約分数の和・複素数列・条件付き確率) | やや難 | 解説を読む |
| 青山学院大学 2025年度 | さいころ3回で作る文字列の一致確率 | 標準 | 解説を読む |
| 青山学院大学 2025年度 | さいころ4回で決まる点の座標と確率 | 標準 | 解説を読む |
| 立命館大学 2020年度 | 〔Ⅲ〕【記述式】コインを2段階で投げる——「2回とも表」に気づけば二項分布 | やや難 | 解説を読む |
| 立命館大学 2020年度 | 〔Ⅳ〕【空所補充】箱に玉を投げ入れる試行——1回の試行と 回の反復を分ける | やや難 | 解説を読む |
| 東北大学 2019年度 | 金貨が残る確率と反復試行 | やや難 | 解説を読む |
| 東京大学 1995年度 | 半分ずつ縮む移動と第1象限にある確率 | 難 | 解説を読む |
| 東邦大学(数学) 2023年度 | 第1問(確率:反復試行) | — | 解説を読む |
| 自治医科大学(数学) 2022年度 | 問12(確率・反復試行) | — | 解説を読む |
| 順天堂大学(数学) 2022年度 | 第1問(指数関数・条件付き確率・3次方程式) | — | 解説を読む |
| 日本大学(数学) 2020年度 | 第3問(確率:得点ゲームと反復試行) | — | 解説を読む |
| 横浜国立大学 2019年度 | A1 第1問 確率|3つのさいころと条件付き確率 | — | 解説を読む |
| 昭和大学(数学) 2016年度 | 大問1 反復試行と極限 | — | 解説を読む |
| 自治医科大学(数学) 2016年度 | 問19(反復試行の確率の最大) | — | 解説を読む |
| 東邦大学(数学) 2015年度 | 第6問(条件付き確率・ベイズの定理) | — | 解説を読む |
| 自治医科大学(数学) 2014年度 | 問9(反復試行の確率) | — | 解説を読む |
| 日本大学(数学) 2013年度 | 第2問(反復試行の確率と重複組合せ) | — | 解説を読む |
| 自治医科大学(数学) 2013年度 | 問17(反復試行の確率) | — | 解説を読む |
難易度は数強塾の見立てです(「—」は難易度を掲載していない年度)。大学別の年度一覧と出題傾向は過去問解説の総索引から、この型の全体像は解法パターン事典のハブから確認できます。
反復試行を「停止した回」と「得た回数」の二軸で数える
回数が最初から固定された反復試行なら、成功位置を選んで二項分布へ進めます。しかし「3回成功したら終了。ただし5回で打ち切り」のような実験では、途中で終了した列を、その後も続く列として数えてはいけません。この講座では、停止時刻と成功回数を別々の欄に持つ停止時刻・回数台帳を作り、最後の1回を固定してから、それ以前の並びだけを選びます。既存の公式分類や状態遷移を繰り返さず、可変長の標本を漏れなく互いに排反なセルへ分ける方法に集中します。
到達目標
- 固定回数の二項型と、条件を満たした時点で終わる停止型を区別できる。
- 停止時刻を 、停止時の成功回数を とし、組 ごとに結果を排反に分類できる。
- 「第 回で 回目の成功」が、最初の 回で成功がちょうど 回、最後が成功、という条件だと説明できる。
- 台帳の行和・列和・総和、尾確率による期待値、全列挙を独立検算に使える。
前提診断|数える前に実験の時計を確認する
| 確認項目 | 固定回数型 | 停止型 |
|---|---|---|
| 試行回数 | 全結果で同じ | 結果によって異なり得る |
| 最後の結果 | 自由なことが多い | 閾値到達で止まるセルでは成功に固定される |
| 組合せ係数 | 個の位置から成功位置を選ぶ | 最後を除く 個から以前の成功位置を選ぶ |
| 期限到達 | 特別扱いしない | 閾値未達と期限ちょうどの閾値到達を分ける |
停止後の架空の試行を作らない。 3回目で条件を満たした結果に、4回目・5回目の記号を付け足して数えると、一つの実際の結果が何通りにも増えてしまいます。各結果は、実験が本当に観測した長さで記録します。
台帳の設計|行に時計、列に累積回数を置く
停止条件が二つあるときは、まず変数を二つ定義します。 は実際に行った試行回数、 は停止時までに得た成功回数です。台帳の一つのセル は、停止時刻も成功回数も同じ結果だけを集めます。異なるセルは同時に起こらないので、必要なセルの確率は安全に足せます。
| セルの種類 | 最後の1回 | 前半の条件 | 係数 |
|---|---|---|---|
| 期限より前に 回目の成功 | 成功に固定 | 最初の 回で成功 回 | |
| 期限ちょうどに 回目の成功 | 成功に固定 | 最初の 回で成功 回 | |
| 期限で終了し成功 回 | 成功・失敗どちらも可 | 全 回で成功 回 |
数強塾オリジナル・完全新作例題|検知3回または5回目で終了
同じ設定で独立に作動する短時間テストを繰り返します。各回で青信号を検知する確率は 、検知しない確率は です。青信号を3回検知した時点、または5回目のテストが終わった時点のうち、先に来た時点で実験を終了します。
実際に行ったテスト回数を 、終了時の検知回数を とします。
- 起こり得る と、その確率をすべて台帳にしてください。
- 、、 を求めてください。
- 平均して何回テストを行うか、期待値 を求めてください。
- 終了時に3回検知していたと分かったとき、それが5回目で初めて3回に達した条件付き確率を求めてください。
段階ヒント
ヒント1| が取り得る値を先に限定する
3回検知するには最低3回必要です。期限は5回なので、です。1回や2回で止まるセル、6回以上のセルは最初から作りません。
ヒント2|なら4回目を固定する
4回目で初めて3回検知するには、最初の3回で検知がちょうど2回、4回目が検知です。4個の位置から3個を選ぶのではありません。
ヒント3|を期限未達と混ぜない
5回目で3回に達する結果は、最初の4回で検知2回、最後が検知です。一方、なら5回すべてを終えても閾値へ届かなかった結果です。
ヒント4|期待値は二経路で確認する
台帳から を計算できます。また、正の整数値を取る について も使えます。
完全解答1|停止する最後の1回を先に固定する
検知をS、非検知をFと書きます。なら、3回目で3回目の検知を得る列はSSSだけです。
なら、最初の3回のうち2回がSで、最後の4回目がSです。最初の3回にある2個のSの位置だけを選びます。
係数を にすると、最初の3回がSSSで4回目がFという、実際には3回目で終了済みの列まで含めます。停止型で「最後を固定する」理由がここにあります。
では二種類を分けます。終了時の検知回数が0・1・2なら、5回終えても閾値へ届いていないので、5個の位置からSの位置を選べます。終了時に3回なら、5回目が3回目のSでなければならないため、最初の4回から以前のSを2個選びます。
完全解答2|六つのセルを一枚に戻す
| 停止時刻 | 行和 | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| 3 | 0 | 0 | 0 | ||
| 4 | 0 | 0 | 0 | ||
| 5 | |||||
| 列和 | 1 |
行は停止時刻の分布、列は終了時の検知回数の分布です。したがって、
全セルの分子を足すと です。これは、可変長の全結果を重複なく覆ったことの最初の監査になります。
完全解答3|期待値と条件付き確率
停止時刻の行和を使うと、期待値は
平均回数は整数である必要はありません。各実験の回数は3・4・5のいずれかでも、多数回の平均はその間の値になります。
と分かった後では、分母を列和 へ更新します。そのうち のセルは なので、
無条件の を答えてはいけません。「終了時に3回検知」という情報が標本を一つの列へ絞っています。
誤答分析
で を使う
4回目は3回目の検知に固定されています。以前の2回を最初の3位置から選ぶので です。
を とする
3回目より前に3回検知した列は既に終了しています。5回目をSに固定し、最初の4回から2位置を選びます。
期限の行に を作る
3回検知した瞬間に終了するため、観測された成功回数が3を超えることはありません。
長さの違う列を同じ分母で個数だけ比較する
SSSは確率 、長さ5の列は各々 です。結果の長さが違えば、一列あたりの確率も同じとは限りません。
独立検算|総和・尾確率・全列挙を突き合わせる
- 台帳の6セルの確率和は1です。したがって停止する全結果の漏れと重複がありません。
- の列和は を分子に持ちます。固定5回の二項分布で「成功3回以上」を計算しても、 となります。
- 尾確率では 、、 です。その和は で、行和からの期待値と一致します。
- S/Fの列を停止条件まで再帰生成すると、重み付き分子は6セルでそれぞれ200・360・243・810・1080・432となり、手計算と一致します。
練習
各回の成功確率が の独立試行を行い、2回成功した時点、または4回目が終わった時点で終了します。試行回数を 、終了時の成功回数を とします。
- 起こり得る の確率を、分母81で台帳にしてください。
- と を求めてください。
- と分かったときの を求めてください。
- の係数が になる理由を、最後の試行に触れて説明してください。
練習の答え
の分子は順に9、12、16、32、12です。合計は81です。
。期待値は です。
です。
4回目で2回目の成功を得るので最後は成功です。最初の3回には成功が1回だけあり、その位置を選ぶため となります。
東大水準への橋渡し|打切り負の二項分布を一般化する
各回の成功確率を 、失敗確率を とし、 回目の成功または期限 で止めます。 において、第 回で 回目の成功を得る確率は
最後の成功を固定し、それ以前の 回から 個の成功位置を選んだ式です。期限までに成功が 回しかないセルは
したがって、期限ちょうどに 回目へ達するセルを重ねずに、
となります。さらに停止前の時刻 でまだ続いているのは、最初の 回の成功が 回以下のときです。よって
ただし の二項係数は0とします。難関大では、公式名を知っていることより、停止直前と期限到達を排反なセルに分け、総和1と期待値の別経路を提示できることが証明の強さになります。
次の学習へ
固定回数の反復試行や条件付き確率を整理するなら条件付き確率・独立・反復試行の解法パターンへ、確率全体の定義へ戻るなら確率の単元解説へ進んでください。事象を集合として読み直す場合は確率の判断ロードマップが次の橋になります。
企画・構成・例題・解答・検算:数強塾編集部。文章・数値・図・解説順を独立に制作したオリジナル教材です。教材版 1019d1025b96e27e
要点辞典この単元の公式・定石・つまずきやすい所は 数学I・Aの要点辞典:確率 にまとめてあります。

