湘南白百合学園の高校1年生には、夏休みの課題として問題冊子が配られます。冊子の後半に入ってくる「置き換え( とおく)」を使う2次関数の最大・最小は、そこまで順調に進んできた人が最初に足を止める場所です。
この型でつまずく原因は、ほぼ1つに絞れます。置き換えた文字が動ける範囲を調べていないことです。逆に言えば、そこさえ意識できれば一気に解けるようになります。この記事では、なぜその確認が必要なのかを、グラフの絵で見えるところまで丁寧にほどいていきます。
この記事で扱う「型」
置き換え型=式の中に同じかたまり(今回は )が繰り返し出てくるので、それを と置いて2次関数を2階建てにするタイプ。数学II以降でも三角関数・指数関数で何度も再会します。
1.この記事で解く問題
【例題】置き換えを使う2次関数の最大・最小
について、
(1) がすべての実数値をとるとき、 の最小値を求めよ。
(2) のとき、 の最大値と最小値を求めよ。
【答えだけ先に】
(1) 最小値 ( のとき)
(2) 最大値 ( のとき)、最小値 ( のとき)
※(1)の答えを「」と書いてしまった人は、この記事でいちばん大事なところを飛ばしています。以下を読んでください。
2.なぜ置き換えるのか
与えられた式をそのまま展開すると、 の4次式になります。4次関数のグラフは高1では扱いませんし、平方完成もできません。
ところがよく見ると、 という同じかたまりが2回出てきています。これを1つの文字と見れば、見慣れた2次関数になります。
そこで とおきます。すると、
置き換えの本質
置き換えとは、「解けない形」を「解ける形」に翻訳する作業です。ただし翻訳には代償があります。
は自由な文字ではなく、 から作られた文字なので、勝手な値はとれません。ここを確認しないと、必ず間違えます。
3.最大の急所: は好き勝手には動けない
を平方完成してみましょう。
は2乗なので 以上。したがって は より小さくなれません。
図1: のグラフ。 をどう動かしても、 は頂点の高さ より下には行けない。上にはいくらでも行ける。
【なぜこの確認が要るのか】もし が全実数を動けるなら、 の最小値は です。しかし はそもそも から作れない値。実際、 すなわち は判別式 で実数解を持ちません。存在しない場所の値を答えてしまう——これがこの型で最も多い失点です。
4.例題(1)|軸が範囲の外にあるときの考え方
【問題(再掲)】
()の最小値を求めよ。
平方完成します。
軸は 、下に凸。ところが調べる範囲は なので、軸は範囲の外(左)にあります。
下に凸のグラフで軸が範囲の左にあるとき、範囲の中では右上がりの坂だけが見えています。だから一番低いのは、範囲の左端 。
このとき 、つまり より です。
【答】
最小値 ( のとき)
【検算】元の式に を直接入れてみます。 なので 。一致しました。置き換えを使ったら、最後に元の に戻して確かめる。この一手間が答案の信頼度を変えます。
5.例題(2)| の範囲がついたら、 の範囲を出し直す
【問題(再掲)】
のとき、 の最大値と最小値を求めよ。
手順は2段階です。まず の範囲から の範囲を作り、次に の2次関数として解く。この順番を崩さないでください。
ステップ1: の範囲を求める
を で考えます。これ自体が「定義域つき2次関数の最大・最小」の問題です。
軸 は範囲の中にあるので、最小は頂点で ()。最大は軸から遠いほうの端で、、 より のほう。。
図2:(青い帯)に対応する の範囲。 で最小 、 で最大 。 の端が の端になるとは限らないのがポイント。
【よくある誤解】「 と を代入すれば の範囲が出る」と考える人がいますが、それは間違いです。 では 、 では 。この2つだけ見ると となり、本当の最小 を取りこぼします。 の範囲もグラフで求める、が正解です。
ステップ2: の2次関数として解く
を で考えます。軸 は範囲の左の外なので、範囲の中ではずっと右上がり。
図3:(青い帯)での様子。右上がりなので、左端で最小、右端で最大になる。
したがって、
・最小は左端 :(このとき )
・最大は右端 :(このとき )
【答】
最大値 ( のとき)、最小値 ( のとき)
【検算】 を元の式へ。 なので 。合っています。
6.この型の解き方を4行にまとめる
置き換え型の手順
- ① 繰り返し出てくるかたまりを とおく
- ② の変域を求める( の範囲がある場合はそこから作る)
- ③ の2次関数として、その変域の中で最大・最小を求める
- ④ 最後に の値に戻して答える(検算も兼ねる)
②を飛ばした答案は、途中の式がすべて正しくても答えが合いません。「置き換えたら変域」——この6文字だけ覚えて帰ってください。
7.この型でよく落とす3か所
ミス1 の変域を調べずに頂点を答える
この型の失点の大半がこれ。 は から作られた文字なので、自由には動けません。
ミス2 の両端を代入して の範囲を出す
自体が2次関数なので、範囲の内側に頂点があれば端では最小になりません。 の範囲もグラフで求める。
ミス3 答えを のまま書いて終わる
問題が聞いているのは の話です。「 いくつのとき」まで書いてはじめて答案が完成します。
8.確認問題
【確認問題】
の最小値を求めよ。
【解答】
とおくと 。
。軸は で、これは の範囲の中にあります。
よって最小値は頂点の 。このとき 、すなわち より 。
今回は軸が変域の中にあったので頂点が使えました。同じ型でも、変域と軸の位置関係次第で答えの出方が変わる——だから毎回確認するのです。
9.湘南白百合の高1へ:この型は「その先」でまた出会う
湘南白百合学園は中高一貫で数学を先に進めるため、高1の夏に扱う内容がそのまま大学入試につながります。とくに置き換えは、数学IIの三角関数( と置く)、指数関数( と置く)で必ず再登場します。
そのとき問われるのも、まったく同じ一点です。「置き換えた文字の変域は?」。高1の夏にこの問いを体に入れた人は、2年後の入試で同じ場所で立ち止まりません。
答えが合っていても、ここで止まったら「まだ理解していない」
- なぜ の変域を調べる必要があるのか、理由を言えるか
- が使えない理由を、 の式に戻して説明できるか
- 最後に の値へ戻して検算したか
10.「聞ける相手がいない」だけで止まっているなら
理屈が分かっても、冊子の残りを一人で進めるのは別の話です。分からない1問の前で止まっている時間が、夏休みではいちばんもったいない。
友だちには聞きにくい、塾に行けば知り合いに会うかもしれない——そういう理由で聞けないまま9月を迎える人を、私は毎年見てきました。
数強塾は、オンラインの完全1対1です
- 誰にも会いません。校舎に通わないので、同じ学校の友だちや先輩に見られる心配がありません。
- 恥ずかしくありません。1対1なので、他の生徒の前で間違える心配がない。「全然分からない」と言える場所です。
- すぐ始められます。自宅から、今日つまずいた冊子の1問を持ち込むところから始められます。
- プロ講師だけが教えます。学生アルバイトは在籍していません。湘南白百合の進度・教材に合わせて指導します。
- 「解けた」で終わらせません。なぜその置き換えをするのか、答案にどう書くかまで詰めます。
体験授業は有料3,000円(税込)です。その1回で、実際に手が止まっている問題を一緒に解きます。
11.よくある質問
Q. どんなときに置き換えを使えばよいですか?
A. 同じかたまりが2回以上出てくるときです。今回なら 。展開して次数を上げるより、かたまりのまま1文字と見るほうが式が簡単になります。
Q. の変域は、毎回求めないといけませんか?
A. 毎回必要です。置き換えた瞬間に、 は「 から作れる値だけ」に制限されます。この確認を飛ばすと、存在しない点での値を答えてしまいます。
Q. 4次式なのに2次関数として解いてよいのですか?
A. よいです。ただし解いているのは「 の2次関数」であって、 の関数ではありません。だから最後に の値へ戻す必要があります。
Q. 夏休みの残りが少ないのですが、間に合いますか?
A. 間に合います。冊子が途中で止まっている段階のほうが、原因を特定して立て直しやすいです。オンラインなので申し込みからすぐ開始できます。
12.関連ページ
次のステップ(発展編)
2次関数の最大・最小【発展編】|2変数・最大値と最小値の差・絶対値つきを本質から解く
基本型を終えた人へ。1文字消去で変域を引き継ぐ2変数の問題、最大値と最小値の差から係数を逆算する4区間の場合分け、絶対値つきの折り返しと解の個数まで、入試レベルの考え方を図解しています。

