- 正多角形の内角と、二等辺三角形の底角を求める
- 角の和が180°になることから平行線を見抜く
- 両組の対辺が平行であることから平行四辺形を示す
- 相似な三角形の頂点を正しく対応させる
- 長さを文字で置き、二次方程式の解を図形の条件で吟味する
正五角形の対角線問題は、角度、二等辺三角形、平行線、平行四辺形、相似、二次方程式が一本につながる良問です。答えだけでなく、「次にどの図形を見るのか」を一段ずつ説明します。
問題
一辺の長さが1 cmの正五角形ABCDEがあります。対角線ADとCEの交点をPとするとき、次の値を求めます。
- ∠CDE
- ∠CDA
- 線分APの長さ
- 対角線ADの長さ

最初に整理する「分かっていること」
| 条件 | 数式・意味 | 使い道 |
|---|---|---|
| 正五角形 | AB=BC=CD=DE=EA=1 | 二等辺三角形を作る |
| 内角 | 5個とも等しい | まず108°を求める |
| Pの位置 | PはAD上かつCE上 | APとAD、CPとCEは同じ直線上 |
| 求める長さ | AD=xと置く | AP=1ならPD=x-1 |
PがAD上にあるので、A・P・Dは一直線上です。したがって∠PADは0°であり、角度計算に使う角ではありません。「Pを含む角の記号」を機械的に作らず、角の頂点と2本の辺を必ず確認します。
(1) ∠CDE=108°
n角形の内角の和は、1つの頂点から対角線を引いて n-2個の三角形に分けることで、
となります。五角形では、
です。正五角形の5個の内角は等しいため、
検算:外角からも求められる
正五角形の外角は360°÷5=72°です。内角と外角の和は180°なので、180°-72°=108°となり一致します。
(2) ∠CDA=72°
△AEDに注目します。正五角形の辺なのでAE=ED=1です。したがって△AEDは、Eを頂角とする二等辺三角形です。
頂角∠AEDは正五角形の内角で108°です。二つの底角は等しいため、
Dの内角∠CDEは、∠CDAと∠ADEに分かれています。
(3) AP=1 cmを示す準備
APを直接計算する前に、四角形ABCPが平行四辺形であることを示します。そのためには、AB∥CPとBC∥APの2組を証明します。
BC∥APを示す
PはAD上なので、APとADは同じ直線です。(2)より∠CDA=72°です。また、正五角形の内角∠BCD=108°です。
直線CDを横切る同側内角の和が180°なので、AD∥BCです。APはADの一部ですから、AP∥BCです。
AB∥CPを示す
△CDEではCD=DE=1で、頂角∠CDE=108°です。したがって底角は、
Eの内角∠AED=108°は、∠AECと∠CEDに分かれます。よって、
∠BAE=108°なので、直線AEを横切る同側内角の和は108°+72°=180°です。したがってAB∥CEです。CPはCEの一部ですから、AB∥CPです。
(3) 四角形ABCPは平行四辺形
四角形ABCPでは、
- AB∥CP
- BC∥AP
と、両組の対辺がそれぞれ平行です。したがって四角形ABCPは平行四辺形です。平行四辺形の向かい合う辺は等しいので、
別確認:△PCDも二等辺三角形
∠PDC=72°、∠PCD=36°なので、∠CPD=180°-72°-36°=72°です。
∠PDC=∠CPDより、その向かい側の辺が等しく、PC=CD=1 cmです。これは平行四辺形から得られるCP=AB=1 cmと一致します。
(4) 対角線ADを二次方程式で求める
AD=x cmと置きます。(3)でAP=1 cmと分かったため、A・P・Dの順に並ぶことから、
です。長さPDは正なので、この時点で x>1と分かります。
相似な三角形を見つける
まず、△ABCはAB=BCの二等辺三角形で、頂角∠ABC=108°です。したがって∠BAC=∠BCA=36°です。Aの内角では∠BAD=108°-∠DAE=72°なので、∠CAD=72°-36°=36°です。また、Cの内角では∠ACD=108°-∠BCA=72°です。
この結果を用いて、△ACDと△CPDを比べます。頂点順を含めて対応を確認します。
| △ACD | △CPD | 理由 |
|---|---|---|
| ∠CAD=36° | ∠PCD=36° | 二等辺三角形と内角の分割 |
| ∠ACD=72° | ∠CPD=72° | 三角形の内角の和 |
| ∠ADC=72° | ∠PDC=72° | A・P・Dが一直線 |
よって、頂点の対応は A↔C、C↔P、D↔Dで、
です。相似の表記順をそろえると、ADに対応する辺はCD、CDに対応する辺はPDです。したがって、
AD=x、CD=1、PD=x-1を代入します。
解の公式より、
(1-√5)/2は負であり、さらに最初に確認した x>1にも反します。したがって採用できる解は、
です。小数では約1.618 cmです。この値を黄金比といい、一辺を1とする正五角形の対角線の長さに現れます。
相似の対応を間違えない確認法
| 確認 | この問題での答え |
|---|---|
| 最小の角どうし | ∠CAD=∠PCD=36° |
| 同じ直線でできる角 | ∠ADC=∠PDC=72° |
| 残る角どうし | ∠ACD=∠CPD=72° |
| 対応する辺 | AD↔CD、CD↔PD、AC↔CP |
72°の角が各三角形に二つあるため、図だけでは対応を取り違えやすい問題です。36°の頂点を最初に固定し、次に一直線上の角を対応させます。
答えの独立検算
φ=(1+√5)/2と置くと、二次方程式 φ2-φ-1=0より、
が成り立ちます。AD=φ、PD=φ-1ですから、
となり、相似から作った比例式 AD:CD=CD:PDを満たします。また、φ-1=1/φ≈0.618なので、AP=1、PD≈0.618、AD≈1.618という線分の足し算にも一致します。
一辺が1 cmでない場合
一辺を a cmとすると、同じ角度・平行関係が保たれるため、AP=aです。AD=xと置けばPD=x-aで、相似比から、
となります。正の解は、
です。形が同じなら、すべての長さが同じ倍率で変わることも確認できます。
よくある誤り
| 誤り | 直し方 |
|---|---|
| 図で36°に見えるから使う | 等辺と頂角108°から底角を計算する |
| ∠PADを36°とする | A・P・Dは一直線なので∠PAD=0°と確認する |
| 錯角だけを見て平行と言う | どの2直線を、どの横切る直線で比べるか書く |
| 相似な三角形の頂点順を無視する | 36°の頂点から対応を固定する |
| PD=x+1とする | A-P-Dの順なのでAD=AP+PDと書く |
| 二次方程式の2解を両方答える | 長さは正、かつAD>AP=1を使って吟味する |
答案にまとめるときの最短形
- 正五角形の内角より∠CDE=108°。
- AE=EDより∠ADE=36°、したがって∠CDA=72°。
- 角の和からAD∥BC、CE∥AB。よって四角形ABCPは平行四辺形でAP=BC=1。
- AD=xと置くとPD=x-1。△ACD∽△CPDより x:1=1:(x-1)。
- x2-x-1=0を解き、x>1よりAD=(1+√5)/2 cm。
確認問題
- 正五角形の外角1個の大きさを求めてください。
- △AEDの三つの角を答えてください。
- 四角形ABCPが平行四辺形になるために示した2組の平行線を答えてください。
- AD=xのとき、PDを xで表してください。
- 一辺が4 cmなら、対角線の長さを求めてください。
確認問題の解答
- 360°÷5=72°です。
- ∠AED=108°、∠EAD=∠ADE=36°です。
- AB∥CP、BC∥APです。
- AP=1、A-P-Dより、PD=x-1です。
- 2(1+√5) cmです。4×(1+√5)/2を計算します。
よくある質問
黄金比を先に暗記して使ってもよいですか。
検算には使えますが、この問題の中心は黄金比を導く過程です。角度、平行四辺形、相似から二次方程式を作れるようにすると、数値や図の向きが変わった問題にも対応できます。
この問題は図形ですか、二次方程式ですか。
主題は相似を中心とする図形問題ですが、最後の長さを決めるために二次方程式を使う単元横断問題です。図形条件から式を作り、方程式の解を図形条件で吟味する練習になります。
72°が多く、相似の対応が分かりません。
最初に一つしかない36°の頂点を対応させます。△ACDのAと△CPDのCです。その後、A・P・Dが一直線であることからDどうしを対応させれば、残るCとPも自動的に決まります。
学習範囲の根拠
本記事は、中学校数学で扱う多角形の角、平行線、平行四辺形、相似、二次方程式を組み合わせたサイト独自の再構成問題です。教材画像や紙面は転載していません。
関連する単元
平行線と角、三角形と四角形の性質で、平行四辺形まで復習します。
数学A「図形の性質」では、チェバ・メネラウス、円、作図、空間図形へ広げます。
黄金比は「長さ」ではなく「分け方」——対角線は交点で黄金比に分かれる
上の (4) で \(AD=\dfrac{1+\sqrt5}{2}\) を求め、これを黄金比と呼びました。ただ、記事の中で黄金比は「長さの値」としてしか出てきていません。黄金比は本来「比」、つまりある線分の分け方を表す言葉です。
そして、その分け方はすでにこの図の中で起きています。(3) で \(AP=1\)、(4) で \(PD=x-1\) を出しているのに、\(AP:PD\) を一度も計算していません。ここを取ると、なぜ黄金比と呼ぶのかが1行で分かります。
以下、\(\varphi=\dfrac{1+\sqrt5}{2}\)(約1.618)と書きます。すべて一辺1 cmの正五角形ABCDEで、記事と同じ図です。類題はすべて数強塾のオリジナルです。
類題1(\(AP:PD\) を求める)
問題 \(AP:PD\) を、できるだけ簡単な形で表しなさい。
解答
\(AP=1\)、\(PD=AD-AP=\varphi-1\) です。ここで、(4) で作った方程式 \(x^2-x-1=0\) すなわち \(\varphi(\varphi-1)=1\) を使います。
両辺を \(\varphi\) で割ると \(\varphi-1=\dfrac{1}{\varphi}\)。したがって
\(AP:PD=1:\dfrac{1}{\varphi}=\boldsymbol{\varphi:1}\)
数で確かめると \(1 \div 0.618\cdots = 1.618\cdots\)。たしかに \(\varphi\) です。
\(\varphi-1\) と \(\dfrac{1}{\varphi}\) が同じ数だという関係が、ここで効きました。上の「答えの独立検算」で \(\varphi(\varphi-1)=1\) を確かめましたが、あれは検算のためだけの式ではありません。両辺を \(\varphi\) で割るだけで、\(\varphi\) の最も使う性質になります。
類題2(\(AD:AP\) も求めて、並べる)
問題 \(AD:AP\) を求め、類題1の \(AP:PD\) と比べなさい。
解答
\(AD=\varphi\)、\(AP=1\) なので \(AD:AP=\varphi:1\)。類題1とまったく同じ比です。
| 比 | 値 | 言いかえ |
|---|---|---|
| \(AD:AP\) | \(\varphi:1\) | 全体 : 長いほう |
| \(AP:PD\) | \(\varphi:1\) | 長いほう : 短いほう |
つまり、点Pは線分ADを
(全体):(長いほう)=(長いほう):(短いほう)
となるように分けています。これが「黄金比に分ける」ということの定義そのものです。
黄金比を「\(1.618\cdots\) という数」だと覚えていると、なぜ美しいと言われるのかが分かりません。実際に美しいのは数ではなく「分けたあとが、分ける前と同じ形の比になる」という性質のほうです。
上の記事では \(AD\) の長さを求めて終わりましたが、同じ図で \(AP:PD\) を取れば、その性質がそのまま見えます。ここまでが1つの問題だと考えています。
類題3(内側にできる小さな正五角形)
問題 正五角形ABCDEに5本の対角線をすべて引くと、内側に小さな正五角形ができます。
(1) 小さい正五角形の一辺の長さを求めなさい。
(2) 外側と内側の相似比、面積比を求めなさい。
解答(1)
5本の対角線の交点が、小さい正五角形の頂点です。座標で計算すると、一辺の長さは
\(\dfrac{1}{\varphi^2}=2-\varphi=\dfrac{3-\sqrt5}{2}\approx0.382\)
3つの式が同じ数であることは、\(\varphi^2=\varphi+1\) から確かめられます。\(\dfrac{1}{\varphi^2}=\dfrac{1}{\varphi+1}\) で、分母を有理化すると \(\dfrac{3-\sqrt5}{2}\) になります。
解答(2)
相似比は \(1:\dfrac{1}{\varphi^2}=\boldsymbol{\varphi^2:1}\)(約 \(2.618:1\))。
面積比は相似比の2乗で \(\varphi^4:1\)(約 \(6.854:1\))。
内側の正五角形にも、同じように対角線を引けます。するとさらに内側に、また正五角形ができます。しかも毎回ちょうど \(\varphi^2\) 分の1に縮む。この図は、いくらでも中へ続いていきます。
上の記事で「正五角形の対角線問題は…一本につながる良問です」と書きましたが、つながる先は問題の外にもあります。
類題4(この図に、長さは何種類あるか)
問題 正五角形ABCDEに5本の対角線をすべて引いた図の中に現れる線分の長さは、何種類ありますか。それぞれ \(\varphi\) を使って表しなさい。
解答
| 線分 | 例 | 長さ | \(\varphi\) での表し方 | およその値 |
|---|---|---|---|---|
| 正五角形の辺 | \(AB\) | 1 | \(1\) | 1 |
| 対角線 | \(AD\) | \(\varphi\) | \(\varphi\) | 1.618 |
| 交点から頂点 | \(PD\) | \(\varphi-1\) | \(\dfrac{1}{\varphi}\) | 0.618 |
| 内側の正五角形の辺 | — | \(2-\varphi\) | \(\dfrac{1}{\varphi^2}\) | 0.382 |
答えは 4種類。しかも4つとも \(\varphi\) の累乗で書けて、\(\varphi^1,\ \varphi^0,\ \varphi^{-1},\ \varphi^{-2}\) と1つずつ下がっています。
なぜ、きれいに並ぶのか
\(\varphi\) には \(\varphi^2=\varphi+1\) という関係があります。これを使うと、\(\varphi\) の累乗どうしの引き算が、また \(\varphi\) の累乗になります。
| 計算 | 結果 | 確かめ |
|---|---|---|
| \(\varphi-1\) | \(\dfrac{1}{\varphi}\) | \(\varphi(\varphi-1)=1\) より |
| \(1-\dfrac{1}{\varphi}\) | \(\dfrac{1}{\varphi^2}\) | \(1.618\cdots\) の逆数を1から引くと \(0.382\cdots\) |
対角線から辺を引くと \(\dfrac1\varphi\)、辺からそれを引くと \(\dfrac1{\varphi^2}\)。引き算するたびに、1段小さい同じ形が出てきます。
この性質があるからこそ、内側の正五角形が同じ形で現れます。「引いても同じ形が出る数」は \(\varphi\) のほかにほとんどありません。正五角形が特別な図形に見えるのは、この1つの数のせいです。
数の並びとしての黄金比については、この記事の末尾からリンクしているフィボナッチ数列の解説もあわせてご覧ください。
まとめ:この図から取れるもの
| 求めたもの | 答え | 上の記事で | ここで |
|---|---|---|---|
| 対角線の長さ \(AD\) | \(\varphi\) | 求めた | — |
| \(AP:PD\) | \(\varphi:1\) | 材料はあった | 取った |
| \(AD:AP\) | \(\varphi:1\) | — | 取った |
| 内側の正五角形の辺 | \(\dfrac{1}{\varphi^2}\) | — | 求めた |
| 長さの種類 | 4種類 | — | 数えた |
2行目に注目してください。\(AP=1\) と \(PD=\varphi-1\) は、上の記事がすでに出しています。あとは並べて比を取るだけで、黄金比という名前の由来にたどり着きます。
この記事の「保護者の方へ」で「答えより『次に見る図形』を聞く」と書きました。同じことが、問題が終わったあとにも言えます。答えが出たところで、「いま出した数どうしで、まだ取っていない関係はないか」と1回だけ聞いてみる。
この問題では \(AD\) と \(AP\) と \(PD\) の3つが出そろっていました。3つの数があれば、比は3通り取れます。そのうち1つも取らずに終わるのは、もったいない。
この4問の使い方
- 類題1と2は続けて解いてください。2つの比が同じになる瞬間が、この4問でいちばん大事なところです。
- 類題3は、まず図に5本の対角線を引いてから読んでください。内側の正五角形が見えていないと、計算だけになります。
- 類題4の表を、\(\varphi\) の累乗の列だけ縦に読んでください。\(\varphi,\ 1,\ \varphi^{-1},\ \varphi^{-2}\) と1つずつ下がっていることを確かめます。
相似の対応と二次方程式の吟味は中3数学 相似の解法パターン全12型|2組の角で証明・平行線と比・面積比と体積比を例題つきでにまとめてあります。
学年ごとの要点は中3数学の要点辞典|全8単元の公式・定石・つまずきポイントと例題40問、演習量の確保は特訓道場 総索引|小学生から数学IIIまで全102回・2,085題【数強塾】、学年をまたいだ全体像は数学の要点辞典|中1から数学IIIまで 全7ページ・57単元を無料公開にあります。
要点辞典この単元の公式・定石・つまずきやすい所は 数学I・Aの要点辞典:図形と計量 にまとめてあります。
