整数問題は、多くの受験生にとって「解答を読めば分かるのに、白紙からは書けない」単元の代表格です。二次関数なら平方完成、微分なら増減表と、やることが決まっているのに、整数問題だけは最初の一手が見えない。
しかし整数問題の方針は、突き詰めると3つしかありません。しかもその3つは、まったく違うことをしているように見えて、目的は完全に同じです。この記事では、数強塾の独自研究として、その3つを「なぜそれで解けるのか」という原理から整理し、初見の問題でどれを選ぶかの判断基準まで落とし込みます。
このシリーズの構成
- この記事(総論) 3つの方針と、どれを選ぶかの判断基準
- ① 積の形に持ち込む \((x-a)(y-b)=k\) への変形と、約数を数え切る技術
- ② 余りで分類する 法をいくつに取るかは、式が教えてくれる
- ③ 不等式で絞る 対称性・大小の仮定・分数の型
- 実戦例 2005年 京都大学 文系 第4問(3つすべてを使う問題)
さらに踏み込む3本
- 第4の道具|一次不定方程式 ax+by=c 3つの方針が「絞る」道具なのに対し、これだけは解を作る道具
- 素数の使い方 「\(p\) を素数とする」は設定ではなく最強の絞り込み条件
- 背理法と無限降下法 「解が存在しない」をどう示すか、3つの段階
1.なぜ整数問題だけ、手が出ないのか
普通の方程式と整数問題の違いは、はっきりしています。
| 普通の方程式 | 整数問題 | |
|---|---|---|
| 解く対象 | 実数(連続) | 整数(とびとび) |
| 使う武器 | 式変形・グラフ・微分 | 式変形+「整数である」という条件 |
| 詰まる理由 | 計算力 | 整数条件の使い方を知らない |
たとえば \(xy = 6\) という式。実数の世界では解は無限にあり、双曲線という曲線になるだけで話が終わりません。ところが「\(x,\ y\) は整数」と付いた瞬間、答えは \((1,6),(2,3),(3,2),(6,1)\) と負の4組、合計8組だけに確定します。
【ここが本質】整数問題で詰まるのは計算力の問題ではありません。「整数である」という条件を、どう式に翻訳するかを知らないだけです。そして翻訳の仕方は3種類しかありません。
2.3つの方針は、目的が同じ
結論を先に置きます。
整数問題の唯一の目的
無限にある候補を、有限個に落とすこと。
有限になりさえすれば、あとは1つずつ調べれば必ず終わります。整数問題が「難しい」のは、その有限化の手口が3種類あって、どれを選ぶかが見えないからです。
その3種類が、これです。
図1:整数問題の判断フローチャート。3つの方針は、いずれも「無限を有限に落とす」という同じ目的のための、別々の手口である。
| 方針 | 何を使うか | なぜ有限になるか | 典型的な合図 |
|---|---|---|---|
| ① 積の形 | 整数の掛け算 | ある整数の約数は有限個だから | 移項して因数分解できる、\(xy\) がある、分数式 |
| ② 余りで分類 | 割り算の余り | \(m\) で割った余りは\(m\) 種類しかないから | 累乗・平方数・立方数、「解が存在しない」の証明 |
| ③ 不等式で絞る | 大小関係 | ある範囲に入る整数は有限個だから | 対称式、自然数条件、文字が3つ以上 |
この表を頭に入れておくだけで、初見の問題に対する態度が変わります。「何をすればいいか分からない」ではなく、「この3つのうち、どれで有限化できるか」を探せばよくなるからです。
3.方針① 積の形に持ち込む
原理:整数 \(A,\ B\) が \(AB = k\)(\(k\) は定数)を満たすなら、\(A\) は \(k\) の約数です。約数は有限個しかないので、候補が有限になります。
【例題1】
\(xy + 2x + 3y = 0\) を満たす整数の組 \((x,\ y)\) をすべて求めよ。
このままでは手が出ません。しかし \(xy\) と \(x\) と \(y\) が揃っているので、積の形に組み直せるという合図です。\(x\) でくくると \(x(y+2) + 3y\)。ここで \(3y\) を \(3(y+2) – 6\) と見れば、
\[xy + 2x + 3y = x(y+2) + 3(y+2) – 6 = (x+3)(y+2) – 6\]
したがって元の方程式は \((x+3)(y+2) = 6\)。あとは \(6\) の約数(負も含めて \(\pm1, \pm2, \pm3, \pm6\) の8個)を \(x+3\) に順に当てはめるだけです。
【答】
\((x,\ y) = (-9,-3),\ (-6,-4),\ (-5,-5),\ (-4,-8),\ (-2,4),\ (-1,1),\ (0,0),\ (3,-1)\) の8組
【検算】\((0,0)\) は \(0+0+0=0\)。\((-1,1)\) は \(-1-2+3=0\)。\((3,-1)\) は \(-3+6-3=0\)。\(-40 \leqq x,\ y \leqq 40\) の全数探索でも、この8組しか現れないことを確認しました。
くわしい変形の型と、約数を数え落とさないコツは 積の形に持ち込む整数問題 にまとめました。
4.方針② 余りで分類する
原理:整数を \(m\) で割った余りは \(0,\ 1,\ \ldots,\ m-1\) の \(m\) 種類しかありません。だから「すべての整数」を調べる代わりに、\(m\) 通りだけ調べれば済みます。
図2:\(3\) で割った余りで分けると、無限個あった整数が3通りに潰れる。これが「余りで分類する」という方針の正体。
【例題2】
\(x^2 + y^2 = 2003\) を満たす整数の組 \((x,\ y)\) は存在しないことを示せ。
平方数が出てきたら、まず \(4\) で割った余りを疑うのが定石です。整数 \(n\) を \(2\) で割った余りで場合分けすると、\(n=2k\) なら \(n^2=4k^2\)、\(n=2k+1\) なら \(n^2=4(k^2+k)+1\)。つまり
平方数を \(4\) で割った余りは \(0\) か \(1\) しかない
すると \(x^2+y^2\) を \(4\) で割った余りは \(0+0,\ 0+1,\ 1+1\) から \(0,\ 1,\ 2\) のいずれか。ところが \(2003 = 4 \times 500 + 3\) なので余りは \(3\)。ありえません。よって解は存在しません。
【なぜ4なのか】「なんとなく4を試した」のではありません。平方数は \(n=2k\) と \(n=2k+1\) で場合分けすると必ず \(4\) の倍数と \(4k+1\) に分かれる——つまり平方数という形そのものが \(4\) を指定しているのです。法の選び方には理由があります。くわしくは 余りで分類する整数問題 へ。
5.方針③ 不等式で絞る
原理:\(2 \leqq x \leqq 5\) のような範囲が出れば、整数 \(x\) の候補は4個。範囲さえ有限にできれば勝ちです。
【例題3】
\(\dfrac{1}{x} + \dfrac{1}{y} + \dfrac{1}{z} = 1\) を満たす自然数の組 \((x,\ y,\ z)\) をすべて求めよ。
文字が3つ。積の形にしようとすると分母が邪魔で、余りで分類しても進みません。ここで効くのが対称性です。式は \(x,\ y,\ z\) を入れ替えても変わらないので、\(x \leqq y \leqq z\) と仮定してよい(最後に並べ替えを戻せばよい)。
すると \(\dfrac{1}{x}\) が3つの中で最大なので、
\[1 = \frac{1}{x} + \frac{1}{y} + \frac{1}{z} \leqq \frac{1}{x} + \frac{1}{x} + \frac{1}{x} = \frac{3}{x}\]
したがって \(x \leqq 3\)。しかも \(\dfrac{1}{x} \lt 1\) が必要なので \(x \geqq 2\)。候補は \(x = 2,\ 3\) の2通りだけになりました。
図3:絞り込みの流れ。対称性で大小を仮定し、いちばん大きい項で押さえると、先頭の文字に上限が出る。あとは同じことを繰り返すだけ。
【答】
\(x \leqq y \leqq z\) として \((x,y,z) = (2,3,6),\ (2,4,4),\ (3,3,3)\)。並べ替えを許すなら、これらの順列すべて。
【検算】\(\frac12+\frac13+\frac16 = \frac{3+2+1}{6} = 1\)。\(\frac12+\frac14+\frac14 = 1\)。\(\frac13 \times 3 = 1\)。プログラムによる全数探索でも、\(x \leqq y \leqq z\) の範囲でこの3組だけでした。
大小を仮定してよい理由の答案での書き方は 不等式で絞る整数問題 にまとめました。
6.実際の入試では、3つを併用する
「1問1方針」ではありません。難関大の整数問題は、たいてい2つ以上を順に使います。典型例が、2005年 京都大学 文系 第4問です。
【例】2005年 京都大学 文系 第4問
\(a^3 – b^3 = 65\) を満たす整数の組 \((a,\ b)\) をすべて求めよ。
方針① 積の形 \(a^3-b^3 = (a-b)(a^2+ab+b^2) = 65\)。\(a-b\) は \(65\) の約数なので候補は8個。
方針③ 不等式 \(4(a^3-b^3) = (a-b)^3 + 3(a-b)(a+b)^2\) から \((a-b)^3 \leqq 4 \times 65 = 260\)。よって \(a-b \leqq 6\) で、候補は \(1\) と \(5\) の2個に。
方針② 余り \(a^2+ab+b^2\) を \(3\) で割った余りは \(0\) か \(1\)。\(65\) は余り \(2\) なので \(a-b=1\) は不可能。残るは \(a-b=5\) のみ。
3つの方針が順番に効いて、8通りの場合分けが1通りまで落ちます。答えは \((a,b) = (4,-1),\ (1,-4)\)。
この問題の完全な解説(恒等式の導出、同年の理系第4問 \(a^3-b^3=217\) との比較、一般の \(a^3-b^3=N\) への拡張)は a³−b³=65 の整数解|8通りの場合分けを1つの恒等式で1通りに減らす をご覧ください。
7.判断の練習 ―― どの方針から入るか
解かなくて構いません。「①②③のどれから入るか」だけを答えてください。整数問題の勉強で最も効率がよいのは、この練習です。
【判断練習】
- (1) \(x^2 – y^2 = 45\) を満たす自然数の組をすべて求めよ。
- (2) \(n^2 + n + 1\) が \(5\) の倍数になる整数 \(n\) は存在しないことを示せ。
- (3) \(p,\ q,\ r\) を素数とするとき \(p^2 + q^2 = r^2\) を満たす組をすべて求めよ。
- (4) \(\dfrac{1}{x} + \dfrac{1}{y} = \dfrac{1}{6}\) を満たす自然数の組をすべて求めよ。
- (5) \(2^n + 1\) が \(3\) の倍数になる自然数 \(n\) をすべて求めよ。
【判断の答え】
(1) ① 差の形はそのまま \((x+y)(x-y) = 45\) と積になる。約数から候補は有限。
(2) ② 「存在しない」の証明はほぼ必ず余り。\(5\) で割った余りが指定されているので法は \(5\)。実際 \(n \equiv 0,1,2,3,4\) で \(n^2+n+1\) の余りは順に \(1,3,2,3,1\) となり、\(0\) が現れない。
(3) ②+③ まず偶奇(\(=\) 法 \(2\))で \(p,q\) の一方が \(2\) と分かり、次に \(r^2-q^2=(r+q)(r-q)=4\) と積の形へ。\((r+q)(r-q)=p^2\) と積の形になり、素数条件から解は存在しないと分かる。
(4) ① 分母を払うと \(6(x+y)=xy\)、移項して \((x-6)(y-6)=36\)。\(36\) の正の約数は9個なので解は9組。
(5) ② \(2 \equiv -1 \pmod 3\) なので \(2^n \equiv (-1)^n\)。\(n\) が奇数のとき \(2^n+1 \equiv 0\)。よって \(n\) は奇数すべて。
(3) について補足します。\(p^2+q^2=r^2\) で \(p,q,r\) がすべて素数だと、偶奇から \(p,q\) の一方は \(2\)。仮に \(q=2\) とすると \(r^2-p^2=4\)、すなわち \((r+p)(r-p)=4\)。\(r+p \geqq 5\) なので積が \(4\) になりようがなく、解は存在しません。「素数」という条件は、それ自体が強力な絞り込みです。
8.よくあるつまずきと、その処方箋
1負の約数を忘れる
「整数」と書いてあるのに正の約数だけ調べてしまう。\(6\) の約数は \(\pm1,\pm2,\pm3,\pm6\) の8個です。「自然数」と明記されているときだけ正に限れます。
2候補を出しただけで終わる
絞り込みは必要条件を並べているだけです。最後に代入して成り立つことを確かめる(十分性の確認)まで書かないと減点対象になり得ます。
3法を当てずっぽうで選ぶ
\(2,\ 3,\ 4,\ 5\) を順に試すのは時間の浪費です。平方数なら \(4\) と \(3\)、立方数なら \(9\) と \(7\) のように、式の形が法を指定します。
4「大小を仮定してよい」の根拠を書かない
対称式であることを明記せずに \(x \leqq y \leqq z\) と書くと、論理の飛びになります。「対称式だから一般性を失わない」の一言を必ず添えてください。
9.中高一貫校生の習得タイミング
整数の性質は、教科書上は数学Aの単元です。ただし中高一貫校の進度では、次のように扱われることが多いです。
| 時期 | 扱う内容 | この記事との関係 |
|---|---|---|
| 中3〜高1前半 | 素因数分解・約数・倍数・ユークリッドの互除法 | 方針①の土台。約数の個数を数える練習をここで |
| 高1後半 | 合同式・一次不定方程式 | 方針②の土台。合同式は必須ではないが、書くのが劇的に楽になる |
| 高2以降 | 入試問題演習 | ここで初めて3方針の選択が問われる |
【順番を間違えないために】整数問題が苦手な生徒の多くは、約数の個数を正確に数え切る練習が抜けたまま入試問題に入っています。\(36\) の正の約数が9個であることを即答できない状態で方針を選ぶ練習をしても、身につきません。土台の確認は 整数の性質|約数・倍数・互除法・不定方程式・n進法 からどうぞ。
10.まとめ
この記事の要点
- 整数問題の目的はただ一つ、無限の候補を有限に落とすこと。
- その手口は3つだけ。① 積の形(約数が有限)/② 余りで分類(余りが有限)/③ 不等式で絞る(範囲が有限)。
- 合図で選ぶ。因数分解できそう→①/累乗・平方数・「存在しない」の証明→②/対称式・自然数・文字3つ以上→③。
- 難関大では3つを併用する。京大2005文系4番は①→③→②の順で解ける。
- 勉強法としては、解かずに方針だけ答える練習がいちばん効率がよい。
11.よくある質問
Q. 合同式は覚えるべきですか?
A. 必須ではありませんが、覚えると答案が半分の長さになります。教科書(数学A)に載っている範囲なので、記述式でそのまま使って構いません。ただし \(\pmod m\) の表記と、割り算だけは扱いが違う(\(m\) と互いに素なときしか割れない)点に注意してください。
Q. 方針を選んだのに解けないときはどうすればいいですか?
A. 別の方針に乗り換えるのではなく、併用を考えてください。「①で積の形にしたが候補が多すぎる」なら、③で範囲を絞るか②で候補を落とす。実際の入試問題は1つの方針では終わらない設計になっていることがほとんどです。
Q. 整数問題は捨ててもよいですか?
A. 志望校によります。ただし整数問題は部分点が取りやすい分野です。「候補をここまで絞った」という過程だけでも評価されることが多いので、完答できなくても手をつける価値はあります。
Q. どの問題集で練習すればいいですか?
A. 特定の書名は挙げませんが、選ぶ基準ははっきりしています。解答に「なぜその法を選んだか」「なぜその変形を思いついたか」が書かれているものを選んでください。答えだけ載っている問題集で整数を練習すると、解法の暗記に終わります。
12.関連ページ
- ① 積の形に持ち込む整数問題|(x−a)(y−b)=k への変形と約数の数え方
- ② 余りで分類する整数問題|法をいくつに取るかは式が教えてくれる
- ③ 不等式で絞る整数問題|対称性と大小の仮定
- 実戦例:a³−b³=65 の整数解【2005年 京都大学 文系 第4問】
- 一次不定方程式 ax+by=c|互除法で解を「作る」
- 素数の使い方|「素数である」こと自体が絞り込みになる
- 背理法と無限降下法|「存在しない」をどう示すか
- 整数の性質|約数・倍数・互除法・不定方程式・n進法【数学A】(土台の確認)
- 解法テクニック一覧
- 大学入試 過去問の全問解説
「どの方針で入るか」は、対話で最短で身につきます
整数問題は、解答を読むと当たり前に見えて、白紙からは書けない——という現象が最も起きやすい単元です。数強塾では、答えではなく方針を選んだ理由を、プロ講師が完全1対1で言語化します。
整数問題の3つの方針のあとに読むページ
この3方針を実行するための道具が、事典の第1部(第1〜10項)に並んでいます。「どの方針を選ぶか」の判定は第5部のフローチャートです。
- 積の形に持ち込む整数問題 ── 方針①をもっと詳しく
- 余りで分類する整数問題 ── 方針②をもっと詳しく
- 不等式で絞る整数問題 ── 方針③をもっと詳しく
- 整数の性質(基本)の特訓道場30題 ── 手を動かして固める
整数問題で使う因数分解は、教科書の型だけでは足りません。x⁴+4 のような形が実際に出ます。
要点辞典この単元の公式・定石・つまずきやすい所は 数学I・Aの要点辞典:整数の性質 にまとめてあります。

