洗足学園の高校1年生には、夏休みの課題として問題冊子が配られます。その中で、多くの人が「解けたけれど、なぜそう分けたのか説明できない」と感じるのが、定義域(見る範囲)が動くタイプの2次関数の最大・最小です。
前回までの問題と違って、今度はグラフは1本のまま動かず、見る窓のほうが左右にスライドします。この違いを絵にできるかどうかで、答案の書き方が変わります。この記事では、なぜ場合分けが必要になるのかを、1手ずつ図で確かめながら進めます。
この記事で扱う「型」
定義域が動く型=関数の式は文字を含まず固定、見る範囲の両端に文字が入っているタイプ。「軸が動く型」と混ざりやすいので、違いを意識して読んでください。
1.この記事で解く問題
【例題】定義域が動く2次関数の最大・最小
2次関数 について、 における
(1) 最小値 を を用いて表せ。
(2) 最大値 を を用いて表せ。
【答えだけ先に】
(1) のとき 、 のとき 、 のとき
(2) のとき 、 のとき
※(1)は3つ、(2)は2つに分かれます。この「数の違い」に理由があります。そこがこの問題の急所です。
2.まず、この関数の形を1回だけ確定させる
式に文字が入っていないので、グラフは最初から1本に決まっています。平方完成しましょう。
頂点 、軸 、下に凸。これはもう二度と動きません。
動くのは見る範囲のほうです。 は、幅がつねに2の窓で、 を変えるとその窓が左右にスライドします。
この型のイメージ
固定された放物線の上を、幅2の窓が左右に動く。窓から見える範囲だけを見て、一番低い点・一番高い点を答える。
窓の位置によって見える景色が変わるから、場合分けが必要になる——それだけのことです。
3.例題(1)|最小値は「軸が窓の中にあるか」で決まる
【問題(再掲)】
の における最小値 を で表せ。
下に凸なので、軸に近いほど低い。したがって、軸 が窓の中に入っていれば頂点が最小、外れていれば窓の端のうち軸に近いほうが最小になります。
図1:青い帯が窓(定義域)。左=窓が軸より左()、中=窓の中に軸がある()、右=窓が軸より右()。●が最小値をとる点。
(i) 窓が軸より左にあるとき
窓の右端 が軸 より左、つまり 。整理すると です。このとき窓から見えるのは下り坂の途中だけなので、一番低いのは右端 。
(ii) 窓の中に軸があるとき
。左の不等式から 、右の不等式から 。合わせて です。このとき頂点が窓の中にあるので、
【なぜこうするか】 という2つの不等式を同時に満たす を求める、という発想がここでの山場です。「軸が窓の中」を数式に翻訳する作業そのものが、この問題で身につけるべき技術です。
(iii) 窓が軸より右にあるとき
窓の左端が軸より右、つまり 。見えているのは上り坂の途中だけなので、一番低いのは左端 。
【答】
のとき
のとき
のとき
図2:横軸 、縦軸 のグラフ。窓が軸をまたいでいる間()は、窓をずらしても最小値が のまま変わらない。この「平らな区間」が、この型の特徴です。
【検算】:(i)の式は 、(ii)は 。:(ii)は 、(iii)は 。両方の境目で一致しました。
4.例題(2)|最大値は「軸が窓の中点より左か右か」で決まる
【問題(再掲)】
同じ関数の における最大値 を で表せ。
ここで判断基準が変わります。下に凸のグラフでは、最大値は軸から遠いほうの端でとります。頂点は関係ありません。だから見るべきは「軸が窓の中か外か」ではなく、「窓の中点より軸が左にあるか右にあるか」です。
窓 の中点は 。これと軸 を比べます。
| 状況 | の範囲 | 軸から遠い端 | 最大値 |
|---|---|---|---|
| 中点が軸より左 | 、すなわち | 左端 | |
| 中点が軸より右 | 、すなわち | 右端 | |
| 中点=軸 | 両端が同じ距離 | (どちらの式でも ) |
【答】
のとき
のとき
場合分けの数が違う理由
最小値は「頂点が使えるか」の判定なので、軸が窓の左・中・右の3通り。
最大値は「どちらの端が遠いか」の判定なので、中点より左・右の2通り。
問われているものが違えば、分け方も変わる。ここを反射で3つに分けてしまう人が本当に多いところです。
5.この型でよく落とす3か所
ミス1 軸が動くのか、窓が動くのかを取り違える
式に文字があれば軸が動き、範囲に文字があれば窓が動く。最初に「動くのはどっちか」を口に出すだけで、方針を間違えなくなります。
ミス2 「軸が窓の中」を式にできない
を、 と の2本に分けて処理する。ここは慣れの問題なので、数直線を描いて確かめる回数を積むしかありません。
ミス3 最大値まで3つに分けてしまう
最大値の判定は中点。頂点の位置は無関係です。最小値の場合分けをそのままコピーすると、必ず余計な場合が出てきます。
6.確認問題(同じ考え方で解けます)
【確認問題】
の における最小値を で場合分けして求めよ。
【解答】
なので軸は 、下に凸。窓の幅は 。
・窓が軸より左(、すなわち )→ 最小は右端 →
・窓の中に軸(、すなわち )→ 最小は頂点 →
・窓が軸より右()→ 最小は左端 →
検算: で 、 で 。境目が両方つながっています。
7.洗足の高1へ:この型は入試でこう出る
洗足学園は中高一貫で数学を先に進めるため、高1の夏に扱うこの内容が、そのまま大学入試の答案で問われます。定義域が動く最大・最小は、共通テストの誘導問題でも、国公立2次の記述でも定番です。
そして記述式では、答えの式が合っているかどうかより、場合分けの根拠を書けているかで点が決まります。「軸が定義域の中にあるとき」と一言書けるかどうか。それは知識ではなく、絵が見えているかどうかの差です。
答えが合っていても、ここで止まったら「まだ理解していない」
- 動いているのは軸か、窓かを説明できるか
- 最小値が3つ、最大値が2つに分かれる理由を言えるか
- 境目で式の値が一致するか、自分で検算したか
8.「聞ける相手がいない」だけで止まっているなら
理屈が分かっても、冊子を一人で最後まで進めるのは別の話です。分からない1問の前で30分固まる時間が、夏休みではいちばんもったいない。
友だちには聞きにくい、塾に行けば知り合いに会うかもしれない——そういう理由で聞けないまま9月を迎えてしまう人を、私は毎年見てきました。
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体験授業は有料3,000円(税込)です。その1回で、実際に手が止まっている問題を一緒に解きます。
9.よくある質問
Q. 「軸が動く型」と「定義域が動く型」は、何が違うのですか?
A. 文字が式の中にあるか、範囲のほうにあるかの違いです。式の中にあれば放物線が動き、範囲にあれば見る窓が動きます。やることは同じで、「軸と範囲の位置関係を調べる」だけです。
Q. 最小値は3つ、最大値は2つに分かれるのはなぜですか?
A. 判定に使う基準が違うからです。最小値は「軸が範囲の中か外か」(3通り)、最大値は「軸が範囲の中点より左か右か」(2通り)で決まります。
Q. 場合分けを書くとき、答案にはどこまで書けばいいですか?
A. 「軸 が定義域に含まれるとき」のように分けた理由を一言添え、簡単な図を添えれば十分です。理由のない場合分けは、正しい式でも減点対象になります。
Q. 夏休みの残りが少ないのですが、間に合いますか?
A. 間に合います。冊子が途中で止まっている段階のほうが、原因を特定して立て直しやすいです。オンラインなので申し込みからすぐ開始できます。
10.関連ページ
次のステップ(発展編)
2次関数の最大・最小【発展編】|2変数・最大値と最小値の差・絶対値つきを本質から解く
基本型を終えた人へ。1文字消去で変域を引き継ぐ2変数の問題、最大値と最小値の差から係数を逆算する4区間の場合分け、絶対値つきの折り返しと解の個数まで、入試レベルの考え方を図解しています。

