通過領域は、多くの受験生が「何をしたらいいのか分からない」と感じる代表格です。直線や放物線が無限に動き、その全部が塗りつぶした跡を求めよと言われる。動くものを目で追いかけようとすると、無限個の図形を全部把握しなければならず、そこで手が止まります。ところがたった一行の言い換えで、この問題は1変数の方程式の問題に化けます。それが逆手流です。動く図形を追うのをやめ、平面の点をひとつ固定して「この点を通してくれる値が存在するか」だけを問う。存在すればその点は塗られ、しなければ塗られない。このページは、その逆手流を軸に通過領域の解法を12の型に分けて並べた辞典です。型は当てはめるための箱ではなく、どの言い換えを選ぶかを決めるための道具として並べています。
第1層と第2層の関係
単元の全体像を見渡したい人は図形と方程式の解法パターン全19型をご覧ください。あちらが単元の概観で、直線・円・軌跡・領域・線形計画法までを一望できます。
このページは、その中の「通過範囲/逆手流」と「ファクシミリの原理」だけを取り出して深掘りする第2層です。第1層で2つの型だった内容を12に割り直し、境界の1本1本がどこから来たのかまで追いかけます。概観は第1層、深掘りはここという関係です。
このページの12型
- 逆手流の考え方(点を固定して、パラメータの存在条件に)
- 実数条件(判別式)
- パラメータが1次のとき
- パラメータが2次のとき(解の配置)
- パラメータに範囲があるとき
- 包絡線が見える型
- 直線族の通過領域
- 放物線族の通過領域
- 円族の通過領域
- 線分の通過領域(端点の制限)
- 2変数の存在条件
- 領域の図示と境界の扱い
1. 背骨——「動く図形を追う」のをやめ、「点ごとに存在を問う」
通過領域の問題文は必ず「 が動くとき」で始まります。素直に読めば1本ずつ描く作業になりますが、 は実数全体を動くので永遠に終わらず、境界がどの曲線なのかを厳密に決めることはできない。詰まる原因は計算力ではなく主語の選び方にあります。
そこで発想を裏返します。問われているのは「どの図形がどこを通るか」ではなく「平面のどの点が塗られたか」。だったら点を主役にすればいい。点をひとつ釘で留め、「この点を通る図形が族の中に1本でもあるか」を問う。点を固定するとは と を定数だと思うことなので、族の式に残る文字は だけになり、族の式は の方程式に変わります。
逆手流の一行
点 が通過領域に属する 方程式 をみたす が(指定された範囲に)存在する
左辺は図形の問題、右辺は方程式の問題です。この矢印1本を渡るのが逆手流。渡った先に待っているのは、判別式・値域・解の配置というすでに知っている道具ばかりです。
ふつうの向きは「 を決める 図形 通る点」。逆手流は「点を決める 通すには がいくつであるべきか そんな があるか」と逆にたどり、主役と脇役を入れ替えます。大事なのは、この入れ替えが言い換えではなく同一の命題だということ。だから軌跡で必要な「逆の確認」が要りません。処理はこの先、実質3通り——①判別式、②値域(ファクシミリの原理)、③解の配置。このどれを選ぶかが、通過領域の問題のほとんどすべてです。
「すべての」と「ある」で、見る場所が変わる
以下の最大値・最小値による言い換えは、それらが実際に存在する場合のものです。例えば、閉区間で連続な関数なら使えます。最大値を取らない場合に、上限だけで「あるt」を判定してはいけません。\(t>0\) で \(\varphi(t)=-1/t\) なら上限は0でも、\(\varphi(t)\geqq0\) となるtはありません。
条件 について、すべての で成り立つ (最小値)、ある で成り立つ (最大値)。
通過領域は「ある 」の側です。取り違えると、答えが「直線2本の下側の共通部分」になるか「放物線の下側」になるかが丸ごと入れ替わります。東北大学の問題は、この2つを並べて出題しています。
以下で判別式Dと本数を対応させるのは、tについて真の二次方程式になり、異なるtが異なる図形を表す場合です。例えば直線 \(y=2tx-t^2\) では傾き2tがtを一意に決めます。パラメータの範囲を制限したときは、その範囲内の解だけを数えます。
もうひとつ背骨に絡む骨が包絡線です。 の点は「通す が2つある」点、 は「ちょうど1つ」、 は「1つもない」点。つまり境界とは、通る図形の本数が2本から0本へ切り替わる場所で、その瞬間に本数がちょうど1本になる。この点を集めた曲線が包絡線で、族の図形はすべてこれに接します。神戸大学の問題の(1)が問うているのはこの曲線で、(1)で包絡線、(2)で通過領域という並びは偶然ではありません。
ここまでを読むと、通過領域は「一行の言い換え+既習の道具」で片づくように見えます。実際そのとおりですが、その一行を思いつけるかどうかがすべてで、白紙から初見で思いつく人はほとんどいません。逆手流は天才のひらめきではありません。数学が得意な人は、過去に何百回も使われてきた「型」から予想して、思考する量を減らすことで、手際よく解法を思い付いている場合もあるのです。「 が動く」と見た瞬間に、考える範囲を「点を固定して、存在条件を3通りのどれで処理するか」に狭めている。しかし狭めただけでは答えは出ません。場合分けの境目をどこに置くか、境界のどこが包絡線でどこが端の図形かは、自分の手で決める作業が必ず残ります。型は考えなくて済ませる道具ではなく、考える範囲を狭めるための道具だ、というのはそういう意味です。
2. 手順——問題を見てから型を選ぶまで
1動いている文字と、動いていない文字を分ける。動く文字がパラメータ、残りの がこれから定数扱いにする文字です。
2「点 を通る」をパラメータの方程式に書き換える。座標を代入してパラメータについて整理し直す。未知数が から に移ります。
3その方程式が「何次か」と「範囲があるか」を見る。この2つで型が決まります。 について1次で解けるなら値域のほうが速い。
4得られた条件を図示し、境界を検品する。境界の式を区間ごとに書き分け、接続点の座標と等号の有無を確かめて完成です。
手順3が分岐点です。次数と範囲の有無という2つの情報だけで使う型がほぼ決まり、問題文の見た目(直線か放物線か円か、幾何の設定か式の設定か)は何の影響も与えません。見た目ではなく、整理し直したあとの式の形で判断する——手順を4つに切っているのはそのためです。
3. 解法パターン全12型
型01 逆手流の考え方(点を固定して、パラメータの存在条件に)
01点を釘で留めて、パラメータを探しにいく
顔つき 「 が動くとき通る点の全体を求めよ」。「動く」と「通る」が同居していたらこの型。
中身 点 を定数扱いにし、 の方程式 が指定範囲に実数解をもつ条件を書く。
なぜ効くか 図形は無限個でも、点は「通るか通らないか」の2択。点ごとの判定に置き換えると相手が だけの1変数に減ります。しかも同値変形なので、軌跡(型12)と違って「逆の確認」が要りません。
型02 実数条件(判別式)
02解かずに「あるかないか」だけを言う
顔つき について2次式になり、範囲の制限がない。
中身 が実数解をもつ条件 を の不等式に読み直す。
なぜ効くか 判別式は解かずに存在だけを言い当てる装置。 なら通る図形が2本、 なら1本、 なら0本で、 の曲線が境界=包絡線。制限があると「解はあるが範囲の外」という抜け道が生まれ、使えません。
型03 パラメータが1次のとき
03答えは領域ではなく「除外点」になりやすい
顔つき 整理すると の形。定点を通る直線束が典型。
中身 なら通過。 のときだけ別扱いで、 も成り立つ点だけが通過する。
なぜ効くか 1次は解が明示できるので存在条件が自動。答えは「平面全体から かつ の点を除いたもの」となり、除外点こそが主役です。ここを書き落とすと減点されます。
型04 パラメータが2次のとき(解の配置)
04判別式・軸・端の符号の3点セットで区間に押し込む
顔つき について2次で、しかも の範囲つき。
中身 区間に解をもつ条件を判別式・軸の位置・端の符号で書く(2次関数の型15)。
なぜ効くか 範囲がつくと判別式では「解はあるが範囲の外」を排除できず、解の配置が穴を埋めます。ただし場合分けが多いので、まず「 について1次で解けるか」を確かめ、解けるなら型05を使う。どちらを選ぶかまで含めてこの型です。
型05 パラメータに範囲があるとき
05頂点が使えるか、端しか使えないかで割る
顔つき 、 のように動く範囲が指定されている。
中身 を固定して の制限つき値域を求め、軸が定義域に入るかで割る。
なぜ効くか 「 が値域に入る」が、そのまま「その を出す がある」。範囲がつくと境界は包絡線から端の図形へ乗り換わり、その は軸が定義域の端に一致する 。神戸大学や横浜国立大学の はここから出た数字で、覚えるものではありません。
型06 包絡線が見える型
06重解の点を集めると、族に接する曲線になる
顔つき 制限なしの族で判別式 が曲線になる。「ただ1つだけ通る点の軌跡」の答えがこれ。
中身 の曲線を求める。 との連立でも同じだが、答案では判別式が安全。
なぜ効くか 重解は「2つの解が合流した」状態で、幾何では近くの2本の交点が1点に合流する、つまり接する。だから族の全部に接します。ただし制限がつくと境界の一部しか担当しないので、包絡線は答えではなく答えの下書きです。
型07 直線族の通過領域
07幾何の設定でも、式にすればただの2次式
顔つき 傾きと切片にパラメータが入る直線。「垂直二等分線」「接線」など幾何的に与えられることも多い。
中身 まず族の式を1本の方程式にし(幾何的な設定ならこれが(1))、 について整理して型02か型05へ。
なぜ効くか 傾きと切片の両方にパラメータが入るため、整理すると の2次になることがほとんど。だから一手で決着します。「垂直二等分線の族」も式にすればただの2次式。図形の言葉に惑わされず、式にしてから型を選ぶ。
型08 放物線族の通過領域
08縦線で切って、1本ずつ走査する(ファクシミリの原理)
顔つき 放物線そのものが動く。
中身 を固定して の関数と見る。たいてい2次関数なので値域を求める。
なぜ効くか 動くのが直線でも放物線でも、 を固定すれば「 の2次関数の値域」に落ちます。効くのは「固定する」の一手だけ。縦線で切って の範囲を1本ずつ調べ横に並べる——1行ずつ走査して画像を送る機械と同じ手順です。
型09 円族の通過領域
09距離の言葉に直せば、図で決着する
顔つき で、中心か半径、あるいは両方が動く。
中身 中心が動き半径が一定なら中心の軌跡から距離 以内の帯、半径だけ動くなら円環。両方動けば式に戻す。
なぜ効くか 円は「中心からの距離」というたった1つの量で決まるので、存在条件がそのまま距離の不等式に化けます。式でも図でも押せるのが円族の特権。ただし中心も半径も動くときに図で押すと破綻するので、型11へ切り替えます。
型10 線分の通過領域(端点の制限)
10「端で止まる」ことが、領域の内側に境界を作る
顔つき 「線分 が通過する領域」。直線ではなく線分・半直線が動く。
中身 直線の式に加えて の動ける範囲がパラメータに依存する条件が付き、両方をみたす の存在を問う。
なぜ効くか 直線と違い線分は端で止まる。この「止まる」が効いて領域の内側にも境界が生まれるので、包絡線だけでは決まりません。境界の候補は包絡線と端の図形の2種類だけと頭に入れると、図示で迷わなくなります。
型11 2変数の存在条件
11条件を、別の平面に引っ越しさせる
顔つき パラメータが2つ。「頂点が描く図形を図示せよ」。
中身 ①1つずつ消すか、②像の平面に写す(対応が1対1なら条件をそのまま翻訳する)。
なぜ効くか 2文字を同時に相手にすると手に負えませんが、条件を別の世界の言葉に書き直すだけなら代入する作業です。根拠は対応が逆に解けること。逆手流とは「条件をどの世界の言葉で書くかを選ぶ技術」なのです。
型12 領域の図示と境界の扱い
12接続点と等号を書いて、はじめて答案になる
顔つき 設問の最後が「図示せよ」。ここで点を落とす人が多い。
中身 ①境界を区間ごとに書き分ける ②接続点の座標 ③等号の有無 ④除外点を機械的に検品する。
なぜ効くか 答えはたいてい複数の曲線をつないだ境界で、乗り換わる場所は場合分けの境目そのもの。だから接続点の座標はすでに計算済み。等号も存在条件の不等号がそのまま境界に移るだけです。図示は作業ではなく、最後の同値性チェック。
4. 実際の入試で確かめる
この単元の解法パターンは全12型で、下にある入試の実例6問で確かめているのは10型です。このページの追加演習が2型を埋めています。1問が複数の型にまたがることも、同じ型を複数の実例で扱うこともあるため、実例の数と型の数は必ずしも一致しません。
ここからは実際に出題された問題で型を確かめます。問題文は各大学が公表した入試問題を、解説のために引用したものです。解答・解説は数強塾が独自に作成したもので、大学公表の解答ではありません。数値はすべて当塾で独立に解き、Python(sympy の厳密計算、NumPy の数十万点走査、乱数照合)で検算したうえ、別の担当者が独立に解き直して照合しています。
神戸大学 2006年度 ―― 型01・型02・型05。逆手流の全工程が2問に
この問題は 図形と方程式(座標) のページでも扱っています。同じ問題でも、そちらは単元全体の中での位置づけ、ここではこのテーマに絞った読み方をしています。二つを見比べると、同じ問題文から引き出せるものが1つではないことが分かります。
【問題】神戸大学 2006年度 文系 第2問
実数 に対して 平面上の直線 を考える。次の問に答えよ。
(1) 点 を通る直線 はただ1つであるとする。このような点 の軌跡の方程式を求めよ。
(2) が の範囲を動くとき、直線 が通る点 の全体を図示せよ。
【解答】
(1) (2) のとき 、 のとき (境界を含む)
(1) が 上にあることは 。ここが逆手流の渡り所で、傾き が を一意に決めるから「直線がただ1つ」は「 がただ1つ」。重解条件から 、これが包絡線です。(2) 制限つきなので判別式は不可。 は上に凸で両端 だから最大値だけが問題で、頂点 が使えれば 、使えなければ端の値 。つなぎ目 と の交点 の角は必ず図示します。
この問題で使った型
型01点を固定して の方程式へ。型02・型06(1)は判別式 で答えが包絡線。型05(2)は制限つき値域。型12接続点と角の明示。
検算のしかた
に を40万点取り、各 で の最大値を実測。11点すべてで小数6桁まで一致( で 、 で )。手計算なら を代入します。
筑波大学 2011年度 ―― 型05・型06・型07。凸の向きが逆になる対比
【問題】筑波大学 2011年度〔1〕
を原点とする 平面において、直線 の を満たす部分を とする。
(1) 上に点 をとるとき、線分 の垂直二等分線の方程式を求めよ。
(2) 点 が 全体を動くとき、線分 の垂直二等分線が通過する範囲を求め、それを図示せよ。
【解答】
(1) (2) のとき 、 のとき (境界を含む)
(1) 中点を通り に垂直、で作れます。「2点から等距離」として整理しても同じ式で、2通りで一致したら確定。(2) で の値域を見ます。 は下に凸なので神戸大学とは逆に最小値——包絡線の上側か下側かは の係数の符号だけで決まるので最初に確認を。頂点が使えれば 、使えなければ 。接続点 、角 。原点まわりの帯が掃かれないのは が原点に近づけないからです。
この問題で使った型
型07幾何的な設定から族の式を作った。型05制限つき値域。型06境界の放物線は包絡線だが しか担当しない。型12接続点と角の明示。
検算のしかた
に を60万点取り、各 で の最小値を実測。9点すべてで小数6桁まで一致( で 、 で )。(1)は で となり図で確かめられます。
東北大学 2011年度 ―― 型01・型05・型06。「すべて」と「いずれか」を並べて出す
この問題は 集合と論理 のページでも扱っています。同じ問題でも、そちらは単元全体の中での位置づけ、ここではこのテーマに絞った読み方をしています。二つを見比べると、同じ問題文から引き出せるものが1つではないことが分かります。
【問題】東北大学 2011年度 理系〔1〕
実数 に対し、不等式 の表す座標平面上の領域を とおく。
(1) を満たすすべての に対し の点となるような点 の範囲を図示せよ。
(2) を満たすいずれかの に対し の点となるような点 の範囲を図示せよ。
【解答】
(1) かつ (交点 ) (2) で 、 で 、 で (境界を含む)
とおくと、 が の点であることと は同値。平方完成すれば上に凸で軸は 。(1)「すべての 」は最小値で、上に凸なら最小は必ず区間の端だから2本の条件で十分——答えは と の共通部分です。(2)「いずれかの 」は最大値で、軸が区間に入るかで3通り。放物線 が包絡線で、接続点 、 では傾きが一致しなめらかにつながります。なお「接線の族」と呼ぶとき接点の 座標は ではなく です。
この問題で使った型
型01点を固定して の条件に翻訳。型05(2)は区間つきの最大値なので軸の位置で3通り。型06包絡線が(2)の境界の中央を担う。型12角のある形となめらかな形の対比。
検算のしかた
最小と最大を実測するのがそのまま検算です。 を から に30万点取り、各 で の最小値と最大値を計算。10点すべてで一致( で最小 、 で最大 )。
横浜国立大学 2015年度 ―― 型05・型06・型08。放物線が動くとき
【問題】横浜国立大学 2015年度 理系 第3問
実数 に対し、 平面上の放物線 を考える。
(1) がすべての実数を動くとき、 が通過する領域を求め、図示せよ。
(2) が の範囲を動くとき、 が通過する領域を求め、図示せよ。
【解答】
(1) (2) のとき 、 のとき (境界を含む)
準備。 について整理すると (型08)。放物線が動く問題が、 の2次関数の値域の問題に変わりました。 とおきます。(1) は全実数なので 。動くのは開き方1の放物線なのに境界は開き方2の放物線——これが包絡線で、接点 が滑った跡です。(2) の範囲は 。 の最小が の最大を、最大が の最小を決めます。区間が を含めば最大は包絡線のまま、含まなければ 、最小はどちらも 。この2本は2つの放物線 の低いほうと高いほうで、境界は包絡線と端の放物線だけ。接続点 、最低点 、角 です。
この問題で使った型
型08 を固定して の2次関数と見る。型02・型06(1)は判別式でも解け、境界は包絡線。型05(2)は区間が を含むかで場合分け。型12接続点と角の明示。
検算のしかた
(1)は を から に、(2)は から に40万点取り、各 で最小値と最大値を実測。9点で小数4〜6桁まで一致((2)の で 、 で )。
横浜国立大学 2019年度 ―― 型05・型06・型10。動くのは直線ではなく線分
【問題】横浜国立大学 2019年度 A2冊子 第4問
Oを原点とする 平面上に2点 、 がある。2点P、Qは条件 をみたしながら動く。
Pは線分OA上にある。Qは線分OB上にある。 の面積は1である。
点Pの座標を とする。
(1) のとり得る値の範囲を求めよ。
(2) が(1)で求めた範囲を動くとき、線分PQが通過する領域を 平面上に図示せよ。
(3) (2)で求めた領域の面積 を求めよ。
【解答】
(1) (3)
(2) 上側の境界は 、、 を の区間 、、 でつないだもの。下側は 、、 を区間 、、 でつないだもの(境界を含む)
(1) とおくと より 。2点が線分上にある条件から 。(2) 線分を含む直線は で 。ここで「線分である」ことが効きます——線分上の点は にしかないので の範囲は 。 より で最大値 、この が包絡線。 が区間に入るか()、端 のどちらが最小を与えるか()、区間の左端が から に変わるか()で4通りに割れ、境目が3つ出るのは上下の境界が別々の理由で乗り換わるから。下側にも境界があるのは、直線ではなく線分だからです(型10)。(3) 積分の有理数部分が 、対数部分が となり 。対数の中身が 以外なら区間を取り違えた合図です。
この問題で使った型
型10線分なので が加わり、下側にも境界ができた。型05最大点 が区間に入るかで場合分け。型06包絡線は双曲線だが担当は一部だけ。型12接続点の明示。
検算のしかた
を から に40万点取って各 の の最小・最大を実測すると9点すべてで一致( で )。また の解 が 以上 以下かで内外を判定し、 の格子で面積を測ると 、厳密値 と一致します。乱数のモンテカルロ法は400万点でも標準誤差 程度で3桁目までしか信用できません。
静岡大学 2018年度 ―― 型04・型11・型12。文字が2つあるとき
【問題】静岡大学 2018年度 M1冊子 第2問/M3冊子 第3問
座標平面上で、曲線 を とする。実数 を定数とする2次関数 …① について、次の問いに答えよ。
(1) ①のグラフが曲線 と共有点を2点持つとき、 が満たす条件を求めよ。
(2) が(1)で求めた条件を満たすとき、①のグラフの頂点が描く図形を座標平面上に図示せよ。
(3)〔M1〕(2)で求めた図形の境界線で囲まれた部分の面積 を求めよ。
(3)〔M3〕(2)で求めた図形の境界線で囲まれた領域のうち の部分を、 軸のまわりに1回転してできる回転体の体積 を求めよ。
【解答】
(1) かつ かつ かつ
(2) のとき 、 のとき
(3)〔M1〕 〔M3〕
(1) 共有点は の解のうち にあるもの。 がこの区間に限られているので「相異なる2解がともに区間内」という解の配置です(型04)。判別式 、両端 、、軸 の4条件。軸だけは等号を付けてはいけません——2解は軸について対称なので、軸が端に一致すると片方が必ず外に出るからです。(2) 頂点 は と逆に解けます。2つの世界が1対1で対応しているので4条件をそのまま代入でき、、、、 に化ける。上の境界は なので含まず破線、下の2本は含んで実線、角は 、端点 、 は除きます。(3) 、。
この問題で使った型
型04(1)は「2解がともに区間内」の解の配置。型11(2)は の条件を の条件へ引っ越しさせた。逆に解けることが根拠。型12実線と破線の描き分け、除外点の明示。
検算のしかた
を40万組取り、 の2根を直接計算して「相異なる2根がともに 以上 以下」を判定し4条件と比べると不一致0件。頂点に写して(2)の4条件と照合しても不一致0件。sympy で 、 を得て、200万分割の数値積分でも と16桁近く一致しました。
5. よくある質問
Q1. 通過領域の問題で、まず何をすればよいですか。
A. 動いている文字をひとつ決めて、それ以外を定数だと思うことです。点をひとつ固定し、その点を通してくれる値が存在するかという1変数の問題に書き換えます。これが逆手流で、この先は判別式・値域・解の配置のどれかに落ちます。
Q2. 判別式を使う型と、値域を使う型はどう見分けますか。
A. パラメータに範囲がついているかどうかで決めます。範囲がなくパラメータが2次なら判別式が最短です。範囲がついていると判別式だけでは足りません。実数解があっても、それが範囲の外にある場合を除けないからです。
Q3. 包絡線は答案に書かないといけませんか。
A. 書く必要はありません。包絡線は存在条件をきちんと処理すれば自動的に出てきます。ただし境界がどの曲線になるかを先に予想できるので、下書きで意識しておくと図示が速くなり、計算ミスにも気づきやすくなります。
Q4. 「すべての」と「いずれかの」で解き方はどう変わりますか。
A. すべての、なら最小値を見て、いずれかの、なら最大値を見ます。通過領域は「いずれかの」の側です。上に凸な関数なら、すべての場合は区間の両端だけで決まり、いずれかの場合は頂点が区間に入るかで場合分けが生じます。
Q5. 型を覚えれば初見の通過領域の問題も解けますか。
A. 型は考えなくて済ませる道具ではなく、考える範囲を狭めるための道具です。過去に何百回も使われてきた型から予想して、思考する量を減らすことで、手際よく解法を思い付いている場合もあります。ただし狭めた先で、場合分けの境目をどこに置くか、境界のどの部分が包絡線でどこが端の図形かは、自分で決める必要があります。
6. 次に読むページ
- 図形と方程式の解法パターン全19型 ―― 親にあたる第1層。単元の概観。
- 2次関数の解法パターン全20型 ―― 解の配置と「すべて」「ある」。
- 集合と論理の解法パターン全12型 ―― 全称と存在の言い換え。
- 面積(数III)の解法パターン全12型 ―― 面積を出す段階で必要。
- 解法パターン事典(全49単元618型の総索引) ―― 単元・型・大学で引ける。
- 大学入試 過去問の全問解説
通過領域で手が止まってしまう人へ
通過領域でつまずく生徒のほとんどは、計算ができないのではなく「点を固定する」という一手を自分で出せないだけです。数強塾では、問題を見た瞬間に「動いている文字はどれか」「固定するのはどれか」を声に出して言わせ、それから式を書かせます。この順番が身につくと、初見の問題でも書き出しで止まらなくなります。オンラインの完全1対1で、プロ講師のみが担当します。
東大では通過領域がいつ出たのか
東大数学の通過領域・存在領域|出題年一覧と逆手流6型 / 東大数学の出題テーマ全一覧(7分野174件・年度と大問番号つき)
数強塾オリジナル演習 追加5題|型03・型09を埋める
上の入試実例では型01・02・04〜08・10〜12 を扱いました。ここでは残る型03(パラメータが1次)を2問、型09(円族の通過領域)を2問で埋め、最後に逆手流の手順そのものを1問で確認します。すべて自作問題で、答えは計算で検算してあります。
型03 パラメータが1次(範囲なし)
を実数全体で動かすとき、直線 が通過する領域を求めよ。
解答・解説を見る
逆手流の手順どおりに進めます。
点 を固定し、「この点を通るような が存在するか」を問う。
について1次なので、係数 が かどうかで分けます。
(i) のとき
がちゃんと計算できるので、どんな でも通過する。
(ii) のとき
式は となる。
・ ならすべての で成立(通過する)
・ なら成立する がない(通過しない)
【答】 の部分全体と、点
言いかえると「直線 から点 を除いた部分」以外の全平面。
(検算: なら 、 なら 、 なら 。どれも を通ります——この直線族は定点 を軸に回転している)
1次の型では、係数が になる場合の処理がすべてです。
型03 パラメータが1次(範囲つき)
の範囲で を動かすとき、直線 が通過する領域を求めよ。
解答・解説を見る
点 を固定して 。 について解いてから、範囲の条件を課します。
(i) のとき
。これが を満たせばよい。
なら各辺に を掛けて、すなわち
なら不等号の向きが変わるので、すなわち
(ii) のとき
なら任意の で成立、 なら不成立。
【答】
では 、 では 、および点
(定点 から出る扇形。 の直線 と の直線 が境界になっています)
(検算:点 は で通る ✓ 点 は が必要で範囲外なので通らない ✓)
範囲つきでも「 を求めてから範囲に入るか見る」だけ。ただし で割るときの符号に注意です。
型09 円族の通過領域(基本)
を実数全体で動かすとき、円 が通過する領域を求めよ。
解答・解説を見る
まず図でイメージすると、半径 の円の中心が 軸上を左右に動きます。通過するのは横に無限に伸びた帯のはず。
式で確かめます。点 を固定して
左辺は2乗なので 以上。したがって実数 が存在する条件は
、すなわち
【答】(境界を含む帯)
(このとき が実際に存在します)
(検算: なら 。点 はその円のてっぺんで、ぎりぎり通る ✓ なら で2乗が負になり不可能 ✓)
「2乗は 以上」だけで解けました。判別式を持ち出すまでもありません。
型09 円族の通過領域(斜めに動く)
を実数全体で動かすとき、円 が通過する領域を求めよ。
解答・解説を見る
中心 は直線 上を動きます。通過するのは、その直線から距離 以内の帯のはず。
式で確かめます。展開して について整理すると
についての2次方程式なので、実数解をもつ条件は判別式が 以上。
これが 以上だから
、すなわち
【答】
(検算:点 を入れると、 が実際に存在 ✓)
【図形的な確認】点 と直線 (すなわち )の距離は 。これが 以下という条件は で完全に一致します。
逆手流の答えが、図形的な直感と合うかを必ず確かめる——この単元でいちばん有効な検算です。
逆手流の手順を守れているか
を実数全体で動かすとき、放物線 が通過する領域を求めよ。
また、この問題で「 を消去する」だけではなぜ足りないかを説明せよ。
解答・解説を見る
点 を固定し、 についての方程式と見ます。
実数 が存在する条件は判別式が 以上。
【答】(放物線 とその下側)
(検算:点 なら で ✓ 点 なら で実数解なし ✓ たしかに で領域外)
【「消去するだけ」では足りない理由】
この問題では が2つ出てくるので単純に消せませんが、仮に消せたとしてもそれだけでは不十分です。
求めたいのは「その点を通るような が実数として存在するか」。消去して得た関係式は「通るなら満たすべき条件」(必要条件)にすぎません。
実数条件(判別式・範囲)まで課して、はじめて必要十分になります。
(境界の は 、つまり がちょうど1つ。この放物線が包絡線——すべての放物線が接する曲線です)
逆手流の4手順
型がいくつあっても、やることは同じです。「動く図形を目で追う」のをやめるのが出発点。
- 点 を固定する ── もう動きません
- についての方程式と読み替える ── は定数、 が未知数
- 実数 が存在する条件を書く ── ここが本体
- その条件を の関係式として図示する
3番目の「存在条件」の書き方が、そのまま型の分類になっています。
| の次数・条件 | 存在条件 | 型 |
|---|---|---|
| 1次(範囲なし) | 係数 、または「係数 かつ定数 」 | 型03 |
| 1次(範囲あり) | 解いた が範囲に入る | 型03・05 |
| 2次(範囲なし) | 判別式 | 型02 |
| 2次(範囲あり) | 解の配置(軸・端点・判別式) | 型04・05 |
| 2乗=式 の形 | 右辺 | 型09 など |
2番目の「読み替え」が最大の関門です。 を見て「 の式」ではなく「 の式」だと切りかえられるかどうか。
検算の3手
- 具体的な を入れる の図形が、求めた領域に収まっているか
- 領域の内外で1点ずつ試す その点を通る が実際に求まるか/求まらないか
- 図形的な意味と照合する 円が動くなら「距離」で説明がつくはず(演習4)
とくに3番目は強力です。式で出した答えが、図の直感とずれていたらどこかが間違っています。
「なぜそうなるのか」へ
通過領域は「存在するか」を式で表す技術です。土台にある考え方を押さえると、12の型が1本につながります。
- なぜ判別式はb²-4acなのか ── 型02。「実数解が存在するか」を式にしたもの。逆手流の心臓部です。
- なぜ反例は1個で命題を否定できるのか ── 「存在する」と「すべてで成り立つ」の違い。型11で決定的に効きます。
- なぜグラフの交点が連立方程式の解になるのか ── 「グラフ=式を満たす点の集まり」。逆手流はこの定義に戻る作業です。
- なぜ定義域があるときは頂点だけ見てはいけないのか ── 型05。パラメータに範囲があるときの場合分けと同じ構造。
- なぜ二次関数の軸はx=-b/(2a)なのか ── 型04(解の配置)で軸の位置を使う根拠。
- なぜ0で割ってはいけないのか ── 型03。係数が の場合を分ける理由。
関連ページ
📝 この型が実際に出た入試問題(16問)
「通過領域と逆手流」の型が実際の入試でどう出たかを、数強塾が全問解説を公開している年度から拾いました。各行の「解説を読む」から、その問題の解説へ直接移動できます。型を読んだあとに実出題で当てると、どこまで通用する判断なのかがはっきりします。
| 大学・年度 | 出題テーマ | 難易度 | 解説 |
|---|---|---|---|
| 青山学院大学 2025年度 | 空間の射影で移った領域の面積 | 難 | 解説を読む |
| 学習院大学 2023年度 | 放物線の通過領域と共通部分の面積 | やや難 | 解説を読む |
| 立教大学 2023年度 | 正三角形の回転で線分が通過する領域の面積 | やや難 | 解説を読む |
| 名古屋大学 2014年度 | 放物線上の 2 点を結ぶ線分の通過領域 | やや難 | 解説を読む |
| 名古屋大学 2014年度 | 放物線上の 2 点を結ぶ線分の通過領域 | やや難 | 解説を読む |
| 昭和大学(数学) 2024年度 | 第3問(図形と計量・通過領域:内接円と円・球の掃過) | — | 解説を読む |
| 横浜国立大学 2019年度 | A2 第4問 通過領域|面積一定の三角形と線分の掃く範囲 | — | 解説を読む |
| 日本大学(数学) 2018年度 | 第3問(楕円と三角形の面積・通過領域) | — | 解説を読む |
| 慶應義塾大学(数学) 2017年度 | 第III問(軌跡・楕円・通過領域) | — | 解説を読む |
| 横浜国立大学 2015年度 | 放物線の通過領域 | — | 解説を読む |
| 順天堂大学(数学) 2015年度 | 第1問(小問集合:放物線の一般式・円錐と水・通過領域・ベクトル) | — | 解説を読む |
| 千葉大学 2012年度 | 線分の通過領域と回転体 | — | 解説を読む |
| 大阪大学 2010年度 | 放物線の通過領域と面積 | — | 解説を読む |
| 神戸大学 2006年度 | 直線の通過領域 | — | 解説を読む |
| 一橋大学 2005年度 | 放物線で囲む面積と通過領域 | — | 解説を読む |
| 慶應義塾大学(数学) 1996年度 | 第III問(軌跡・直線族の通過領域と包絡線) | — | 解説を読む |
難易度は数強塾の見立てです(「—」は難易度を掲載していない年度)。大学別の年度一覧と出題傾向は過去問解説の総索引から、この型の全体像は解法パターン事典のハブから確認できます。
