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【第14章】「確率」のいちばん大切なこと──「同様に確からしい」を疑う

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数強塾オリジナル無料講座『数学の原理』第14章
確率は「場合の数の割り算」だと教わります。それは半分正しくて、半分危険です。分母と分子は同じルールで数えないといけない。そして、そのルールを決めているのが「同様に確からしい」という一言です。この章では、この言葉を疑えるようになります。ここができると、確率の正答率が変わります。

確率の定義を、正確に読む

藤原です。第14章です。

教科書の定義は、こう書かれています。

起こりうるすべての場合が 通りあり、そのどれもが同様に確からしいとする。
事象 の起こる場合が 通りあるとき、 の確率は

多くの人は「」だけを見て、太字の部分を読み飛ばします。でも、この講座を第1章から読んできたあなたなら分かるはずです。条件には必ず前提がある。

「同様に確からしい」とは、 通りのそれぞれが、すべて同じ確率で起こるということです。この前提が崩れていたら、 は確率になりません。

同じ問題で、答えが2つ出てしまう例

いちばん有名な例を見ましょう。

問題 2枚のコインを同時に投げるとき、表と裏が1枚ずつ出る確率を求めよ。

答えその1(間違い)

「起こりうるのは『表2枚』『表と裏』『裏2枚』の3通り。だから確率は

答えその2(正しい)

「2枚のコインを A、B と区別すると、 (表,表), (表,裏), (裏,表), (裏,裏) の4通り。表と裏が1枚ずつなのは2通りなので

どちらが正しいでしょうか。実際にコインを100回投げてみれば、答えはおよそ50回。正しいのは です。

では、答えその1の何が間違っていたのか。

「表2枚」「表と裏」「裏2枚」の3つが、同様に確からしくないからです。「表と裏」は (表,裏) と (裏,表) の2通りを含んでいるので、他の2倍起こりやすい。それなのに、同じ1つとして数えてしまった。

確率では、たとえ見た目が同じでも、区別できるものは必ず区別して数える。
場合の数では「同じものは区別しない」ことがあっても、確率では原則すべて区別する。これが最大の違いです。

「区別しない」と書いてあっても、区別する

これがいちばん誤解されるところなので、はっきり言っておきます。

例題 袋の中に赤玉3個と白玉2個が入っている。この中から2個を同時に取り出すとき、2個とも赤である確率を求めよ。

「赤玉3個は同じ色だから区別しない」と考えると、取り出し方は「赤2個」「赤1白1」「白2個」の3通り。それではさっきのコインと同じ間違いです。

正しくは、赤玉に 、白玉に 名前をつけて区別します。すると

  • 全体:5個から2個を選ぶ  通り
  • 2個とも赤:赤3個から2個を選ぶ  通り

答え:

「同じ色の玉」「同じ形のサイコロ」でも、物理的には別の物体です。別の物体である以上、それぞれが選ばれる確率は等しい。だから区別して数えると「同様に確からしい」が保証されます。
迷ったら区別する。これで事故はほぼゼロになります。

分母と分子は、同じルールで数える

もう1つ、重要な原則があります。

分母を「順序を区別して」数えたなら、分子も「順序を区別して」数える。
分母を「選ぶだけ」で数えたなら、分子も「選ぶだけ」で数える。

さっきの問題を、順序を区別して数え直してみます。

  • 全体:5個から2個を順に取る  通り
  • 2個とも赤:赤3個から2個を順に取る  通り

同じ答えになりました。ルールさえ揃っていれば、どちらで数えても構いません。逆に、分母を 、分子を のように混ぜると、必ず間違えます。

確率の基本性質は、集合の話そのもの

第1章でやった集合が、ここでも効きます。


② 余事象 
③ 加法定理 
  とくに (排反)のとき

③は、第13章でやった包除原理を、全体の個数 で割っただけです。確率の公式は、場合の数の公式を で割ったものだと思って構いません。

②の余事象は、確率でも最強の道具です。第8章・第12章と同じで、「少なくとも1つ」を見たら余事象

直感が裏切られる場面を、体験しておく

確率は、直感が驚くほど当てにならない分野です。1つ有名な例を挙げます。

例題 ある部屋に 人がいる。この中に誕生日が同じ人のペアが少なくとも1組いる確率が を超えるのは、 がいくつ以上のときか。(1年は365日とし、どの日に生まれる確率も等しいとする。)

直感的には「365日あるんだから、100人くらい必要では」と思いませんか。

計算してみましょう。「少なくとも1組」なので余事象です。「全員の誕生日が互いに異なる」確率を求めます。

1人目はどの日でもよい。2人目は1人目と違う日なので 。3人目は 。…… 人目は

全員の誕生日が異なる事象を とすると

実際に計算すると

  •  → 同じ誕生日がいる確率 約
  •  → 約
  •  → 約
  •  → 約

答え:23人

たった23人で50%を超えます。100人どころではありません。

なぜ直感と違うのか。「自分と同じ誕生日の人」を探しているのではなく、「どの2人でもいいから同じ」を探しているからです。23人からペアを作る方法は 通り。253回もチャンスがあると考えれば、納得できるはずです。

確率では、直感を信じないでください。必ず「何が同様に確からしいのか」を決め、数えて計算する。直感は最後の検算に使うくらいがちょうどいいです。

【原理】この章の芯

① 確率の定義には「同様に確からしい」という前提がある。必ず確認する。
② 確率では、見た目が同じでも物理的に別のものは区別して数える。
③ 分母と分子は、同じルールで数える。混ぜたら必ず間違える。
④ 確率の公式は、場合の数の公式を全体数で割ったもの。
⑤ 「少なくとも1つ」は余事象。

オリジナル問題で確かめる

問題1(同様に確からしいかを判定する)

次の数え方は「同様に確からしい」といえるか。理由とともに答えよ。

  1. 2個のさいころを投げるとき、「出た目の和」を から までの11通りとして数える。
  2. 2個のさいころを投げるとき、大きいさいころと小さいさいころの目の組を36通りとして数える。
  3. 赤玉2個・白玉1個の袋から1個取り出すとき、「赤」「白」の2通りとして数える。

問題2(基本)

袋の中に赤玉4個、白玉3個、青玉2個が入っている。この中から3個を同時に取り出すとき、次の確率を求めよ。

  1. 3個とも赤である確率
  2. 3個の色がすべて異なる確率
  3. 少なくとも1個は赤である確率

問題3(さいころ)

2個のさいころを同時に投げるとき、次の確率を求めよ。

  1. 出た目の和が7になる確率
  2. 出た目の積が偶数になる確率
  3. 少なくとも一方が6である確率

問題4(順序を区別するかどうか)

10本のくじの中に当たりが3本ある。A と B の2人がこの順に1本ずつ引く(引いたくじは戻さない)。

  1. A が当たる確率を求めよ。
  2. B が当たる確率を求めよ。
  3. (1) と (2) の結果について、気づいたことを述べよ。

問題5(加法定理)

1から100までの整数から1つを無作為に選ぶとき、それが3の倍数または4の倍数である確率を求めよ。

問題6(並べる確率)

男子3人、女子2人の計5人を1列に並べる。並べ方はすべて同様に確からしいとする。

  1. 女子2人が隣り合う確率を求めよ。
  2. 両端がともに男子である確率を求めよ。

問題7(余事象)

さいころを4回投げるとき、少なくとも1回は6の目が出る確率を求めよ。

問題8(誕生日問題の縮小版)

1週間が7日であるような星がある。この星の住人5人が集まったとき、誕生曜日が同じ人が少なくとも1組いる確率を求めよ。(どの曜日に生まれる確率も等しいとする。)

問題9(数えるルールを揃える)

赤玉3個、白玉2個の袋から2個を同時に取り出す。「2個とも赤である確率」を、次の2通りの数え方でそれぞれ求め、一致することを確かめよ。

  1. 取り出す順序を区別しない数え方
  2. 取り出す順序を区別する数え方

解答と解説

問題1の解答

  1. いえない。和が になるのは の1通りだが、和が になるのは の6通り。起こりやすさが6倍違うので、同様に確からしくない。
  2. いえる。2個のさいころは物理的に別物で、それぞれの目が1から6まで等しく出る。36通りのどれも確率
  3. いえない。赤が出る確率は 、白は 。赤玉を と区別して3通りとすれば、同様に確からしくなる。

(1) は「和」というまとめた見方をしたせいで前提が崩れました。まとめると危ないのです。バラバラのまま数えるのが安全です。

問題2の解答

玉は全部で9個。すべて区別して数えます。全体は 通り。

(1) 赤4個から3個: 通り。

(2) 赤・白・青から1個ずつ: 通り。

(3) 余事象「1個も赤でない」=赤以外の5個から3個: 通り。

問題3の解答

2個のさいころは区別して、全体を36通りとします。

(1) 和が7: の6通り。

(2) 積が偶数の余事象は「積が奇数」=「両方とも奇数」。奇数の目は3個なので 通り。

(3) 余事象は「両方とも6でない」= 通り。

(3) を「6が出るのは一方が 、もう一方も だから足して 」とやると間違いです。両方6の場合を二重に数えているから。加法定理で書けば で、たしかに一致します。

問題4の解答

(1) A は10本から1本引き、そのうち3本が当たり。

(2) B が当たるのは、次の2つの場合です(排反)。

  • A が当たり、B も当たり:
  • A がはずれ、B が当たり:

(3) A と B の当たる確率が同じです。「先に引いたほうが有利」という直感は間違いだった、ということになります。

理由を対応で説明できます。10本のくじを1列に並べて、A が1本目、B が2本目を取ると考えます。並べ方は 通りで、どれも同様に確からしい。このとき「1本目が当たり」である並べ方と「2本目が当たり」である並べ方は、1本目と2本目を入れ替えるという1対1対応でぴったり対応します。だから個数が等しく、確率も等しい。

これは「くじ引きの順番は結果に影響しない」という有名な事実です。入試でも頻出なので、結果だけでなく理由(対応で説明できること)まで押さえておいてください。

問題5の解答

3の倍数は 個、4の倍数は 個、12の倍数(両方)は 個。加法定理より

答え:

問題6の解答

全体は 通り。

(1) 女子2人を1つのかたまりとみなすと、4個のものの並べ方 通り。かたまりの中で女子2人の並び方が 通り。

(2) 両端に男子を並べる:男子3人から2人を選んで並べるので 通り。真ん中3か所に残り3人を並べて 通り。

問題7の解答

余事象は「4回とも6以外」。各回とも なので

答え:(約

「6回投げれば1回は出るだろう」という直感を確かめてみましょう。6回なら 約66.5%であって、100%ではありません。「6分の1だから6回で1回」というのは平均の話であって、確率が1になるわけではないのです。

問題8の解答

余事象「5人の誕生曜日がすべて異なる」を計算します。

1人目はどの曜日でもよい()。2人目は残り6曜日()。3人目は 、4人目は 、5人目は

すべて異なる確率は

したがって求める確率は

答え:(約

たった5人で85%。しかも7曜日しかないので、8人いれば確率1になります(鳩の巣原理)。誕生日問題の直感の狂いが、小さい数だとよく見えます。

問題9の解答

赤を 、白を と区別します。

(1) 順序を区別しない

  • 全体: 通り
  • 2個とも赤: 通り

(2) 順序を区別する

  • 全体: 通り
  • 2個とも赤: 通り

一致しました。

なぜ一致するのか。分母も分子も、順序を区別するとちょうど2倍になるからです。分母と分子が同じ倍率で増えるので、割り算すれば消える。

逆に言えば、分母だけ2倍にして分子はそのまま、というのが「ルールを混ぜる」という事故です。 は、どちらも間違いになります。

よくある誤解

誤解1:問題文に「区別しない」とあるから、確率でも区別しない
確率では区別します。物理的に別のものなら、それぞれが同じ確率で選ばれるからです。

誤解2:分母と分子で数え方を変える
片方を 、もう片方を で数えると必ず間違えます。どちらかに統一してください。

誤解3:「少なくとも一方」を単純に足す
両方の場合を二重に数えます。加法定理で引くか、余事象を使ってください。

誤解4:確率 だから6回で必ず1回起こると思う
6回で少なくとも1回起こる確率は約66.5%です。「平均」と「確率」は別の概念です。

よくある質問

Q. 「同時に取り出す」と「1個ずつ取り出す」で答えは変わりますか?

変わりません(取り出した玉を戻さない場合)。問題9で見たとおり、順序を区別するかどうかは分母と分子で相殺されます。だから計算しやすいほうで数えてよいのです。ただし途中で条件が変わる問題(問題4のような)では、順序を区別して考えたほうが見通しがよくなります。

Q. 確率の問題で、まず何をすればいいですか?

「何が同様に確からしいか」を決めることです。これを1行書いてから数え始めてください。「2個のさいころの目の組36通りは同様に確からしい」と書く。この一行が、事故を防ぎます。

Q. 答えが正しいか、どう確かめますか?

余事象と足して1になるかを確かめる。②別の数え方でもう一度計算する。③極端な場合を考える(全部当たりなら確率1になるか、など)。この3つで、ほとんどのミスは見つかります。

次の章へ

確率の土台ができました。次の第15章では条件付き確率を扱います。「情報が増えると、確率はどう変わるのか」。ここは大人でも間違える分野で、実際に医療や裁判の現場でも誤りが起きています。そして「独立」とは何かを、定義から正確に押さえます。

第13章:数え上げの技術──重複・仕切り・対応づけ
第15章:条件付き確率と独立──情報が増えると何が変わるか
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