数学IIIの要点辞典|全7単元の公式・定石・つまずきポイントと例題35問


このページは、数学IIIの全7単元を1ページにまとめた要点辞典です。単元ごとに「使う道具(公式)」「定石(どんな形が来たら何を試すか)」「つまずきポイント」「例題」の4点をそろえてあります。

数学IIIは「数学IIの微積分を、あらゆる関数に広げた」単元です。扱う関数が増えるぶん計算は重くなりますが、やっていることは数学IIと同じ——傾きを出し、増減を調べ、面積を出す。だから怖がる必要はありません。

このページで足したのは、その公式を「いつ・なぜ使うのか」と、実際に点を落とす場所です。置換積分で積分区間を変え忘れる、極限で不定形のまま代入する、回転体の体積で軸を取り違える——そういう「知っていれば落とさないところ」を単元ごとに書き出しました。

このページの使い方

頭から通読する必要はありません。いま習っている単元、または直前の試験範囲だけを開いてください。目次から飛べます。

そして、読むだけで終わらせないでください。各単元の最後に例題を置いてあります。解答を見る前に、まず自分で5分だけ手を動かしてみてください。「どの道具を使う場面か」に気づけたかどうかが、その単元を使える状態になっているかの判定になります。

数学I・A/II・B・Cの辞典は別ページです 👉 数学I・Aの要点辞典数学II・B・Cの要点辞典

免責と、このページの作り方について

このページは学習の助けとして書かれたまとめです。正確さを保証するものではありません。最終的な判断は、必ず教科書・学校の先生・信頼できる問題集で確認してください。このページを読んだことで生じた不利益について、数強塾は責任を負いません。

掲載している解説・図・および出典を明記していない例題は、すべて数強塾が新規に書き下ろしたものです。市販の参考書・問題集から解説や問題文を転載したものは含まれていません。大学入試で実際に出題された問題を扱う場合は、出題大学と年度を明記し、解答・解説は数強塾が独自に書いています。

目次

  1. 関数 ── 分数関数・無理関数/逆関数/合成関数
  2. 数列の極限と無限級数 ── 不定形の処理/無限等比級数/循環小数
  3. 関数の極限と連続性 ── 三角関数の極限/自然対数の底 e/中間値の定理
  4. 微分法 ── 積・商・合成関数の微分/対数微分法/媒介変数・陰関数
  5. 微分法の応用 ── 接線/増減と凹凸/最大最小/方程式・不等式への応用
  6. 積分法 ── 置換積分/部分積分/部分分数/三角関数の次数下げ
  7. 積分法の応用 ── 面積/体積・回転体/曲線の長さ/区分求積法

最後に:数学IIIを通して効く3つの見方 / よくある質問(10問)

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第1章 関数

微積分に入る前に、扱う関数の種類を増やしておく単元です。分数関数・無理関数・逆関数・合成関数——どれも「グラフの形」と「定義域」がわかれば十分です。

ここで身につけるべき態度はひとつ。関数を見たら、まず定義域を確認する。数学IIIで最も多い失点は、計算ミスではなく定義域の見落としです。

ここが怪しければ先に指数関数・対数関数(数学II・B・C)図形と方程式(数学II・B・C) / この先つながる関数の極限と連続性 / この単元の解法パターンいろいろな関数と曲線 全12型 / この単元を1日1枚で毎日の数学 18枚

使う道具

道具 使いどころ
分数関数 y = k/(x − p) + q 漸近線 x = py = q
分数関数の変形 分子を分母で割って商+余りの形に 漸近線を出す第一歩
無理関数 y = √(ax + b) 根号の中は0以上/値も0以上
逆関数 y = f(x) を x について解いて x と y を入れかえる y = x
逆関数の存在条件 もとの関数が1対1であること 単調増加または単調減少
逆関数の定義域 もとの関数の値域 入れかわる
合成関数 (g∘f)(x) = g(f(x)) 内側から先に計算
合成の順序 g∘f ≠ f∘g 一般には一致しない

定石

分数関数のグラフと2本の漸近線y イコール 1割る かっこ x ひく1 かっこ たす2 のグラフ。分母が0になる x イコール 1 が縦の漸近線、x を大きくしたときの行き先である y イコール 2 が横の漸近線になる。定義域は x が1でないこと、値域は y が2でないこと。xyO-22424x = 1y = 2y = 1/(x − 1) + 2分母が 0 になる x が縦の漸近線、x を大きくしたときの行き先が横の漸近線定義域 x ≠ 1 値域 y ≠ 2
図1 分母が0になる x が縦の漸近線、x を大きくしたときの行き先が横の漸近線。2本の漸近線を先に引くと、グラフの形が決まります

分数関数は「割り算して、商+余りの形にする」

y = (2x + 3)/(x − 1) は、分子を分母で割ると
2x + 3 = 2(x − 1) + 5 なので y = 2 + 5/(x − 1)

この形にすれば、漸近線が x = 1y = 2 だと一目でわかります。基本形 y = 5/x を右に1、上に2だけ平行移動したグラフです。

無理関数は「根号の中が0以上」と「値が0以上」の2つを書く

y = √(x + 2) なら、定義域は x ≥ −2、値域は y ≥ 0値域のほうを忘れがちですが、方程式を解くときはこちらが効きます。

無理方程式は「2乗して解いて、必ず戻して確かめる」

2乗は同値変形ではありません。A = B ならば A2 = B2 ですが、逆は成り立ちません(A = −B でも2乗は等しくなるため)。

だから2乗して出した解は「候補」にすぎません。必ず元の式に戻して確かめるか、あらかじめ B ≥ 0 の条件を付けてください。

逆関数はグラフを y = x で折り返したもの

だから定義域と値域が入れかわりますy = √x(定義域 x ≥ 0、値域 y ≥ 0)の逆関数は y = x2 ですが、定義域は x ≥ 0 に限られます。ここを書かないと、まったく別の関数になってしまいます。

y = x について折り返すと逆関数になるyイコールxの2乗のグラフと、その逆関数であるyイコールルートxのグラフを重ねた図。2つは直線yイコールxについて対称になっている。元のグラフ上の点2と4は、折り返すと4と2に移る。xとyが入れかわるので、定義域と値域も入れかわる。xyO1234512345y = x²y = √xy = x(2, 4)(4, 2)y = x について対称
図2 逆関数は、もとのグラフを y = x で折り返しただけです。xy が入れかわるので、定義域と値域も入れかわります——この図が頭にあれば、「逆関数の定義域を書き忘れる」という最頻出のミスが起きにくくなります。y = x2 を逆関数として書くときに x ≥ 0 が要るのも、折り返す前が右半分だけだったからです。

つまずきポイント

① 逆関数の定義域を書かない。これがこの単元の最頻出ミスです。もとの関数の値域が、逆関数の定義域になります。

② 無理方程式で、2乗して出た解をそのまま答える。√(x+2) = x を2乗すると x = 2, −1 が出ますが、x = −1 は元の式で左辺が 1、右辺が −1 となり成り立ちません。右辺が0以上という条件を先に書いておくと、自動的に落ちます。

③ 合成関数の順序を逆にする。(g∘f)(x) は「先に f、あとから g」です。記号の並び順と計算の順が逆なので、毎回確認してください。

④ 分数関数のグラフで、漸近線を描かない。漸近線を先に引いてから曲線を描くと、形を間違えません。グラフの骨格は漸近線です。

⑤ 逆関数をもたない関数に逆関数を求める。y = x2(定義域が実数全体)は1対1でないので、逆関数をもちません。定義域を制限してはじめて逆関数が定義できます。

例題

例題1-1(分数関数) y = (2x + 3)/(x − 1) のグラフの漸近線を求め、どのようなグラフか説明してください。

手順1:商+余りの形にする。分子を分母で割ります。
2x + 3 = 2(x − 1) + 5

よって y = 2 + 5/(x − 1)

手順2:漸近線を読む。
x − 1 = 0 のとき分母が0になるので 漸近線 x = 1
x を大きくすると 5/(x−1) → 0 なので 漸近線 y = 2

答え:漸近線は x = 1y = 2y = 5/x のグラフを x 方向に 1、y 方向に 2 だけ平行移動したもの。

確認x = 2 のとき元の式は 7/1 = 7、変形後は 2 + 5/1 = 7。一致します。変形したら必ず1点で検算してください。

なぜこの形にするのか:分数関数のグラフはすべて y = k/x の平行移動です。だから「商+余り」に直せば、あとは移動先を読むだけになります。知っている形に持ち込む——数学IIIでも発想は同じです。

例題1-2(無理方程式) √(x + 2) = x を解いてください。

手順1:条件を先に書く。
根号の中が0以上:x + 2 ≥ 0 → x ≥ −2
左辺は0以上だから、右辺も0以上x ≥ 0

この2つを合わせて x ≥ 0

手順2:2乗して解く。
x + 2 = x2 → x2 − x − 2 = 0 → (x − 2)(x + 1) = 0 → x = 2, −1

手順3:条件で絞る。x ≥ 0 より x = −1 は不適。

答えx = 2

確認√(2 + 2) = √4 = 2。合っています。x = −1 なら左辺 √1 = 1、右辺 −1 で成り立ちません。

グラフで見るとy = √(x+2)y = x の交点を探しているので、交点は1個しかないとグラフから予想できます。x = −1 は、直線を下側に延ばした「鏡像」との交点にあたる偽物です。2乗すると偽物が混ざる理由が、図で見えます。

例題1-3(逆関数) y = (2x + 3)/(x − 1)x ≠ 1)の逆関数を求め、その定義域を答えてください。

手順1:x について解く。
y(x − 1) = 2x + 3
yx − y = 2x + 3
yx − 2x = y + 3
x(y − 2) = y + 3
x = (y + 3)/(y − 2)

手順2:x と y を入れかえる。
y = (x + 3)/(x − 2)

手順3:定義域を書く。もとの関数の値域が、逆関数の定義域です。例題1-1から、もとの関数は y = 2 + 5/(x−1) なので、2 だけは取れません(値域は y ≠ 2)。よって逆関数の定義域は x ≠ 2

答えy = (x + 3)/(x − 2)x ≠ 2

確認:もとの関数で x = 2 のとき y = 7。逆関数に x = 7 を入れると 10/5 = 2。元に戻りました。「1点で往復させる」のが、逆関数のいちばん速い検算です。

定義域が分母から自動的に出る場合:ここでは逆関数の式の分母が x − 2 なので、x ≠ 2 は式からも読めます。ただし、いつも一致するとは限りません。もとの関数の値域を確認する手順は、必ず踏んでください。

例題1-4(合成関数) f(x) = x2 + 1g(x) = 2x − 3 のとき、(g∘f)(x)(f∘g)(x) を求めてください。

(g∘f)(x) = g(f(x)) 先に f、あとから g
= g(x2 + 1) = 2(x2 + 1) − 3 = 2x2 − 1

(f∘g)(x) = f(g(x)) 先に g、あとから f
= f(2x − 3) = (2x − 3)2 + 1 = 4x2 − 12x + 10

答え(g∘f)(x) = 2x2 − 1(f∘g)(x) = 4x2 − 12x + 10

確認x = 1 で確かめます。f(1) = 2g(2) = 1 なので (g∘f)(1) = 1。式では 2 − 1 = 1 ✓。g(1) = −1f(−1) = 2 なので (f∘g)(1) = 2。式では 4 − 12 + 10 = 2

順序が結果を変える2x2 − 14x2 − 12x + 10 はまったく別の関数です。合成に交換法則は成り立ちません。この事実は、第4章の合成関数の微分でそのまま効いてきます。

例題1-5(無理関数と直線の共有点) k を実数とするとき、y = √(x + 2) のグラフと直線 y = x + k の共有点の個数を求めてください。

考え方√(x + 2) = x + k をそのまま2乗すると、もとの式を満たさない解が紛れこみます。ここでは t = √(x + 2) とおいて、t ≥ 0 の解が何個あるか」に言いかえると、余分な解が最初から入りません。
t ≥ 0x = t2 − 2 は1対1に対応するので、t の個数を数えれば、そのまま共有点の個数になります。

 t = (t2 − 2) + k → t2 − t + (k − 2) = 0 ……①
 判別式 D = 1 − 4(k − 2) = 9 − 4k
 2解の和は 1、積は k − 2

(i) k > 9/4 → D < 0 で実数解なし → 0個
(ii) k = 9/4 → 重解 t = 1/2 ≥ 0 → 1個
(iii) 2 ≤ k < 9/4 → 和が 1 > 0、積が k − 2 ≥ 0 なので2解とも 0 以上 → 2個
(iv) k < 2 → 積が負なので、正の解と負の解が1つずつ。t ≥ 0 を満たすのは1つ → 1個

答えk < 2 のとき1個、2 ≤ k < 9/4 のとき2個、k = 9/4 のとき1個、k > 9/4 のとき0個

確認境目の値を実際に入れてみるのがいちばん確実です。k = 2 のとき ① は t2 − t = 0t = 0, 1x = −2, −1。どちらも √(x + 2) = x + 2 を満たします(0 = 01 = 1)。確かに2個です。
k = 0 なら t2 − t − 2 = 0t = 2, −1t ≥ 0t = 2 だけなので x = 2、1個。t = −1 を捨て忘れると2個と答えてしまいます。
グラフで見ると、y = √(x + 2)(−2, 0) から右上へ伸びる曲線の上半分。傾き1の直線を上下に動かすと、端点 (−2, 0) を通るとき(k = 2)と、接するとき(k = 9/4)が境目になります。答えの分かれ目が、絵の上でどこにあたるかを言えるかが理解の目安です。

この単元のチェックリスト

確認すること できていないと起きること
分数関数を商+余りに直したか 漸近線が読めない
無理関数で定義域と値域を書いたか 偽の解を拾う
2乗する前に符号条件を書いたか 同値でない変形になる
逆関数の定義域を書いたか 別の関数を答えてしまう
合成の順序を確認したか まったく違う式になる
1点で往復させて検算したか 変形ミスに気づけない

もっと解きたい方へ 👉 分数関数・無理関数と逆関数の特訓道場(20題と全解説)

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第2章 数列の極限と無限級数

「限りなく近づく」を扱う単元です。難しく見えますが、入試で問われるのは「不定形をどう処理するか」のほぼ一点に集約されます。

∞/∞∞ − ∞ のままでは値が決まりません。決まる形に変形する——それがこの単元の全体像です。

ここが怪しければ先に数列(数学II・B・C) / この先つながる積分法の応用 / この単元の解法パターン極限 全15型 / この単元を1日1枚で毎日の数学 24枚

使う道具

道具 使いどころ
不定形 ∞/∞、∞ − ∞、0 × ∞ そのままでは値が決まらない
最高次で割る 分母の最高次の項で分母分子を割る ∞/∞ の定番
有理化 √A − √B に (√A + √B)/(√A + √B) を掛ける ∞ − ∞ の定番
はさみうちの原理 an ≤ bn ≤ cn で両端が同じ極限 直接求められないとき
等比数列の極限 |r| < 1 で0、r = 1 で1、それ以外は発散 rの範囲で場合分け
無限等比級数 |r| < 1 のとき和は a/(1 − r) 収束条件を必ず書く
級数の収束 部分和 Sn の極限 定義に戻る
発散のための必要条件 an → 0 でなければ級数は発散 逆は成り立たない

定石

∞/∞ は「分母の最高次で割る」

(3n2 − n)/(2n2 + 5) は、分母分子を n2 で割ると
(3 − 1/n)/(2 + 5/n2)
1/n1/n2 は0に近づくので、極限は 3/2結局は最高次の係数の比です。

∞ − ∞ は「有理化して分数にする」

√(n2 + n) − n は、(√(n2+n) + n) を分母分子に掛けると
n / (√(n2+n) + n)
∞ − ∞∞/∞ に変わったので、あとは最高次で割るだけです。扱えない不定形を、扱える不定形に移すのがこの手の狙いです。

無限等比級数の収束条件初項1・公比2分の1の等比数列では、部分和は2に近づいて収束する。公比が2分の3では部分和がどこまでも大きくなり発散する。公比の絶対値が1より小さいときだけ収束するので、答案では収束条件を書いてから和を求める。|r| < 1 のときだけ、部分和は一定の値に近づくS1S2S3S4S5S6S7S82r = 1/2 → 2 に収束r = 3/2 → 発散答案では、先に「|r| < 1 だから収束する」と書いてから和を出す
図3 |r| < 1 のときだけ部分和が一定の値に近づきます。答案では、先に収束条件を書いてから和を出します。

無限等比級数は、必ず「収束条件」から書く

初項 a、公比 r の無限等比級数が収束するのは
a = 0 または |r| < 1
このとき和は a/(1 − r)

a = 0 の場合を落とすと減点されます。公比が文字なら、必ず両方を書いてください。

無限等比級数が収束する条件無限等比級数が収束するのは、初項aが0のときか、公比rの絶対値が1より小さいとき。数直線ではマイナス1と1の間だけが収束で、両端は含まない。rが1なら同じ数を足し続けるので発散し、rがマイナス1なら0とaを行き来して発散する。収束するときの和は、aわる1ひくr。初項3、公比3分の2なら、和は3わる1ひく3分の2で9になる。収束するかどうかは、公比 r で決まる−2−1012収束(|r| < 1)発散発散r = 1 は同じ数を足し続けるので発散r = −1 は 0 と a を行き来して発散a = 0 なら、r が何でも和は 0── ここを書き落としやすい答案は、収束条件から書くa = 0 または |r| < 1S = a ÷ (1 − r)(|r| < 1 のときだけ使える)例:初項 3、公比 2/3|2/3| < 1 だから収束してS = 3 ÷ (1 − 2/3) = 9
図4 和の公式より先に、収束条件を書く——順序を逆にすると、いくら計算が合っていても点になりません。数直線で見れば、収束するのは −1 < r < 1 の内側だけで、両端は入りません。そしてa = 0 の場合——公比が文字で与えられたときに落としやすいのはこちらです。

循環小数は、無限等比級数として足す

0.123123…0.123 + 0.000123 + … という初項 0.123、公比 0.001 の無限等比級数です。だから和は 0.123/(1 − 0.001) = 123/999循環小数が分数になる理由が、ここでわかります。

つまずきポイント

① 不定形のまま代入する。∞/∞1 としたり、∞ − ∞0 としてはいけません。これらは「まだ値が決まっていない」という記号であって、数ではありません。

② 無限等比級数の収束条件を書かない。公比が文字のときは場合分けが必要です。答えだけ書いて条件がないと、大きく減点されます。

an → 0 なら級数が収束すると思う。これは逆が成り立ちませんΣ 1/n は各項が0に近づきますが、和は発散します。「必要条件であって十分条件ではない」——数学I・Aの論理が効く場面です。

④ はさみうちで、両端の極限が違うのに使う。はさみうちの原理は、両側が同じ値に近づくときだけ結論が出ます。片方だけでは何も言えません。

⑤ 等比数列 rn の極限で r = −1 を忘れる。(−1)n1, −1, 1, −1, … と振動し、収束しません|r| < 1r = 1r = −1|r| > 1 の4通りで整理してください。

例題

例題2-1(∞/∞ の処理) limn→∞ (3n2 − n)/(2n2 + 5) を求めてください。

考え方:そのまま n → ∞ とすると ∞/∞ で決まりません。分母の最高次 n2 で分母分子を割ります。

= limn→∞ (3 − 1/n)/(2 + 5/n2)

1/n → 05/n2 → 0 なので
= 3/2

答え3/2

確認n = 100 を入れると (30000 − 100)/(20000 + 5) = 29900/20005 ≒ 1.49463/2 = 1.5 に近づいています。大きい n を1つ代入するだけで、答えの妥当性は確かめられます。

一般化:多項式どうしの分数の極限は、分母と分子の最高次を比べるだけで決まります。分子の次数が高ければ発散、同じなら係数の比、分子のほうが低ければ0です。

例題2-2(∞ − ∞ の処理) limn→∞ (√(n2 + n) − n) を求めてください。

考え方∞ − ∞ なので、このままでは決まりません。有理化して分数の形にします。

√(n2+n) − n = {(√(n2+n) − n)(√(n2+n) + n)} / (√(n2+n) + n)

分子は (n2 + n) − n2 = n になるので
= n / (√(n2+n) + n)

ここで ∞/∞ になったので、最高次の n で割ります。
= 1 / (√(1 + 1/n) + 1)

1/n → 0 なので
= 1/(1 + 1) = 1/2

答え1/2

確認n = 1000 なら √(1001000) − 1000 ≒ 1000.4999 − 1000 = 0.49991/2 に近づいています。

この2段変形が定石∞ − ∞ → 有理化 → ∞/∞ → 最高次で割る。2つの不定形を渡り歩いていますが、どちらも処理法が決まっているので迷いません。「扱えない形を、扱える形に移す」という数学II・B・Cで繰り返した動作の続きです。

例題2-3(無限等比級数) 無限級数 3 + 3(1/4) + 3(1/4)2 + … の和を求めてください。また、無限等比級数 Σ a rn−1 が収束する条件を書いてください。

収束条件a = 0、または |r| < 1a = 0 ならすべての項が0なので、公比に関係なく和は0)

この級数の和:初項 a = 3、公比 r = 1/4|1/4| < 1 なので収束します。
S = a/(1 − r) = 3/(1 − 1/4) = 3/(3/4) = 4

答え:和は 4

確認:部分和を計算すると 3, 3.75, 3.9375, 3.984375, …4 に近づいています。

なぜ a/(1−r) になるのか:部分和は Sn = a(1 − rn)/(1 − r)。ここで |r| < 1 なら rn → 0 なので Sn → a/(1 − r)公式は、数学Bの等比数列の和の極限をとっただけです。

例題2-4(循環小数) 循環小数 0.123123123… を分数で表してください。

方法1:無限等比級数として足す。
0.123123… = 0.123 + 0.000123 + 0.000000123 + …
初項 0.123、公比 0.001 の無限等比級数です。|0.001| < 1 なので収束して
S = 0.123/(1 − 0.001) = 0.123/0.999 = 123/999

約分して = 41/333

方法2:1000倍して引く。x = 0.123123… とおくと 1000x = 123.123123…。辺々引くと
999x = 123 → x = 123/999 = 41/333

答え41/333

確認41 ÷ 333 = 0.123123123…。合っています。

2つの方法の関係:方法2の「1000倍して引く」は、方法1の級数の和を計算しやすい形で処理しただけです。中学で習った手順に、ここではじめて理由がつきます。循環小数が必ず分数になるのは、無限等比級数が収束するから——これが答えです。

例題2-5(はさみうちの原理) 次の極限を求めてください。(1) limn→∞ (sin n) / n (2) limn→∞ n√(2n + 3n)

考え方そのままでは値が決まらないものを、上と下から決まるもので押さえるのがはさみうちです。sin n のように振動して極限を持たないものや、n のように直接は扱いにくいものが出たら、この形を思い浮かべると手が動きます。
大事なのは、上と下の極限が同じ値になるように押さえること。ここがずれていると、はさんでも何も言えません。

(1) −1 ≤ sin n ≤ 1 なので、n > 0 のとき各辺を n で割って
 −1/n ≤ (sin n)/n ≤ 1/n
両端はどちらも 0 に近づくので
 limn→∞ (sin n)/n = 0

(2) 2n < 3n なので
 3n < 2n + 3n < 2 × 3n
各辺の n 乗根をとって
 3 < n√(2n + 3n) < 3 × n√2
n√2 → 1 なので右辺は 3 に近づき
 limn→∞ n√(2n + 3n) = 3

答え:(1) 0 (2) 3

確認:(2) は「いちばん大きい項でくくる」と考えても同じです。2n + 3n = 3n{(2/3)n + 1} なので n√ = 3 × n√{(2/3)n + 1}。中身が 1 に近づくので 32通りで一致すれば安心できます。実際 n = 203.000045n = 100 ではほぼ 3 です。
やってはいけないのは、(1) で「sin n−11 の間だから極限は 0」と一気に書くことです。sin n 自体は極限を持ちません。不等式で押さえてから、両端の極限を示すという順序が、そのまま答案の形になります。
n で割るときに n > 0 を断っておくと、不等号の向きが変わらない理由まで書けます。

この単元のチェックリスト

確認すること できていないと起きること
不定形かどうか判断したか そのまま代入して誤答
∞/∞ は最高次で割ったか 値が出せない
∞ − ∞ は有理化したか 手が止まる
級数の収束条件を書いたか 減点される
a = 0 の場合を書いたか 場合分けの漏れ
大きい n を代入して確かめたか 計算ミスに気づけない

もっと解きたい方へ 👉 数学III「極限」の解き方(例題10問)

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第3章 関数の極限と連続性

数列の極限が「とびとびの値」の話だったのに対し、こちらは連続的に近づく話です。処理の考え方は同じですが、覚えるべき2つの基本極限が加わります。

limx→0 (sin x)/x = 1  と  limx→0 (1 + x)1/x = e

この2つが、数学IIIの微分公式のすべての出発点です。三角関数と指数対数の微分は、この2つから作られています。

ここが怪しければ先に関数三角関数(数学II・B・C) / この先つながる微分法 / この単元の解法パターン極限 全15型 / この単元を1日1枚で毎日の数学 8枚

使う道具

道具 使いどころ
三角関数の基本極限 limx→0 (sin x)/x = 1 角と分母をそろえる
自然対数の底 limx→0(1+x)1/x = limx→∞(1+1/x)x = e e ≒ 2.718
指数・対数の極限 limx→0 (ex − 1)/x = 1 上から導ける
片側極限 limx→a+0 と limx→a−0 一致しなければ極限なし
連続の定義 limx→af(x) = f(a) 3つがそろって連続
中間値の定理 連続で f(a)f(b) の符号が違えば、間に解がある 解の存在を示す
はさみうち |sin x| ≤ 1 などで評価 振動する関数の極限
不定形の型 0/0、∞/∞、∞−∞、1 型ごとに処理法が決まる

定石

(sin x)/x は「角と分母を必ずそろえる」

(sin x)/x は角と分母をそろえる上のグラフは ワイイコール エックス分のサインエックス で、エックスが0に近づくと1に近づくことを示している。下は使い方。エックス分のサイン3エックス を そのまま1としてはいけない。分母を3エックスにそろえて外に3を出し、3かける 3エックス分のサイン3エックス に直すと、極限は3になる。角と分母が同じ式になっているかだけを見ればよい。xO-6-3361x → 0 で 1 に近づくy = (sin x)/x角と分母は、必ずそろえてから使う×lim (sin 3x)/x = 1角が 3x、分母は x でそろっていない3 ×(sin 3x)/(3x)分母を 3x にそろえて、外に 3 を出す3x = t とおけば 3 ×(sin t)/t → 3 × 1 = 3lim[x→0] (sin 3x)/x = 3確かめ:x = 0.01 で 2.9996、x = 0.001 で 3.0000「角」と「分母」が同じ式になっているかだけを見る。ここが合えば必ず 1 に近づく
図5 (sin x)/x → 1 が使えるのは、角と分母が同じ式になっているときだけです。そろっていなければ、分母をそろえて外に定数を出す——それだけで片づきます。

(sin 3x)/x をそのまま 1 にしてはいけません。分母を 3x にそろえるために、こう書きます。
(sin 3x)/x = 3 × (sin 3x)/(3x)

3x → 0 のとき (sin 3x)/(3x) → 1 なので、極限は 3そろえるために掛けた分は、外に出す——それだけです。

(1 − cos x)/x2 は「1 + cos x を掛ける」

分子を有理化すると 1 − cos2x = sin2x が現れ、基本極限に持ち込めます。第2章の「有理化して不定形を移す」と同じ手です。

1 の形は e の定義に合わせる

(1 + 2/x)x は、(1 + 2/x)x/2 を2乗したものと見ます。x/2 → ∞ のとき中身は e に近づくので、全体は e2指数と分母の数字をそろえるのが要領で、(sin x)/x のときとまったく同じ発想です。

はさみうちの原理サイン x 割る x のグラフは、y イコール 1割るx と y イコール マイナス1割るx の2本の曲線の間にはさまれている。x を大きくすると両端がどちらも0に近づくので、はさまれた サイン x 割る x も 0 に近づく。両側が 0 に近づくなら、はさまれた真ん中も 0 に近づく0.51.0−0.5y = 1/xy = −1/xy = (sin x)/x0−1/x ≤ (sin x)/x ≤ 1/x ── 両端が 0 なので、真ん中も 0
図6 両端が同じ値に近づくなら、はさまれた真ん中も同じ値に近づく。これがはさみうちの原理です。

解の存在は「中間値の定理」で示す

手順
f(x) が区間で連続であることを書く
② 区間の両端で f の値を計算し、符号が違うことを示す
③ 中間値の定理より、その間に f(x) = 0 となる x が少なくとも1つある

①を書かないと減点されます。連続でなければ、定理は使えません。

中間値の定理で解の存在を示すfxイコールxの3乗マイナスxマイナス1のグラフ。f1はマイナス1で負、f2は5で正。関数は区間1から2で連続なので、その間で必ず0を通る。つまり解が少なくとも1つある。答案には、区間で連続であることと、両端で符号が反対であることの2つを書く。この定理で言えるのは解があることだけで、個数までは言えない。f(x) = x³ − x − 1x = 1x = 2f(1) = −1 < 0f(2) = 5 > 0この間に解がある中間値の定理f(x) が区間 [1, 2] で連続でf(1) < 0 < f(2) なら1 < x < 2 に解が少なくとも1つある答案に必ず書く2つ① その区間で連続であること② 両端で符号が反対であること言えるのは「ある」ことだけ。個数は別に調べる
図7 中間値の定理は、グラフが途切れずに 0 をまたぐことを言っているだけです。だから「連続」と「両端の符号が反対」の2つが言えれば足ります。逆にいえば、この2つを答案に書かないと定理を使ったことになりません。言えるのは「解がある」ことだけで、いくつあるかは別に調べます。

つまずきポイント

(sin 3x)/x をそのまま 1 にする。基本極限が使えるのは「sin の中身と分母が同じ」ときだけです。違うなら、そろえてから使ってください。

② 片側極限を確認しない。1/xx → +0+∞x → −0−∞両側が一致しないので、x → 0 の極限は存在しません。絶対値やガウス記号が入っているときは、必ず両側を調べてください。

③ 「極限が存在する」と「連続である」を混同する。連続には3つ必要です。f(a) が定義されていること、limx→af(x) が存在すること、そしてその2つが等しいこと。1つでも欠ければ連続ではありません。

④ 中間値の定理で「連続」を書き忘れる。この定理の前提は連続性です。前提を書かない証明は、証明として成立しません。

⑤ 中間値の定理で「解がちょうど1つ」と結論する。この定理が保証するのは「少なくとも1つある」だけです。1つだけだと言いたいなら、単調性(微分して増減を調べる)を別に示してください。

⑥ 振動する関数の極限を、そのまま計算する。x sin(1/x) のような形は、はさみうちで処理します。|sin(1/x)| ≤ 1 なので −|x| ≤ x sin(1/x) ≤ |x|、両端が0なので極限は0です。

例題

例題3-1(三角関数の極限) limx→0 (sin 3x)/x を求めてください。

考え方:基本極限を使うには、sin の中身と分母をそろえる必要があります。

(sin 3x)/x = 3 × (sin 3x)/(3x)

x → 0 のとき 3x → 0 なので、(sin 3x)/(3x) → 1。よって
= 3 × 1 = 3

答え3

確認x = 0.01 で計算すると sin(0.03)/0.01 ≒ 0.0299955/0.01 ≒ 2.99963 に近づいています。

覚え方x → 0 のとき sin x ≒ x。だから sin 3x ≒ 3x で、3x/x = 3この「近似で見当をつけて、式で確かめる」やり方を身につけると、答えの見当が先につきます。

例題3-2(1 − cos の極限) limx→0 (1 − cos x)/x2 を求めてください。

考え方:そのままだと 0/0分子に 1 + cos x を掛けて有理化すると、sin が現れます。

(1 − cos x)/x2 = {(1 − cos x)(1 + cos x)} / {x2(1 + cos x)}
= (1 − cos2x) / {x2(1 + cos x)} = sin2x / {x2(1 + cos x)}

ここで sin2x / x2 = {(sin x)/x}2 → 12 = 1、また 1 + cos x → 2 なので
= 1/2

答え1/2

確認x = 0.01 なら (1 − cos 0.01)/0.0001 ≒ 0.00005/0.0001 = 0.5。合っています。

この結果は覚えておく価値がある1 − cos x ≒ x2/2sin x ≒ x と並べて持っておくと、極限の見当が一瞬でつきます。

例題3-3(e に関する極限) limx→∞ (1 + 2/x)x を求めてください。

考え方1 の不定形です。(1 + 1/t)t → e の形にそろえます。

t = x/2 とおくと 2/x = 1/tx = 2tx → ∞ のとき t → ∞
(1 + 2/x)x = (1 + 1/t)2t = {(1 + 1/t)t}2

中身が e に近づくので
→ e2

答えe2(約 7.389

確認x = 10000 で計算すると (1.0002)10000 ≒ 7.3882e2 ≒ 7.3891 に近づいています。

一般化limx→∞(1 + a/x)x = ea中に入っている数が、そのまま e の肩に乗ると覚えておくと速い。ただし答案では、置きかえの過程を書いてください。

例題3-4(中間値の定理) 方程式 x3 − 3x + 1 = 00 < x < 1 の範囲に少なくとも1つの実数解をもつことを示してください。

証明 f(x) = x3 − 3x + 1 とおきます。

① 連続性f(x) は多項式なので、すべての実数で連続です。とくに閉区間 [0, 1] で連続。

② 両端の符号
f(0) = 0 − 0 + 1 = 1 > 0
f(1) = 1 − 3 + 1 = −1 < 0

③ 結論f(0)f(1) の符号が異なるので、中間値の定理より 0 < x < 1f(x) = 0 となる x が少なくとも1つ存在します。(証明終わり)

確認:実際、この方程式の解のひとつは約 0.347 で、確かに 01 の間にあります。

「少なくとも1つ」の意味:中間値の定理は存在しか保証しません。「ちょうど1つ」を示したいなら、f′(x) = 3x2 − 3 = 3(x−1)(x+1)0 < x < 1 で常に負、つまりこの区間で単調減少だと付け加えます。単調なら解は多くても1つなので、合わせて「ちょうど1つ」が言えます。

使いどころ解の値が求められない方程式でも、「ある」ことは言える——これが中間値の定理の価値です。存在を示す問題を見たら、まずこの定理を疑ってください。

例題3-5(片側極限と連続) (1) limx→0 |x| / x を調べてください。(2) f(x) = (x2 − 1)/(x − 1)x ≠ 1)、f(1) = a と定めるとき、f(x)x = 1 で連続になる a を求めてください。

考え方絶対値や場合分けを含む関数では、右から近づくときと左から近づくときで答えが変わることがあります。だからまず両側を別々に調べる——これが片側極限です。
連続かどうかも、定義は「極限値と、その点での値が一致すること」。極限を出してから、値と比べるという順です。

(1) x > 0 なら |x| = x なので |x|/x = 1x < 0 なら |x| = −x なので |x|/x = −1。よって
 limx→+0 |x|/x = 1limx→−0 |x|/x = −1
2つが一致しないので、x → 0 での極限は存在しません。

(2) x ≠ 1 では約分できて (x2 − 1)/(x − 1) = x + 1。よって
 limx→1 f(x) = 1 + 1 = 2
連続になるには f(1) = a がこの極限値と等しければよいので a = 2

答え:(1) 極限は存在しない(右極限 1、左極限 −1) (2) a = 2

確認:(2) は x = 0.991.99x = 1.012.01両側から 2 に寄っているので、極限値 2 は妥当です。
気をつけたいのは、約分できるからといって x = 1 を代入してよいわけではないことです。もとの式は x = 10/0 になり定義されていません。x ≠ 1 のもとで約分し、その式の極限を見る」という順序を書き落とさないでください。
また (1) のように極限が存在しないこともあります。「極限を求めよ」と言われても、まず存在するかを疑う——絶対値・ガウス記号・場合分けのある関数では、これが最初の一手になります。

この単元のチェックリスト

確認すること できていないと起きること
sin の中身と分母をそろえたか 係数の分だけ答えがずれる
1 − cos は 1 + cos を掛けたか 0/0 のまま止まる
1 は e の形にそろえたか 指数の扱いを誤る
片側極限を両方調べたか 存在しない極限を答える
中間値の定理で連続性を書いたか 証明として不成立
「1つだけ」なら単調性も示したか 言い過ぎになる

もっと解きたい方へ 👉 数学III 極限の特訓道場(20題と全解説)

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第4章 微分法

数学IIでは xn しか微分できませんでした。ここでは三角関数・指数関数・対数関数、そしてそれらの積・商・合成まで微分できるようになります。

公式は増えますが、実際に使うのは3つのルールです。積の微分、商の微分、合成関数の微分。この3つで、ほとんどの関数が微分できます。

ここが怪しければ先に微分法(数学II)(数学II・B・C)関数の極限と連続性 / この先つながる微分法の応用 / この単元の解法パターン微分法(数III) 全18型

使う道具

道具 使いどころ
積の微分 (fg)′ = f′g + fg′ 掛け算の形
商の微分 (f/g)′ = (f′g − fg′)/g2 分子の順序に注意
合成関数(連鎖律) {f(g(x))}′ = f′(g(x)) · g′(x) 外を微分して、中の微分を掛ける
三角関数 (sin x)′ = cos x、(cos x)′ = −sin x cos
  (tan x)′ = 1/cos2x 商の微分から作れる
指数関数 (ex)′ = ex、(ax)′ = axlog a e
対数関数 (log x)′ = 1/x、(log|x|)′ = 1/x 絶対値がついても同じ
対数微分法 両辺の log をとってから微分 xx
媒介変数の微分 dy/dx = (dy/dt)/(dx/dt) x, y
陰関数の微分 y は x の関数として、y の項は連鎖律で x2+y2=4
第2次導関数 f″(x) 凹凸・変曲点

定石

まず「どのルールを使う形か」を見分ける

どのルールで微分するかの見分け方微分するときに使うルールを、式の形で見分ける表。掛け算の形なら積の微分、割り算の形なら商の微分、関数の中に関数が入っている形なら合成関数の微分、指数に文字があるなら対数微分法、エックスもワイもtの式で表されているなら媒介変数の微分を使う。迷ったときは、いちばん外側の演算を見るとよい。微分は「まず、どのルールを使う形か」を見分ける式の形使うルールf(x) × g(x)x² sin x積の微分f(x) / g(x)(x + 1)/(x² + 1)商の微分f(g(x))sin(3x²)合成関数(連鎖律)指数に文字がある対数微分法x も y も t の式x = t², y = t³媒介変数の微分形が決まればルールが決まる。迷ったら、いちばん外側の演算を見る
図8 微分は「どのルールを使う形か」を先に見分けるところから始まります。迷ったらいちばん外側の演算を見てください。媒介変数のときは、dy/dx = (dy/dt) ÷ (dx/dt) です。
使うルール
x2e3x 積の微分(+中の 3x で連鎖律)
(x2+1)/(x−1) 商の微分
log(x2+1) 合成関数(外は log、中は x2+1
sin2x 合成関数(外は2乗、中は sin x
xx 対数微分法(指数に文字があるとき)
合成関数の微分y イコール かっこ 3x の2乗 たす 1 かっこ の5乗 を微分するとき、外側の5乗を微分して 5u の4乗、中身の 3x の2乗 たす 1 を微分して 6x、この2つを掛けて 30x かっこ 3x の2乗 たす 1 かっこ の4乗 になる。中身の微分を掛け忘れる誤りが最も多い。外側を微分して、中身の微分を掛けるy = (3x² + 1)⁵ を微分する外側 u⁵中身 u = 3x² + 12つの層になっている① 外側を微分 5u⁴u はそのまま置いておく② 中身を微分 6xこれを掛け忘れるのが最多の誤りy′ = 5(3x² + 1)⁴ × 6x = 30x(3x² + 1)⁴u を元に戻してから、中身の微分を掛ける「外→中」の順に1回ずつ。層が3つなら3回掛ける
図9 合成関数は外側を微分して、中身の微分を掛ける。この「中身の微分」を掛け忘れるのが最も多い誤りです。

合成関数は「外側を微分して、中身の微分を掛ける」

log(x2 + 1) なら
外側 log( ) の微分は 1/( ) → 1/(x2+1)
中身 x2+1 の微分は 2x
掛けて 2x/(x2+1)

「中身の微分を掛ける」を忘れるのが、この単元で最も多いミスです。

指数に文字があるなら、対数微分法

y = xx(xn)′ でも (ax)′ でもありません。両辺の log をとって log y = x log x とし、両辺を微分します。y′/y = log x + 1 より y′ = xx(log x + 1)

媒介変数は「それぞれ t で微分して、割る」

dy/dx = (dy/dt) ÷ (dx/dt)分数のように約分できると見れば覚えやすい形です。

つまずきポイント

① 合成関数で「中身の微分」を掛け忘れる。(sin 3x)′ = cos 3x は誤りで、正しくは 3cos 3x中身が単純な x でないときは、必ず1つ掛かります。

② 商の微分で、分子の順序を逆にする。(f′g − fg′)/g2 です。引き算なので順序が命。「分子を微分したものが先」と覚えるか、f = x, g = x2 のような簡単な例で毎回確かめてください。

(cos x)′ の符号を落とす。−sin x です。cosx = 0 の近くで減っているので、微分は負——グラフで確認できます。

xxx · xx−1 とする。べき乗の公式が使えるのは指数が定数のときだけです。指数に文字が入っていたら対数微分法。

⑤ 対数の微分で真数条件を忘れる。(log x)′ = 1/xx > 0 でのみ。負の範囲も扱いたいときは log|x| を使います(微分は同じく 1/x)。

⑥ 陰関数の微分で y をただの定数として扱う。yx の関数なので、(y2)′ = 2y · y′ です。y′ が付くのを忘れないでください。

例題

例題4-1(積の微分+合成) y = x2e3x を微分してください。

考え方x2e3xなので積の微分。さらに e3x合成なので中身の微分 3 が掛かります。

y′ = (x2)′ · e3x + x2 · (e3x)′
= 2x · e3x + x2 · 3e3x

xe3x でくくって
= xe3x(2 + 3x)

答えy′ = xe3x(3x + 2)

確認x = 0 のとき y′ = 0。実際 y = x2e3xx = 0 で最小値0をとるので、傾きが0になるのは正しい。特別な点で確かめるのが、微分の検算の定番です。

くくる意味:最後にくくるのは見栄えのためだけではありません。くくった形にすると、y′ = 0 となる x がすぐ読めます(ここでは x = 0x = −2/3)。第5章の増減表につながる準備です。

例題4-2(合成関数) 次の関数を微分してください。
(1) y = log(x2 + 1) (2) y = sin2x

(1) 外側が log、中身が x2 + 1
外側の微分:1/(x2+1)
中身の微分:2x
y′ = 2x/(x2 + 1)

(2) sin2x = (sin x)2 なので、外側が2乗、中身が sin x
外側の微分:2(sin x)
中身の微分:cos x
y′ = 2 sin x cos x = sin 2x

答え:(1) 2x/(x2+1) (2) sin 2x

(2)の検算:半角の公式で sin2x = (1 − cos 2x)/2 と直してから微分すると −(−2 sin 2x)/2 = sin 2x同じ答えです。2通りで出せる問題は、必ず両方で確かめてください。

(1)の注意:真数 x2 + 1 は常に正なので、この関数はすべての実数で定義されます。もし中身が符号を変えるなら、定義域を確認してください。

例題4-3(商の微分) y = (x2 + 1)/(x − 1) を微分してください。

公式に当てはめる。f = x2+1g = x−1 とすると f′ = 2xg′ = 1

y′ = {2x(x − 1) − (x2 + 1) · 1} / (x − 1)2

分子を整理して
= (2x2 − 2x − x2 − 1)/(x−1)2 = (x2 − 2x − 1)/(x − 1)2

答えy′ = (x2 − 2x − 1)/(x − 1)2

別解(商を避ける)x2 + 1 = (x−1)(x+1) + 2 なので y = x + 1 + 2/(x−1)。これを微分すると 1 − 2/(x−1)2 = {(x−1)2 − 2}/(x−1)2 = (x2 − 2x − 1)/(x−1)2一致しました。

どちらが速いか:分数関数は「商+余りに直してから微分」のほうが、計算が軽くなることがよくあります。第1章で使った変形が、そのまま微分でも効いています。公式を使う前に、式を軽くできないか一度考えてください。

例題4-4(媒介変数と陰関数) (1) x = t2y = t3 のとき dy/dxt で表してください(t ≠ 0)。(2) x2 + y2 = 4 のとき dy/dx を求めてください。

(1) それぞれ t で微分して割ります。
dx/dt = 2tdy/dt = 3t2
dy/dx = 3t2/(2t) = 3t/2

(2) yx の関数だと考えて、両辺を x で微分します。y2 の微分には連鎖律が効いて y′ が付きます。
2x + 2y · y′ = 0
y′ = −x/yy ≠ 0

答え:(1) 3t/2 (2) −x/y

(2)の意味を確かめる:この式は半径2の円です。円上の点 (x, y) における接線の傾きが −x/y ——これは「半径と接線は垂直」を式にしたものです。半径の傾きが y/x なので、垂直な直線の傾きは −x/y。数学IIの図形と方程式で習った性質が、微分でも出てきました。

(1)の検算t = 1 のとき点は (1, 1) で傾きは 3/2t = 1.01 なら点は (1.0201, 1.0303) で、2点を結ぶ傾きは 0.0303/0.0201 ≒ 1.5073/2 に近い値です。

例題4-5(対数微分法) 次の関数を微分してください。(1) y = xxx > 0) (2) y = (x + 1)2(x + 2)3 / (x + 3)4

考え方指数に文字がある形と、掛け算・割り算が何段も重なった形。この2つを見たら対数微分法です。両辺の対数をとると、積は和に、商は差に、指数は前の係数になる——だから式が一段やさしくなります。

(1) y = xx は、xn でも ax でもないので、そのままではどの公式も使えません。両辺の自然対数をとります。
 log y = x log x
両辺を x で微分します。左辺は合成関数なので y′ / y、右辺は積の微分で
 y′ / y = log x + x × (1/x) = log x + 1
 y′ = y(log x + 1) = xx(log x + 1)

(2) このまま商の微分を使うと式が大きくなります。対数をとると
 log|y| = 2 log|x + 1| + 3 log|x + 2| − 4 log|x + 3|
 y′ / y = 2/(x + 1) + 3/(x + 2) − 4/(x + 3)
 y′ = (x + 1)2(x + 2)3/(x + 3)4 × { 2/(x + 1) + 3/(x + 2) − 4/(x + 3) }

答え:(1) y′ = xx(log x + 1) (2) 上の式

確認:(1) は x = 1 を入れると y′ = 1 × (0 + 1) = 1y = xx のグラフは x = 1/e で極小になるので、x = 1 では増加中——符号が正で矛盾しません
(2) は x = 1 を入れると y′ = 27/64。商の微分で正面から計算しても同じ値になります。対数微分法は「別の道」ではなく「同じ答えに早く着く道」です。
なお log y と書けるのは y > 0 のときだけなので、(2) のように符号が変わりうる式では絶対値をつけて log|y| と書きます。ここを飛ばすと、定義域の外で議論したことになります。

この単元のチェックリスト

確認すること できていないと起きること
合成関数で中身の微分を掛けたか 係数がまるごと抜ける
商の微分で分子の順序は正しいか 符号が逆になる
(cos x)′ = −sin x 符号を落とす
指数に文字なら対数微分法にしたか 使えない公式を当てる
陰関数で y′ を付けたか まったく違う式になる
くくって y′ = 0 を読める形にしたか 増減表で手間が増える

もっと解きたい方へ 👉 数学III 微分の特訓道場(20題と全解説)

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第5章 微分法の応用

微分の目的はここにあります。傾きがわかると、グラフの形がわかる。形がわかると、最大最小や解の個数がわかる。数学IIの微分でやったことを、より広い関数に対して行うだけです。

ただし数学IIIでは凹凸(第2次導関数)が加わります。増減だけでなく「曲がり方」まで調べるので、グラフがより正確に描けるようになります。

ここが怪しければ先に微分法 / この先つながる積分法の応用 / この単元の解法パターン微分法(数III) 全18型

使う道具

道具 使いどころ
接線 y = f′(a)(x − a) + f(a) 接点を文字でおく
法線 傾きは −1/f′(a) 接線と垂直
増減 f′ > 0 で増加、f′ < 0 で減少 第1次導関数
凹凸 f″ > 0 で下に凸、f″ < 0 で上に凸 第2次導関数
変曲点 f″ の符号が変わる点 f″ = 0 だけでは不十分
漸近線 x → ±∞ と、分母が0になる点 グラフの骨格
最大最小 極値と定義域の端極限を比べる 端が開いていれば極限も見る
不等式の証明 (左辺)−(右辺)の最小値 ≥ 0 微分して最小値を出す
解の個数 y = f(x) と y = k グラフと横線の交点
速度・加速度 v = dx/dt、a = dv/dt 位置を時間で微分

定石

グラフを描くときは、この順に調べる

定義域(分母が0、根号の中、対数の真数)
対称性(偶関数・奇関数なら手間が半分)
f′ から増減と極値
f″ から凹凸と変曲点
漸近線と、端での極限
⑥ 増減表にまとめてから描く

①を飛ばすと、存在しない部分にグラフを描いてしまいます。定義域が最初——これは数学IIIを通した鉄則です。

増減と凹凸(変曲点)y = x かける e のマイナスx乗 のグラフ。x = 1 で極大になり、x = 2 で曲がり方が上に凸から下に凸へ変わる。そこが変曲点で、減り方がゆるやかになる境目にあたる。0.10.20.30.4xyO123456極大 1/e ≒ 0.368変曲点 (2, 2/e²)増加減少上に凸上に凸下に凸(減り方がゆるやかに)x 軸が漸近線y = xe⁻ˣ増減は f′、曲がり方は f″ が決める
図10 f′上がっているか下がっているかを、f″どちら向きに曲がっているかを教えます。変曲点は「減り方が変わる境目」で、極大とは別の場所にあります。

接線は「接点を文字でおく」(数学IIと同じ)

曲線の外の点から引く接線は、接点を (t, f(t)) とおいて、通る点の条件から t を求める。関数が exlog x に変わっても、手順はまったく同じです。

不等式の証明は「差を関数とみて、最小値を調べる」

手順
f(x) =(左辺)−(右辺) とおく
f′(x) を求めて増減を調べる
最小値が0以上であることを示す
④ 等号が成り立つのはどこかを述べる

不等式は差を関数とみて最小値を調べるeのx乗がxたす1以上であることを示すために、差をとった関数fxイコールeのx乗マイナスxマイナス1を考える。微分するとeのx乗マイナス1なので、xが0のところで最小になる。その最小値がちょうど0なので、fxは常に0以上。つまりグラフはx軸より下に出ない。等号が成り立つのはxが0のときだけ。f(x) = eˣ − x − 1最小値 f(0) = 0グラフはx 軸より上eˣ ≧ x + 1 を示す① 差を関数にするf(x) = eˣ − x − 1② 微分して増減を調べるf′(x) = eˣ − 1 ⇒ x = 0 で最小③ その最小値が 0 以上か見るf(x) ≧ 0 だから eˣ ≧ x + 1等号が成り立つのは x = 0 のときだけ
図11 不等式は「差をとった関数が x 軸より下に出ない」ことと同じです。だから最小値さえ押さえれば済みます。ex ≧ x + 1 なら、差が最小になるのは x = 0 で、そこがちょうど 0等号がどこで成り立つかまで書いて、はじめて答案が閉じます。

最大最小では、端が「開いている」ときに極限を見る

定義域が x > 0 のように端を含まない場合、端の値は存在しません。代わりに x → +0 の極限を調べて、その値に届くのか届かないのかを判断します。届かないなら、そこは最大最小になりません。

つまずきポイント

① 定義域を確認せずにグラフを描く。y = (log x)/xx > 0 でしか定義されません。左半分に何か描いてしまうと、それだけで大きな減点です。

f″(a) = 0 だから変曲点だと決めつける。変曲点はf″ の符号が変わる点です。y = x4f″(0) = 0 ですが、前後で符号が変わらないので変曲点ではありません。極値のときと同じ構造の落とし穴です。

③ 極値と最大最小を混同する。極値は「その近くで一番」、最大最小は「全体で一番」。定義域の端や、無限に飛ばしたときの極限まで見てはじめて最大最小が決まります。

④ 漸近線を調べない。x → ∞ でどうなるか、分母が0になる点でどうなるか。この2つを調べないと、グラフの形は決まりません。

⑤ 不等式の証明で、等号成立を書かない。f(x) ≥ 0 を示したら、等号が成り立つ x も述べてください。厳密な不等号なのか、等号を含むのかで結論が変わります。

⑥ 増減表に極限の欄を作らない。定義域の端が開いているときや無限まで伸びるときは、増減表の端に極限値を書き込むのが正式な形です。

例題

例題5-1(原点から引く接線) 曲線 y = ex に原点 O(0, 0) から引いた接線の方程式と、接点の座標を求めてください。

手順1:接点を文字でおく。接点を (t, et) とします。y′ = ex なので、この点での傾きは et

手順2:接線の式。
y = et(x − t) + et

手順3:原点を通る条件。x = 0, y = 0 を代入して
0 = et(0 − t) + et = et(1 − t)

et > 0 なので 1 − t = 0、すなわち t = 1

手順4:代入する。接点は (1, e)、傾きは e。接線は
y = e(x − 1) + e = ex

答え:接線 y = ex、接点 (1, e)

指数関数と原点から引いた接線y = e の x 乗 に原点から引ける接線は y = ex の1本だけ。原点を通る直線の傾き k がこの e より大きいか小さいかで、交点の個数が2個・1個・0個と変わる。246xyO-1123接点 (1, e)y = ex(接する:1個)k > e:2個k < e:0個y = eˣ原点から引ける接線は1本だけその傾き e が「境目」になる
図12 原点から y = ex に引ける接線は1本だけ。その傾き e が境目になって、原点を通る直線との交点の個数が2個・1個・0個と切り替わります。

確認y = ex は原点を通ります ✓。x = 1y = e となり、曲線上の点と一致します ✓

et > 0 が効いているet(1 − t) = 0 から t = 1 だけが出るのは、指数関数は決して0にならないからです。ここを「et = 0 または t = 1」と書いてしまうと、余分な場合を考えることになります。

この結果が使えるy = exy = kx の位置関係が、この1本の接線で決まります。k = e のときちょうど接し、k > e なら2点で交わり、0 < k < e なら交わりません。接線は「境目」を教えてくれます。

例題5-2(増減と凹凸) y = xe−x の増減・凹凸を調べ、極値と変曲点を求めてください。また x → ∞ のときの様子を答えてください。

手順1:定義域。すべての実数。

手順2:第1次導関数。積の微分で
y′ = 1 · e−x + x · (−e−x) = e−x(1 − x)

e−x > 0 なので、符号は 1 − x だけで決まりますx < 1 で正(増加)、x > 1 で負(減少)。

手順3:第2次導関数。
y″ = −e−x(1 − x) + e−x(−1) = e−x(x − 1 − 1) = e−x(x − 2)

x < 2 で負(上に凸)、x > 2 で正(下に凸)。

手順4:増減表。

x 1 2
y′ 0
y″ 0
y 増加・上に凸 極大 1/e 減少・上に凸 変曲点 2/e2 減少・下に凸

手順5:極限。x → ∞ のとき、指数関数の減り方のほうが多項式の増え方より強いので
limx→∞ xe−x = 0
つまり x 軸が漸近線です。(x → −∞ では −∞ に発散します)

答えx = 1 で極大値 1/e(約 0.368)、変曲点は (2, 2/e2)(約 (2, 0.271))。x → ∞0 に近づく。

グラフの姿:左から上がってきて x = 1 で山を作り、そのあとゆっくり0に近づいていく。山を越えてしばらくは急に落ち、x = 2 を過ぎると落ち方がゆるやかになる——それが変曲点の意味です。

この関数が出てくる場面:薬の血中濃度や、放射性物質の崩壊など「増えてから減る」現象のモデルとしてよく現れます。変曲点は「減り方が変わる時点」を表しています。

例題5-3(最大値) y = (log x)/xx > 0)の最大値を求めてください。

手順1:定義域を確認。x > 0(真数条件)。両端は含まれていないので、あとで極限を調べます。

手順2:微分する。商の微分で
y′ = {(1/x) · x − log x · 1}/x2 = (1 − log x)/x2

x2 > 0 なので、符号は 1 − log x だけで決まります
1 − log x > 0log x < 1x < e

手順3:増減表。

x (0) e (∞)
y′ 0
y → −∞ 増加 極大 1/e 減少 → 0

手順4:端の様子を調べる。
x → +0 のとき log x → −∞1/x → +∞ なので y → −∞
x → ∞ のとき y → 0(対数の増え方より x の増え方が強い)

どちらも 1/e より小さいので、極大値がそのまま最大値です。

答えx = e のとき最大値 1/e(約 0.368

確認x = 2 なら 0.347x = e ≒ 2.718 なら 0.368x = 3 なら 0.366。確かに e の付近が山です。

この結果の応用(log x)/x の最大が x = e だという事実から、eππe はどちらが大きいかという有名な問題が解けます。両辺の対数をとると π log ee log π の比較になり、これは (log e)/e(log π)/π の比較。x = e が最大なので (log e)/e > (log π)/π、よって eπ > πe です。

例題5-4(不等式の証明と解の個数) (1) x > 0 のとき ex > 1 + x を示してください。(2) 定数 k > 0 に対して、方程式 ex = kx の実数解の個数を求めてください。

(1) 証明 f(x) = ex − 1 − x とおきます。
f′(x) = ex − 1

x > 0 のとき ex > e0 = 1 なので f′(x) > 0。つまり fx > 0単調増加です。

また f(0) = 1 − 1 − 0 = 0

よって x > 0 では f(x) > f(0) = 0、すなわち ex > 1 + x。(証明終わり)

(2) y = ex と直線 y = kx(原点を通る傾き k の直線)の交点の個数を数えます。

例題5-1から、原点から引ける接線は y = ex の1本だけで、接点は (1, e)

直線の傾き k を0から大きくしていくと
0 < k < e → 直線が曲線の下を通り抜けるので 0個
k = e → 接する 1個
k > e → 突き抜けて2点で交わる 2個

答え0 < k < e のとき0個、k = e のとき1個、k > e のとき2個

確認k = 3 > e ≒ 2.718 のとき ex = 3x の解は約 0.62 と約 1.51 の2個。k = 2 < e なら解なし。合っています。

(1)と(2)のつながり:(1)は「k = 1 のときは交わらない」ことの証明にあたります。接線が「境目」を作り、その境目の前後で個数が変わる——第6章(数学II)の3次関数と横線の話と、構造はまったく同じです。関数が変わっても、型は変わりません。

例題5-5(速度・加速度と道のり) 数直線上を動く点 P の時刻 tt ≥ 0)における位置が x = t3 − 6t2 + 9t です。(1) 速度 v と加速度 α を求めてください。(2) P が運動の向きを変える時刻を求めてください。(3) t = 0 から t = 4 までに P が動いた道のりを求めてください。

考え方位置を微分すると速度、速度を微分すると加速度。ここまでは機械的です。注意がいるのは (3) で、「位置の変化」と「動いた道のり」は別物だという点です。行って戻ってくると、位置は元に近づきますが道のりは足し算で増えていきます。

(1) v = dx/dt = 3t2 − 12t + 9 = 3(t − 1)(t − 3)α = dv/dt = 6t − 12

(2) 向きが変わるのはv の符号が変わるときです。v = 3(t − 1)(t − 3)t = 1t = 3 で 0 になり、その前後で符号が変わります(正 → 負 → 正)。よって t = 1, 3

(3) 向きが変わる時刻で区切り、各区間での位置の変化の絶対値を足します
 x(0) = 0x(1) = 4x(3) = 0x(4) = 4
 道のり = |4 − 0| + |0 − 4| + |4 − 0| = 4 + 4 + 4 = 12

答え:(1) v = 3t2 − 12t + 9α = 6t − 12 (2) t = 1, 3 (3) 12

確認t = 0 から t = 4 での位置の変化x(4) − x(0) = 4 です。道のり 12 とはまったく違う値——ここが分かれ目です。
道のりは 04|v| dt でも求められ、同じ 12 になります。絶対値がついているので、結局は v の符号で区間を分けることになります|v| を見た瞬間に「符号の変わり目で切る」と決めてしまってください。
なお α = 0 となる t = 2速度が最小になる時刻で、向きが変わる時刻ではありません。「加速度が0」と「向きが変わる」を混同しないようにしてください。

この単元のチェックリスト

確認すること できていないと起きること
定義域を最初に確認したか 存在しない部分を描く
f″ の符号変化を見たか 変曲点でない点を答える
端が開いていたら極限を調べたか 最大最小の判断を誤る
漸近線を調べたか グラフの形が決まらない
不等式で等号成立を書いたか 減点される
接線を境目として使えたか 解の個数の場合分けが立たない

もっと解きたい方へ 👉 数学III「微分法」の公式と解き方(例題10問)

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第6章 積分法

数学IIIの積分は、「微分の逆をたどる」という原則は変わらないのに、逆算が難しくなっただけです。だから使う道具は、難しい形を、逆算できる形に変える手段ばかりになります。

置換積分も部分積分も部分分数分解も、目的はひとつ。「知っている積分の形」に持っていくことです。

ここが怪しければ先に積分法(数学II)(数学II・B・C)微分法 / この先つながる積分法の応用 / この単元の解法パターン積分法(計算) 全18型

使う道具

道具 使いどころ
基本の積分 ∫xαdx = xα+1/(α+1) + C(α ≠ −1) α = −1
  ∫(1/x)dx = log|x| + C 絶対値を付ける
  ∫exdx = ex + C そのまま
  ∫sin x dx = −cos x + C 符号に注意
置換積分 t = g(x) とおいて dx を dt に直す 定積分は区間も変える
よくある形 ∫f′(x)/f(x) dx = log|f(x)| + C 分子が分母の微分
  ∫f(x)nf′(x)dx = f(x)n+1/(n+1) + C 中身の微分が掛かっている
部分積分 ∫fg′dx = fg − ∫f′g dx x
部分分数分解 1/{(x−a)(x−b)} 分母が因数分解できる
三角関数の次数下げ sin2x = (1 − cos 2x)/2 2乗はそのまま積分できない
三角関数の置換 √(a2−x2) には x = a sinθ 根号を外す
偶関数・奇関数 −aa(奇関数)dx = 0 計算量が激減する

定石

まず「見た瞬間に決まる形」かどうかを確かめる

① 分子が分母の微分になっていないか → log|分母|
② 中身の微分が掛かっていないか → (中身)n+1/(n+1)
この2つに当てはまれば、置換すら書かずに答えが出ます。

例:∫ 2x/(x2+1) dx = log(x2+1) + C(分子が分母の微分)

置換積分では区間も置きかえるt イコール x の2乗 たす 1 と置くと、x が 0 から 1 まで動くとき t は 1 から 2 まで動く。dt イコール 2x dx なので、もとの積分は t の3乗を t について 1 から 2 まで積分する形になる。区間を0から1のままにする誤りが多い。置きかえたら、積分区間も一緒に置きかえる∫ 2x (x² + 1)³ dx (x は 0 から 1 まで)x01t12t = x² + 1 で対応させるdt = 2x dx なので ∫ t³ dt (t は 1 から 2 まで)区間を 0→1 のままにするのが、いちばん多い失点
図13 置換積分でいちばん多い失点が区間の置きかえ忘れx の区間と t の区間を並べて書くと防げます。

置換積分は「区間も一緒に変える」

手順
t = g(x) と置く
dt = g′(x)dx の関係を書く
定積分なら、積分区間を t の値に直す
t で積分する(不定積分なら最後に x に戻す

③を忘れるのが最頻出ミスです。置きかえたら、区間も置きかえる。逆に、区間を変えたなら x に戻す必要はありません。

部分積分は「微分すると簡単になるほう」を f にする

部分積分でどちらを微分するかエックスかけるイーのエックス乗の積分を、部分積分で2通りに計算して比べた図。エックスを微分する側にえらぶと、残る積分がイーのエックス乗だけになり、答えはエックスひく1かけるイーのエックス乗になる。逆にイーのエックス乗を微分する側にえらぶと、残る積分の次数が1から2に上がって前より難しくなる。微分すると簡単になるほうを微分する側にえらぶのがこつ。∫x eˣ dx —— どちらを「微分するほう」にするかx を微分するu = x、dv = eˣ dxx eˣ − ∫ eˣ dx= (x − 1)eˣ + Cx を微分すると 1。残った積分が簡単になった×eˣ を微分するu = eˣ、dv = x dxeˣ · x²/2 − ∫ (x²/2)eˣ dx次数が 1 → 2 に上がった。前より難しくなっている「微分すると簡単になるほう」を微分する側にえらぶ多項式 × 指数・三角なら、多項式を微分する側に。対数が入っていれば対数を微分する側に検算:(x − 1)eˣ を微分すると eˣ + (x − 1)eˣ = x eˣ もとに戻る
図14 部分積分は「微分すると簡単になるほう」を微分する側にえらぶと決まります。選び方をまちがえると、残る積分が前より難しくなるのが右の例です。多項式 × 指数・三角なら多項式を、対数が入っていれば対数を微分する側に。

∫ x ex dx なら、x は微分すると 1 になって消えますが、ex は微分しても変わりません。だから f = xg′ = ex と選びます。

選び方の目安log x > 多項式 > 三角関数 > 指数関数 の順に、左のものを f(微分する側)にします。

sin2xcos2x は、必ず次数を下げてから積分する

∫sin2x dx をそのまま計算することはできません。半角の公式で1次に落としますsin2x = (1 − cos 2x)/2 なら、あとは項別に積分するだけです。

2乗の三角関数は次数を下げてから積分するサインの2乗は、1マイナスコサイン2xを2で割った形に直すと積分できて、xを2で割ったものからサイン2xを4で割ったものを引いた形になる。コサインの2乗は1たすコサイン2xを2で割った形で、積分すると符号がプラスになる。サインxかけるコサインxはサイン2xを2で割った形で、積分するとマイナスコサイン2xを4で割った形。中身が2xなので、積分すると2分の1倍がつくところを落としやすい。2乗のままでは積分できない。半角の公式で次数を下げるもとの形次数を下げた形積分した形(+C)sin²x(1 − cos 2x) / 2x/2 − (sin 2x)/4cos²x(1 + cos 2x) / 2x/2 + (sin 2x)/4sin x cos x(sin 2x) / 2−(cos 2x)/4中身が 2x なので、積分すると 1/2 倍がつく(そこを落としやすい)
図15 2乗の三角関数は、1次に落としてはじめて積分できます。直す先と積分後の形を並べたのがこの表です。中身が 2x になるぶん、積分で 1/2 倍がつく——ここが最も落としやすいところです。

つまずきポイント

① 置換積分で積分区間を変え忘れる。この単元で最も多い失点です。t = x2+1 と置いて x0 から 1 なら、t1 から 2 です。置いた瞬間に区間も書き換えてください。

∫(1/x)dx の絶対値を落とす。log|x| + C です。x が負の範囲でも使えるようにするためで、これがないと定義域が狭まります。

∫sin x dx = cos x としてしまう。−cos x です。微分し直して確かめる習慣をつければ、この種のミスは消えます。

sin2x をそのまま積分する。次数を下げてください。∫sin2x dx = x/2 − (sin 2x)/4 + C です。

⑤ 部分積分で fg′ を逆に選ぶ。選び方を間違えると、かえって複雑になります。1回やってみて悪化したら、逆にする——それで構いません。

⑥ 不定積分で x に戻さない。置換した t のまま答えるのは誤りです。定積分なら戻さなくてよいので、この違いを意識してください。

例題

例題6-1(置換積分) 01 x√(x2 + 1) dx を求めてください。

手順1:置換する形かを見る。根号の中 x2+1 の微分は 2x外に x があるので、この形は置換が効きます。

手順2:置く。t = x2 + 1 とおくと dt = 2x dx、すなわち x dx = dt/2

手順3:区間を書き換える。
x = 0 のとき t = 1x = 1 のとき t = 2

手順4:t で積分する。
12 √t · (1/2)dt = (1/2)∫12 t1/2dt = (1/2)[(2/3)t3/2]12 = (1/3)[t3/2]12
= (1/3)(2√2 − 1)

答え(2√2 − 1)/3(約 0.609

確認:被積分関数は 0 ≤ x ≤ 10 から √2 ≒ 1.41 まで増える関数です。平均をだいたい 0.6 と見れば、幅1の区間の積分は 0.6 程度。桁の見当が合っています。

区間を変えたので x に戻さない:定積分では t の世界で計算を終えられます。不定積分なら最後に t = x2+1 を代入して戻す必要があります。この違いを混同しないでください。

例題6-2(部分積分) 01 xex dx を求めてください。

手順1:どちらを微分する側にするか。x は微分すると 1 になって簡単になります。だから f = xg′ = ex(したがって g = ex)。

手順2:公式に当てはめる。
01 xexdx = [xex]01 − ∫01 1 · exdx

手順3:計算する。
[xex]01 = 1 · e − 0 = e
01exdx = [ex]01 = e − 1

= e − (e − 1) = 1

答え1

確認xex の不定積分は (x−1)ex です(微分すると ex + (x−1)ex = xex ✓)。よって [(x−1)ex]01 = 0 − (−1) = 1。合っています。

もし逆に選んだらf = exg′ = x とすると ∫ = [ex·x2/2] − ∫ ex·x2/2 dx となり、次数が上がって悪化します。「やってみて悪くなったら逆」——それで判断できます。

例題6-3(部分分数分解) 23 dx/(x2 − 1) を求めてください。

手順1:分母を因数分解する。x2 − 1 = (x−1)(x+1)

手順2:部分分数に分ける。
1/{(x−1)(x+1)} = (1/2){1/(x−1) − 1/(x+1)}

(確かめ:1/(x−1) − 1/(x+1) = {(x+1) − (x−1)}/{(x−1)(x+1)} = 2/(x2−1)。半分にすれば一致します)

手順3:積分する。
= (1/2)[log|x−1| − log|x+1|]23 = (1/2)[log|(x−1)/(x+1)|]23

= (1/2){log(2/4) − log(1/3)} = (1/2){log(1/2) + log 3} = (1/2)log(3/2)

答え(1/2)log(3/2)(約 0.203

確認:被積分関数は 2 ≤ x ≤ 31/3 から 1/8 まで減ります。平均を 0.2 程度と見れば、幅1の積分は 0.2 ほど。合っています。

分け方の作り方1/{(x−a)(x−b)} = 1/(a−b) × {1/(x−a) − 1/(x−b)}。ここでは a = 1, b = −1 なので係数は 1/2数学Bの部分分数(第8章の telescoping)とまったく同じ操作です。使い道が違うだけで、技術は同じものです。

例題6-4(三角関数の次数下げ) 0π/2 sin2x dx を求めてください。

手順1:次数を下げる。半角の公式より
sin2x = (1 − cos 2x)/2

手順2:積分する。
0π/2(1 − cos 2x)/2 dx = (1/2)[x − (sin 2x)/2]0π/2

x = π/2 のとき sin π = 0x = 0 のとき sin 0 = 0 なので、sin の項は消えます。
= (1/2)(π/2 − 0) = π/4

答えπ/4(約 0.785

対称性を使った別解0π/2sin2x dx0π/2cos2x dx は、区間内で sincos の役割が対称なので等しい値です。そして2つを足すと 0π/21 dx = π/2。よってそれぞれ π/4計算せずに答えが出ます。

覚えておくと速い0π/2sin2x dx = ∫0π/2cos2x dx = π/4。この値は、回転体の体積の計算で何度も出てきます。

例題6-5(絶対値を含む定積分) 03 |x2 − 2x| dx を求めてください。

考え方絶対値は、そのままでは積分できません。中身の符号が変わる場所で区間を切り、それぞれで絶対値を外してから積分します。やることは「符号の調査 → 区間を分ける → 足す」の3段です。

① 符号を調べるx2 − 2x = x(x − 2) なので、0 < x < 2 では負、2 < x < 3 では正。切れ目は x = 2 です。

② 区間を分けて絶対値を外す
 03 |x2 − 2x| dx = ∫02 −(x2 − 2x) dx + ∫23 (x2 − 2x) dx

③ それぞれ計算する∫(x2 − 2x) dx = x3/3 − x2 なので
 前半:−[x3/3 − x2]02 = −(8/3 − 4) = 4/3
 後半:[x3/3 − x2]23 = (9 − 9) − (8/3 − 4) = 4/3

答え4/3 + 4/3 = 8/3

確認:もし絶対値を外さずに 03 (x2 − 2x) dx としてしまうと、答えは 0 になります。面積を求めているのに 0 が出たら、符号の処理を飛ばした合図です。絶対値の積分は必ず正の値になるので、答えが 0 や負になっていないかを最後に見るだけでも気づけます。なお x 軸より下の部分の面積を求めるときも、同じ手順になります。

この単元のチェックリスト

確認すること できていないと起きること
置換したとき積分区間も変えたか まったく違う値になる
分子が分母の微分か先に見たか 遠回りする
∫(1/x)dx に絶対値を付けたか 定義域が狭まる
sin2x そのまま積分して誤答
部分積分で微分する側を選べたか 式が複雑になる一方
微分し直して検算したか 符号ミスに気づけない

もっと解きたい方へ 👉 積分の特訓道場(数学IIIの難問20題)

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第7章 積分法の応用

積分で何が求められるのか——面積、体積、曲線の長さ。どれも「細かく切って足す」という同じ発想でできています。

公式の形は違って見えますが、「微小な量を作って、それを足し集める」という一点で共通しています。この見方を持っておくと、公式を思い出せなくても組み立て直せます。

ここが怪しければ先に積分法数列の極限と無限級数 / この先:ここが到達点です / この単元の解法パターン面積 全12型体積・弧長 全13型

使う道具

道具 使いどころ
面積(x で積分) S = ∫ab{上 − 下}dx 縦に細長く切って足す
面積(y で積分) S = ∫cd{右 − 左}dy 横に切ったほうが楽なとき
x 軸まわりの回転体 V = π∫aby2dx 半径が y、厚みが dx の円板
y 軸まわりの回転体 V = π∫cdx2dy x
断面積からの体積 V = ∫abS(x)dx 回転体でない立体
曲線の長さ L = ∫ab√(1 + (y′)2)dx 三平方の定理から作られる
媒介変数の長さ L = ∫αβ√((dx/dt)2+(dy/dt)2)dt x, y
区分求積法 lim (1/n)Σk=1nf(k/n) = ∫01f(x)dx Σの極限を積分に変える
定積分と不等式 被積分関数の大小を積分に持ち込む 評価する問題
速度と道のり 変位 = ∫v dt / 道のり = ∫|v| dt v の符号が変わる時刻で区切る

定石

面積は「縦に切るか、横に切るか」を先に決める

x で積分するのは縦に細長く切って足すイメージ、y で積分するのは横に切って足すイメージです。「上−下」が途中で入れかわるなら、横に切ったほうが速いことがよくあります。

面積は縦に切るか横に切るかを先に決めるyイコールルートxとx軸とxイコール4で囲まれた領域。縦に切ると、高さがルートxの細長い長方形を足し集めることになり、0から4までルートxをxで積分して16割る3。横に切ると、横幅が4マイナスyの2乗の長方形を足し集めることになり、0から2まで4マイナスyの2乗をyで積分して、やはり16割る3。答えは同じなので、式が簡単になるほうを選ぶ。同じ面積を、縦に切っても横に切っても出せる(y = √x、x 軸、x = 4)① 縦に切る42√xdx② 横に切る424 − y²dy∫₀⁴ √x dx = 16/3∫₀² (4 − y²) dy = 16/3答えは同じ。切る向きは「式が簡単になるほう」で決める
図16 同じ領域でも、切る向きで式の形が変わります。縦に切れば高さが √x、横に切れば横幅が 4 − y2——どちらも答えは 16/3 です。手を動かす前に、どちらが簡単かを見ておくと、途中で場合分けが増えるのを避けられます。

回転体の体積は「円板の面積 × 厚み」を足す

x 軸のまわりに回すと、位置 x での断面は半径 |y| の円。面積は πy2。これに厚み dx を掛けて足すので
V = π∫y2dx

公式を覚えるのではなく、この組み立てを覚えてください。そうすれば y 軸まわりも、回転軸がずれた場合も、自分で式を作れます。

回転体の体積のしくみy = √x を x 軸のまわりに回してできる立体。位置 x での断面は半径 y の円で、その面積 πy² に厚み dx を掛けて足し集めたものが体積になる。y = √xx1234断面は半径 y の円面積 πy² = πxV = π∫₀⁴ y² dx = π∫₀⁴ x dx = 8π「円板の面積 × 厚み」を足し集めている
図17 回転体の体積は、「円板の面積 × 厚み」を足し集めたものです。公式を覚えるより、この組み立てを覚えるほうが応用が効きます。

曲線の長さは、三平方の定理を足し集めたもの

微小な区間で曲線は直線に見えます。その長さは √((dx)2 + (dy)2)dx でくくると √(1 + (dy/dx)2)dx公式の中身は三平方の定理そのものです。

Σの極限を見たら、区分求積法を疑う

limn→∞ (1/n)Σk=1n f(k/n) = ∫01f(x)dx

見分け方1/n が外にあり、中身が k/n の関数になっていれば、この形です。1/n が幅、k/n が位置にあたります。

つまずきポイント

① 回転体で y2 ではなく y を積分する。断面は円なので、面積は πy22乗を忘れると、まったく違う値になります。

② 回転軸を取り違える。x 軸まわりなら dx で積分、y 軸まわりなら dy で積分。「回す軸に沿って切る」と覚えてください。

③ 面積で「上−下」が入れかわる点を見落とす。交点が複数あるときは、区間ごとに上下を確認します。区間を分けずに一気に積分すると、打ち消し合って小さく出ます。

④ 区分求積法で区間を取り違える。Σk=1n なら区間は [0, 1]Σk=n+12n なら [1, 2]k/n がどこからどこまで動くかを確かめてください。

⑤ 曲線の長さで (y′)21 + を落とす。√(1 + (y′)2) です。1 は横方向の長さにあたるので、必ずあります。

⑥ 立体の体積で、断面が円だと決めつける。回転体でなければ、断面は正方形や三角形かもしれません。「位置 x での断面積 S(x) はいくつか」から考えてください。

例題

例題7-1(面積) 曲線 y = log xx 軸、直線 x = e で囲まれた部分の面積を求めてください。

手順1:範囲を確認する。log x = 0 となるのは x = 11 ≤ x ≤ elog x ≥ 0 なので、この範囲で x 軸より上にあります。

手順2:積分する。
S = ∫1e log x dx

log x の積分は部分積分で出します。log x = 1 × log x と見て、f = log xg′ = 1g = x)。
∫log x dx = x log x − ∫x · (1/x)dx = x log x − x + C

S = [x log x − x]1e = (e · 1 − e) − (1 · 0 − 1) = 0 − (−1) = 1

答え1

確認:この部分は、幅 e − 1 ≒ 1.72、高さが 0 から 1 まで増える図形です。三角形なら面積は 1.72 × 1 ÷ 2 ≒ 0.86。実際の曲線は直線より上にふくらんでいるので、それより少し大きい 1 という値は妥当です。

log x の積分は覚えておく∫log x dx = x log x − x + C。よく出るので、その場で部分積分するより覚えたほうが速い式のひとつです。ただし導き方も1度は確認しておいてください。

例題7-2(回転体の体積) 曲線 y = √x0 ≤ x ≤ 4)と x 軸、直線 x = 4 で囲まれた部分を、x 軸のまわりに1回転してできる立体の体積を求めてください。

手順1:断面を考える。位置 x での断面は、半径 y = √x の円。面積は πy2 = πx

手順2:厚み dx を掛けて足す。
V = π∫04 x dx = π[x2/2]04 = π × 8 = 8π

答え(約 25.1

確認:この立体は、底面の半径が √4 = 2、高さが 4 の「円錐に似た形」です。同じ底面・高さの円錐なら体積は (1/3)π × 4 × 4 = 16π/3 ≒ 16.8、円柱なら π × 4 × 4 = 16π ≒ 50.3その中間の 8π ≒ 25.1 は妥当な値です。

y2 が式を簡単にするy = √x は根号がありますが、2乗されるので x になって消えます。回転体の体積では、根号つきの関数がかえって計算しやすくなることがよくあります。

例題7-3(曲線の長さ) 曲線 y = (2/3)x3/20 ≤ x ≤ 3)の長さを求めてください。

手順1:微分する。
y′ = (2/3) × (3/2)x1/2 = x1/2 = √x

手順2:公式に入れる。
L = ∫03√(1 + (√x)2)dx = ∫03√(1 + x)dx

根号がきれいに外れました。(この問題は、そうなるように関数が選ばれています)

手順3:積分する。
= [(2/3)(1 + x)3/2]03 = (2/3)(43/2 − 13/2) = (2/3)(8 − 1) = 14/3

答え14/3(約 4.67

確認:両端は (0, 0)(3, 2√3) ≒ (3, 3.46)。直線距離は √(9 + 12) = √21 ≒ 4.58曲線の長さは直線距離より必ず長いので、4.67 > 4.58 は妥当です。この比較は、曲線の長さの検算にいつでも使えます。

公式の意味√(1 + (y′)2)1 は横方向、(y′)2 は縦方向。微小な直角三角形の斜辺を足し集めている——三平方の定理を無限に細かく使っているだけです。

例題7-4(区分求積法) limn→∞ (1/n){1/(1 + 1/n) + 1/(1 + 2/n) + … + 1/(1 + n/n)} を求めてください。

手順1:形を見抜く。この式は
limn→∞ (1/n) Σk=1n 1/(1 + k/n)
1/n が外にあり、中身が k/n の関数——区分求積法の形です。

手順2:積分に直す。f(x) = 1/(1 + x) とみて
= ∫01 dx/(1 + x)

区分求積法のしくみ曲線の下を、幅 n分の1 の短冊で埋めていく図。短冊の面積の合計が、幅を限りなく細くすると定積分に一致する。だから和の極限は積分に書き直せる。01/211幅 1/n高さ f(k/n)y = 1/(1 + x)短冊の面積の合計→ 幅を細くすると定積分∫₀¹ dx/(1+x) = log 2
図18 1/n短冊の幅f(k/n)高さ。掛けて足せば長方形の面積の合計で、幅を限りなく細くすれば定積分そのものになります。

手順3:計算する。
= [log(1 + x)]01 = log 2 − log 1 = log 2

答えlog 2(約 0.693

確認n = 5 で実際に計算すると (1/5)(1/1.2 + 1/1.4 + 1/1.6 + 1/1.8 + 1/2) ≒ (1/5)(0.833+0.714+0.625+0.556+0.5) = (1/5)(3.228) ≒ 0.646n を大きくすると 0.693 に近づきます。

なぜ積分になるのか1/n短冊の幅f(k/n)短冊の高さ。掛けて足せば長方形の面積の合計で、幅を限りなく細くすれば曲線の下の面積、つまり定積分になります。積分の定義そのものを逆向きに使っているだけです。

見分けの練習lim (1/n)Σk=1n√(k/n) なら 01√x dx = 2/3lim Σk=1n n/(n2+k2) なら、1/n をくくり出して (1/n)Σ 1/(1+(k/n)2) と直せば 01dx/(1+x2) = π/4まず 1/n をくくり出すのが最初の一手です。

例題7-5(速度と道のり) 数直線上を動く点 P の時刻 t における速度が v(t) = 3t2 − 12t + 9 で、t = 0 のとき原点にあります。(1) t = 0 から t = 4 までの位置の変化(変位)を求めてください。(2) 同じ区間で P が実際に動いた道のりを求めてください。

考え方変位と道のりは別物です。変位は ∫v dt、道のりは ∫|v| dt「行って戻る」動きがあると、その分だけ道のりのほうが長くなります。まず v = 0 となる時刻を出して、向きが変わる場所で区切るところから始めます。

 v(t) = 3(t2 − 4t + 3) = 3(t − 1)(t − 3) → t = 1, 3 で向きが変わる
 0 ≤ t < 1v > 01 < t < 3v < 03 < t ≤ 4v > 0

(1) 04(3t2 − 12t + 9)dt = [t3 − 6t2 + 9t]04 = 64 − 96 + 36 = 4

(2) 区切って、それぞれの絶対値を足します。x(t) = t3 − 6t2 + 9t とおくと
 x(0) = 0x(1) = 4x(3) = 0x(4) = 4
 |4 − 0| + |0 − 4| + |4 − 0| = 4 + 4 + 4 = 12

答え:(1) 変位 4 (2) 道のり 12

確認:点 P原点から 4 まで進み、原点まで戻り、また 4 まで進んでいます。最後の位置は 4 なので変位は 4、実際に動いた長さは 12。数が合っています。
区切らずに絶対値をそのまま外してしまうのが典型的な失敗です。|v|v の符号が変わるところで必ず切ること。
「道のりを求めよ」なのか「変位(位置の変化)を求めよ」なのかで、答えが 124 に分かれます。どちらを聞かれているかを、計算の前に確かめておくと間違えません。

この単元のチェックリスト

確認すること できていないと起きること
回転体で y2 にしたか まったく違う値になる
回転軸に沿って切ったか dx
上下が入れかわる点で区間を分けたか 面積が小さく出る
曲線の長さで 1 + を書いたか 長さが足りない
区分求積で 1/n をくくり出したか 形が見えない
直線距離や近い立体と比べたか 桁違いのミスに気づけない

もっと解きたい方へ 👉 積分の応用の特訓道場(20題と全解説)

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最後に:数学IIIを通して効く3つの見方

7単元を見てきました。計算は重くなりましたが、使っている考え方は数学I・A、II・B・Cとほとんど同じです。最後にそれを3つだけ取り出しておきます。

見方1 数学IIIは「数学IIの微積分を、関数の種類に広げたもの」

並べてみると、対応関係がはっきりします。

やること 数学II 数学III
微分できる関数 整式だけ 三角・指数・対数・分数・無理関数まで
接線 接点を文字でおく まったく同じ
増減 f′ の符号 f′ の符号 + f″ の凹凸
解の個数 グラフと横線の交点 まったく同じ(横線が直線になることも)
不等式の証明 差の最小値 まったく同じ
面積 ∫(上 − 下) 同じ+ 横に切る選択肢
積分の技術 そのまま逆算 置換・部分積分・部分分数

新しく覚えることは、実は多くありません。増えたのは「微分・積分できる関数の種類」と「積分を逆算するための技術」。問題の型そのものは数学IIで習ったものが、そのまま出てきます。

だからもし数学IIIでつまずいたら、数学IIの同じ型の問題に戻ってみてください。関数を簡単にすれば解けるなら、詰まっているのは計算技術のほうです 👉 数学II・B・Cの要点辞典

見方2 「定義域」と「区間」を、書く前に確認する

数学IIIで最も多い失点は、計算力ではなく条件の管理です。

log があれば 真数 > 0(第1章・第5章)
・根号があれば 中身 ≥ 0、そして値も0以上(第1章)
・分数があれば 分母 ≠ 0(第1章)
・2乗する前に 両辺の符号(第1章)
・逆関数を作ったら 定義域は元の値域(第1章)
・置換積分したら 積分区間も置きかえる(第6章)
・定義域の端が開いていたら 極限を調べる(第5章)

どれも1行書くだけです。逆に、書かなければ計算がすべて合っていても答えが違ってしまいます。数学IIIの答案は、条件を書けるかどうかで点が決まります。

見方3 「扱えない形を、扱える形に移す」

数学IIIの技術は、ほぼすべてこの一言に集約されます。

扱えない形 移し方 移した先
∞/∞ 最高次で割る ただの分数
∞ − ∞ 有理化する ∞/∞
(sin 3x)/x 分母を 3x にそろえる 基本極限
(1 − cos x)/x2 1 + cos x sin
(1 + 2/x)x t = x/2 e
xx 両辺の log をとる 積の微分
x√(x2+1) t = x2+1 √t
xex 部分積分 ex
1/(x2−1) 部分分数に分ける 1/(x−a)
sin2x 半角で次数を下げる cos 2x
Σ の極限 1/n 定積分

これは「順番に当てはめているだけ」ではありません。形を見て、そこから先の展開を予想し、考える量を減らしている——だから手際よく解法にたどり着けます。予想が外れたら別の移し方に切りかえればよいだけです。「型」は思考を止める道具ではなく、思考を速く進めるための足場です。

数学IIIで、次にやること

このページを読み終えたら、いちばん自信がない単元をひとつだけ選んでください。そして、その章の「例題」を何も見ずに解いてみる。解けなければ「つまずきポイント」に戻る。これを1単元ずつ潰していくのが、いちばん速い進み方です。

手を動かす教材は無料で用意してあります 👉 単元別の演習ページ一覧無料学習プリント・映像授業

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よくある質問

数学IIIは、数学II・Bができていなくても始められますか

難しいです。数学IIIの微積分は、数学IIの微積分の続きとして書かれています。とくに「接点を文字でおく」「増減表を書く」「面積は上−下」といった型は、数学IIで身につけている前提です。不安なら、まず 数学II・B・Cの要点辞典 の第6章・第7章だけ確認してから戻ってきてください。全部やり直す必要はありません。

積分がまったくできるようになりません

多くの場合、原因は「どの技術を使う形かを見分けていない」ことです。第6章の定石に書いたとおり、まず「分子が分母の微分になっていないか」「中身の微分が掛かっていないか」を確かめてください。この2つに当てはまれば、置換すら書かずに答えが出ます。当てはまらないときにはじめて、置換・部分積分・部分分数を検討します。手当たり次第に試すのが、いちばん時間を失う進め方です。

置換積分で、いつも答えが合いません

原因はほぼ積分区間を変え忘れていることです。t = g(x) と置いたら、その場でx = a のとき t = ?x = b のとき t = ?」を書く習慣をつけてください。置いた行の次の行に必ず書く、と決めてしまうのが確実です。

極限の問題で、どこから手をつければいいですか

まず「不定形かどうか」を判定してください。代入して値が出るならそれが答えです。∞/∞ なら最高次で割る、∞ − ∞ なら有理化、0/0 で三角関数なら基本極限にそろえる、1 なら e の形にそろえる。型ごとに処理法が決まっているので、型の判定さえできれば手が動きます。第2章・第3章に一覧があります。

回転体の体積で、いつも軸を間違えます

「回す軸に沿って切る」と覚えてください。x 軸のまわりに回すなら、x 軸に垂直な平面で切るので、切った位置は x で表され、積分変数は dx。断面は半径 y の円なので πy2公式を覚えるより、この組み立てを覚えるほうが応用が効きます(回転軸がずれた場合も自分で作れます)。

数学IIIの計算量が多くて、時間内に終わりません

計算を速くする前に、「遠回りしていないか」を確認してください。分数関数は商+余りに直してから微分するほうが軽い、対称性を使えば積分せずに答えが出る、定積分なら x に戻す必要がない——このページの各章に、そういう省略の仕方を書いてあります。計算速度より、手数を減らすほうが効果が大きいことが多いです。

このページの例題は、どこかの問題集から取ったものですか

いいえ。解説・図・および出典を明記していない例題は、すべて数強塾が新規に書き下ろしたものです。市販の参考書や問題集から解説や問題文を転載したものは含まれていません。数値も、こちらで設定して検算したうえで掲載しています。

ほかの範囲の辞典はありますか

あります。数学I・Aの要点辞典(全9単元)数学II・B・Cの要点辞典(全12単元)、そして証明や論証だけを扱った 論理と証明の要点辞典 を公開しています。

はさみうちの原理は、いつ使えばいいですか

そのままでは計算できないが、上と下から評価できるときです。典型は sincos を含む式で、−1 ≤ sin x ≤ 1 で挟んでから x で割る形。両端が同じ値に近づくことを示して、はじめて真ん中の極限が言えますので、「両端がどちらも 0 に近づく」の一文を必ず書いてください。第3章 関数の極限と連続性に図を置いてあります。

分数関数や無理関数で、定義域を書き忘れます

式を書いた直後に、その場で書くのが唯一の対策です。分数関数なら分母 ≠ 0、無理関数なら根号の中 ≥ 0。逆関数を求めたときは、もとの関数の値域が、逆関数の定義域になります。あとから付け足そうとすると、まず忘れます第1章 関数に、この3つをまとめてあります。

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この記事を書いた人

藤原進之介(ふじわら しんのすけ)

数学に強くなる塾「数強塾」グループ代表・株式会社数強塾 代表取締役

  • 東進ハイスクール・東進衛星予備校・代々木ゼミナールなど出講実績あり(東進ハイスクール・東進衛星予備校では最年少講師
  • 著書累計15万部(KADOKAWA・Gakken・文英堂ほか大手出版社より刊行)
  • 「令和の虎」出演をはじめ、メディア出演多数/消費者庁での登壇実績
  • 数強塾グループ(数強塾/情報ラボ/英論会/AOG/日本数学塾/国強塾)を運営。プロ講師60名以上が在籍し、全国の中高一貫校生を中心に累計3,500名以上を指導
  • もともと数学が苦手だった「元・数学苦手の講師」。だからこそ、つまずく生徒の目線で教えられる

数強塾グループのミッションは「一人ひとりの可能性を最大限に引き出し、本質を理解し、自ら考え続けられる人を育てる」。AI時代に、人にしかできない教育で最高品質の学びを届けます。

藤原進之介のプロフィール詳細指導実績(成績向上率94%の根拠)

数強塾からのご案内

数強塾は、数学を専門にしたオンライン個別指導塾です。中学生・高校生を対象に、一人ひとりの理解の状態に合わせて指導しています。

数学IIIは、「計算ができないのか、方針が立たないのか」を自分で切り分けにくい範囲です。手が止まる原因が計算技術なのか、数学IIの型が抜けているのか——ここを外から見てもらうと、進み方が一気に変わります。もし今そういう状態なら、一度ご相談ください。

数強塾オリジナル 追加演習4題——第1章で宣言した「定義域」を、第4〜7章で確かめる

第1章の冒頭に、この辞典でいちばん強い一文があります。

関数を見たら、まず定義域を確認する。数学IIIで最も多い失点は、計算ミスではなく定義域の見落としです。

「数学IIIで」と書いてあるとおり、これは第1章だけの話ではありません。ところが例題35問は各章の中に置かれていて、この一文が第4章以降でどう効くのかを確かめる問題がありません。第1章の「つまずきポイント①」も逆関数の話で止まっています。

この4題は、微分法(第4章)・微分法の応用(第5章)・積分法(第6章)・積分法の応用(第7章)から1問ずつ。どれも定義域か符号の確認が、答えそのものを決めます。計算はどれも短いので、確認を飛ばした人だけが間違えます。

追加第1問(第4章 微分法)

を微分せよ。また、定義域を答え、 が最小になる を求めよ。

まず定義域

は、 が負のときは実数として定まりません。たとえば なら で、根号の中が負になります。 が定まりません。

微分(対数微分法)

両辺の対数をとります。 を確認したからこそ がとれますなぜ対数は指数の逆なのか)。

両辺を で微分すると(左辺は合成関数)

となるのは 、すなわち なので符号は で決まり、 で負、 で正。よって で最小です。

定義域を書かずに対数微分法へ進むと、「なぜ をとってよいのか」の根拠がない答案になります。対数がとれるのは真数が正のときだけ。ここは第1章の「定義域を確認する」が、第4章の道具を使う資格になっている場面です。

検算

で確かめます。式では

数値微分でも。。○  に近い値になりました。

最小値も検算します。両側より小さいので、たしかに最小。○

追加第2問(第5章 微分法の応用)

の最大値を求めよ。

まず定義域

があるので 。分母の も同時にみたされます。実数全体で増減表を書こうとすると、 の欄で手が止まります——そこは調べる必要がありません。

解答

商の微分を使います。

なので符号は分子で決まります。 より で正、 で負なので、 で最大。

この関数は「 が大きくなるほど大きくなる」ように見えて、実は を過ぎると減ります。定義域が だと分かっていれば、調べる範囲は右半分だけ。定義域は「調べなくてよい場所」を教えてくれる道具でもありますなぜ定義域があるときは頂点だけ見てはいけないのか)。

検算

の前後で値を出します。

いちばん大きい。○  が同じ値になっているのも面白いところで、 だからです。○

追加第3問(第6章 積分法)

次の計算のどこが誤りか、指摘せよ。

まず、答えを見ておかしいと気づく

被積分関数 は、 のすべてでです。正の関数を左から右へ積分して、負になることはありません。この時点で、計算のどこかが間違っています。

誤りの正体

で定義されません。ところが積分区間 は、その またいでいます

」が使えるのは、 から までのあいだで被積分関数が連続なときだけ。途中で定義されない点があるのに、そのまま代入したのが誤りです。

実際に区間を切って調べると、 の右側だけでも

となって発散します。したがってこの積分は、値をもちません。

第1章の「定義域を確認する」が、いちばん静かに効くのがここです。式の見た目には何の異常もありません。計算も1行で終わり、答えも というきれいな数が出る。おかしいと気づける材料は「被積分関数が正なのに答えが負」だけです。積分の答えが出たら、符号が合っているかを必ず見てください。

検算

片側だけで確かめます。 なら なら なら いくらでも大きくなります。○

もし をまたがない なら、。正の値で、問題ありません。○ 区間が定義域の中に収まっているかどうか——見るのはそれだけです。

追加第4問(第7章 積分法の応用)

を、 と置換して求めよ。根号を外す根拠も書け。

解答

と置くと 。積分区間は に対して と取ります(なぜ置換積分が成り立つのか)。

ここが山場です。根号の中は

であって ではありません(第1章の道具です → なぜ√4は2なのに「4の平方根」は±2なのか)。絶対値を外してよいのは、 では だからです。この一言が根拠になります。

もし の範囲を のように取ってしまうと、途中で が負になります()。すると をそのまま にはできず、符号を間違えます置換したら、新しい変数の範囲でその式の符号がどうなるかを必ず確認する——ここでも定義域の話です。

検算

半径 の上半円です。 の部分はその右半分、つまり四分円。面積は

一致しました。○ 置換積分の答えは、図形の面積として意味が読めることが多い。読めたら、それが最良の検算になります。

4章にまたがる、同じ1つの確認

問題 確認すべき条件 飛ばすとどうなるか
第4章 微分法 をとる資格がなくなる
第5章 応用 調べなくてよい範囲を調べてしまう
第6章 積分法 負の値が出る(本当は発散)
第7章 応用 絶対値が外せず符号を誤る

4問とも計算は数行で終わります。差がつくのは計算力ではなく、3列目を書いたかどうかです。第1章の一文が「数学IIIで最も多い失点」と言っているのは、この列のことでした。

この4題で確認したこと

  • 対数微分法は の確認が「 をとる資格」になる(追加第1問)。
  • 定義域は「調べなくてよい場所」も教える があれば右半分だけ見ればよい(追加第2問)。
  • 定積分は区間の中に定義されない点がないかを先に見る。またぐと、きれいな数が出ても誤り(追加第3問)。
  • 積分の答えは符号で検算。正の関数の積分が負になったら、必ずどこかが誤っている。
  • 。絶対値を外すには「その範囲で 」という根拠が要る(追加第4問)。
  • 置換したら新しい変数の範囲で符号を確認する。範囲の取り方しだいで符号が変わる。

手を動かすなら 微分(数学III)の特訓道場、積分の基礎は 積分(基本)の特訓道場、極限そのものは 数学III「極限」の解き方、微分法の単元ページは 数学III「微分法」 へ。

道具の「なぜ」は、なぜ√4は2なのに「4の平方根」は±2なのかなぜ置換積分が成り立つのかなぜ対数は指数の逆なのかなぜ定義域があるときは頂点だけ見てはいけないのかなぜ積分すると面積が求まるのか にまとめてあります。

同じ「条件を落とすと答えが変わる」系統として 絶対値とは(場合分けの追加演習つき)、対数とは(真数条件の追加演習つき)もどうぞ。

土台は 数学II・B・Cの要点辞典(3章を横に見る追加演習つき)と 数学I・Aの要点辞典、答案の書き方は 論理と証明の要点辞典、分野横断の型は 入試数学の定石(全27章)、グラフの端の形の決め方は 漸近線の求め方(中1の反比例から数学IIIまで) にあります。

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