数学の勉強法 / 数学の原理(無料講座)

【第9章】「差」からすべてが始まる──差分とΣの正体

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数強塾オリジナル無料講座『数学の原理』第9章
第2部のはじまりです。いきなり結論から言います。Σ(シグマ)は、引き算です。意味が分からないと思いますが、この章を読み終えるころには「たしかに引き算だ」と納得しているはずです。そして、 の公式を暗記せずに導けるようになります

「1から100まで足す」の、その先

藤原です。第9章です。

有名な話があります。小学生のガウスが「1から100まで足しなさい」と言われて、一瞬で 5050 と答えた。彼はこうしたと言われています。


この2つを縦に足すと、各列がすべて になります。列は100個あるので合計 。これは2回足した分なので、半分にして

見事な発想です。一般化すると

さて、ここからが本題です。この方法で は求まるでしょうか。

やってみてください。逆順に並べて足しても、各列が同じ値になりません。ガウスの方法は、ここで止まる。

じゃあ、どうするか。教科書には という公式が載っていて、多くの人はこれを丸暗記します。でも、この式がどこから来たのかは謎のまま。

この章では、暗記しないで導く道を作ります。しかもその道は、 でも でも、同じように通れる道です。

発想の転換:足し算の逆は、引き算

こう考えてみてください。

足し算がうまくいかないなら、引き算から攻めればいい。

次の和を計算してみましょう。ちょっと変な形ですが、我慢して見てください。

中身を書き下すと

よく見てください。 の次に の次に ……隣どうしが打ち消し合っています。

生き残るのは、いちばん最後の と、いちばん最初の だけ。

望遠鏡がスーッと縮むように、真ん中が全部消える。だからこれを望遠鏡和(テレスコーピング)と呼びます。

Σ の中身が「隣どうしの差」の形をしていれば、和は一瞬で求まる。

これが、この章のすべてです。あとは応用です。

差分という道具に名前をつける

「隣との差」に名前をつけておきましょう。

数列 に対して、 の差分といい、 と書く。

そして、望遠鏡和の式はこう書き直せます。

となる が見つかれば

この のことを、原始数列と呼ぶことにします。

ここで、既に微分・積分を習っている人は「あれ?」と思ったはずです。そう、これは

まったく同じ構造です。微分の代わりに差分、積分の代わりにΣ。原始関数の代わりに原始数列。

Σと積分は、双子です。「和を求めたければ、差を取ると元に戻るものを探す」。この一文が、数列と微積分の両方を貫いています。第23章で、この話にもう一度戻ってきます。

原始数列を探す練習

では、実際に探してみましょう。「差を取ると になる 」を見つけるゲームです。

その1: のとき

とすると 。当たりです。だから

当たり前の結果ですが、道具が正しく動いていることが確認できました。

その2: のとき

ここで、うまい形を1つ紹介します。 としてみてください。

当たりです。したがって

ガウスの公式が出ました。ひらめきなしで出せたことに注目してください。

その3:連続する整数の積

いま出てきた という形が鍵です。一般に、次が成り立ちます。


パターンが見えますか。連続する 個の積を差分すると、 倍して1つずらしたものになる。だから逆に、連続積の和を求めたければ、因子を1つ増やして次数で割ればいいということになります。

実際に確かめましょう。 とおくと

したがって

いよいよ を、暗記せずに出す

準備が整いました。ポイントは を、連続積の形に書き換える」ことです。

なので、移項して

両辺の和を取ります。Σは足し算なので、バラバラに分けられます(これを線形性といいます)。

右辺は両方とも、もう求めてあります。

共通因数 でくくって、分母を6に揃えます。

出ました。あの覚えにくい公式が、ひらめきゼロで導けました。

検算しましょう。 なら 。公式では 。一致します。

公式を覚えるなというわけではありません。覚えていても、忘れても、その場で作れるという状態がいちばん強い。試験中に「あれ、 だっけ だっけ」と迷ったとき、30秒で確かめられます。

分数や無理数にも、同じ手が効く

差分の考え方の強さは、多項式に限らないところにあります。

例1:

としてみます。

当たりです。よって

これがいわゆる「部分分数分解」の正体です。 に分けるのは、差の形を作るためだったのです。

例2:

有理化します。分母分子に を掛けると、分母は になるので

もう差の形です。 とすれば 。したがって

「有理化」も「部分分数分解」も、やっていることは同じでした。差の形を作る。それだけです。バラバラに覚えていたテクニックが、1本の線でつながりましたね。

【原理】この章の芯

① Σの中身を「隣どうしの差」にできれば、真ん中が全部消える(望遠鏡和)。
② 差分 となる が原始数列。
。積分と同じ構造。
④ 連続する整数の積を差分すると、1つ短い連続積になる。
⑤ 部分分数分解も有理化も、「差の形を作る」ための手段にすぎない。

オリジナル問題で確かめる

問題1(差分を求める)

次の各 について、差分 を求め、できるだけ簡単な形にせよ。

  1. (定数)

問題2(望遠鏡和)

次の和を求めよ。

  1. は任意の数列)

問題3(部分分数)

次の和を求めよ。

問題4(連続積の和)

次の和を求めよ。

問題5( を導く)

差分の考え方を用いて を求めよ。

問題6(等比数列の和を導く)

とする。 の差分を計算し、それを用いて を求めよ。

問題7(多項式×等比)

の差分を計算せよ。またそれを用いて を求めよ。

問題8(範囲がずれている和)

次の和を求めよ。

問題9(総合)

数列 で定まっているとき、 を求めよ。

解答と解説

問題1の解答

  1.  → 
  2.  → 
  3. でくくると 。よって

気づいてほしいこと。(1)〜(3) を見ると、2次式を差分すると1次式に、3次式を差分すると2次式になっています。差分すると次数が1つ下がる。微分とそっくりですね。

(5) では を差分しても の定数倍のまま。指数関数は微分しても形が変わらない、というあの性質の離散版です。

(6) 定数を差分すると0。これも微分と同じ。差分と微分は本当によく似ているのです。

問題2の解答

  1. 望遠鏡和なので、最後から最初を引くだけです。
  2. から まで。最後の項は 、最初の項は
    よって

(2) で「」としてしまうミスが多発します。上端が なら、残るのは 。1つずれるので注意してください。

問題3の解答

(1) 本文でやったとおり、 なので

答え:

(2) 今度は分母が で、2つ離れています。部分分数分解すると

(右辺を通分すると 。合っています。)

今回は「隣との差」ではなく「2つ先との差」なので、消え方が変わります。書き下してみましょう。

と消えますが、2つずれているので、前も後ろも2項ずつ残ります。残るのは前から 、後ろから

答え:

検算: なら左辺は 。右辺は 。一致します。

いくつずれているかで、残る項数が変わる。これは書き下して確かめるのがいちばん確実です。頭の中だけでやると必ず間違えます。

問題4の解答

(1) 本文のとおり

(2) 問題1(4) より でした。1つずらして考えると、 とおけば

よって

答え:

規則が見えましたか。連続する 個の積の和は、連続する 個の積を で割ったもの。積分の と、驚くほど似ています。

問題5の解答

を連続積の組み合わせで表します。

なので

両辺の和を取ります。

共通因数 でくくります。

中カッコを分母4で通分します。


答え:

最後の形に注目してください。。「立方の和は、和の平方」という美しい事実です。導いてみて初めて味わえる驚きだと思います。

検算: なら 。公式では 。一致します。

問題6の解答

の差分は

したがって の原始数列です。よって

答え:

等比数列の和の公式が出ました。教科書では「 を引く」という技巧で導きますが、差分で見れば「原始数列を探すだけ」です。あの技巧も、結局は差を作っていたのですね。

問題7の解答

の差分を計算します。

でくくると

ぴったり になりました。したがって

答え:

検算: なら左辺は 。右辺は  ○
なら左辺は 。右辺は  ○

この形の和は、教科書では「 を作る」という方法で解きます。それも正しいのですが、「(1次式)×(等比)の原始数列は(1次式)×(等比)の形になる」と知っていれば、係数を未知数において決めるだけで済みます。実際 とおいて差分を計算し、 と係数比較すれば が出ます。

問題8の解答

原始数列は問題4(1) で使った です。公式に当てはめると


答え:

検算: なら左辺は 。右辺は  ○

下端がずれていても、公式が使えるのが差分の強みです。「1から までの和を求めてから、1から4までを引く」という2度手間が要りません。

問題9の解答

Σは足し算なので、項ごとに分けられます(線形性)。


でくくります。

答え:

検算: なら 。公式は  ○
なら 。公式は  ○

Σの計算をしたら、必ず で検算してください。1分もかからず、計算ミスの9割が見つかります。

よくある誤解

誤解1:望遠鏡和で「最後の項 − 最初の項」だと思う
正しくは です。上端は1つ先になります。ここを1つずらす事故が非常に多い。

誤解2:部分分数分解を「公式」だと思っている
目的は「差の形を作る」ことです。目的が分かっていれば、分母が2つ離れている場合(問題3(2))にも自分で対応できます。

誤解3:Σの中の に、Σの外の を混ぜる
の中では 定数です。 であって ではありません。

誤解4:積の和は和の積だと思う
です。Σが分配できるのは足し算・引き算と定数倍だけ。

よくある質問

Q. 原始数列は、どうやって見つけるんですか?

「差分すると次数が1つ下がる」を逆に使います。 が2次式なら は3次式。だから とおいて、差分を計算し、係数比較すれば必ず見つかります。探すのではなく、作るのがコツです。

Q. 教科書の の公式は覚えなくていいですか?

覚えたほうが速いのは確かです。ただし「忘れても作れる」状態をセットで持っておいてください。試験中に自信がないとき、この章の方法なら1分で確認できます。

Q. 差分と微分が似ているのは偶然ですか?

偶然ではありません。微分は「 のときの 」でした。差分は のまま止めたものです。差分は微分の”整数版”で、だからそっくりな性質を持つのです。第22章・第23章で、この対応がもっとはっきり見えてきます。

次の章へ

Σの正体が「差」だと分かりました。次の第10章では、この考え方をさらに実戦的にします。与えられた数列を、どうやって差の形に持ち込むか。そして「階差数列」という高校数学の定番テーマが、この章の道具そのものであることを見ていきます。

第8章:対偶と背理法──「証明」の型はこの2つで足りる
第10章:数列の和は「引き算の連鎖」──望遠鏡和と原始数列
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