式と証明の解法パターン全16型|不等式証明の3つの道と入試実例(名大・横国大・信州大・山口大・立教大・小樽商大)



今日の一問
等式 についての恒等式となるような定数 を求めよ。
——さて、どこから手をつける?
答えと考え方は、この記事の中で順を追って解説します。

「式と証明」は、答えが数値で出ない分野です。だから何をしたら証明が終わったことになるのかが分からないまま、式をいじって時間だけが過ぎる。けれども実際には、不等式の証明でやることは3つしかありません。差をとる/既知の不等式に帰着させる/増減を調べる。この3つと、恒等式の扱い、整式の割り算を押さえれば、この分野は一気に見通しがよくなります。このページは、式と証明の解法を16の型に分けて並べた辞典です。型は当てはめるための箱ではなく、考える範囲を狭めて、そこから先に頭を使うための道具として並べています。

このページの16型

  1. 二項定理(係数を取り出す)
  2. 整式の割り算/実際に割る
  3. 整式の割り算/剰余の定理で余りを出す
  4. 整式の割り算/ で割った余り
  5. 整式の割り算/2つの余りの条件
  6. 次数下げ(割り算を計算の道具に使う)
  7. 恒等式/係数比較と数値代入
  8. 恒等式/次数を先に決める
  9. 部分分数分解
  10. 比例式・対称式・サイクリックな式
  11. 不等式/差をとる
  12. 不等式/等式の条件つき
  13. 不等式/誘導に乗る(前問を使う)
  14. 相加平均・相乗平均
  15. コーシー・シュワルツの不等式
  16. 不等式/微分と数学的帰納法

1. 不等式の証明でやることは3つだけ

A差をとって、平方の和にする。 の形を作る。

平方は必ず0以上――これが「正であること」を示せる最も基本的な根拠です。等号条件も同時に出るのが利点。2乗が作れるかどうかを最初に試すのが第一手です。

B既知の不等式に帰着させる。相加相乗、コーシー・シュワルツ、あるいは前問の結果

誘導つきの証明問題では、ほぼ確実に前問が使えます。「(1) をどう使えば (2) が出るか」を先に考えるほうが、ゼロから作るより速い。

C差を関数と見て、増減を調べる。 とおいて を示す。

代数的に平方に持ちこめないとき(対数や指数が入るとき)は、これしかありません。端点で0になることを確認してから、単調性で押すのが型です。

どれを選ぶかは、式の顔つきで決まる

多項式だけ → A(差を平方に)

分数・根号・積の形 → B(相加相乗・コーシー)

が入る/整数 が入る → C(微分、または帰納法)

なぜ「差をとる」が基本なのか。不等式 は「」と同じこと。2つの量を比べる問題が、1つの量の符号を調べる問題に変わるのが最大の利点です。比べる相手が消えるので、あとは「その1つの式が0以上であること」だけを示せばよい。比を見る()のは、両辺が正で積の形のときだけ――そのほうが約分が効くからです。差か比か、は式の形で選びます。

2. 整式の割り算は「計算の道具」でもある

割り算の定義式

ただし の次数は の次数より小さい。

剰余の定理は、ここに を入れて を代入しただけ:

割り算は「余りを求める」ためだけの道具ではない。 という等式は、 となる について を意味します。つまり高次の式を低次の式に置きかえられる。これが「次数下げ」で、 が汚い値(虚数や無理数)でも計算が一気に軽くなります。微分法で極値を計算するときにも同じ手を使いました。割り算の定義式は、代入計算を軽くする装置だと覚えてください。

3. 解法パターン全16型

型01 二項定理

01一般項を書いて、次数を合わせる

顔つき 「 の展開式で の係数を求めよ」。

中身 一般項 を書き、指数の条件から を決める。

係数を全部展開しない 欲しいのは1つの項だけなので、一般項を書いて指数の方程式を解けば済みます。「必要な項だけ取り出す」という発想は、 の1項だけを使って不等式を作る型16にもつながります(山口大学の実例)。

型02 整式の割り算/実際に割る

02係数だけ並べて筆算する

顔つき 「 で割った商と余りを求めよ」。

中身 次数の高い順に係数を並べ、欠けている次数には0を書いて筆算。

0を書くのが事故防止  の係数が0です。これを省くと桁がずれます。整式の割り算は、位取り記数法の割り算とまったく同じ構造で、 を10だと思えば小学校の筆算そのものです。

型03 整式の割り算/剰余の定理

03割る式の零点を代入する

顔つき 「 で割った余りが3、 で割った余りが のとき、 で割った余りを求めよ」。

中身 余りを とおき、 を使って連立。

余りの次数を先に決める 2次式で割った余りは1次以下なので 未知数は2つ、条件も2本でぴったり合う。この「未知数と条件の本数が合う」構造が見えていれば、必ず解けると分かって安心して進められます。

型04  で割った余り

04 と置きかえる

顔つき 「 で割った余り」。

中身  と置いて の多項式に直すと、低次の項がそのまま余りになる。

なぜ置きかえが効くのか  で書いた多項式を で割るのは、 以上の項を捨てるだけの操作だからです。「割り算」が「並べかえて読み取るだけ」に化ける。部分分数分解(型09)で分母が のときも同じ置きかえが効きます(立教大学の実例)。

型05 2つの余りの条件

05条件の個数だけ未知数を用意する

顔つき 「 で割った余りと で割った余りが与えられ、3次式で割った余りを求めよ」。

中身 3次式で割った余りは2次以下なので 。条件から3本の式を立てて連立。

虚数を代入してもよい  で割った余りの条件を使うには を代入します。虚数を代入して実部と虚部を比べれば、実数の条件が2本得られる。「代入してよい値は実数だけ」という制限はありません――恒等式なのですから。

型06 次数下げ

06 がみたす関係式で、高次を低次に落とす

顔つき 「 のとき を求めよ」「虚数解を代入する」。

中身 与えられた関係式を使ってくり返し次数を下げる。または を関係式で割った余りを求める。

代入する前に式を簡単にする  にそのまま代入すると計算が大変ですが、 を使えば まで落ちます。「汚い数を代入する前に、その数がみたす関係式で式を簡単にする」――この順序が計算量を決めます。

型07 恒等式/係数比較と数値代入

07代入は速い、係数比較は確実

顔つき 「すべての について成り立つような を求めよ」。

中身 両辺を展開して同じ次数の係数を比べる(係数比較)か、都合のよい値を代入する(数値代入)。

数値代入は必要条件しか出さない いくつかの値で成り立つだけでは恒等式とはかぎりません。だから数値代入で候補を出したら、最後に「逆に、この値なら恒等式になる」ことを確認するのが本来の作法です。ただし、代入した値の個数が「次数+1」に達していれば十分になります(多項式は次数+1個の点で一意に決まるため)。この事実を書き添えれば、逆の確認を省けます。

型08 恒等式/次数を先に決める

08両辺の最高次を比べる

顔つき 「多項式 をみたすとき、 を求めよ」。

中身  次と仮定し、両辺の次数を の式で書いて等号から を確定させる。

次数が決まれば未知数が有限になる 「多項式を求めよ」だけでは候補が無限にありますが、次数が決まれば係数は有限個。次数を決める道具は「両辺の最高次の比較」です。これは整数問題で「候補を有限にする」のとまったく同じ発想です。

型09 部分分数分解

09分母の因数ごとに分ける

顔つき  の形に。

中身 分母が の形なら、 と置くと分子を並べかえるだけで係数が読める。

重根型は置きかえが最速 分母を払った を展開して3元連立を解くのは遠回りです。 と置けば右辺は なので、左辺を で書いたときの係数がそのまま 。連立を解く必要がありません(立教大学の実例)。この分解は数列の「差の形にして和を求める」でも使います。

型10 比例式・対称式・サイクリックな式

10比は とおく

顔つき  のとき…、または の入れかえで不変な式。

中身 比例式は とおいて と表す。対称式は基本対称式で書く。

とおくと変数が1つになる 3つの文字が2本の等式で結ばれているので、実質の自由度は1つ。それを という1文字で表現しきるのがこの型です。サイクリックな式( で不変)は対称式より弱い性質ですが、 を因数にもつことが多い、という知識が効きます。

型11 不等式/差をとる

11平方の和にできれば終わり

顔つき 「 を証明せよ」「」。

中身  を計算して の和にする。根号があれば を文字とみる。

根号があっても平方が作れる  です。 だから が実数として存在する――この条件が平方完成を可能にしています。条件を確認してから変形するのが答案の作法です(横浜国立大学の実例)。

型12 不等式/等式の条件つき

12条件を使って文字を減らす

顔つき 「 のとき を示せ」。

中身 条件から1文字消去する。または対称式として で書く。

消去した文字の存在条件を忘れない  と消去するなら の範囲がそのまま の範囲になります。対称式で扱うなら「 が実数」から が残ります。文字を減らしても、条件は消えずにどこかへ移る――これは2次関数の型12とまったく同じ構造です。

型13 不等式/誘導に乗る

13前問の結論を、そのまま代入する

顔つき (1) で不等式を証明させ、(2) でそれを使わせる構成。

中身 (1) の不等式の文字に、(2) で扱う量を代入する。

誘導は「使え」という指示 (1) が証明問題なら、(2) はほぼ確実に (1) を使います。どこに何を代入すれば (2) の形になるかを逆算するのが速い。横浜国立大学の問題では、(1) の相加相乗を の中に使い、さらに (1) をもう一度 に対して使う――同じ不等式を2回使うという構成でした。

型14 相加平均・相乗平均

14積が定数になる形を作る

顔つき  の最小値()。

中身 )。 が定数でなくても不等式は成り立つ。最小値を決めるときは、下限と等号成立を別々に確認する。

注意等号成立を必ず確かめる。

の等号は 、つまり のとき。その が定義域に入っていなければ、最小値は4ではありません。 が示せた」だけでは最小値を求めたことにならない――ここが最も多い失点です。

積が定数なのは「適用条件」ではありません。相加相乗平均の不等式は、非負の実数 \(a,b\) に対して成り立ち、等号は \(a=b\) のときです。積が定数なら一定の下限を作りやすい、というのは最小値を求めるための工夫です。不等式を使ったあと、その下限に実際に到達する値が定義域にあるかを確認します。

積が変わる例で、使える条件を確かめる

\(x\geqq0\) で \(a=x,\ b=1\) とすると、積は \(x\) なので一定ではありません。それでも、

\[x+1\geqq2\sqrt{x}\]

は成り立ちます。理由は \(x+1-2\sqrt{x}=(\sqrt{x}-1)^2\geqq0\) だからです。等号は \(x=1\)。例えば \(x=4\) なら \(5\geqq4\) です。

積が変わっても相加相乗平均は成り立つxが0から4の範囲。直線y=x+1は曲線y=2ルートx以上で、x=1、y=2でだけ等しくなる。x=4では5と4で不等号は成り立つ。積が変わっても、不等式は成り立つ01234012345xy等号:x=1実線:y=x+1破線:y=2√x接する点と、最小になる点は別の話

図は \(0\leqq x\leqq4\) の部分を示していますが、上の平方による証明はすべての \(x\geqq0\) で成り立ちます。なお、\(x+1\) の最小値はこの定義域では \(x=0\) のときの \(1\) です。相加相乗の等号が成り立つ点が、元の式の最小点とは限りません。積が定数の例とは、ここを区別します。

型15 コーシー・シュワルツの不等式

152乗和と積和を結ぶ

顔つき 「 のとき の最大値」。

中身 。等号は

ベクトルの言葉では当たり前の事実 これは 、つまり を書き直したものです。だから等号は2つのベクトルが平行なときベクトルの面積公式の根号の中が0以上であることも、同じ不等式が保証しています。

型16 不等式/微分と数学的帰納法

16代数で無理なら、増減か帰納法

顔つき  が入る/自然数 についての不等式。

中身 差を とおいて と端点の値を示す。 が入るなら帰納法。

帰納法は「何を仮定すれば次が言えるか」から設計する 信州大学の問題(後掲)では、帰納段階で必要になる形がちょうど の場合そのものでした。「基底を補題として先に証明しておけば、帰納段階が自動的に閉じる」という構造を見抜くのが本体です。前から順に書き始めるのではなく、 で欲しい形を先に書いてから逆算してください。

4. 実際の入試で確かめる

全16型のうち、入試の実例がついているのは5型1マスが1つの型です。青いマスは、下にある入試の実例で確かめている型です白いマスは、下にある入試の実例では扱っていない型です01020304050607080910111213141516解法パターン16型入試の実例で確かめる5型下の実例にない11型5 + 11 = 16型。この図は下にある入試の実例が扱う型を数えたものです入試の実例は6問。実例の数と型の数は必ずしも一致しません

この単元の解法パターンは全16型で、下にある入試の実例6問で確かめているのは5型です。残りの11型は、下にある実例では扱っていません。1問が複数の型にまたがることも、同じ型を複数の実例で扱うこともあるため、実例の数と型の数は必ずしも一致しません。

ここからは実際に出題された問題で型を確かめます。問題文は各大学が公表した入試問題を、解説のために引用したものです。解答・解説は数強塾が独自に作成したもので、大学公表の解答ではありません。掲載しているすべての数値は、当塾で独立に解いたうえで Python による検算を行っています。

立教大学 2024年度 ―― 型09。置きかえで連立を消す

【問題】立教大学 2024年度

等式 についての恒等式となるような定数 を求めよ。

【解答】

両辺に をかけると

ここで展開して係数比較すると3元連立になります。そのかわりに と置きます(型04・型09)。

右辺は なので、係数を読み取るだけ

検算します。 を代入すると左辺は 、右辺は で一致します。

なぜ置きかえで係数が直接読めるのか。右辺は の降べきに並べた多項式そのもの、左辺も で書けば多項式。同じ多項式の係数は一意に決まるので、比べるまでもなく対応します。分母が という重根型のとき、この置きかえは必ず効きます。「連立を解く」から「並べかえて読む」へ変える――これが計算量を減らす典型的な工夫です。

横浜国立大学 2004年度 ―― 型11・型13。同じ不等式を2回使う

【問題】横浜国立大学 2004年度

次の不等式を証明せよ。

(1) のとき、

(2) のとき、

(3) のとき、

【解答の骨格】

(1) 差を平方に (2) (1) を2回使う (3) 底をそろえて (2) の形に持ちこむ

(1) 差をとります(型11)。 なので が実数としてとれます。

等号は のとき。

(2) ここが誘導の使いどころです。 とおくと、 より

まず (1) から で、 は増加関数なので

両辺とも正 より右辺が正)なので、2乗しても向きが変わりません。

さらに (1) を に対してもう一度使うと 。合わせて示せました。

(3) 底をそろえます。自然対数で書くと、示したいのは

より両方の分母は正なので、分母を払って

ここで の相加平均がちょうど であることに注目すると、これは (2) の形そのものです(等号は のときですが、それは起こらないので厳密不等号になります)。

」がどこで効いているか。(2) では 、つまり2乗しても不等号の向きが変わらないために使われています。もし なら となり、2乗で向きが逆転して主張が崩れます。条件がどこで効くかを言えるかどうかが、証明の理解度そのものです。答案でも「 より両辺は正だから2乗してよい」と一言添えてください。

信州大学 2011年度 前期日程 ―― 型16。帰納段階から逆算して基底を設計する

【問題】信州大学 2011年度 前期日程

正の数 と自然数 に対して、次の不等式が成り立つことを数学的帰納法で証明しなさい。

【解答の骨格】

を補題として先に示すと、帰納段階がそのまま補題に帰着する

帰納法を後ろから設計する

とおいて のときの仮定を使うと、 で示したい式は

まで落ちます。これは主張の の場合そのもの。だから を証明しておけば、帰納段階は自動的に閉じます。

基底()の証明  で増加関数です。分母を大きくすると値が小さくなることを使って、各項を下から評価します。

なので、どちらも厳密な不等号です。)辺々加えて

帰納段階  のとき成り立つと仮定すると

右辺に基底( に適用)を使うと

よって でも成立します。

基底が補題を兼ねる、という構造。ふつう帰納法の基底は「確かめるだけ」の作業ですが、この問題では基底そのものが帰納段階で使う道具になっています。だから基底を丁寧に証明する価値がある。「帰納段階で何が必要になるか」を先に書き出してから基底を選ぶと、こういう構造が見えます。前から順に書き始めると、この設計には気づけません。

山口大学 2016年度 前期日程 ―― 型01・型13。二項定理の1項だけを使う

【問題】山口大学 2016年度 前期日程

を自然数とする。このとき、次の問いに答えなさい。

(1) のとき、次の不等式が成り立つことを証明しなさい。

(2) のとき、極限値 を求めなさい。

【解答】

(1) 二項展開の の項だけを取り出す (2)

(1) 右辺の そのものだと気づくのが第一手です。

二項定理より

なのですべての項が正。 なので の項 が確かに存在します。他の項(少なくとも )が正なので

という条件は「3次の項が存在する」ためのものです。

(2) なぜ (1) で3乗の項を選ばせたのかを考えます。分子が なので、はさみうちを効かせるには分母に のオーダーが必要だからです。

より とおくと、

右端は に収束するので、はさみうちの原理より

誘導が「何次の項を選ぶか」を指定している。もし (1) が2乗の項()だったら、右端は となり に収束しません。分子の次数より1つ大きい項を選ぶ必要がある――これが (1) で3次を選ばせた理由です。誘導の形には必ず意味があるので、「なぜこの形なのか」を考えると次の問いへの道が見えます。

小樽商科大学 2019年度 ―― 型16。差の関数を微分して単調性で押す

【問題】小樽商科大学 2019年度

のとき、不等式 が成り立つことを証明せよ。ただし、対数は自然対数とする。

【解答の骨格】

とおくと かつ

両辺とも で0に近づくので、差を関数と見て単調性で押し切るのが定石です(型16のC)。

とおくと 。あとは を示せば が言えます。

微分すると

ここで第1項と第3項を先にまとめるのが要点です。

したがって

この形にすれば、 が一目で読めます。よって

微分したら「積の形」まで整理する。 のままでは符号が読めません。共通の分母でまとめ、さらに をくくり出して積の形にする――ここまでやって初めて「各因数が正だから全体が正」と言えます。符号を判定するために整理する、という目的意識が大事です。整理しないまま数値代入で確かめても、証明にはなりません。

名古屋大学 2013年度 前期日程 ―― 型13。不等式を「個数の勘定」に使う

【問題】名古屋大学 2013年度 前期日程

とし、 とおく。

(1) 次の不等式を証明せよ。

(2) 実数 の整数部分( となる整数 )を で表す。整数 のうちで異なるものの個数を求めよ。必要ならば として計算せよ。

【解答】

(1) 積分(または平均値の定理)で評価 (2)

(1)  なので

積分区間の幅が1で、 では が厳密に成り立ちます。したがって

幅が1だから、不等式がそのまま面積の比較になるのがこの評価の要点です。

(2)  は増加関数なので は非減少。増分が1をまたぐところ()で場合分けします。

範囲 (1) からの評価 整数部分の動き
必ず1以上増える → 全部相異なる
増分が1未満 → 増えるか据え置き

前半()は100個すべて相異なる。後半()は増分が1未満なので、 から まで1ずつ飛ばさずに増えます。よって後半で現れる値の個数は

より より

後半は 個。前半100個のうち は後半と重複するので

不等式が「個数」を決めている。(1) の不等式は、単なる評価ではなく「整数部分が1つ増えるか、据え置きか」を判定する道具として使われています。増分が1以上なら必ず飛ぶ、1未満なら飛ばない――連続量の不等式が、離散的な個数の情報に変わるのがこの問題の面白さです。ガウス記号が絡む問題では、この「増分と1の大小」がほぼ必ず鍵になります。

5. よくある質問

Q1. 不等式の証明で、何から手をつければよいか分かりません。

A. 3つしかありません。差をとって平方の和にする既知の不等式(相加相乗・コーシー・前問)に帰着させる差を関数と見て増減を調べる。多項式なら1つ目、分数や積なら2つ目、 が入るなら3つ目、と式の顔つきで選べます。

Q2. 相加相乗を使ったのに減点されました。

A. 等号成立の確認が抜けていた可能性が高いです。「」を示しただけでは最小値が4とは言えません。等号が成り立つ が定義域に入っていることまで書いてください。積が定数でなくても相加相乗平均は使えます。ただし、変数を含む下界を得ただけでは最小値が決まったとは限りません。定義域全体での下限と、その値に到達する条件を確認してください。

Q3. 恒等式で数値代入を使ってよいですか。

A. 使えますが、数値代入は必要条件しか出しません。代入した値の個数が「次数+1」以上なら十分になるので、その旨を書き添えるか、最後に「逆に成り立つ」ことを確認してください。

Q4. 数学的帰納法で、帰納段階が進みません。

A. 前から書き始めているのが原因かもしれません。 で示したい式を先に書き、そこから仮定が使える形に変形してみてください。信州大学の問題のように、必要になる形が基底そのものだった、ということもあります。

Q5. 型を覚えれば初見の証明問題も解けますか。

A. 型は考えなくて済ませる道具ではなく、考える範囲を狭めるための道具です。狭めたあとは自分で考える必要があります。実際、本ページの名古屋大学の問題は「増分と1の大小で整数部分の動きが決まる」と自分で気づく必要がありました。型を持っている人は、白紙のまま全部を考えずに済むという差が出ます。

6. 次に読むページ

証明問題で手が止まる人へ

証明が苦手な生徒のほとんどは、才能ではなく「終わったと言える形」を知らないだけです。数強塾では、不等式なら「差を平方の和にする/既知に帰着する/増減を調べる」の3つのどれで攻めるかを最初に宣言させるところから指導しています。オンラインの完全1対1で、プロ講師のみが担当します。

数強塾オリジナル 追加演習16問|16の型を、数字を変えてもう一度

上の16の型を、設定と数値を変えた自作問題で1問ずつ確かめます。不等式の証明でやることは3つだけ——差をとる/2乗の形を作る/既知の不等式に乗せる。手を動かす前に、どれで行くかを決めてください。

問1(型01 二項定理)

の展開式における定数項を求めよ。

解答

一般項は

定数項は 、すなわち

の指数を の式で書いてから条件を立てる。係数 の意味は組合せの記事を参照。)

問2(型02 整式の割り算/実際に割る)

で割った商と余りを求めよ。

解答

筆算で割ると

を引いて

を引いて

、余り

(検算: に戻して必ず確かめる。余りの次数が割る式より低いことも確認する。)

問3(型03 剰余の定理)

で割った余りを求めよ。

解答

剰余の定理より、余りは 1

割らずに代入するだけ で割った余りが になるのは、 を入れると第1項が消えるから。)

問4(型04 (x−1)(x+2) で割った余り)

整式 で割ると3余り、 で割ると 余る。 で割った余りを求めよ。

解答

2次式で割るので余りは1次以下。 と置く。

引くと

余りは

余りの次数を先に決めるのが出発点。2次で割れば1次以下、3次で割れば2次以下。)

問5(型05 2つの余りの条件)

整式 で割ると2余り、 で割ると8余る。 で割った余りを求めよ。

解答

として

引くと 。余りは

(検算:。合う。2点を通る直線を求めているのと同じ。)

問6(型06 次数下げ)

のとき、 の1次式で表せ。

解答

条件より 。これを繰り返し使う。

(係数 はフィボナッチ数列。次数下げは「条件式で割った余りを求めている」のと同じ。実際 で割った余りが 。)

問7(型07 恒等式/係数比較)

がすべての で成り立つとき、 を求めよ。

解答

左辺を展開すると

係数を比較して より より

(数値代入法でも解ける。 を入れると が一発で出る。代入法は速いが、最後に恒等式であることの確認が要る。)

問8(型08 恒等式/次数を先に決める)

整式 を満たすとき、 を求めよ。

解答

差が1次式なので 2次式(階差をとると次数が1つ下がる)。 と置く。

と比較して )、)。

(検算:階差が次数を1つ下げるのは奇数の和の記事で見たとおり。)

問9(型09 部分分数分解)

を部分分数に分解せよ。また を求めよ。

解答

係数 は「2つの分母の差」の逆数 だから。忘れやすいので、 を代入して と確かめる。)

なので

(中間項が打ち消し合う。差の形を作れば和が求まる、という発想。)

問10(型10 比例式)

は0でない)のとき、 の値を求めよ。

解答

と置くと

3

比例式は「=k と置く」の一手 は最後に必ず約分で消える。消えなければ置き方か計算が誤っている。)

問11(型11 不等式/差をとる)

のとき を示せ。等号成立条件も述べよ。

解答

差をとる。

なので、この差は0以上。よって

等号は 、すなわち のとき。

差をとって因数分解し、2乗の形を作るのが基本手順。 の条件を書き落とすと証明が完成しない。)

問12(型12 不等式/等式の条件つき)

のとき、 の最小値を求めよ。

解答

相加相乗より

よって 2 のとき)。

条件つきの最大最小は、条件で1文字消すか、対称式に直す を代入して としても同じ。平方完成で解けるならそちらのほうが確実。)

問13(型13 不等式/誘導に乗る)

(1) を用いて を示せ。
(2) (1)を用いて を示せ。

解答

(1) より

(2) 同じ不等式を3組つくる。

辺々を足すと

両辺を2で割って 。等号は のとき。

誘導つきの不等式は「(1)を何回使うか」を考える。ここでは3回使って足す。文字を巡回させて足す形は、この単元で繰り返し出る。)

問14(型14 相加平均・相乗平均)

次の最小値を求めよ。

(1) のとき  (2) のとき

解答

(1) 相加相乗より 6

等号は 、すなわち より)。

(2) そのままでは積が定数にならない。 をひとかたまりにする

3

等号は 、すなわち (正より)、

相加相乗が使えるのは「積が定数」になるとき。そうならなければ、足したり引いたりして形を作る。等号成立を確認しないと「最小値」とは言えない。)

問15(型15 コーシー・シュワルツの不等式)

のとき、 の最大値と最小値を求めよ。

解答

コーシー・シュワルツの不等式 を使う。

より

最大値 5、最小値

等号は のとき、すなわち

(別解: と置いて三角関数の合成を使うと となり同じ結論。 が両方に現れるのは偶然ではなく、どちらもベクトルの大きさを見ている。)

問16(型16 不等式と数学的帰納法)

すべての自然数 について が成り立つことを示せ。

解答

(i) 。成立。

(ii) と仮定する。

ここで より 、すなわち

よって となり、 でも成立。

(i)(ii)よりすべての自然数で成り立つ。

仮定を使ったあと、目標の形まで押し切る一手が必要。ここでは がその一手。この評価を思いつくには、結論から逆算するのがコツ。)

「なぜその式でよいのか」を理由から確かめる

📝 この型が実際に出た入試問題(14問)

「式と証明」の型が実際の入試でどう出たかを、数強塾が全問解説を公開している年度から拾いました。各行の「解説を読む」から、その問題の解説へ直接移動できます。型を読んだあとに実出題で当てると、どこまで通用する判断なのかがはっきりします。

大学・年度 出題テーマ 難易度 解説
関西大学 2025年度 〔Ⅱ〕4次の相反方程式( を塊と見る置き換え) 標準 解説を読む
関西大学 2025年度 〔Ⅳ〕3次方程式の対称式(ニュートンの公式) やや難 解説を読む
東北大学 2019年度 整式をx²+1で割った余り 解説を読む
京都大学 2007年度 行列の高次式をケーリー・ハミルトンで次数下げ 標準 解説を読む
名古屋大学 2005年度 行列の交換子 やや難 解説を読む
九州大学 2017年度 正三角形と無理数の証明 解説を読む
自治医科大学(数学) 2016年度 問22(恒等式・係数比較) 解説を読む
東邦大学(数学) 2014年度 第8問(整式の恒等式と次数決定) 解説を読む
自治医科大学(数学) 2012年度 問3(部分分数分解・恒等式) 解説を読む
昭和大学(数学) 2010年度 大問2 ガウス記号(エルミートの恒等式)の証明 解説を読む
自治医科大学(数学) 2009年度 問3(大きな数の百の位・二項定理) 解説を読む
東京慈恵会医科大学(数学) 2007年度 第2問(行列と固有多項式:定理の証明とその応用) 解説を読む
自治医科大学(数学) 2007年度 問5(分数式の恒等式) 解説を読む
大阪大学 2006年度 部分分数分解と二項係数の恒等式 解説を読む

難易度は数強塾の見立てです(「—」は難易度を掲載していない年度)。大学別の年度一覧と出題傾向は過去問解説の総索引から、この型の全体像は解法パターン事典のハブから確認できます。

要点辞典この単元の公式・定石・つまずきやすい所は 数学II・B・Cの要点辞典:式と証明 にまとめてあります。

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