確率漸化式の解法パターン全12型|型の見抜き方と入試実例(神戸大・名古屋大・横浜国大・滋賀医科大・岡山大・九大)

30 SECOND CHECK / なぜ?から始める

まず1問で、始める場所を決める

確率漸化式は、一般のn回後を直接数えず「次の1回に必要な情報」だけを状態に残します。

診断問題
現在Aなら次もAにいる確率は1/3、Bへ移る確率は2/3。現在BならAへ移る確率は2/3、Bに残る確率は1/3とする。n回後にAにいる確率pₙについて、pₙ₊₁をpₙで表せますか。
答えと「なぜ?」を見る

次にAへ入るのは、AからAへ残る場合とBからAへ来る場合です。したがって pₙ₊₁=(1/3)pₙ+(2/3)(1−pₙ)=2/3−pₙ/3。初項と各状態から出る確率の合計も必ず検算します。

次のAへ入る、2本の矢印を足す

冒頭の問題では、\(n\)回後にAにいる確率が\(p_n\)、Bにいる確率が\(1-p_n\)です。次にAにいる確率を求めるので、Aへ入ってくる矢印を集めます。

現在次の1回 A B A 1/32/3 2通りは同時に起きない
図の1/3・2/3は「現在その状態にいる」という条件の下での移動確率です。次のBへ行く矢印は省略しています。
\[p_{n+1}=\underbrace{p_n\cdot\frac13}_{\text{AからA}}+\underbrace{(1-p_n)\cdot\frac23}_{\text{BからA}}=\frac23-\frac13p_n.\]

まず「現在の状態にいる確率」と「そこからAへ移る条件付き確率」を掛けます。二つの出発状態は重ならないので、その積を足せます。矢印の1/3と2/3だけを足して1とするのは誤りです。例えば現在Aにいる確率が1なら、次にAにいる確率は1/3です。

確認問題:2回後を経路でも確かめる

冒頭と同じ移動規則で、最初は必ずAにいるとします。2回後にAにいる確率を求めてください。

答え:\(5/9\)。ヒント:\(p_0=1\)から式を2回使う方法と、A→A→A・A→B→Aを足す方法を比べます。

\[p_1=\frac13,\qquad p_2=\frac23-\frac13\cdot\frac13=\frac59.\]

Aに戻る経路は次の2通りです。ほかの経路は2回後にBにいます。

\[P(A\to A\to A)=\frac13\cdot\frac13=\frac19,\quad P(A\to B\to A)=\frac23\cdot\frac23=\frac49.\]

合計\(1/9+4/9=5/9\)で、漸化式の結果と一致します。各回の移動確率は現在の状態だけで決まる、という問題の規則を使っています。

追加の図・確認問題は本稿用の独自制作。制作・数式検算:Codex、2026年9月13日。追加部分の講師個別監修は未実施です。

進級基準:答えだけでなく、使った条件と検算を1文で説明できたら次へ。


確率漸化式は、確率の分野でいちばん「解けるか解けないか」がはっきり分かれる題材です。ところが不思議なことに、解ける人はどの大学の問題でも同じ手つきで解きます。理由は単純で、この種の問題はほとんどすべて「状態を決めて、1回分の移り変わりだけを書く」という一本の骨格で作られているからです。逆に手が止まる人は、 回後の様子を正面から数えようとして、経路の数に押しつぶされています。このページは、確率漸化式の解法を12の型に分けて並べた辞典です。型は当てはめるための箱ではなく、「何を状態にすれば、過去を忘れてよくなるか」を見つけるための道具として並べています。神戸大学・名古屋大学・横浜国立大学・滋賀医科大学・岡山大学・九州大学の実際の入試問題で、その働きを確かめます。

このページの位置づけ(第1層と第2層)

確率という単元の全体像は、第1層の確率の解法パターン全12型で概観しています。そこでは確率漸化式は12型のうちの1つ(型12)として、要点だけを扱いました。

このページはその1型だけを取り出して深く掘り下げる第2層です。状態の決め方、連立漸化式の消し方、総和が1にならない設定、極限が意味するもの――第1層では触れきれなかったところを、12の型と6つの入試問題で最後まで追いかけます。概観は第1層、深掘りはここ、という役割分担です。辞典全体の目次は解法パターン事典からご覧いただけます。

このページの12型

  1. 状態が2つ(
  2. 状態が3つ以上(連立漸化式)
  3. 点の移動(数直線・格子・多角形の頂点)
  4. 玉の入れ替え・移動
  5. じゃんけん・勝ち抜き
  6. 回目に初めて」型
  7. 対称性で状態をまとめる
  8. 確率の総和が1を使って式を減らす
  9. 連立を消去・数ステップ先へ結ぶ型
  10. 期待値の漸化式
  11. 極限( での確率)
  12. 漸化式を立てるまでが本体(設定の読み替え)

発展|東大の良問006

発展|北大の良問 013 正四面体の4頂点を2状態へ圧縮する確率漸化式

1. 背骨——「 回後」を数えるのをやめ、「1回分の移り変わり」だけを書く

確率漸化式の問題は、作られ方がほとんど決まっています。まず同じ操作を何度もくり返す試行が用意される。さいころをふる、玉を引く、じゃんけんをする、装置のボタンを押す。そして 回後にこうなっている確率を求めよ」と聞かれる。装いはいくらでも変えられますが、作りはこれだけです。

ではなぜ漸化式が必要になるのか。正面から数えると、経路の数が指数的に増えてしまうからです。さいころを 回ふれば経路は 通り。 なら216通りで数え切れますが、問題が聞いているのは一般の です。そこで経路を数えるのをやめて、確率そのものを運ぶ 回後を「どの状態にどれだけの確率が置かれているか」という数の組で表し、1回の操作でその組がどう変わるかだけを書く。すると 回分の情報が「同じ変換を 回くり返す」の一言に圧縮されます。くり返しを式にしたものが漸化式ですから、確率漸化式はこの圧縮の必然的な結果です。

この圧縮を成立させる鍵が「状態」です。状態とは、次に何が起こるかを決めるのに必要な情報だけを残した、現在の要約のこと。神戸大学の問題なら「いま正方形のどの頂点にいるか」、名古屋大学なら「いま何人残っているか」、横浜国立大学なら「いま装置にどの数が表示されているか」。それさえ分かれば、どんな順で来たかは要りません。この「過去を忘れてよい」という性質こそが、漸化式が立つことの正体です。だから状態を決める作業は、記号を用意する作業ではなく「何を覚えておけば足りるか」を見極める作業になります。捨てすぎれば次が決まらず、残しすぎれば状態が無限に増える。そのあいだに線を引くのが第一歩です。

次の確率を決めるのに十分な状態が有限個に収まり、遷移確率が時刻によらないとき、風景が一変します。 回後の確率の組は有限個の数の組であり、1回の操作はそれを別の組へ移すいつも同じ変換になる。あとはその変換を式に書くだけで、書き方は徹底して一つ、「その状態に入ってくる矢印を全部足す」です。出ていく矢印ではありません。

もう一つ、確率だからこそ使える道具が確率の総和です。途中で終わらない設定なら、すべての状態の確率を足すと必ず1になる。この1本の等式が、連立漸化式から未知数を1つ消してくれます。滋賀医科大学の問題では、これで3本の連立がたった1本の2項間漸化式に化けます。九州大学の問題では、終了済みを含めず「次に誰が引くか」だけを数えるため、その3状態の総和は一般に1より小さくなります。そのかわり総和自身が という等比数列になり、それが解答の骨になります。まず総和が何になるかを確かめる――立式のあとの最初の一手です。ここまで来れば残りは数列の仕事。確率漸化式は「確率で立式する前半」と「数列で処理する後半」がはっきり分かれているので、どちらでつまずいたのかを自分で切り分けられます。

最後に、型についての私の立場を書いておきます。型は、考えなくて済ませるための道具ではありません。確率漸化式で本当に難しいのは「状態を何にするか」であり、そこは毎回自分の頭で決めるしかない。ただ、決めたあとの処理まで毎回ゼロから考えていては時間が足りません。過去に何百回も使われてきた「型」から予想して、思考する量を減らすことで、手際よく解法を思い付いている場合もあるのです。型を知っている人は、白紙の前で全部を考えるのではなく考える範囲を狭めてから考えている。その差が、試験時間という制約の中では決定的に効きます。

確率漸化式の立式は、この1行に尽きる

状態を とし、 回後に状態 にいる確率を 、1回の操作で から へ移る確率を とすると

日本語に直せば「その状態に入ってくる矢印を、確率を掛けて全部足す」。公式としてではなく、遷移図を見ながらこの操作をするだけです。そして途中で終わらない設定なら 。この1本で未知数が1つ減ります。

立式で注意したい3点

①出ていく矢印を足してしまう  回後にその状態に到着する確率」です。矢印の向きを毎回口に出して確認してください。

②その場にとどまる確率を忘れる 岡山大学の問題のように「出た目が矢印になければその場にとどまる」設定では自分自身への矢印があります。図に自己ループを描き込む習慣で防げます。

③状態を取りこぼす 各状態から出る確率の合計が1になるかを1状態ずつ確かめれば、取りこぼしはその場で見つかります。

立式前の確認:過去・時刻・終了した状態をどう扱うか

前に示した一定の遷移確率q(i→j)を使う式は、現在の状態が分かれば過去の経路によらず次の確率が決まり、その確率が時刻によって変わらない設定で使います。時刻nで確率が変わる場合も、qn(i→j)と書けば同様の条件分けはできます。位置だけでは次の確率が決まらないなら、直前の動きなど必要な情報も状態に加えます。

試行が終わること自体は、確率の総和が1でなくなる理由ではありません。「終了済み」も状態に含め、終了後はそこに留まるとすれば、全状態の確率の総和は1です。終了前の状態だけを数える場合、その和は「まだ終了していない確率」です。九州大学のan+bn+cnは後者であり、n回目の操作が実施される確率を表します。

発展的な定義はCarnegie Mellon大学のMarkov Chains講義ノートも参照できます。このページでは、まず問題文から次の1回の条件を正確に読み取ることを優先します。

2. 手順——型を選ぶまでの判断の流れ

1状態を決める。「次の1回で何が起こるかを決めるために、いま何を知っていれば足りるか」を自問します。位置か、人数か、表示されている数か、袋の中身か。答えに関係する量ではなく、次を決めるのに必要な量を選ぶのがコツです(型03・型04・型05・型12)。

2状態を数え、遷移図を描く。丸が状態、矢印が1回の操作、脇に確率。自己ループも忘れずに描き、各丸から出る確率の合計が1になることをこの段階で確認します。対称な役割の状態があればここでまとめます(型07)。

3入ってくる矢印を足して漸化式を作り、本数を減らす。途中で終わらないなら総和1で1本消せます(型08)。一方通行の構造があれば、他から入ってこない状態が単独で解けるのでそこから流し込みます(型02)。巡回していて消えないときは、総和や代入を使い、他の文字を消去できる形を探します(型09)。

4数列の型に落として解き、必ず検算する。 なら特性方程式、右辺に があれば両辺を で割る。解いたら を直接計算した値と照合し、さらに確率の総和を確かめます(型06・型11)。

手順1の状態設定が重要です。状態が適切なら、遷移の条件分けと数列の計算へ進めます。逆に状態の取り方を誤ったまま進めると、途中でどうしても閉じない式が現れます。「式が閉じないときは、状態に必要な情報が足りない可能性がある」というサインだと思ってください。そのときは状態の情報と式の整理を見直します。

3. 解法パターン全12型

型01 状態が2つ(

01もう一方は で書けるから、未知数は1つ

顔つき 「表と裏」「AにいるかBにいるか」「当たりかはずれか」など、起こりうる状態が2通りしかない設定。

中身 一方の確率を とすれば他方は 。入ってくる矢印を足すと必ず の形になり、特性方程式(不動点)で解けます。

なぜ効くか 状態が2つなら、確率の総和1がそのまま「もう一方を消す式」になります。だから未知数は最初から1つで、連立を組む必要がない。しかも係数 は「とどまる確率」から「相手から入ってくる確率」を引いた差なので、必ず です。行き来の確率が になる極端な場合を除けば で、2状態の確率漸化式が収束することは式を見た瞬間に分かるのです。このとき不動点 は「行きと帰りが釣り合う配分」で、そのまま極限になります(型11)。

上の一定係数の式では、α=1なら両状態とも移動しない場合で、pnは初期値のままです。α=−1なら毎回必ず相手の状態へ移り、初期値が1/2でない限り確率は交互に変わります。β/(1−α)を使う前にα≠1、指数項が0へ近づくという計算の前に|α|<1を確認しましょう。

型02 状態が3つ以上(連立漸化式)

02まず「他から入ってこない状態」を探す

顔つき 頂点が3つ以上ある図形上の移動、残り人数が3通り以上、表示される数が3種類。

中身 各状態について漸化式を書き、単独で解ける1本を先に解いて、その結果を他の式に代入していきます。

なぜ効くか 連立漸化式は一般には行列の話になりますが、入試で出るものの多くは状態のあいだに一方通行の構造を持っています。じゃんけんの人数は減る一方、装置に表示される数は小さい方へ落ちる一方。この一方通行のおかげで「他のどの状態からも入ってこない状態」が生まれ、その確率だけが単独の等比数列になります。名古屋大学の 、横浜国立大学の がまさにそれです。連立を見たら、まず矢印の入ってこない丸を探す――これだけで多くの問題は上から順に流れ落ちます。

型03 点の移動(数直線・格子・多角形の頂点)

03状態は「いまどこにいるか」だけ

顔つき 「動点 P が頂点 A から出発し、さいころをふるごとに移動する」「数直線上を または 動く」。

中身 頂点や座標を状態にし、隣接関係だけを遷移図に写します。閉じた図形なら状態は有限、数直線なら周期や偶奇で有限に落とします。

なぜ効くか このページの点の移動では、現在の位置だけで次の移動確率が決まる設定を扱います。直前の移動方向によって次の確率が変わる問題なら、その方向も状態に含める必要があります。これは状態の定義そのもので、だから点の移動は確率漸化式のもっとも素直な舞台になります。さらに正多角形では座標を で割った余りのような不変量が見つかることがあり、到達できる頂点が減ります。神戸大学の問題では「 回後は A か C にしかいない」と絞られ、4状態が2状態に落ちました。状態を減らす鍵は、たいてい対称性か不変量にあります。

型04 玉の入れ替え・移動

04「何が変化するのか」を先に決める

顔つき 「袋から玉を1個取り出して色を確認し、袋にもどす」「箱Aから箱Bへ玉を1個移す」。

中身 もどす設定なら袋の中身は不変なので、状態は「誰が引くか」「どこにいるか」など別のものになります。もどさない・入れ替える設定なら「いま赤玉が何個か」が状態です。

なぜ効くか 玉の問題で迷うのは、変化するものが2種類あるように見えるからです。袋の中身と、手番や位置。このどちらが動いているのかを最初に切り分けると、状態が一気に決まります。九州大学の問題は「色を確認したら袋にもどす」ので中身は毎回同じ。したがって袋のことは考えなくてよく、状態は「次に誰が引くか」の3通りだけになります。「もどす/もどさない」の一言が、状態の設計図を決めている――これが玉の問題の急所です。

型05 じゃんけん・勝ち抜き

05状態は「残り人数」。誰が残るかは要らない

顔つき 「負けた人は脱落し、残った人で次回を行う」「勝ち残りが1人になるまで続ける」。

中身 まず1回のじゃんけんの結果を場合の数で完全に分類します(3人なら 通り、2人なら 通り)。そのうえで残り人数を状態にします。

なぜ効くか 全員が同じ確率で手を出すので、誰が残っているかで確率は変わりません。人に貼られた名札を外してよい、というのが対称性の意味です(型07)。すると状態は人数だけになり、しかも人数は減る一方なので遷移が一方通行になり、型02の「上から順に解ける」構造が自動的に手に入ります。1回の分類でつまずくと全部が崩れるので、ここだけは急がずに数えてください。

型06 「 回目に初めて」型

06「まだ終わっていない確率」で漸化式を立てる

顔つき 「ちょうど 回目で終了する確率」「 回目に初めて A にもどる確率」。

中身 その確率の漸化式を直接立てるのではなく、 回目まで続いている確率」を求めておき、最後に「 回目で終わる確率」を掛けて足します。

なぜ効くか 「ちょうど 回目に初めて」という量も漸化式で扱えますが、求めたい確率1つだけでは式が閉じない場合があります。「すでに到達したか」を位置だけからは判定できないためです。過去の全履歴ではなく、まだ到達していないという情報と、次の動きを決める状態を残します。このように状態を取り直すことで、次に不要な過去の情報を省けます。この型は、状態の取り直しによって漸化式が立つようにする操作なのです。注意が一つ。この構成では だけが例外になりやすい。出発点は特別な状態で、1回目だけ経路が違うからです。岡山大学の問題では が一般式に乗らず、場合分けが必要になりました。求めた式に を入れて実際の値と合うか確かめる――省略できない手順です。

型07 対称性で状態をまとめる

07役割が同じ状態は、1つにまとめてよい

顔つき 正方形の頂点 B と D、正六角形の対称な位置、区別のつかない複数の人。

中身  が成り立つ理由(ラベルの張り替えで問題が自分自身に写ること)を述べたうえで、2つの状態を1つに統合します。

なぜ効くか 状態が1つ減ると連立漸化式の本数が1本減り、消去の手間は目に見えて軽くなります。ただし「対称だから同じ」で済ませてはいけません。答案では「B と D を入れ替える対応で規則も出発点もそのまま写る。ゆえに 」と、張り替えても問題が変わらないことを根拠として書きます。対称性は感覚ではなく、写像として説明できる事実です。

個別の確率が等しいことと、状態をまとめて追えることは区別します。例えばBとCをまとめるには、Bから各グループへ移る確率の合計と、Cから各グループへ移る確率の合計が一致するかを確認します。まとめた後の遷移が内部の居場所に依存しなければ、BとCの確率が等しくなくても合計だけで式を作れます。北大の例ではB・C・DのどこからもAへ戻る確率がa/3なので、この条件を満たします。

型08 確率の総和が1を使って式を減らす

083本のうち1本は、他の2本の言い換えにすぎない

顔つき 状態が3つで、試行が途中で終わらない設定。誘導に「 を利用して」と書かれていることも多い。

中身  のように置き換え、1つの文字だけの2項間漸化式を作ります。

なぜ効くか 3つの漸化式は独立ではありません。総和が常に1という制約があるので自由に動ける量は実質2つで、3本目は情報を何も足していない。だから1本捨てても失うものはありません。しかも捨て方によっては思いがけないほど式が簡単になります。滋賀医科大学の問題では に替えるだけで だけの2項間漸化式が現れます。「両側から同じ確率で入ってくる真ん中の状態」は、この置き換えで単独になりやすい――覚えておく価値のある観察です。

型09 連立を消去・数ステップ先へ結ぶ型

09巡回して消えないときは、代入をくり返して自分に戻す

顔つき 状態が輪になってつながっている(A→B→C→A)。どの式も単独では解けない。

中身 1本の式に他の式を順に代入していくと、いずれ自分自身が現れます。単純な巡回構造や総和の関係を使える場合には、数ステップ先と結ぶ式に整理できることがあります。

なぜ効くか 一方通行の構造がない循環型では型02の「上から順に」が使えません。ただし、枝分かれや自己ループがある一般の連立では、輪を一周させるだけで必ず1文字になるとは限りません。総和などの既知の関係を使い、実際に他の文字を消去できるか確かめます。九州大学の問題では を、 を、 を代入して3項飛びの関係 が現れました。「消えないなら、一周させる」――循環型の合言葉です。このとき 番目まで遡るので、成り立つ範囲が に限られることも必ず書き添えてください。

型10 期待値の漸化式

10期待値は「次の行き先」で条件分けする

顔つき 「 回後の得点の期待値を とする」「操作を1回行うごとに点数が加算される」。

中身 「一定回数後の得点」と「終了までの残り回数」を区別します。得点なら、現在の状態ごとに次回の増分を条件づけて期待値を足します。終了までの回数なら、現在の状態から次に移る行き先で条件分けし、今回の1回と、その後に必要な期待回数を足します。

なぜ効くか 期待値は、1回進んだ後の行き先で条件分けして求められます。ただし確率分布を次の時刻へ運ぶ式と、残りの期待回数を求める式は向きが異なります。状態iから終了までの期待回数をEiとすると、有限であることを確認したうえでEi=1+Σjq(i→j)Ejと置きます。終了状態の残り回数は0です。ここではiから出ていく矢印を使います。根拠はLancaster大学の期待到達時間の講義ノートでも確認できます。なお、有限な期待値の足し算には独立性は不要です。

期待値を有限の数として計算できるかも確認します。後のさいころ演習では、m回終了しない確率が(5/6)mなので尾確率の和が有限です。表が2回続く演習では、独立な2投ずつのブロックでHHになる確率が1/4。mブロックまで未終了の確率は(3/4)m以下なので、期待回数は有限です。この確認があって、Eを両辺から引く計算を正当化できます。

型11 極限( での確率)

11行き来が釣り合う配分に落ち着く

顔つき 小問の最後に「 を求めよ」。

中身 一般項に現れる 型の項は なら0に近づくので、残った定数が答えです。

なぜ効くか 定常分布とは、1回操作しても変わらない確率の配分です。滋賀医科大学の例では、AとBの間で「Aの割合×1/2=Bの割合×1/3」、BとCの間でも同様に釣り合う配分を探すと、2:3:2となります。ただし、全体の流入が釣り合うことと、各2状態間で往復の流れが釣り合うことは一般には別です。また、定常分布を求めただけでは、出発状態からそこへ収束する証明にはなりません。この例では一般項の指数部分が0に近づくことまで確認して極限を求めます。

対称でも収束しない例:AからBへ、BからAへ毎回必ず移ると、Aから出発したAの確率は1、0、1、0、…となります。定常分布(1/2,1/2)はありますが、この初期状態からは収束しません。有限状態の一般論では、互いに到達できることに加え、周期性の条件も重要です。入試では、まず自分で求めた一般項から収束を確かめましょう。

型12 漸化式を立てるまでが本体(設定の読み替え)

12問題文は「確率漸化式です」とは名乗らない

顔つき 整数を表示する装置、規則で書き換えられる文字列、階段の上り方。一見すると確率漸化式に見えない設定。

中身 「同じ操作をくり返す」「 回後を聞かれている」の2点が揃っていたら、状態が有限個に収まらないかを疑います

なぜ効くか この型の難しさは計算ではなく状態集合を自分で発見しなければならないところにあります。横浜国立大学の問題では、装置は最初 を表示していますが、1回操作すると表示は のいずれかに落ち、そこからは外へ出られません。気づいた瞬間、無限にありそうだった状態が3個に確定し、あとは型02の連立漸化式です。「1回操作したら、行き先はどこまで広がるか」を実際に手で計算してみる――これが状態集合を見つける確実な方法です。試験場ではまず1回分を全部書き出す。それが最短の道になります。

4. 実際の入試で確かめる

全12型のうち、入試の実例がついているのは11型1マスが1つの型です。青いマスは、下にある入試の実例で確かめている型です白いマスは、下にある入試の実例では扱っていない型です010203040506070809101112解法パターン12型入試の実例で確かめる11型下の実例にない1型11 + 1 = 12型。この図は下にある入試の実例が扱う型を数えたものです入試の実例は6問。実例の数と型の数は必ずしも一致しません

この単元の解法パターンは全12型で、下にある入試の実例6問で確かめているのは11型です。残りの1型は、下にある実例では扱っていません。1問が複数の型にまたがることも、同じ型を複数の実例で扱うこともあるため、実例の数と型の数は必ずしも一致しません。

ここからは実際に出題された問題で型を確かめます。問題文は各大学が公表した入試問題を、解説のために引用したものです。解答・解説は数強塾が独自に作成したものであり、大学が公表した解答ではありません。解答の確認では、初期値・漸化式への代入と小さい回数の直接計算を区別して示します。数値の一致だけで一般項が証明されたとは考えず、式変形の根拠も確認してください。

神戸大学 2013年度 ―― 型01・型03・型07・型08・型11。4状態が2状態に落ちる

この問題は 漸化式の全型条件付き確率・独立・反復試行漸化式の全型 のページでも扱っています。同じ問題でも、そちらは単元全体の中での位置づけ、ここではこのテーマに絞った読み方をしています。二つを見比べると、同じ問題文から引き出せるものが1つではないことが分かります。

この問題は漸化式の解法パターン全20型でも扱っています。あちらは立てたあとの漸化式をどう解くかが主題で、こちらは状態をどう決めて漸化式を立てるかに絞って読み直します。

【問題】神戸大学 2013年度 前期日程 理科系

動点 P が、正方形 ABCD の頂点 A から出発し、さいころをふるごとに、次の規則により正方形のある頂点から他の頂点に移動する。

・出た目の数が2以下なら辺 AB と平行な方向に移動する。

・出た目の数が3以上なら辺 AD と平行な方向に移動する。

を自然数とするとき、さいころを 回ふった後に動点 P が A にいる確率を 、C にいる確率を とする。次の問いに答えよ。

(1)  を求めよ。

(2) さいころを 回ふった後、動点 P は A または C にいることを証明せよ。

(3)  を用いてそれぞれ表せ。

(4)  をそれぞれ求めよ。

【解答】

(1)  (3)  (4)

準備。1回の移動で横(AB 方向)に動く確率は 、縦(AD 方向)は 。ここで と座標を入れると、横移動は を、縦移動は で入れ替える操作になります。図形の問題が、2つのスイッチの切り替えに翻訳されました。

(1) 2回で A にもどるのは「横・横」または「縦・縦」だけです。

(2)  回のうち横移動が 回、縦移動が 回だったとすると、到達点の座標は

の偶奇は一致するので、、すなわちA か Cに限られます。

(2) が (3) の準備になっている

(2) で「B と D にはいない」と分かった瞬間、4つあった状態が2つに減ります。残るのは A と C だけなので が使えます(型08)。誘導の (2) は証明問題の顔をしていますが、実質は状態を減らすための小問です。

(3) さいころ2回分を1ステップとして扱います。A から2回で A にもどる確率は (1) より 。A から2回で C に行くのは「横・縦」か「縦・横」なので 。C から出発しても同じ計算になり(型07)、入ってくる矢印を足して

を代入すると未知数が1つになります(型01)。

不動点は より 。よって なので

(4)  なので

この問題で使った型

型03 正方形の頂点を状態にした。型07 A と C の役割が対称なので、C からの推移を計算し直さずに済んだ。型08  で連立を1本に減らした。型01 残った1本を特性方程式で解いた。型11  の絶対値が1未満なので、極限が不動点 に一致した。

検算のしかた

①小さい で直接計算する  を一般式に入れると で (1) と一致。 なら で、1歩ずつの移動を4回分たどっても同じ値です。偶数回後のB と D の確率が0であることも同時に確かめられ、(2) の主張の裏づけになります。

②別の道で解き直す A にいる条件は「横移動の回数が偶数」でした。1回で横に動く確率が 、動かない確率が なので、偶数回になる確率は

漸化式を一切使わずに同じ式が出ます。まったく違う道で同じ答えに着くのは、最も強い検算です。

急所は「2回分を1ステップにまとめる」ことです。1回ごとに漸化式を立てようとすると状態は A, B, C, D の4つ。ところが (2) で「偶数回後は A か C」と分かるので、2回ぶんをひとまとまりにすれば状態は最初から2つになる。「1回」を1ステップにしなければならない理由は、どこにもありません。誘導の順番も見てください。(1) で2回分の確率を計算させ、(2) で状態を2つに絞らせ、(3) で漸化式に持ちこませる。小問の並びが、そのまま解法の手順書になっています。

名古屋大学 2013年度 ―― 型05・型02・型06。人数だけを状態にする

この問題は 確率 のページでも扱っています。同じ問題でも、そちらは単元全体の中での位置づけ、ここではこのテーマに絞った読み方をしています。二つを見比べると、同じ問題文から引き出せるものが1つではないことが分かります。

この問題は第1層の確率の型12(確率と漸化式)でも紹介しました。ここでは一方通行の状態構造指数のついた漸化式の処理の2点に絞って、より深く読み直します。

【問題】名古屋大学 2013年度 前期日程

3人でジャンケンをする。各人はグー、チョキ、パーをそれぞれ の確率で出すものとする。負けた人は脱落し、残った人で次回のジャンケンを行い(アイコのときは誰も脱落しない)、勝ち残りが1人になるまでジャンケンを続ける。このとき各回の試行は独立とする。3人でジャンケンを始め、ジャンケンが 回目まで続いて 回目終了時に2人が残っている確率を 、3人が残っている確率を とおく。

(1)  を求めよ。

(2)  がみたす漸化式を導き、 の一般項を求めよ。

(3) ちょうど 回目で1人の勝ち残りが決まる確率を求めよ。

【解答】

(1)  (2)  (3)

準備。1回の結果を完全に分類します。3人の手の出方は 通り。

1回の結果 通り数 確率 次の人数
あいこ(3人同じ3通り、3種類そろう6通り) 3人
2人が勝つ(多い方の手が勝つ) 2人
1人が勝つ(少ない方の手が勝つ) 1人(終了)

2人のときは 通りで、同じ手の3通りがあいこ(確率 )、異なる手の6通りで決着(確率 )です。

(1) 上の表からそのまま

(2) 3人にもどる道はありません。3人が残るのは「前回も3人で、今回あいこ」の場合だけです。

2人が残るのは「前回3人で今回1人脱落」または「前回2人で今回あいこ」なので

右辺に が出てきたら、両辺を します。 とおくと より 。したがって

(3) ちょうど 回目で決まるのは、 回終了時に3人残っていて 回目で1人が勝つ場合(確率 )と、2人残っていて 回目で決着する場合(確率 )です。 では

のときは3人での1人勝ちなので で、上の式に を入れた値と一致します。よって

この問題で使った型

型05 状態を「残り人数」にした。誰が残るかは対称性から不要(型07)。型02 3人へは戻れないので が単独で解け、それを の式に流し込んだ。型06 「ちょうど 回目で終了」を 回目までの状態から作り直した。

検算のしかた

①確率の総和が1か 確率1でいつか勝者が決まるので、終了確率をすべて足すと1になるはずです。

試験中にできる最強の検算がこれです。確率漸化式では必ず試してください。

を直接計算する  のはず。実際「1回目あいこ→2回目で1人脱落」が 、「1回目で1人脱落→2回目あいこ」が で、合計 。合っています。推移確率そのものを27通りから数え直すのも忘れずに。ここが狂うとすべてが狂います。

3人からの行き先が3等分になる事実が、この問題を美しくしています。27通りを「あいこ9・2人勝ち9・1人勝ち9」と分けたとき多くの人が偶然だと感じますが、そうではありません。3人の手の組合せは「3人とも同じ」「3種類そろう」「2種類だけ」の3タイプしかなく、最初の2つがあいこ、最後は多い方が勝つか少ない方が勝つかで9通りずつに割れる。構造を見れば、数える前に3等分だと予想できます。

そして (2) の は、公比と同じ数の指数項が右辺にある形です。これは定数の不動点を引くだけでは処理できないため、両辺を公比の 乗で払って階差型にするのが定石。結果として が現れ、 の分子に が出ます。「答えの分子に が現れたら、途中で階差型を通ったはず」――答えの形から自分の計算を検証できます。

横浜国立大学 2013年度 ―― 型12・型02・型08。状態集合を自分で見つける

【問題】横浜国立大学 2013年度 前期日程

1つの整数を表示する装置がある。最初に が表示されている。さいころを1回投げるたびに次の操作 を行う。

  表示されている整数をさいころの出た目の数で割った余り を求め、装置に を表示させる。

さいころを 回投げたとき、最後に装置に表示されている整数が である確率を である確率を である確率を とする。次の問いに答えよ。

(1)  を求めよ。

(2)  を用いて表せ。

(3)  の式で表せ。

【解答】

(1)

(3)

(1)  から までで割った余りを1つずつ求めます。

割る数
余り

余りは が2通り、 が2通り、 が2通り。よって

ここがこの問題の本体

1回の操作で、表示は必ず のどれかになりました。そしてこの3つからは二度と外へ出られません。実際 はどの目で割っても のいずれかです。

状態はこの3つで閉じている――ここに気づいた時点で、3状態の連立漸化式に確定します(型12)。問題文が の3つしか用意していないことも、そのヒントです。

(2) 各表示からの行き先を数えます。

いまの表示 になる目 になる目 になる目
(確率 なし なし
(確率 (確率 なし
(確率 (確率 (確率

入ってくる矢印を足して、

(3) 下から順に解きます。 には しか入ってこないので、これが単独の等比数列です(型02)。

次に を代入すると 。ここで次の変形ができます。

実際、右辺を展開すると で、左辺の余分な項も で一致します。初項は なので

最後に 。表示は必ず のいずれかなので (型08)。

ここで なので、後ろの2項は足し算ではなく引き算

まとめて

この問題で使った型

型12 「余りを表示する装置」という設定から、状態集合 を自分で見つけた。型02  が単独で解け、 の順に流し込めた。型08 最後は総和1で を一気に出した。

検算のしかた

①小さい を直接たどる  を一般式に入れると から3回分を厳密な分数のまま追っても同じ値です。分母が と揃わないので、うっかりミスがあればすぐ露見します。

②総和が1か 。合っています。最後の符号を取り違えるとこの の照合で必ず引っかかるので、符号ミスは数値の照合で捕まえられます。

難所は計算ではなく「状態がどこまで増えるか」を見切ることです。最初の表示は という大きな数で、行き先は無限に広がりそうに見えます。ところが1回操作すれば表示は のいずれか。1回分を手で全部書き出すだけで、無限が3個に縮むのです。

もう一つ、 を漸化式ではなく総和1で出したことに注目してください。いちばん複雑な式は解かずに、残り物として求める――確率漸化式全体で使える節約術です。表示が になったらもう動かない(吸収状態)ので、 は「まだ になっていない確率を1から引いたもの」だと読めます。式の意味が読めると、計算しないで済む場所が見えてきます。

滋賀医科大学 2019年度 ―― 型02・型08・型11。真ん中の頂点を先に落とす

この問題は 漸化式の全型漸化式の全型 のページでも扱っています。同じ問題でも、そちらは単元全体の中での位置づけ、ここではこのテーマに絞った読み方をしています。二つを見比べると、同じ問題文から引き出せるものが1つではないことが分かります。

この問題は漸化式の解法パターン全20型でも扱っています。あちらは連立漸化式と置きかえの練習台として、こちらは総和1で真ん中の状態を単独にするという確率側の視点から読み直します。

【問題】滋賀医科大学 2019年度 前期日程

3つの頂点 A, B, C が線分でつながっている(A—B—C の順)。この図形の上を点 P が次の規則に従って動く。以下、 は 0 以上の整数である。

・時刻 0 に点 P は頂点 A にいる。

・時刻 に P が A にいる場合、時刻 において、確率 で A にとどまり、確率 で B に移動している。

・時刻 に P が B にいる場合、時刻 において、確率 で B にとどまり、確率 で A に、確率 で C に移動している。

・時刻 に P が C にいる場合、時刻 において、確率 で C にとどまり、確率 で B に移動している。

時刻 に P が A, B, C にいる確率をそれぞれ とする。

(1)  を用いて表せ。

(2) (1) の結果と を利用して、 の式で表せ。

(3)  とおく。 の式で表せ。

(4)  を求めよ。

【解答】

(2)  (3)  (4)

(1) 入ってくる矢印を足すだけです。自分自身にとどまる矢印を忘れないこと。

(2)  の式を、 がまとまる形に書き直します。 を代入すると、 だけの2項間漸化式になります(型08)。

不動点は より 。よって 。出発点は A なので

(3)  の両辺を 倍すると 。ここに を代入します。 を使うと

階差型になりました。 なので、 から まで足して

定数部分は なので

(4)  なので

この問題で使った型

型08  の一手で、3本の連立が だけの2項間漸化式になった。型02 求めた の式に流し込んだ。型11 極限が という釣り合いの配分に一致した。

検算のしかた

①出発の値で確かめる  のとき 。どちらも出発点 A と合っています。 の代入は一瞬でできて、係数のミスをよく捕まえます。

②釣り合いから極限を予想する A から B へ 、B から A へ なので、釣り合いの比は 。極限は 、すなわち 解く前に予想できます。3つを別々に出したのに合計が1になることも、正しさの強い証拠です。

なぜ真ん中の B が単独で落ちるのか。偶然ではありません。B には A からも C からも同じ確率 で入ってきます。入ってくる確率が等しいので、 という和の形でしか現れない。そこへ総和1が効いて、和が に置き換わる。「両側から同じ確率で入ってくる状態は、総和1で単独になる」という現象で、対称な図形では非常によく起こります。この見立てができれば、誘導がなくても自力で同じ道を選べます。

(3) の という置き換えの意味も見ておきましょう。 は、放っておくと 倍ずつ縮んでいく式です。 を掛けるのは、この縮みをちょうど打ち消す操作。縮みが消えれば残るのは足し算だけ、つまり階差型です。「両辺を公比で割る」という定石の正体は、変化の主成分を取り除いて残りを見ること――こう理解すれば、誘導が付いていない問題でも を自分で思いつけます。

岡山大学 2018年度 ―― 型03・型06・型02。とどまる確率がある型

【問題】岡山大学 2018年度 前期日程 理系

図のような経路の図があり、次のようなゲームを考える。最初は A から出発し、1回の操作で、1個のさいころを投げて、出た目の数字が矢印にあればその方向に進み、なければその場にとどまる。この操作を繰り返し、D に到達したらゲームは終了する。

矢印は A→B が 、A→C が 、A→D が 、B→C が 、B→D が 、C→D が である。

(1) ちょうど 回の操作を行った後に B にいる確率を の式で表せ。

(2) ちょうど 回の操作を行った後に C にいる確率を の式で表せ。

(3) ちょうど 回の操作でゲームが終了する確率を の式で表せ。

【解答】

(1)  (2)

(3) では

準備。とどまる確率を先に整理します。これがこの問題の生命線です。

いる場所 出ていく目 とどまる目 とどまる確率
A (6目すべて) なし
B
C

A からは必ず動きます。6つの目がすべて矢印に使われているからです。したがって1回目の操作で、点は必ず B, C, D のいずれかへ移ります。

(1) B に入れるのは A からだけで、A にいるのは出発時(0回後)だけです。よって 回後に B にいるのは「1回目に が出て B へ行き(確率 )、以後 回続けて が出てとどまる(各回 )」という1本道だけ。

漸化式を立てるまでもなく、等比数列で書けてしまいます。

(2) C には「C にとどまる」と「B から来る」の2本が入ってきます。 で、 では

右辺に 型があるので、両辺を します。 とおくと

不動点は なので 。初項が より 。したがって

(3) D に入るのは A から(目 、確率 )、B から(目 、確率 )、C から(目 、確率 )です。 は特別で、このときだけ A にいるので では A にはもういないので

に直してまとめると

この問題で使った型

型03 4つの地点を状態にした。D は到達したら終わりの吸収状態。型02 入口が1つの B は漸化式なしで等比、入口が2つの C だけが漸化式になった。型06 「ちょうど 回で終了」を 回後の状態から作り、 を別扱いにした。

検算のしかた

を一般式に入れてみる (3) の一般式に を入れると で、実際の 合いません。だから場合分けが必要だと分かります。「合わないこと」を確認するのも検算のうちです。

②小さい を直接たどる  では 。遷移をそのまま4回分たどっても同じ値です。

③終了確率の総和 ゲームは確率1でいつか終わるので のはずで、等比級数の和で計算すると実際に1になります。

「入口がいくつあるか」で、漸化式が要るかどうかが決まります。B に入る矢印は A からの1本だけ。しかも A にいるのは0回後だけなので、B に至る道は1本道です。だから漸化式を立てる必要すらなく、等比数列で直接書けます。一方 C には2本あるので初めて漸化式が必要になる。状態の個数ではなく、入ってくる矢印の本数を数える――これが処理量を最小にする判断基準です。

という置き換えについても一言。右辺の と左辺の公比 は違う数ですが、両方の分母にある を払うのが目的なので を掛けます。「何を掛ければ式がいちばん簡単になるか」は、分母を見れば決まるのです。公比だからと機械的に で割ると、かえって煩雑になります。

九州大学 2017年度 ―― 型04・型09・型02。総和が1にならない型

【問題】九州大学 2017年度 前期日程 理系

赤玉2個、青玉1個、白玉1個が入った袋が置かれた円形のテーブルの周りに A, B, C の3人がこの順番で時計回りに着席している。3人のうち、ひとりが袋から玉を1個取り出し、色を確認したら袋にもどす操作を考える。1回目は A が玉を取り出し、次のルール (a), (b), (c) に従って勝者が決まるまで操作を繰り返す。

(a) 赤玉を取り出したら、取り出した人を勝者とする。

(b) 青玉を取り出したら、次の回も同じ人が玉を取り出す。

(c) 白玉を取り出したら、取り出した人の左隣りの人が次の回に玉を取り出す。

A, B, C の3人が 回目に玉を取り出す確率をそれぞれ とする。ただし である。以下の問いに答えよ。

(1) A が4回目に勝つ確率と7回目に勝つ確率をそれぞれ求めよ。

(2)  とおくとき、 を求めよ。

(3) 自然数 に対し、 を用いて表せ。

【解答】

(1) 4回目 、7回目  (2)  (3)

準備。玉は全部で4個で、色を確認したら袋にもどすので中身は毎回同じです(型04)。赤(確率 )ならその人が勝って終了、青()なら同じ人が続け、白()なら左隣りへ渡す。円卓で中心を向いて A, B, C が時計回りに座っているので、左隣りは A→B→C→A の順です。したがって

和が1にならないことに注意

は「 回目に玉を取り出す確率」です。すでに勝者が決まって終わっている場合はどれにも入らないので、 は1になりません。ここを1だと思い込むと、すべてが崩れます。

この設定では (2) がその和を求めさせる小問になっており、「和が1でないなら、和は何になるのか」を先に押さえるという手順が誘導として組み込まれています。

(1) 漸化式を順に回します。

A が 回目に勝つのは「 回目に A が引き、かつ赤を引く」ときなので、確率は

(2) 3式を辺々加えると なので

意味も明快です。1回の操作で確率 で終了し、残り が次回に持ち越される――これがそのまま公比 の等比数列になっています。

(3)  の括弧を と書き換えます(総和を使って文字を減らす、型08の変形版)。同じ要領で 下から順に代入します(型09)。

なので、 の部分は 。したがって

を使ったので 、すなわち が必要です。

この問題で使った型

型04 玉をもどすので袋の中身は不変。状態は「次に誰が引くか」の3通りだけ。型09 A→B→C→A と巡回しているので、一周ぶん代入して に戻した。型02 連立の消去そのものが (3) の主題。総和が1でなく になることを先に押さえたのが鍵。

検算のしかた

①(3) の式に小さい を入れる  なら でも で合います。

②総和 を表で確かめる  なら 。合っています。

③確率1でいつか終わるか  回目に誰かが勝つ確率は で、総和は 確率1で勝者が出るという事実と合致します。

見どころは、総和が1でないことを逆に武器にした点です。ふつうの確率漸化式では を使って文字を減らします。ここではその和が という既知の関数になったので、まったく同じように文字を減らせる。「和が1か、和が既知か」――どちらでも使い方は同じなのです。総和が1でないと分かった瞬間に諦めてしまう人がいますが、必要なのは1という値ではなく「和が分かっていること」だけです。

そして (3) の代入の連鎖。 と一周させると自分に戻り、係数は になります。符号が負になるのは、途中で「和から引く」形を3回通るから。輪の長さが3なので3項飛び、係数は 、符号は負――この3点は、計算する前に構造から予想できます。

5. よくある質問

Q1. 状態をどう決めればよいか分かりません。

A. 次の1回で何が起こるかを決めるために、いま何を知っていれば足りるかを自問してください。位置なのか、残り人数なのか、表示されている数なのか。そこまでの経路を覚えていないと次が決まらないなら、情報を捨てすぎています。逆に、答えに関係する量を全部覚えようとすると状態が増えすぎます。

Q2. 漸化式を立てるとき、矢印の向きをよく間違えます。

A. 次の回にある状態へ到着する確率は、「出発状態にいる確率×その状態へ移る確率」を、全ての出発状態について足します。自分自身に留まる経路も含めます。これは確率分布を前へ進める式です。終了までの期待回数を求める式では、現在地から出ていく行き先で条件分けするので、求める量を区別しましょう。

Q3. 確率の和が1にならず、計算が合いません。

A. 終了済みを含めて全ての状態を数えるなら、確率の和は1です。終了前の状態だけを数えると、その和は未終了確率になります。九州大学の例では「n回目に誰が引くか」の3状態だけなので、その和は(1/2)のn−1乗です。計算ミスかどうか判断する前に、各記号がどの事象を数えているかを確かめましょう。

Q4. 一般項は出たのに、答えが合っているか不安です。

A. 小さい回数を直接計算して一般項と比べ、初期値・漸化式・確率の総和を確認します。終了時刻の確率を足す場合、その和は「いつか終了する確率」であり、必ず1とは限りません。このページの終了問題では未終了確率が0へ近づくことも確認します。有限個の数値が一致しただけで、全てのnについて証明できたとはいえません。

Q5. 型を覚えれば初見の確率漸化式も解けますか。

A. 型は考えなくて済ませる道具ではなく、考える範囲を狭めるための道具です。過去に何百回も使われてきた型から予想して、思考する量を減らすことで、手際よく解法を思い付いている場合もあるのです。狭めたあとの、状態を何にするかという判断は自分で考える必要があります。それでも、白紙のまま全部を考えずに済むという差は決定的です。

東大の良問 006

箱のボール移動を周期でまとめる確率漸化式|東大2010年理科第3問

31個の状態をすべて追う必要はありません。1回後のボール数を直接書くと、10は2回、6は4回で元の状態へ戻る経路を持ちます。「成功・再出発・失敗」を1ブロックにまとめれば、多数回の操作が一次漸化式へ縮みます。

  • 東京大学
  • 2010年度 前期日程
  • 数学(理科)第3問
  • 文科第3問と導入・(1)(2)共通
  • (3)は理科のみ
  • 数学A 確率
  • 発展

問題

2つの箱 ,ボール30個,コイン投げで表と裏が等確率 で出るコイン1枚を用意する。 を0以上30以下の整数とする。 個, 個のボールを入れ,次の操作(#)を繰り返す。

(#) に入っているボールの個数を とする。コインを投げ,表が出れば箱 から箱 に,裏が出れば箱 から箱 に, 個のボールを移す。ただし, のとき のとき とする。

回の操作の後,箱 のボールの個数が30である確率を とする。たとえば

となる。以下の問(1),(2),(3)に答えよ。

(1) のとき, に対してうまく を選び, で表せ。

(2) を自然数とするとき, を求めよ。

(3) を自然数とするとき, を求めよ。

出典:東京大学2010年度第2次学力試験(前期日程)数学(理科)第3問。問題文の表記はウェブ表示用に一部調整しています。

段階別ヒント

ヒント1| より「次のLの個数」を書く

では、表なら 個増えて 、裏なら 個減って0です。 では、表なら 個増えて30、裏なら同じ個数だけ減って です。

ヒント2|0と30はその後も動かない

なので、0と30は吸収状態です。したがって です。最初の1投で条件づけると(1)が出ます。

ヒント3|10から2回分だけ追う

10から表なら20、裏なら0。20から表なら30、裏なら10です。2回で「成功30」「元の10」「失敗0」の3つに分かれるので、 と置きます。

ヒント4|6から元に戻るまで追う

継続する枝だけ追うと です。24と18では表が出れば30へ成功し、最後に裏が出たときだけ6へ戻ります。

ヒント5|定数項付き漸化式は固定点を引く

の一定値 で求めます。 とすれば等比数列です。

10の2手ブロック 1020300 表・成功 裏・10へ戻る 最初が裏・失敗
6の4手ブロック 6122418300 表・成功 裏・6へ戻る 最初・2投目の裏で失敗
青い循環だけを追い、緑を成功、赤を失敗として1ブロックにまとめます。

解答・解説

準備|0と30は吸収状態

だから、箱Lの個数が0または30になった後は何回操作しても変化しない。以下、0回操作後についても では と補助的に定める。すると、0以上の整数 に対して

(1) 最初の1投で条件づける

のとき:表なら箱Lは 個、裏なら0個になる。(1)より、

したがって と選べばよい。

のとき:表なら30個、裏なら 個になる。(1)より、

したがって と選べばよい。

(1)の答え:

境界 でも直接成立する。2区間は整数 を漏れなく覆う。

(2) 10から2手で戻す

補助定義 のもとで式(2),式(3)は でも成り立つ。したがって、 に対して

とし、 とおく。0回操作では10個のままなので 。式(4)から

固定点 より 。したがって

(2)の答え:

(3) 6から4手で戻す

とし、継続する状態列 に沿って式(2),式(3)を適用する。

とし、 とおけば であり、

固定点 より 。よって

(3)の答え:

別解|成功・再出発・失敗を1ブロックで数える

10から2投:表をH、裏をTと書く。HHなら30へ成功、HTなら10へ戻り、最初がTなら0へ失敗する。

2投の結果 状態 確率
HH 30へ成功
HT 10へ戻り再出発
Tで始まる 0へ失敗

再出発を 回繰り返した後に成功する確率を足すと、

6から4投:HHHなら3投目で30、HHTHなら4投目で30、HHTTなら6へ戻る。それ以外は途中で0へ入る。

4投までの結果 状態 確率
HHH 30へ成功
HHTH 30へ成功
HHTT 6へ戻り再出発
それ以外 0へ失敗

1ブロックの成功確率は 、再出発は だから、

0と30は吸収状態なので、途中で成功・失敗しても残りの操作で状態は変わらない。したがってこのブロック計算は「ちょうど 回後」「ちょうど 回後」の確率を正確に表しています。

解法を思いつくための再現手順

  1. 状態を1つの数にする。全配置でなく、箱Lの個数 だけを追えば次の状態が決まる。
  2. 1回後を直接書く。 の式を眺め続けず、表・裏後のLの個数を2区間で表にする。
  3. 吸収状態を固定する。0は失敗のまま、30は成功のままなので、
  4. 最初の1投で条件づける。表と裏は排反で全事象だから、それぞれの後の確率を 倍して足す。
  5. 必要な軌道だけ追う。31状態全部でなく、10と6から始まる短い状態列だけを書く。
  6. 元へ戻る周期を1ブロックにする。2手・4手の終点を成功、再出発、失敗へ分類する。
  7. 固定点を引く。定数項付き一次漸化式を等比数列へ直し、初期値 を入れる。
  8. 境界と小さいnで検算する。 を代入し、確率が0から1の間にあることも確認する。

よくある誤り

誤り 直し方
の表後を とする 移すのは 個なので、表後は必ず30です。
の裏後を とする 元の 個から 個を引き、 個になります。
式(3)の定数 を落とす 表ならその時点で30へ入り、残りも成功のままです。その確率が です。
0と30からもボールが動くと考える なので両方とも吸収状態です。
10へ戻る確率を とする 10→20に表、20→10に裏が必要なので です。
(3)の成功率を だけにする HHHだけでなくHHTHでも成功します。合計は です。
6への再出発率を とする HHTTの4投すべてが指定されるので です。
ブロックを無条件に独立として掛ける 元の状態へ戻った場合だけ、以後が同じ試行として再出発することを確認します。
固定点を引かず等比数列だとみなす は非同次です。 を満たす固定点を引きます。

この問題で押さえること:状態が多い確率の問題でも、「成功・失敗・振り出しに戻る」の周期ブロックにまとめると一次漸化式に縮むことがある。状態を数え上げる前に周期構造を探す、を押さえよう。

前提単元と次に解く問題

教材について:解答・解説・ヒント・図は数強塾が独自に作成した非公式教材で、東京大学が公表した公式解答・公式見解ではありません。問題の著作権は東京大学に帰属し、出典を明示して掲載しています。

北大の良問 013

正四面体の4頂点を2状態へ圧縮する確率漸化式|北大2017年文系第3問

4頂点を別々に追う必要はありません。知りたいのが「頂点Aにいる確率」なら、状態をAにいる/A以外にいるの2つへまとめられます。最後の1秒だけを見て漸化式を立て、定常値を引けば等比数列になります。

  • 北海道大学
  • 2017年度 前期日程
  • 数学(文系)第3問
  • 文系専用
  • 数学A 確率
  • 確率漸化式
  • 標準〜発展

問題

正四面体 の頂点を移動する点 がある。点 は、1秒ごとに、隣の3頂点のいずれかに等しい確率 で移るか、もとの頂点に確率 で留まる。初め頂点 にいた点 が、 秒後に頂点 にいる確率を とする。ただし、 とし、 は自然数とする。

(1) 数列 の漸化式を求めよ。

(2) 確率 を求めよ。

出典:北海道大学2017年度一般入試(前期日程)数学(文系)第3問。問題文の表記はウェブ表示用に一部調整しています。

段階別ヒント

ヒント1|4頂点を全部追わない

求めたいのは頂点Aにいる確率だけです。「Aにいる」と「A以外の3頂点のどこかにいる」の2状態にまとめます。後者の確率は です。

ヒント2|最後の1秒でAへ来る道を分ける

秒後にAにいるのは、 秒後にAにいてその場に留まる場合と、A以外にいてAへ移る場合です。この2事象は重ならず、全経路を覆います。

ヒント3|A以外からAへ戻る確率

B、C、Dのどこにいても、Aは「隣の3頂点」の1つです。したがって、Aへ移る確率は常に です。

ヒント4|一定値を引いて等比数列にする

得られる漸化式は の形です。一定値 を求め、 を考えます。

4頂点を2状態へ圧縮 A A以外 B・C・D a a/3 1-a 1-a/3
「A以外」からは、どの頂点にいてもAへ確率 で移ります。

解答・解説

(1) 最後の1秒で条件づける

秒後にAにいる確率は 、A以外にいる確率は である。

Aにいた点がAに留まる確率は 。一方、A以外のどの頂点にいても、隣の3頂点のうちAを選んで移る確率は である。よって

また、1秒後にもAにいるのはその場に留まる場合だけなので である。初めの状態を含め、0秒後について と補助的に定めても同値である。

(1)の答え:

同値な初期条件として を用いてよい。

(2) 固定点 を引く

一定値 が式(1)を満たすとすると、

だから であり、これを解くと 。式(1)から を引けば、

したがって は初項 、公比 の等比数列である。

(2)の答え:

なお から

なので、 では となる。4頂点が対称で、長時間後にAにいる確率が へ近づくこととも一致する。

別解|2状態の遷移行列で確認する

を「A以外にいる確率」とする。AからAへは 、AからA以外へは合計 。A以外からAへは 、A以外に留まる確率の合計は だから、

第1行へ を代入すると、主解法の式(1)がそのまま得られる。行列の固有値は で、固有値1に対応する定常分布では4頂点が等確率となるため、Aの成分は である。

解法を思いつくための再現手順

  1. 求めたい状態を1つ決める。今回は「Aにいる」を成功状態とする。
  2. 残りをまとめられるか見る。B、C、DはAへの戻り方が同じなので「A以外」へまとめる。
  3. 最後の1手で分類する。Aにいて留まる場合と、A以外からAへ移る場合を足す。
  4. 全確率を使う。A以外にいる確率は新しい文字を増やさず と書く。
  5. 定数項付き一次漸化式へ整理する。 の形にする。
  6. 固定点を引く。 を解き、 を等比数列にする。
  7. 初期状態を入れる。0秒後はAなので
  8. 確率として検算する。小さい 、極端な 、長時間後の対称性を確認する。

よくある誤り

誤り 直し方
AからA以外へ移る確率も とする 移動先は3頂点あり、Aから外へ出る確率の合計は です。
A以外からAへ戻る確率を とする 移動先3頂点のうちAは1つだけなので です。
を落とす Aに留まる経路だけでは、外から戻る経路を数えられていません。
B、C、Dの確率が個別に必要だと思う どの頂点からもAへ戻る確率が同じなので、合計 だけで十分です。
定数項 があるのに等比数列とみなす 固定点 を引いた が等比数列です。
初期値を とする 初めAにいるのは0秒後です。 です。
は必ず単調に へ近づくとする では公比が負になり、 の上下を交互に移りながら収束します。

独立検算

  • :補助初期値は出発条件から 。一般項は に対して用います。
  • :一般項は 。Aからその場に留まる確率と一致する。
  • :1秒後から公比が0になり、)。各頂点への遷移確率がすべて になることと一致する。
  • :ほとんど動かないため、固定した では
  • :ほぼ毎秒必ず別頂点へ移り、公比は へ近づく。

この問題で押さえること:知りたいのが「A にいる確率」だけなら、状態は「A にいる/いない」の2つで足りる。対称性で状態を圧縮してから、最後の1手に注目して漸化式を立てる、を押さえよう。

前提単元と次に解く問題

教材について:解答・解説・ヒント・図は数強塾が独自に作成した非公式教材で、北海道大学が公表した公式解答・公式見解ではありません。問題の著作権は北海道大学に帰属し、出典を明示して掲載しています。

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確率漸化式で手が止まる人へ

確率漸化式で止まったら、状態設定・遷移確率・式の整理・数列の計算のどこが難しいかを分けてみましょう。例えば式が閉じないなら状態の情報を、式は立つのに解けないなら数列の変形を見直します。遷移図に「この矢印の確率は、何を条件とした確率か」を書き添えると、相談したい箇所も具体的になります。

数強塾オリジナル演習|型10(期待値の漸化式)を中心に5問

上の実例では型01〜09・11・12 が扱われています。ここでは唯一残った型10(期待値の漸化式)を2問で埋め、あわせて型01・型07の基本形検算の技法を1問ずつ置きます。この見出し以下の5問はすべて数強塾の自作問題です。前掲の実在入試問題「東大の良問006」は含みません。

型10 期待値の漸化式(基本形)
各目が等確率で出るさいころを独立に1回ずつ振り、 の目が出たらやめる。振る回数の期待値 を求めよ。

解答・解説を見る

「1回振ってから、状況がどうなるか」だけを書きます。
まず必ず1回振るので
そのうえで
・確率 が出て終了(追加 回)
・確率 で出ず、最初とまったく同じ状況に戻る(追加は改めて 回)
よって


(検算:確率 で成功する試行をくり返すとき、期待回数は なので ✓)
期待値の漸化式の要点は「振り出しに戻る」を見つけること。
回後を数えようとせず、1回分だけ進めて、同じ形が現れたら と置く。これで方程式1本になります。

型10 状態が2つある期待値
表と裏が等確率で出る硬貨を独立に投げ続け、表が2回続けて出たらやめる。投げる回数の期待値を求めよ。

解答・解説を見る

「直前が表かどうか」で状況が違います。そこで2つの状態に分けます。
:直前が裏(または開始時)からの期待回数
:直前が表からの期待回数
状態 から:1回投げて
・表()→ 状態
・裏()→ 状態 のまま
 …①
状態 から:1回投げて
・表()→ 終了
・裏()→ 状態 へ戻る
 …②
①より
②に代入して
。よって
(検算:①に を入れると ✓ ②は ✓)
裏が出ると「振り出しに戻る」のがこの型の急所。積み上げた1回ぶんが無駄になるので、期待値が ではなく に伸びます。

型01 2状態の確率漸化式
と箱 のあいだを球が1個だけ行き来する。1回の操作で、球は確率 でもう一方の箱へ移り、確率 でその場にとどまる。はじめ球は にある。
回後に にある確率を として、 を求めよ。また の極限は。

解答・解説を見る

「1回分の移り変わり」だけを書きます。
回後に にいるのは
回後に にいて、とどまった(
回後に にいて、移ってきた(

特性方程式(動かなくなる値)を求めます。 より
両辺から引くと

より なので

(検算: ✓ 。直接計算でも「とどまる確率 」で一致 ✓
。直接は ✓)
なので極限は 。左右対称な仕組みなので、長く続ければどちらの箱も半々に落ち着きます。

型07 対称性で状態をまとめる
正三角形の頂点 を点が移動する。1回の操作で、点は今いる頂点以外の2つへ等しい確率で移る。はじめ点は にある。 回後に にある確率 を求めよ。

解答・解説を見る

状態を3つ()に分ける必要はありません。
対称で区別がつかないので、「 にいる」「 にいない」の2状態で足ります。
回後に にいるのは、 回後に 以外(確率 )にいて、そこから を選んだ場合(確率 )。
にいたら必ず出ていくので、 からは寄与しません)

特性方程式 より

より なので

(検算: ✓ 。1回では必ず を離れるので
から で戻るので ✓)
極限は 3頂点が対等なので、長く続ければ均等——計算しなくても予想がつきます。

検算の技法
漸化式 について。
(1) を直接計算せよ。
(2) 一般項を求めよ。
(3) (1) と (2) が一致することを確かめよ。

解答・解説を見る

(1)

(2) 特性方程式 より

なので

(3)


一般項を出したら、必ず で照合する。計算量はわずかなのに、符号ミスや初期値の取り違えを発見する手掛かりになります。本番でも省かないでください。

確率漸化式は「1回分の表」から立式する

多くの型に共通する出発点は、次の移り変わりを表にすることです。次の表を書くこと。そのうえで、何を求める式なのかに合わせて条件分けします。

回後の状態 確率 1回の操作で行き先
状態 どこへ、どの確率で
状態 どこへ、どの確率で

そのうえで 回後に にいる」経路をすべて足す。それが の式です。

状態を減らす2つの技

  • 対称性でまとめる(型07) 区別のつかない状態は1つにする。正三角形なら3状態→2状態、正方形なら4状態→3状態
  • 総和が1を使う(型08)  なら と置きかえて文字を1つ消す

期待値の場合(型10)は、少し形が違います。 回後を追うのではなく、「1回進めたら同じ状況に戻った」ことを使って方程式を立てます。

最初の を忘れないこと。必ず1回は操作するからです。

検算は3手

  1. で照合 一般項に代入した値と、直接計算した値が合うか
  2. 総和が  すべての状態の確率を足して になるか
  3. 定常値と収束を区別する 対称性から均等な配分を予想できる場合もありますが、周期的に行き来して収束しない例もあります。一般項の指数部分や初期状態を確認します。

とくに1番目は短時間で取り組める検算ですが、一般式の証明を置き換えるものではありません。必ずやってください。

「なぜそうなるのか」へ

確率漸化式は確率と数列の合流点です。どちらの土台も効いてきます。

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📝 この型が実際に出た入試問題(35問のうち24問を掲載)

「確率漸化式」の型が実際の入試でどう出たかを、数強塾が全問解説を公開している年度から拾いました。各行の「解説を読む」から、その問題の解説へ直接移動できます。型を読んだあとに実出題で当てると、どこまで通用する判断なのかがはっきりします。

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