正弦定理と余弦定理は、直角とは限らない三角形の辺と角を結びます。与えられた情報を図に書き、向かい合う辺と角の対応から使う定理を選びましょう。
記号と前提をそろえる
三角形 ABCで、角 A, B, Cの向かいにある辺の長さを、それぞれ a, b, cとします。
| 角 | 向かい合う辺 | 対応 |
|---|---|---|
| A | BC=a | A↔a |
| B | CA=b | B↔b |
| C | AB=c | C↔c |
三角形の内角なので、A+B+C=180°です。また、すべての辺の長さは正で、任意の二辺の和は残りの一辺より大きくなります。
3辺が作る範囲、辺と対角の大小、最大辺による種類の判定は、三角形の成立条件の例題10問で整理できます。
公式では数学I「三角比」を使います。sin・cosの値や鈍角の符号が不安なら、先に確認してください。
正弦定理
三角形 ABCの外接円の半径を Rとすると、正弦定理は次のように表されます。
どの三角形でも成り立ちます。辺とその対角を必ず同じ分数に置きます。a/sin Bのように対応を入れ替えてはいけません。
正弦定理を使いやすい条件
- 一組の「辺とその対角」が分かり、別の辺または角を求めるとき
- 一辺とその対角から、外接円の半径 Rを求めるとき
- 二角と一辺が分かっているとき
例題1:二角と一辺から別の辺を求める
A=45°、B=60°、a=√2のとき、bを求めます。
b=a sin B/sin A
=√2・(√3/2)/(√2/2)=√3
答え:b=√3
例題2:外接円の半径を求める
a=8、A=30°のとき、外接円の半径 Rを求めます。
8/(1/2)=2R
16=2R
答え:R=8
正弦定理が成り立つ理由
三角形の面積を Sとします。二辺とその間の角による面積公式から、
S=(1/2)ca sin B
です。二式を等しいとおき、正の数(1/2)cで割ると、b sin A=a sin Bです。したがって、
を得ます。同様に三組の比が等しいと分かります。また、外接円で辺 aを弦として見ると、弦の長さは a=2R sin Aとなるため、a/sin A=2Rです。
二つの三角形ができる場合
二辺と、そのうち一辺の対角が分かる場合(SSA)では、sin Bの値から角 Bを求めるときに注意が必要です。0°<B<180°では、sin B=sin(180°-B)なので、鋭角と鈍角の二候補が生じることがあります。
例題3:解が二つあるSSA
a=7、b=10、A=30°のとき、三角形の個数を調べます。
=10・(1/2)/7=5/7
sin B=5/7を満たす角は、約45.6°と約134.4°です。どちらも A=30°との和が180°未満なので、残りの角 Cは正になります。
答え:条件を満たす三角形は2個あります。
余弦定理
余弦定理は、三辺と一つの角を結びます。
b2=c2+a2-2ca cos B
c2=a2+b2-2ab cos C
求めたい辺の二乗を左辺に置き、その対角のcosを右辺に置きます。A=90°ならcos A=0なので、a2=b2+c2となり、三平方の定理を含んでいることが分かります。
余弦定理を使いやすい条件
- 二辺とその間の角から、残りの一辺を求めるとき
- 三辺から、一つの角を求めるとき
- 最大辺の対角が鋭角・直角・鈍角のどれか判定するとき
例題4:二辺とその間の角から一辺を求める
b=3、c=5、A=60°のとき、aを求めます。
=9+25-30・(1/2)=19
辺の長さは正なので、a=√19です。-√19は採用しません。
例題5:三辺から角を求める
a=7、b=5、c=8のとき、角 Aを求めます。
=(25+64-49)/(2・5・8)=40/80=1/2
0°<A<180°でcos A=1/2なので、A=60°です。
余弦定理が成り立つ理由
辺 cを x軸上に置き、Aを原点、Bを(c, 0)、Cを(b cos A, b sin A)とします。二点間の距離から、
です。展開してsin2 A+cos2 A=1を使うと、
を得ます。この説明は Aが鋭角・直角・鈍角のいずれでも、座標による三角比の定義を使えば同じ式になります。
辺の長さから角の種類を判定する
aを三辺のうち最大の辺とします。最大角 Aについて、余弦定理を変形すると、
です。分母2bcは正なので、分子の符号で角の種類が分かります。
| 辺の関係 | cos A | 最大角 A | 三角形 |
|---|---|---|---|
| a2<b2+c2 | 正 | 鋭角 | 鋭角三角形 |
| a2=b2+c2 | 0 | 直角 | 直角三角形 |
| a2>b2+c2 | 負 | 鈍角 | 鈍角三角形 |
例題6:三辺から三角形を分類する
三辺が5, 6, 8の三角形では、最大辺は8です。
52+62=61
64>61
答え:最大角は鈍角なので、鈍角三角形です。
三角比を使う面積公式
二辺 b, cとその間の角 Aが分かるとき、三角形の面積 Sは、
です。辺 bを斜辺とみたときの高さが b sin Aになるため、「底辺×高さ÷2」から得られます。同様に、S=(1/2)ca sin B=(1/2)ab sin Cです。
例題7:二辺とその間の角から面積を求める
b=8、c=5、A=30°の三角形の面積を求めます。
=20・(1/2)=10
答え:面積は10です。
正弦定理と余弦定理の使い分け
| 与えられた情報 | 第一候補 | 理由 |
|---|---|---|
| 二角と一辺 | 正弦定理 | 対角と対辺の組を作れる |
| 二辺と、その一辺の対角 | 正弦定理 | SSA。ただし解の個数を吟味する |
| 二辺とその間の角 | 余弦定理 | 残りの辺を直接求められる |
| 三辺 | 余弦定理 | 角のcosを求められる |
| 一辺とその対角、外接円 | 正弦定理 | a/sin A=2R |
| 二辺とその間の角、面積 | 面積公式 | S=(1/2)bc sin A |
一つの定理だけで終わらない問題もあります。余弦定理で一辺を求め、その後に正弦定理で別の角を求めるなど、得られた情報を次の式へつなぎます。
よくある誤り
- 辺と対角を取り違える:aの向かいは必ず Aです。図に対応を書き込みます。
- 正弦定理を対角の組なしで使う:既知の「辺とその対角」が一組もなければ、比の基準を作れません。
- 余弦定理の角を間違える:-2bc cos Aの Aは、辺 bと cの間の角です。
- 長さで負の平方根を採用する:辺の長さは正なので、二乗から長さを求めるときは正の値を取ります。
- SSAで鈍角候補を調べない:sinが同じ鋭角と鈍角を両方検討し、内角和で吟味します。
- 最大辺を確認せず三角形を分類する:最大角だけを調べれば全体を分類できるので、まず最大辺を選びます。
- 面積公式で間の角以外を使う:掛ける二辺に挟まれた角のsinを使います。
- 近似値を早く丸める:根号や分数は最後まで厳密に保ち、必要な場合だけ最後に丸めます。
確認問題
- 三角形 ABCで、辺 CA=bの向かいにある角を答えてください。
- A=30°、B=45°、a=6のとき、bを求めてください。
- A=30°、C=120°、a=4のとき、cを求めてください。
- a=5、A=30°のとき、外接円の半径 Rを求めてください。
- b=4、c=7、A=60°のとき、aを求めてください。
- 三辺が a=5、b=4、c=3のとき、角 Aを求めてください。
- 三辺が4, 5, 6の三角形を、鋭角・直角・鈍角のいずれかに分類してください。
- b=6、c=10、A=30°のとき、面積を求めてください。
- a=4、b=6、A=30°を満たす三角形はいくつありますか。
- a=3、b=8、A=30°を満たす三角形はいくつありますか。
確認問題の解答
- 角 Bです。
- b=6 sin 45°/sin 30°=6・(√2/2)/(1/2)より、6√2です。
- c=4 sin 120°/sin 30°=4・(√3/2)/(1/2)より、4√3です。
- 5/(1/2)=2Rより、R=5です。
- a2=42+72-2・4・7・(1/2)=37より、a=√37です。
- cos A=(42+32-52)/(2・4・3)=0より、A=90°です。
- 最大辺6について、62=36<42+52=41なので、鋭角三角形です。
- S=(1/2)・6・10・(1/2)より、15です。
- sin B=6・(1/2)/4=3/4です。鋭角と鈍角の候補がどちらも30°との和を180°未満にするため、2個です。
- sin B=8・(1/2)/3=4/3>1となり、そのような角はありません。したがって、0個です。
まとめ
- 正弦定理は、対角と対辺を a/sin Aの形で対応させます。
- 余弦定理は、二辺とその間の角、または三辺が分かるときに使います。
- SSAではsinの鋭角・鈍角の二候補を調べ、内角和で解の個数を吟味します。
- 最大辺の二乗と残り二辺の二乗和を比べると、三角形を分類できます。
- 面積は、二辺とその間の角から S=(1/2)bc sin Aで求められます。
よくある質問
正弦定理と余弦定理のどちらを使うか、最初に何を見ればよいですか。
既知の「辺とその対角」の組があるか確認します。あれば正弦定理を検討します。二辺とその間の角、または三辺が分かっていれば余弦定理が第一候補です。
正弦定理で角が二つ出るのはなぜですか。
0°から180°では、sin θ=sin(180°-θ)だからです。鋭角と鈍角を候補にし、他の角との和が180°未満か確かめます。
余弦定理と三平方の定理は別のものですか。
余弦定理は三平方の定理を一般の三角形へ拡張したものです。間の角が90°ならcos 90°=0となり、三平方の定理と同じ式になります。
学習範囲の根拠
本記事は、文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編」の数学I「図形と計量」に示された、正弦定理・余弦定理と三角形の面積、図形の計量への活用を基準にしています。
前後の単元
SSAは、三角形が0個・1個・2個のどれにもなる——余弦定理1本で数える
上の「二つの三角形ができる場合」で、\(a=7,\ b=10,\ A=30^\circ\) の例を挙げ、答えが2個になることを示しました。あわせて「sinの計算結果が1を超えれば、三角形は存在しません」とも書いています。
ただ、SSA(二辺と、そのうち一辺の対角)で起きることはこれで全部ではありません。三角形の個数は 0個・1個・2個 のどれにもなり、上の例題はそのうち1つの場合しか見ていないのです。とくに「鈍角の候補が消えて1個になる」場合は入試で最も多く出ますが、上には出てきません。
そして、この4通りを覚え直す必要はありません。すでに書いてある余弦定理を、\(c\) についての2次方程式とみるだけで、個数がそのまま出ます。ここに自作の類題を4問置きます。実際の入試問題ではありません。
道具は1つです。\(a^2=b^2+c^2-2bc\cos A\) を \(c\) の2次方程式 \(c^2-(2b\cos A)c+(b^2-a^2)=0\) とみて、正の解が何個あるかを数える。正の解の個数が、そのまま三角形の個数です。以下すべて \(b=10\)、\(A=30^\circ\) で、\(a\) だけを変えます。
共通の準備
\(b=10\)、\(A=30^\circ\) なので \(\cos A=\dfrac{\sqrt3}{2}\)、\(2b\cos A=10\sqrt3\)。方程式は
\(c^2-10\sqrt3\,c+(100-a^2)=0\)
判別式は \(D=(10\sqrt3)^2-4(100-a^2)=300-400+4a^2=4a^2-100\)。
なお \(b\sin A=10\times\dfrac12=5\) で、これが後で境目になります。
類題1(\(a=4\):三角形は0個)
問題 \(b=10\)、\(A=30^\circ\)、\(a=4\) のとき、三角形は何個できますか。
解答
\(D=4\times16-100=64-100=-36 \lt 0\)。実数解がないので、0個。
正弦定理で見ると
\(\sin B=\dfrac{b\sin A}{a}=\dfrac{5}{4}=1.25>1\)。上の記事にある「sinが1を超えれば存在しない」と同じ結論です。
\(a=4\) は \(b\sin A=5\) より小さい数です。\(b\sin A\) は、頂点Cから辺ABへ下ろした垂線の長さ——つまりCから直線ABまでの最短距離にあたります。\(a\) がその距離より短ければ、点Bはどこにも取れません。
類題2(\(a=5\):ちょうど1個)
問題 同じ条件で \(a=5\) のとき、三角形は何個できますか。どんな三角形ですか。
解答
\(D=4\times25-100=0\)。重解なので 1個。このとき \(c=\dfrac{10\sqrt3}{2}=5\sqrt3\)。
\(\sin B=\dfrac{5}{5}=1\) より \(B=90^\circ\)。直角三角形です。
検算:\(a=5\)、\(c=5\sqrt3\)、\(b=10\) で \(5^2+(5\sqrt3)^2=25+75=100=10^2\)。三平方の定理が成り立っています。
\(a=b\sin A\) のとき、ちょうど垂線の長さと一致します。点Bが1か所にしか取れない——それが重解の意味です。判別式が0になる場面が、図では「ぴったり垂線」に対応しているのは、見ておく価値があります。余弦定理と三平方の関係はなぜ余弦定理は三平方の定理の一般化なのかで説明しています。
類題3(\(a=6\):2個)
問題 同じ条件で \(a=6\) のとき、三角形は何個できますか。それぞれの \(c\) を求めなさい。
解答
\(D=4\times36-100=144-100=44>0\)。2つの実数解があります。
\(c=\dfrac{10\sqrt3\pm\sqrt{44}}{2}=5\sqrt3\pm\sqrt{11}\)
\(5\sqrt3\approx8.66\)、\(\sqrt{11}\approx3.32\) なので \(c\approx11.98\) と \(c\approx5.34\)。どちらも正なので、三角形は 2個。
正弦定理で見ると
\(\sin B=\dfrac{5}{6}\approx0.833\)。\(B\approx56.4^\circ\) と \(B\approx123.6^\circ\) の2つが候補で、\(30^\circ\) を足してもどちらも \(180^\circ\) 未満(\(86.4^\circ\)、\(153.6^\circ\))。両方とも三角形になります。
ここが上の例題3と同じ形です。2次方程式の2つの解が、鋭角の \(B\) と鈍角の \(B\) にそれぞれ対応しています。\(c\) の大きいほう(約11.98)が \(B\) の鋭角、小さいほう(約5.34)が鈍角に対応します。
「解が2つある」を、角の候補が2つあると考えても、\(c\) が2つあると考えても同じこと——後者のほうが、次の類題4で強みが出ます。
類題4(\(a=12\):1個。ここが入試で最も多い)
問題 同じ条件で \(a=12\) のとき、三角形は何個できますか。
解答(2次方程式で)
\(D=4\times144-100=576-100=476>0\) なので、実数解は2つあります。ところが
\(c=\dfrac{10\sqrt3\pm\sqrt{476}}{2}=5\sqrt3\pm\sqrt{119}\)
\(\sqrt{119}\approx10.91\) なので \(c\approx19.57\) と \(c\approx-2.25\)。負の解は辺の長さになりません。よって 1個。
正弦定理で見ると
\(\sin B=\dfrac{5}{12}\approx0.417\)。\(B\approx24.6^\circ\) と \(B\approx155.4^\circ\) が候補ですが、後者は \(30^\circ+155.4^\circ=185.4^\circ>180^\circ\) となり三角形になりません。よって1個。
| 2次方程式で見ると | 正弦定理で見ると | |
|---|---|---|
| 0個になる理由 | 判別式が負 | \(\sin B>1\) |
| 1個(\(a=5\)) | 重解 | \(\sin B=1\) |
| 2個 | 正の解が2つ | 角の候補が2つとも成立 |
| 1個(\(a=12\)) | 片方が負 | 鈍角の候補が \(180^\circ\) を超える |
2次方程式で見ると、4つの場合が「判別式」と「解の符号」だけで区別できます。正弦定理で見る場合は、\(\sin B\) の大きさに加えて「\(A+B\) が \(180^\circ\) 未満か」を毎回確かめる必要があり、この確認を忘れるのが最も多い失点です。
\(a \ge b\)(ここでは \(12 \ge 10\))のときは必ず1個になります。理由は簡単で、\(b^2-a^2 \le 0\) なら2次方程式の定数項が0以下になり、2解の積が0以下——つまり正の解は多くても1つだからです。
まとめ:\(a\) の大きさで4通りに分かれる
\(b=10\)、\(A=30^\circ\) なので、境目は \(b\sin A=5\) と \(b=10\) の2つです。
| \(a\) の範囲 | この記事の例 | 三角形の個数 | 2次方程式では |
|---|---|---|---|
| \(a \lt b\sin A\)(\(a\lt5\)) | \(a=4\) | 0個 | 判別式が負 |
| \(a = b\sin A\)(\(a=5\)) | \(a=5\) | 1個(直角) | 重解 |
| \(b\sin A \lt a \lt b\)(\(5\lt a\lt10\)) | \(a=6\) | 2個 | 正の解が2つ |
| \(a \ge b\)(\(a\ge10\)) | \(a=12\) | 1個 | 定数項が0以下 |
右端の列を見てください。4つとも、2次方程式の言葉だけで言い切れています。左端の不等式を覚えなくても、方程式を立てて解けば同じ結論に着きます。
どちらで解いてもよいのですが、試験中は2次方程式のほうが安全だと考えています。理由は、「\(A+B\lt180^\circ\) か」という別立ての確認が要らないことです。負の解を捨てるのは、辺の長さだから当然の作業で、忘れようがありません。
いっぽう正弦定理のルートは、\(\sin B\) を出したあとに「もう1つの角も候補だ」と思い出し、さらに「和が180°未満か」を確かめる——思い出す作業が2回あります。上の記事で「電卓が最初に返す鋭角だけでなく」と注意したのは、その1回目のことでした。
この4問の使い方
- 4問とも、2次方程式と正弦定理の両方で解いてください。同じ答えに着くことを確かめるのが目的です。
- 類題4を、正弦定理だけで解いてみてください。\(B\approx155.4^\circ\) を捨て忘れると2個と答えてしまいます。捨て忘れる感覚を一度味わっておくと、本番で思い出せます。
- \(a\) を \(3, 5, 7, 9, 10, 15\) と変えて、個数だけ答えてください。境目の \(5\) と \(10\) をまたぐたびに個数が変わります(順に 0, 1, 2, 2, 1, 1 です)。
正弦定理・余弦定理の使い分けを型として整理したものは図形と計量の解法パターン全14型|正弦定理・余弦定理の使い分けと入試実例(千葉大・金沢大・山口大・奈良女子大・一橋大)にあります。定理そのものの意味はなぜ正弦定理に外接円の直径が現れるのかとなぜ余弦定理は三平方の定理の一般化なのかをどうぞ。
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