極限の計算の解法パターン全14型|型の見抜き方と入試実例(山口大学・横浜国立大学・島根大学・大阪大学)


極限の計算でつまずく人の多くは、公式を知らないのではありません。「いま自分は何を計算しようとしているのか」を言葉にしないまま式をいじっているだけです。極限の問題として出題されるのは、代入しても決まらないところ――つまり不定形だけ。。これらは答えが決まらないという印であって、答えが存在しないという印ではありません。理由はいつも同じで、二つの動きが引っ張り合っていて、どちらが速いかを式の見た目からは読み取れないのです。このページは極限の計算を14の型に分けて並べた辞典です。型は当てはめる箱ではなく、「どちらが速いのかを、どうやって見えるようにするか」を選ぶための道具として並べています。

このページの位置づけ——概観は第1層、深掘りはここ

極限という単元そのものは極限の解法パターン全15型で扱っています。あちらが「単元を一望する地図」なら、こちらは「極限の計算だけを掘り下げる坑道」です。単元全体の並びを先に確認したい方は第1層からご覧ください。不定形の崩し方をひとつずつ確かめたいはさみうちの不等式を自分で作れるようになりたいという方は、このページを順に読み進めてください。

このページの14型

  1. 不定形の型を見分ける
  2. 有理化
  3. 最高次で割る
  4. はさみうち
  5. の定義式
  6. ロピタルを使わない書き方
  7. 対数をとる
  8. 区分求積法
  9. 無限級数(部分和をとる)
  10. 漸化式と極限
  11. ガウス記号と極限
  12. 数列の極限と関数の極限の違い
  13. 発散の速さの比較

1. 背骨——不定形とは「速さの勝負」であり、計算とはそれを見えるようにすること

まず極限は代入ではありません。 が表すのは を入れた値ではなく、近づけたときに行き先として見えてくる値です。連続ならたまたま両者が一致するので代入で済みますが、入試で問われるのは、その代入が通用しない場所だけ。通用する場所は問題になりません。式は必ず次のどれかの顔をしています。

不定形の5つの顔

    (および

「不定」とはこの形になったという情報だけでは答えが一つに決まらないという意味です。 なら なら なら 同じ顔で答えが違うのだから、顔を見ているだけでは永久に決まりません。

ではなぜ決まらないのか。不定形とは二つの動きの勝負だからです。 は分子と分母の大きくなる速さの勝負、 は消える速さと膨らむ速さの勝負。勝負である以上結果は速さの差で決まりますが、式の見た目はその差を隠してしまう。極限の計算とは、隠れた速さの差を表に引きずり出す作業であり、崩し方は四つしかありません。

不定形を崩す4つの手

① 主役でくくる。いちばん速い項で分母分子を割る(型03)。残りは に潰れ、主役どうしの比だけが残ります。

② 打ち消し合いを外に出す。有理化・通分・因数分解(型02)。引き算をしてしまえば、どれだけ残るかが見えます。

③ 既知の一つの極限に合わせる。(型05)、(型06)、微分係数の定義(型07)、区分求積(型09)。高校数学で「速さの差」を数値として知っている極限はごく少数で、その形に持ち込むまで式を分解します。

④ 値をあきらめて、居場所だけ決める。はさみうち(型04)。上と下から同じ値で押さえられれば極限は確定します。

四つ目だけ性格が違います。①②③は「求める」手ですが、④は「求めない」と決める手です。閉じた式に書けない は、いくら変形しても値が出ません。出てこないものを出そうとし続けるのが、極限でいちばんよくある行き詰まり方です。あとで見る大阪大学と横浜国立大学の問題は、この切り替えを試しています。

極限は、部分ごとに先に計算してはいけない

が使えるのは両方が有限の値に収束するときだけです。たとえば を「 だから 」としてはいけません。正しくは です。 に近づく速さと に飛ぶ速さが釣り合っているから有限の値が残ります。「収束すると確かめてから分ける」――この順序を守るだけで失点はかなり減ります。

発散の速さの序列

右にあるものほど速く へ向かうので 序列を知っていれば計算前に答えの見当がつきます。ただし答案に「序列だから」とは書けません。序列は予想のための道具で、証明は不等式で作ります(型14)。

もう一点。 は自然数しかとらないので、とびとびの足場だけを踏んで進む動きです。 が言えれば も言えますが、逆は言えません(型13)。これを知っていると「数列の極限を の関数に直して微分してよいのか」に自分で答えられます。

型そのものについても一言だけ。極限の問題を見た瞬間に「これは だから最高次で割る」と手が動く人は、頭の回転が速いわけではありません。過去に何百回も使われてきた「型」から予想して、思考する量を減らすことで、手際よく解法を思い付いている場合もあるのです。型は考えなくて済ませるための道具ではなく、考える範囲を狭めるための道具です。狭めたあとに何を考えるかは、結局その問題ごとに自分で決めることになります。以下の14型も、そのつもりで読んでください。

2. 手順——型を選ぶまでの判断の流れ

1まず代入して、不定形の名前を宣言する。 で分子も分母も だから 」のように。ここを口に出さずに変形を始めると、途中で何を目指しているのか分からなくなります。不定形でないなら、そこで答えが出ています。

2登場人物の速さを比べ、主役を決める。いちばん速いものは何かを序列(型14)で見当づけます。 なら主役で割る(型03)。 で根号があるなら有理化(型02)、多項式なら通分・因数分解。

3既知の極限に合わせる形へ寄せる。三角関数と への接近が同時にあれば型05、 が絡めば型06、差を「関数の値の差 ÷ 変数の差」に読めるなら型07。和なら型09・型10、漸化式なら型11。

4値が出ないと分かったら、押さえに切り替える。閉じた式に書けない和・積分・ガウス記号が出たら、求めるのをやめて不等式を作ります(型04・型12)。答えを先に予想し、その両隣を押さえる不等式を逆算するのがコツ。累乗や積が主役なら、先に対数をとって和に直します(型08)。

3. 解法パターン全14型

型01 不定形の型を見分ける

01名前をつけた瞬間に、手が決まる

顔つき 代入すると のどれかになる。

中身  は割るか既知の形へ(型03・型05〜型07)。 は差を実行(型02、通分、因数分解)。 は分数に書き直す。 は対数をとる(型06・型08)。

なぜ効くか 不定形は5種類しかなく、種類ごとに最初の一手がほぼ決まっています答案の一行目に「これは の不定形である」と書く習慣をつけると、以降の変形が全部その一行に従います。

型02 有理化

02共役をかけて、引き算を実行してしまう

顔つき  を含む など。

中身  には を掛けて割る。 で根号が消える。分子側・分母側の両方がある。

なぜ効くか  が不定なのは引き算の結果がいくら残るか見えないから。有理化は引き算を先に実行する操作で、 のように差を比に翻訳します

型03 最高次で割る

03主役で割れば、脇役は全部 に潰れる

顔つき 多項式どうしの分数、 の冪が混ざった

中身 分母・分子をいちばん強い項で割る。根号の中は次数が半分( と同格)。あとは だけを使う。

なぜ効くか 主役で割るとは、主役の速さを と決めて目盛りを取り直すこと。脇役は になり、主役どうしの係数の比だけが残ります。「次数が同じなら係数比、分子が高ければ発散、分母が高ければ 」が計算の副産物として出てきます。

型04 はさみうち

04値をあきらめて、居場所だけを決める

顔つき 値そのものが閉じた式で書けない。ガウス記号、閉じない和、初等関数で書けない積分。

中身  で、 が同じ値に収束する不等式を作る。先に行き先を予想し、その両隣を探す

なぜ効くか 極限は「行き先」であって「値」ではありません。行き先さえ確定すれば、途中の値を知らなくても答えは書けます。あとで見る大阪大学の問題のように不等式を作ること自体が問題の本体になることもあります。

型05 

05角と分母を同じ文字にそろえる

顔つき 三角関数があり、その角が に近づく。 のように で現れることも多い。

中身 。派生として 角を と置き直し、分母も同じ にそろえるのが手順のすべて。

なぜ効くか これは における微分係数そのもので、「三角関数を原点のまわりで直線に取り替えてよい」と言っています。 だけ の速さなのは、 が原点で山の頂点にいるからです。

型06  の定義式

06 の形を見たら を疑う

顔つき 

中身  に近づく量と に飛ぶ量を互いに逆数にそろえる

なぜ効くか 後ろの二つは における微分係数。型05と同じ構造で、指数関数と対数関数を原点付近で直線に取り替える道具です。あとで見る横浜国立大学 2009年度の問題は、これ一つで決着します。

型07 ロピタルを使わない書き方

07差の比は、微分係数の定義に読み替える

顔つき  の形に読める

中身  に当てはめる。分子が の形になるよう足して引くのが常套手段。

なぜ効くか ロピタルの定理は教科書の範囲外で、成立条件を自分で確認しないと使えません。しかも の入試問題は、ほとんどがもともと微分係数の定義を問う形で作られています。定義に戻す書き方こそ、出題者が用意した正面の道です。

型08 対数をとる

08積と累乗は、対数で和と積に落ちる

顔つき  乗根、 個の積、 のような量。

中身  のとき の極限を求め、最後に で戻す。積は和に、累乗は積になるので型09や型03に接続できる。

なぜ効くか  が単調で連続だから ならば が保証され、扱いにくい積や累乗をいったん和に落として計算し、あとで戻す迂回が正当化されます。 をとる前に中身が正であることの確認を忘れずに。

型09 区分求積法

09 をくくり出せた瞬間に、和は積分に化ける

顔つき 項数も各項も に依存する和。 など。

中身 まず を強引にくくり出し、残りが だけの式になるか確かめる

なぜ効くか これは定積分の定義そのもの。「和が計算できるから積分になる」のではなく、「積分がもともと和の極限として定義されている」のです。実務では のくくり出しが九割で、分母の の次数を数えて外に出す作業になります。

型10 無限級数(部分和をとる)

10無限個の足し算という計算は存在しない

顔つき  の和を求めよ。収束・発散を調べよ。

中身 部分和 閉じた式で求めてから を計算する。道具は等比の和、望遠鏡和、部分分数分解。

なぜ効くか この記号は「部分和の極限」の略記であって、それ以外の意味を持ちません。だから答案は必ず「部分和を書く → 閉じた式にする → 極限をとる」の三段。差の形 を作れれば、途中が打ち消し合って両端だけが残ります。

型11 漸化式と極限

11先に一般項、それから極限

顔つき  が与えられ、 を求めよ。

中身 ①置き換えで一般項を求め、そこに を持ち込む。②求まらないときは を作り、 ではさむ。

なぜ効くか やってはいけないのは「 だから 」といきなり代入すること。収束を仮定した計算で、証明にはなっていません(発散する数列でも解けます)。見当をつけるためだけに使う――この線引きが核心です。

型12 ガウス記号と極限

12 は式ではなく、幅1の檻

顔つき  などが極限の中にいる。

中身 (同値に )で不等式に直し、はさみうち(型04)に接続する。

なぜ効くか ガウス記号は連続でも微分可能でもなく、初等関数の式で書けません。しかし は必ず から幅1以内にいる。この檻に閉じ込めれば、 で割った瞬間に幅は に縮み、極限では点になります。

型13 数列の極限と関数の極限の違い

13関数から数列へは行けるが、逆は行けない

顔つき  の式の極限を の関数として微分で調べたくなる場面。 が出てくる場面。

中身  ならば 。逆は成り立たない。数列は自然数というとびとびの足場しか踏まない。

なぜ効くか 使ってよい向き―― を調べるのに を微分してよいのは、関数で示せれば数列にも降りてくるから。使ってはいけない向き―― がすべての自然数で成り立っても、 に近づくわけではありません。

型14 発散の速さの比較

14序列で予想し、不等式で証明する

顔つき  など、 だが型03では割り切れないもの。

中身 序列 で答えを予想し、証明は不等式で行う。定番は二項定理( として )と対数の評価。

なぜ効くか 型03が使えるのは「同じ種族どうしの比」だけ。種族が違うと、割っても脇役が消えません。序列そのものは答案に書けませんが、予想が立つかどうかで、はさみうちの不等式を探す時間はまったく変わります

4. 実際の入試で確かめる

全14型のうち、入試の実例がついているのは9型1マスが1つの型です。青いマスは、下にある入試の実例で確かめている型です金色のマスは、このページの追加演習が埋めている型ですこのページの型は、すべてどちらかで扱っています0102030405060708091011121314解法パターン14型入試の実例で確かめる9型追加演習が埋める5型9 + 5 = 14型。この図は下にある入試の実例が扱う型を数えたものです入試の実例は6問。実例の数と型の数は必ずしも一致しません

この単元の解法パターンは全14型で、下にある入試の実例6問で確かめているのは9型です。このページの追加演習が5型を埋めています。1問が複数の型にまたがることも、同じ型を複数の実例で扱うこともあるため、実例の数と型の数は必ずしも一致しません。

ここからは実際に出題された問題で型を確かめます。問題文は各大学が公表した入試問題を、解説のために引用したものです。解答・解説は数強塾が独自に作成したもので、大学公表の解答ではありません。掲載した数値は当塾で独立に解いたうえで Python で検算し、さらに別の担当者が別ルートで解き直して照合しています。易しいものから難しいものへ6題を並べました。

山口大学 2018年度 ―― 型11・型01。まず一般項、それから極限

【問題】山口大学 2018年度 前期日程(理系)

次の条件によって定められる数列 がある。

このとき、次の問いに答えなさい。

(1)  とおくとき、初項 の値を求め、さらに を用いて を表しなさい。

(2) (1) で定められた数列 の一般項を求めることにより、 を求めなさい。

【解答】

(1)  (2)

(1) 初項は 。漸化式の両辺から を引くと、右辺がちょうど平方完成できます。

左辺が 、右辺が ですから 問題文が置き方を指定しているのは、この平方完成を見せるためです。指定がなくても すなわち から の2つが候補として出て、 から始まって減っていく数列なら だろう、と見当がつきます(型11の「予想には使うが証明には使わない」使い方)。

(2)  をくり返すと指数が2倍ずつ増えます

答案は帰納法で締めます。 では で正しく、 を仮定すれば

となり でも成立します。したがって

のとき だから 。ゆえに

収束は極めて速いことも見ておきましょう。 の時点で との差は では しかありません。指数の肩にさらに指数が乗るという構造の威力です。

この問題で使った型

型11  を先に解くのは収束の証明になりません。問題が「一般項を求めることにより」と書いているのは順序を守れという指示です。一般項 → 極限、この向きだけが安全。

型01 最後の は不定形ではありません。「不定形ではないから代入で終わり」と判断するのも型01の正しい使い方です。

検算のしかた

漸化式を から まで分数のまま計算し、閉じた式との差が から まですべて 。数値では と続き、7項目で倍精度の表示上は に到達します。この一気に潰れる挙動が の指紋です。

横浜国立大学 2009年度 ―― 型01・型06・型07。 を「近づく速さ」の問題として読む

【問題】横浜国立大学 2009年度 前期日程(A2冊子)

次の問いに答えよ。

(1) 定積分 を求めよ。

(2) 極限 を求めよ。

【解答】

(1)  (2)

(1)  とおきます。 より の原始関数の1つは 。部分積分して

第1項は より 、第2項は

よって

(2) ここからが本題です。 からすぐ分かります。つまり で、これに を掛けるので の不定形です(型01)。

問われているのは行き先ではなく に近づく速さだ、と読み替えられるかが分岐点です。

そこで を通分します。 を使って

ここが山場です。 をそのまま に置き換えてはいけません。答えは合ってしまいますが、 に近づく部分に が掛かっている」ことを無視した式変形で根拠がないからです。正しくは定数部分と に近づく部分に切り分けます

これを代入して3つに分けます。

順に (A)、(B)、(C) と呼びます。

(A)  なので (A) 。型03そのものです。

(B)  とおくと 。第2項は

と分解でき、前半は 、後半は に収束するので (B) ここで初めて という「使える公式」が登場します。この一手のために切り分けたのです。

(C) 

3つとも収束を確かめたので、極限を分配してよく

この問題で使った型

型01 。名前を言った瞬間に「既知の形に寄せる」という方針が立ちます。

型06・型07 高校範囲で使える武器は実質 ただ一つで、これは における微分係数。「使える公式の形が現れるまで分解する」という手順が、そのまま答案の骨格になります。

検算のしかた

(1)  の定積分は で公式値と一致( と厳密に一致)。

(2)  と、 のオーダーで近づきます。

展開で  で展開すると 。定数項が で、誤差が の速さで減ることも上の数値表と合います。

島根大学 2011年度 ―― 型09。 をくくり出せるかどうか、それだけ

【問題】島根大学 2011年度 前期日程(総合理工学部数理・情報システム学科/医学部)

次の問いに答えよ。

(1) 関数 の増減、極値、グラフの凹凸を調べ、そのグラフの概形をかけ。

(2) 関数 が極値をもつように、定数 の値の範囲を定めよ。

(3) 極限 を求めよ。

【解答】

(1) で極大値 (極小値なし)、変曲点 軸が漸近線 (2)  (3)

(1)  として微分します。

分母はつねに正なので符号は分子だけで決まります。 のみで、 で増加、 で減少。よって で極大値 (最大値)、極小値なし。凹凸は で入れかわり、変曲点は より 軸が漸近線、偶関数なので 軸対称、値域は 概形は を頂点とする左右対称の釣鐘型です。

(2)  とおくと、 よりすべての実数で定義され

約分が起きて、(1) で調べた関数がそのまま出てきました。この小問は「(1) のグラフを だけ下げたとき符号が変わるか」を聞いているだけです。 の値域は 、最大値 をとるのは の1点のみでした。

なら が常に成り立ち単調増加で極値なし。 なら で、 でも の1点だけなので符号は変わらず極値なし。 なら の2解をもち、 の符号が負・正・負と変わって極小値と極大値をもちます。よって

(3) 本題ですが、ここまでの誘導で道具はそろっています。和は

で、項数も各項も に依存しています。この顔つきなら区分求積(型09)。手順は のくくり出しだけです。分母から を1つ出すと

残った部分は だけの式です。 とすれば

で連続なので区分求積法より

原始関数は (2) で目の前を通り過ぎています。 でしたから

誘導の設計を味わってください。(1) で被積分関数のグラフを調べさせ、(2) でその原始関数を登場させ、(3) で使わせる。前の小問が次の小問の準備になっている構造は、大問形式の極限問題ではほぼ例外なく成り立ちます。

この問題で使った型

型09 やることは のくくり出しだけ。分母に が何次で入っているかを数えるのが実務の中心で、ここでは の1次なので が1つ出ます。

型01 項数が 、各項が なので の一種。項ごとに極限をとって と答えてはいけません。足す個数が増える速さと、1項が小さくなる速さの勝負です。

検算のしかた

和を直接計算  で足すと となり、 のオーダーで収束します。

(2)  の符号変化は 回、 回。ただし が極端に小さいと変化点は まで飛ぶので、境界は式で押さえるのが安全です。

大阪大学 2004年度 ―― 型05・型01。個数が増える速さと、角が潰れる速さの勝負

【問題】大阪大学 2004年度 前期日程(理系 第3問)

を3以上の自然数とする。点Oを中心とする半径1の円において、円周を 等分する点 を時計回りにとる。各 に対して、直線 とそれぞれ点 で接するような放物線を とする。ただし とする。放物線 によって囲まれる部分の面積を とするとき、 を求めよ。

【解答】

(途中で

まず1つ分の面積を出します。使うのは、放物線と2本の接線についての定石です。

放物線と2接線が囲む面積は、三角形の

放物線上の2点 A, B における接線の交点を T とすると、線分 TA・TB と放物線の弧で囲まれた部分の面積は のちょうど です。

示すには軸が 軸に平行な場合だけ調べれば足ります(回転しても面積は変わらないので、軸が斜めを向いていても同じ)。 の接点の 座標を とすると、曲線と接線の差はそれぞれ 、接線の交点の 座標は 。積分すると囲む面積は 、三角形は で、比は です。

この問題では、2本の接線が 、その交点が O、接点が です。だから1つ分は

より なので 。また弧は三角形 の内側にあるので、 個の部分は重なりません。)これを 個足して

ここからが本題です。 のとき で、 の不定形。 だから 」は誤りです。個数が増える速さと、1つあたりの角が潰れる速さの勝負だからです。

角を と置き、分母も同じ にそろえます(型05の手順そのもの)。 なので

のとき 。したがって

答えの正体  は円に内接する正 角形の面積です。つまり はその 。正 角形の面積は円の面積 に近づくので、極限は円の面積のちょうど 。不定形が有限に落ち着く理由が、そのまま絵になっています。

この問題で使った型

型01(不定形の型を見分ける)→ 型05(角と分母を同じ文字にそろえる)の2手です。閉じた式 をいったん作り上げてしまい、その式の を既知の極限ひとつで潰す——この運びは、はさみうちで押さえる型とも、区分求積で積分に化けさせる型とも違います。

そして型05を使えるかどうかは、置き方ひとつです。 のままでは の形になっていません。角と分母を同じ にそろえた瞬間に既知の極限が顔を出す。ここが型の効きどころです。

検算のしかた

に小さい を入れてみてください。 では とちょうど1になります。 と、 へ近づきます。

当塾では放物線の面積公式を使わない方法でも確かめました。囲まれた部分を に4000万点をまいて数える方法(乱数で面積を測る)で、 となり、いずれも誤差の範囲で公式と一致しました。公式を使った答えと、公式をまったく使わない測定が合うかどうか——これが検算のいちばん強い形です。

横浜国立大学 2006年度 ―― 型04・型14。閉じない和は、押さえてから割る

【問題】横浜国立大学 2006年度 前期日程(理系)

を正の数とするとき、2曲線 および 軸で囲まれた部分の面積を とする。

(1)  で表せ。

(2)  を2以上の整数とするとき であることを示せ。

(3) 2以上の整数 に対し、 を次のように定める。 の各 に対し、 のときの とおき、 とする。このとき を求めよ。

【解答】

(1)  (2) 証明 (3)

(1) 交点の 座標を とすると で、 では なので

より の両辺を2乗すると

(2)  で減少するので、 では 幅が1の区間で積分すれば、両端の値がそのまま上下の押さえになります(等号は端点だけなので不等号は狭義)。

について加えると、中央は ですから

右側がそのまま を与えます。左側からは

では と読みます。)以上で示せました。(証明終)

区分求積(型09)が和を積分に化けさせる操作だとすれば、(2) はその逆向き、積分で和を押さえる操作です。どちらも「幅1の長方形とその上を通る曲線」という同じ絵から出ています。閉じた式に書けない を、書ける で挟む――型04の宣言そのものです。

(3) (1) で なので を満たします)とすると

とおき を使うと

閉じない和 がそのまま残りました。諦めずに で割ります。

(2) の各辺を で割ると 。右辺は に収束するので、はさみうちから ですから

「求まらない量でも、割る相手を選べば比の極限は確定する」――これがこの問題の主題です。調和和と は同じ速さで増える。型14の序列を、受験生自身の手で確かめさせているわけです。

この問題で使った型

型04  は閉じた式では書けません。値を求めるのではなく、上下から で押さえる。しかもその不等式が (2) として明示的に要求されています。

型14  が同じ速さ、という事実が答えの正体。速さが同じなら比は有限に収束すると読めれば、(3) の方針が最初から見えます。

検算のしかた

(1)  の面積を数値積分すると となり、 と有効数字18桁まで一致します。

(2)(3)  から まで不等式を全数チェックして違反 件(差 はつねに の間)。 と、 のオーダーで極端にゆっくり に近づきます。

大阪大学 2019年度 ―― 型04・型08。はさんでから、対数をとる

【問題】大阪大学 2019年度 前期日程(理系)

以下の問いに答えよ。ただし、 は自然対数、 はその底とする。

(1)  を実数とする。関数 は単調に減少することを示せ。

(2)  を満たす正の実数 に対し、不等式

が成り立つことを示せ。

(3) 数列 と定める。このとき極限 を求めよ。ただし を用いてもよい。

【解答】

(1)(2) 証明 (3)

(1) 微積分学の基本定理より 、積の微分から

よって 分子が奇跡的に潰れます。 ですから

がすべての実数で成り立ち、 によらず単調減少です。(証明終)

(2) (1) の を、示すべき不等式の と同じにとります。 と単調減少性から 。ここで

移項すれば左側の不等式が出ます。右側は被積分関数の評価だけで、 では ですから積分して 。(証明終)

(3) まず不定形の名前を言います。 なので 、それを で割るので 型。しかも は初等関数では書けません。値が出ないと分かった時点で方針は型04(押さえる)に決まり、押さえた不等式に をかぶせるのが型08です。

(2) を使える形にするため のとき )と置換します。 ですから

ここで (2) を に適用します( を満たします)。

下からの評価は でくくります。

では なので、引く量はつねに 。したがって

各辺は正ですから、対数をとって で割ります。 は単調増加なので不等号の向きは変わりません(型08)。

与えられた より左辺は に収束、右辺は定数 。はさみうちから

答えの正体。 で最小値 が大きいほど被積分関数はその端点付近だけに集中し になります。 は、その「指数の肩」だけを取り出す装置でした。

この問題で使った型

型04 (1) 単調性 →(2) それを と読み替えて不等式 →(3) を代入、と一直線。はさむための不等式を作る作業が、そのまま (1)(2) として出題されています。

型08 押さえたあと、対数をとってから で割る。この順序でしか片づきません。 をとる前に各辺が正であることの確認が要ります。

検算のしかた

(1)(2)  を厳密計算させると が返ります。(2) は積分を誤差関数で表し、60桁精度で の格子 70,500 組を全数走査して破れ 件でした。

(3)  の実測は 。答案で使った下界は で、つねに実測値を下から挟みます。

踏んだ罠 素直に数値積分すると が300を超えたあたりで桁落ちし、偽の反例が出ました。120桁で計算し直すと まで破れません。反例が出たら、まず自分の計算精度を疑う――検算の鉄則です。

5. よくある質問

Q1. ロピタルの定理は入試で使ってよいですか。

A. 使わずに書けるようにしておくことを強くすすめます。教科書に載っていない定理なので、使うなら成立条件を自分で確認する必要があり、その手間を払うくらいなら微分係数の定義に戻したほうが速く確実です。入試で出る零割る零の形は、ほとんどが微分係数の定義を問う形で作られています。定義に戻す書き方は出題者が用意した正面の道です。

Q2. はさみうちの不等式が思いつきません。

A. 答えの見当がついていないことが原因である場合がほとんどです。まず発散の速さの序列で行き先を予想し、その両隣を押さえる式を逆算してください。押さえる相手は、たいてい一番強い項だけを残した式になります。なお入試では、押さえるための不等式そのものが前の小問として与えられていることがよくあります。

Q3. 無限級数の和は、いきなり公式で求めてはいけませんか。

A. 無限個の足し算という計算は定義されていません。無限級数の和という記号は部分和の極限の略記なので、答案は必ず、部分和を書く、閉じた式にする、極限をとる、という三段になります。等比級数の公式も、この三段を一度やった結果を覚えているだけです。

Q4. 漸化式の極限で、いきなり極限値を代入してはいけないのはなぜですか。

A. それは収束することを仮定したうえでの計算だからです。発散する数列でも同じ方程式は解けてしまいます。正しい順序は、一般項を求めてから極限をとるか、極限値との差が一定の割合より小さくなることを示してはさむか、のどちらかです。方程式を解いて出した値は、見当をつけるためだけに使ってください。

Q5. 型を覚えれば初見の極限問題も解けますか。

A. 型は考えなくて済ませる道具ではなく、考える範囲を狭めるための道具です。過去に何百回も使われてきた型から予想して、思考する量を減らすことで、手際よく解法を思い付いている場合もあるのです。狭めたあとに何を考えるかは、その問題ごとに自分で決めることになります。

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極限の計算で手が止まってしまう人へ

極限が苦手な生徒の答案を見ていると、公式を忘れているのではなく「いまどの不定形なのか」を一度も言葉にしていないことがほとんどです。数強塾では、極限の問題を見たらまず不定形の種類を宣言させ、そのうえで崩し方を選ばせます。値が出ないと分かったら押さえに切り替える判断も、口に出して練習します。これを毎回やるだけで、極限は得点源に変わります。オンラインの完全1対1で、プロ講師のみが担当します。

数強塾オリジナル演習 追加5題|型02・03・10・12・13を埋める

上の入試実例では型01・04〜09・11・14 を扱いました。ここでは残る型10(無限級数)・型12(ガウス記号)・型13(数列と関数の違い)を中心に、型02(有理化)・型03(最高次で割る)を別の切り口で加えて5問埋めます。すべて自作問題で、答えは数値で検算してあります。

型10 無限級数(部分和をとる)
無限級数 の和を求めよ。

解答・解説を見る

無限級数は「部分和の極限」です。いきなり足そうとせず、まず 項までの和を出します。
【部分分数分解】分母の差が なので を掛けて調整します。

【部分和】書き並べると隣どうしが消えます。

【極限】

【答】
(検算:。実際 ✓。 ✓)
【定義に忠実に】 とは のこと。「無限個を足す」という操作は定義されていません。
必ず有限で止めて、極限を取る。この2段階を答案でも書き分けてください。
【部分和が閉じない場合】部分和が式で書けないときは、はさみうち(型04)に切り替えます。 などがその例で、値そのものは高校では求まりません。

型12 ガウス記号と極限
を求めよ。ただし を超えない最大の整数を表す。

解答・解説を見る

ガウス記号は式変形できません。だからはさみうちに持ち込むのが定石です。
【不等式で押さえる】定義から、必ず次が成り立ちます。

【各辺を で割る】 なので不等号の向きは変わりません

両端とも に行くので
【答】
(検算: のとき なので ✓)
【なぜ不等式が作れるのか】 から小数部分を捨てたもの。捨てる量は 以上 未満なので、 より大きく 以下に必ず収まります。
【負のときは注意】 です。 ではありません。「超えない最大の整数」なので、負の側では絶対値が大きくなる方向に切り捨てます。
【この型の全部】ガウス記号を見たら を書く。それだけです。あとははさみうちが処理してくれます。

型13 数列の極限と関数の極限の違い
について、次を調べよ。
(1)
(2) 数列 は自然数)の極限

解答・解説を見る

【(1) 関数の極限】すべての実数を通って大きくなります。
のとき
のとき
いくら大きくしても の間を振動します。1つの値に近づきません。
よって極限は存在しない。
【(2) 数列の極限】自然数だけを通ります。
(すべての で)
よって極限は
【答】(1) 存在しない (2)
【なぜ食い違うのか】数列は「とびとび」にしか値を取らないからです。関数が振動していても、整数の位置だけ見れば落ち着いていることがあります。
【一方向だけ成り立つ】関数の極限が存在すれば、数列の極限も同じ値になります(自然数も実数の一部だから)。ですが逆は成り立ちません。この問題がその反例です。
【入試での使われ方】「関数の極限が存在しないことを示せ」では、2つの異なる数列をとって違う値に行くことを示すのが定石。 に分かれる——それが証明になります。

型02 有理化(数列の極限)
次の極限を求めよ。
(1)
(2)

解答・解説を見る

【(1)】 の不定形です。有理化して商に変えます。

分母は限りなく大きくなるので
【(2)】(1) の結果に を掛けます。 の不定形です。

分母分子を で割ります。

【答】(1)  (2)
(検算: のとき(1) は約 、(2) は約 ✓)
【釣り合っている】(1) が に近づく速さと、 が大きくなる速さがちょうど釣り合うので、有限の値 に落ち着きます。
掛ける相手が なら なら 速さの釣り合いで決まるのが不定形の特徴です。
【微分とつながる】 は、 の微分係数そのものです。隣どうしの差が微分になっています。

型03・型04 三角関数を含む極限
を求めよ。

解答・解説を見る

の形ですが、 は最高次でくくれません(振動するから)。
【まず分ける】

の行き先を調べればよいことになりました。( ではなく なので にはなりません)
【はさみうち】 の各辺を で割ります。

両端とも に行くので
【答】
(検算: ✓。 では で、上下に揺れながら に近づいています)
と混同しない】同じ でも行き先がまったく違います。
では の不定形で
では
しかも のほうは不定形ですらありません。分子が から に収まっているので、「有界 ÷ 無限大」は確定して 。せめぎ合いがないからです。

14の型は「速さを見えるようにする」4つの道

本文の背骨のとおり、不定形とは速さの勝負でした。どうやって速さを見えるようにするかで型を並べ直すと、こうなります。

やり方 操作 該当する型
式を変形する 有理化・くくり出し・約分 0203
既知の極限に帰着 の定義 型05・06
上下から押さえる はさみうち 型04・12・14
和や漸化式を閉じる 部分和・区分求積・一般項 型09・10・11

そして型01(型を見分ける)と型13(数列か関数か)は、どの道でも最初に確認することです。

無限級数の手順(型10)

 (これが定義

「無限個を足す」という操作は存在しません。必ず部分和を出してから極限——答案でも2段階を書き分けてください。

ガウス記号の扱い(型12)

この不等式を書くだけです。式変形はできないので、押さえる以外に手がありません。

負の値では となることに注意してください。「小数を切り捨てる」ではなく「超えない最大の整数」です。

数列か関数か(型13)

主張 成り立つか
関数の極限あり → 数列の極限も同じ 成り立つ
数列の極限あり → 関数の極限も同じ 成り立たない

数列はとびとびにしか値を取らないので、関数が振動していても数列は収束しうる

逆にこの性質は「関数の極限が存在しないことの証明」に使えます。違う値に行く数列を2つ見つければよい。

「有界 ÷ 無限大」は不定形ではない

分子が から に収まっているので、せめぎ合いがありません。同じ式でも では の不定形で答えは

どこへ近づけるかでまったく別の問題になります。式だけを見て判断しないでください。

検算の型

  1. 大きい値を代入する ──  など(全問で使いました)
  2. 部分和を小さい で確かめる ──  を直接足して比較(演習1)
  3. 近づき方も見る ── 単調か、振動しながらか(演習5)

3つ目が意外に効きます。振動しながら近づく場合、1つの値だけ見ると収束していないように見えることがあります。

「なぜそうなるのか」へ

極限の計算は、不定形の意味を押さえると型が減ります。

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