問題文に「 を素数とする」と書いてあるとき、多くの受験生はそれをただの設定として読み流します。しかし出題者から見れば、そこは最強の絞り込み条件を1行で渡している場所です。
この記事では、数強塾の独自研究として、「素数である」という条件を3つの顔に分解し、そこから導かれる4つの定石を整理します。素数条件を読み流さなくなるだけで、解ける問題が一段増えます。
整数問題シリーズの一部です。まずは 整数問題の3つの方針 をご覧ください。
1.「素数である」の3つの顔
| 素数 の性質 | どの方針とつながるか | |
|---|---|---|
| 顔① | 正の約数が と の2個だけ | 積の形——約数の候補が極端に少ない |
| 顔② | ならば または | 因数分解した式のどこに が入るかを追える |
| 顔③ | 偶数の素数は だけ、 の倍数の素数は だけ | 余りで分類——小さい素数を別扱いする |
【顔②は当たり前ではない】合成数では成り立ちません。 ですが、 かつ 。「積を割るなら因子のどれかを割る」は、素数だけが持つ特権です。素因数分解の一意性も、この性質から出ています。
2.定石① を別扱いする(偶奇)
いちばん頻度の高い定石です。素数のうち偶数は だけ——ここから「 の場合」と「 以上の奇素数の場合」に分けます。
【例題1】
を素数とするとき、 を満たす組をすべて求めよ。
もし がどちらも奇数なら、 は偶数。 は素数なので ですが、 なので不可能です。したがって の一方は 。 とすると 。
【答】
および の形で、 と がともに素数であるもの。すなわち
と がともに素数の組を双子素数といいます。無限にあると予想されていますが、2026年現在も未解決です。だからこの問題は「すべて求めよ」と言われても、有限個に書き下すことはできません。入試で出るとしたら「一方が2であることを示せ」までです。
3.定石② 以上の素数は
偶奇(法 )と法 を組み合わせると、素数の居場所が大きく絞れます。
図1: から までを で割った余りで色分けしたもの。 と を除くすべての素数が、青い枠()の中にあります。
なぜそうなるか
整数は のどれか。このうち
- は の倍数
- は の倍数
だから 以上の素数は か (=)しかありえない。
系: 以上の素数 について を で割ると 余る
とすると 。ここで と は一方が必ず偶数( が奇数なら のどちらかが偶数)なので、 は偶数。したがって は の倍数です。
が素数
【検算】、、、。 未満のすべての素数( 以上)で成り立つことを確認しました。
4.定石③ 連続する数のどれかは の倍数
のように等差に並んだ3つが出てきたら、法 を疑います。この3つを で割った余りは、 の余りが何であっても が1回ずつ現れます。つまり必ず1つは の倍数です。
【例題2】
がすべて素数となる素数 をすべて求めよ。
上の議論より、3つのうち1つは の倍数。それが素数であるためには、その数自身が でなければなりません。
| になるのは | そのときの | 3つの数 | 判定 |
|---|---|---|---|
| すべて素数 → 適 | |||
| — | は素数でない → 不適 | ||
| — | 素数でない → 不適 |
【答】
のみ。すなわち 。
【検算】 までのすべての素数を調べたところ、 がすべて素数になるのは だけでした。双子素数は無限にありそうなのに、三つ子は1組しかない。この差を作っているのが、法 です。
【例題3】
が素数となる素数 をすべて求めよ。
法 で考えます。 が の倍数でなければ なので、。つまり は の倍数で、しかも なので素数ではありません。したがって は の倍数、すなわち 。このとき で素数です。
【答】
のみ
5.定石④ 指数の形は、まず因数分解を疑う
【例題4】
が素数ならば、 も素数であることを示せ。
対偶を示します。 が合成数、すなわち ()と書けたとします。ここで次の因数分解を使います。
より 、また より右側の括弧も 以上。 以上の数の積になったので、 は合成数です。よって対偶が示され、命題が成立します。■
【検算】 の範囲で が素数になるのは 。すべて素数です。合成数の で が素数になる例は1つもありませんでした。
この形の素数をメルセンヌ素数といいます。逆は成り立ちません( は素数ですが は合成数)。「ならば」の向きを取り違えないことが、この問題の最大の注意点です。
6.素数条件の使い方チャート
| 問題の見た目 | 疑うべき定石 | 最初の一手 |
|---|---|---|
| 素数どうしの和・差 | 定石①(偶奇) | 「全部奇数だと和が偶数」から矛盾を探す |
| など等差3つ | 定石③(法 ) | 1つは の倍数 → それが 自身 |
| や の形 | 定石②③(法 ・) | なら を使う |
| の形 | 定石④(因数分解) | が合成数だと因数分解できないか見る |
| 素数の積が定数 | 顔①(約数が2個) | 約数の候補が しかないことを使う |
7.答案での書き方
素数問題で落としてはいけない3点
- は素数ではない。場合分けで のようなケースが出たら、必ず「 は素数でない」と書いて除外します。
- 「 の倍数の素数は だけ」を明記する。「 の倍数だから素数でない」は誤りです( 自身は素数)。「 の倍数かつ より大きいから合成数」と書きます。
- 最後に実例を確かめる。絞り込みは必要条件です。 が実際に条件を満たすことまで書いて完了です。
8.練習問題
【練習1】
と がともに素数で のとき、 は の倍数であることを示せ。
【練習2】
を素数とするとき、 を満たす組は存在しないことを示せ。
【練習3】
が素数となる自然数 をすべて求めよ。
【答】
練習1 の素数だから (定石②)。 とすると となり の倍数。 なので素数でなくなり不適。よって で、 は の倍数。■
検算:、、、。 未満のすべての双子素数で成立を確認しました。
練習2 まず偶奇(定石①)。 がすべて奇数なら左辺が偶数・右辺が奇数で矛盾。よって の一方は ( とすると で不可)。 とすると 、すなわち 。ここで より なので、積が になりようがない。よって解は存在しない。■
練習3 ソフィー・ジェルマンの恒等式 を使います(展開して確認できます)。素数になるには一方が でなければならず、 より 。このとき で素数。よって のみ。検算: なら 、 なら 。確かに合成数です。
9.まとめ
この記事の要点
- 「素数である」は設定ではなく最強の絞り込み条件。3つの顔(約数が2個/ の性質/ と だけが例外)に分解して使う。
- 定石① 素数の和・差を見たら偶奇。「全部奇数だと和が偶数」から を炙り出す。
- 定石② 以上の素数は 。系として 。
- 定石③ 等差に並んだ3つが出たら法 。1つは の倍数=それ自身が 。
- 定石④ の形は因数分解を疑う。対偶で示すと速い。
- 答案では「 は素数でない」「 より大きい の倍数だから合成数」を必ず書く。
10.よくある質問
Q. なぜ は素数ではないのですか?
A. 素因数分解の一意性を守るためです。 を素数に含めると と分解が無限に増えてしまいます。「約数が2個ちょうど」という定義は、この都合に合わせて作られています。
Q. なら素数、ではないのですか?
A. 逆は成り立ちません。 も も の形ですが素数ではありません。この定石が言っているのは「素数は必ず 」という一方向だけです。必要条件と十分条件の取り違えは、素数問題で最も多い誤りです。
Q. 双子素数が無限にあるかどうかは、本当に分かっていないのですか?
A. はい、未解決です。一方で「差が有限の素数の組が無限にある」ことは2013年に証明され、その後の改良で差の上限は大幅に下がりました。高校生でも問題の意味が完全に分かるのに、誰も解けていない——整数論にはこういう問いが数多くあります。
Q. 素数の問題は入試でよく出ますか?
A. 単独で出るというより、整数問題の条件として紛れ込むことが多いです。「 を素数とする」の一行を見たら、この記事の定石チャートを思い出してください。そこが絞り込みの入口です。
11.関連ページ
- 整数問題の3つの方針|総論・判断基準
- ① 積の形に持ち込む整数問題
- ② 余りで分類する整数問題(法の選び方)
- ③ 不等式で絞る整数問題
- 一次不定方程式 ax+by=c|互除法で解を「作る」
- 背理法と無限降下法|「存在しない」をどう示すか
- 整数の性質|約数・倍数・互除法・不定方程式・n進法【数学A】
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