整数問題の第一の方針が「積の形に持ち込む」です。原理はたった一行、整数の積が定数なら、それぞれは約数。約数は有限個しかないので、無限にあった候補が一気に有限になります。
問題は「どうやって積の形にするか」です。この記事では、入試で出る変形を3つの型に整理し、そのうえで多くの受験生が落とす約数の数え上げを徹底的に潰します。最後に、 の自然数解の個数が の約数の個数に一致するという、覚えておくと検算に使える事実まで示します。
この記事は 整数問題の3つの方針 の①にあたります。②は 余りで分類する、③は 不等式で絞る です。
1.原理 ―― なぜ積の形にすると解けるのか
積の形の原理
整数 が ( は でない定数)を満たすなら、 は の約数。約数は有限個なので、 の候補も有限個。
ここで大事なのは、整数でなければこの論法は使えないということです。実数なら を満たす は無限にあります。「整数である」という条件が、掛け算の世界で約数という有限の枠に翻訳される——これが積の形の正体です。
【最初に確認すること】 のときは話が別です。 なら「 または 」であって、約数の話にはなりません。移項した先の定数が かどうかは必ず見てください。
2.型A ―― と と が揃っている
最頻出の型です。一般形はこうなります。
型Aの変形
の係数 が 側の括弧へ、 の係数 が 側の括弧へ入れ替わって入ります。ここを逆にするのが最頻出のミスです。
なぜ入れ替わるのか
暗記する必要はありません。 でくくるところから素直に進めば、必ずこの形になります。
括弧の中が になったので、残りの も の形に揃えたい。そこで と書き直すと、
つまり でくくったから、括弧の中身は 。その相方として自動的に が出てくる。入れ替わりは「覚える」ものではなく、手順の結果です。
【例題1】
を満たす整数の組 をすべて求めよ。
なので、。あとは の約数を に当てはめます。負の約数を忘れないのが最大の注意点です。
【答】
の8組
図1: は、漸近線が の双曲線。曲線上の格子点がちょうど8個で、 の正負の約数8個と1対1に対応している。「約数を数える」ことと「格子点を数える」ことが同じだと目で見える。
【検算】 は 。 は 。 は 。 の全数探索でも、この8組しか現れないことを確認しました。
3.型B ―― 分数の和が定数
分母に文字がある形も、分母を払えば型Aに帰着します。
型Bの変形
両辺に を掛けて 、移項して 。型Aの形なので 。
【例題2】
を満たす自然数の組 をすべて求めよ。
なので 。ここで自然数という条件が効きます。もし だとすると となり、 すなわち が自然数でなくなってしまう。したがって 、つまり と はどちらも正。負の約数は考えなくてよいのです。
の正の約数は 個で、。
【答】
の9組
【独自研究】解の個数は、数えなくても分かる
上の議論は に依存していません。一般に を自然数とすると、 が必要で、解は の正の約数と1対1に対応します。したがって——
解の個数の公式
を満たす自然数の組 の個数は、 の正の約数の個数に等しい。
| の約数の個数 | 解の個数(全数探索で確認) | ||
|---|---|---|---|
【使いどころ】これは答案に書く定理ではなく、検算の道具です。 の問題を解いて解が14組しか出てこなかったら、1組落としています。 より 個のはずだからです。個数が先に分かるのは大きな安心材料になります。
なお の約数の個数は必ず奇数になります(平方数の約数は を中心に対をなすため)。だから解の個数も必ず奇数で、その真ん中が の組です。
4.型C ―― 公式そのままの因数分解
変形を工夫しなくても、最初から因数分解できる形もあります。
| 形 | 因数分解 | 注意点 |
|---|---|---|
| と は偶奇が一致する | ||
【例題3】
を満たす自然数の組 をすべて求めよ。
。自然数なので 、したがって で、。 の正の約数は なので、 の候補は の3組。
【答】
の3組
【検算】。。。全数探索でもこの3組だけでした。
平方差でいちばん危ないのは偶奇
と の和は で偶数。つまりこの2つは必ず偶奇が一致します。片方が偶数でもう片方が奇数、という組み合わせはあり得ません。
これを使うと一発で分かることがあります。たとえば 。 を2つの整数の積にすると や のように必ず偶奇が食い違うので、整数解は存在しません。実際 を で割った余りは のいずれかで、(余り )にはなりません。
の型については、専用の記事を書きました。約数の候補を不等式でさらに絞る方法まで扱っています → a³−b³=65 の整数解【2005年 京都大学 文系 第4問】
5.約数を数え切る技術
積の形に持ち込めても、約数を数え落とせば不正解です。ここが得点差の出るところです。
(1) 正の約数の個数
と素因数分解できるとき、正の約数の個数は
各素因数を「何個使うか」を独立に選ぶ、と考えれば当たり前です。 なら 個。
(2) 負の約数を落とさない
「整数」と書いてあれば負の約数も候補です。正の約数が 個なら、整数の約数は 個。「自然数」「正の整数」と明記されているときだけ正に限れます。設問の1文字を読み違えると、答えの個数が半分になります。
(3) 対称性で手間を半分にする
のように を入れ替えても同じ式なら、 の範囲だけ調べて、最後に入れ替えた組を足せば済みます。ただし入れ替えて同じになる組()は1回だけ数えることに注意してください。
(4) 「積が定数」以外の条件を最後まで持っておく
例題2で を導いたように、約数を並べる前に範囲を絞れると表が半分以下になります。積の形と不等式は、対立する方針ではなく相性のよい組み合わせです。
6.よくあるミス
1入れ替えを逆にする
を としてしまう。展開すると となり、係数が合いません。展開して確かめる1行を必ず入れてください。
2負の約数を忘れる
「整数の組」なのに正の約数だけで表を作る。例題1なら8組が4組になります。
3移項後の定数が のまま進む
は約数の問題ではなく「どちらかが 」の問題です。解は無限個になることもあります。
4平方差で偶奇を確認しない
の約数の組を並べるとき、偶奇が食い違う組を残すと、 が整数になりません。
5十分性を確認しない
約数の表から出した候補は必要条件にすぎません。最後に元の式に代入して成り立つことを示すまでが答案です。
7.練習問題
【練習1】
を満たす整数の組 をすべて求めよ。
【練習2】
を満たす自然数の組 をすべて求めよ。
【練習3】
を満たす自然数の組 をすべて求めよ。
【答】
練習1 より 。 の約数 を に当てはめて、 の4組。検算: は 。 は 。
練習2 。 より正の約数のみ。 の正の約数は の5個。 の5組。個数の公式( の約数は5個)とも一致。
練習3 。偶奇が一致する必要があり、 は偶数なので両方偶数。 とおくと 、。 の組は の4通り。よって の4組。検算:。
8.まとめ
この記事の要点
- 原理は「整数の積が定数なら、それぞれは約数」。約数が有限だから候補が有限になる。
- 型A:。係数が入れ替わるのは、 でくくった結果。
- 型B:。自然数条件から正の約数だけでよい。
- 型C:平方差・立方差はそのまま。平方差は偶奇の一致が命。
- 解の個数は先に読める。 の自然数解は の約数の個数だけある(検算に使える)。
- 約数の数え上げでは負の約数と十分性の確認を落とさない。
9.よくある質問
Q. 型Aの公式は覚えるべきですか?
A. 覚えなくて構いません。 でくくる → 括弧の中身に合わせて残りを書き直すという手順だけ覚えれば、その場で作れます。むしろ公式として覚えると、係数の入れ替えを逆にするミスが増えます。
Q. 約数の組を全部書くと表が大きくなりすぎます。
A. 先に範囲を絞るか、対称性で半分にするかの2択です。例題2のように「自然数だから 」と一言入れるだけで、表の行数は半分になります。不等式で絞る と組み合わせるのが実戦的です。
Q. 答案では表を書いてもよいですか?
A. 構いません。むしろ表のほうが数え落としが起きにくく、採点者にも伝わります。ただし表の前に「 は の約数だから」と根拠を書き、表の後に「逆にこれらは元の式を満たす」と十分性を書いてください。
Q. の項がない問題でも積の形にできますか?
A. できることがあります。 のような形は、平方完成して のように平方差に持ち込むのが定石です。「積にできないか」をまず疑うのは常に正しい態度です。
10.関連ページ
- 整数問題の3つの方針|総論・判断基準(まずはこちら)
- ② 余りで分類する整数問題|法をいくつに取るかは式が教えてくれる
- ③ 不等式で絞る整数問題|対称性と大小の仮定
- 実戦例:a³−b³=65 の整数解【2005年 京都大学 文系 第4問】
- 整数の性質|約数・倍数・互除法・不定方程式・n進法【数学A】
- 解法テクニック一覧
約数の数え落としは、自分では気づけません
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