数強塾オリジナル無料講座『数学の原理』第11章
漸化式には「解き方」がたくさんあるように見えます。特性方程式、両辺を割る、置き換える……。でも、やっていることはたった1つです。知っている数列の形に持ち込む。この章では、あの謎の「特性方程式」がなぜ効くのかを説明し、さらに入試で本当に差がつく「漸化式を作る」力を鍛えます。
漸化式とは「隣どうしの約束」である
藤原です。第11章です。
漸化式とは、次のような式のことです。
これは「次の項は、いまの項を2倍して1を足したもの」という関係を述べているだけです。数列そのものを教えてくれているわけではありません。
実際、この式だけでは数列は決まりません。 が なら ですが、 が なら になります。
初項 + 漸化式 = 数列がただ1つに決まる
最初の1個を決めて、そこから関係でつないでいけば、いくらでも先まで作れる。これを帰納的に定義するといいます。
ここで大事な事実を1つ。
漸化式が与えられれば、数列はもう完全に決まっています。 を知りたければ、99回計算すればいい。ただ、それでは大変なので「一般項」という便利な形を求めたい。「解く」というのは、そういう作業です。
私たちが「知っている」数列は、たった3つ
正直に言うと、一般項を直接書ける漸化式は、ほとんどありません。高校生が持っている武器は、実質この3つだけです。
① 等差数列 →
② 等比数列 →
③ 階差型 → (第10章)
これで全部です。だから、漸化式の問題を解くというのは
与えられた漸化式を、①②③のどれかの形に変形する
という作業以外にありえないのです。特性方程式も、両辺を割るのも、全部そのための手段です。目的が1つだと分かれば、覚えることは激減します。
特性方程式の正体──なぜ を解くのか
いちばん基本の型を扱います。
これが等比数列でないのは、余計な がくっついているからです。じゃあ、この を消したい。
そこで、こう考えます。両辺から同じ数 を引いたら、等比の形になってくれないだろうか。
この形になってくれれば、 とおいたとき となって、めでたく等比数列です。
では、そんな都合のいい はあるのか。右辺を展開してみましょう。
これが元の と一致すればいいので
つまり
これが特性方程式の正体です。魔法でも何でもありません。「引くとうまくいく数 はいくつか」を求める式です。
もう1つの見方: は、漸化式の と を両方 に置き換えた式です。つまり「ずっと同じ値を取り続ける数列(定数数列)があるとしたら、その値はいくつか」を聞いている。
その定数数列とのズレを測ると、そのズレが等比数列になる。これが構造です。
実際にやってみましょう。
例題 、 のとき、一般項を求めよ。
より 、。したがって
とおくと、 は公比 、初項 の等比数列。よって
検算: ○ 、公式では ○
同じ発想で、いろいろな型が片づく
「引いたら等比になる形を探す」という発想は、そのまま拡張できます。
型A: ( の1次式)
定数 の代わりに、1次式 を引いてみます。
となるように を決めればよい。展開して係数比較するだけです。
型B:
両辺を で割ります。
とおけば、これは という基本型になりました。あとはさっきの特性方程式です。
( で割ると階差型になることもあります。どちらでも解けますが、割ったあとに知っている形になっているかを確認してから進めてください。)
型C:隣接3項間
ここでも発想は同じ。「等比の形が2つ隠れている」と考えます。
と書けたら、 が公比 の等比数列になって前進できます。右辺を展開すると
元の式と比べて
第7章でやった「和と積が分かれば2次方程式の解」を使えば、 は
すなわち
の2解です。これが3項間漸化式の特性方程式。 を に置き換えた形になっているのは、偶然ではなかったわけです。
入試で本当に差がつくのは「作る」ほう
ここまでは「解く」話でした。でも正直に言うと、解くだけの問題は易しい部類です。難関大が問うのは、こちらです。
状況を読んで、自分で漸化式を立てる
そして、漸化式を立てるときの合言葉は、たった1つです。
「 のときの状態」から「 のときの状態」へ、何が起きるかを言葉で書く。
例を見ましょう。
例題 平面上に 本の直線を引く。どの2本も平行でなく、どの3本も1点で交わらないとき、平面は最大いくつの領域に分かれるか。
いきなり一般項を求めようとすると詰まります。そこで「1本増やしたら何が起きるか」だけを考えます。
すでに 本引いてある状態に、 本目を引きます。この新しい直線は、既存の 本すべてと1点ずつで交わります(平行でないので)。しかも3本が1点で交わらないので、その交点は 個すべて異なります。
個の点で区切られた直線は、 本の部分に分かれます。そして直線の各部分が、通り抜けた領域を2つに割る。だから領域は 個増えます。
領域の個数を とすると
これは階差型です。(1本の直線は平面を2つに分ける)なので、 のとき
を入れると で一致するので、統一できます。
答え: 個
検算: なら 個(2直線で4つ) ○ なら 個 ○
漸化式を立てる問題のコツ
① まず を手で書き出す(これをサボらない)
② 「1つ増やしたら何が起きるか」を日本語で書く
③ その日本語を式にする
①を飛ばして②に行こうとすると、たいてい失敗します。手を動かして小さい場合を見るのが、遠回りに見えていちばん速い道です。
【原理】この章の芯
① 漸化式は「隣どうしの関係」。初項とセットで数列が1つに決まる。
② 知っている形は等差・等比・階差の3つだけ。解くとはそこへ持ち込むこと。
③ 特性方程式は「引くと等比になる数」を求める式。定数数列とのズレを見ている。
④ 3項間の特性方程式は、和と積から2次方程式を作っているだけ。
⑤ 入試で差がつくのは作る力。「1つ増やしたら何が起きるか」を言葉で書く。
オリジナル問題で確かめる
問題1(基本型)
次の条件で定まる数列の一般項を求めよ。
- 、
- 、
問題2(階差型)
、 で定まる数列の一般項を求めよ。
問題3(1次式を引く)
、 で定まる数列の一般項を求めよ。
問題4(指数がくっつく型)
、 で定まる数列の一般項を求めよ。
問題5(隣接3項間)
、、 で定まる数列の一般項を求めよ。
問題6( が絡む)
数列 の初項から第 項までの和 が を満たすとき、一般項 を求めよ。
問題7(漸化式を作る・階段)
段の階段を、1歩で1段または2段のぼる方法の総数を とする。
- を求めよ。
- を と で表せ。理由も述べよ。
問題8(漸化式を作る・確率)
三角形 の頂点上を動く点 がある。 は毎回、いまいる頂点以外の2つの頂点のどちらかへ、等しい確率 で移動する。最初 は にいる。 回移動したあとに が にいる確率を とする。
- を で表せ。
- を求めよ。
問題9(漸化式を作る・図形)
平面上に 個の円を描く。どの2つの円も異なる2点で交わり、どの3つの円も1点では交わらないとする。このとき平面が分けられる領域の個数 を求めよ。
解答と解説
問題1の解答
(1) より 、。よって
は初項 、公比 の等比数列なので 。
答え:
検算: ○ 、公式は ○
(2) より 、。よって
初項 、公比 なので
答え:
この数列は を大きくすると に近づいていきます。 が「定数数列の値」だったことを思い出すと、納得できるはずです。特性方程式の解は、数列の行き先を教えてくれているのです(公比の絶対値が1未満のとき)。
問題2の解答
階差型なので、 のとき
の確認: ○
答え:
検算:。公式は ○
問題3の解答
1次式 を引いて等比にしたい。
右辺を展開して整理すると
これが と一致すればよいので
よって 。つまり引くべき式は です。
とおくと 、。よって 。
答え:
検算: ○ 、公式は ○ 、公式は ○
問題4の解答
両辺を で割ります。
とおくと で、基本型になりました。
特性方程式 より 、。よって
なので 。したがって
なので
答え:
検算: ○ 、公式は ○ 、公式は ○
問題5の解答
特性方程式は 、すなわち
より 。したがって次の2つの形に書けます。
1つ目より、 は公比 の等比数列。初項は 。初項が0なので、この数列はずっと0です。つまり
これで等比数列になりました。初項 、公比 なので
答え:
検算: ○ ○
今回はたまたま片方が0になって楽でした。一般には2つの式を連立して を消去し、 を求めます。2つ書いてから、楽なほうを選ぶのがコツです。
問題6の解答
第10章の問題9と同じ型です。
…… ①
のとき、 を にして
①から辺々引くと、左辺は なので
整理して
基本型です。 より 。よって 。
初項は、①で として より 。したがって で
答え:
検算:、。 で、 ○
問題7の解答
(1) 手を動かして数えます。
- 1段: の1通り。
- 2段: の2通り。
- 3段: の3通り。
- 4段: の5通り。
(2) 段をのぼるとき、最後の1歩に注目します。最後の1歩は1段か2段のどちらかで、この2つは同時に起こりません。
- 最後が1段のとき:その直前までに 段のぼっている。その方法は 通り。
- 最後が2段のとき:その直前までに 段のぼっている。その方法は 通り。
この2つで場合が尽きており、重複もないので
答え:
これが有名なフィボナッチ数列です。 と続きます。
ここで学んでほしいのは「最後の1歩で場合分けする」という発想です。最初の1歩で分けても同じ式が出ます。どこか1か所に注目して、そこで場合を尽くす。漸化式を立てる問題の9割は、この形です。
問題8の解答
(1) 回目の移動後に にいるのは、どういうときでしょうか。
- 回目に にいた場合:次は必ず か へ移るので、 にはいられない。確率 。
- 回目に にいなかった場合(確率 ): にいても にいても、 へ移る確率は 。
したがって
答え:
(2) 特性方程式 より 、。よって
初項を確認します。1回移動すると必ず か にいるので 。したがって で
答え:
検算: ○ 。実際、1回目に にいれば で に戻るので ○
を大きくすると は に近づきます。長く動かすと3頂点に均等にばらける、という直感どおりの結果です。特性方程式の解 が、この「落ち着き先」でした。
問題9の解答
本文の直線の問題と同じ発想です。 個描いてある状態に、 個目の円を描き足します。
新しい円は、既存の 個の円それぞれと2点で交わるので、交点は 個。しかも3円が1点で交わらないので、これらはすべて異なる点です。
円周が 個の点で区切られると、円周は 本の弧に分かれます(円は閉じているので、点の数と弧の数が同じになるのがポイント)。そして各弧が、通り抜けた領域を2つに割ります。
したがって領域は 個増えます。
(円1個は内側と外側の2領域)なので、 のとき
を入れると で一致。
答え:
検算: なら 個(2円が交わると4領域) ○ なら 個 ○
直線のときは「 個の点で 本に分かれる」、円のときは「 個の点で 本の弧に分かれる」。直線は端が開いていて、円は閉じている。この違いが、そのまま答えの違いになりました。図形の問題では、こういう細かいところが命取りになります。
よくある誤解
誤解1:特性方程式は覚えるべき公式
覚えなくても、「引くと等比になる数を とおく」から3行で作れます。忘れても困りません。
誤解2: のときも特性方程式を使う
は等差数列で、特性方程式 は解を持ちません。この場合はそのまま等差として扱ってください。
誤解3:置き換えた数列の初項を間違える
とおいたら、 です。 をそのまま使う事故が多発します。
誤解4:漸化式を立てるとき、場合が重複している
「最後の1歩で分ける」のような分け方は、重複せず・漏れなく分けられます。分け方を決めたら「これで尽きているか」「重なっていないか」を必ず確認してください。
よくある質問
Q. どの型かを見分けるコツはありますか?
まず「 の係数」を見ます。係数が1なら階差型。1以外の定数なら基本型(特性方程式)。そこに の式や がくっついていたら、それを消す工夫(1次式を引く/両辺を割る)を足す。この順で考えれば、ほぼ迷いません。
Q. 確率の漸化式が苦手です。
「 回目にその状態になるのは、 回目にどの状態だったときか」を場合分けして、それぞれの確率を足す。これだけです。表を書いて、 回目の各状態から 回目の各状態への矢印を描くと、式が自動的に出てきます。
Q. 漸化式を立てたあと、解けない形になったらどうしますか?
立てた漸化式が間違っている可能性が高いです。小さい で検算してください。 を手で数えた値と、漸化式から出る値が合うかを確認する。ここで合わなければ、立式に戻ります。
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数列はここまで。次の第12章からは数え上げに入ります。「場合の数」は公式(順列・組合せ)を覚える単元だと思われがちですが、いちばん大切なことは別にあります。数えるとは、1対1の対応をつけること。この一文が腹に落ちると、 がなぜあの式なのかも、自分で説明できるようになります。
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▶ 第12章:「場合の数」のいちばん大切なこと──数えるとは1対1対応
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