このページは、数学I・Aの全9単元を1ページにまとめた要点辞典です。単元ごとに「使う道具(公式)」「定石(どんな形が来たら何を試すか)」「つまずきポイント」「オリジナル例題」の4点をそろえてあります。
公式の一覧だけなら教科書の巻末にもあります。このページで足したのは、その公式を「いつ・なぜ使うのか」と、実際に点を落とす場所です。たとえば2次関数の最大最小は、軸と定義域の位置関係で場合分けが3通りに割れます。相加平均・相乗平均の関係で最小値を出すときは、等号が成立する値が定義域の中に入っているかを必ず確かめないと答えが変わります。そういう「知っていれば落とさないところ」を、単元ごとに書き出しました。
このページの使い方
頭から通読する必要はありません。いま習っている単元、または直前の試験範囲だけを開いてください。目次から飛べます。
そして、読むだけで終わらせないでください。各単元の最後にオリジナルの例題を置いてあります。解答を見る前に、まず自分で5分だけ手を動かしてみてください。「どの道具を使う場面か」に気づけたかどうかが、その単元を使える状態になっているかの判定になります。
解き方の型そのものを、分野を横断して整理したページは別にあります。あわせて読むと効きます 👉 入試数学の定石(全27章)
免責と、このページの作り方について
このページは学習の助けとして書かれたまとめです。正確さを保証するものではありません。最終的な判断は、必ず教科書・学校の先生・信頼できる問題集で確認してください。このページを読んだことで生じた不利益について、数強塾は責任を負いません。
掲載している例題・解説・図は、すべて数強塾が新規に書き下ろしたものです。市販の参考書・問題集から問題文や解説を転載したものは一切含まれていません。
目次
数学I
- 数と式 ── 展開・因数分解/実数と平方根/1次不等式/2次方程式
- 2次関数 ── グラフと平行移動/最大最小の場合分け/2次不等式/解の配置
- 図形と計量 ── 三角比の定義と拡張/正弦定理・余弦定理/面積と空間図形
- 集合と命題 ── 集合の演算/必要条件・十分条件/対偶と背理法
- データの分析 ── 代表値と四分位/分散・標準偏差/相関係数/変量の変換
数学A
この辞典と一緒に使うページ
- 数学II・B・Cの要点辞典(全12単元) 数学I・Aの次はこちら。同じ形式でまとめています。
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- 論理と証明の要点辞典(全8章) 必要十分・背理法・帰納法と、減点されない答案の書き方。
- 入試数学の定石(全27章) 分野を横断する「解き方の型」を、中学生でも読める形で整理したページです。
- 無料学習プリント・映像授業 単元別のプリントを無料で公開しています。読んだ内容をその場で試せます。
- 数学の要点辞典まとめ(中1〜数学III 全7ページ) 単元名から直接その章へ飛べる逆引き表があります。
- 高校数学辞典(単元別のオリジナル問題) 読んだ内容を、その場で問題で試せます。
- 大学入試の過去問 全問解説 実際の入試で、この単元がどう出るかを確かめられます。
- 二次関数の単元ガイド 第2章をさらに詳しく扱っています。
第1章 数と式
数学I・Aの土台になる単元です。ここで身につけるのは「計算が速くなること」よりも、式を、扱いやすい形に持ちかえる感覚です。展開・因数分解・平方根・絶対値・不等式は、どれも「別の形に書き直す道具」だと思ってください。あとの単元で行き詰まったとき、原因の多くはこの章の操作に戻ってきます。
ここが怪しければ先に:展開と因数分解(中3)・平方根(中3) / この先つながる:式と証明(数学II・B・C) / この単元の解法パターン:数と式 全12型 / この単元を1日1枚で:毎日の数学 41枚
使う道具
| 道具 | 形 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 乗法公式 | (a ± b)2 = a2 ± 2ab + b2 | 展開と、平方完成の逆算 |
| 和と差の積 | (a + b)(a − b) = a2 − b2 | 有理化・因数分解・差の形づくり |
| 3項の平方 | (a + b + c)2 = a2 + b2 + c2 + 2ab + 2bc + 2ca | 対称式、3変数の条件式 |
| 3乗の公式 | a3 ± b3 = (a ± b)(a2 ∓ ab + b2) | 3次の因数分解(複号同順) |
| 3変数の恒等式 | a3 + b3 + c3 − 3abc = (a + b + c)(a2 + b2 + c2 − ab − bc − ca) | 「和が0」の条件と相性がよい |
| 基本対称式 | x2 + y2 = (x + y)2 − 2xy | x, y を個別に求めずに値を出す |
| 同上(3乗) | x3 + y3 = (x + y)3 − 3xy(x + y) | 同上 |
| 絶対値 | |a| = a(a ≥ 0)、−a(a < 0) | 数直線上の「0からの距離」 |
| 根号の基本 | √(a2) = |a| | a ではない。符号の扱いの要 |
| 二重根号 | √(a + b + 2√(ab)) = √a + √b | 中を「和と積」に見立てる |
| 解の公式 | x = (−b ± √(b2 − 4ac)) / (2a) | a ≠ 0 が前提 |
| 判別式 | D = b2 − 4ac | 実数解の個数(2個/1個/なし) |
| 解と係数の関係 | α + β = −b/a、αβ = c/a | 解を求めずに対称式を出す |
定石
因数分解は、この順番で試す
① 共通因数でくくる(これを飛ばすと以降が全部重くなります)
② 公式に当てはまる形か見る(2乗の差、平方の形、3乗の和・差)
③ いちばん次数の低い文字について整理する
④ たすきがけ
⑤ 複2次式なら x2 = X と置く
③がいちばん強い手です。2つ以上の文字が混ざった式は、次数の低い文字について降べきの順に整理すると、たいてい見通しがつきます。文字が2つあってどちらも2次なら、どちらか一方について整理してから、その係数を因数分解の形に持ちこみます。
対称式は、和と積だけで書ける
x と y を入れかえても変わらない式(対称式)は、必ず x + y と xy だけで書けます。だからx と y を個別に求める必要はありません。値が汚い数(√を含む数など)のときほど、この差が大きく効きます。
絶対値は、まず数直線で考える
|a| は「0からの距離」、|a − b| は「a と b の距離」です。この見方をしてから場合分けに入ると、境目を落としません。
|x| < a ⇔ −a < x < a (a > 0)
|x| > a ⇔ x < −a または x > a
絶対値が2つ以上あるときは、中身が0になる値で区切って場合分けします。区切りの値は、どちらの場合に入れても答えは変わりません(そこで両方の式が同じ値になるからです)。
1次不等式は「割る前に符号」
不等式で文字を含む数で割るときは、その符号が決まっているかを必ず確認します。負の数で割ると不等号の向きが変わるからです。符号が決まっていなければ、割らずに移項して積の形にするか、場合分けします。
2次方程式は、係数が0にならないかを先に見る
ax2 + bx + c = 0 と書いてあっても、「2次方程式」と明言されていなければ a = 0 の可能性が残ります。そのときは1次方程式になり、解の公式も判別式も使えません。
つまずきポイント
① √(a2) = a ではありません。正しくは √(a2) = |a|。a = −3 なら √9 = 3 であって −3 ではありません。根号を外すときは、中身の符号が決まっているかを毎回確認してください。
② 二重根号は「和と積」で見る。√(7 + 4√3) のような形は、まず 4√3 = 2√12 と2√ の形に直すのが先です。そのうえで「足して7、かけて12」になる2数(3と4)を探します。ここを飛ばして当てずっぽうに置くと合いません。
③ 判別式は「実数解」の話です。D < 0 は「実数の解がない」であって「解がない」ではありません。また、判別式が使えるのは係数が実数の2次方程式のときです。
④ 不等式で文字を払うとき。a < b の両辺に c をかけても、c の符号がわからなければ ac < bc とは書けません。分母を払うときも同じです。
⑤ 「実数の範囲で因数分解せよ」と「有理数の範囲で」は別。x2 − 2 は有理数の範囲ではこれ以上分解できませんが、実数の範囲なら (x + √2)(x − √2) です。問題文がどちらを聞いているかを読んでください。
オリジナル例題
例題1-1(2文字の因数分解) 2x2 + 5xy + 2y2 − x − 5y − 3 を因数分解してください。
考え方:x についても y についても2次なので、どちらでもよいのですが、ここでは x について降べきの順に整理します。
2x2 + (5y − 1)x + (2y2 − 5y − 3)
定数項にあたる部分をまず因数分解します。2y2 − 5y − 3 = (2y + 1)(y − 3)。
そこで (x + ●)(2x + ▲) の形を考え、● と ▲ に 2y + 1 と y − 3 を割り当てて、x の係数が 5y − 1 になる組み合わせを探します。
(x + 2y + 1)(2x + y − 3) を展開すると、x の係数は (y − 3) + 2(2y + 1) = 5y − 1。合いました。
答え:(x + 2y + 1)(2x + y − 3)
確認:y = 0 とすると元の式は 2x2 − x − 3、答えは (x + 1)(2x − 3)。展開すると 2x2 − x − 3 で一致します。文字に具体的な数を入れて確かめるのは、因数分解の検算の定番です。
例題1-2(二重根号) √(7 + 4√3) を簡単にしてください。
考え方:まず √ の前を2にそろえます。4√3 = 2 × 2√3 = 2√12 なので
√(7 + 2√12)
次に「足して7、かけて12」になる2数を探します。3と4です。
√(7 + 2√12) = √4 + √3 = 2 + √3
確認:(2 + √3)2 = 4 + 4√3 + 3 = 7 + 4√3。合っています。
なぜこの手順なのか:(√a + √b)2 = a + b + 2√(ab) だからです。中身を「和 + 2√積」の形に整えれば、あとは和と積から2数を求めるという、対称式でおなじみの作業になります。
例題1-3(絶対値つき不等式) |x − 1| + |x + 2| ≤ 5 を解いてください。
考え方:中身が0になるのは x = 1 と x = −2。ここが境目です。
・x ≤ −2 のとき:(1 − x) + (−x − 2) = −2x − 1 ≤ 5 → x ≥ −3。合わせて −3 ≤ x ≤ −2
・−2 ≤ x ≤ 1 のとき:(1 − x) + (x + 2) = 3 ≤ 5 はつねに成り立つので、この範囲すべて
・1 ≤ x のとき:(x − 1) + (x + 2) = 2x + 1 ≤ 5 → x ≤ 2。合わせて 1 ≤ x ≤ 2
答え:−3 ≤ x ≤ 2
確認:x = −3 で 4 + 1 = 5、x = 2 で 1 + 4 = 5、x = 3 なら 2 + 5 = 7 で外れます。
別の見方:|x − 1| + |x + 2| は「数直線上で、1 と −2 の2点までの距離の和」です。2点の間(−2 ≤ x ≤ 1)ではその和がつねに3で一定、外に出ると出た分だけ増えていきます。この見方をすると、真ん中の場合が定数になる理由がそのまま見えます。
例題1-4(対称式) x = 2 + √3、y = 2 − √3 のとき、x2 + y2 と x3 + y3 を求めてください。
考え方:x と y をそのまま2乗・3乗するのは大変です。先に和と積を出します。
x + y = 4、xy = (2 + √3)(2 − √3) = 4 − 3 = 1
x2 + y2 = (x + y)2 − 2xy = 16 − 2 = 14
x3 + y3 = (x + y)3 − 3xy(x + y) = 64 − 12 = 52
確認:x ≒ 3.73、y ≒ 0.27 なので、x2 + y2 ≒ 13.9 + 0.07 = 14、x3 + y3 ≒ 52.0。合っています。
ここが効く場面:xy = 1 のように積がきれいになる組は、x と 1/x の関係になっていることが多く、そのまま x + 1/x 型の問題につながります。
例題1-5(文字を含む係数の方程式) a を定数とするとき、方程式 ax2 + (a + 1)x + 1 = 0 を解いてください。
考え方:x2 の係数が a という文字です。「2次方程式」とは書かれていないので、a = 0 なら1次方程式になります。最高次の係数が0になる場合を先に分ける——これがこの型の第一手です。
① a = 0 のとき:式は x + 1 = 0 となり、x = −1。
② a ≠ 0 のとき:2次方程式です。左辺は因数分解できて
ax2 + (a + 1)x + 1 = (ax + 1)(x + 1) = 0
よって x = −1/a または x = −1。
答え:a = 0 のとき x = −1、a ≠ 0 のとき x = −1, −1/a(a = 1 のときは −1/a = −1 となり重解)
確認:因数分解した式を展開して戻すと (ax + 1)(x + 1) = ax2 + ax + x + 1 = ax2 + (a + 1)x + 1。もとの式に一致します。
数を入れても確かめられます。a = 2 なら 2x2 + 3x + 1 = 0 で解は −1 と −1/2、a = −3 なら解は −1 と 1/3。どちらも −1/a と合っています。
「解の個数を答えよ」と聞かれたら、さらに a = 1 の場合を分けることになります(このとき2つの解が重なって1個)。問われているのが「解」なのか「解の個数」なのかで、分ける場所が変わります。文字が係数に入っている問題では、「その文字が特別な値になるとき、式の形そのものが変わらないか」を毎回疑ってください。
この単元のチェックリスト
| 確認すること | できていないと起きること |
|---|---|
| 因数分解で共通因数を先にくくったか | 以降の計算量が数倍になる |
| 2文字以上なら低次の文字で整理したか | 手が止まる/たすきがけが合わない |
| 根号を外すとき中身の符号を見たか | √(a2) を a としてしまう |
| 絶対値の境目をどちらかに入れたか | 境目の値が答えから抜ける |
| 不等式で割った文字の符号を確認したか | 不等号の向きが逆になる |
| 2次方程式で a ≠ 0 を確認したか | 1次になる場合を丸ごと落とす |
| 対称式を個別に解こうとしていないか | 汚い数の計算に巻き込まれる |
もっと解きたい方へ 👉 数と式の特訓道場(20題と全解説)
第2章 2次関数
数学I・Aでいちばん出題される単元で、しかも他の単元の土台にもなります。ここで扱う考え方——「頂点と軸を出す」「定義域の中で動かす」「文字が入ったら場合分けする」——は、そのまま数学IIの微分・数学Bの数列にも持っていけます。
この単元の核心は、たった一言でいえば 「グラフを描いてから考える」 です。式のまま処理しようとすると場合分けが見えず、答えが1つ足りない・多いという事故が起きます。
ここが怪しければ先に:関数 y = ax2(中3)・二次方程式(中3) / この先つながる:微分法(数学II)(数学II・B・C) / この単元の解法パターン:2次関数 全20型 / この単元を1日1枚で:毎日の数学 30枚
使う道具
| 道具 | 形 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 標準形(平方完成) | y = a(x − p)2 + q | 頂点 (p, q)、軸 x = p が一発で読める |
| 平方完成の手順 | y = ax2 + bx + c = a(x + b/(2a))2 + c − b2/(4a) | まず a でくくるのが要 |
| 平行移動 | x 方向に p、y 方向に q → x を x − p、y を y − q に置きかえ | 符号が逆になるのが要注意 |
| 対称移動 | x 軸対称:y → −y / y 軸対称:x → −x / 原点対称:両方 | グラフの移動問題 |
| 判別式とグラフ | D > 0 / D = 0 / D < 0 | x 軸との共有点が 2個 / 1個 / 0個 |
| 2次不等式 | ax2 + bx + c > 0 | グラフが x 軸より上にある x の範囲 |
| 解の配置の3点セット | 判別式・軸の位置・端点の符号 | 解が指定範囲にある条件 |
| 関数の決定 | y = a(x − p)2 + q / y = a(x − α)(x − β) / y = ax2 + bx + c | 与えられた条件で置く形を選ぶ |
定石
最大最小は、軸と定義域の位置関係で決まる
これがこの単元の中心です。a > 0(下に凸)のとき、定義域つきの最大最小は次のように決まります。
最小値は「軸」で場合分け(3パターン)
定義域を α ≤ x ≤ β、軸を x = p とすると
① p < α(軸が定義域より左) → 最小は左端 x = α
② α ≤ p ≤ β(軸が定義域の中) → 最小は頂点 x = p
③ β < p(軸が定義域より右) → 最小は右端 x = β
最大値は「定義域の中央」で場合分け(2パターン)
中央を m = (α + β) / 2 とすると
① p < m → 最大は遠いほうの端=右端 x = β
② p > m → 最大は左端 x = α
(p = m のときは両端が同じ値になり、どちらでも同じです)
ここがいちばん間違えるところです。最小値の切れ目は軸が定義域に入るかどうか、最大値の切れ目は軸が定義域の中央より左か右か。a > 0 のとき、最大値は「軸から遠いほうの端」で取るからです。この2つを同じ切れ目で処理すると答えが合いません。
a < 0(上に凸)のときは、最大と最小の役割がそっくり入れかわります。公式として覚えるのではなく、グラフを描いて「どっちが上か」を毎回見るほうが、結局は速くて確実です。
動くのは軸か、定義域か
文字が入った最大最小には2つの型があります。
型A:軸が動く 例 y = x2 − 2ax + 3(0 ≤ x ≤ 2)
定義域は固定で、軸 x = a が左右に動きます。グラフを固定して定義域の窓を動かすイメージでも同じです。
型B:定義域が動く 例 y = x2 − 4x + 1(a ≤ x ≤ a + 2)
グラフは固定で、幅2の窓が動きます。窓の中に軸が入るかどうかで場合分けします。
どちらもやることは同じです。「軸が窓の左/中/右」の3通りを、絵で確かめてから式にします。
2次不等式は、解いてからグラフ
ax2 + bx + c > 0 は「グラフが x 軸より上にある範囲」です。手順は、① a > 0 にそろえる(負なら両辺に −1 をかけて不等号を反転)② = 0 として解く ③ グラフを描いて読み取る、の3段階。
a > 0、2解 α < β のとき
ax2 + bx + c > 0 ⇔ x < α または x > β(外側)
ax2 + bx + c < 0 ⇔ α < x < β(内側)
D = 0(重解 α)のとき
> 0 の解は x ≠ α のすべての実数、≥ 0 はすべての実数、< 0 は解なし、≤ 0 は x = α のみ
D < 0 のとき
> 0 はすべての実数、< 0 は解なし
「すべての x で成り立つ」は、最小値の条件に言いかえる
a > 0 のとき、「すべての実数 x で f(x) > 0」は「グラフが x 軸と交わらない」、つまり D < 0 です。定義域が限られている場合は判別式では処理できないので、その範囲での最小値 > 0 に言いかえます。
解の配置は3点セット
「2解がともに◯より大きい」「2解が◯と△の間にある」といった問題は、① 判別式 ② 軸の位置 ③ 端点での値の符号の3つを、グラフを描きながら書き出します。公式として覚えるのではなく、その配置になる絵を描いて、必要な条件を読み取るのが正しい進め方です。
つまずきポイント
① 最大と最小で場合分けの切れ目が違う。上に書いたとおりです。最小は軸、最大は定義域の中央。「1つの場合分けで両方いける」と思っていると必ずずれます。
② 平行移動は符号が逆。x 方向に +3 動かすなら、式は x を x − 3 に置きかえます。移動する向きと式の符号は逆です。ここは覚えるより、「頂点がどこに行くか」を確かめるほうが安全です。
③ ax2 + bx + c は2次式とは限らない。a = 0 なら1次式です。「2次関数」「2次方程式」と書かれていれば a ≠ 0 が保証されますが、ただ「関数」「方程式」なら a = 0 の場合を考える必要があります。
④ 相加平均・相乗平均を使うときは、等号成立が定義域に入っているか。これは数学IIで習う道具ですが、最大最小の場面で早く出会うので先に注意しておきます。x > 0 のとき x + 1/x ≥ 2 は正しいのですが、これだけでは「最小値が2」とは言えません。等号が成り立つ x = 1 が、その問題の定義域の中にあるかを確かめて初めて最小値です。もし定義域が x ≥ 2 なら、x = 1 は範囲外なので最小値は2ではなく、x = 2 のときの 2.5 になります。不等式が成り立つことと、それが最大最小であることは別です。
⑤ 定義域の端が「含む」か「含まない」か。−1 < x ≤ 2 のような範囲では、端の値を取れないことがあります。値域を答えるときに ≤ と < を取り違えないでください。最大値・最小値は「その値を実際に取れる」ときだけ存在します。
オリジナル例題
例題2-1(軸が動く最大最小・3パターン) f(x) = x2 − 2ax + 3(0 ≤ x ≤ 2)の最小値 m(a) と最大値 M(a) を、a の値で場合分けして求めてください。
まず平方完成:f(x) = (x − a)2 + 3 − a2。軸は x = a、下に凸です。
最小値(軸で3分割)
・a < 0:軸が左外 → 左端 x = 0 で m(a) = 3
・0 ≤ a ≤ 2:軸が中 → 頂点で m(a) = 3 − a2
・2 < a:軸が右外 → 右端 x = 2 で m(a) = 7 − 4a
最大値(中央 x = 1 で2分割)
・a < 1:軸が中央より左 → 遠いほうの端 x = 2 で M(a) = 7 − 4a
・1 ≤ a:軸が中央より右 → x = 0 で M(a) = 3
確認:a = 1.5 なら m = 3 − 2.25 = 0.75、M = 3。実際に f(x) = x2 − 3x + 3 を 0 ≤ x ≤ 2 で調べると、頂点 x = 1.5 で 0.75、端は f(0) = 3、f(2) = 1。合っています。
気づいてほしいこと:最小の切れ目は a = 0, 2、最大の切れ目は a = 1 で、まったく別の場所です。同じ場合分けで済ませようとすると、ここで必ず崩れます。
例題2-2(すべての実数で成り立つ条件) すべての実数 x に対して x2 + 2ax + a + 6 > 0 が成り立つような a の範囲を求めてください。
考え方:x2 の係数が正なので、このグラフは下に凸。すべての x で正ということは、グラフが x 軸に一度も触れないということです。
D / 4 = a2 − (a + 6) < 0 → a2 − a − 6 < 0 → (a − 3)(a + 2) < 0 → −2 < a < 3
答え:−2 < a < 3
端点が入らない理由の確認:a = 3 のとき式は x2 + 6x + 9 = (x + 3)2。x = −3 で0になるので、「> 0」は成り立ちません。もし問題が ≥ 0 なら a = 3 は答えに含まれます。等号の有無で端点が入るか変わるので、問題文を読み直してください。
例題2-3(解の配置) 2次方程式 x2 − 2ax + a + 2 = 0 が 0 < x < 3 の範囲に異なる2つの実数解をもつような a の範囲を求めてください。
考え方:f(x) = x2 − 2ax + a + 2 とおき、「0と3の間で x 軸を2回またぐ絵」を描きます。その絵になるために必要なものを読み取ると、次の4つです。
① 異なる2実解:D / 4 = a2 − (a + 2) > 0 → (a − 2)(a + 1) > 0 → a < −1 または a > 2
② 軸が範囲の中:0 < a < 3
③ 左端で正:f(0) = a + 2 > 0 → a > −2
④ 右端で正:f(3) = 11 − 5a > 0 → a < 11/5
4つすべてを満たすのは 2 < a < 11/5。
答え:2 < a < 11/5
確認:a = 2.1 なら解は約 1.54 と 2.66 で、どちらも 0 < x < 3 の中。a = 2.2(= 11/5)だと解が 1.4 と 3 になり、右の解がちょうど3に乗ってしまうので外れます。a = 2 は重解になるので「異なる2つ」に反します。境目がなぜ外れるのかを1つずつ確かめると、4条件の意味が腑に落ちます。
なぜ端点の符号を見るのか:下に凸のグラフが 0 と 3 の間で2回 x 軸を切るなら、その外側(x = 0 と x = 3)ではグラフは上にいるはずです。だから f(0) > 0、f(3) > 0。絵から読み取っているだけで、覚えている公式はありません。
例題2-4(定義域が動く型) f(x) = x2 − 4x + 5 の、a ≤ x ≤ a + 2 における最小値 m(a) を求めてください。
考え方:例題2-1は軸が動く型でしたが、こちらは軸が固定で、区間のほうが動く型です。動くものが入れかわっただけで、見るところは同じ——軸が区間のどこにあるかです。
f(x) = (x − 2)2 + 1 なので軸は x = 2 に固定。区間 [a, a + 2] が数直線の上を左から右へ動いていく絵を思い浮かべると、起こることは3通りしかありません。
① 区間が軸より左(a + 2 < 2 つまり a < 0):区間の中では右下がりなので、最小は右端。
m(a) = f(a + 2) = (a + 2)2 − 4(a + 2) + 5 = a2 + 1
② 軸が区間の中(a ≤ 2 ≤ a + 2 つまり 0 ≤ a ≤ 2):最小は頂点。m(a) = 1
③ 区間が軸より右(2 < a):区間の中では右上がりなので、最小は左端。
m(a) = f(a) = a2 − 4a + 5
答え:a < 0 のとき m(a) = a2 + 1、0 ≤ a ≤ 2 のとき m(a) = 1、2 < a のとき m(a) = a2 − 4a + 5
確認:境目でつながっているかを見ます。a = 0 では ① が 0 + 1 = 1、② も 1。a = 2 では ② が 1、③ が 4 − 8 + 5 = 1。両方の境目で値が一致していれば、場合分けの切れ目を取り違えていないことの手がかりになります。逆にここでずれていたら、不等号のどちらかが間違っています。
例題2-5(2次関数の決定) 次の2次関数を求めてください。(1) 頂点が (2, −3) で、点 (0, 1) を通る。(2) 3点 (0, 1)、(1, 0)、(2, 3) を通る。
考え方:2次関数を決める問題は、与えられた条件を見て「どの形で置くか」を先に決めると、そのあとの計算量がはっきり変わります。
頂点や軸がわかっている → y = a(x − p)2 + q
x 軸との交点がわかっている → y = a(x − α)(x − β)
通る点が3つ与えられている → y = ax2 + bx + c
どの形で置いても答えは同じですが、未知数が少なくて済む置き方があるなら、そこから考え始めたほうが速く終わります。条件から形の見当をつけるところまでが、この型でいちばん効くところです。
(1) 頂点がわかっているので y = a(x − 2)2 − 3 と置けます。未知数は a だけ。
点 (0, 1) を通るので
1 = a(0 − 2)2 − 3 = 4a − 3 → a = 1
y = (x − 2)2 − 3 = x2 − 4x + 1
(2) 頂点の情報がないので y = ax2 + bx + c と置きます。
(0, 1) より c = 1
(1, 0) より a + b + 1 = 0 → a + b = −1 ……①
(2, 3) より 4a + 2b + 1 = 3 → 2a + b = 1 ……②
②−① より a = 2、①に戻して b = −3
y = 2x2 − 3x + 1
答え:(1) y = x2 − 4x + 1 (2) y = 2x2 − 3x + 1
確認:求めた式に、与えられた点を全部入れ直すのがいちばん速い検算です。
(1) は x = 0 のとき 1、x = 2 のとき 4 − 8 + 1 = −3。通る点も頂点も合っています。
(2) は x = 0, 1, 2 を入れると順に 1, 0, 3。3点とも通っています。
(2) を頂点の形で置くと a、p、q の3つが未知のまま2次の式が3本でき、計算が重くなります。「3点なら一般形」と形を選べたかどうかで、かかる時間が変わります。
この単元のチェックリスト
| 確認すること | できていないと起きること |
|---|---|
| 平方完成して頂点と軸を出したか | 場合分けの切れ目が見えない |
| 最小は軸、最大は中央で分けたか | 片方の場合分けがずれる |
| グラフを実際に描いたか | 場合分けの本数が足りない |
| x2 の係数の符号を確認したか | 最大と最小が逆になる |
| 定義域の端が含まれるか見たか | 値域の等号を取り違える |
| 不等式で最大最小を言うとき等号成立を見たか | 取れない値を最小値にしてしまう |
| 解の配置で端点の符号を書いたか | 範囲の外に解が出る場合を除けない |
もっと解きたい方へ 👉 2次関数(高1)の特訓道場(場合分けと解の配置・20題)
第3章 図形と計量
三角比を使って、図形の「長さ」と「角度」を行き来する単元です。中学までは直角三角形と三平方の定理しか使えませんでしたが、ここで直角のない三角形も計算できるようになります。
覚える公式が多く見えますが、実際に選ぶ場面で迷うのは「正弦定理か、余弦定理か」の1点だけです。そこさえ判断できれば、あとは代入です。
ここが怪しければ先に:三平方の定理(中3)・相似(中3) / この先つながる:三角関数(数学II・B・C) / この単元の解法パターン:図形と計量 全14型 / この単元を1日1枚で:毎日の数学 10枚
使う道具
| 道具 | 形 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 相互関係 | sin2θ + cos2θ = 1 | 片方から他方を出す(符号に注意) |
| 同上 | tanθ = sinθ / cosθ | 3つのうち2つがわかれば残りも出る |
| 同上 | 1 + tan2θ = 1 / cos2θ | tan から cos を出す |
| 90° − θ | sin(90° − θ) = cosθ、cos(90° − θ) = sinθ | 余角。直角三角形の残りの角 |
| 180° − θ | sin(180° − θ) = sinθ、cos(180° − θ) = −cosθ | 鈍角の扱い。cos は符号が変わる |
| 正弦定理 | a / sinA = b / sinB = c / sinC = 2R | 辺と、その対角がペアで絡むとき |
| 余弦定理 | a2 = b2 + c2 − 2bc cosA | 3辺、または2辺と間の角 |
| 変形 | cosA = (b2 + c2 − a2) / (2bc) | 3辺から角を出す |
| 面積 | S = (1/2) bc sinA | 2辺と間の角がわかれば一発 |
| ヘロンの公式 | S = √(s(s − a)(s − b)(s − c))、s = (a + b + c)/2 | 3辺だけから面積。検算にも使える |
| 内接円の半径 | S = rs | 面積がわかれば r が出る |
| 外接円の半径 | a / sinA = 2R | 正弦定理そのもの |
定石
正弦定理か余弦定理かは、「何が与えられたか」で決まる
余弦定理を使う場面
・3辺がわかっている(→ 角を求める)
・2辺とその間の角がわかっている(→ 残りの辺を求める)
正弦定理を使う場面
・辺と、その向かい側の角がペアでわかっている
・外接円の半径がからむ
見分け方は簡単です。「辺とその対角」のペアが1組そろっていれば正弦定理、そろっていなければ余弦定理。迷ったら、与えられた情報を三角形の図に書き込んでみると、どちらの形になっているかが目で見えます。
面積は、まず「2辺と間の角」を作れないか考える
S = (1/2) bc sinA が使えれば一番速い。使えないときは、余弦定理で角を出してからこの式に入れるか、3辺だけならヘロンの公式です。ヘロンは検算にも便利なので、別ルートとして持っておくと安心できます。
内接円の半径は、面積を経由する
S = rs(s は周の半分)は、三角形を、内心から各辺に引いた3つの三角形に分けただけの式です。覚えるより、「内心から各辺までの距離がすべて r だから、面積は (1/2)ar + (1/2)br + (1/2)cr」と作れるようにしておくほうが忘れません。
空間図形は、必ず平面に落とす
空間のまま考えるのは大変です。断面を1枚取り出して、平面の問題にするのが定石です。切る面の選び方にはコツがあり、対称面で切ると切り口が二等辺三角形などのきれいな形になります。正四面体なら「1つの辺と、向かい合う辺の中点を通る面」で切ると見通しがよくなります。
つまずきポイント
① 鈍角では cos が負になる。0° < θ < 90° では cosθ > 0、90° < θ < 180° では cosθ < 0。余弦定理で cosA が負に出たら「計算ミス」ではなく鈍角だとわかったということです。一方 sinθ は 0° < θ < 180° でつねに正です。
② 正弦定理で角を求めると、答えが2通りになることがある。sinB = 1/√2 から出るのは B = 45° と B = 135° の両方です。どちらも三角形として成り立つなら、両方が答えになります。「残りの角の和が180°を超えないか」で絞れるときだけ1つに決まります。余弦定理なら 0° < θ < 180° で cos と角が1対1に対応するので、この曖昧さは起きません。角を確定させたいときは余弦定理、と覚えておくと事故が減ります。
③ 相互関係から出すときの符号。sin2θ + cos2θ = 1 から cosθ = ±√(1 − sin2θ) となりますが、どちらを取るかは θ の範囲で決まります。三角形の内角なら sin は正、cos は鋭角か鈍角かで符号が変わります。
④ 三角形の成立条件を忘れない。3辺を文字で置いたら、どの2辺の和も残りの1辺より大きいという条件が自動的についてきます。問題文には書かれていませんが、答えの範囲を絞るときに効きます。
⑤ 「最大の角」は「最大の辺の向かい」。どの角が鈍角かを調べたいときは、いちばん長い辺の対角だけ調べれば十分です。a が最大辺なら、a2 > b2 + c2 のとき鈍角三角形、= なら直角、< なら鋭角三角形です。
オリジナル例題
例題3-1(3辺から、角・面積・内接円・外接円) BC = 7、CA = 5、AB = 3 の三角形 ABC について、∠A、面積 S、内接円の半径 r、外接円の半径 R を求めてください。
① 角:3辺がわかっているので余弦定理です。
cosA = (52 + 32 − 72) / (2 × 5 × 3) = (25 + 9 − 49) / 30 = −15/30 = −1/2
よって ∠A = 120°。cos が負なので鈍角だとわかります。
② 面積:2辺と間の角がそろいました。
S = (1/2) × 5 × 3 × sin120° = (15/2) × (√3/2) = 15√3 / 4(約 6.50)
③ 内接円:s = (7 + 5 + 3)/2 = 15/2 なので
r = S / s = (15√3/4) ÷ (15/2) = √3 / 2(約 0.87)
④ 外接円:正弦定理から
2R = a / sinA = 7 ÷ (√3/2) = 14/√3 → R = 7√3 / 3(約 4.04)
確認:ヘロンの公式でも面積を出してみます。√(7.5 × 0.5 × 2.5 × 4.5) = √42.1875 ≒ 6.495。一致しました。面積は2通りで出せるので、検算に使ってください。
例題3-2(答えが2通りになる場面) 三角形 ABC で ∠A = 30°、a = 1、b = √2 のとき、∠B を求めてください。
考え方:辺 a と対角 A のペアがそろっているので正弦定理です。
a / sinA = b / sinB → sinB = b sinA / a = √2 × (1/2) ÷ 1 = √2/2
0° < B < 180° で sinB = √2/2 となるのは B = 45° と B = 135° の2つ。
両方を検討します。
・B = 45° のとき C = 105°。角の和は180°で成立。
・B = 135° のとき C = 15°。こちらも成立。
答え:∠B = 45° または 135°(三角形が2通りある)
ここが落とし穴:B = 45° だけ書いて終わると半分しか答えていません。逆に、もし ∠A = 60° だったなら B = 135° は A + B = 195° > 180° となって不成立なので、そのときは1つに決まります。正弦定理で角を出したら、必ず「もう一方も成り立つか」を確かめる。これが定石です。
例題3-3(空間図形は平面に落とす) 1辺の長さが6の正四面体について、高さと体積を求めてください。
考え方:頂点から底面に下ろした垂線の足は、底面(正三角形)の重心に一致します。ここを押さえると、あとは直角三角形1つの平面問題になります。
① 底面の重心までの距離:1辺6の正三角形で、頂点から重心までの長さは、外接円の半径にあたります。中線の長さが 6 × (√3/2) = 3√3 で、重心は中線を 2 : 1 に分けるので、頂点から重心までは 3√3 × (2/3) = 2√3。
② 高さ:斜辺6、底辺 2√3 の直角三角形で三平方の定理。
h = √(62 − (2√3)2) = √(36 − 12) = √24 = 2√6(約 4.90)
③ 体積:底面積は (√3/4) × 62 = 9√3(約 15.59)なので
V = (1/3) × 9√3 × 2√6 = 6√18 = 18√2(約 25.46)
確認:座標を置いて計算しても高さ 4.899、体積 25.456 で一致します。
ここで使った定石:空間の問題を、「底面の重心を通る垂線」という1本の線で平面に落としただけです。立体のまま考えようとすると詰まりますが、断面を1枚決めた瞬間に中学の三平方の定理で終わります。
例題3-4(円に内接する四角形) 円に内接する四角形 ABCD で AB = 2、BC = 6、CD = 6、DA = 8 です。∠B と AC、四角形の面積を求めてください。
考え方:対角線 AC を引くと、三角形が2つに分かれます。同じ AC を、両方の三角形から余弦定理で表す——これが使う手です。ここで効くのが「円に内接する四角形の対角の和は 180°」で、∠D = 180° − ∠B だから cos D = −cos B。符号だけが逆になります。
△ABC から:AC2 = 22 + 62 − 2·2·6·cos B = 40 − 24 cos B
△ACD から:AC2 = 62 + 82 − 2·6·8·cos D = 100 + 96 cos B
2つを等しいとおいて 40 − 24 cos B = 100 + 96 cos B → −120 cos B = 60 → cos B = −1/2。よって ∠B = 120°(∠D = 60°)。
これを戻して AC2 = 40 − 24 × (−1/2) = 52、AC = 2√13。
面積は2つの三角形の和で、(1/2)·2·6·sin 120° + (1/2)·6·8·sin 60° = 3√3 + 12√3 = 15√3。
答え:∠B = 120°、AC = 2√13、面積 15√3
確認:cos B が負になったので ∠B は鈍角、∠D は鋭角。向かい合う角が鈍角と鋭角の組になるのは自然です。もう一方の対角線 BD も同じ手で出すと BD = 30/√13 で、AC × BD = 60、AB × CD + BC × DA = 12 + 48 = 60。2つが一致するので、この四角形が確かに円に内接していることまで確かめられます。
例題3-5(測量への応用) 水平な地面の上に塔が立っています。地点 A から塔の先端を見上げる角が 30°、A から塔に向かって 60 m 近づいた地点 B からは 45° でした。塔の高さを求めてください。ただし塔の根もとと A、B は一直線上にあるものとします。
考え方:三角比の応用問題では、求めたいものを文字でおいて、同じ長さを2通りに表すのが基本の手です。ここでは塔の高さを h とおき、根もとから A、B までの距離をそれぞれ h で表します。
直角三角形で「高さ」と「底辺」の関係を結ぶのは tan です。どの三角比を使うかは、「与えられた辺」と「求める辺」の組で決まります。
塔の根もとを P とすると
tan30° = h / PA より PA = h / tan30° = √3 h
tan45° = h / PB より PB = h / tan45° = h
AB = PA − PB = 60 なので
√3 h − h = 60 → (√3 − 1)h = 60 → h = 60 / (√3 − 1)
分母を有理化して
h = 60(√3 + 1) / {(√3 − 1)(√3 + 1)} = 60(√3 + 1) / 2 = 30(√3 + 1)
答え:30(√3 + 1) m(約 82.0 m)
確認:h ≒ 81.96 として戻すと、PA = √3 h ≒ 141.96、PB = h ≒ 81.96。差は 60.00 で、条件と合います。
仰角が大きいほど塔に近いので PB < PA。引く順を逆にすると負の値が出るので、そこで気づけます。図を粗くでも描いて、A と B のどちらが近いかを確かめてから式を立ててください。
なお 45° の三角形は直角二等辺なので PB = h。特別な角が混じっているときは、そこから先に埋めると式が短くなります。
この単元のチェックリスト
| 確認すること | できていないと起きること |
|---|---|
| 「辺と対角のペア」があるか見たか | 正弦・余弦の選択で迷って時間を失う |
| 正弦定理で角を出したら2通り検討したか | 解を1つ落とす |
| cos の符号から鋭角・鈍角を読んだか | 図が実際と食い違う |
| 面積を別ルートで検算したか | 計算ミスに気づけない |
| 三角形の成立条件を入れたか | あり得ない値が答えに残る |
| 空間問題で断面を取ったか | 立体のまま行き詰まる |
もっと解きたい方へ 👉 三角比(基本)の特訓道場(20題と全解説)
第4章 集合と命題
この単元は、計算量は少ないのに差がつきます。理由は、ここで扱う「必要条件・十分条件」「対偶」「反例」が、他の全単元の答案の書き方を支えているからです。答案が減点される原因の多くは、計算ミスではなく論理の向きの取り違えです。
ここが怪しければ先に:命題と条件(論理) / この先つながる:必要条件・十分条件(論理)・背理法(論理) / この単元の解法パターン:集合と論理 全12型 / この単元を1日1枚で:毎日の数学 1枚
使う道具
| 道具 | 形 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 部分集合 | A ⊂ B | A のどの要素も B に入る |
| 共通部分・和集合 | A ∩ B、A ∪ B | 「かつ」「または」に対応 |
| 補集合 | A の上に線 | 「〜でない」。余事象の考え方と同じ |
| ド・モルガンの法則 | 「A かつ B」の否定 =「A でない」または「B でない」 | 否定を作るとき。かつ ↔ または が入れかわる |
| 要素の個数(2つ) | n(A ∪ B) = n(A) + n(B) − n(A ∩ B) | 重なりを1回引く |
| 要素の個数(3つ) | n(A∪B∪C) = n(A)+n(B)+n(C) − n(A∩B) − n(B∩C) − n(C∩A) + n(A∩B∩C) | 引きすぎた分を最後に足し戻す |
| 命題の真偽 | p ⇒ q | P ⊂ Q と同じこと |
| 逆・裏・対偶 | 逆 q ⇒ p / 裏「pでない ⇒ qでない」/ 対偶「qでない ⇒ pでない」 | 対偶だけが元の命題と真偽が一致 |
| 全称と存在の否定 | 「すべての〜」の否定は「ある〜」/「ある〜」の否定は「すべての〜」 | 反例づくり |
| 必要条件・十分条件 | p ⇒ q が真のとき、p は十分条件・q は必要条件 | 集合の大小で見る(狭いほうが十分) |
定石
「p ⇒ q が真」は「P が Q に含まれる」
この言いかえが、この単元のすべての土台です。命題を集合の包含関係の絵にすると、必要条件・十分条件の向きで迷わなくなります。
p ⇒ q が真のとき
・p は q であるための十分条件
・q は p であるための必要条件
覚え方より、絵で判断する。集合で描くと P ⊂ Q。小さいほうが十分、大きいほうが必要です。「狭い条件を満たせば広い条件は自動的に満たされる(=十分)」「広いほうは、最低限そこには入っていないといけない(=必要)」と読むと、記号を暗記しなくても出せます。
判定は、必ず両向きを調べる
「必要条件か、十分条件か、必要十分条件か」を聞かれたら、p ⇒ q と q ⇒ p の2つを別々に調べる。片方だけ見て答えると、必ずどこかで外します。偽だと思ったら反例を1つ挙げれば終わりです。
示しにくい命題は、対偶か背理法へ
対偶を使う場面:結論に「〜でない」が入っているとき、または仮定が使いにくいとき。p ⇒ q と 「q でない」⇒「p でない」 は真偽が一致するので、扱いやすいほうを示せば十分です。
背理法を使う場面:「〜でない」「〜は存在しない」「ただ1つである」を示すとき。結論を否定して仮定に加えるので、使える条件が1つ増えるのが強みです。
反例は1つで足りる
命題を否定するには、反例をたった1つ挙げれば十分です。逆に、命題が真であることを示すには、すべての場合について示す必要があります。この非対称性を知っていると、「まず反例を探してみる」という一手が使えるようになります。
つまずきポイント
① 必要と十分の向きが逆になる。これがいちばん多い間違いです。迷ったら集合の絵を描く。「小さいほうが十分、大きいほうが必要」。
② 「かつ」の否定は「または」。「x > 0 かつ y > 0」 の否定は 「x ≤ 0 または y ≤ 0」 です。両方とも否定して、かつ/または を入れかえる。ここで「かつ」のままにすると、否定が狭くなりすぎます。
③ 逆と対偶を取り違える。元の命題と真偽が一致するのは対偶だけです。逆と裏は、元が真でも偽になり得ます。「対偶を示せば元も示せる」は使えますが、「逆を示せば元も示せる」は使えません。
④ 「少なくとも1つ」の否定は「1つもない」。「少なくとも1つは偶数」の否定は「すべて奇数」です。「少なくとも1つは奇数」ではありません。
⑤ 3つの集合の包除原理で、符号を間違える。足して、2つずつの重なりを引いて、最後に3つ全部の重なりを足し戻す。3つ重なった部分は、足すときに3回、引くときに3回数えているので、そのままだと0回になってしまうからです。公式を覚えるより、ベン図で「いま何回数えたか」を追うほうが確実です。
オリジナル例題
例題4-1(3つの集合の個数) 1以上100以下の自然数のうち、2の倍数でも3の倍数でも5の倍数でもないものは何個ありますか。
考え方:「どれでもない」を直接数えるのは大変です。まず「どれかである」を数えて、全体から引きます(余事象の考え方)。
2の倍数 50個、3の倍数 33個、5の倍数 20個。
2かつ3(=6の倍数)16個、2かつ5(=10の倍数)10個、3かつ5(=15の倍数)6個。
2かつ3かつ5(=30の倍数)3個。
50 + 33 + 20 − 16 − 10 − 6 + 3 = 74
よって求める個数は 100 − 74 = 26(個)。
確認:実際に1から100まで数え上げても26個です。
ここで使った定石:「〜でない」を見たら余事象(第7章の確率でも同じ手を使います)。そして重なりの処理は、ベン図を描いて「この部分をいま何回数えたか」を確かめる。公式の符号を暗記しなくても再現できます。
例題4-2(必要条件・十分条件の判定) 次の(1)〜(3)について、左の条件は右の条件であるための何条件か答えてください。
(1) x > 1 は x2 > 1 であるための?
(2) xy = 0 は x = 0 であるための?
(3) x + y > 2 かつ xy > 1 は x > 1 かつ y > 1 であるための?
(1) x > 1 ⇒ x2 > 1:真。
逆 x2 > 1 ⇒ x > 1:偽(反例 x = −2)。
→ 十分条件だが必要条件ではない。
(2) xy = 0 ⇒ x = 0:偽(反例 x = 1, y = 0)。
逆 x = 0 ⇒ xy = 0:真。
→ 必要条件だが十分条件ではない。
(3) x > 1 かつ y > 1 ならば、和は2より大きく、積も1より大きい。だから ← の向きは真。
逆向きは偽です。反例:x = 4, y = 0.5 とすると x + y = 4.5 > 2、xy = 2 > 1 ですが y > 1 ではありません。
→ 必要条件だが十分条件ではない。
気づいてほしいこと:どれも「両向きを別々に調べ、偽のほうには反例を1つ出す」という同じ作業です。(3) のように、成り立ちそうに見えるものほど反例を探す価値があります。
例題4-3(対偶を使う) 整数 n について、n2 が奇数ならば n は奇数であることを示してください。
考え方:仮定の「n2 が奇数」は使いにくい形です(n の形が決まらない)。そこで対偶を考えます。
対偶は「n が偶数ならば n2 は偶数」。こちらは仮定から n の形が書けるので、すぐ進みます。
n が偶数なら、整数 k を用いて n = 2k と書けます。このとき
n2 = 4k2 = 2 × 2k2
2k2 は整数なので、n2 は偶数です。
対偶が真なので、もとの命題も真。(証明終)
なぜ対偶にしたのか:「仮定を式で書けるほうを選んだ」だけです。対偶は「元と真偽が一致する」ので、扱いやすいほうを選んでよい。これが対偶の使い道です。
例題4-4(背理法) √2 が無理数であることを用いて、有理数 a, b が a + b√2 = 0 を満たすならば a = b = 0 であることを示してください。
考え方:結論が「0である」という否定しにくい形なので、否定して矛盾を出します。
b ≠ 0 と仮定します。すると b√2 = −a の両辺を b で割って
√2 = −a / b
a, b は有理数で b ≠ 0 なので、右辺は有理数です。ところが左辺の √2 は無理数。これは矛盾です。
よって b = 0。これを元の式に戻すと a = 0。(証明終)
ここが背理法の強み:b ≠ 0 と仮定したからこそ「b で割る」という操作ができました。結論を否定すると、使える条件が1つ増える。これが背理法を選ぶ理由です。
この結果の使い道:a + b√2 = c + d√2(a, b, c, d は有理数)なら a = c かつ b = d、という係数比較が使えるようになります。無理数がからむ等式で、ひんぱんに出てきます。
例題4-5(ド・モルガンの法則) 全体集合を U = {1, 2, 3, …, 20}、A を3の倍数の集合、B を4の倍数の集合とします。(1) n(A ∪ B) を求めてください。(2) n(Ā ∩ B̄) を求めてください。(3) 「x は3の倍数であり、かつ4の倍数である」の否定を書いてください。
考え方:(2) を、3の倍数でも4の倍数でもない数を1つずつ数えて出すこともできますが、ド・モルガンの法則で Ā ∩ B̄ = (A ∪ B)‾ と読みかえると、(1) の答えがそのまま使えます。「両方とも〜でない」は「どちらかである、の否定」——この言いかえが見えるかどうかで、手数がまるで変わります。
(1) A = {3, 6, 9, 12, 15, 18} で n(A) = 6、B = {4, 8, 12, 16, 20} で n(B) = 5。
両方に入るのは12の倍数なので A ∩ B = {12}、n(A ∩ B) = 1。
n(A ∪ B) = 6 + 5 − 1 = 10
(2) Ā ∩ B̄ = (A ∪ B)‾ なので
n(Ā ∩ B̄) = n(U) − n(A ∪ B) = 20 − 10 = 10
(3) 「かつ」の否定は「または」で、それぞれの条件も否定になります。
「x は3の倍数でない、または4の倍数でない」
答え:(1) 10 (2) 10 (3) 3の倍数でない、または4の倍数でない
確認:(2) は実際に書き出しても確かめられます。1, 2, 5, 7, 10, 11, 13, 14, 17, 19 の10個。合っています。20個くらいなら書き出せますが、数が大きくなると法則を使うほうが速いので、両方できるようにしておくと安心です。
(3) でいちばん多い間違いは、条件だけ否定して「かつ」をそのまま残すことです。「3の倍数でない、かつ4の倍数でない」は、じつは (2) の集合を表していて、もとの否定にはなっていません。接続詞も必ず入れかわる——これがド・モルガンの中身です。
記号で見ると (A ∩ B)‾ = Ā ∪ B̄、(A ∪ B)‾ = Ā ∩ B̄。バーが外れるとき、∩ と ∪ が入れかわると覚えるより、「両方そろっている、を打ち消すには、どちらか欠けていればよい」と読むほうが、条件の否定にそのまま使えます。
この単元のチェックリスト
| 確認すること | できていないと起きること |
|---|---|
| 必要・十分を集合の絵で判断したか | 向きが逆になる |
| 両向きを別々に調べたか | 「必要十分」を見逃す/作りすぎる |
| 偽のとき反例を1つ書いたか | 答案として不十分 |
| 否定で「かつ・または」を入れかえたか | 否定が狭すぎる/広すぎる |
| 対偶と逆を取り違えていないか | 証明が成立しない |
| 包除原理でベン図を描いたか | 符号を1つ間違える |
もっと解きたい方へ 👉 集合と命題の特訓道場(20題と全解説)
第5章 データの分析
計算そのものは難しくありませんが、用語の意味を取り違えると全部ずれる単元です。共通テストでは毎年出題され、しかも「値を求める」より「この記述は正しいか」を判定させる形が多い。だからここでは、公式と同じくらいそれぞれの量が何を表しているかを押さえます。
ここが怪しければ先に:データの活用(中1)・標本調査(中3) / この先つながる:統計的な推測(数学II・B・C) / この単元の解法パターン:データの分析 全12型
使う道具
| 道具 | 形 | 意味・使いどころ |
|---|---|---|
| 平均値 | x̄ = (合計)÷(個数) | 全体の重心。外れ値に弱い |
| 中央値 | 大きさ順の真ん中(偶数個なら中央2つの平均) | 外れ値に強い |
| 最頻値 | いちばん多く現れる値 | 度数分布では階級値で答える |
| 範囲 | 最大値 − 最小値 | 散らばりの最も単純な指標 |
| 四分位数 | Q1, Q2(中央値), Q3 | データを4等分する位置 |
| 四分位範囲 | Q3 − Q1 | 真ん中50%の広がり |
| 四分位偏差 | (Q3 − Q1) / 2 | 四分位範囲の半分 |
| 分散(定義) | s2 = 偏差の2乗の平均 | 意味がわかる形 |
| 分散(計算用) | s2 = (x2 の平均) − (x の平均)2 | 手計算はこちらが速い |
| 標準偏差 | s = √(分散) | 単位がもとのデータと同じになる |
| 共分散 | sxy = (x の偏差)×(y の偏差)の平均 | 2変量の連動の向きと大きさ |
| 相関係数 | r = sxy / (sx sy) | −1 ≤ r ≤ 1。単位に依存しない |
| 変量の変換 | u = ax + b | 平均は a x̄ + b、分散は a2s2、標準偏差は |a| s |
| 仮説検定の考え方 | 「差はない」と考えたとき、その結果が起こる確率 | 基準(5% など)より小さければ、差があると判断する |
定石
分散は「2乗の平均 − 平均の2乗」で計算する
定義どおりに「偏差を出して、2乗して、平均する」と、平均が小数のとき計算が重くなります。x2 の合計さえ出せば一発なので、手計算ではこちらが定番です。どちらの式でも同じ値になることは、展開すれば確かめられます。
変量の変換は、平均・分散・相関で挙動が違う
u = ax + b と変換したとき
・平均 ū = a x̄ + b (b がそのまま効く)
・分散 su2 = a2 sx2 (b は影響しない)
・標準偏差 su = |a| sx (絶対値がつく)
・相関係数 a が正なら変わらない、a が負なら符号だけ反転
理由はすべて同じです。b は全体を平行移動するだけなので散らばりを変えず、a は散らばりを a 倍に引き伸ばすから。公式を覚えるより、この一言で再現できるようにしてください。
「散らばり」の指標は目的で選ぶ
範囲は最大と最小だけを見るので外れ値に極端に弱い。四分位範囲は真ん中50%だけを見るので外れ値に強い。標準偏差はすべての値を使うので情報は多いが外れ値の影響を受ける。箱ひげ図が四分位を使うのは、外れ値があっても形が崩れないためです。
つまずきポイント
① 相関関係は因果関係ではありません。相関係数が1に近くても、「x が原因で y が変わる」とは言えません。第三の要因が両方を動かしている場合があります(気温が上がるとアイスも水難事故も増える、など)。共通テストの正誤判定で必ず狙われます。
② 相関係数が0でも「関係がない」とは限らない。r が測っているのは直線的な関係の強さだけです。きれいな放物線状に並んでいても r はほぼ0になり得ます。散布図を見ずに r だけで判断しない。
③ 中央値は、偶数個なら真ん中2つの平均。「真ん中のデータ」がない場合の処理を忘れがちです。四分位数も、中央値でデータを上下に分けたあと、それぞれの中央値を取ります。データ数が奇数のときに中央値そのものを上下どちらにも入れないのが標準的な扱いです。
④ Q3 − Q2 は四分位偏差ではありません。四分位偏差は (Q3 − Q1) / 2 です。Q3 − Q2 と一致するのは、たまたま左右対称なときだけです。
⑤ 標準偏差の変換で絶対値を忘れる。u = −2x + 5 なら標準偏差は 2s であって −2s ではありません。散らばりは負になりません。
⑥ ヒストグラムと箱ひげ図は、読み取れる情報が違う。箱ひげ図からは山が1つか2つか(分布の形)はわかりません。逆にヒストグラムからは四分位数を正確には読めません。「この箱ひげ図に対応するヒストグラムはどれか」型の問題では、5数要約だけで判断するのが原則です。
オリジナル例題
例題5-1(5数要約と散らばり) 次の8個のデータについて、平均値・中央値・四分位数・範囲・四分位範囲を求めてください。
2, 4, 4, 5, 7, 9, 11, 12
平均値:合計は 54 なので 54 ÷ 8 = 6.75
中央値:8個(偶数)なので、4番目と5番目の平均。(5 + 7) ÷ 2 = 6
四分位数:中央値で上下に分けます。
下位4個 2, 4, 4, 5 の中央値 → Q1 = (4 + 4) ÷ 2 = 4
上位4個 7, 9, 11, 12 の中央値 → Q3 = (9 + 11) ÷ 2 = 10
範囲:12 − 2 = 10 / 四分位範囲:10 − 4 = 6
ここに注目:平均値 6.75 が中央値 6 より大きくなっています。これは大きいほうに裾が伸びていることの表れです。平均と中央値のズレの向きから、分布の偏りが読み取れます。
例題5-2(分散を2通りで出す) 例題5-1のデータの分散と標準偏差を求めてください。
計算用の式を使います。x2 の合計は
4 + 16 + 16 + 25 + 49 + 81 + 121 + 144 = 456
x2 の平均は 456 ÷ 8 = 57
分散 = 57 − 6.752 = 57 − 45.5625 = 11.4375
標準偏差 = √11.4375 ≒ 3.38
確認:定義どおり「偏差の2乗の平均」で計算しても 11.4375 です。2通りで出せる量は、必ず検算に使えます。
なぜ計算用の式が速いのか:定義どおりだと、平均 6.75 との差を8回とってから2乗することになり、小数の計算が8回発生します。計算用の式なら、整数の2乗を8個足すだけで済みます。
例題5-3(変量の変換) 例題5-1のデータ x に対して u = 2x − 5 という新しい変量を作ります。u の平均・分散・標準偏差を求めてください。
公式を使わずに、意味から考えます。「2倍して5引く」は、データ全体を2倍に引き伸ばしてから、5だけ左にずらす操作です。
・平均は、引き伸ばしもずらしも受けます。2 × 6.75 − 5 = 8.5
・分散は、ずらしの影響を受けません(全体が同じだけ動いても散らばりは変わらない)。引き伸ばしだけが効き、2乗で効きます。22 × 11.4375 = 45.75
・標準偏差は |2| × 3.38 ≒ 6.76
確認:実際に u のデータ(−1, 3, 3, 5, 9, 13, 17, 19)から直接計算しても、平均 8.5、分散 45.75、標準偏差 6.76 になります。
もし u = −2x + 5 だったら:平均は −2 × 6.75 + 5 = −8.5、分散は (−2)2 × 11.4375 = 45.75(同じ)、標準偏差は |−2| × 3.38 ≒ 6.76(同じ)。散らばりは向きに関係しません。
例題5-4(相関係数) 次の5組のデータについて、相関係数を求めてください。
x:1, 2, 3, 4, 5 / y:2, 4, 5, 4, 10
平均:x̄ = 3、ȳ = 5
偏差の表を作ります。
| x − x̄ | −2 | −1 | 0 | 1 | 2 |
|---|---|---|---|---|---|
| y − ȳ | −3 | −1 | 0 | −1 | 5 |
| 積 | 6 | 1 | 0 | −1 | 10 |
共分散:(6 + 1 + 0 − 1 + 10) ÷ 5 = 16 ÷ 5 = 3.2
それぞれの標準偏差:
sx2 = (4 + 1 + 0 + 1 + 4) ÷ 5 = 2 → sx = √2 ≒ 1.41
sy2 = (9 + 1 + 0 + 1 + 25) ÷ 5 = 7.2 → sy ≒ 2.68
r = 3.2 ÷ (1.41 × 2.68) ≒ 0.84
読み取り:正の相関がかなり強い、といえます。ただしデータはたった5組で、しかも (5, 10) という1点が大きく効いています。この点を外すと相関はぐっと弱くなります。相関係数の値だけでなく、散布図と点の数を見る。これが判断の作法です。
例題5-5(仮説検定の考え方) あるお茶について「作り方を変えた新しいほうが好まれる」という主張がある。10人に飲み比べてもらったところ、9人が新しいほうを選んだ。基準を 5% として、この主張を認めてよいか調べてください。また、9人ではなく8人だった場合はどうなりますか。
考え方:主張したいことを正面から示すのは難しいので、いったん反対の側に立って「差はない」と考えてみて、その考えのもとで実際の結果がどれくらい起こりにくいかを確かめます。起こりにくすぎるなら、はじめに置いた「差はない」という考えのほうに無理があった、と判断します。
ここでは「味に差はなく、どちらを選ぶかは五分五分」と考えます。すると10人の選び方は 210 = 1024 通りで、どれも同じ確率で起こることになります。
9人だった場合:新しいほうを選ぶ人が9人以上になるのは、だれが選んだかで
10C9 + 10C10 = 10 + 1 = 11 通り(C の使い方は第6章 場合の数)
確率は 11 / 1024 ≒ 0.011、つまり約 1.1%。
基準の 5% より小さく、「五分五分」と考えるには起こりにくすぎます。主張は認めてよい、となります。
8人だった場合:8人以上になるのは
10C8 + 10C9 + 10C10 = 45 + 10 + 1 = 56 通り
確率は 56 / 1024 ≒ 0.055、つまり約 5.5%。
基準の 5% を超えるので、五分五分でもこれくらいは起こることになり、主張は認められません。
答え:9人なら認めてよい(約 1.1%)。8人だと認められない(約 5.5%)。
確認:「認められない」ことと「差がないと示せた」ことは違います。8人の場合に言えるのは「五分五分でも起こりうる範囲だった」までで、差がないことを証明したわけではありません。ここを取り違えた答案がとても多いところです。
また、同じ「8割」でも人数が増えると結論が変わります。100人中80人なら、五分五分と考えたときにそうなる確率は10億分の1より小さく、はっきり認められます。割合だけでなく、何人で調べたかが効いてくるということです。
この単元のチェックリスト
| 確認すること | できていないと起きること |
|---|---|
| データを大きさ順に並べたか | 中央値・四分位数がすべてずれる |
| 偶数個のとき中央2つの平均を取ったか | 中央値を1つ選んでしまう |
| 分散を「2乗の平均−平均の2乗」で出したか | 小数計算が増えてミスする |
| 変換で分散は a2 倍、標準偏差は |a| 倍にしたか | 符号や2乗を取り違える |
| 相関と因果を区別したか | 正誤判定で誤答する |
| 散布図の形を見たか | r ≒ 0 を「無関係」と誤読する |
もっと解きたい方へ 👉 データの分析(基本)の特訓道場(20題と全解説)
第6章 場合の数
公式が多く見える単元ですが、実際に迷うのはたった2つの判断です。「区別するのか、しないのか」と「並べるのか、選ぶだけなのか」。この2つが決まれば、使う式は自動的に決まります。
逆に、この2つを決めないまま公式を探すと、必ず数え落としか数えすぎが起きます。公式選びより先に、数える対象をはっきりさせてください。
ここが怪しければ先に:確率とデータの比較(中2) / この先つながる:確率・式と証明(数学II・B・C) / この単元の解法パターン:場合の数 全12型 / この単元を1日1枚で:毎日の数学 8枚
使う道具
| 道具 | 形 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 和の法則 | 同時に起こらない場合は足す | 「または」でつながる場面 |
| 積の法則 | 続けて起こる場合はかける | 「そして」でつながる場面 |
| 順列 | nPr = n(n−1)…(n−r+1) | n 個から r 個選んで並べる |
| 組合せ | nCr = nPr / r! | n 個から r 個選ぶだけ |
| 同じものを含む順列 | n! / (p! q! …) | 同じ文字がある並べかえ、道順 |
| 円順列 | (n − 1)! | 回転して同じものは1通りと数える |
| じゅず順列 | (n − 1)! / 2 | 裏返しても同じとみなすとき |
| 重複順列 | nr | 同じものを何回でも使ってよい並べ方 |
| 重複組合せ | n+r−1Cr | 同じものを何回選んでもよい選び方 |
| 組分け | 区別しない同数の組が k 個あれば k! で割る | グループ分けの定番の落とし穴 |
定石
数える前に、対象を「並べ方」に言いかえる
場合の数の問題は、そのまま数えようとすると手が止まります。数えやすい別のものに1対1で対応させるのが定石です。
・道順 → 「↑」と「→」の並べ方(同じものを含む順列)
・x + y + z = 10 の0以上の整数解 → ○10個と仕切り2本の並べ方
・組分け → まず区別して数え、あとで区別しない分を割る
「隣り合う」はひとかたまり、「隣り合わない」は間に入れる
隣り合う:隣り合わせたいものを1つの箱にまとめて並べ、最後に箱の中の並べ方をかける。
隣り合わない:まず他のものを並べ、その間と両端のすきまに入れる。または余事象(全体 − 隣り合う)で出す。
組分けで割るか割らないかは、「箱に名前があるか」
6人を2人ずつ3組に分けるとき、A室・B室・C室のように名前がついていれば割りません。ただ「3つの組に分ける」と書かれていて組に区別がなければ、同じ人数の組が3つあるので 3! で割ります。問題文に「区別する」と書いていないときこそ、割る必要があるか考えてください。
つまずきポイント
① 順列と組合せの取り違え。「並べる/順番がある/役職がつく」なら順列、「選ぶだけ/代表を選ぶ/組にする」なら組合せ。選んだあとに順番の情報が残るかどうかで判断します。
② 組分けで割り忘れる・割りすぎる。同じ人数の組が k 個あるときだけ k! で割ります。「2人・2人・3人」のように人数が違う組が混ざっているときは、人数が同じ組の個数だけで割ります(この例なら 2人組が2つなので 2!)。
③ 円順列を n! にしてしまう。円形では回転して重なるものを同じと数えるので、1人を固定して残りを並べます。だから (n − 1)! です。
④ 重複組合せの式を、重複順列と混ぜる。「同じものを何回使ってもよい」でも、並べるなら nr、選ぶだけなら n+r−1Cr です。3種類の果物から10個買う(順番なし)なら後者、3種類の中から10回選んで順に並べるなら前者。
⑤ 「少なくとも」で正面から数える。「少なくとも1つは〜」は余事象(1つもない場合を引く)のほうがほぼ確実に速い。正面から数えると場合分けが増えて、重複を作りやすくなります。
オリジナル例題
例題6-1(隣り合う・隣り合わない) A〜Fの6人を1列に並べます。(1) AとBが隣り合う並べ方、(2) AとBが隣り合わない並べ方は、それぞれ何通りですか。
(1) A と B を1つの箱とみなすと、並べるものは「箱・C・D・E・F」の5個。並べ方は 5! = 120。
箱の中で A と B の並び方が 2! = 2 通りあるので
120 × 2 = 240(通り)
(2) 全体は 6! = 720 通り。ここから (1) を引いて
720 − 240 = 480(通り)
確認:実際にすべての並びを調べても、隣り合うのは240通りです。
別解(すきまに入れる):C〜F の4人を並べる(4! = 24)と、両端と間にすきまが5か所できます。そこに A と B を別々に入れるので 5P2 = 20。24 × 20 = 480。一致します。2通りで出せると検算になります。
例題6-2(道順) 碁盤の目状の道を、地点Oから東に4区画・北に3区画進んだ地点Qまで最短で行きます。(1) 最短経路は何通りですか。(2) 途中の地点P(東に2・北に1進んだ地点)を通る経路は何通りですか。
(1) 最短経路とは、「→」を4回、「↑」を3回、合計7回進む並べ方のことです。7か所のうち「↑」を置く3か所を選べばよいので
7C3 = 35(通り)
(2) O→P と P→Q に分けて、積の法則でかけます。
O→P:「→」2回・「↑」1回 → 3C1 = 3
P→Q:「→」2回・「↑」2回 → 4C2 = 6
3 × 6 = 18(通り)
ここが定石:道順を「経路」として数えるのではなく、矢印の並べ方に置きかえたのがポイントです。数える対象を変えた瞬間、組合せの式に乗ります。
例題6-3(組分け) 6人を2人ずつ3つの組に分けます。(1) 3つの部屋A・B・Cに2人ずつ入れる方法、(2) 単に3つの組に分ける方法(組に区別なし)は、それぞれ何通りですか。
(1) 部屋に名前があるので、順に選んでいくだけです。
6C2 × 4C2 × 2C2 = 15 × 6 × 1 = 90(通り)
(2) 組に区別がないので、同じ分け方を何回数えているかを考えます。同じ2人組の集まりでも、どれをA室・B室・C室と呼ぶかで 3! = 6 通りに数えられています。だから
90 ÷ 3! = 15(通り)
なぜ割るのかを、小さい例で確かめる:4人を2人ずつ2組に分けるとき、部屋に名前があれば 4C2 × 2C2 = 6 通り。しかし組に区別がなければ、{AB, CD}, {AC, BD}, {AD, BC} の3通りしかありません。6 ÷ 2! = 3 で合います。手で書き出せる大きさで確かめると、割る理由が納得できます。
注意:もし「2人・2人・3人」に分けるなら、人数が同じ組は2つだけなので 2! で割ります。すべての組を割るのではありません。
例題6-4(重複組合せ) みかん・りんご・バナナの3種類の果物から、合計10個を選びます。同じ果物を何個選んでもよく、選ばない果物があってもよいとき、選び方は何通りですか。
考え方:みかんを x 個、りんごを y 個、バナナを z 個とすると
x + y + z = 10(x, y, z は0以上の整数)
これを○と仕切りの並べ方に言いかえます。○を10個並べ、そこに仕切りを2本入れると、3つの区画に分かれます。区画の○の個数が x, y, z です。
○10個と仕切り2本、合計12個の場所から、仕切りの位置2か所を選べばよいので
12C2 = 66(通り)
確認:x を0から10まで動かし、それぞれで y を0から 10 − x まで数えると 11 + 10 + … + 1 = 66。合っています。
条件がついたら:たとえば「みかんは3個以上」なら、先に3個確保して X = x − 3 と置きかえ、X + y + z = 7 の0以上の整数解を数えます(9C2 = 36 通り)。置きかえて元の形に戻すのが定石です。
例題6-5(円順列) 6人が円形のテーブルに座ります。(1) 座り方は何通りですか。(2) そのうち、特定の2人 A と B が隣り合う座り方は何通りですか。
考え方:円形に並べるときは、回転して重なるものを同じとみなします。だから1列の並べ方 6! を、回転の 6 通りで割ることになります。
実際の手順としては「1人を固定して、残りを1列に並べる」と考えるほうが速いです。誰か1人を席に座らせてしまえば、回転の重複はもう起きません。
(1) 1人を固定すると、残り5人を1列に並べる問題になるので
(6 − 1)! = 5! = 120 通り
(2) 隣り合う条件は、1列のときと同じく「ひとかたまりにする」です。A と B をまとめて1人と見ると、全部で5個のものを円形に並べることになり
(5 − 1)! = 4! = 24 通り
さらに、かたまりの中で A と B の左右が入れかわるので 2! = 2 倍。
24 × 2 = 48 通り
答え:(1) 120 通り (2) 48 通り
確認:割合で見ると 48 / 120 = 2/5。A から見て隣の席は左右の2つ、A 以外が座れる席は 5 つなので、B がそのどちらかに座る割合は 2/5——まったく別の考え方でも同じ値になります。数え上げの答えは、割合や別解で1度は裏を取ってください。
よくある誤りは (1) を 6! としてしまうことです。円順列で「1人固定」を忘れると、答えがちょうど人数倍だけ大きくなります。数が大きすぎないか、けたを見るだけでも気づけます。
この単元のチェックリスト
| 確認すること | できていないと起きること |
|---|---|
| 区別するかしないかを決めたか | 数えすぎ・数え落とし |
| 順番の情報が残るか判断したか | 順列と組合せを取り違える |
| 数えやすい対象に言いかえたか | 手が止まる |
| 組分けで割る個数は合っているか | 同数の組の分だけ多く/少なく数える |
| 「少なくとも」で余事象を使ったか | 場合分けが増えて重複する |
| 小さい例で書き出して検算したか | 公式の適用ミスに気づけない |
もっと解きたい方へ 👉 場合の数・確率の特訓道場 第1章(全35問)
第7章 確率
場合の数の続きですが、1つだけ増える約束があります。それは「同様に確からしい」数え方をしなければならないということ。ここを外すと、数え方は正しいのに答えが合いません。
ここが怪しければ先に:場合の数 / この先つながる:統計的な推測(数学II・B・C)・数列(数学II・B・C) / この単元の解法パターン:確率 全12型
使う道具
| 道具 | 形 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 確率の定義 | P(A) = n(A) / n(U) | 同様に確からしい場合に限る |
| 余事象 | P(A) = 1 − P(A の余事象) | 「少なくとも」「〜でない」 |
| 和事象 | P(A ∪ B) = P(A) + P(B) − P(A ∩ B) | 重なりを引く |
| 排反 | A ∩ B = 空 のとき P(A ∪ B) = P(A) + P(B) | 同時に起こらないとき |
| 独立試行 | P(A かつ B) = P(A) P(B) | 互いに影響しない試行 |
| 反復試行 | nCr pr (1 − p)n−r | 同じ試行を n 回、ちょうど r 回成功 |
| 条件つき確率 | PA(B) = P(A ∩ B) / P(A) | 分母が全体から A に変わる |
| 乗法定理 | P(A ∩ B) = P(A) PA(B) | 順に起こる事象 |
| 期待値 | (値 × その確率)の合計 | 平均してどれくらいか |
定石
まず、すべてを区別する
確率でいちばん多い誤りは、同じに見えるものを区別しないことです。赤玉が2個あるなら「赤1・赤2」と区別する。サイコロ2個なら (1, 2) と (2, 1) を別に数える。区別して数えると、自動的に「同様に確からしい」状態が作れます。
「少なくとも」を見たら余事象
「少なくとも1つは〜」の反対は「1つも〜でない」で、こちらは1通りの計算で済むことがほとんどです。
独立と排反は、まったく別のもの
排反:同時に起こらない。→ 確率は足す。
独立:互いに影響しない。→ 確率はかける。
この2つは似た言葉ですが、意味は正反対に近いものです。排反な2つの事象は、片方が起これば他方は起こらないので、むしろ強く影響し合っています(どちらも確率0でなければ独立ではありません)。
条件つき確率は、分母が縮む
PA(B) は「A が起きたとわかっている世界での、B の確率」です。全体が A に縮んだと考えて、その中での割合を出します。図で描くなら、ベン図の A の中だけを見る感覚です。
つまずきポイント
① 区別しないで数える。赤2個・白1個から2個取るとき、「赤赤」「赤白」の2通りだから確率 1/2、は誤りです。赤を区別すると {赤1,赤2}, {赤1,白}, {赤2,白} の3通りで、赤2個の確率は 1/3 です。
② 独立と排反の混同。「サイコロを2回投げて両方6」は独立なのでかけ算。「1回投げて1の目または2の目」は排反なので足し算。同じ試行の中の話か、別々の試行の話かで見分けると間違えにくくなります。
③ 条件つき確率の分母を全体にしてしまう。PA(B) の分母は P(A) であって、全体ではありません。「赤が出たときに袋Aだった確率」なら、分母は赤が出る確率です。
④ 反復試行で nCr を忘れる。「5回中2回成功」は、どの2回で成功するかの選び方が 5C2 通りあります。確率だけをかけて終わると、その分だけ小さくなります。
⑤ 期待値を「いちばん出やすい値」と混同する。期待値は平均であって、実際に出やすい値とは限りません。期待値がデータのどの値にも一致しないこともあります。
オリジナル例題
例題7-1(余事象) サイコロを2個同時に投げるとき、少なくとも1個は6の目が出る確率を求めてください。
考え方:正面から数えると「1個だけ6」「2個とも6」に分かれて面倒です。反対を数えます。
「1個も6が出ない」= 2個とも6以外。それぞれ5通りなので 5 × 5 = 25 通り。全体は 6 × 6 = 36 通り。
1 − 25/36 = 11/36
確認:36通りを全部調べても、6を含むのは11通りです。
よくある誤り:「1個目が6の確率 1/6 + 2個目が6の確率 1/6 = 1/3」としてしまう。これは両方6の場合を2回数えているので誤りです(正しくは 1/6 + 1/6 − 1/36 = 11/36)。
例題7-2(反復試行) サイコロを5回投げるとき、3の倍数の目(3または6)がちょうど2回出る確率を求めてください。
考え方:1回あたり3の倍数が出る確率は 2/6 = 1/3。出ない確率は 2/3。
5回のうちどの2回で出るかが 5C2 = 10 通り。それぞれの確率が (1/3)2 × (2/3)3 なので
10 × (1/9) × (8/27) = 80/243(約 0.33)
ここを落とさない:5C2 を忘れると 8/243 になり、10分の1になってしまいます。「並び方が何通りあるか」を必ずかけるのが反復試行です。
例題7-3(条件つき確率) 袋Aには赤玉3個・白玉2個、袋Bには赤玉1個・白玉4個が入っています。どちらかの袋を等しい確率で選び、そこから玉を1個取り出したところ赤玉でした。選んだ袋がAであった確率を求めてください。
考え方:「赤が出た」とわかっている世界の中で考えます。分母は「赤が出る確率」です。
・袋Aを選び赤が出る:(1/2) × (3/5) = 3/10
・袋Bを選び赤が出る:(1/2) × (1/5) = 1/10
赤が出る確率は 3/10 + 1/10 = 4/10 = 2/5。
求める確率は
(3/10) ÷ (2/5) = 3/4
意味を確かめる:袋を選ぶ段階ではAである確率は 1/2 でした。ところが「赤が出た」という情報を得た後では 3/4 に上がっています。Aのほうが赤が多いので、赤が出たならAだった可能性が高まる——直感とも合います。条件つき確率は、情報を得たあとに確率が更新されるという話です。
例題7-4(期待値) サイコロを1回投げ、出た目が偶数ならその目の数だけ得点、奇数なら0点とします。得点の期待値を求めてください。
考え方:得点と確率の組を書き出し、(値 × 確率)を全部足します。
0 × (3/6) + 2 × (1/6) + 4 × (1/6) + 6 × (1/6) = (2 + 4 + 6)/6 = 2(点)
注意:期待値2点ですが、実際に2点が出る確率は 1/6 しかありません。期待値は「何回もやったときの平均」であって、いちばん出やすい値ではありません。
例題7-5(独立と排反) 1個のさいころを1回投げます。A を「偶数の目が出る」、B を「3の倍数の目が出る」とするとき、(1) P(A)、P(B)、P(A ∩ B)、P(A ∪ B) を求めてください。(2) A と B は独立ですか。排反ですか。
考え方:「独立」と「排反」は、名前が似ているだけで別のことを言っています。排反は同時に起こらない(A ∩ B が空)、独立は一方が起きても他方の確率が変わらない(P(A ∩ B) = P(A)P(B))。確かめ方がまったく違うので、それぞれの定義に当てて調べます。
(1) A = {2, 4, 6} なので P(A) = 3/6 = 1/2。B = {3, 6} なので P(B) = 2/6 = 1/3。
A ∩ B = {6} なので P(A ∩ B) = 1/6。
P(A ∪ B) = P(A) + P(B) − P(A ∩ B) = 1/2 + 1/3 − 1/6 = 2/3
(2) P(A)P(B) = (1/2) × (1/3) = 1/6 で、これは P(A ∩ B) と等しいので A と B は独立。
一方 A ∩ B = {6} は空ではないので、排反ではありません。
答え:(1) P(A) = 1/2、P(B) = 1/3、P(A ∩ B) = 1/6、P(A ∪ B) = 2/3 (2) 独立である。排反ではない。
確認:A ∪ B = {2, 3, 4, 6} を直接数えると 4/6 = 2/3 で、公式の結果と合います。和事象は書き出して数えられるので、公式を使ったら必ず数え直してください。
この問題が示しているのは、独立と排反は同時に成り立ちうる関係ではなく、まったく別の話だということです。むしろ確率が0でない2つの事象が排反なら、それらは独立になりません——排反だと P(A ∩ B) = 0 なのに P(A)P(B) は0でないからです。「排反だから独立」と書いてしまうのが、この単元でいちばん多い誤りです。
この単元のチェックリスト
| 確認すること | できていないと起きること |
|---|---|
| 同じものも区別して数えたか | 「同様に確からしい」が崩れる |
| 「少なくとも」で余事象にしたか | 場合分けが増えて重複する |
| 独立か排反かを見分けたか | 足すべきをかける/その逆 |
| 条件つきで分母を縮めたか | 分母を全体のままにしてしまう |
| 反復試行で nCr をかけたか | 確率が何倍も小さくなる |
| 答えが0以上1以下か | 計算ミスに気づけない |
もっと解きたい方へ 👉 確率の応用の特訓道場(20題と全解説)
第8章 整数の性質
整数の問題は、方程式のように「解く」というより「絞り込む」感覚です。無限にある整数を、条件を使ってどんどん減らしていき、最後に残った数を調べる。絞り込みの道具が4つあり、それを覚えるとほとんどの問題が動き出します。
ここが怪しければ先に:正負の数(中1) / この先つながる:背理法(論理)・数学的帰納法(論理) / この単元の解法パターン:整数 全18型
使う道具
| 道具 | 形 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 素因数分解 | N = pa qb … | 約数・倍数の話はまずここから |
| 約数の個数 | (a + 1)(b + 1) … | 指数に1を足してかける |
| 約数の総和 | (1 + p + … + pa)(1 + q + …) … | 展開すると全約数が現れる |
| 最大公約数と最小公倍数 | GL = ab | 2数の積との関係 |
| ユークリッドの互除法 | gcd(a, b) = gcd(b, a を b で割った余り) | 大きい数の最大公約数 |
| 1次不定方程式 | ax + by = c | 1組見つけて、そこからずらす |
| 余りによる分類 | n = 3k, 3k+1, 3k+2 など | 「〜の倍数にならない」の証明 |
| 積の形にする | (x − a)(y − b) = k | 整数解を有限個に絞る |
| n 進法 | 各位 × 底の累乗の和 | 表記の変換 |
定石
① 積の形にすれば、候補は有限になる
整数の等式で未知数が2つあると、ふつうは解が無限にあります。ところが積 = 定数の形にできれば、話が変わります。
xy − 2x − 3y = 0 のような式は、左辺を因数分解できる形に整えると
(x − 3)(y − 2) = 6
となります。6の約数は有限個なので、x − 3 の候補は ±1, ±2, ±3, ±6 の8通りだけ。無限が有限になった瞬間です。
② 「〜の倍数にならない」は、余りで分類する
ある式が決して5の倍数にならないことを示したいなら、n を5で割った余りで5通りに分けて、それぞれで式の余りを調べます。5通りすべてで余りが0でなければ、証明完了です。
これは無限個の整数を、有限個のグループに押し込む考え方です。整数は無限にありますが、「5で割った余り」は5種類しかありません。
③ 1次不定方程式は、1組見つけてからずらす
ax + by = c の整数解は、
(ア) 特別な解を1組見つける(小さい数なら目で、大きければ互除法を逆にたどる)
(イ) 元の式から引くと a(x − x0) + b(y − y0) = 0
(ウ) 一般解は x = x0 + (b/g)k, y = y0 − (a/g)k(g は a と b の最大公約数)
④ 範囲を絞ってから、しらみつぶし
「x ≤ y ≤ z としてよい」のような大小の仮定を置くと、候補が一気に減ります。対称な式なら、この仮定はいつでも置けます(最後に並べかえを戻すのを忘れずに)。
つまずきポイント
① 負の約数を忘れる。(x − 3)(y − 2) = 6 で x − 3 = 1, 2, 3, 6 だけを調べるのは半分です。−1, −2, −3, −6 もあります。整数と書いてあれば負を必ず確認してください。
② 「自然数」「正の整数」「整数」の読み落とし。問題文の指定で候補の数が変わります。答えを書く前にもう一度、問題文の条件語を読み直すのが確実です。
③ 1次不定方程式で、ずらす幅を間違える。5x + 3y = 100 なら x は3ずつ、y は5ずつ動きます。係数を入れかえるところで取り違えやすい部分です。
④ 約数の個数の公式で、指数に1を足し忘れる。23 の約数は 1, 2, 4, 8 の4個で、3個ではありません。p0 つまり1が入るので、指数 + 1 です。
⑤ n 進法で、位の重みを取り違える。5進法の 2143(5) は、右から 50, 51, 52, 53 の重みです。いちばん右が 50 = 1(51 ではありません)。
オリジナル例題
例題8-1(約数の個数と総和) 360の正の約数の個数と、その総和を求めてください。
考え方:まず素因数分解します。
360 = 23 × 32 × 5
個数:(3 + 1)(2 + 1)(1 + 1) = 4 × 3 × 2 = 24(個)
総和:(1 + 2 + 4 + 8)(1 + 3 + 9)(1 + 5) = 15 × 13 × 6 = 1170
なぜこの式になるのか:総和の式を展開すると、2 の欄から1つ、3 の欄から1つ、5 の欄から1つ選んでかけた項がすべて現れます。それがちょうど360のすべての約数です。だから展開結果が総和になります。公式を覚えるより、この仕組みを1度確かめるほうが忘れません。
確認:360の約数を実際に列挙すると24個、合計1170になります。
例題8-2(1次不定方程式) 5x + 3y = 100 を満たす正の整数 x, y の組をすべて求めてください。
手順1:1組見つける。まず 5x + 3y = 1 を考えると、x = 2, y = −3 で成り立ちます(10 − 9 = 1)。両辺を100倍して x = 200, y = −300 が1組の解。
※ もっと簡単に、x = 2 のとき 3y = 90, y = 30 と気づいてもかまいません。見つけやすい組を使って構いません。
手順2:一般解を作る。5x + 3y = 100 と 5·2 + 3·30 = 100 を辺々引くと
5(x − 2) + 3(y − 30) = 0 すなわち 5(x − 2) = −3(y − 30)
5と3は互いに素なので、x − 2 は3の倍数。x − 2 = 3k とおくと
x = 3k + 2, y = 30 − 5k(k は整数)
手順3:正の整数という条件で絞る。
x > 0 より k ≥ 0(k は整数なので k > −2/3 から)
y > 0 より 30 − 5k > 0、つまり k < 6、すなわち k ≤ 5
よって k = 0, 1, 2, 3, 4, 5 の6組:
(x, y) = (2, 30), (5, 25), (8, 20), (11, 15), (14, 10), (17, 5)
確認:5·17 + 3·5 = 85 + 15 = 100。他の組も同様に成り立ちます。
覚え方:x は y の係数ずつ、y は x の係数ずつ動く(ここでは x が3ずつ、y が5ずつ)。動く向きは逆です。
例題8-3(余りによる分類) n を整数とするとき、n2 + n + 1 は5の倍数にならないことを示してください。
考え方:n は無限にありますが、5で割った余りは 0, 1, 2, 3, 4 の5種類しかありません。この5つを全部調べれば、すべての整数を調べたことになります。
| n を5で割った余り | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 |
|---|---|---|---|---|---|
| n2 | 0 | 1 | 4 | 4 | 1 |
| n2 + n + 1 の余り | 1 | 3 | 2 | 3 | 1 |
どの場合も余りは 1, 3, 2, 3, 1 で、0になりません。よって n2 + n + 1 は5の倍数になりません。(証明終わり)
書き方の例:n = 5k + 2 のときは
n2 + n + 1 = (5k+2)2 + (5k+2) + 1 = 25k2 + 25k + 7 = 5(5k2 + 5k + 1) + 2
のように、5でくくった形+余りを作れば、余りが2だとはっきり示せます。
この定石が効く場面:「〜の倍数である/ならないことを示せ」は、ほぼこの方法です。3の倍数なら3通り、4の倍数なら4通りに分けます。
例題8-4(n 進法) (1) 5進法の 2143(5) を10進法で表してください。(2) 10進法の100を7進法で表してください。
(1) 右から順に 50, 51, 52, 53 の重みをかけて足します。
2 × 125 + 1 × 25 + 4 × 5 + 3 × 1 = 250 + 25 + 20 + 3 = 298
(2) 100を7で割り続け、余りを下から読み上げます。
100 ÷ 7 = 14 余り 2
14 ÷ 7 = 2 余り 0
2 ÷ 7 = 0 余り 2
下から読んで 202(7)
確認:2 × 49 + 0 × 7 + 2 × 1 = 98 + 2 = 100。合っています。
注意:余りは下から上に読みます。上から読むと逆になります。変換したら必ず戻して検算してください。
例題8-5(積の形に持ち込む) xy − 2x − 3y = 0 を満たす正の整数 x、y の組をすべて求めてください。
考え方:文字が2つで式が1つなので、そのままでは解が決まりません。こういうときに使うのが「積の形に持ち込む」——( )( ) = 定数 の形にできれば、候補が有限個に絞れます。整数問題では、この形が作れるかをまず疑ってください。
x でくくると x(y − 2) − 3y = 0。ここで −3y を −3(y − 2) − 6 と書き直すと
x(y − 2) − 3(y − 2) − 6 = 0 → (x − 3)(y − 2) = 6
ここからは 6 の約数の組を書き出すだけです。x − 3 と y − 2 はどちらも整数なので、負の組も忘れずに並べます。
| x − 3 | 1 | 2 | 3 | 6 | −1 | −2 | −3 | −6 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| y − 2 | 6 | 3 | 2 | 1 | −6 | −3 | −2 | −1 |
| (x, y) | (4, 8) | (5, 5) | (6, 4) | (9, 3) | (2, −4) | (1, −1) | (0, 0) | (−3, 1) |
正の整数という条件で、右の4組は落ちます。
答え:(x, y) = (4, 8), (5, 5), (6, 4), (9, 3)
確認:4組とも元の式に戻して確かめます。(4, 8) なら 32 − 8 − 24 = 0、(5, 5) なら 25 − 10 − 15 = 0、(6, 4) なら 24 − 12 − 12 = 0、(9, 3) なら 27 − 18 − 9 = 0。すべて成り立ちます。
この型でいちばん多い誤りは負の約数の組を書き忘れることです。今回はたまたま全部落ちましたが、条件が「整数」なら残ります。まず約数の組をすべて並べ、そのあとで条件に合わないものを落とす——この順にすると、拾い忘れが起きません。
この単元のチェックリスト
| 確認すること | できていないと起きること |
|---|---|
| まず素因数分解したか | 約数・倍数の話が進まない |
| 積 = 定数の形にできないか探したか | 解が無限のまま手が止まる |
| 負の約数を調べたか | 解の半分を落とす |
| 「倍数にならない」を余りで分類したか | 無限個を調べようとして詰まる |
| 自然数か整数か確認したか | 余分な解/足りない解 |
| 不定方程式でずらす幅は正しいか | 係数を取り違える |
| n 進法の変換を逆算で検算したか | 桁の並びが逆になる |
もっと解きたい方へ 👉 整数の性質(基本)の特訓道場(20題と全解説)
第9章 図形の性質
この単元は定理が多く、覚えることが多いように見えます。しかし入試で問われるのは「どの定理を使う場面か」を図から見抜けるかだけです。定理そのものより、図の形と定理の対応を頭に入れてください。
ここが怪しければ先に:平行と合同(中2)・円(中3) / この先つながる:ベクトル(数学II・B・C) / この単元の解法パターン:図形の性質 全12型
使う道具
| 道具 | 形 | この図が見えたら |
|---|---|---|
| 角の二等分線 | BD : DC = AB : AC | 角を二等分する線が引いてある |
| 中線定理 | AB2 + AC2 = 2(AM2 + BM2) | 中点が出てくる |
| チェバの定理 | (BD/DC)(CE/EA)(AF/FB) = 1 | 3本の線が1点で交わる |
| メネラウスの定理 | 同じ形の積 = 1 | 1本の直線が三角形を横切る |
| 円周角の定理 | 同じ弧の円周角は等しい | 円の中に角がある |
| 円に内接する四角形 | 向かい合う角の和 = 180° | 円の中の四角形 |
| 接弦定理 | 接線と弦の角 = その弧の円周角 | 接線が引いてある |
| 方べきの定理 | PA · PB = PC · PD | 2直線が円と交わる/接する |
| 五心 | 外心・内心・重心・垂心・傍心 | 「〜心」という語 |
| オイラーの多面体定理 | V − E + F = 2 | 多面体の頂点・辺・面 |
定石
チェバとメネラウスは、図の形で見分ける
チェバ:3本の線(頂点から対辺へ)が1点で交わるときの比。
メネラウス:1本の直線が三角形を横切る(貫く)ときの比。
どちらも「3つの比をかけると1」という同じ形です。覚えるのは形ではなく、たどる順番。三角形の頂点と、線が辺を切る点をぐるっと一周する順にたどり、「頂点→分点→頂点→分点…」と分数を作っていきます。
円の問題は、まず「等しい角」を探す
円周角・接弦定理・内接四角形は、どれも「この角とこの角が等しい」と教えてくれる定理です。等しい角が2組見つかれば相似が言え、相似が言えれば辺の比が出ます。角 → 相似 → 比が円の問題の流れです。
五心は「何が集まる点か」で覚える
| 名前 | 何が集まる点か | 特徴 |
|---|---|---|
| 外心 | 各辺の垂直二等分線 | 3頂点から等距離(外接円の中心) |
| 内心 | 各角の二等分線 | 3辺から等距離(内接円の中心) |
| 重心 | 中線 | 頂点から 2 : 1 に内分 |
| 垂心 | 各頂点からの垂線 | 鈍角三角形では外側にくる |
| 傍心 | 1つの内角と2つの外角の二等分線 | 3つある |
つまずきポイント
① メネラウスのたどる順を間違える。比の向き(どちらを分子にするか)が逆になると、答えが逆数になります。三角形の周を一周する向きを決めて、その向きに沿ってたどると決めておけば迷いません。
② 方べきの定理で、外部の点と内部の点を混同する。点Pが円の内部にあるときも外部にあるときも PA · PB = PC · PD は成り立ちますが、Pが外部で片方が接線なら PA · PB = PT2 です(接点は1点なので2乗)。
③ 重心の比を逆にする。重心は頂点から数えて 2 : 1。頂点側が長いほうです。
④ 図を描かずに解こうとする。この単元は図が式の代わりです。図を描かないと、どの定理の形なのか判別できません。フリーハンドでよいので必ず描いてください。
⑤ 三角形の成立条件を忘れる。3辺の長さが与えられたら、|b − c| < a < b + c を満たしているか確認します。これを満たさない値は、答えとして採用できません。
オリジナル例題
例題9-1(メネラウス) 三角形ABCの辺AB上に点D、辺BC上に点Eがあり、AD : DB = 2 : 1、BE : EC = 3 : 2 です。直線DEと直線ACの交点をFとするとき、AF : FC を求めてください。
考え方:直線DEが三角形ABCを横切っているので、メネラウスの定理の場面です。
三角形ABCと直線DEFについて、A → D → B → E → C → F → A の順にたどると
(AD/DB) × (BE/EC) × (CF/FA) = 1
代入して
(2/1) × (3/2) × (CF/FA) = 1 → 3 × (CF/FA) = 1 → CF/FA = 1/3
よって AF : FC = 3 : 1
座標で検算:A(0, 0), B(3, 0), C(0, 3) とおきます。
・D は AB を 2 : 1 に内分するので D(2, 0)
・E は BC を 3 : 2 に内分するので E(6/5, 9/5)
直線DEの傾きは (9/5 − 0) ÷ (6/5 − 2) = (9/5) ÷ (−4/5) = −9/4。
式は y = −(9/4)(x − 2) で、x = 0 を代入すると y = 9/2。よって F(0, 9/2)。
AF = 9/2、FC = |9/2 − 3| = 3/2 なので
AF : FC = (9/2) : (3/2) = 3 : 1。定理の答えと一致しました。
ここが大事:座標の F(0, 9/2) は、C(0, 3) を通り越した位置にあります。つまりFは線分ACの外にあり、AC を 3 : 1 に外分しています。メネラウスでは交点が辺の外に出ることがふつうです。「比は出たのに図と合わない」と感じたら、外分になっていないかを疑ってください。
例題9-2(方べきの定理) 円の外部の点Pから円に引いた直線が、円と2点A、Bで交わり、PA = 3, PB = 8 です。またPから引いた接線の接点をTとするとき、PT の長さを求めてください。
考え方:接線がある方べきの定理は PA · PB = PT2。
PT2 = 3 × 8 = 24 → PT = √24 = 2√6
なぜ2乗なのか:接線は円と1点で接するので、割線でいう「A と B が重なった状態」です。だから PT · PT = PT2 になります。公式を別々に覚える必要はありません。
確認:(2√6)2 = 4 × 6 = 24。合っています。
例題9-3(角の二等分線) 三角形ABCで AB = 6, AC = 4, BC = 5 です。角Aの二等分線と辺BCの交点をDとするとき、BD と DC の長さを求めてください。
考え方:角の二等分線は、向かい合う辺を、はさむ2辺の比に分けます。
BD : DC = AB : AC = 6 : 4 = 3 : 2
BC = 5 を 3 : 2 に分けるので
BD = 5 × 3/5 = 3, DC = 5 × 2/5 = 2
確認:BD + DC = 3 + 2 = 5 = BC。合っています。また三角形の成立条件 |6 − 4| < 5 < 6 + 4、すなわち 2 < 5 < 10 を満たすので、この三角形は実在します。
覚え方:長い辺の側が長く分かれる。AB のほうが長いので、BD のほうが長くなります。答えが逆になっていないかは、これで確認できます。
例題9-4(オイラーの多面体定理) 正十二面体の頂点の数を求めてください。(正十二面体は、正五角形12枚でできています。)
考え方:V − E + F = 2 を使いますが、その前に辺の数 E を数え方の工夫で出します。
面の数:F = 12
辺の数:正五角形12枚には辺が 5 × 12 = 60 本ありますが、1本の辺は2枚の面で共有されているので
E = 60 ÷ 2 = 30
頂点の数:V − 30 + 12 = 2 より
V = 20
別の出し方で検算:正十二面体は1つの頂点に3枚の面が集まります。面の頂点は全部で 5 × 12 = 60 個ぶん数えられ、1つの頂点は3回数えられているので 60 ÷ 3 = 20。一致します。
この考え方が効く場面:「重複して数えたぶんを割る」は、第6章の組分けとまったく同じ発想です。単元が違っても、使っている考え方は共通しています。
例題9-5(外心と内心) ∠A = 50° の三角形 ABC について、外心を O、内心を I とするとき、∠BOC と ∠BIC を求めてください。
考え方:五心の問題は、「その点は何が集まった点か」を思い出すところから始まります。外心は3辺の垂直二等分線の交点で、3頂点から等距離——つまり外接円の中心。内心は3つの角の二等分線の交点です。この2つを言えれば、あとは図の性質に落ちます。
① 外心 O:O は外接円の中心なので、∠BOC は弧 BC に対する中心角、∠A は同じ弧に対する円周角です。中心角は円周角の2倍なので
∠BOC = 2 × 50° = 100°
② 内心 I:I は角の二等分線の交点なので、∠IBC = ∠B / 2、∠ICB = ∠C / 2。三角形 IBC の内角の和から
∠BIC = 180° − (∠B + ∠C) / 2 = 180° − (180° − ∠A) / 2 = 90° + ∠A / 2 = 90° + 25° = 115°
答え:∠BOC = 100°、∠BIC = 115°
確認:∠BIC = 90° + ∠A / 2 は、導き方まで書けるようにしておくと安全です。三角形 IBC の内角の和という1行から出るので、形を思い出せなくてもその場で作れます。
値の妥当性も見ておきます。∠A = 50° は鋭角なので外心は三角形の内部にあり、∠BOC = 100° は 360° より小さく矛盾しません。内心はつねに内部にあり、∠BIC は 90° より大きくなります——90° + ∠A/2 という式から、内心から見た角は必ず鈍角だとわかります。式の形から「必ずそうなること」を1つ読み取っておくと、答えの検算になります。
この単元のチェックリスト
| 確認すること | できていないと起きること |
|---|---|
| 図を自分で描いたか | どの定理の場面か判別できない |
| 1点で交わるか、横切るか見たか | チェバとメネラウスを取り違える |
| 円では等しい角を先に探したか | 相似に持ち込めない |
| 方べきで接線なら2乗にしたか | 長さが合わない |
| 外分になっていないか確認したか | 比は正しいのに図と食い違う |
| 三角形の成立条件を確認したか | 存在しない三角形を答えてしまう |
もっと解きたい方へ 👉 図形の性質(基本)の特訓道場(20題と全解説)
最後に:単元をまたいで効く3つの見方
ここまで9単元を順に見てきました。単元ごとの道具はばらばらに見えますが、実は同じ考え方が何度も出てきています。最後にそれを3つだけ取り出しておきます。この3つは、単元を忘れたときの「戻る場所」になります。
見方1 条件は「式に変える」か「図に変える」
問題文の日本語は、そのままでは計算できません。必ず式か図に変換します。そして、この変換のしかたはだいたい決まっています。
| 問題文の言葉 | 変換先 |
|---|---|
| 「すべての x で成り立つ」 | 判別式 D < 0(下に凸なら) |
| 「異なる2つの正の解をもつ」 | 判別式・軸の位置・端点の符号の3条件 |
| 「最小値を求めよ」(2次関数) | 軸と定義域の位置関係で場合分け |
| 「少なくとも1つは」 | 余事象(1つもない場合を引く) |
| 「〜の倍数にならない」 | 余りで分類して全部調べる |
| 「整数解をすべて求めよ」 | 積 = 定数の形にして約数を調べる |
| 「3本の線が1点で交わる」 | チェバの定理 |
| 「直線が三角形を横切る」 | メネラウスの定理 |
| 「必要十分条件を求めよ」 | 両方向を示す(片方だけでは不足) |
この対応表を持っていると、問題を読んだ瞬間に手が動き始めます。これは「順番に当てはめているだけ」ではありません。「型」から先の展開を予想し、考える量を減らすことで、手際よく解法にたどり着いている——そういう働き方をしています。予想が外れたら別の型に切りかえればよい。型は思考を止める道具ではなく、思考を速く進めるための足場です。
見方2 「重複して数えたぶんを割る」は、あちこちに現れる
第6章の組分けで 3! で割ったのと、第9章で正十二面体の辺を 2 で割ったのは、まったく同じ発想です。
・組分け:同じ分け方を k! 回数えている → k! で割る
・多面体の辺:1本の辺を2枚の面が共有 → 2 で割る
・円順列:回転した n 通りを同じとみなす → n で割る(結果 (n−1)!)
・和事象:重なりを2回数えた → P(A ∩ B) を1回引く
まず区別して数え、あとから重複を取り除く。数えにくいものは、いったん数えやすい形にしてから調整する——この順番を覚えておくと、初見の数え上げでも手が止まりません。
見方3 答えが出たら、必ず「戻して確かめる」
入試で差がつくのは、実は最後の数十秒です。出した答えを問題文に戻すだけで、多くのミスは自分で見つけられます。
| 単元 | 戻して確かめること |
|---|---|
| 数と式 | 因数分解した式を展開して元に戻るか |
| 2次関数 | 場合分けの境目で、両側の答えが一致するか |
| 図形と計量 | 三角形の成立条件、角の大小と辺の大小が対応しているか |
| 集合と命題 | 反例が本当に条件を満たしているか |
| データの分析 | 標準偏差が0以上か、相関係数が −1 以上 1 以下か |
| 場合の数 | 小さい数に置きかえて書き出せるか |
| 確率 | 0以上1以下か、全事象の確率の合計が1か |
| 整数の性質 | 求めた解を元の式に代入して成り立つか |
| 図形の性質 | 比の和が全体の長さになっているか |
この確認の習慣は、成績が上がる速さそのものに直結します。自分でミスを見つけられる人は、模試の返却を待たずに修正できるからです。
数学I・Aで、次にやること
このページを読み終えたら、いちばん自信がない単元をひとつだけ選んでください。そして、その章の「オリジナル例題」を何も見ずに解いてみる。解けなければ「つまずきポイント」に戻る。これを1単元ずつ潰していくのが、いちばん速い進み方です。
手を動かす教材は無料で用意してあります 👉 無料学習プリント・映像授業
よくある質問
数学I・Aの全単元を復習するのに、どれくらいかかりますか
このページを読むだけなら2〜3時間ですが、それだけでは点になりません。各章の例題を自分で解きながら進めると、1単元あたり1〜2時間、全9単元で10〜15時間が目安です。定期試験の直前なら、試験範囲の章だけを開いてください。
2次関数の場合分けが、いつも合いません
ほとんどの場合、原因は「軸と定義域のどちらが動いているか」を決めずに書き始めていることです。第2章で説明したとおり、最小値は軸が定義域の左・中・右の3通り、最大値は軸が定義域の中央より左か右かの2通りに割れます。まず場合分けの個数を決めてから、それぞれの答えを書いてください。境目の値で両側の答えが一致するかを確かめると、検算にもなります。
相加平均・相乗平均の関係で最小値を出したのに、答えが違いました
等号が成立する値が、定義域の中に入っているかを確認していない可能性が高いです。相加平均・相乗平均の関係が示すのは「これ以上小さくならない」という下限であって、その値に実際に届くとは限りません。等号が成立する値が定義域の外にあるなら、最小値は別の場所(多くは定義域の端)で取ります。第2章に詳しく書きました。
場合の数で、割るか割らないかが判断できません
判断の基準は「箱に名前があるか」です。A室・B室のように区別があるなら割りません。単に「3つの組に分ける」なら、同じ人数の組の個数だけ階乗で割ります。迷ったら、4人を2人ずつ2組に分けるくらいの小さい例で実際に書き出してみてください。3通りしかないことがすぐわかり、なぜ割るのかが腑に落ちます。
整数の問題だけ、まったく手が出ません
整数は「解く」より「絞り込む」単元です。手が止まったら、第8章の4つの定石——積の形にする/余りで分類する/1組見つけてずらす/大小を仮定して範囲を絞る——を上から順に試してください。この4つで、教科書レベルから入試標準レベルまでの大半が動きます。
共通テストの対策には、どこから手をつければよいですか
共通テストは誘導に乗る力が問われます。まず各単元の道具を使える状態にしてから、実際の過去問で誘導の形に慣れてください。数強塾では過去問の全問解説を無料で公開しています 👉 大学入試の過去問 全問解説
このページの例題は、どこかの問題集から取ったものですか
いいえ。掲載している例題・解説・図は、すべて数強塾が新規に書き下ろしたものです。市販の参考書や問題集から問題文・解説を転載したものは一切含まれていません。数値も、こちらで設定して検算したうえで掲載しています。
数学II・B・Cや数学IIIの辞典はありますか
あります。数学II・B・Cの要点辞典(全12単元)、数学IIIの要点辞典(全7単元)、そして証明や論証だけを扱った 論理と証明の要点辞典 を公開しています。また、分野を横断する「解き方の型」は 入試数学の定石(全27章) にまとめてあります。
三角比で、鈍角のときの符号がわかりません
単位円で、点がどの象限にいるかを見れば決まります。鈍角(90° 〜 180°)では点が左上にあるので、x 座標にあたる cos は負、y 座標にあたる sin は正、その比の tan は負。符号を思い出すのではなく、円を1つ描いて読み取るほうが確実です。第3章 図形と計量で扱っています。
相関係数が 0 なら、関係がないということですか
いいえ。相関係数が測っているのは「直線的な関係の強さ」だけです。きれいな放物線の形に並んでいても、直線的でなければ相関係数は 0 に近くなります。また相関があっても因果があるとは限りません。数値だけで判断せず、必ず散布図を見てください。第5章 データの分析に、この2つの誤りをまとめてあります。
数強塾からのご案内
数強塾は、数学を専門にしたオンライン個別指導塾です。中学生・高校生を対象に、一人ひとりの理解の状態に合わせて指導しています。
このページのような「型」の整理は、自分がどこでつまずいているかがわかっている人には非常によく効きます。一方で、「どこがわからないのかがわからない」状態のときは、外から見てもらうのがいちばん速い。もし今そういう状態なら、一度ご相談ください。
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- 入試数学の定石(全27章) ── 分野を横断する解き方の型
数学I・Aの要点辞典のあとに読むページ
この辞典の「整数の性質」の節を、48項目まで広げて例題をつけたのが下のページです。要点だけでは足りないと感じたとき、とくに合同式・不定方程式・n進法でつまずいたときに開いてください。
- 整数の性質(基本)の特訓道場30題 ── 基本を30題で固める
- 整数の性質の特訓道場30題(難問) ── 難問で試す
- 整数の解法パターン全18型+判定ドリル8題 ── 型から引く
数強塾オリジナル 追加演習4題——「単元をまたいで効く3つの見方」を、実際にまたいで使う
このページの最後に、単元をまたいで効く3つの見方を置きました。
見方1 条件は「式に変える」か「図に変える」
見方2 「重複して数えたぶんを割る」は、あちこちに現れる
見方3 答えが出たら、必ず「戻して確かめる」
ところがオリジナル例題45問は、すべて各章の中に置かれています。3つの見方は「単元をまたいで効く」と書いたのに、それを試す問題が1問もありません。言葉で読んだだけでは、またげるようになりません。
そこで、1問が複数の章にまたがる4題を用意しました。追加第1〜3問が見方1〜3に対応し、追加第4問で3つを同時に使います。どの章の道具を持ち出すかは、自分で決めてください。
追加第1問(見方1:式に変えるか、図に変えるか)
実数 が を満たすとき、 の最大値を求めよ。できるだけ多くの方法で解け。
方法1 式に変える(第1章・第2章)
とおいて を代入します。
これをみたす実数 が存在することが条件なので、判別式を使います。
最大値は 。
方法2 図に変える(第2章の図形的な見方)
は原点中心・半径 の円、 は傾き の直線の族です。両者が共有点をもつ の範囲を求めればよい。中心と直線の距離が半径以下であればよいので
方法3 三角比に変える(第3章)
、 と置けます。
の最大が なので、最大値 。
同じ問題が3つの章の道具で解けました。見方1が言っているのはこれです。「条件を式に変えるか、図に変えるか」の分かれ道は、章の壁とは関係なく現れます。 という形を見たら、円だと思ってもよいし、三角比で置いてもよい——この引き出しの多さが、単元をまたぐということです。
検算
最大になるのは のとき。条件式は 。○ 。○
方法3では 、つまり 。このとき で、方法1・2の答えと一致します。○
追加第2問(見方2:重複して数えたぶんを割る)
正十二角形の対角線は何本あるか。2通りの方法で求めよ。
方法1 1つの頂点から数えて、割る(第6章・第9章)
1つの頂点から対角線を引ける相手は、自分自身と両隣を除いた9個。頂点は12個あるので 。
ところがこの数え方だと、対角線1本を両端の2回ずつ数えています。だから で割ります。
方法2 2点を選んでから、辺を引く(第6章)
12個の頂点から2個を選ぶと 通り。この中には辺(隣どうしを結んだもの)が12本含まれるので
方法1の「」がそのまま見方2です。そして方法2の にも、すでに割り算が入っています—— だからです。「AとB」と「BとA」を同じとみなすのが割る理由で、それは第6章の組合せでも、この図形の問題でも同じこと。第9章(図形の性質)の問題を解いているつもりでも、使っている道具は第6章のものです。
検算
2つの方法が同じ に着きました。○
小さい場合でも試します。正五角形なら、方法1は 、方法2は 。実際、正五角形の対角線は5本(星形になります)。○
正方形なら方法1が 、方法2が 。○ 数え上げの答えは、手で描ける小さい場合に落として確かめる。
追加第3問(見方3:戻して確かめる)
(1) 方程式 を解け。
(2) のとき、 の最小値を求めよ。
(1) の解答
両辺を2乗します。
が出ますが、ここで止めてはいけません。もとの式に戻します。
:左辺 、右辺 。○
:左辺 、右辺 。×( は 以上なので、右辺が負では成り立ちません)
(2) の解答
相加平均・相乗平均の関係を使いたくなります。
ところが等号が成り立つのは 、つまり のときで、これは の外です。だから は最小値になりません。
は で増加するので、 では が最小。
(2) は「よくある質問」の3番目「相加平均・相乗平均の関係で最小値を出したのに、答えが違いました」そのものです。記事はFAQで警告していますが、実際にずれる例題がありません。ずれ方は小さく( と )、答えだけ見ても気づけません。等号成立の値を出して、定義域に入っているか確かめる——これが見方3です(なぜ相加平均は相乗平均以上なのか)。
検算
(2) を数値で確かめます。 で 、 で 、 で 、 で 。 では増える一方なので、最小は端の 。○
(1) も同じ形です。「2乗して出た解」も「相加相乗で出た値」も、候補にすぎません。もとの条件に戻して初めて答えになります。
追加第4問(3つの見方を同時に使う)
実数 が を満たすとき、
(1) のとりうる値の範囲を求めよ。
(2) のとりうる値の範囲を求めよ。
(1) 見方1で解く
、 と置きます(円だから、という見方)。
の値域から 。
別の道:相加平均・相乗平均でも上限が出ます。 なので 、すなわち 。等号は のときで、 と合わせて 。定義域の中にあるので、今度は等号が使えます(見方3)。
(2) 見方2的に、和と積で結ぶ
を展開すると が現れます。
(1) より なので 。よって
(2) で使ったのは対称式の考え方(第1章)です。 を個別に求めずに、和と積だけで話を進める。円(第2章・図形)から始めて、三角比(第3章)を経由し、最後は数と式(第1章)で締める——1問のうちに3章を通過しています。
検算(見方3)
端の値が実際に出るかを確かめます。
:。○ (上限)、(上限)。○
:条件をみたし、(下限)、。○
:条件をみたし、、。範囲の中。○
範囲を求めたら、両端が実際に達成できるかを必ず確かめてください。不等式で挟んだだけでは「そこまで行ける」ことは言えません。今回は3組とも実在したので、範囲は正しい。
4題がまたいだ章
| 対応する見方 | またいだ章 | 答え | |
|---|---|---|---|
| 追加第1問 | 見方1 | 第1章(判別式)・第2章(円と直線)・第3章(三角比) | |
| 追加第2問 | 見方2 | 第6章(組合せ)・第9章(図形の性質) | 本 |
| 追加第3問 | 見方3 | 第1章(根号・不等式)・第2章(最大最小) | / |
| 追加第4問 | 1〜3すべて | 第1章・第2章・第3章 |
4問とも2〜3章にまたがっています。目次は章で分かれていますが、問題は章で分かれていません。
この4題で確認したこと
- 見方1:同じ問題が「式(判別式)」「図(円と直線の距離)」「三角比(置きかえ)」の3通りで解ける。引き出しの数が、そのまま速さになる(追加第1問)。
- 見方2: の正体は「2回数えたから」。組合せ にも同じ割り算が入っている(追加第2問)。
- 見方3:2乗して出た解も、相加相乗で出た値も候補にすぎない。もとの条件に戻して初めて答えになる(追加第3問)。
- 相加相乗の等号が定義域の外にあるときは、その値は最小値にならない。FAQ3の事故は、ずれ幅が小さいので答えだけ見ても気づけない。
- 範囲を求めたら両端が実際に達成できるかを確かめる(追加第4問)。
- 問題は章で分かれていない。1問が2〜3章にまたがるのがふつうです。
分野を横断する型そのものは 入試数学の定石(全27章)、対称式で処理する型は 対称式とは(3変数と逆数の追加演習つき)、解の配置は 解の配置の原理 へ。
この4題で使った語は 絶対値とは、不等式とは、順列と組合せとは、二次方程式とは で、いずれも追加演習つきです。用語の一覧は 数学用語辞典 にあります。
次の段階は 数学II・B・Cの要点辞典、理系はさらに 数学IIIの要点辞典、答案の書き方は 論理と証明の要点辞典、全7ページの逆引きは 数学の要点辞典まとめ にあります。
道具の「なぜ」は、なぜ相加平均は相乗平均以上なのか、なぜ判別式はb²-4acなのか、なぜasinx+bcosxは1つのsinにまとまるのか、なぜ√4は2なのに「4の平方根」は±2なのか にまとめてあります。

