集合と論理の解法パターン全12型|必要十分・対偶・背理法・すべてとあると入試実例(島根大・東北大・千葉大・宇都宮大・早稲田大)


「集合と論理」は、入試で単独の大問になることが少ない単元です。そのため軽く扱われがちですが、実際には数学のすべての答案の書き方を支配している単元です。「示せ」と書かれた問題で何を書けば証明になるのか、「必要十分条件を求めよ」で何と何を言えばよいのか、「すべての」と「ある」で何が違うのか――これらはすべて論理の問題です。計算が合っているのに点がもらえない答案の原因は、ほとんどが論理の書き方にあります。このページは、集合と論理の解法を12の型に分けて並べた辞典です。型は当てはめるための箱ではなく、「この主張を示すには、何と何を書けばよいか」を決めるための道具として並べています。

このページの12型

  1. 集合を要素で書き並べる
  2. 補集合とド・モルガンの法則
  3. 要素の個数(包除原理)
  4. 命題の真偽と反例
  5. 必要条件・十分条件の判定
  6. 逆・裏・対偶
  7. 対偶を使った証明
  8. 背理法
  9. 「すべての」と「ある」
  10. 全称・存在と領域
  11. 必要十分条件の証明
  12. 整数・有理数の性質を使う論証

1. 背骨——「集合の包含」と「命題の真偽」は同じもの

1本の対応表

条件 をみたすもの全体の集合を をみたすもの全体を とすると

が真」  

さらに の十分条件」=「 に含まれる」=「 のほうが狭い」

必要・十分で迷ったら、集合の広さで考える。」は真ですが、逆は偽。集合で見れば で、狭いほうが十分条件、広いほうが必要条件です。

覚え方としては「十分は狭い、必要は広い」。矢印の向きは「狭い → 広い」。 が十分条件、 が必要条件です。この対応さえ握っていれば、必要・十分の判定で迷うことはなくなります。

2. 「示せ」と言われたときに書くべきこと

1 ならば   を仮定して を導く。直接示せなければ対偶(型07)か背理法(型08)。

2 の必要十分条件」 2方向を示す。。または同値変形を1本で書く。

3「すべての について〜」 任意の をとって示す。反例が1つでもあれば偽

4「ある が存在して〜」 1つ具体的に作ればよい。存在しないことを示すには全否定が必要。

「必要十分条件を求めよ」で片方しか示していない答案

もっとも多い減点がこれです。「〜が成り立つための必要十分条件」と問われたら、必ず2方向を確認してください。

同値変形( を連ねる)で書くなら、各ステップが本当に同値かを1つずつ確かめること。2乗する、両辺に掛ける、といった操作は同値でないことがあります。

3. 解法パターン全12型

型01 集合を要素で書き並べる

01まず全部書き出す

顔つき 「 を要素を書き並べる方法で表せ」。

中身 条件を満たす要素を小さい順にすべて書く。倍数の集合なら、共通部分は最小公倍数の倍数

「3の倍数かつ4の倍数」は「12の倍数」 これは最小公倍数の性質です。一般に の倍数かつ の倍数 の倍数。「6の倍数かつ4の倍数」が「24の倍数」ではなく「12の倍数」であることに注意――積ではなく最小公倍数です。

型02 補集合とド・モルガンの法則

02「かつ」と「または」が入れかわる

顔つき 、「 かつ 」の否定。

中身 。「どちらでもない」=「和集合の補集合」。

否定を作るとき、必ず接続詞をひっくり返す 「 かつ 」の否定は「 または 」。「かつ」を「または」に変え、各条件も否定する――2か所を同時に変えるのを忘れがちです。背理法(型08)で仮定を否定するときの、最初の一手になります。

型03 要素の個数(包除原理)

03足して、重なりを引く

顔つき 「 に属するすべての数の和」「3の倍数または5の倍数の個数」。

中身 要素の総和についても同じ式が成り立つ

「個数」でも「総和」でも同じ形になる 重複して数えた分を1回引く、という発想は個数に限りません。宇都宮大学の問題は「総和」についての包除原理で、( の和)=( の和)+( の和)-( の和)。共通部分をきちんと求めることが唯一の勝負どころで、公差 と公差 の共通項は公差 (最小公倍数)の等差数列になります。

型04 命題の真偽と反例

04偽を示すには反例を1つ

顔つき 「次の命題の真偽を調べよ。偽ならば反例をあげよ」。

中身 真なら証明、偽なら具体的な反例を1つ書く

反例は「仮定をみたし、結論をみたさないもの」 「」の反例は 仮定 をみたし、結論 をみたさない――この2点を明示すると答案が締まります。反例は1つで十分で、たくさん挙げる必要はありません。

型05 必要条件・十分条件の判定

05両方向の矢印を1本ずつ調べる

顔つき 「 であるための( )条件である」。

中身  を別々に判定し、真偽の組み合わせで答える。

集合の図で確かめるのがいちばん速い  なら の十分条件、 なら必要条件、 なら必要十分条件、どちらでもなければ「どちらでもない」。ベン図を描いて、片方がもう片方に完全に入るかを見る――これだけで判定できます。

型06 逆・裏・対偶

06対偶だけが、もとの命題と同値

顔つき 「命題の逆・裏・対偶を述べ、その真偽を調べよ」。

中身  に対し、逆は 、裏は 、対偶は

逆と裏は互いに対偶の関係 だから逆と裏の真偽は必ず一致します。もとの命題と対偶が一致し、逆と裏が一致する――この2組を押さえておけば、4つのうち2つ調べれば全部分かります。

型07 対偶を使った証明

07「結論の否定」から「仮定の否定」を導く

顔つき 「 が4の倍数ならば、 はともに偶数であることを示せ」。

中身 「 または が奇数ならば、 は4の倍数でない」を示す。

「ともに偶数」の否定は「少なくとも一方が奇数」 この否定の作り方(型02)が、対偶を使う証明の入口です。そして偶奇の場合分けは有限個―― の偶奇の組み合わせは4通りしかないので、必ず調べ切れます。実際には平方数を4で割った余りが しかないことを使うと、対偶を書かずに直接示すこともできます(千葉大学の実例)。

型08 背理法

08結論を否定して、矛盾を出す

顔つき 「 が無理数であることを示せ」「〜でないことを示せ」。

中身 結論の否定を仮定に加えて議論し、明らかに成り立たないことを導く。

「〜でない」を示すときの第一選択 否定形の結論は直接示しにくいので、それを仮定して矛盾を出すのが自然です。答案では「〜と仮定する」と明記し、最後に「これは矛盾。よって〜」と締める――この2文がないと、読み手には背理法だと伝わりません。対偶証明と背理法は似ていますが、対偶は仮定を使わない場合もある点が違います。

型09 「すべての」と「ある」

09全称は最小値、存在は最大値

顔つき 「すべての に対し 」「ある に対し 」。

中身 すべて  。 ある  

この翻訳が、論理を計算に変える 「すべての について成り立つ」は、いちばん厳しい (最小値を与える )でも成り立つということ。「ある について成り立つ」は、いちばん有利な (最大値を与える )で成り立てばよいということ。全称なら最小値、存在なら最大値――この2行を覚えるだけで、東北大学のような問題が計算問題に変わります。

型10 全称・存在と領域

10共通部分と和集合の言いかえ

顔つき 「すべての に対し の点となる点の範囲」「いずれかの に対し〜」。

中身 すべての   (共通部分)。 いずれかの   (和集合、=通過領域)。

通過領域の問題は、実は存在命題 「直線が通過する領域」とは「ある が存在して、その点が直線上にある点全体」。だから についての方程式が実数解をもつ条件(判別式)に帰着します。一方「すべての 」なら共通部分で、 の関数の最小値を考える。2つの問いは、同じ式に対して をとるか をとるかの違いにすぎません(東北大学の実例)。

型11 必要十分条件の証明

112方向を、はっきり分けて書く

顔つき 「〜であるための必要十分条件は、〜であることを示せ」。

中身 (必要性)結論から条件を導く。(十分性)条件から結論を導く。

片方が易しく、もう片方が難しいのが普通 千葉大学の整数列の問題では、必要性は「具体的な を代入して差をとる」だけ、十分性は「一般の で整数になることを示す」という別種の作業でした。2つは違う技術なので、答案でも見出しを分けて書くのが安全です。「必要性」「十分性」と小見出しを書くだけで、採点者に伝わり方が変わります。

型12 整数・有理数の性質を使う論証

12既約分数で置く/余りで分類する

顔つき 「 が有理数で が整数ならば は整数」。

中身 有理数は既約分数 で置く。整数は余りで分類する。

「既約」という条件が矛盾を生む  を代入して が出たとき、 から なので 。7は平方数でないので 既約と置いた瞬間に、分母の候補が激減するのです。整数の型09と同じ道具立てで、集合と論理の単元でも中心的に使われます。

4. 実際の入試で確かめる

全12型のうち、入試の実例がついているのは7型1マスが1つの型です。青いマスは、下にある入試の実例で確かめている型です白いマスは、下にある入試の実例では扱っていない型です010203040506070809101112解法パターン12型入試の実例で確かめる7型下の実例にない5型7 + 5 = 12型。この図は下にある入試の実例が扱う型を数えたものです入試の実例は6問。実例の数と型の数は必ずしも一致しません

この単元の解法パターンは全12型で、下にある入試の実例6問で確かめているのは7型です。残りの5型は、下にある実例では扱っていません。1問が複数の型にまたがることも、同じ型を複数の実例で扱うこともあるため、実例の数と型の数は必ずしも一致しません。

ここからは実際に出題された問題で型を確かめます。問題文は各大学が公表した入試問題を、解説のために引用したものです。解答・解説は数強塾が独自に作成したもので、大学公表の解答ではありません。掲載しているすべての数値は、当塾で独立に解いたうえで Python(集合の全数え上げ・格子点での全探索・数値による最大最小の照合)で検算しています。

島根大学 2011年度 ―― 型01・型12。集合と整数論証の合わせ技

【問題】島根大学 2011年度 前期日程

は自然数, を全体集合とし、 の部分集合 を次のように定める。

かつ は3の倍数 かつ は4の倍数

このとき、次の問いに答えよ。

(1) 2つの集合 を、要素を書き並べる方法で表せ。

(2)  を自然数とし、2次方程式 が整数解をもつとする。このとき、 が素数ならば、2次方程式 を解としてもつことを証明せよ。

(3)  を集合 の要素とする。このとき、2次方程式 の解がすべて2以上の整数となる の組 をすべて求めよ。

【解答】

(1)

(3) の3組

(1) 

共通部分は「3の倍数かつ4の倍数」=「12の倍数」(型01)。

要素の個数は 個です。

(2) 整数解を とします。もう一方の解も整数であることを、まず言います。

解と係数の関係から (整数)なので も整数。また

符号を確定させてから、素数の性質を使う

なので 同符号。さらに なのでともに正

正の整数2つの積が素数 になるのは のときだけ。

したがって が解になります。

(3) まず を求めます。ド・モルガンより (型02)なので、(1) の補集合をとって

解を (ともに整数)とすると

を上の集合から選び、2以上の2数の積に分解できるかを調べます。 より です。

2以上の2数の積
素数なので不可 ―― ――
×(3の倍数)

したがって の3組です。

検算しておきます。すべて解が2以上の整数です。

(2) の素数の議論が、(3) の絞りこみの型紙になっている。(2) では「積が素数なら 」を使いました。(3) では解が2以上なので1が入ってはいけない――つまり(2) の対偶的に、 は素数であってはならないということです。だから素数を先に全部除外できる。

誘導の設問は、次の設問で「使える形」または「除外できる形」を与えているのが普通です。(2) を解いたあと「これは (3) でどう効くのか」と考えるだけで、探索の範囲が一気に狭まります。

東北大学 2011年度 ―― 型09・型10。「すべて」は最小、「ある」は最大

【問題】東北大学 2011年度 前期日程

実数 に対し、不等式 の表す座標平面上の領域を とおく。

(1)  を満たすすべての に対し の点となるような点 の範囲を図示せよ。

(2)  を満たすいずれかの に対し の点となるような点 の範囲を図示せよ。

【解答】

(1) )かつ

(2) )、)、

共通の準備。 に属する条件は

右辺を の関数と見ます。これが決定的な視点の転換です。

論理を最大最小に翻訳する

(1) すべての   

(2) いずれかの   

同じ について、最小をとるか最大をとるかの違いだけです。

(1)  は上に凸なので、区間 での最小は必ず端点でとります。

どちらが小さいかを比べます。

なら が小さく、 なら が小さい。よって

の範囲 最小値 求める条件

2本の直線が点 で交わり、その下側(山形の下)が答えです。

(2) 最大は、頂点 が区間内かどうかで決まります。

の範囲 頂点 最大値
区間の左外
区間内
区間の右外

境目でつながることを確認します。 では では どちらも一致します。

放物線 は直線族の包絡線

を動かしたときの直線 の族を考えると、これらはすべて放物線 に接します。

実際 について微分して 、すなわち を代入すると

だから境目で直線と放物線がなめらかにつながるのです。

「すべて」と「ある」の違いが、 の違いに完全に対応している。この問題は、論理の言葉を計算の言葉に翻訳する練習そのものです。(1) と (2) で解く式はまったく同じ で、違うのは最小をとるか最大をとるかだけ。

そして結果の図形も対照的です。(1) は「山形の下」で凸領域、(2) は「放物線の下」で広い領域。「すべての 」は条件が厳しいので領域が狭く、「ある 」は条件がゆるいので広い――この直感と計算結果が一致することを確認するのが、検算になります。

千葉大学 2008年度 ―― 型07・型12。既約分数と余りで分類する

【問題】千葉大学 2008年度 前期日程

以下の問いに答えよ。

(1)  を有理数とする。 が整数ならば、 は整数であることを示せ。

(2)  を整数とする。 が4の倍数ならば、 はともに偶数であることを示せ。

(3)  は整数、 は有理数とする。 が整数ならば、 は整数であることを示せ。

【解答の骨格】

(1) 既約分数で置く (2) 平方数を4で割った余りで分類 (3) (1)(2) を組み合わせる

(1)  は整数、 は正の整数、)と既約分数で置きます(型12)。

が整数ということは、 を割り切るということです。

既約なら、分母は分子と共通因数をもたない

なので 。したがって を割り切ります。

ですが、 は平方数ではないので 、すなわち

よって は整数です。

(2) 平方数を4で割った余りは0か1しかありません。

実際、 なら なら

さて なので

これが になるのは、 の余りがともに のときだけです。

0
1
1
2

したがって はともに偶数です。

(3) (既約、)とおきます。仮定より

は整数)と書けるので、両辺を 倍して整理すると

右辺は整数なので、 は整数です。

が整数で なので、 を割り切ります。 の約数のうち平方数は なので または

を (2) で潰す

とすると で、既約性より 奇数。このとき

これが整数ということは が4の倍数。(2) より はともに偶数となり、 が奇数であることに反します。

したがって 、すなわち は整数です。

(1) と (2) は、(3) のための2つの部品だった。(3) の証明は「 の候補を絞る」((1) の手法)と「 を排除する」((2) の結論)の2段構えです。(1) は手法の提供、(2) は結論の提供――誘導の役割が2種類あることに注意してください。

この問題全体を貫くのは「既約分数で置く」という一手です。分母と分子が共通因数をもたないという条件が、 という強い制限を生む。有理数を扱うときは、まず既約分数で置く――これは反射的にできるようにしてください。

千葉大学 2012年度 ―― 型11。必要性と十分性を分けて書く

【問題】千葉大学 2012年度 前期日程

すべての項が整数である数列を整数列という。 を実数とし、正の整数 に対し とおく。このとき以下の命題を示せ。

(1) 数列 が整数列ならば、 は整数である。

(2) 数列 が整数列であるための必要十分条件は、 がいずれも整数となることである。

【解答の骨格】

(1) 階差を2回とると だけが残る (2) 必要性は階差、十分性は の倍数性

(1) 階差を2回とると、2次の係数だけが残ります。

はすべて整数なので、左辺は整数。よって は整数です。

なぜ階差が効くのか

2次式に階差を2回とると定数( 最高次の係数)になり、3次式なら3回で定数( 最高次の係数)になります。

この が、問題文の「」「」の正体です。

(2) 必要性 整数列 4つが整数)

階差を3回とると

(3次の項は 、それ以下の次数はすべて消えます。)よって は整数。

次に階差2回で

は整数なので、 も整数。

を取り出すのがいちばんの工夫です。3次式なら、 での値は での値から復元できます。

(右辺を展開すると、定数項の係数は 、1次の係数は 、2次は 、3次は 。たしかに だけが残ります。)よって は整数。

最後に が整数で が整数なので、 も整数です。

(2) 十分性(4つが整数 整数列)

を、4つの量だけで書き直します。 を代入して

連続する整数の積が効く

連続2整数の積なので2の倍数。したがって

連続3整数の積なので6の倍数。したがって

どちらも(整数)×(整数)なので整数です。

したがって は整数の和となり、 は整数列です。

」「」という不思議な形の意味が、証明の両側から見える。必要性の側から見ると、これは階差を 回・ 回とったときに出る係数。十分性の側から見ると、これは連続2整数の積が2の倍数、連続3整数の積が6の倍数だから必要な倍率。同じ数が、2つの異なる理由から現れるのです。

そして答案の作り方として重要なのは、必要性と十分性で使う技術がまったく違うこと。必要性は「具体的な を代入する」、十分性は「一般の について示す」。この2つを1つの流れで書こうとすると必ず破綻します――見出しを分けて、別々の証明として書いてください(型11)。

宇都宮大学 2017年度 ―― 型03。和についての包除原理

【問題】宇都宮大学 2017年度 前期日程

1 から 180 までの整数のうち、初項が5、公差が4の等差数列にあらわれる数の集合を 、初項が1、公差が6の等差数列にあらわれる数の集合を とする。このとき、次の問いに答えよ。

問1  に属するすべての数の和を求めよ。

問2  に属するすべての数の和を求めよ。

問3 共通部分 に属するすべての数の和を求めよ。

問4 和集合 に属するすべての数の和を求めよ。

【解答】

問1  問2  問3  問4

問1  の要素は で、第 項は

末項は 。等差数列の和の公式から

問2  の第 項は

末項は

問3 ここが本問の中心です。 で割って 余る数、 で割って 余る数。

2つの合同式を1つにまとめる

かつ   

法が の最小公倍数 になります。 ではありません。

つまり の要素は の形。ただし範囲に注意が必要です。

の最小値は なので には属しますが には属しません)。また の最大値は なので

要素は の14個。

問4 包除原理(型03)を、和について使います。

の和)=( の和)+( の和)-( の和)

を入れるか」で答えが変わる。この問題でもっとも間違えやすいのが、 を入れてしまうことです。 の初項ですが、 から始まるので には属しません。「 で割って 余る数」という条件だけで機械的に拾うと、 が紛れこみます。

合同式で条件をまとめたら、必ずもとの集合の範囲に戻って端を確認する――これは剰余類を使うときの鉄則です。個数を数える問題では、この1個のずれが致命傷になります。

早稲田大学 2006年度 ―― 型11・型12。必要十分条件を「答のみ」で問う

【問題】早稲田大学 2006年度

次の各問に答えよ。ただし、正の整数 と整数 に対して は正の整数である事実を使ってよい。

(1)  が2以上の整数のとき、 で割り切れるための必要十分条件を求めよ。答のみ解答欄に記せ。

(2)  を2以上の素数とし、 より小さい正の整数とする。このとき、 で割り切れることを示せ。

(3)  を2以上の素数とする。このとき、任意の正の整数 に対し、 で割り切れることを示せ。

【解答】

(1) が奇数であること (2)(3) 下記

(1)  なので

これが整数になるのは が偶数、すなわち が奇数のとき。必要十分条件は「 が奇数」です。

(2) 定義から

素数だから「割り切れない側」が言える

右辺 で割り切れます。

左辺の は、 以上 以下の整数の積 より)。

は素数なので、 より小さい正の整数はどれも で割り切れません。したがって で割り切れません

の倍数で、前半が と互いに素だから、 の倍数でなければなりません。

(3) 二項定理で展開します。

の項が の項が 。)したがって

右辺の各項は、(2) より の倍数なので の倍数。よって和も の倍数です。

これはフェルマーの小定理の証明の骨格そのもの。(3) が示しているのは 。これを と繰り返し使うと

となり、フェルマーの小定理 が数学的帰納法で得られます。

そして (1) の「答のみ」という設問形式にも意味があります。必要十分条件を問われているので、答えは条件の形(「 が奇数」)で書く――「 と表せる」でも同じですが、簡潔な言い切りの形にするのが必要十分条件の答え方です。

5. よくある質問

Q1. 必要条件と十分条件が、いつも逆になります。

A. 集合の広さで考えてください。「十分は狭い、必要は広い」。矢印は狭いほうから広いほうへ向かいます。 なら が十分条件です。

Q2. 「すべての」と「ある」の問題で、何をすればよいか分かりません。

A. 「すべて」は最小値、「ある」は最大値に翻訳してください。式を動く文字の関数と見て、その最小(最大)を求めれば計算問題になります。

Q3. 対偶と背理法の使い分けが分かりません。

A. ならば 」の形で、 の否定から出発したいなら対偶。結論が「〜でない」「存在しない」の形なら背理法が自然です。どちらでも書ける問題も多いので、書きやすいほうを選んでください。

Q4. 必要十分条件の証明で、何を書けばよいですか。

A. 2方向を、見出しを分けて書いてください。「(必要性)」「(十分性)」と書くだけで、採点者に伝わります。同値変形で1本に書く場合は、各ステップが本当に同値かを確認してください。

Q5. 型を覚えれば初見の問題も解けますか。

A. 型は考えなくて済ませる道具ではなく、「何を書けば証明になるか」を決めるための道具です。決めたあとは自分で考える必要があります。実際、本ページの千葉大学の問題は「連続3整数の積は6の倍数」という着想を自分で持つ必要がありました。型を持っている人は、白紙のまま全部を考えずに済むという差が出ます。

6. 次に読むページ

計算は合うのに証明で点がもらえない人へ

証明問題で失点する生徒のほとんどは、数学ができないのではなく「何を書けば証明になるかを教わっていない」だけです。数強塾では、証明を書く前に「示すべきことは何と何か」を口に出させ、それを箇条書きにしてから答案を書く訓練をしています。オンラインの完全1対1で、プロ講師のみが担当します。

数強塾オリジナル演習|12の型を1問ずつ

上の12型を、数値と設定だけ変えた自作問題で1問ずつ確認します。集合と論理は答えより「書き方」で差がつく分野です。解答を開く前に、何を仮定して何を示すのかを1行で書き出してから始めてください。

型01 集合を要素で書き並べる
とする。 を要素で書き並べ、それぞれの個数を答えよ。

解答・解説を見る

(8個)、(9個)
6個)── これは の約数全体。
11個
(検算: ✓ 包除原理と一致)
「共通の約数」=「最大公約数の約数」。書き並べる前に気づくと速い。

型02 補集合とド・モルガンの法則
とする。 をそれぞれ求め、一致することを確かめよ。

解答・解説を見る

なので
なので
一致する(どちらも8個)✓
「かつ」の否定は「または」の否定どうし。ド・モルガンは、日本語で言えば「両方は満たさない=どちらかは外れている」。

型03 要素の個数(包除原理)
以下の自然数のうち、 のいずれかの倍数であるものは何個か。

解答・解説を見る





(検算:どれの倍数でもないものは 個。実際 ごとに8個()で 、残り の2個。計26 ✓)
3つの包除は「+3つ −3つ +1つ」。

型04 命題の真偽と反例
次の命題の真偽を判定し、偽ならば反例を1つ挙げよ。
(1)  (2)
(3) がともに無理数 は無理数
(4) が素数 は奇数

解答・解説を見る

(1) なので2乗して大小が保たれる)
(2) 。反例 だが
(3) 。反例 (和は
(4) 。反例
反例は1つ挙げれば十分。「たいてい成り立つ」は真の根拠にならない。

型05 必要条件・十分条件の判定
次の( )に「必要」「十分」「必要十分」のうち適するものを入れよ(実数とする)。
(1) 「」は「」であるための( )条件
(2) 「」は「」であるための( )条件
(3) 「」は「 または 」であるための( )条件
(4) 「 かつ 」は「」であるための( )条件

解答・解説を見る

集合の大小で決める。 なら「 であるための十分条件」。
(1) 十分(必要ではない)
(2) 逆向きなので → 必要
(3) 両方向とも成り立つ → 必要十分 または から 、逆も実数では成立)
(4) は真。逆は偽( だが でない)→ 十分
「小さいほうが十分、大きいほうが必要」と覚える。

型06 逆・裏・対偶
命題「 ならば 」について、逆・裏・対偶を書き、それぞれの真偽を答えよ。

解答・解説を見る

もとの命題:
逆「 ならば 」:(反例
裏「 ならば 」:(反例
対偶「 ならば 」:
を満たす実数は のみで、確かに
もとと対偶は必ず真偽が一致し、逆と裏も一致する。4つのうち独立なのは2組だけ。

型07 対偶を使った証明
整数 について「 が3の倍数ならば は3の倍数」を、対偶を用いて示せ。

解答・解説を見る

対偶:「 が3の倍数でないならば、 も3の倍数でない」を示す。
が3の倍数でないとき、 は整数)と書ける。

よって は3で割ると1余り、3の倍数でない。■
「〜でない」が仮定にあるほうが扱いやすいときは対偶。「3の倍数でない」は 具体的に書けるのが決め手。

型08 背理法
型07 を用いて、 が無理数であることを示せ。

解答・解説を見る

が有理数と仮定し、 は互いに素な自然数)と書く。
両辺を2乗して 。よって は3の倍数。
型07 より は3の倍数なので とおくと 、すなわち
同様に も3の倍数。これは が互いに素であることに矛盾。
したがって は無理数。■
「互いに素」という仮定を置くのが背理法の仕掛け。矛盾はそこで起きる。

型09 「すべての」と「ある」
を実数とする。
(1) 「すべての実数 について 」が真となる の範囲を求めよ。
(2) 「ある実数 について 」が真となる の範囲を求めよ。
(3) (1) の命題の否定を述べよ。

解答・解説を見る

(1) 下に凸なので、 軸と交わらなければよい。 より
(2) 最小値が負になればよい。 より
(3) 「ある実数 について
「すべて」の否定は「ある」、不等号は になる。両方同時に変える)
(検算: のとき で等号あり。(1) にも (2) にも入らない ✓)

型10 全称・存在と領域
すべての について が成り立つような実数 の範囲を求めよ。

解答・解説を見る

が区間のどこにあるかで場合分け。
:区間で増加、最小は → つねに成立
:最小は
:最小は となり と矛盾 → 解なし
まとめて
(検算: で最小 ✓、 で最小 となり不適 ✓、 で最小 ✓)
「すべての で正」=「最小値が正」に言い換えるのが第一手。

型11 必要十分条件の証明
実数 について「」を示せ。また、 が複素数のときはどうなるか。

解答・解説を見る

() なら 。明らか。
() 実数なので 0以上の2数の和が0なら、両方0。よって から 。■
複素数では成り立たない。反例: のとき だが
の証明で「実数だから 」を使っているのが急所。この一文がないと減点される。

型12 整数・有理数の性質を使う論証
(1) 整数 について、 を4で割った余りは 0 か 1 に限ることを示せ。
(2) (1) を用いて、 を満たす整数 が存在しないことを示せ。

解答・解説を見る

(1) のとき で余り0。
のとき で余り1。■
(2) (1) より の4での余りはそれぞれ 0 か 1。
和の余りは 0, 1, 2 のいずれか
一方 なので余りは3。
よって等号は成り立たず、整数解は存在しない。■
(検算: あまり ✓)
「余りで分類する」は整数問題の最重要手筋。法を4に取ったのは、平方数の余りが2種類に絞れるから。

証明の前に決める3つ

どちら向きを示すのか ── か両方か。必要十分(型11)は2つに分けて別々に書く

正面から行くか、裏から行くか ── 仮定に「〜でない」があるなら対偶(型07)、結論が「存在しない」なら背理法(型08・型12)

「すべて」か「ある」か ── 「すべての で成り立つ」は最小値の話、「ある で成り立つ」は最大値の話(型09・型10)

そして、否定を作るときは「すべて ↔ ある」と「不等号の等号」を同時に変える です。片方だけ変える誤りが非常に多いので、必ず2か所を指差して確認してください。

「なぜそうなるのか」へ

論証の型を覚えても、根拠になる事実があいまいだと途中で止まります。この分野でよりかかっている「なぜ」を確かめておいてください。

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📝 この型が実際に出た入試問題(29問のうち24問を掲載)

「集合と論理」の型が実際の入試でどう出たかを、数強塾が全問解説を公開している年度から拾いました。各行の「解説を読む」から、その問題の解説へ直接移動できます。型を読んだあとに実出題で当てると、どこまで通用する判断なのかがはっきりします。

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