三角関数の入試問題は、最初の一手がほぼ決まっています。「角を統一する→次数を見る→1次なら合成か単位円、2次なら因数分解か置き換え」という流れです。この記事では、実際に大学入試で出題された5問——方程式・不等式、解の個数、2直線のなす角、置き換えの最大最小、図形との融合——を、この判断の流れごと解説します。
※ 本ページの問題は、各大学の入試で実際に出題された問題を、学習・解説のために引用したものです。解答・解説はオンライン数学専門塾「数強塾」が独自に作成したものであり、大学が公表した公式解答ではありません。
この記事で扱う5問
- 問1(南山大学):三角方程式・不等式 —— 角の統一と因数分解
- 問2(南山大学):三角方程式の解の個数 —— の対応の個数を数える
- 問3(群馬大学):2直線のなす角の最大 —— の減法定理
- 問4(東京都立大学(旧首都大学東京)):1次の和を とおく最大・最小
- 問5(県立広島大学):円に内接する図形との融合 —— 和積・合成で1つの波にまとめる
1.三角方程式・不等式(南山大学)
【問題】(南山大学・出題)
とする。
(1) 方程式 を解け。
(2) 不等式 を解け。
【答え】
(1) (2)
(1) 右辺を展開すると角がそろう
【なぜこうするか】左辺は 、右辺は の式で、角がそろっていません。右辺を展開すると と が現れ、全体が の1次式に統一できます。1次まで落ちれば、あとは単位円で解くだけです。
よって方程式は 、すなわち
の範囲でこれを解くと 、つまり
(2) 3倍角で統一して因数分解
【なぜこうするか】 と が混在しているので、3倍角の公式 で に統一します。統一後は の3次式——2次以上になったら因数分解が次の一手です。
では だから、不等式は
( なので の側は不適。)よって
【定石】三角方程式・不等式の手順は「①角の統一(2倍角・3倍角・加法定理)→②次数の確認→③1次なら単位円、2次以上なら因数分解や置き換え→④最後は必ず単位円で範囲を確認」。この4ステップはどの問題でも同じです。
【よくあるミス】(2)で両辺を で割るとき、符号の確認を飛ばすミス。今回は範囲から が保証されているので割れますが、範囲が広い問題では場合分けが必要になります。「割る前に符号」は不等式の鉄則です。
2.三角方程式の解の個数(南山大学)
【問題】(南山大学・出題)
以下の問いに答えよ。
(1) 関数 ()の最小値を求めよ。
(2) 方程式 が の範囲に異なる4個の実数解をもつような定数 の値の範囲を求めよ。
【答え】
(1) 最小値 ( のとき) (2)
(1) 2倍角でcosθに統一し、tの2次関数へ
より
とおくと、 より で
上に凸なので、最小は軸 から遠い端 でとり、。このとき より 。最小値 。
(2) tの解の個数ではなく、θの解の個数を数える
【なぜこうするか】この型の急所は、 1個に対応する の個数が の値によって違うことです。 では、 の には が2個、 には1個ずつ対応します。だから「 が4個」⟺「 の範囲に の解が2個」です。グラフ ()と水平線 の交点で数えます。
の値の動き:、頂点 、。 が から まで増えると は から へ増加、 から までは から へ減少します。
水平線 との交点が「開区間 に2個」あるのは、増加側の枝(値域 から )と減少側の枝(値域 から )の両方と交わるときで
このとき は 個。境界を確認すると、 は の1個( 2個)、 は ( 1個)と ( 2個)で3個となり、いずれも4個になりません。よって 。
【定石】三角方程式の解の個数は「 の個数×対応する の個数」の2段階で数える。端の値()だけ対応が1個になることを、単位円を描いて毎回確認してください。
3.2直線のなす角の最大(群馬大学)
【問題】(群馬大学・出題)
直線 上の点 から放物線 にひいた2接線の接点を とし、 とする。次の問いに答えよ。
(1) の 座標を ()とするとき、 を の関数として表せ。
(2) の最大値を求め、このときの点 の座標を求めよ。
【答え】
(1) (2) の最大値 ( のとき)
(1) 接点を解にもつ2次方程式から、傾きの和と積を取り出す
【なぜこうするか】2直線のなす角は、傾きを と見て減法定理 で処理します。2本の接線の傾きを個別に求めると根号が出て煩雑ですが、接点の 座標が満たす2次方程式から解と係数の関係で「傾きの和と積」だけ取り出せば、根号は最後の1回で済みます。
。 上の点 における接線は 。これが を通る条件は
この2解 が接点の 座標で、、。接線の傾きは なので
は2本の接線のなす角 で、減法定理より
または
、。ここで具体的に の配置を調べると、 から見た2接点 への方向は上向きと左下向きになり、 は鈍角です。実際、 は負の値をとり
(2) 1/t の2次式に直して根号の中を最小化する
【なぜこうするか】 は鈍角()で、この範囲では は増加関数です。つまり が最大(0にいちばん近い)とき も最大。 なので、根号の中 を最小にすればよく、 とおけばただの2次関数です。
最小値は ()のとき 。よって の最大値は で、 より
【定石】2直線のなす角は の減法定理+解と係数の関係。得られた式が分数関数なら、 の置き換えや相加相乗平均で処理する。 の符号から が鋭角か鈍角かを判断してから大小を論じることが、この問題の核心です。
4.1次の和をtとおく最大・最小(東京都立大学(旧首都大学東京))
【問題】(東京都立大学(旧首都大学東京)・出題)
を をみたす実数として、 とする。 とおく。
(1) を の式で表せ。
(2) の最大値と最小値、およびそのときの の値を求めよ。
【答え】
(1) (2) 最大値 ()、最小値 ()
(1) tを2乗すると2θの項が現れる
【なぜこうするか】 の1次の和 を2乗すると、 という2次の項(= の項)がまとめて生まれます。「1次の和を とおくと、2次の部分は で書ける」——この対応が、1次と2次が混在する式の定石です。
を使うと
また 。よって
(2) tの範囲は合成で求める
合成すると 。 のとき は一周ぶん動くので
は下に凸、軸 は範囲内です。
最小値: のとき 。 より 、すなわち 。
最大値:軸から遠い端 のとき 。 より 、すなわち 。
検算:(もう一方の端)では で、確かに より大きく、 より小さい値です。端と頂点の3点を比べる基本を守れば取り違えません。
【定石】「 の2次的な項+ の1次の和」の形は、1次の和を とおく。 の範囲は必ず合成で確定させる( を書き忘れると最大値の候補を失います)。置き換えたら範囲——2次関数・指数対数でも共通の鉄則です。
5.円に内接する正三角形と動点 ―— PA+PB+PC の最大(県立広島大学)
【問題】(県立広島大学・出題)
一辺の長さが の正三角形 と、その外接円 がある。弧 上の点 は、()を満たすように動く。次の問いに答えよ。
(1) 線分 の長さを を用いて表せ。
(2) の最大値を求めよ。
【答え】
(1) (2) 最大値 ( のとき)
(1) 外接円の半径と、円周角に対する正弦定理
【なぜこうするか】弦 に対する円周角が です。同じ円の中では、弦の長さ=(円周角)(正弦定理そのもの)なので、外接円の半径 さえ求めれば、どの弦も円周角で書けます。
正三角形 の外接円の半径は、正弦定理より
よって、三角形 に正弦定理を使って( の対角が )
(2) 3本の弦をすべてθで表し、1つの波にまとめる
同様に、弦 に対する円周角は なので
弦 に対する円周角は 。 が弧 上にあるとき (円周角 は弧 に対するもので と等しい)だから
3つを足します。加法定理で展開すると
よって
より 。この範囲で は 、すなわち のとき最大値 をとります。よって
最大値 ( のとき。 は弧 の中点)
検算: のとき 、。和は で一致。なお という関係(トレミーの定理からも導けます)が常に成り立っていることも確認できます。
【定石】円周上の動点の問題は「弦=(円周角)」で全部の長さを1つの角 に統一し、合成で1つの波 にまとめる。最後は の範囲を合成後の角の範囲に翻訳してから最大値を読みます(範囲が一周未満のときは最大値が にならないこともあります)。
6.この記事で扱った「型」のまとめ
この記事で扱った型は、方程式・不等式、解の個数、なす角、1次の和の置き換え、円と動点の5個です。それぞれの要点は下の一覧にまとめてあります。この記事で扱った入試問題から取り出したもので、単元のすべての型ではありません。
三角関数・5つの型
- 方程式・不等式:角の統一→次数の確認→1次は単位円・2次以上は因数分解。
- 解の個数: の解の個数と、 1個に対応する の個数の2段階で数える。
- なす角:傾き= とみて減法定理。和と積は解と係数の関係で取り出す。
- 1次の和の置き換え: の2乗が2次の項を生む。範囲は合成で。
- 円と動点:弦=(円周角)で統一し、合成して1つの波にする。
7.よくある質問
Q1.公式(2倍角・3倍角・合成)は全部暗記が必要ですか?
加法定理さえ確実なら、2倍角・3倍角・合成はその場で導けます。ただし試験中に毎回導くのは時間の無駄なので、「導けることを一度確認したうえで、よく使う形は覚えてしまう」のが現実的です。導いた経験があると、符号のど忘れにも自力で対処できます。
Q2.角の統一は、大きい角と小さい角のどちらにそろえますか?
原則は小さい角()です。 は倍角・3倍角の公式で に下ろせますが、逆は一般にできないからです。例外的に、この記事の問4のように の置き換えを経由して の項を で吸収する型もあります。
Q3.合成の位相(+α の角)をよく間違えます。
の合成は、点 を図示して と偏角 を読むのが確実です。公式の丸暗記より、「 の係数が 座標、 の係数が 座標」という図を毎回描くことをおすすめします。
Q4.解の個数の問題で、グラフを描かずに解けますか?
おすすめしません。 の2次関数のグラフと水平線 の図を描き、枝ごとの値域と端点での対応個数を書き込むのが、結局いちばん速くて確実です。境界の値(本問の )で個数がどう変わるかも、図があれば読み取れます。
8.関連ページ
- 数学II・B・C 要点辞典(三角関数の章から順に読めます)
- 数学IIの単元別教材一覧(解説・演習)
- 三角関数(基本)の特訓道場
- 加法定理と和積・積和の特訓道場
- 高1の夏休み課題|三角比を本質から理解する
- 入試数学の定石|中学生から読める全27章
- 解法テクニック一覧
単元別「入試頻出問題」シリーズ(実際の入試問題×独自解説)
三角関数は「最初の一手」の練習がすべてです
角の統一・次数の確認・置き換えと範囲——この判断を自分で下せるようになるには、答案を見てもらいながらの反復が近道です。数強塾のプロ講師が完全1対1で、判断の根拠から言葉にして指導します。
要点辞典この単元の公式・定石・つまずきやすい所は 数学II・B・Cの要点辞典:三角関数 にまとめてあります。
