指数・対数でつまずく最大の理由は、公式が多いからではありません。指数と対数を別々の単元だと思ってしまうからです。実際には、どちらも「同じ数を何回掛けたか」を扱う、ひとつの話です。
左は「2を5回掛けると32になる」、右は「2を何乗すると32になるか。その答えは5」という意味です。対数は、指数の中に隠れた「何乗」を取り出す記号です。
この記事では、暗記をできるだけ減らします。まず自然数の指数から出発し、指数法則を壊さないように考えることで、0乗、負の指数、分数指数を順に作ります。そのあと、指数を逆向きに読む道具として対数を導きます。例題・確認問題はすべて数強塾のオリジナルです。
この記事の道筋
| 段階 | 考えること | 到達点 |
|---|---|---|
| 1 | 同じ数を繰り返し掛ける | 指数は「掛け算の回数」を記録する |
| 2 | 指数法則をすべての整数で保つ | 0乗と負の指数が必然的に決まる |
| 3 | 指数法則を分数まで広げる | 分数指数と根号がつながる |
| 4 | 指数を逆向きに読む | 対数の定義と条件が分かる |
| 5 | 指数法則を対数の言葉へ翻訳する | 対数法則を理由つきで使える |
| 6 | オリジナル問題を解く | 計算、方程式、桁数へ応用できる |
1. 指数は「掛け算の回数」の記録
たとえば、3を4回掛けた数を毎回 \(3\times3\times3\times3\) と書くのは大変です。そこで、同じ数を繰り返し掛ける操作を短く記録します。
\(3\) を底、\(4\) を指数と呼びます。指数は、底が掛け算の中に何個あるかを表しています。
なぜ、掛け算では指数を足すのか
左側には \(a\) が3個、そのあとに2個あります。合わせて5個です。だから、
となります。「公式だから指数を足す」のではありません。同じ底の個数を数え直した結果、足し算になるのです。
なぜ、累乗の累乗では指数を掛けるのか
\(a\) が3個入ったまとまりを2組並べるので、全部で \(3\times2=6\) 個です。したがって、
です。
2. 0乗は、指数法則を守ると1になる
「何も掛けないのだから0では?」と思いやすいところです。しかし、0乗は値を勝手に決めたものではありません。指数法則を壊さないようにすると、1以外に選べません。
\(a\neq0\) として、同じ数を割る計算を2通りに見ます。
一方、指数の引き算を使えば、
同じ計算の答えは同じでなければならないので、
です。
3. 負の指数は「逆数」を表す
指数をさらに1ずつ下げてみます。
負の指数は負の数になる印ではありません。指数が0より小さくなった分だけ、底で割り続けることを表します。一般に、
です。指数法則からも、
なので、\(a^{-n}\) は \(a^n\) を掛けると1になる数、つまり \(\dfrac1{a^n}\) だと分かります。
4. 分数指数は「根号」を表す
次は指数を整数から分数へ広げます。ここでも、指数法則を守ることを優先します。
\(a^{1/2}\) を2乗すると、累乗の累乗の法則から、
となります。2乗すると \(a\) になる正の数は \(\sqrt a\) です。したがって、
同じように、\(a^{1/3}\) は3乗すると \(a\) になる数なので、\(\sqrt[3]{a}\) です。一般に \(a>0\) として、
次の値を求めてください。
\(32=2^5, 27=3^3, 4=2^2\) です。
5. 指数関数は「同じだけ進むと、同じ倍率になる」
\(y=2^x\) を考えます。\(x\) が1増えるたびに、値は2倍になります。
| \(x\) | \(-2\) | \(-1\) | \(0\) | \(1\) | \(2\) | \(3\) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| \(2^x\) | \(1/4\) | \(1/2\) | \(1\) | \(2\) | \(4\) | \(8\) |
一次関数は \(x\) が同じだけ増えると、\(y\) が同じ量だけ増えます。指数関数は \(x\) が同じだけ増えると、\(y\) が同じ倍率で変わります。この「差ではなく倍率を見る」感覚が、指数関数の本質です。
- \(a>1\) なら \(y=a^x\) は増加する。
- \(0<a<1\) なら \(y=a^x\) は減少する。
- どちらも \(a^0=1\) なので点 \((0,1)\) を通る。
- 値 \(a^x\) は常に正で、0にはならない。
6. 対数は、指数を取り出す逆向きの記号
指数の式 \(a^p=M\) で、底 \(a\) と結果 \(M\) が分かっていて、指数 \(p\) を知りたいとします。その \(p\) を表す記号が対数です。
\(\log_a M\) は、ひとかたまりで「\(a\) を何乗すると \(M\) になるか」を表します。
| 指数の式 | 対数の式 | 言葉で読む |
|---|---|---|
| \(2^6=64\) | \(\log_2 64=6\) | 2を6乗すると64 |
| \(5^{-2}=1/25\) | \(\log_5(1/25)=-2\) | 5を−2乗すると1/25 |
| \(9^{1/2}=3\) | \(\log_9 3=1/2\) | 9を1/2乗すると3 |
なぜ、底は正で1以外なのか
高校数学で実数全体を指数として扱うには、底を \(a>0\) とします。また \(a=1\) では \(1^x=1\) のまま変化せず、「何乗したか」を結果から逆算できません。そのため、
が必要です。
なぜ、真数は正でなければならないのか
正の底の累乗 \(a^x\) は、どんな実数 \(x\) に対しても正です。0や負の数にはなりません。したがって、\(a^x=M\) を満たす実数 \(x\) を考えるには、
が必要です。これが真数条件です。対数方程式では、計算の前と後に必ず確認します。
7. 対数法則は、指数法則の翻訳
対数法則を丸暗記すると、\(\log_a(M+N)\) まで誤って分けたくなります。指数に戻して考えると、使える形がはっきりします。
積が和になる理由
\(p=\log_a M, q=\log_a N\) と置くと、定義より \(M=a^p, N=a^q\) です。したがって、
両辺を底 \(a\) の対数で読めば、
となります。つまり、対数の積の法則は、指数の掛け算の法則を逆向きに読んだものです。
商と累乗も同じ考え
いずれも \(M>0, N>0\) のもとで使います。
底の変換公式は「共通のものさし」
底が異なる対数を比べたいとき、同じ底 \(c\) へ直します。
\(a^p=M\) の両辺に底 \(c\) の対数を取ると \(p\log_c a=\log_c M\) なので、\(p\) について解けばこの公式になります。
8. 問題を見たときの判断順序
- 底をそろえられるかを見る。
- 指数に \(2x\) と \(x\) があるなら、\(t=a^x>0\) と置けないか考える。
- 対数があれば、最初に底の条件と真数条件を書く。
- 積・商・累乗だけを対数法則でまとめる。和や差は分けない。
- 指数に未知数が残るなら、対数を取って指数を前へ下ろす。
- 最後に、元の式へ戻して条件と答えを検算する。
9. オリジナル問題で、発想から練習する
以下はすべて本記事のために作成した数強塾オリジナル問題です。先に自分で考えてから「解答と発想」を開いてください。
次の値を求めてください。
解答と発想を見る
発想:底が \(1/3\) のときは、\((1/3)^k\) が9になる指数 \(k\) を探します。
次の値を求めてください。
解答と発想を見る
発想:足し算は積へ、引き算は商へまとめます。
途中で各対数を小数に直す必要はありません。真数を先に整理すると、2の累乗が現れます。
次の値を求めてください。
解答と発想を見る
発想:底を5にそろえます。
\(5^{\log_5 3}=3\) は、対数の定義そのものです。「5を何乗すると3か」という指数を、実際に5の指数へ戻しているから3になります。
方程式を解いてください。
解答と発想を見る
発想:\(3^{2x}=(3^x)^2\) なので、\(t=3^x\) と置くと2次方程式になります。ただし \(t>0\) を忘れません。
よって \(t=1,9\) です。元に戻すと、
方程式を解いてください。
解答と発想を見る
発想1:計算前に真数条件を書きます。
発想2:対数の和を積へまとめます。
指数の式へ戻すと、
候補は \(x=2,-3\) ですが、真数条件 \(x>1\) を満たすのは \(x=2\) だけです。
\(6^p=35^q=210^2\) のとき、\(\dfrac1p+\dfrac1q\) を求めてください。
解答と発想を見る
発想:\(p,q\) が指数にいるので、同じ底の対数を取って指数を前へ出します。底は10でも \(e\) でも構いません。
それぞれ逆数を作ると、
足して、積の法則を逆向きに使います。
\(6\cdot35=210\) になるように数を設計してあることが見抜きどころです。
\(\log_{10}2=0.3010, \log_{10}3=0.4771\) とします。\(12^{25}\) は何桁の整数か。また、最高位の数字を求めてください。
解答と発想を見る
発想1:桁数は、10の何乗と何乗の間にあるかで決まります。
\(12=2^2\cdot3\) なので、
よって、
したがって27桁です。
発想2:小数部分 \(0.9775\) が最高位を決めます。
\(\log_{10}9=2\log_{10}3=0.9542\) であり、
底10の指数関数は増加するので、
したがって \(12^{25}\) は \(9\times10^{26}\) 以上 \(10\times10^{26}\) 未満で、最高位は9です。
10. 最後に残すべき、たった3つの理解
- 指数は、同じ底を何個掛けたかの記録。 だから積では指数が足され、累乗の累乗では掛けられる。
- 0乗・負の指数・分数指数は、指数法則を保つために決まる。 0乗は1、負の指数は逆数、分数指数は根号になる。
- 対数は指数を取り出す逆操作。 対数法則は指数法則を逆向きに翻訳したものである。
公式を忘れたときは、指数なら「底が何個あるか」、対数なら「底を何乗すると真数になるか」へ戻ってください。根本の言葉へ戻れる人は、初めて見る式でも自分で法則を作り直せます。

