ベクトルの図形への応用の解法パターン全14型|型の見抜き方と入試実例(信州大・静岡大・神戸大・農工大・横国大・滋賀医大)


ベクトルの図形への応用は、補助線をひらめかなくても図形が解けるようにするための単元です。始点をそろえ、基準になるベクトルを2本(空間なら3本)決めてしまえば、平面上のすべての点はその組み合わせで一意に書けます。あとは「どこにあるか」を係数の話に、「どれだけの長さか・どんな角か」を内積の話に翻訳するだけ。図形の問題が、係数の連立方程式と内積の展開に化けます。逆に言えば、ベクトルで手が止まるときは翻訳の途中に図形の言葉が残っているだけです。このページは、ベクトルによる図形の扱いを14の型に分けて並べた辞典です。型は当てはめるための箱ではなく、いま何を係数に、何を内積に直そうとしているのかを見失わないための道具として並べています。

このページの位置づけ——概観は第1層、深掘りはここ

ベクトルの単元全体は平面ベクトルの解法パターン全13型空間ベクトルの解法パターン全12型で扱っています。あちらが「単元を一望する地図」なら、こちらは「図形への応用だけを掘り下げる坑道」です。平面と空間を分けずに、図形をベクトルで処理するときの型だけを一列に並べ直しました。単元全体の中での位置づけを先に確認したい方は、第1層からご覧ください。

このページの14型

  1. 内積の定義と2つの計算法
  2. 垂直条件・平行条件
  3. なす角
  4. 長さ(2乗して内積に)
  5. 位置ベクトルと分点
  6. 共線条件(係数の和が1)
  7. 共面条件
  8. 重心・内心・外心・垂心のベクトル表示
  9. 垂線の足
  10. 点と直線の距離
  11. 点と平面の距離
  12. 面積・体積のベクトル表示
  13. 「係数の和が1」で交点を出す
  14. ベクトル方程式(直線・円・平面)

1. 背骨——図形の情報は「係数」と「内積」の2種類しかない

ベクトルで図形を扱う問題が、どれも同じ骨格に見えるのには理由があります。図形が持っている情報が、「どこにあるか」と「どれだけか」の2種類しかないからです。前者は位置の情報、後者は計量(長さと角)の情報。そしてベクトルは、この2種類をそれぞれ別の道具で受け取ります。位置は基準ベクトルの係数で、計量は内積で受け取るのです。

ベクトルで図形を解くときの2本の柱

柱1:位置は係数で書く 1次独立な を決めると、平面上のどの点も ただ一通りに書ける(空間なら の3本で )。

柱2:計量は内積で書く 長さは 、角は 、垂直は

そして柱2の値は、たった3つの数で決まる。——この3つさえ押さえれば、 の形をしたベクトルどうしの内積は、すべて機械的に計算できます。

まず柱1から。「ただ一通りに書ける」という部分が、見た目以上に強力です。表し方が一通りしかないからこそ、同じ点を2通りの方法で表して係数を比べるという操作が正当化されます。2直線の交点を求めるとき、私たちは交点を「直線①上の点」として1文字で、「直線②上の点」としてもう1文字で書き、係数を等しいと置きます。あれは計算のテクニックではなく、一意性という事実を使い切っているだけなのです。逆に、基準に選んだベクトルが平行だったり、空間で3本が同じ平面に乗っていたりすると、表し方が一通りに決まらなくなり、係数比較の根拠が消えます。だから答案では「 は1次独立だから」と必ず一言断ります。あれは儀式ではなく、その先の計算を支えている土台です。

次に柱2。なぜ長さをそのまま扱わずに、わざわざ2乗して内積に直すのか。理由ははっきりしています。絶対値 には、展開や分配の規則がないからです。 で書き直そうとしても、三角不等式という不等号しか出てきません。ところが2乗して とした瞬間、内積の分配法則が使えて と、ふつうの多項式とまったく同じ展開ができます。内積は「掛け算のように展開してよい」という性質を持つ唯一の道具であり、長さを2乗するのは、その性質が使える世界へ入るための入場券なのです。

この2本の柱を組み合わせると、ベクトルの図形問題の標準的な流れが自動的に決まります。①始点を1つに決めて基準ベクトルを選ぶ ②基本量 を確保する ③求めたい点を係数で置く ④条件を「係数の等式」か「内積の等式」に翻訳して連立する——この4手です。実際、どんな問題でも、条件は必ずこのどちらかの言葉に化けます。「一直線上にある」「同じ平面上にある」「内分する」は係数の言葉。「垂直」「長さが等しい」「角が 」は内積の言葉。問題文の日本語を読みながら、これは係数の話かそれとも内積の話かと仕分けていく——この仕分けができるようになると、初見の問題でも最初の一手で迷わなくなります。

もうひとつ、意外と意識されていない事実があります。座標というのは、基準ベクトルの選び方の特別な場合にすぎないということです。 軸方向と 軸方向の単位ベクトルは、長さがどちらも1で互いに垂直。つまり という、いちばん都合のよい基本量を持った基準です。だから成分計算では内積が と簡単になります。成分で押し切るのと、文字のままベクトルで進めるのは、同じことを別の基準でやっているだけです。座標が与えられていないのに座標を自分で設定する解き方も、この事実の応用にすぎません。

つまずきは、たいていこの3か所

①1次独立の確認を飛ばす 係数比較をした瞬間に、基準が1次独立であることを使っています。三角形をなすという条件、四面体をなすという条件は、そのまま1次独立の保証です。問題文のどこにそれが書かれているかを探す習慣をつけてください。

②始点がそろっていない  が混ざったまま計算に入ると、必ず途中で迷子になります。最初に始点を1つ決め、すべてを の形にそろえてから動くこと。

③内積の値が勝手に決められないことを忘れる  は自由な文字ではありません。 という制限があり、この不等式を破る値が出たら、その場合は実際には起こりません。静岡大学の問題は、まさにここを詰めさせる出題です。

最後に、型そのものについて一言だけ。ベクトルの問題を見た瞬間に「始点をそろえて、基本量を出して、係数で置く」と手が動く人は、頭の回転が速いわけではありません。過去に何百回も使われてきた「型」から予想して、思考する量を減らすことで、手際よく解法を思い付いている場合もあるのです。型は考えなくて済ませるための道具ではなく、考える範囲を狭めるための道具です。狭めたあとに何を考えるかは、結局その問題ごとに自分で決めることになります。以下の14型も、そのつもりで読んでください。

2. 手順——型を選ぶまでの判断の流れ

1始点を決め、基準ベクトルを選ぶ。条件がいちばん集まっている点を始点にします。三角形 なら 、円がからむなら中心。始点を決めたら、問題文に出てくる点をすべて の形に書き直します。ここで基準が1次独立かどうかも確認します(型05・型13)。

2基本量を確保する。(空間なら も)を、問題文の長さと角から先に数値化しておきます(型01・型03・型04)。値が分からないものは文字で置き、未知数として扱います。ここを飛ばすと、後半で毎回計算し直すことになります。

3求めたい点を、自由度の数だけの文字で置く。直線上なら1文字、平面上なら2文字、空間の任意点なら3文字。「直線 上」と書いてあれば、それは文字を1つしか使わなくてよいという指示です(型06・型07・型13・型14)。

4条件を、係数の等式か内積の等式に翻訳して連立する。「一直線上」「同一平面上」「内分」は係数の言葉(型05〜07)。「垂直」「長さが等しい」「角」は内積の言葉(型02〜04)。文字の個数と方程式の本数が一致していれば、そこで解けます。合わなければ条件を読み落としています。

3. 解法パターン全14型

型01 内積の定義と2つの計算法

01同じ値を、長さと角からも、成分からも出せる

顔つき 「内積を求めよ」。長さと角が与えられている問題、あるいは座標が与えられている問題。

中身 。成分なら (空間は )。どちらも同じ値です。

なぜ効くか この型の値打ちは「2つの式がある」ことではなく、片方から入れて、もう片方から出せることにあります。長さと角しか分からない問題では左の式で内積を作り、そこから先は展開の規則だけで計算を進める。座標が与えられている問題では右の式で内積を作り、そこから角を復元する。内積は、図形の情報を数に変える両替所です。ちなみに は余弦定理そのもの。内積の定義は余弦定理の翻訳だと分かると、覚えるものが1つ減ります。

型02 垂直条件・平行条件

02垂直は等式1本、平行はベクトル1本ぶん

顔つき 「垂直になるようにとる」「 のとき」「平行であることを示せ」。

中身 どちらも零ベクトルでないとして、垂直 、平行 となる実数 が存在する。

なぜ効くか 注目したいのは「1つの条件から何本の式が出るか」です。垂直はスカラーの等式なので1本。未知の文字を1つ消してくれます。平行はベクトルどうしの等式なので、平面なら2本、空間なら3本の式が出ます(ただし という未知数が1つ増えるので、実質は平面で1本、空間で2本の情報)。未知数の個数と、条件から出る式の本数を数える——この習慣がつくと、条件を読み落としているのか解ける状態なのかが、計算を始める前に判断できます。

型03 なす角

03角の条件は、すべて に直して内積へ

顔つき 「なす角を求めよ」「 のとき」「角が最大になるのは」。

中身 。ベクトルのなす角は の範囲で考えます。

なぜ効くか 角を扱うのに ではなく を使うのは、この範囲で が単調に減るからです。 の値が決まれば がただ1つに決まる。 だと鋭角と鈍角の2つが残ってしまい、場合分けが増えます。だから「角が最大」は「 が最小」にそのまま置き換わり、角の最大最小問題が分数式の最小値問題に化けます。角度を求めよと言われても、最後まで角度を求めないで済ませられる——それが内積の効き目です。

型04 長さ(2乗して内積に)

04長さは、必ず2乗してから式にする

顔つき 「 を求めよ」「 の最小値」「 のとき」。

中身  として展開する。 なら

なぜ効くか 絶対値は足し算と相性が悪く、 を分解する等式は存在しません。ところが2乗した途端、ただの多項式の展開になります。しかも展開後に現れるのは基本量だけ。最小値問題なら、2乗した式が文字の2次関数になるので、平方完成でそのまま処理できます(ルートは単調増加なので、2乗の最小と長さの最小は一致します)。「長さが等しい」という条件も、2乗して差を取れば内積の1次式に落ちます(滋賀医科大学の問題がその実例です)。

型05 位置ベクトルと分点

05内分・外分は「係数の和が1」の重みつき平均

顔つき 「辺 に内分する点」「線分 に外分する点」。

中身 線分 に内分する点は 、外分する点は (内分の に替えるだけ)。

なぜ効くか 分点公式を丸暗記している人ほど、 をどちらに掛けるかで迷います。覚えるべきは「遠いほうに小さい重み」ではなく、「係数の和が1になる重みつき平均だ」という構造です。 と書けば係数の和は必ず1。そして係数の和が1であることが、この点が直線 上にあることの正体です(型06)。外分は、この重みの片方を負にしただけ。だから外分点も同じ直線上に居続けます。公式を3つ覚えるのではなく、1つの構造の3つの姿だと見ること——信州大学の問題は、内分2つと外分1つを並べて、まさにこの見方を試しています。

型06 共線条件(係数の和が1)

06一直線上にあることは、3通りの言い方ができる

顔つき 「3点 が一直線上にあることを証明せよ」「直線 上の点」。

中身 ① となる実数 が存在する ② かつ  ③媒介変数表示

なぜ効くか この3つは同じことの言い換えですが、使う場面がはっきり分かれます。証明問題なら①——2本のベクトルを作って実数倍の関係を示すだけで終わります。交点を求める問題なら②——「係数の和が1」という等式が1本、そのまま方程式として使えます。動く点を追うなら③——文字1つで直線上をくまなく動かせます。「和が1」がどこから来るのかも押さえておきたいところ。 と展開すれば、係数の和は 始点 をどこに動かしても式の形が変わらないための条件が、和が1という等式なのです。

型07 共面条件

07共線条件を、そのまま1次元上げる

顔つき 「4点が同一平面上にある」「平面 上の点 」「 が成り立つとき」。

中身 ① と書ける ② かつ

なぜ効くか 共線が「1文字で書ける」なら、共面は「2文字で書ける」。自由度が1つ上がっただけで、構造は完全に同じです。ここで効いてくるのが、空間では基準3本が1次独立だという事実です。1次独立なら成分の比較ができるので、 のような式は3本の連立方程式になります。未知数が の2つなら、式が3本で1本余る——その余りが、問題文に残っている別の文字を決めてくれます。共面条件は、条件であると同時に、未知数を決める装置でもあるのです。

型08 重心・内心・外心・垂心のベクトル表示

08公式で覚えるのは重心だけ。残りは定義を式に直す

顔つき 「重心 」「外接円の中心 」「垂心 」「」。

中身 重心 (四面体なら )。外心は等距離、垂心は直交 など。内心は角の二等分線の性質から辺の長さを重みにした平均。

なぜ効くか 五心の公式をすべて暗記しようとすると破綻します。覚える価値があるのは重心だけ——係数がすべて等しく、和が1という、いちばん素直な形だからです。残りの3つは、公式ではなく「条件を型04・型02・型05に流し込む入口」と考えてください。外心は「長さが等しい」なので型04(2乗して内積へ)。垂心は「垂直」なので型02(内積=0)。内心は角の二等分なので型05(重みつき平均)。この4つの心を別々の知識としてではなく、すでに持っている3つの型の入口として整理し直す——これができると、外心と垂心が同時に出てくる問題でも慌てません。

型09 垂線の足

09直線上で1文字に落とし、垂直条件で決める

顔つき 「 から直線 に下ろした垂線の足」「 と垂直になるように点 をとる」。

中身  と置き、 から

なぜ効くか 自由度と方程式の本数が、きれいに釣り合っているのがこの型の急所です。「直線上にある」で自由度が1に落ち、「垂直」で方程式が1本立つ。だから未知数1つ・式1本で必ず解けます。そして出てきた係数 には意味があります。これが正射影—— の影が 方向にどれだけ伸びるかを表す量です。分母が ではなく なのは、答えがベクトル の実数倍として出るからで、長さだけを知りたいなら になります。この2つの取り違えが典型的な失点です。

型10 点と直線の距離

10垂線の足を出すか、三平方で引き算するか

顔つき 「点 と直線 の距離を求めよ」「三角形の高さ」。

中身 方法①:型09で垂線の足 を出し、 を計算する。方法②: を直線の方向ベクトルとして

なぜ効くか 方法②の正体は三平方の定理です。 を「直線方向の成分」と「直線に垂直な成分」に分けると、この2つは直交するので、長さの2乗が足し算になります。斜辺の2乗から、直線方向の成分の2乗を引けば、残るのが距離の2乗——それだけの話です。方法①より速いのは、垂線の足そのものが答えに要らないとき。「聞かれていないものを求めない」というのが、計算量を減らす最大のコツです。なお を通分すると、分子は型12の面積公式の中身と同じ式になります。距離と面積が同じ量から出てくるのは偶然ではありません。

型11 点と平面の距離

11平面に沿う成分と、平面に垂直な成分に分ける

顔つき 「点 と平面 の距離」「平面とただ1つの共有点をもつ球の半径」「四面体の高さ」。

中身  の両方に垂直)と分解する。 の2本から を決め、

なぜ効くか 「球が平面に接する」「共有点がただ1つ」という条件は、そのままでは扱えません。それを「中心と平面の距離が半径に等しい」に翻訳した瞬間、この型の入口に立てます。そして分解の計算がうまくいく理由は、 と直交していることにあります。 の内積をとると の項が消え、 だけの式が残る——邪魔なものを内積で消すという発想です。同じく も、 との内積をとって整理しただけ。座標も法線ベクトルも使わずに、内積だけで高さが出せるのがこの型の強みです。

型12 面積・体積のベクトル表示

12角を求めずに、内積だけで面積が出る

顔つき 「 の面積を求めよ」「面積の最小値」「四面体の体積」。

中身  として 。四面体は (底面積)(高さ)で、高さは型11。

なぜ効くか もとの面積の式は です。ここで を使い、 を代入して整理すると、上の式になります。つまりこの公式は、角を消すための書き換えそのもの。角が から の範囲では なので、ルートを外すときの符号の心配もありません。「角度が分からないから面積が出せない」という発想が消えるのが、この型の効き目です。しかも中身は基本量だけの多項式なので、面積の最大最小が、そのまま2次関数の問題になります

型13 「係数の和が1」で交点を出す

13同じ点を2通りに表して、係数を比べる

顔つき 「直線 と直線 の交点」「線分 と線分 の交点を とする」「2直線が交わることを示せ」。

中身 交点を、一方の直線上の点として文字 で、他方の直線上の点として文字 で表し、1次独立性から係数を比較して連立する。あるいは「係数の和が1」を2本立てる。

なぜ効くか この型が成立している根拠は、背骨で述べた表し方の一意性です。1次独立な基準で書いた表し方は一通りしかないので、同じ点を表す2つの式は、係数まで一致していなければなりません。だから係数比較が等式として使えます。逆に言えば、1次独立でない基準を使ったら、この操作は一切正当化されません。そして未知数と式の本数を数えると、平面では未知数2つ・式2本、空間では未知数2つ・式3本。空間では式が1本余るので、これが「2直線が本当に交わるか」の判定になります。「交点を求めよ」と「交わることを示せ」が、同じ計算の表と裏になっていると気づくと、証明問題の書き出しで止まらなくなります。

型14 ベクトル方程式(直線・円・平面)

14「生成する式」と「制限する式」の2種類がある

顔つき 「点 の描く図形を求めよ」「 を満たす点全体」「」。

中身 直線 、円 、平面 または

なぜ効くか 図形を式で書く方法は2つあります。①媒介変数で「作り出す」書き方と、②内積で「条件をみたすものだけ残す」書き方です。①は点を動かしたいとき、②は「その図形上にあるかどうか」を判定したいときに向きます。同じ平面が2通りに書けるのは、この違いによるものです。円の場合、 は2乗すると となり、②の仲間だと分かります。さらに を直径とする円が と書けるのは、「直径に対する円周角は直角」を内積の言葉に直しただけです。ベクトル方程式を読むときは、いつもこの対応を探してください。

4. 実際の入試で確かめる

全14型のうち、入試の実例がついているのは11型1マスが1つの型です。青いマスは、下にある入試の実例で確かめている型です金色のマスは、このページの追加演習が埋めている型ですこのページの型は、すべてどちらかで扱っています0102030405060708091011121314解法パターン14型入試の実例で確かめる11型追加演習が埋める3型11 + 3 = 14型。この図は下にある入試の実例が扱う型を数えたものです入試の実例は6問。実例の数と型の数は必ずしも一致しません

この単元の解法パターンは全14型で、下にある入試の実例6問で確かめているのは11型です。このページの追加演習が3型を埋めています。1問が複数の型にまたがることも、同じ型を複数の実例で扱うこともあるため、実例の数と型の数は必ずしも一致しません。

ここからは実際に出題された問題で型を確かめます。問題文は各大学が公表した入試問題を、解説のために引用したものです。解答・解説は数強塾が独自に作成したもので、大学公表の解答ではありません。掲載した数値は当塾で独立に解いたうえで Python(sympy による厳密計算と数値計算)で検算し、さらに別の担当者が別ルートで解き直して照合しています。

信州大学 教育学部 2005年度 ―― 型05・型06。分点と共線のいちばん素直な形

【問題】信州大学 教育学部 2005年度 前期日程「数学①」第2問

座標平面上の三角形 ABC において、辺 BC を に内分する点を P、辺 AC を に内分する点を Q、辺 AB を に外分する点を R とする。頂点 A, B, C の位置ベクトルをそれぞれ とするとき、次の問に答えよ。

(1) ベクトル で表せ。

(2) 3点 P, Q, R が一直線上にあることを証明せよ。

【解答】

(1)

(2) が示せるので、3点は一直線上にある。

(1) 分点公式(型05)をそのまま使います。

P は辺 BC を に内分するので、位置ベクトルは 。よって

Q は辺 AC を に内分するので、位置ベクトルは 。よって

R は辺 AB を に外分するので、位置ベクトルは 。よって

外分は「内分の比の片方を負にする」だけ

の内分が なら、 の外分は 。ここでは なので です。

係数の和はどちらも 和が1のままだから、外分点も直線 AB 上に居続けます(型06)。

(2) 共線を示すには、始点を1つにそろえて2本のベクトルを作り、実数倍の関係を示すのが最短です(型06の①)。ここでは Q を始点にとります。

2式の対応する係数を見比べて、比の当たりをつけます。

3つとも で一致したので、 を実際に計算してみると

となり、 がどんなベクトルであっても

が成り立ちます。 なので は平行であり、しかも共通の点 Q をもつ。よって3点 P, Q, R は一直線上にあります。(証明終)

ついでに なので、P は線分 QR を に内分する位置にあることも分かります。

ここは「係数比較」ではない

いま は平面上の3つのベクトルなので、1次独立ではありません(平面では2本までしか1次独立になれない)。ですから「係数を比べたから等しい」という論法は使えません。

上でやったのは、係数の比から と当たりをつけ、その値で差を実際に計算して零ベクトルになることを確かめるという手順です。差が恒等的に零になることを示している以上、論理は完結しています。係数比較が許されるのは1次独立なときだけという原則は、必ず守ってください。

この問題で使った型

型05(位置ベクトルと分点) 内分2つと外分1つを、同じ重みつき平均の形で書く。

型06(共線条件) 始点をそろえて2本作り、実数倍の関係を示す。

検算のしかた

①係数の和を見る  の係数の和は 点の差をとったベクトルは、位置ベクトルの係数の和が必ず0になります。ここが合わなければ、どこかで計算を間違えています。

②具体的な座標を入れる A(0,0), B(4,1), C(1,5) とすると、 の作る行列式(平面版の外積)が厳密に0になり、 すなわち も再現されます。

静岡大学 2018年度 ―― 型01・型02・型04。内積を未知数として立てる

【問題】静岡大学 2018年度 前期日程 M1冊子 第4問/M2冊子 第2問/M3冊子 第2問

平面上の3つのベクトル を満たしている。ただし は正の数で とする。

(1)  は平行でないことを示せ。

(2)  を用いて表せ。

〔M2冊子は の具体値版:

【解答】

(2)  または (2通りとも実際に起こりえます)

(1) 背理法で示します。 より 。平行だと仮定すると、 となる実数 がとれます(型02)。

長さを比べると  …①

内積を使うと  …②

②より なので 。①に代入して 、すなわち 。両辺を で割ると 、つまり となり、 に矛盾します。よって は平行ではありません。(証明終)

「平行でない」を示す意味

(1) は単なる小手調べではなく、(2) の土台をつくるための設問です。平行でない=1次独立だと分かって初めて、 と置くことが許されます。

誘導つきの問題では、前の設問が次の設問の「置く根拠」になっていることがよくあります。(1) を解いたら、それをどう使うのかを一度考えてから (2) に進んでください。

(2) (1) より は1次独立なので、 と表せます。ここで の値が与えられていないことに注意してください。分からないなら未知数にすればよい——これが要点です。 と置き、未知数を の3つとして式を3本立てます。

④+⑤-③を作ると、 がきれいに消えて

したがって、次の2つの場合に分かれます。

[1] のとき  を③に入れると なので

このとき④から 。この値が実際にとれるかどうかを確かめます。相加平均と相乗平均の関係から なので等号は付きません)なので

を破っていないので、この配置は実在します。よって

[2] のとき ④より すなわち 、⑤より すなわち 。③も で成り立ちます。よって

(M2冊子の では または となります。)

この問題で使った型

型01・型04(内積と長さ)  自身との内積として書き直し、既知の に流し込む。

型02(平行条件) 平行を と書いて背理法へ。

内積を未知数にする 与えられていない基本量は文字で置き、方程式の本数を増やして解く。

検算のしかた

①解が2組しかないことを確認する ③④⑤を の3元連立として sympy の solve にかけると、解はちょうど の2組だけでした。

②実在するかを数値で確かめる  として と置き、 を20万分割で走査したところ、条件を満たす配置での の2値しか現れませんでした。式の上で解が出ても、その図形が実際に描けるかは別問題です。

神戸大学 2005年度 ―― 型09・型02。垂線の足を2段重ねると垂心が出る

【問題】神戸大学 2005年度 前期日程 文科系 第1問

三角形 において、辺 、辺 の長さをそれぞれ とする。また、角 は直角でないとする。2つのベクトル の内積を とおく。次の問に答えよ。

(1) 直線 上に点 を、 と垂直になるようにとる。 を用いて表せ。

(2)  とする。直線 上に点 を、 と垂直になるようにとる。 とおくとき、 をそれぞれ で表せ。

【解答】

(1)  (2)

(1) これは垂線の足そのものです(型09)。C は直線 OA 上なので、文字1つで置けます。

と垂直だから、内積が0(型02)。

よって

係数が の形になっているのが見どころです。これが正射影の係数で、型09で述べたとおり分母は ではなく です。

(2)  なので 。(1) より です。

H は直線 BC 上なので、やはり文字1つ(型06の③)。

したがって なので

次に、 と垂直だから

①を②に代入して整理します。

割る前に、分母が0でないことを確認する

で割ってよいのでしょうか。三角形 OAB をなすので は平行ではなく、内積の不等式は等号なしで成り立ちます。

したがって 、すなわち 「文字で割ってよいか」は、たいてい問題文のどこかに根拠が書かれています。ここでは「三角形」という一語がそれです。

よって

①に戻すと なので

(このとき かつ は角 AOB が直角の場合で、問題文で除かれています。)

なお、この H は三角形 OAB の垂心です。BC は OA への垂線、AH は OB への垂線なので、2本の垂線の交点になっているからです。

この問題で使った型

型09(垂線の足) 直線上を1文字で置き、内積=0で文字を決める。(1)(2) ともこの型。

型02(垂直条件) 垂直1つにつき方程式が1本。未知数 が1つなので、式1本でちょうど解けます。

型08(垂心) 垂線を2本引いた交点が垂心。公式ではなく、垂直条件を2回使っただけです。

検算のしかた

①特別な値を入れて図形で確かめる  を代入すると 、つまり H=B です。このとき本当に条件が成り立つでしょうか。 で、確かに を満たしています。文字を含む答えは、簡単な値を入れて図形の意味を確かめるのが最良の検算です。

②座標にして数値で確かめる  と置けば を同時に満たします。当塾では の4通りで、H が直線 BC 上にあることと を数値確認しました。

東京農工大学 2016年度 ―― 型05・型02・型07・型13・型12。空間で型を一気に並べる

この問題は 空間図形の計量 のページでも扱っています。同じ問題でも、そちらは単元全体の中での位置づけ、ここではこのテーマに絞った読み方をしています。二つを見比べると、同じ問題文から引き出せるものが1つではないことが分かります。

【問題】東京農工大学 2016年度 前期日程 数学(Z) 第1問

O を原点とする座標空間に4点 をとる。また、線分 AB を に外分する点を P、線分 OB を に外分する点を Q とおく。ただし は正の実数とする。

(1) ベクトル の成分を を用いて表せ。ただし答えのみでよい。

(2)  が垂直であるとき、 の値を求めよ。

(3) 実数 について が成り立つとする。このとき、 の値を求めよ。

(4)  が (3) で求めた値のとき、直線 DP と直線 CQ の交点の座標を求めよ。

(5)  の面積を とする。 の最小値を求めよ。また、そのときの の値を求めよ。

【解答】

(1)  (2)  (3)

(4)  (5) のとき最小値

(1) 外分公式(型05)に を入れます。

分母が になるので符号が反転し、きれいな形になります。成分を入れて

(2) 。垂直なら内積が0(型02)。

(3) まず Q を求めます。O は原点なので位置ベクトルは 。線分 OB を に外分する点は

D を始点にそろえます。

は共面条件(型07)で、成分ごとに比べると3本の式が立ちます。

未知数は の3つ、式は3本。ここでは の式を辺々加えるのが速いです。

これを の式に入れて 、すなわち を満たします)。さらに の式に代入して

なぜ まで決まるのか

を求めよ」ならふつうは式が2本あれば足ります。ところが空間の成分比較では式が3本立つので、1本余ります。その余りが、問題文に残っていた を決めてくれるのです。

言い換えると、この設問は「4点 D, C, Q, P が同じ平面上に乗るような を求めよ」と言っているのと同じこと。共面条件は、条件であると同時に未知数を決める装置でもあるという型07の話が、そのまま出題になっています。

(4)  のとき P。交点を2通りに表します(型13)。

成分から より 成分から より 成分も両辺 で一致します。

成分で一致を確認する作業を省かないこと。空間では式が3本、未知数が2つなので、1本は「本当に交わるか」の検証に使われます(型13)。ここが合わなければ2直線はねじれの位置にあります。

(5) 面積は角を求めずに出します(型12)。 より

ルートの中を平方完成します。

を満たすので、そこで最小。

この問題で使った型

型05 外分点の位置ベクトル((1))。型02 垂直は内積0((2))。

型07 共面条件から3本の式((3))。型13 交点を2通りに表す((4))。

型12 面積を内積だけで書き、2次関数の最小値に帰着((5))。

5つの小問で5つの型を通す構成になっています。総合問題は、こうして型の並びとして読むと迷いません。

検算のしかた

①代入して戻す (3) で得た に入れると 。確かに のときの と一致します。

②面積を別ルートで出す 外積を使うと で、その大きさの半分が面積。 となり、内積で作った式と厳密に一致しました。外積は高校の範囲外ですが、検算には使えます。

③最小値の が定義域に入っているか  という条件があるので、平方完成で出た がこれを満たすことの確認は必須です。

横浜国立大学 2015年度 ―― 型08・型04・型09・型12。外心を始点にとる

【問題】横浜国立大学 2015年度 前期日程 文系 第3問(=理系 第2問)

を中心とする半径1の円に内接する三角形 があり、

をみたしている。この円上に点 があり、線分 と線分 は直交している。

(1) 内積 をそれぞれ求めよ。

(2) 線分 と線分 の交点を とするとき、 を求めよ。

(3) 四角形 の面積を求めよ。

【解答】

(1)  (2)  (3)

(1) 中心 O を始点にとっているので これがこの問題の最大の武器です(型08:外心=3頂点から等距離)。

与えられた関係式で を右辺に移し、両辺の長さを2乗します(型04)。

次に長さです。

「移項して2乗する」が定石になる理由

をそのまま2乗すると、3種類の内積がすべて出てきて1本の式では決まりません。知りたい内積だけを残すには、余計なベクトルを片側へ寄せてから2乗するのです。

を右辺に送れば、左辺には しか現れず、右辺は長さが1なので数になります。2乗は、目的の内積を1つだけ取り出す道具だと考えてください。

(2) H は線分 AB 上なので、係数の和が1の形で1文字に落とします(型06)。

このとき です。また関係式から なので

CP と AB が直交するので (型09の垂線の足そのものです)。 を使って計算すると

(3) 四角形 APBC の対角線は AB と CP で、条件よりこの2本は直交します。交点 H は円の内部にあるので四角形は凸。したがって

(面積) です。AB は (1) で出ているので、あとは CP。

まず CH を求めます。 を代入すると、係数がどちらも になります。

残りの HP は、H が円の内部にあることから方べきの定理で出せます。

なので

よって

(面積)

この問題で使った型

型08(外心) 中心を始点にとれば、3つの長さがすべて1になる。

型04(長さは2乗) 関係式を移項して2乗し、目的の内積だけを取り出す。

型09(垂線の足) 線分上を1文字で置き、内積=0で内分比を決める。

型12(面積) 対角線が直交する四角形は (対角線)(対角線)。ベクトルだけで押し切らず、図形の性質(方べきの定理)を併用したほうが速い場面もあります。

検算のしかた

①条件を満たす座標を1組つくる  とすれば と長さ1を同時に満たします。ここから を作ると、確かに 条件を満たす具体例が本当に作れるかを確かめるのが、最初の検算です。

②別の公式で面積を出す この座標で H、P が厳密に求まり、 も再現されます。4頂点の座標から靴ひも公式で面積を計算すると となり、対角線を使った値と完全に一致しました。面積は必ず2通りで出すこと。

滋賀医科大学 2019年度 ―― 型13・型08・型04・型11。四面体の全部が1本の筋でつながる

この問題は 空間図形の計量 のページでも扱っています。同じ問題でも、そちらは単元全体の中での位置づけ、ここではこのテーマに絞った読み方をしています。二つを見比べると、同じ問題文から引き出せるものが1つではないことが分かります。

【問題】滋賀医科大学 2019年度 前期日程 第3問

四面体 OABC において、 の重心を G、 の重心を H とする。

(1) 直線 OG と直線 CH は交わることを示せ。

以下では、直線 OG と直線 CH の交点を I として、 とする。

(2)  を用いて表せ。

(3)  を示せ。

(4)  のとき、I を中心として、平面 OAB とただ一つの共有点を持つような球の半径を求めよ。

【解答】

(2)  (4)

以下 と置きます。四面体なので は1次独立——この一言が、以下すべての係数比較の根拠です。

(1) 重心の公式(型08)から

直線 OG 上の点は 、直線 CH 上の点は

この2つが一致するとして、1次独立性から係数を比較します(型13)。

の係数について の係数について

よって かつ 、すなわち 。この値のとき両直線は実際に同じ点を共有し、しかも解が一意なので2直線は一致せず、確かに1点で交わります。(証明終)

(2) (1) の を代入するだけです。

係数がすべて で和が1——四面体 OABC の重心の位置です。

(3) ここが本題です。 は「長さが等しい」なので、2乗して内積の言葉に翻訳します(型04・型08)。

なので、 から

展開して整理すると 、すなわち

同じ計算を B, C についても行うと

この3本を使って、辺の長さを比べます。

ここに②③を入れると 。これは①の右辺そのものなので

まったく同様に 。長さは正なので

が言えました。(証明終)向かい合う辺の長さが等しいこのような四面体を等面四面体といい、4つの面がすべて合同な三角形になります。

「長さが等しい」は、そのままでは使えない

を絶対値のまま書いても、次の一手が出ません。2乗して初めて展開でき、基本量(長さの2乗と内積)だけの1次式に化けます。

そして①②③を見てください。左辺は長さの2乗、右辺は内積の和。この形になった瞬間、辺の長さの計算がすべて足し引きだけで済むようになります。型04で述べた「長さは2乗する」の効き目が、いちばん鮮やかに出る場面です。

(4) 「球が平面 OAB とただ1つの共有点をもつ」を翻訳します。共有点が1つ=接する=中心 I と平面 OAB の距離が半径に等しい。ここで型11の入口に立ちます。

まず基本量を確定させます。 を①②③に入れ、 と置くと

次に を、平面 OAB に沿う成分と垂直な成分に分けます。

両辺と の内積をとると の項が消えて

これを解いて 。垂直成分の長さは、 との内積をとって

最後に のうち、平面 OAB に垂直な成分は には含まれないので だけ。求める半径は

(参考:このとき外接球の半径は です。)

この問題で使った型

型13(交点) 同じ点を2通りに表し、1次独立性から係数比較((1))。空間なので式が3本立ち、解が一意に決まることが「交わる」の証明になります。

型08(重心・外心) 重心は公式、 は外心の定義そのもの。

型04(長さは2乗) 等距離条件を内積の関係式①②③に翻訳((3))。

型11(点と平面の距離)  を平面成分と法線成分に分け、内積だけで高さを出す((4))。

検算のしかた

①その四面体が本当に存在するか  から作られるグラム行列(内積を並べた行列)の行列式は 、主小行列も となり、この基本量をもつ四面体は実在します。内積の値を勝手に決めると、対応する図形が存在しないことがあります。

②座標に落として全部確かめる  と構成すると、上の基本量をすべて満たします。この座標で 、平面 OAB( の平面)までの距離が となり、ベクトル分解で出した値と一致しました。 も実測で確認しています。座標を自分で設定して検算する——背骨の「座標も基準の選び方の一種」という見方の実用です。

5. よくある質問

Q1. ベクトルの問題で、どこを始点にとればよいか迷います。

A. 条件がいちばん多く集まっている点を始点にしてください。三角形なら1つの頂点、円がからむなら中心が有力です。始点をそろえた瞬間に、すべてのベクトルが2本(空間なら3本)の基準ベクトルの組み合わせで書けるようになります。

Q2. 長さを求めるのに、なぜ必ず2乗するのですか。

A. 絶対値のままでは展開も分配もできないからです。2乗して内積に直すと、ふつうの多項式とまったく同じように展開でき、長さの2乗と内積という決まった量だけの式になります。ルートは最後に一度だけ外してください。

Q3. 係数を比べてよいのは、どういうときですか。

A. 基準にした2本、空間なら3本のベクトルが1次独立なときだけです。平行なベクトルを基準にすると表し方が一通りに決まらず、係数を比べる根拠がなくなります。答案では1次独立であることを一言断ってから比較してください。

Q4. 成分で計算するのと、ベクトルのまま計算するのは、どちらがよいですか。

A. 与えられているものが座標なら成分、長さと角なら文字のまま進めるのが速いです。座標は互いに垂直で長さ1の基準を選んだ特別な場合にすぎないので、どちらも同じことをしています。途中で座標を自分で設定して切り替えるのも有効です。

Q5. 型を覚えれば初見のベクトル問題も解けますか。

A. 型は考えなくて済ませる道具ではなく、考える範囲を狭めるための道具です。過去に何百回も使われてきた型から予想して、思考する量を減らすことで、手際よく解法を思い付いている場合もあるのです。狭めたあとに何を考えるかは、その問題ごとに自分で決めることになります。

6. 次に読むページ

つまずきをほどくミニ対話:直線上の点はなぜ係数の和が1?ベクトル方程式を移動で読む

直線AB上の点は、Aを出発してAB方向へ実数倍だけ移動した点です。その式を整理すると、AとBの位置ベクトルに掛ける係数の和が1になります。「1にする決まり」を先に置いたのではなく、出発点と移動を表した結果です。

ハル: p=sa+tbでs+t=1という条件が出てくる。どうして0でも2でもなく1なの?

先生: 異なる点A、Bの位置ベクトルをa、bとしよう。AからB方向へ進むなら、p=a+t(b−a)と表せる。t=0ならA、t=1ならBだね。

アオイ: 展開するとp=(1−t)a+tb。係数を足せば1−t+t=1。

ハル: 初めにaの場所へ立ってから移動するので、aが一つ分ある。その一つが残るんだね。

30秒セルフチェック

答えだけでなく、どの条件を使ったかまで一問で確認します。

問い: (1,2)+(1/2)(4,2) の結果は?

答え: (3,3)。理由:t=1/2は中点。

方向ベクトルb−aは、A≠Bだからゼロではありません。もしA=Bなら、p=a+t0で点Aしか動かず、直線を表せません。二点で直線が決まるという言い方には、二点が異なる条件が含まれています。

※ハル、アオイ、先生は理解を助けるための架空の登場人物です。

ベクトルで手が止まってしまう人へ

ベクトルが苦手な生徒の答案を見ていると、計算ができないのではなく「いまの条件は係数の話なのか、内積の話なのか」を仕分けないまま式をいじっていることがほとんどです。数強塾では、式を書く前に「始点はどこか」「基準は何本か」「この条件は係数か内積か」を口に出させ、そのうえで手を動かさせます。この3つを毎回やるだけで、ベクトルは図形分野でいちばん安定する単元に変わります。オンラインの完全1対1で、プロ講師のみが担当します。

数強塾オリジナル演習 追加5題|型03・10・12・14を埋める

上の入試実例では型01・02・04〜09・11〜13 を扱いました。ここでは実例が手薄な型03(なす角)・型10(点と直線の距離)・型14(ベクトル方程式)を中心に、公式の出どころが問われやすい型12を加えて5問埋めます。すべて自作問題で、答えは別解で検算してあります。

型03 なす角(立方体の対角線)
1辺の長さが1の立方体において、ある面の対角線と、それと交わらない(ねじれの位置にもない)向かい合う面の対角線ではなく、立方体の2本の対角線のなす角を とする。 の値を求めよ。ただし とする。

解答・解説を見る

座標を置くのが最短です。立方体の頂点を から までにとります。
対角線の1本は 、もう1本は
方向ベクトルは

内積

大きさ

【答】

【なぜ座標を置いてよいのか】なす角は位置ではなく向きだけで決まります。立方体をどこに置いても答えは同じ。だったらいちばん計算しやすい場所に置くのが得です。
【符号に注意】向きの取り方によっては内積が になり、 が出ます。2直線のなす角は 以下と約束するので、負が出たら絶対値を取ります。ベクトルのなす角()とは約束が違うので、問題文の言葉を必ず見てください。

型10 点と直線の距離(垂線の足を出す)
座標平面上の直線 と表されている。点 から に下ろした垂線の足 の座標と、点と直線の距離 を求めよ。

解答・解説を見る

手順は2行で固定です。①足を で表す ② が方向ベクトルと垂直、として を出す。
直線上の点は

垂直条件は内積 (型02)。方向ベクトル との内積は

。よって
【答】
【公式でも検算する】この直線を方程式に直すと を代入して ✓、方向 と法線 の内積が ✓)。

【どちらで解くか】足の座標まで聞かれたらベクトル、距離だけなら公式。空間では公式が使えないので、ベクトルの手順を本体だと思っておくほうがつぶしが利きます。

型14 ベクトル方程式(円)
座標平面上の2点を とする。点 を満たすとき、 はどのような図形を描くか。方程式で答えよ。

解答・解説を見る

まず意味を読む。 ですから、条件は
(またはどちらかが
——つまり半円の弧に対する円周角です。求める図形はABを直径とする円
成分で確かめます。 とすると



【答】中心 、半径 の円
(検算:中心はABの中点 ✓。半径は ✓)
【ベクトル方程式は3つ覚えれば足りる】(中心 の円)、(ABが直径の円)、(ABの垂直二等分線)。どれも「内積か長さに読み替える」だけです。

型12 面積のベクトル表示
座標平面上に がある。三角形 OAB の面積 を、内積を使った公式で求めよ。また、成分による公式でも確かめよ。

解答・解説を見る

公式は1本です。



【答】
成分の公式でも確かめます。

【この公式の出どころ】 に変え、 を入れただけ。覚える式ではなく、導ける式です。
【空間でも使える】成分の公式 は平面専用ですが、内積の公式は空間でもそのまま通用します。空間の三角形の面積を聞かれたら、こちらの出番です。

型14 平面のベクトル方程式を x, y, z の式に直す
空間内の平面が と表されている。この平面を の方程式で表せ。

解答・解説を見る

法線ベクトルを求めるのが定石です。法線 は、平面に含まれる2つの方向ベクトルのどちらとも垂直


よって 。いちばん簡単な を取ります。
通る点 を使って

【答】
(検算: → 和3 ✓、 → 和3 ✓、 → 和3 ✓)
【法線が「長さ自由」な理由】 でも同じ平面が出ます(式が2倍になるだけ)。向きさえ合っていればよいので、いちばん整数が小さいものを選びます。
【逆向きもできる】 から媒介変数表示に戻すには、平面上の点を3つ見つけて1つを始点、残り2つへのベクトルを にします。この行き来ができると、型07(共面条件)も型11(点と平面の距離)も同じ道具で処理できます。

14の型は「内積に落とす」か「係数に落とす」か

この単元でやっていることは、結局この2つに分かれます。

落とし先 使う式 該当する型
内積(長さ・角度) 型01・02・03・04・09・10・11・12
係数(位置関係) 型05・06・07・08・13・14

問題文が「長さ」「角度」「垂直」を言っていたら内積、「〜上にある」「内分」「交点」を言っていたら係数。この振り分けができれば、14の型は2本の道に整理できます。

座標を置いてよい場面

演習1でやったように、図形の形だけが問題で、置き場所が自由なら座標を置くほうが速いことが多い。次の場合は積極的に置いてください。

  1. 直角がたくさんある(立方体・直方体・正方形)
  2. 問われているのが角度や長さの比だけ
  3. 始点をどこに取ってもよい

逆に、内分点の係数そのものを答えさせる問題では、座標にすると情報が消えてしまいます。ベクトルのまま扱うほうが安全です。

検算の型

ベクトルの答えは、別の道でもう一度出すのが最も確実な検算です。

  • 距離 → 公式と垂線の足の両方で(演習2)
  • 面積 → 内積の公式と成分の公式の両方で(演習4)
  • 方程式 → 媒介変数に具体的な数を入れて代入(演習5)

とくに最後の「代入して確かめる」は10秒で終わって、符号ミスをほぼ確実に捕まえます

「なぜそうなるのか」へ

ベクトルの型は、内積の意味と座標の考え方を押さえると一気に減ります。

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大学受験数学|ベクトルと図形

図形を基底ベクトルで読み解く4つの独自演習

三角形の交点、重心座標、一直線上の条件、面積比を、二つの独立なベクトルの係数比較へ翻訳する練習です。図の見た目に頼らず、比と係数を往復して確かめます。

大学受験のベクトルと図形でつまずきやすい、内分点・直線の交点・共線条件・行列式による面積比を、数強塾オリジナル問題で段階的に確認できます。

図は左右にスクロールして全体を確認できます。

三角形の二直線と交点を表す図三角形OABで辺OA上のP、辺AB上のQ、直線OQとBPの交点Rを示し、係数比較で交点を求める構造を表した図。 OABPQR
三角形OABで辺OA上のP、辺AB上のQ、直線OQとBPの交点Rを示し、係数比較で交点を求める構造を表した図。

問1|二本の線分の交点を係数で決める

難度:標準確認点:内分点と係数比較

三角形OABで、ベクトルOA=a、OB=bとし、a、bは平行でない。辺OA上にOP:PA=2:1となる点P、辺AB上にAQ:QB=1:2となる点Qを取る。直線OQと線分BPの交点をRとするとき、ベクトルORをa、bで表し、BR:RPを求めよ。

問1「二本の線分の交点を係数で決める」の解答・詳しい考え方を開く

答え:OR=(1/2)a+(1/4)b、BR:RP=3:1

  1. 内分点の公式から、OP=(2/3)a、OQ=(2a+b)/3です。
  2. Rは直線OQ上なので、OR=t(2a+b)/3と置けます。
  3. Rは線分BP上でもあるので、OR=b+s((2/3)a-b)と置き、a、bの係数を比べると2t/3=2s/3、t/3=1-sです。
  4. 第1式からt=s、第2式へ代入してt=3/4です。したがってOR=(1/2)a+(1/4)bです。
  5. BPをBからs=3/4だけ進んだ点がRなので、BR:RP=s:(1-s)=3:1です。

誤りやすい点:Qの内分比AQ:QB=1:2からOQを(a+2b)/3としてしまう誤りが多いです。QはAに近いため、Aの係数が2/3になることを図でも確認します。

問2|重心座標から三つの面積比を読む

難度:標準確認点:面積比と重心座標

三角形ABCの内部の点Pが、位置ベクトルを用いてp=(a+2b+3c)/6と表されている。三角形PBC、PCA、PABの面積比を求めよ。

問2「重心座標から三つの面積比を読む」の解答・詳しい考え方を開く

答え:[PBC]:[PCA]:[PAB]=1:2:3

  1. 係数1/6、2/6、3/6の和が1なので、PはA、B、Cの重み付き平均です。
  2. 辺BCを底辺と見ると、PのBCからの高さはAの高さの1/6です。よって[PBC]/[ABC]=1/6です。
  3. 同様に、辺CAに対するBの重みが2/6なので[PCA]/[ABC]=2/6、辺ABに対するCの重みが3/6なので[PAB]/[ABC]=3/6です。
  4. 三つを共通分母6で比べると、[PBC]:[PCA]:[PAB]=1:2:3です。

誤りやすい点:各係数を点の順序と逆に対応させないようにします。aの係数はAを頂点とするPBCの面積割合です。

問3|共線条件で線分比を求める

難度:標準確認点:一直線上の係数条件

平行でないベクトルa、bに対し、点P、QをOP=2a-b、OQ=-a+3bで定める。線分PQ上の点Rが、点Oを通り方向ベクトルa+bをもつ直線上にもあるとき、PR:RQとベクトルORを求めよ。

問3「共線条件で線分比を求める」の解答・詳しい考え方を開く

答え:PR:RQ=3:4、OR=(5/7)(a+b)

  1. Rが線分PQ上にあるので、OR=(1-t)OP+tOQ(0≦t≦1)と置きます。
  2. 展開するとOR=(2-3t)a+(-1+4t)bです。
  3. RがOとa+bの終点を結ぶ直線上にあるため、aとbの係数が等しくなります。よって2-3t=-1+4tです。
  4. 7t=3からt=3/7です。したがってPR:RQ=t:(1-t)=3:4です。
  5. 係数へ戻すと2-9/7=5/7、-1+12/7=5/7なので、OR=(5/7)(a+b)です。

誤りやすい点:tをPR/PQとして置いた場合、PR:RQはt:(1-t)です。逆に書かないよう、t=0でP、t=1でQになることを確認します。

問4|係数行列で面積倍率を出す

難度:発展確認点:行列式と面積比

平行でないベクトルa、bを辺とする三角形OABの面積が6である。OP=a+2b、OQ=3a+bで定まる三角形OPQの面積を求めよ。

問4「係数行列で面積倍率を出す」の解答・詳しい考え方を開く

答え:30

  1. a、bを基底とすると、OPの係数は(1,2)、OQの係数は(3,1)です。
  2. 二本のベクトルが作る平行四辺形の面積倍率は、係数の行列式の絶対値|1×1-2×3|=5です。
  3. 三角形でも基底と新しい二辺の両方に同じ1/2が掛かるため、面積倍率はそのまま5です。
  4. したがって[OPQ]=5[OAB]=5×6=30です。

誤りやすい点:行列式の符号が-5でも、面積は負になりません。向きを表す符号を外すため絶対値を取ります。


📝 この型が実際に出た入試問題(98問のうち24問を掲載)

「ベクトルの図形への応用」の型が実際の入試でどう出たかを、数強塾が全問解説を公開している年度から拾いました。各行の「解説を読む」から、その問題の解説へ直接移動できます。型を読んだあとに実出題で当てると、どこまで通用する判断なのかがはっきりします。

大学・年度 出題テーマ 難易度 解説
法政大学 2025年度 〔Ⅰ〕【マーク】平面ベクトル——内分点・交点・面積・外接円 やや難 解説を読む
法政大学 2025年度 〔Ⅱ〕【マーク】平面ベクトルと三角形の外心 やや難 解説を読む
立命館大学 2025年度 五角形とベクトル——座標を置いて押し切る やや難 解説を読む
関西大学 2025年度 〔Ⅰ〕【記述式】円に内接する長方形とベクトル 標準 解説を読む
関西大学 2025年度 〔Ⅲ〕【記述式】正三角形の条件と、放物線・直線が囲む面積 やや難 解説を読む
関西学院大学 2025年度 三角形とベクトル・内積の最小【記述式】 標準 解説を読む
関西学院大学 2025年度 対数関数の最大最小/平面ベクトルと円 やや難 解説を読む
青山学院大学 2025年度 平行四辺形のベクトルと内積・交点までの長さ 標準 解説を読む
青山学院大学 2025年度 内積で表す垂心と3点が同一直線上の条件 解説を読む
青山学院大学 2025年度 直線に関する対称点と交点・三角形の面積 やや難 解説を読む
学習院大学 2024年度 ひし形の辺上の2点と三角形の面積 解説を読む
学習院大学 2024年度 平行四辺形のベクトルと交点比・内接円 やや難 解説を読む
明治大学 2024年度 〔Ⅰ〕小問集合(解と係数・三角関数・ベクトル・数列・領域の面積) やや難 解説を読む
大阪大学 2015年度 文系第3問 円と三角形の面積の最大・ベクトル表示 やや難 解説を読む
一橋大学 2014年度 円周上の点を移す操作 やや難 解説を読む
一橋大学 2013年度 面積の最大値 標準 解説を読む
一橋大学 2009年度 正三角形の折り返しと三角格子 解説を読む
京都大学 2007年度 内分点の三角形の外心が円の中心と一致 やや難 解説を読む
京都大学 2002年度 理系 円に内接する三角形と3辺の2乗の和 やや難 解説を読む
京都大学 2000年度 円に内接する四角形と方べきの定理でベクトルを表す 標準 解説を読む
京都大学 2000年度 円に内接する四角形と方べきの定理でベクトルを表す 標準 解説を読む
東邦大学(数学) 2024年度 問9(ベクトルの大きさの条件) 解説を読む
立教大学 2024年度 Ⅲ 三角形と内接する円、接点のベクトル 解説を読む
久留米大学(数学) 2023年度 第1問(ベクトル:大きさの条件と内積の範囲) 解説を読む

難易度は数強塾の見立てです(「—」は難易度を掲載していない年度)。大学別の年度一覧と出題傾向は過去問解説の総索引から、この型の全体像は解法パターン事典のハブから確認できます。

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