「数と式」は高校数学のいちばん最初に置かれた単元です。そのため「計算練習の単元」だと思われがちですが、実際に入試で問われるのは計算そのものではありません。問われるのは「式をどの形に持っていけば、その先が見えるか」という判断です。因数分解ができれば整数問題が有限個の候補に落ち、対称式に気づけば2文字が1文字になり、絶対値を場合分けできれば関数のグラフが描ける。数と式は、他のすべての単元の下敷きになっている技術の集まりです。このページは、その解法を12の型に分けて並べた辞典です。型は当てはめるための箱ではなく、「この式は、どの形を目指せばよいか」を決めるための道具として並べています。
このページの12型
- 展開の公式
- 因数分解の基本(共通因数・たすきがけ)
- 3乗の和と差
- 複2次式・文字を1つ選んで整理
- 対称式・交代式
- 整式の除法と剰余
- 根号の計算・有理化
- 二重根号
- 絶対値の外し方
- 絶対値を含む関数のグラフ
- 有理数と無理数(係数比較)
- 整数部分と小数部分
1. 背骨——式変形の目的は「情報を取り出せる形」にすること
式を変形して得られる、3種類の情報
積の形 → 「候補が有限個になる」。整数問題ならこれが決定打。
平方完成の形 → 「符号が分かる」。不等式の証明や最大最小。
1文字だけの形 → 「関数として扱える」。対称式を基本対称式で書くのがこれ。
「なんとなく整理する」は変形ではありません。式変形には必ず目的があります。いま自分は積の形を目指しているのか、符号を読みたいのか、文字数を減らしたいのか――これを口に出して確かめてから手を動かすと、方針が迷走しません。
京都大学の という問題は、この原則がむき出しになった例です。 と積にした瞬間、 は65の約数という4通りに絞られます。それまで無限にあった候補が、たった4つになる。式変形1回で、問題が有限の作業に変わるのです。
2. 因数分解で迷ったときの3手
1共通因数でくくる いちばん最初に必ず確認する。
2次数のいちばん低い文字について整理する 複数の文字があるときは、これが最も効く。
3公式の形が隠れていないか探す 、、複2次式( 型)。
「次数の低い文字で整理」がなぜ効くのか
たとえば 。 について2次、 について2次で対等に見えます。しかしどちらか一方について整理すれば、必ず2次式になり、たすきがけか解の公式が使えます。
3文字以上あるときは、次数が最も低い文字で整理すると1次式になり、必ず因数分解できる形が見えます。
3. 解法パターン全12型
型01 展開の公式
01おきかえて、既知の形に見立てる
顔つき 、。
中身 。4つの積は和が等しくなる組でペアにする。
組み合わせを選べば、同じ塊が2回出る と はどちらも を含みます。 とおけば という2次式になる。「どの2つを先に掛けるか」で計算量が何倍も変わる――展開は順番の選択です。
型02 因数分解の基本
02共通因数 → 次数の低い文字で整理 → たすきがけ
顔つき 。
中身 まず について整理し、定数項( の式)を因数分解してからたすきがけ。
2次の部分だけ先に因数分解しておく と分かれば、答えは の形。あとは と1次の係数から を決めるだけです。総当たりで探すより圧倒的に速い。
型03 3乗の和と差
03
顔つき をみたす整数の組。
中身 もう一方の因数 はつねに0以上()。
「もう一方の因数が0以上」が符号を決める これが京都大学の問題の急所です。 で、後ろの因数が0以上だから、しかも65の正の約数。負の約数を調べる必要がありません。 は平方完成で示せる――この一言を答案に書けるかどうかで、場合分けの数が半分になります。
型04 複2次式・文字を1つ選んで整理
04平方の差を作る
顔つき 、。
中身 。
が使えないときの逃げ道 は となって では因数分解できません。そこで「足りない分を足して引いて、平方の差にする」。 なので が余分――それを引けばよい。この一手は数学IIの4次方程式でも使います。
型05 対称式・交代式
05和と積の2文字で書き直す
顔つき 、、。
中身 とおくと 、。
2文字が2文字のままでも、扱いが変わる から に変えても文字数は同じですが、条件式が や だけで書けることが多いので、実質的に1文字の問題になります。神戸大学の の問題や、岡山大学の の置きかえも、この発想の延長です。交代式(入れかえると符号が変わる式)は で必ず割り切れます。
型06 整式の除法と剰余
06 と書いて、余りに情報を集める
顔つき 「 を で割った商と余りを求めよ」。
中身 (余りの次数)(割る式の次数)。割られる式に値を代入すると、商が消えて余りだけが残る場合がある。
除法は「情報を余りに閉じこめる」操作 と の関係を知りたいとき、割り算して と書けば、 と の関係が「余り 」に集約されます。神戸大学の問題は、まさにこの構造を使っていました。3次と2次を見たら、まず割ってみる――強力な定石です。
型07 根号の計算・有理化
07分母に共役をかける
顔つき 、。
中身 。3項なら2項ずつまとめて2回有理化。
は覚える価値がある 積が1ということは、互いに逆数。だから のような計算が一瞬で終わります(埼玉大学の面積の問題で実際に効きました)。 であって ではないことも、根号の基本として押さえてください。
型08 二重根号
08 の形に整える
顔つき 、。
中身 和が 、積が となる2数 を探して 。内側が の形でないときは、係数を に直す。
符号の判定を忘れない 。ここで と書いてはいけません。根号の値は0以上なので、大きいほうから小さいほうを引く。この符号ミスが二重根号の失点のほぼすべてです。
型09 絶対値の外し方
09中身が0になる点で場合分け
顔つき 、。
中身 絶対値が 個あれば、境目は最大 個。境目を数直線に並べて区間を作る。
境目を書き出してから式を書く 大阪大学の問題では と の2つがあり、境目は と 。だから区間は の3つ。この3つを最初に書き出してから、それぞれで式を整理します。先に区間を決めておかないと、途中でどの場合を考えていたか分からなくなります。
型10 絶対値を含む関数のグラフ
10区間ごとに別の関数として描き、つなぐ
顔つき 、。
中身 と で別の式になる。境目で値が一致する(連続)ことを確認する。
2つの放物線のつぎはぎになる は、 では (下に凸)、 では (上に凸)。まったく別の2本の放物線を、 でつないだ形です。だから「解の個数」を数えるときは、それぞれの放物線について、その区間内にある解だけを数える必要があります。千葉大学の問題が、この注意の塊でした。
型11 有理数と無理数
11( 有理数)なら
顔つき 「 が無理数で が有理数となる条件」。
中身 「有理数 × 無理数 が有理数になるのは、有理数のほうが0のときだけ」。これが係数比較の根拠。
「無理数と有理数は混ざらない」という一言が決定打 神戸大学の問題では という式が出ました。右辺は有理数、 は無理数。だから だと左辺が無理数になって矛盾します。したがって 、そして右辺も0。2つの未知数が、この一言だけで両方決まるのです。証明は背理法で、 なら が有理数になって矛盾という筋書きです。
型12 整数部分と小数部分
12(実数)=(整数部分)+(小数部分)、小数部分は 以上 未満
顔つき 「 の小数部分を とするとき の値」。
中身 整数部分は不等式で挟んで決める( より )。小数部分は 。
小数部分は「引き算の結果」であって、桁の話ではない だから の小数部分は 。負の数のときは要注意で、 の整数部分は 、小数部分は です( と ではありません)。「小数部分は必ず0以上1未満」という定義に立ち返るのが安全です。
4. 実際の入試で確かめる
この単元の解法パターンは全12型で、下にある入試の実例6問で確かめているのは6型です。残りの6型は、下にある実例では扱っていません。1問が複数の型にまたがることも、同じ型を複数の実例で扱うこともあるため、実例の数と型の数は必ずしも一致しません。
ここからは実際に出題された問題で型を確かめます。問題文は各大学が公表した入試問題を、解説のために引用したものです。解答・解説は数強塾が独自に作成したもので、大学公表の解答ではありません。掲載しているすべての数値は、当塾で独立に解いたうえで Python(sympy による厳密計算・約数の全数え上げ・乱数による不等式の反例探索)で検算しています。
京都大学 2005年度 ―― 型03。積の形にした瞬間、候補が4通りになる
【問題】京都大学 2005年度 前期日程(文系 第4問/理系 第4問)
〔文系〕 を満たす整数の組 をすべて求めよ。
〔理系〕 を満たす整数の組 をすべて求めよ。
【解答】
〔文系〕 の2組
〔理系〕 の4組
まず積の形にします(型03)。
後ろの因数は必ず0以上
等号は のときのみ。いま積が なので後ろの因数は正、したがって も正。
つまり は65の正の約数で、 の4通りだけです。
とおき、 を代入します。
したがって、各 について次の2次方程式が整数解 をもつかを調べます。
| 方程式 | 判別式 | 整数解 | |
|---|---|---|---|
| (平方数でない) | なし | ||
| 負 | なし | ||
| 負 | なし |
のとき なら 、 なら 。
理系()も同じ手順です。約数は 。
| 方程式 | 整数解 | ||
|---|---|---|---|
| なし(判別式が負) | ―― | ||
| 判別式が負 | なし | ―― |
65と217の違いは、約数の並び方だけ。手順はまったく同じですが、 では と の両方で解が出るので4組になります。「 は判別式が平方数か」を最初に確認するのが要領で、 の判別式は 。これが平方数かどうかで決まります。
そして最大の急所は、やはり を書くこと。これがないと が負の約数も調べる必要が生じ、場合が倍になります。因数分解したら、それぞれの因数の符号を必ず調べる――整数問題全般に効く原則です(整数の型01)。
神戸大学 2011年度 ―― 型06・型11。無理数と有理数は混ざらない
【問題】神戸大学 2011年度 前期日程 理科系
は正の無理数で、、 を考えると、 と はともに有理数である。以下の問に答えよ。
(1) 整式 を整式 で割ったときの商と余りを求めよ。
(2) と の値を求めよ。
(3) の値を求めよ。ただし、素数の平方根は無理数であることを用いてよい。
【解答】
(1) 商 、余り (2) (3)
(1) 実際に割ります(型06)。
(確認:。差は 。)
(2) を代入すると
を含む項を左辺に集めます。
無理数と有理数は混ざらない
右辺 は有理数( が有理数だから)。
もし なら となり、 が有理数になってしまい矛盾。
したがって 、すなわち 。このとき右辺も0でなければならないので
(3) を解きます。
より 。 は無理数(5は素数)なので も無理数で、条件をみたします。
検算しておきます。 のとき 、 なので
の係数がちょうど0になります。
「割る」ことで、無理数の情報が1か所に集まった。 と をにらんでいても関係は見えません。しかし割り算をすると となり、 が現れる場所が限定されます。あとは「有理数と無理数は混ざらない」という一言で、 の係数を0にするしかない。
この「係数を0にするしかない」という論法は、恒等式の係数比較とまったく同じ構造です。恒等式では「すべての について成り立つ」が根拠、ここでは「 が無理数」が根拠。根拠は違っても、結論の出し方は同じ――こういう構造の共通性に気づくと、解法の数が減っていきます。
千葉大学 2008年度 ―― 型10。2本の放物線のつぎはぎ
【問題】千葉大学 2008年度 前期日程
を実数とする。関数 のグラフが 軸と相異なる3点で交わるような の値の範囲を求めよ。
【解答】
文字定数 を分離します。方程式 は
と書けるので、左辺のグラフと水平線 の交点を数えればよい。左辺を とおきます(型10)。
絶対値を外すと、まったく別の2本になる
: (下に凸の放物線)
: (上に凸の放物線)
ではどちらも0なので、グラフはつながっています。
それぞれの区間での様子を調べます。
右側() 。頂点は 。 から下がって、 で最小 、その後 へ。
左側() ( では常に正)なので単調増加。 で 、 で に近づきます。
| の範囲 | 左側の交点 | 右側の交点 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 0個 | 1個 | 1 | |
| 0個 | 2個() | 2 | |
| 1個 | 2個 | 3 | |
| 1個 | 1個(重解) | 2 | |
| 1個 | 0個 | 1 |
右側で「2個」になる理由を確かめる
すなわち の2解について、解と係数の関係から
(2解の和)、(2解の積)。
なら積が正で和も正――2解はともに正。だから の条件をどちらもみたします。
判別式は 、すなわち 。
したがって求める範囲は
「片方の放物線の解が、その区間に入っているか」を必ず確かめる。この問題でいちばん多い誤りは、 の2解をそのまま数えてしまうことです。この式が有効なのは の範囲だけなので、解が負なら数えてはいけません。
ここで解と係数の関係が判定に使えるのが要領です。2解の和と積の符号を見れば、「両方正」「両方負」「異符号」が判別式と合わせて即断できます(2次関数の解の配置)。絶対値の問題は、場合分けした後が本番です。
大阪大学 2019年度 ―― 型09。境目を先に書き出す
【問題】大阪大学 2019年度 前期日程(文系 第2問)
を実数の定数とする。 の2次方程式
について以下の問いに答えよ。
(1) この2次方程式は実数解をもつことを示せ。
(2) この2次方程式が異なる2つの実数解 をもち、かつ となるような定数 の値の範囲を求めよ。
【解答】
(1) 3つの区間すべてで判別式が0以上(下表)
(2) かつ 、または
絶対値の境目を先に書き出します(型09)。 の境目は 、 の境目は 。したがって区間は3つです。
係数を (和)、(積)とおきます。
| 区間 | 判別式 | |||
|---|---|---|---|---|
(たとえば では なので 、。)
(1) 表の 欄を見ると、、(この区間では )、。どの区間でも なので、つねに実数解をもちます。
(2) 「異なる2実解」は 。区間ごとに条件を書きます。
3つの区間を別々に処理する
。 は
は条件をみたします。
。。よって 。
は なので自動的にみたされます。。区間と合わせて 。
3つを合わせると
まとめて、 かつ 、または 。
を計算しないのが要領。解を実際に求めて2乗して足す――これは絶対にやってはいけません。解と係数の関係から と、係数だけで書けます(型05)。
そして の場合に答えが という1点だけになるのが面白いところ。 は等号でしか成立しないので、範囲ではなく点になります。不等式を解いた結果が1点になることは実際にあるので、「範囲が出ないから計算ミス」と決めつけないでください。
神戸大学 2011年度 ―― 型05・型10。 は正方形
【問題】神戸大学 2011年度 前期日程 理科系
以下の問に答えよ。
(1) を正の実数とするとき、 の表す 平面上の図形を図示せよ。
(2) を をみたす実数とする。 が連立不等式
をみたすとき、 のとりうる値の最小値 を、 を用いた式で表せ。
(3) が の範囲を動くとき、(2) で求めた の最大値を求めよ。
【解答】
(1) 4点 を頂点とする正方形(の周)
(2) のとき 、 のとき
(3) 最大値 ( のとき)
(1) 4つの象限で場合分けします(型09)。第1象限()では という直線。他の象限も同様で、4本の線分が正方形をなします。
頂点は 。原点を中心とする、対角線の長さ の正方形です。
(2) なので 。求めたいのは、条件をみたす点のうち「正方形の大きさ が最小になるもの」です。
正方形をふくらませて、初めて領域に触れる瞬間
かつ の部分は、3点 を頂点とする三角形です。
を0から大きくしていき、この三角形が直線 の側( の側)に初めて到達する が答え。
1次式の最大値は、三角形の頂点でとります。
3頂点で の値を計算します。
| 頂点 | |||
|---|---|---|---|
なので最大は 。これが2以上になる最小の が です。
と の大小は で入れかわるので
(3) は で増加し で 。 は で減少し で 。
したがって最大値は ( のとき)。
という1つの式にまとめると、(3) が一瞬で解ける。場合分けしたまま2つの式を別々に調べてもよいのですが、 と書けば「分母が最小になるとき が最大」と分かります。
そして が最小になるのは、2つが等しい のとき(片方が減れば片方が増えるので)。「最大値の最小化」は、2つが等しくなる点で起こる――これはミニマックスの原理と呼ばれ、大学入試でも繰り返し現れます。絶対値の図形的な意味(正方形)が見えると、代数計算がほとんど要らなくなるのもこの問題の教訓です。
千葉大学 2008年度 ―― 型05。区間の端で積が最小になる
【問題】千葉大学 2008年度 前期日程
実数 は を満たし、 はいずれも 以上かつ 以下であるとする。このとき次を示せ。
(1) ならば、 である。
(2) ならば、 である。
【解答の骨格】
(1) を使う (2) (1) を2回使う
(1) という条件を、積の形の不等式に翻訳します。
( かつ だから。)展開すると
ここで条件 より なので
したがって
すなわち 。等号は または 、つまり のときです。
意味は「和が一定なら、積は端で最小」
和が一定のとき積 は上に凸な放物線 です。だから真ん中()で最大、端で最小。
相加相乗平均は「真ん中で最大」を言う不等式、この問題はその裏返しで「端で最小」を言っています。
(2) (1) を2回使います。まず3変数のうち2つを組にします。
より
そこで とおくと 。和が で固定されたとき、積 が最小になるのは端((1) と同じ理由)。
かつ より なので、端は と 。どちらでも となり
ここで とおくと、 より 。さらに
と の和がちょうど
で、、。これは (1) の状況そのものなので
したがって
等号は のときです。
「端で最小」を2回重ねただけ。3変数の不等式は難しく見えますが、この問題は2変数の結果 (1) を2回使うだけで完結します。1回目は の積を 以上に押さえ、2回目は残った2つの数 (和が )に (1) を適用する。
誘導つきの不等式の証明では、「前問の形を作り出す」ことが解法のすべてです。この問題なら「和が で、どちらも にある2数」という形を、いかにして作るか。前問の結論を眺めて、それが使える形を目指して変形する――これが誘導問題の読み方です(式と証明の型11)。
5. よくある質問
Q1. 因数分解の方針が立ちません。
A. ①共通因数 ②次数のいちばん低い文字で整理 ③公式の形を探すの順に試してください。複数の文字があるときは②が圧倒的に効きます。3文字あれば、どれかについて1次式になるはずです。
Q2. 整数問題で因数分解したあと、場合分けが多すぎます。
A. それぞれの因数の符号を調べてください。たとえば が言えれば、負の約数を調べる必要がなくなり、場合が半分になります。
Q3. 二重根号の符号でよく間違えます。
A. 根号の値は必ず0以上なので、 と書くときは でなければなりません。答えを出したら、必ずおおよその数値で検算してください。
Q4. 絶対値の場合分けで混乱します。
A. 式を書く前に、境目をすべて数直線に並べて区間を確定させてください。絶対値が2個なら区間は3つ。その表を先に作り、各区間で係数を計算して埋めていくと迷いません。
Q5. 型を覚えれば初見の問題も解けますか。
A. 型は考えなくて済ませる道具ではなく、どの形を目指すかを決めるための道具です。決めたあとは自分で考える必要があります。実際、本ページの千葉大学の不等式は「前問が使える形を作る」という工夫を自分でする必要がありました。型を持っている人は、白紙のまま全部を考えずに済むという差が出ます。
6. 次に読むページ
- 式と証明の解法パターン全16型 ―― 不等式の証明と恒等式。
- 整数の解法パターン全18型 ―― 積の形にして候補を絞る技術の続き。
- 2次関数の解法パターン全20型 ―― 解の配置と場合分け。
- 複素数と方程式の解法パターン全12型 ―― 解と係数の関係の応用。
- 指数・対数の解法パターン全13型 ―― 置きかえと範囲の扱い。
- 大学入試 過去問の全問解説
計算はできるのに点が伸びない人へ
数と式でつまずく生徒のほとんどは、計算力が足りないのではなく「何のために変形しているのかを決めずに手を動かしている」だけです。数強塾では、式変形を始める前に「積の形を作るのか、符号を読むのか、文字数を減らすのか」を必ず言わせる訓練をしています。オンラインの完全1対1で、プロ講師のみが担当します。
型の一覧で全体像をつかんだら、教科書の扱いが薄く入試で差がつくテーマを個別に潰していきます。
数強塾オリジナル演習|12の型を1問ずつ
上の12型を、数値と設定だけ変えた自作問題で1問ずつ確認します。「数と式」は高校数学の入口ですが、ここで身につけた式変形が、そのまま数III まで効き続けます。解答を開く前に、まず「何の形に持っていきたいのか」を一言で言えるか試してください。
型01 展開の公式
次を展開せよ。(1) (2) (3)
解答・解説を見る
(1) (真ん中は 。係数の2を落とさない)
(2) 先に和と差の積:
(3) 3文字の2乗は平方3つ+2倍の積3つ。
(検算: で左 、右 ✓)
型02 因数分解の基本
次を因数分解せよ。(1) (2)
解答・解説を見る
(1) たすきがけ。、、 ✓
(2) 前3項が 。2乗−2乗の形を作る。
4項以上は「かたまりを作って2乗−2乗」を疑う。
型03 3乗の和と差
(1) を因数分解せよ。
(2) のとき を求めよ。
解答・解説を見る
(1)
(後ろは 。 ではない。 の形)
(2) 。公式
(検算: は の解で 。 ✓)
型04 複2次式・文字を1つ選んで整理
(1) を因数分解せよ。
(2) を因数分解せよ。
解答・解説を見る
(1) を足して引く。
(2) 次数の低い ではなく、 について整理する。
たすきがけで
(検算: で元の式 、 ✓)
型05 対称式・交代式
のとき次を求めよ。
(1) (2) (3) (4)
解答・解説を見る
(1)
(2)
(3)
(すでに出した を使い回す。 の公式を覚える必要はない)
(4)
(対称式はすべて「和」と「積」で書ける——これが基本定理)
型06 整式の除法と剰余
について答えよ。
(1) で割った商と余りを求めよ。
(2) で割った余りを求めよ。
解答・解説を見る
(1) 筆算して
(検算: ✓)
(2) 余りは1次以下なので とおく。剰余の定理より
、
辺々引いて 、。
(検算: ✓、 ✓)
割る式の次数−1 が余りの次数の上限。
型07 根号の計算・有理化
次を有理化せよ。(1) (2) (3)
解答・解説を見る
(1)
(2) 分母分子に を掛けて
(3) 3項は「2項+1項」に分けて2回。 を掛けると
分母 。さらに を掛けて
(検算:元の式は 、答えも ✓)
型08 二重根号
次の二重根号をはずせ。(1) (2) (3)
解答・解説を見る
(1) と直す。和が7、積が12の2数は 。
(2) 和が9、積が14の2数は 。マイナスは大−小。
(3) の形にならないので、分母分子を2倍する。
(検算:、 ✓)
型09 絶対値の外し方
方程式 を解け。
解答・解説を見る
境目は と 。3つに分ける。
・: → (範囲を満たす ✓)
・: → 解なし
・: → (✓)
(意味:1と3からの距離の和が4。区間の内側では常に2なので、外側に ずつはみ出した点)
出した解が場合分けの範囲に入っているか、必ず確認する。
型10 絶対値を含む関数のグラフ
と の共有点の個数を、 の値で場合分けして答えよ。
解答・解説を見る
のグラフの 軸より下を折り返す。
では上に凸で頂点 、 では下に凸で増加。
・:0個
・: の 2個
・:4個
・: の 3個
・:2個
(検算: なら の4個 ✓、 なら の2個 ✓)
山の頂上 だけ個数が奇数になるのが急所。
型11 有理数と無理数
を有理数とする。 を満たす を求めよ。
解答・解説を見る
左辺を「有理数部分」と「 の係数」に分ける。
は無理数で は有理数だから、係数を比較してよい。
を解いて
(検算: ✓)
「( 有理数)ならば 」が根拠。 なら が有理数になって矛盾する。
型12 整数部分と小数部分
の整数部分を 、小数部分を とする。
(1) を求めよ。(2) を求めよ。(3) を有理化せよ。
解答・解説を見る
(1) より 。
(2) すなわち を使う。
より
(展開して代入しなくてよい。 が満たす2次方程式を作るのが最短)
(3)
(検算:、。 ✓)
式変形の行き先は3つしかない
① 積の形(因数分解)── 「0になるのはいつか」「約分できるか」が見える。型02〜04がこれ。4項以上ならかたまりを作って2乗−2乗、2文字なら次数の低い文字について整理
② 和と積の形(対称式)── 値が分かっていなくても計算できる。型05・型06。1度出した値は使い回す
③ 有理数部分と無理数部分に分ける ── 型07・型08・型11・型12。 は「有理数と混ざらない別の成分」だと思うと、係数比較も有理化も同じ操作に見える
絶対値(型09・型10)だけは方向が違い、「境目で切って場合分け」の一手です。境目を先に数直線に書き出してから式を立ててください。
「なぜそうなるのか」へ
式変形の手順を覚えるだけだと、少し形が変わると止まります。なぜその変形が許されるのかを押さえておくと、初見でも組み立て直せます。
- なぜ なのか ── 型01の は「部屋が2つ」。型04で を足して引く発想も、この図から出ます。
- なぜ因数分解すると二次方程式が解けるのか ── 型02・型03で積の形にする目的そのもの。
- なぜ0を掛けると答えが0になるのか ── 「積が0なら少なくとも一方が0」が実数では成り立つ理由。因数分解が解法になる土台です。
- なぜ は分数で表せないのか ── 型11の係数比較は、 が無理数であることに全面的に依存しています。
- なぜ絶対値は「距離」と考えられるのか ── 型09は「1と3からの距離の和が4」と読めば、場合分けの前に答えの見当がつきます。
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大学受験数学|数と式
式の条件を構造で読む4つの独自演習
剰余、二重根号、パラメータ付き二次式、対称式を題材に、式をそのまま展開する前に使える条件を探します。計算の根拠を一段ずつ言葉にする構成です。
大学受験の数と式で問われる、剰余の決定、二重根号の外し方、常に正となる二次式、基本対称式から高次式を求める手順を独自問題で確認できます。
図は左右にスクロールして全体を確認できます。
問1|二つの剰余から一次式を決める
多項式P(x)をx-2で割ると余りが5、x+1で割ると余りが-4である。P(x)を(x-2)(x+1)で割った余りを求めよ。
問1「二つの剰余から一次式を決める」の解答・詳しい考え方を開く
答え:3x-1
- 二次式で割った余りは次数が2未満なので、R(x)=ax+bとおけます。
- 剰余の定理よりP(2)=5であり、R(2)=5だから2a+b=5です。
- 同様にP(-1)=-4であり、R(-1)=-4だから-a+b=-4です。
- 二式の差から3a=9、よってa=3、b=-1です。したがって余りは3x-1です。
誤りやすい点:求める余りを定数だけと置かないようにします。二次式で割ると、余りは一般に一次式まで許されます。
問2|符号を確かめる二重根号
√(11+6√2)-√(7-4√3)を簡単にせよ。
問2「符号を確かめる二重根号」の解答・詳しい考え方を開く
答え:1+√2+√3
- 11+6√2をm+n+2√(mn)の形で見ると、m+n=11、mn=18を満たすm=9、n=2が見つかります。よって√(11+6√2)=3+√2です。
- 7-4√3ではm+n=7、mn=12よりm=4、n=3です。平方すると(2-√3)²=7-4√3となります。
- 2-√3は正なので、主平方根は√(7-4√3)=2-√3です。
- したがって(3+√2)-(2-√3)=1+√2+√3です。
誤りやすい点:√(7-4√3)を√4-√3と機械的に分けるのではありません。また平方根は非負なので、|2-√3|=2-√3であることを確認します。
問3|常に正となるパラメータ
実数mについて、x²-2(m+1)x+m²+3>0がすべての実数xで成り立つようなmの範囲を求めよ。
問3「常に正となるパラメータ」の解答・詳しい考え方を開く
答え:m<1
- x²の係数は1で正なので、グラフは下に凸です。すべての実数xで厳密に正となる条件は、x軸と共有点をもたないこと、すなわち判別式D<0です。
- D={-2(m+1)}²-4(m²+3)と計算します。
- 展開してD=4(m²+2m+1)-4m²-12=8m-8です。
- 8m-8<0よりm<1です。m=1ではグラフがx軸に接して値0を取るため含みません。
誤りやすい点:条件が「0以上」ではなく「0より大きい」ため、判別式D=0は除きます。境界m=1を代入して確認すると取り違えを防げます。
問4|基本対称式から四次式へ
実数x、yがx+y=5、xy=3を満たすとき、x⁴+y⁴の値を求めよ。
問4「基本対称式から四次式へ」の解答・詳しい考え方を開く
答え:343
- まずx²+y²=(x+y)²-2xyを使います。
- 与えられた値を代入するとx²+y²=25-6=19です。
- 次にx⁴+y⁴=(x²+y²)²-2x²y²です。
- x²y²=(xy)²=9なので、x⁴+y⁴=19²-2・9=361-18=343です。
誤りやすい点:(x²+y²)²をそのままx⁴+y⁴としないようにします。展開には2x²y²が含まれるため、その分を引きます。
📝 この型が実際に出た入試問題(41問のうち24問を掲載)
「数と式」の型が実際の入試でどう出たかを、数強塾が全問解説を公開している年度から拾いました。各行の「解説を読む」から、その問題の解説へ直接移動できます。型を読んだあとに実出題で当てると、どこまで通用する判断なのかがはっきりします。
| 大学・年度 | 出題テーマ | 難易度 | 解説 |
|---|---|---|---|
| 法政大学 2025年度 | 【マーク】文字定数を含む連立2次不等式 | やや難 | 解説を読む |
| 立命館大学 2025年度 | 絶対値の不等式が表す菱形と格子点 | やや難 | 解説を読む |
| 大阪大学 2013年度 | 二重の絶対値がついた不等式の領域 | 標準 | 解説を読む |
| 明治大学 2025年度 | 〔Ⅰ〕1. 二重根号 | — | 解説を読む |
| 自治医科大学(数学) 2024年度 | 問5(絶対値つき1次関数の最小) | — | 解説を読む |
| 自治医科大学(数学) 2024年度 | 問11(三角不等式・因数分解) | — | 解説を読む |
| 自治医科大学(数学) 2023年度 | 問8(絶対値付きグラフと直線) | — | 解説を読む |
| 久留米大学(数学) 2022年度 | 第6問(絶対値関数のグラフの共有点) | — | 解説を読む |
| 自治医科大学(数学) 2022年度 | 問4(三角不等式) | — | 解説を読む |
| 産業医科大学(数学) 2021年度 | 大問3 絶対値付き放物線と面積の最小化(記述式) | — | 解説を読む |
| 関西大学 2021年度 | 絶対値つきの曲線と原点を通る直線(数W問〔II〕) | — | 解説を読む |
| 信州大学 2019年度 | 面積と不等式|長方形を覆う | — | 解説を読む |
| 大阪大学 2019年度 | 絶対値を含む2次方程式 | — | 解説を読む |
| 自治医科大学(数学) 2019年度 | 問11(絶対値の領域と原点からの距離) | — | 解説を読む |
| 埼玉大学 2017年度 | 三角不等式の表す領域と面積 | — | 解説を読む |
| 一橋大学 2016年度 | 〔4〕絶対値つき3次関数のミニマックス | — | 解説を読む |
| 山口大学 2016年度 | 3次関数と絶対値 | — | 解説を読む |
| 滋賀大学 2016年度 | 3次関数の不等式と面積の最小 | — | 解説を読む |
| 神戸大学 2016年度 | のグラフと不等式 | — | 解説を読む |
| 自治医科大学(数学) 2016年度 | 問11(無理不等式) | — | 解説を読む |
| 岡山大学 2014年度 | 2変数不等式と領域 | — | 解説を読む |
| 東邦大学(数学) 2014年度 | 第13問(全実数で成立する2次不等式) | — | 解説を読む |
| 自治医科大学(数学) 2013年度 | 問8(絶対値付き関数と直線の共有点) | — | 解説を読む |
| 横浜国立大学 2012年度 | A1【2】=A2【3】 不等式を満たす格子点の個数 | — | 解説を読む |
難易度は数強塾の見立てです(「—」は難易度を掲載していない年度)。大学別の年度一覧と出題傾向は過去問解説の総索引から、この型の全体像は解法パターン事典のハブから確認できます。
要点辞典この単元の公式・定石・つまずきやすい所は 数学I・Aの要点辞典:数と式 にまとめてあります。
