定積分で表された関数の解法パターン全12型|型の見抜き方と入試実例(滋賀大・横国大・埼玉大・静岡大・神戸大・筑波大)

定積分で表された関数は、積分の単元でいちばん「何をしているのか分からない」と言われる場所です。求めたい関数そのものが積分記号の中に入っていて、堂々巡りに見えるからでしょう。けれどこの分野の問題は、例外なく同じ一点だけを確かめています。定積分は積分変数を消してしまう装置であり、消えずに残った文字だけが、その式の変数になる――ここです。積分変数が なら、 は答えに一度も現れません。だから積分区間の端に がいるかどうかで、その積分が「ただの数」なのか「 の関数」なのかが決まり、それに応じて定数と置く微分して積分記号を外すかが決まります。このページは定積分で表された関数の解法を12の型に分けて並べた辞典です。型は当てはめるための箱ではなく、「いま積分記号は何を隠しているのか」を見失わないための道具として並べています。

このページの位置づけ——概観は第1層、深掘りはここ

定積分で表された関数は積分法(数II)の解法パターン全14型でも扱っています。あちらが「積分法という単元を一望する地図」なら、こちらは「定積分で表された関数だけを掘り下げる坑道」です。単元全体のどこにこのテーマが座っているかを先に確かめたい方は、第1層からご覧ください。置換積分や部分積分といった計算そのものの技術は積分法(数III・計算)の解法パターン全18型にあります。

このページの12型

  1. を定数 と置く
  2. を微分して積分を外す
  3. 上端が のとき(合成関数の微分)
  4. 両辺を微分してから初期条件を使う
  5. 積分方程式( を求める)
  6. 定積分で定義された関数の増減
  7. 定積分で定義された関数の最大最小
  8. 絶対値を含む定積分(場合分け)
  9. 定積分と極限
  10. 区分求積法へのつなぎ
  11. 定積分と不等式(評価)
  12. 積分区間が動く(窓を動かす)型
  13. 北大の良問 012|積分で定めた関数を2回微分して復元
  14. 北大の良問 014|積分作用素を連立漸化式へ圧縮
  15. 北大の良問 015|積分方程式を1変数の2解問題へ落とす

1. 背骨——積分変数は消える。残った文字だけが変数になる

当たり前すぎて言われないことから始めます。 の値に、 は入っていません。 は積分の内部でだけ使う作業用の文字で、計算が終われば跡形もなく消えます。だから と書き換えても値はまったく同じです。この一点から、このテーマのすべてが出てきます。積分記号のついた式を見たら、消える文字と残る文字を仕分ける。仕分けた結果は必ず次の3通りのどれかです。

積分記号のついた式は、この3種類しかない

①ただの数  端が両方とも定数。値が何であれこれは定数なので文字1つで置ける(型01)。

②端に がいる  微分すると積分記号が消える(型02〜型04)。

③中身に がいる  は積分にとって定数なのでまず外に出せるだけ出す。出しきれなければ積分を実行して の式に直す(型09)。

①と②は、見かけはまったく違います。①は「値が分からない数に文字を置く」、②は「両辺を微分する」。ところが、やっていることは同じです。どちらも積分記号という蓋の中身を計算せずに済ませています。①は中身を未知数のまま先へ進み、②は蓋そのものを壊す。中身を実際に計算しに行く道は、実は最後の手段でしかありません。

なぜ計算しに行かないほうが強いのか。定積分で表された関数は、原始関数が書けなくても扱えるからです。微分積分学の基本定理 は、公式ではなく面積の増え方の話だと読んでください。 は「 から までに溜まった量」です。 をほんの少しだけ増やすと、増える分は幅がその微小量、高さが の細い短冊。だから増え方は そのもの。ここで使ったのは短冊の高さだけで、溜まった量の値は一度も要りません。だから の原始関数が初等関数で書けなくても、 の増減は分かる。本ページの筑波大学の問題( の積分)が、まさにその実例です。

そして微分には代償があります。微分は情報を1つ落とします。 は微分すると区別がつきません。だから両辺を微分して得た式は、元の等式の必要条件にすぎない。落とした情報を拾い直す作業が初期条件です。しかも拾う場所は決まっています。積分区間がつぶれて積分が確実に になる点―― なら です。そこだけは、積分の中身を何も知らなくても値が確定する。この「微分して情報を落とす、つぶれる点で拾い直す」という往復が、積分方程式の答案の骨格そのものです(型04)。

この分野で失点する3つの場所

①積分変数と外の文字を混同する  です。中では は定数なので外に出せます。逆に 絶対に外へ出せません。どちらの文字かを、式を書き写す前に指で押さえてください。

②微分したあと初期条件を忘れる  が求まっただけでは は決まりません。積分し直した先の定数を、区間がつぶれる点で確定させます。

③置いた定数を戻して確かめない 型01で置いた文字は定義から値が決まっている数なので、方程式の解が全部そのまま生きるとは限りません。必ず元の定義式に戻します。

最後に、型そのものについて一言。この分野の問題を見た瞬間に「端に があるから微分だな」と手が動く人は、頭の回転が速いわけではありません。過去に何百回も使われてきた「型」から予想して、思考する量を減らすことで、手際よく解法を思い付いている場合もあるのです。型は考えなくて済ませる道具ではなく、考える範囲を狭めるための道具です。狭めたあとに何を考えるかは、その問題ごとに自分で決めることになります。実際このあとの横浜国立大学の問題では、「定数と置く」まではすぐ決まりますが、その先の場合分けは自分で作り出すしかありません。

2. 手順——型を選ぶまでの判断の流れ

1積分区間の端を見る。両端とも定数ならその積分はただの数(型01へ)。端に がいるなら の関数で、微分すれば積分記号が消えます(型02・型03へ)。この一手で問題の半分は行き先が決まります。

2被積分関数に が紛れ込んでいないか確かめる。いれば外に出す前処理をします。 のように割れば、端だけが の標準形が残ります。前処理を済ませてから型を選ぶ――逆にすると、微分できない形のまま微分して事故を起こします。

3何を聞かれているかで、微分するか値を出すかを決める。 を求めよ」なら微分して積分し直し初期条件(型04・型05)。「増減・最大最小」なら微分だけして値は求めない(型06・型07)。「極限」なら先に積分を実行する(型09・型10)。

4場合分けが要るかを確認する。絶対値があれば符号の変わり目で区間を割る(型08)。端が別の文字で決まるなら、まず端を確定させる(型12)。境目では両方の式が一致するので、そこが検算にもなります。

3. 解法パターン全12型

型01  を定数 と置く

01区間が定数なら、その積分はただの数

顔つき 両端が定数の積分の中に、求めたい関数そのものが入っている。

中身  と置くと は「 の式」+ の形になる。これを の定義式に代入し戻すと だけの方程式ができる。

なぜ効くか この置き換えで関数を求める問題が、数を求める問題に落ちます。値は分からなくても「数である」と分かった時点で文字が置ける。代入し戻すと式が1本増えるのは偶然ではなく、 から決まる数なので が自分自身を決める」関係が閉じるからです。置いただけでは足りず、戻して初めて方程式になる。同じ理由で、出た解は必ず元の定義式で確かめます。

型02  を微分して積分を外す

02上端に がいたら、微分すれば積分記号が消える

顔つき  など、端に がいる積分を含む等式。

中身 。両辺を微分すると積分記号が丸ごと消え、 が裸で出てくる。

なぜ効くか 積分記号は「まだ計算していない量」を隠す蓋で、微分はその量の増え方だけを見る操作です。増える分は高さ の短冊だけで、それまでに溜まった量は使いません。だから原始関数が書けなくても蓋を開けられる。被積分関数に が混ざる形は、 を外へ出してから積の微分法を使います。

型03 上端が のとき(合成関数の微分)

03端での高さ × 端の動く速さ

顔つき  のように、端が そのものではない

中身 

なぜ効くか 原始関数を とすれば積分は で、微分すれば合成関数の微分がそのまま出ます。新しい定理ではなく、合成関数の微分の言い換えです。しかも 存在すれば十分で、式で書けている必要がないので でも使えます。意味は「右端から入る分から、左端から出る分を引く」。右端が2倍の速さなら入る量も2倍で 、左端からは が抜ける――符号が負になる理由まで説明できます。

型04 両辺を微分してから初期条件を使う

04微分で落とした定数を、区間がつぶれる点で拾い直す

顔つき 「 を求めよ」と言われ、条件が を含む等式で与えられている。

中身 ①両辺を微分して を出す ②積分し直して  ③元の等式に を代入して を決める。

なぜ効くか  の微分は同じなので、微分して得た式は必要条件でしかありません。拾い直す場所が に決まるのは、そこで区間がつぶれ、中身を知らなくても積分が だと確定するから。 の代入がほぼ必ず登場するのは作法ではなく、そこが唯一の足場だからです。初期条件を欠いた答案は、候補を無限個示しただけの状態で止まっています。

型05 積分方程式( を求める)

05分類は「 がどこにいるか」だけで決まる

顔つき 未知の関数 が、積分の中と外の両方に現れている等式。

中身 ①端に → 微分(型02・型04) ②端が定数 → 定数と置く(型01) ③中身に → 外に出す前処理をしてから①か②へ。

なぜ効くか 積分方程式は種類が多いように見えて、判断材料は「 の居場所」ひとつだけです。中身の を外へ出せるのは、積分にとって が定数だから。 と割れると、 という端だけが の標準形が現れます。これを「型を選ぶ前の下ごしらえ」と位置づけるのが要領。前の形のまま型を探すと、見たことのない問題に見えてしまいます。

型06 定積分で定義された関数の増減

06増減表は、被積分関数の符号だけで書ける

顔つき  の増減、グラフの概形、極値。

中身  なので、 のグラフが 軸の上か下かを見るだけで増減表が完成する。 の値は計算しない。

なぜ効くか 増減を決めるのは導関数の符号だけで、その導関数は被積分関数そのもの。往復せずに答えの半分が手に入ります。とくに強いのは原始関数が書けない場合で、原始関数が初等関数では書けないのに増減表は書けます。「値が求まらないのに性質は分かる」に慣れると「求めずに調べる」問題に強くなります。

型07 定積分で定義された関数の最大最小

07解けないときは、文字で置いて関係式を持ち帰る

顔つき 「最大値を求めよ」「ただ一つの点で最大値をとることを示せ」。

中身  を解く。解けないときは 単調で符号を1回だけ変えることを示し、その点を などと置いて を関係式として使う。

なぜ効くか この型の問題は、よく見ると最大値そのものを聞いていません。求まらないから聞かないのです。代わりに最大を与える点を文字で置かせ、 という関係式を残させる。この関係式は値を知らなくても十分に強く、そこから極限まで計算できます「解けない方程式は、解かずに関係式として使う」は入試数学全体を貫く一般則で、この型はその実例です。

型08 絶対値を含む定積分(場合分け)

08符号の変わり目で区間を割ってから積分する

顔つき 

中身 被積分関数が になる点を求め、そこで区間を分けて絶対値を外す。変わり目が区間の内側か外側かで場合分けする。

なぜ効くか 絶対値は「その場で符号を見て を掛ける」操作なので、区間全体で一つの式に決まりません。注意したいのは変わり目の位置が固定とは限らないことです。横浜国立大学の問題では型01で置いた定数自身が変わり目を決めるので、置いた文字についての場合分けが生じます。ここで解を落としたり余計な解を残したりするので、場合分けの条件を最後にもう一度確かめるのが唯一の防ぎ方です。

型09 定積分と極限

09積分でパラメータの関数を作り、そのあとは普通の極限

顔つき 積分の結果がパラメータ の式になり、そのあとで を聞かれる。

中身 まず積分を実行して だけの式にする。途中で で割っていないかを確認し、割れない は別扱いにする。最後に極限で穴がつながるかを確かめる。

なぜ効くか 定積分は積分変数を消してパラメータだけの関数を作る変換装置。通したあとは、もう積分は関係なくただの関数の極限に戻ります。ではなぜ特定の だけ別扱いになるのか。計算で のように係数で割っているからです。 ではこの式が使えません。「割った場所に穴が空く」――だから出題者は先にその点の値を求めさせ、最後に穴がふさがるかを問います。

型10 区分求積法へのつなぎ

10 をくくり出せたら、和は積分に化ける

顔つき  の形の極限。

中身  が横幅、 が高さ

なぜ効くか これは公式というより定積分の定義を逆向きに読んでいるだけです。定積分はもともと「細長い長方形の面積の和の極限」として定義されました。鍵は「横幅はどれか」を先に決めること をくくり出せたらそれが横幅、残りが の式で書けたらそれが高さです。区間が 以外になるのは の動く範囲が違うときだけなので、 の最小と最大を で割ると迷いません。

型11 定積分と不等式(評価)

11各点の大小は、そのまま積分の大小に伝わる

顔つき 「不等式を証明せよ」「はさみうちで極限を求めよ」。積分の値そのものが求まらない。

中身  とし、区間全体で なら 求まらない積分を、求まる積分ではさむ

なぜ効くか 積分は「掛けて足す」の極限なので、各点で成り立つ大小関係は、和をとっても壊れません。だから被積分関数を扱いやすいものに取り替えるだけで、値を上下から押さえられます。これは積分できない関数を扱うための、ほとんど唯一の一般的な手段です。コツは の動く範囲でだけ成り立つ簡単な不等式を持ち出すこと。たとえば なら が使えます。

型12 積分区間が動く(窓を動かす)型

12値ではなく「出入り」で考える

顔つき 、あるいは上端が のように別の文字で決まる

中身 両端が動くときは型03の公式で微分する。端が場合分けで切り替わるときは、まず区間そのものを確定させてから積分する。

なぜ効くか 積分区間を「幅のある窓」だと思ってください。窓を右へずらしたときの変化は「右端から入る分」から「左端から出る分」を引いたもの。この見方に切り替えると、窓の中の量を計算しなくても増減が分かります。端が のように切り替わる場合は、計算より前に「いま端はどちらか」を確定させるのが鉄則です。

4. 実際の入試で確かめる

全12型のうち、入試の実例がついているのは10型1マスが1つの型です。青いマスは、下にある入試の実例で確かめている型です金色のマスは、このページの追加演習が埋めている型ですこのページの型は、すべてどちらかで扱っています010203040506070809101112解法パターン12型入試の実例で確かめる10型追加演習が埋める2型10 + 2 = 12型。この図は下にある入試の実例が扱う型を数えたものです入試の実例は6問。実例の数と型の数は必ずしも一致しません

この単元の解法パターンは全12型で、下にある入試の実例6問で確かめているのは10型です。このページの追加演習が2型を埋めています。1問が複数の型にまたがることも、同じ型を複数の実例で扱うこともあるため、実例の数と型の数は必ずしも一致しません。

ここからは実際に出題された問題で型を確かめます。問題文は各大学が公表した入試問題を、解説のために引用したものです。解答・解説は数強塾が独自に作成したもので、大学公表の解答ではありません。掲載した数値は当塾で独立に解いたうえで Python(sympy による厳密計算と数値計算)で検算し、さらに別の担当者が別ルートで解き直して照合しています。

滋賀大学 2007年度 ―― 型12・型07。まず「上端はどちらか」を決める

【問題】滋賀大学 2007年度 前期日程(教育学部・経済学部)

定数 に対して、 とする。このとき、次の問いに答えよ。

(1) 2次方程式 の解を を用いて表せ。

(2) (1) の解のうち小さくない方を とする。このとき、次の定積分

の値を を用いて表せ。

(3)  の値を変化させたときの の最大値を求めよ。また、そのときの の値を求めよ。

【解答】

(1)  (2) のとき のとき  (3) 最大値 、そのとき

(1)  より では重解)。

(2) 小さくない方なので 上端が の値で切り替わります(型12)。 では

では では両式とも となり、境目でつながっています

(3)  では が増加関数なので最大は では の前後で正から負へ変わるので で最大、 より

この問題で使った型

型12 上端が で切り替わります。計算を始める前に上端を確定させる――ここを飛ばして片方だけ計算すると、(3) で片側の山を見落とします。

型07 (2) で の関数になった時点で、(3) はただの関数の最大問題。定積分が の関数を作る装置として働いていることが見えます。

検算のしかた

式で  の因数分解 と、2つの場合の定積分を厳密計算で再現。

総当たりで  を細かく刻み として を数値計算すると、最大値 で得られました。場合分けの取りこぼしまで確認できます。

境目で  で2式がともに 。ここが合わなければ、必ずどちらかの積分を間違えています。

横浜国立大学 2015年度 ―― 型01・型05・型08。置いた定数が場合分けを生む

【問題】横浜国立大学 2015年度 前期日程

次の問いに答えよ。

(1) 2次関数 をみたすとき、 を求めよ。

(2) 2次関数 をみたすとき、 を求めよ。

【解答】

(1) または  (2) または

(1) 両端が定数なので ただの数 と置くと 。定義式に代入し戻して

戻して確かめます。 なら なら 。どちらも整合するので答えは2つです。

(2)  と置くと と置くと なら で矛盾するので ここで、置いた文字自身が場合分けを決めます。 となるのは で、これが の内側にあるのは のときだからです。

(i)  区間全体で なので より 。数値はおよそ いずれも 未満、前提に反し不適です。

(ii)   と置くと の前後で符号が変わるので

から 。したがって

をみたすのは に戻すと で、 または

この問題で使った型

型01 両端が定数の積分は数なので置ける。置いた文字を定義式に代入し戻すと方程式ができる――(1) はこの操作だけで終わります。

型08・型05 (2) では符号の変わり目 が、置いた文字 で決まってしまう。だから「置く、場合分け、解く、前提に戻って選別する」という往復になります。最後の選別を飛ばすと、不適な解まで答案に残ります。

検算のしかた

(1) は戻す  それぞれで を計算し直し、 に戻ることを確認。置いた文字を使う問題は、これが最良の検算です。

(2) は式と数値で  での を厳密計算で導き、 の解が だけであることを確認。 側は2解のうち をみたすのが だけで、これも 未満なので棄却されます。さらに を台形則で数値積分し、 の両方で の残差が 以下でした。

埼玉大学 2017年度 ―― 型02・型04・型05。標準形に直してから微分する

【問題】埼玉大学 2017年度 前期日程(理学部数学科・工学部)

関数 は微分可能で

を満たすものとする。次の問いに答えよ。

(1)  を求めよ。

(2)  を求めよ。

(3)  を求めよ。

【解答】

(1)  (2)  (3)

下ごしらえ。積分の中の があるままでは微分できません。中では は定数なので と割り、両辺に を掛けます。

右辺が「上端だけが 」の標準形になりました。

(1) ① で とすると区間がつぶれて積分は となり 。① の両辺を微分すると、右辺の積分は型02より なので

左右の が打ち消し合いました。よって (2) も同じ式です。

(3) 部分積分で より 元の式に戻して確かめます。

これに を足すと 確かに元の等式をみたします。

この問題で使った型

型05・型02  に割る下ごしらえが、この問題の8割です。左右の が打ち消し合うのは偶然ではなく、 を掛けたのが「積の微分で消える形」を作るためだったから。割った瞬間に見たことのある形になる――ここを型として持っているかどうかで、手が止まる時間がまるで違います。

型04 (1)(2)(3) が「代入して初期値、微分して 、積分し直して 」という3ステップそのもの。誘導が型になっているありがたい作りです。

検算のしかた

代入して恒等的に   を元の等式に入れ、左辺から右辺を引いた式を厳密計算すると 積分方程式の検算はこれが決定版です。

別ルート 微分方程式 を独立に解いても同じ式が得られ、解が一つに定まることまで確認できます。初期条件は必ず微分前の式で確かめてください。

静岡大学 2018年度 ―― 型09。積分は を消して の関数を作る

【問題】静岡大学 2018年度 前期日程

実数 の関数 を考える。

(1)  を示せ。

(2)  の値を求めよ。 (3)  のとき、 を求めよ。 (4)  を求めよ。

【解答】

(2)  (3)  (4)

構造を見ます。積分変数は 、区間は定数。被積分関数に が入っているので、結果は が消えて だけが残った関数になります。型09の顔つきです。

(1) 加法定理の を辺々加えると 。両辺を で割れば示す式です。(証明終)

(2)  は積和ではなく2倍角で処理します。

(3) (1) より被積分関数は で、 の偶関数だから ここで が効きます。 なので係数で割ることができて

なので

(4)  と置くと なので

これは (2) の と一致するので、 でつながっています

この問題で使った型

型09 なぜ だけ別扱いなのか。(3) の計算で 係数で割っているからです。「割った場所に穴が空く」――一般形の分母を見れば、どこが別扱いになるかは先に分かります。

設問の並びが型そのもの 穴の点の値を先に求め、次に一般形を作り、最後につながるかを確かめる。この3段構えは、この型でほぼ必ず使われる構成です。誘導がないときも自分でこの順に処理すれば迷いません。

検算のしかた

一般形を数値で  の7点で数値積分と突き合わせ、いずれも小数10桁まで一致( では では )。 の因子があるので整数の になる――暗算でも確かめられます。

特別な点と極限  を厳密計算で確認。極限は でも でも で、偶関数性から当然そうなるはずという点も検算になります。

神戸大学 2013年度 ―― 型01・型05。定積分から係数の関係式を取り出す

【問題】神戸大学 2013年度 前期日程

を実数とする。次の問いに答えよ。

(1)  をみたすとする。このとき、 がみたす関係式を求めよ。

(2) (1) で求めた関係式をみたす正の数 が存在するための の条件を求めよ。

【解答】

(1)  (2)

(1) 左辺は 。右辺は と展開します。ここで4項のうち2項が消えます より、 の奇数乗は区間の中央 に関して反対称だからです。

よって右辺は 。与式 の両辺を で割って4倍すると

(2) 「関係式をみたす が存在する条件」を、 について解いて値域の問題に読み替えます なので割ってよく

条件は の値域に入ること」と同値です。 より符号は で決まり、 で最大となって 。また でも でも で、 は連続なので値域は の全体。したがって となり

(等号のときは で、実際に関係式をみたします。)

この問題で使った型

型01 区間が定数なので両辺の積分はどちらもただの数。等式は「数と数が等しい」という条件、つまり係数 の関係式に化けます。関数の等式が係数の方程式に落ちる――ここが入口です。しかも の奇数乗の積分が と分かれば2項が消え、残りは でくくれてきれいな3次式だけが残ります。

存在条件は値域へ (2) の「 が存在する条件」は と解き直して値域の問題に翻訳します。軌跡や通過領域で使う逆手流と同じ発想です。

検算のしかた

関係式 (左辺)(右辺)を厳密計算すると となり、括弧の中がそのまま関係式だと確認できます。 の零点が のみであること、両端の極限が であることも確認しました。

閾値を挟む  が正の実根をもつかを を少しずつ変えて総当たりすると、 までは存在し では存在しませんでした。 なので境界がぴったり挟まれています。答えが無理数のときに有効な検算です。

筑波大学 2011年度 ―― 型03・型06・型07・型12。積分できない関数を増減だけで扱う

【問題】筑波大学 2011年度 前期日程

自然数 に対し、関数 を考える。

(1) 関数 はただ一つの点で最大値をとることを示し、 が最大となるような の値 を求めよ。

(2) (1) で求めた に対し、極限値 を求めよ。

【解答】

(1)  (2)

方針。 だけは なので積分できますが、 では の原始関数は初等関数では書けません。だから自然数 すべてを一度に扱うには、「積分してから微分する」道は使えない。できるのは型03の公式で直接微分することだけで、この問題は値を求めずに増減だけで扱う型06・型07を使わせるために作られています

(1)  は連続なので は微分可能で、型03より

と置きます。 では が狭義増加なので は狭義減少。さらに だから、 となる はただ一つ存在します。それを とすると より の符号は と一致し、 で正、 で負。よって でただ一つの極大値をとり、それが最大値です。(示された)

より 、すなわち

(2) 対数をとると 。ここで 大きい方をくくり出すのが要領です。

で第1項は なので第3項も

この問題で使った型

型03・型12 両端が動く窓。右端は速さ なので が入り、左端は速さ なので が抜ける。「入る分から出る分を引く」がそのまま です。

型06・型07  の値は最後まで一度も計算していません。必要だったのは導関数の符号だけ。そして大事なのは「解けたから が求まった」ことではなく、 という関係式を持ち帰ったことです。(2) の極限は、この関係式の対数をとるだけで片づきます。

検算のしかた

最大点を数値で  を数値積分し を細かく動かして最大点を探すと、 となり、公式の値と刻み幅の範囲で一致しました。 なら と初等的に積分でき最大点は 、公式に を入れた と一致します。

極限  と単調に へ近づきました。極限値は具体的な を大きくして数値で追うのが、いちばん手早い検算です。

5. よくある質問

Q1. 定数と置くのか、微分するのか、どちらか迷います。

A. 積分区間の端を見てください。両端とも定数なら、その積分はただの数なので文字で置けます。端のどこかに変数が入っていれば、微分すれば積分記号が消えます。この一点だけで行き先が決まるので、式全体を眺める前にまず区間の端に目をやる習慣をつけてください。

Q2. 積分の中に変数が混ざっていて、微分できません。

A. 積分の中では外側の変数は定数扱いなので、積の形に割って外へ出してしまってください。指数関数なら底が同じもの同士を分けるだけで出せます。外に出しきると端だけに変数が残った標準形になり、そこで初めて微分します。前処理を済ませてから型を選ぶ、という順番が大切です。

Q3. 両辺を微分したのに、答えが合いません。

A. 初期条件を使い忘れている可能性が高いです。微分は定数の差を消してしまうので、微分して得た式は必要条件でしかありません。積分区間がつぶれて積分がゼロになる値を、微分する前の元の式に代入して定数を決めてください。

Q4. 定数と置いて解いたら、答えが二つ出ました。両方書いてよいのですか。

A. 置いた文字は勝手に置いた記号ではなく、定義から値が決まる数です。出てきた解をそれぞれ元の定義式に戻し、本当に成り立つかを確かめてください。両方成り立つなら両方が答えです。絶対値が入る場合は、置いた文字の大きさで場合分けの条件が変わるので、その前提もあわせて確認します。

Q5. 型を覚えれば初見の問題も解けますか。

A. 型は考えなくて済ませる道具ではなく、考える範囲を狭めるための道具です。過去に何百回も使われてきた型から予想して、思考する量を減らすことで、手際よく解法を思い付いている場合もあるのです。狭めたあとに何を考えるかは、その問題ごとに自分で決めることになります。

北大の良問 012

積分で定めた関数を2回微分して復元する|北大2013年理系第5問

被積分関数に未知関数が入っていますが、 を仮定して力ずくで微分する問題ではありません。まず置換で を2回積分した形」へ直すと、連続性だけで2回微分でき、 がそのまま現れます。

  • 北海道大学
  • 2013年度 前期日程
  • 数学(理系)第5問
  • 数学III 積分法
  • 積分で定めた関数
  • 発展

問題

区間 で定義された連続関数 に対して

とおく。


  1. となることを示せ。
  2. 2次導関数 で表せ。
  3. が3次多項式で となるとき, を求めよ。

出典:北海道大学2013年度一般入試(前期日程)数学(理系)第5問。問題文の表記はウェブ表示用に一部調整しています。

段階別ヒント

ヒント1|上端を にそろえる

まず定義の に置き換えます。積分区間は から になります。

ヒント2|未知関数の中身を新しい変数にする

と置けば、 です。積分区間の向きと の符号を同時に処理します。

ヒント3|新しい関数 を置く

と置くと、(1)は です。これを1回、2回と微分します。

ヒント4|合成関数の係数に注意する

です。一方、積分表示からは になります。

ヒント5|3次式の2つの係数を先に消す

積分表示から 。したがって と置けます。

置換 s = x − t G(x) = ∫(x−s)f(s)ds 1回微分 G′(x) = ∫ f(s)ds 上端の項は0 2回微分 G″(x) = f(x) F″(x) = 4f(2x)
置換と2回微分の流れを表した数強塾の独自図です。

解答・解説

(1) 置換で畳み込み型へ直す

定義の に置き換えると、

ここで と置く。 であり、 はそれぞれ に対応するから、

これは でも向き付き積分として同じ置換で成立する。

(2) 2回微分して を取り出す

と置く。(1)より

は連続なので、微積分学の基本定理を使える。Leibnizの公式で上端の項は となり、

一方、合成関数の微分により

(3)(4)から に置き換える。

(2)の答:

(3) 3次式の係数を条件から決める

が3次式なら も3次式である。(2)(3)から

よって定数項と1次項はなく、

と書ける。 と、(3)から を用いると、

これを解いて 。したがって

だから、

(3)の答:

別解| を直接3次式で置く

積分表示から なので、3次式

と書ける。(2)の関係を変形すると

より

したがって で、主解法と同じ答えを得る。

解法を思いつくための再現手順

  1. 上端と未知関数の中身をそろえる。 にして上端を とし、 を作る。
  2. 微分可能性の仮定を確認する。 は連続だけなので、 を使わず積分表示全体を微分する。
  3. の次数だけ微分する。 1回で核が消え、2回目に が出る。
  4. 合成関数の倍率を戻す。 では2回微分の係数が になる。
  5. 積分から初期条件を読む。 で3次式の定数項・1次項を消す。
  6. 残り2条件で係数を決定する。 に翻訳する。

よくある誤り

  • 置換で符号を1回しか変えない: と積分区間の反転を対にして処理します。
  • 直接 を微分する: の存在は仮定されていません。先に の形へ直します。
  • とする: 正しくは引数が残り、 です。
  • 合成関数の を落とす: を2回微分するので が掛かります。
  • 一般の3次式に4係数を残す: 積分表示から定数項と1次項は0です。
  • とする: なので です。
  • を無視する: 原問の定義域は全実数です。向き付き積分として置換・微分公式が成立することを確認します。

原式への代入検算

さらに も一致する。負の値 でも元の積分と が一致し、向き付き積分の扱いを確認できる。

この問題で押さえること:積分で定義された関数は「微分して中身を取り出す」が基本方針。置換で積分変数を整えてから、微積分学の基本定理で微分する流れを押さえよう。

前提単元と次に解く問題

教材について:解答・解説・ヒント・図は数強塾が独自に作成した非公式教材で、北海道大学が公表した公式解答・公式見解ではありません。問題の著作権は北海道大学に帰属し、出典を明示して掲載しています。

北大の良問 014

積分作用素を連立漸化式へ圧縮する|北大2019年理系第5問

関数列そのものを追いかけると複雑に見えます。しかし、核 を加法定理で分けると、次の関数は必ず の2方向に収まります。無限次元に見える問題を、2つの数 の漸化式へ圧縮する良問です。

  • 北海道大学
  • 2019年度 前期日程
  • 数学(理系)第5問
  • 数学III 積分法
  • 関数列と漸化式
  • 発展

問題

を区間 で連続な関数とする。関数 を関係式

により定める。さらに,自然数 に対して

とおく。

  1. を用いて表せ。
  2. とおく。このとき, が成立することを示し,一般項 を用いて表せ。
  3. によらない定数となるような を1つ求めよ。

出典:北海道大学2019年度一般入試(前期日程)数学(理系)第5問。問題文の表記はウェブ表示用に一部調整しています。

段階別ヒント

ヒント1|積分の核を に分離する

を使います。積分の外では が定数、積分の中では が変数です。

ヒント2|問題文の をそのまま探す

は、定義からそれぞれ です。

ヒント3| の直交性を使う

です。

ヒント4|定数1を引いて回転にする

を考えると、次の項は 。平面上の90度回転として読めます。

核 sin(x−t) を分離 sin x cos t − cos x sin t 2係数へ圧縮 (aₙ, bₙ) だけを追う 中心 (1,1) のまわりを90°回転
積分作用素を2成分の漸化式へ圧縮する流れを表した数強塾の独自図です。

解答・解説

(1) 加法定理で関数列を係数化する

加法定理を用いると、

ここで

を使う。(1)を の定義へ代入すると、

(1)の答:

(2) 2項先で符号が反転する

(3)を2回用いると、

初めの2項は

したがって、奇数番目と偶数番目を分ければよい。

(2)の答:

特に で、列は高々4周期です。

(3) 固定点 を実現する

が一定値 なら、(3)から

よって 。そこで

とおく。(2)の直交性から であり、(3)により全ての が続く。

(3)の答の一例:

別解|中心をずらすと90度回転になる

とおくと、(3)は

右の行列を とすれば 。したがって は原点のまわりを90度ずつ回り、4項で元へ戻る。第1成分だけ見れば 、すなわち が直ちに得られる。

4項の動きを表で確認

解法を思いつくための再現手順

  1. 積分核の加法定理を試す。 を含む三角関数を、 の関数と の関数の積へ分ける。
  2. 問題文が定義した量を探す。 分離後の2つの積分が、そのまま になっていると気づく。
  3. 直交性で係数を読み取る。 の3積分だけで次の項を得る。
  4. 定数項を消す。 不動点 を引き、非同次漸化式を回転という同次変換にする。
  5. 2項先・4項先を見る。 90度回転なら2回で符号反転、4回で元へ戻る。
  6. 最後は固定点を実現する関数を作る。 は2つの正規化係数がともに1になる。

よくある誤り

  • 加法定理の符号を逆にする: です。
  • を落とす: と打ち消し合って係数1になります。
  • とする: 成分なので、正しくは です。
  • とする: です。
  • 一般項を1本の式に無理にまとめる: 初期値が2つあるので奇数項・偶数項に分けるのが自然です。
  • (3)で だけを使う: も必要で、固定値は に決まります。
  • 関数 を毎回積分し直す: 一度2係数へ圧縮した後は漸化式だけで十分です。

独立検算

記号 のまま(3)を4回反復すると、

したがって(6)と周期4が一致する。また を原定義へ代入すると、 かつ となるため、帰納的に が成立する。

この問題で押さえること: は加法定理で の2方向に分解できる。関数列の問題を係数 の連立漸化式へ圧縮する型を押さえよう。

前提単元と次に解く問題

教材について:解答・解説・ヒント・図は数強塾が独自に作成した非公式教材で、北海道大学が公表した公式解答・公式見解ではありません。問題の著作権は北海道大学に帰属し、出典を明示して掲載しています。

北大の良問 015

積分方程式を1変数の2解問題へ落とす|北大2000年理系第4問

3つの小問は独立ではありません。最初に「指数方程式が異なる2解をもつ条件」を調べ、次に必要な定積分を計算し、最後に未知関数を1個の定数へ圧縮して最初の小問へ戻ります。関数を求める問題を、1変数方程式の解の個数へ翻訳する流れが美しい良問です。

  • 北海道大学
  • 2000年度 前期日程
  • 数学(理系)第4問
  • 数学III 積分法
  • 指数関数・積分方程式
  • 発展

問題

次の問いに答えよ。

  1. 方程式 の範囲で異なる2つの解をもつための実数 の範囲を求めよ。ただし は自然対数の底である。
  2. 定積分 の値を求めよ。
  3. をみたす関数 が2つ存在することを示せ。ただし, は自然対数とする。

出典:北海道大学2000年度一般入試(前期日程)数学(理系)第4問。問題文の表記はウェブ表示用に一部調整しています。

段階別ヒント

ヒント1|(1)は を孤立させる

と変形し、 のグラフと水平線 の交点として読みます。

ヒント2|開区間の端点に注意する

の値域を別々に求め、その共通部分を取ります。 は範囲に含まれません。

ヒント3|(2)は を微分する

の形の原始関数を探すと、係数はすぐ決まります。

ヒント4|(3)は積分全体を1文字にする

とおくと、右辺の積分は によらない定数です。

ヒント5|関数を決めてから整合条件を戻す

原式から 。これを の定義へ戻すと、 だけの方程式になります。

ヒント6|最後に(1)を再利用する

とおくと、 の方程式は 。係数 が(1)の範囲に入ることを示します。

(1) 2解をもつ係数の範囲 3/e³ < A < 1/e (2) 必要な定積分 K = e^(π/2) − 1 (3) 関数を定数 λ へ圧縮 (K/e³)e^λ − λ = 0 係数 K/e³ を (1) へ戻す
3小問が循環する構造を表した数強塾の独自図です。

解答・解説

(1) 水平線との交点が2個になる条件

方程式を

と変形し、 とおく。すると

だから、 で狭義増加し、 で狭義減少する。それぞれの値域は

異なる2解をもつには、各区間に1解ずつ必要で十分である。よって、2つの値域の共通部分を取る。

(1)の答:

では2つ目の交点が となるが、 は開区間なので数えない。 では の1解だけであり、重解を「異なる2解」とは数えない。

(2) 指数関数と三角関数をまとめて積分する

原始関数を微分して確かめると、

したがって、

(2)の答:

(3) 積分方程式を の方程式へ変える

が定義されるので である。そこで

とおく。区間内部で だから 。原式から

(8)を(7)へ戻し、(6)を使うと、

したがって

ここで、 より

両辺が正なので、最後の不等式 は、両辺を2乗した から確認できる。また だから 。よって

(1)で とすれば、(9)は に異なる2解 をもつ。

に対し

と定める。(9)から 、また から 。したがって両関数は条件を満たす。逆に、条件を満たす関数は必ず(8)(9)へ帰着するので、この2つ以外にはない。

(3)の結論:

条件を満たす関数は、(9)の2解 に対応する

の2つである。

別解|最初に を置く

原式の の場合を一般の の場合から引くと、 とおけば

(6)より の原式は

と置けば、(14)は(9)と同じ式になる。 に対応するため、主解法と同じ2関数を得る。この別解では「積分方程式の解は必ず 型」という形が先に見える。

解法を思いつくための再現手順

  1. 方程式の解の個数を交点へ翻訳する。 パラメータ を孤立させ、 と読む。
  2. 区間を極値で分ける。 の左右で単調だから、2解は左右に1個ずつ現れる。
  3. 次の小問を部品として保存する。 積分値を とし、後でそのまま使う。
  4. 定積分全体を定数化する。 積分変数 は積分後に消えるため、 と置ける。
  5. 必要条件から関数の形を確定する。 を得てから定義へ戻す。
  6. 小問(1)と同じ形を見抜く。 の係数を評価する。
  7. 逆向きも確認する。 2つの根から関数を実際に作り、原式と に戻す。

よくある誤り

  • を含める: そのときの2つ目の候補 は開区間の外です。
  • を含める: は重解ですが、異なる2解ではありません。
  • (2)の原始関数で係数 を落とす: 積の微分で の項を相殺する必要があります。
  • の定義で係数2を落とす: ここを誤ると(9)の係数が変わります。
  • から を確認しない: と指数関数表示の根拠です。
  • を使わない: これが となり、(1)の区間へ接続します。
  • の範囲を小数だけで判定する: を不等式で示します。
  • 根が2個あるだけで終える: 各根から関数を構成し、積分へ代入して十分性を確認します。

独立検算

数値的には


どちらも を満たす。各根を(9)へ代入した残差は 以下であり、構成した関数を原積分へ戻して同じ が得られることも確認した。

この問題で押さえること:未知関数が入っていても、定積分は「1個の定数」。 と置いて方程式に戻す定石と、解の個数を1変数関数のグラフで数える流れを押さえよう。

前提単元と次に解く問題

教材について:解答・解説・ヒント・図は数強塾が独自に作成した非公式教材で、北海道大学が公表した公式解答・公式見解ではありません。問題の著作権は北海道大学に帰属し、出典を明示して掲載しています。

6. 次に読むページ

定積分で表された関数でつまずいている人へ

この分野で手が止まる生徒のほとんどは、計算力が足りないのではなく「積分記号の中と外で、どの文字が生きているのか」を見分けていないだけです。数強塾では、式を書き写す前に「消える文字はどれか」を指で押さえて口に出させ、それから型を選ぶ訓練をしています。オンラインの完全1対1で、プロ講師のみが担当します。

数強塾オリジナル演習 追加5題|型10・型11を埋める

上の入試実例では型01〜09・型12 を扱いました。ここでは残る型10(区分求積法)を2問、型11(定積分と不等式)を2問で埋め、最後に両方を組み合わせた1問を置きます。すべて自作問題で、答えは計算で検算してあります。

型10 区分求積法(基本形)
極限 を求めよ。

解答・解説を見る

区分求積法の顔つきは「です。
短冊の幅高さ。足し合わせているのは長方形の面積の合計で、定積分になります。
、区間は から なので

【和の公式でも確かめる】


2通りで一致しました。
【手順】 をくくり出す ② 残りを だけの式にする ③ と置きかえる
②で「 の形に書けるか」が関門。書けなければ区分求積は使えません。

型10 積分区間が でない形
極限 を求めよ。

解答・解説を見る

まず を作り出します。
分母・分子を で割ると

したがって

基本形になりました。 として

(数値で確認: で計算すると ✓)
【コツ】 が見当たらないときは、分母の最高次で割って作り出す
この形は「 が混ざった分数」で見分けられます。 のように次数がそろっていれば必ず の式にできる
(区間が などになるのは まで動くとき。 なら から まで動くので になります)

型11 不等式で積分をはさむ
において が成り立つことを使って、 の値を評価せよ。

解答・解説を見る

不等式は、積分しても向きが変わりません。(区間の向きが正のとき)

それぞれ計算すると
左:
中:
右:

(実際 ✓)
【なぜこれが使えるのか】積分は面積です。グラフが上にあれば面積も大きい——当たり前の事実を式にしただけ
積分できない関数でも、積分できる関数ではさめば値が絞れる——これが型11の思想です。
(もとの不等式は、、すなわち と同値。2乗は 以上から出ます)

型11 極限を「はさみうち」で出す
について、 を求めよ。

解答・解説を見る

この積分は、そのままでは計算できません。 が一般だと原始関数が書けない)
そこではさみうちを使います。
では なので

積分して

で右端は に近づくので

(検算: なら 以下 ✓)
【型11の使いどころ】「値そのものは出ないが、極限なら出る」という問題は入試の定番です。
手順は3つ
被積分関数を、簡単な関数ではさむ(分母を最大・最小で置きかえるのが定石)
両端を積分する
両端の極限が一致すれば、間の値もそこへ
①で「分母の に置きかえる」のがいちばんよく使う手です。

型10+型11 和を積分ではさむ
について、 が成り立つことを示せ。
また で確かめよ。

解答・解説を見る

1つの項を、積分ではさみます。
では なので、この区間で積分すると
 …①
【下からの評価】①の右側を から まで足すと

左辺は 。よって
【上からの評価】①の左側を から まで足すと

両辺に を足して
で確認】


「和を積分ではさむ」のは、区分求積の逆向きの使い方です。区分求積が「和 → 積分」なら、こちらは「積分で和を押さえる」。
(この評価から と同じくらいの速さで無限大になることが分かります。 が発散するのに非常にゆっくりなのは、このためです)

和と積分は、行き来できる

型10と型11は、じつは同じ関係の両方向の使い方です。

向き やること
和 → 積分 で長方形が細くなり、面積に一致する 型10(区分求積)
積分 → 和 1項ずつ積分ではさんで、和の大きさを押さえる 型11(評価)

どちらも根っこは「和と積分は似ている」という一点です。

区分求積の見分け方

次の顔つきを覚えてください。

  • が外にある(なければ作り出す。分母の最高次で割る)
  • 中身が だけの式 が別々に残ってはいけない)
  • の動く範囲が積分区間を決める なら

評価(はさみうち)の3手順

  1. 被積分関数を、積分できる関数ではさむ ── 分母を最大・最小の値で置きかえるのが定石
  2. 両端を積分する ── 不等式の向きは変わらない(区間が正の向きなら)
  3. 両端の極限を比べる ── 一致すれば、間の値もそこへ

「積分できないから解けない」ではありません。値が出せなくても、大きさが押さえられれば十分という問題が数多くあります。

とくに では)という事実は頻出です。 を上からの評価に使う問題は、型を変えて何度も出ます。

「なぜそうなるのか」へ

この単元は「積分とは何か」に何度も立ち返ることになります。土台を押さえると、12の型が1本につながります。

関連ページ

📝 この型が実際に出た入試問題(16問)

「定積分で表された関数」の型が実際の入試でどう出たかを、数強塾が全問解説を公開している年度から拾いました。各行の「解説を読む」から、その問題の解説へ直接移動できます。型を読んだあとに実出題で当てると、どこまで通用する判断なのかがはっきりします。

大学・年度 出題テーマ 難易度 解説
関西学院大学 2025年度 積分方程式と面積【記述式】 標準 解説を読む
学習院大学 2024年度 定積分で定義された関数の極値と面積 標準 解説を読む
学習院大学 2024年度 絶対値を含む定積分で表された関数の最小値 やや難 解説を読む
東北大学 2019年度 対称性を使う定積分と積分方程式 解説を読む
京都大学 2009年度 積分方程式から整式を決定する 標準 解説を読む
久留米大学(数学) 2023年度 第5問(積分方程式:定積分で定義された関数) 解説を読む
東邦大学(数学) 2022年度 第3問(積分方程式:定数を文字でおく) 解説を読む
信州大学 2019年度 積分方程式と接線|面積 解説を読む
埼玉大学 2017年度 積分方程式 解説を読む
横浜国立大学 2015年度 積分方程式 解説を読む
自治医科大学(数学) 2015年度 問25(積分方程式) 解説を読む
東邦大学(数学) 2013年度 第14問(絶対値付き積分方程式) 解説を読む
神戸大学 2013年度 三角関数の積分方程式 解説を読む
近畿大学(数学) 2011年度 第3問(微分積分・絶対値つき定積分で表される関数の増減と最小値) 解説を読む
千葉大学 2008年度 積分方程式と3次関数の最小値 解説を読む
慶應義塾大学(数学) 1997年度 第IV問(積分・積分方程式と固有値問題) 解説を読む

難易度は数強塾の見立てです(「—」は難易度を掲載していない年度)。大学別の年度一覧と出題傾向は過去問解説の総索引から、この型の全体像は解法パターン事典のハブから確認できます。

オンライン数学専門塾 数強塾|プロ講師のみ・完全1対1指導・中高一貫校対応

数強塾オンラインのご案内

体験授業に申し込む入塾受け入れ状況(残席)数学つまずき診断(無料)体験授業の事前案内保護者の方へ高1・高2の方へ医学部志望の方へ保護者様からの声料金・指導システム指導事例・合格実績大学受験 合格実績(集計ルール開示)数強塾グループの理念学校別の数学対策数学の勉強法(記事一覧)数強塾プレミアム(映像授業)獣医学部専門コース鉄緑会・SAPIX等との併用サポート過去問解説・数学問題集毎日の数学(1日1枚 無料プリント)毎日の数学EX(難関大の名問を1日1問)共通テスト・センター数学の全問解説共通テスト「情報Ⅰ」の全問解説情報Ⅰ・情報Ⅱ専門「情報ラボ」情報の過去問アーカイブ(無料PDF)解法テクニック事典(公式・裏ワザ)入試数学の定石(解き方の型・全27章)数学の要点辞典まとめ(中1〜数学III)中1数学の要点辞典(全7単元)中2数学の要点辞典(全6単元)中3数学の要点辞典(全8単元)数学I・Aの要点辞典(全9単元)数学II・B・Cの要点辞典(全12単元)数学IIIの要点辞典(全7単元)論理と証明の要点辞典(全8章)2026年 夏期講習会2026年 冬期講習会代表・藤原進之介について
お問い合わせはこちら 学習相談は無料です