数学の勉強法 / 数学の原理(無料講座)

【第15章】条件付き確率と独立──情報が増えると何が変わるか

数強塾グループの一流講師陣 一流のライブ授業×最高品質の映像授業×サボれないコーチング

数強塾オリジナル無料講座『数学の原理』第15章
条件付き確率は、公式を覚えるだけなら3秒で終わります。でも意味を取り違えると、大人でも間違えます。実際、医療や裁判の現場でこの誤りが起きています。この章の芯は1つ。条件付き確率とは、全体集合を取り替えることである。第1章でやった「全体集合」が、ここで効いてきます。

情報が増えると、確率は変わる

藤原です。第15章です。

さいころを1個投げます。出た目が である確率は ですね。

ここで、友達がさいころを覗き込んで「偶数だったよ」と教えてくれたとします。さて、 である確率は、いくつになったでしょうか。

偶数だと分かった時点で、可能性は の3つに絞られました。そのどれもが同じくらい起こりやすい。だから

確率が から に変わりました。さいころは何も変わっていないのに、です。

何が変わったのか。私たちが考えている「全体」が変わったのです。

条件付き確率とは、全体集合を取り替えることである。
が起こったという条件のもとで が起こる確率」 とは、
全体を に取り替えて、その中で の占める割合を測ったもの。

第1章で「条件には全体集合がセットでついてくる」と言いました。確率でもまったく同じです。全体集合が変われば、割合も変わる。当たり前のことを言っているだけです。

定義式は、絵を見れば当たり前

教科書の定義はこうです。

ベン図で確認しましょう。全体を に取り替えたので、分母は の大きさ。そして の中で にも入っている部分は 。だから が、新しい全体の中での割合になります。

全体(もとの標本空間) A B A∩B 分母を「全体」から「B」に取り替えるのが条件付き確率

この式を移項すると、乗法定理になります。

言葉にすると「まず が起こり、その状況で が起こる」。順番に起こることの確率は、掛け算でつないでいくということです。

「独立」とは、情報が役に立たないということ

次に「独立」です。教科書の定義は

ですが、これだと何のことか分かりません。条件付き確率で書き直すと、意味が見えます。

のとき、定義式の両辺を で割ると

左辺は ですから

が独立 ⟺ 
つまり、 が起こった」と教えてもらっても、 の確率がまったく変わらないということ。
情報が役に立たない。それが「独立」です。

さっきのさいころで確かめましょう。=「 が出る」、=「偶数が出る」とすると、 なのに 変わったので、独立ではありません。

では独立な例は。=「偶数が出る」、=「 以下が出る」としてみます。

  • なので

。一致するので独立です。

実際 。「4以下だよ」と教えられても、偶数である確率は のまま変わりません。

「排反」と「独立」は、まったくの別物

ここは絶対に混同してはいけません。

排反 (同時には起こらない)
独立 (一方の情報が他方に影響しない)

むしろ排反なら、ふつう独立ではありません。なぜか。

排反だと です。もし独立でもあるなら となり、どちらかの確率が でなければなりません。

直感的にはこうです。排反なら、「 が起こった」と聞いた瞬間に「じゃあ は起こっていない」と分かってしまう。情報が超役に立っている。これほど独立から遠い関係はありません。

世の中で本当に間違えられている例──検査の話

ここからが、この章のいちばん大事なところです。

例題 ある病気の検査について、次のことが分かっている。

  • この病気にかかっている人は、全体の
  • 病気の人が検査を受けると、 が陽性になる
  • 病気でない人が検査を受けても、 が陽性になってしまう(偽陽性)

ある人が検査を受けて陽性だった。この人が本当に病気である確率を求めよ。

直感で答えると「99%くらいでは?」と思うのではないでしょうか。実際に計算します。

1万人が検査を受けたとして、人数で考えるのが分かりやすいです。

  • 病気の人:
      うち陽性:
  • 病気でない人:
      うち陽性:

陽性になった人は合計 人。そのうち本当に病気なのは 人。

答え:(約

陽性と言われても、本当に病気である確率は6分の1。直感の99%とは、まったく違います。

なぜこうなるのか。もともと病気の人が非常に少ないからです。病気でない人が9900人もいるので、そのうちの5%(495人)だけで、病気の人の陽性者(99人)を圧倒してしまう。

「病気の人が陽性になる確率」と「陽性の人が病気である確率」は、まったく別のもの。
この2つを取り違えるのが、条件付き確率でいちばん多い、そして社会的にも重大な誤りです。条件付き確率は、条件と結論をひっくり返せません。

この計算を式でやるとベイズの定理になります。病気である事象を 、陽性である事象を とすると

分母は「陽性になるすべての道すじ」を足したものです。公式を覚えるより、さっきの人数計算のほうが確実なので、実戦では表を書くことをおすすめします。

独立の応用──反復試行

最後に、独立がいちばん活躍する場面を見ておきます。

同じ試行を 回くり返し、各回は互いに独立で、1回あたり確率 で「成功」するとします。このときちょうど 回成功する確率

なぜこの形か、分解して見ましょう。

  • 成功が 回、失敗が 回。独立なので、確率は掛け算で
  • ただし「どの回が成功だったか」の並び方が 通りある
  • それらは互いに排反なので足す。ただし同じ値が 個あるので、結局は掛け算で書ける

独立だから掛け算、排反だから足し算。この章で学んだ2つの概念が、そのまま式の形になっています。次章の二項定理とも直結します。

【原理】この章の芯

① 条件付き確率とは、全体集合を取り替えること。
② 独立とは「情報を得ても確率が変わらない」こと。
③ 排反と独立はまったくの別物。排反はむしろ独立から最も遠い。
は別物。ひっくり返せない。
⑤ 独立なら掛け算、排反なら足し算。

オリジナル問題で確かめる

問題1(条件付き確率の基本)

さいころを1個投げる。次の確率を求めよ。

  1. 出た目が の倍数であるという条件のもとで、偶数である確率
  2. 出た目が偶数であるという条件のもとで、 の倍数である確率
  3. (1) と (2) が異なる理由を説明せよ。

問題2(独立かどうかの判定)

さいころを1個投げる。次の2つの事象は独立か。

  1. :偶数が出る   以下が出る
  2. :偶数が出る   以下が出る
  3. が出る   が出る

問題3(乗法定理・くじ)

10本のくじの中に当たりが4本ある。引いたくじは戻さないものとして、2本続けて引くとき、次の確率を求めよ。

  1. 2本とも当たりである確率
  2. 1本目が当たりで2本目がはずれである確率
  3. 2本目が当たりである確率

問題4(条件付き確率・くじ)

問題3の設定で、2本目が当たりだったという条件のもとで、1本目も当たりであった確率を求めよ。

問題5(検査の問題)

ある病気にかかっている人は全体の である。この病気の検査では、病気の人は が陽性になり、病気でない人も が陽性になる。ある人が陽性だったとき、その人が本当に病気である確率を求めよ。

問題6(2つの箱・原因の確率)

箱 A には赤玉3個と白玉2個、箱 B には赤玉1個と白玉4個が入っている。まずさいころを投げ、 が出たら箱 A、それ以外なら箱 B を選び、その箱から玉を1個取り出す。

  1. 赤玉が出る確率を求めよ。
  2. 赤玉が出たとき、それが箱 A から取り出されたものである確率を求めよ。

問題7(反復試行)

さいころを5回投げるとき、次の確率を求めよ。

  1. の目がちょうど2回出る確率
  2. の目が2回以上出る確率

問題8(排反と独立)

とする。

  1. が排反であるとき、 を求めよ。
  2. が独立であるとき、 を求めよ。
  3. が排反かつ独立であることはありうるか。

問題9(総合)

3人の生徒 A, B, C がそれぞれ独立に、ある問題を解く。正解する確率は A が 、B が 、C が である。

  1. 3人とも正解する確率を求めよ。
  2. 少なくとも1人が正解する確率を求めよ。
  3. ちょうど1人が正解する確率を求めよ。

解答と解説

問題1の解答

(1)  の倍数は の2通り。全体をこれに取り替えると、そのうち偶数は だけ。

(2) 偶数は の3通り。そのうち の倍数は だけ。

(3) 分母(=取り替えた後の全体)が違うからです。(1) は分母が2通り、(2) は分母が3通り。分子はどちらも「 が出る」の1通りで同じですが、割る数が違うので値が変わります。

これが「 は別物」の、いちばん簡単な実例です。

問題2の解答

(1)  なので

なので独立でない

(2)  なので

で一致するので独立

(3)  なので 。一方 独立でない(排反)。

(1) と (2) の違いに注目してください。「3以下」と「4以下」、たった1つ違うだけで独立性が変わりました。独立かどうかは、直感では判断できません。必ず計算してください。

問題3の解答

(1) 乗法定理で順につなぎます。

(2)

(3) 1本目が当たりの場合とはずれの場合に分けます(排反)。

1本目が当たる確率も やはり同じです(第14章の問題4と同じ現象)。

問題4の解答

「2本目が当たり」を 、「1本目が当たり」を とします。求めるのは

は「2本とも当たり」なので問題3(1) より は問題3(3) より

答え:

面白いのは、「後で起きたこと」から「先に起きたこと」の確率を求めている点です。時間の流れとは逆向きですが、数学的には何の問題もありません。条件付き確率に時間の向きは関係ないのです。

問題5の解答

1万人で考えます。

  • 病気: 人 → 陽性
  • 病気でない: 人 → 陽性

陽性は合計 人。そのうち本当に病気なのは 人。

答え:(約

やはり直感よりずっと低い。「陽性 → ほぼ確実に病気」という思い込みは、数学的に誤りです。だから実際の医療では、精度の高い二次検査を組み合わせます。

問題6の解答

(1) 箱 A を選ぶ確率は 、箱 B は

  • A を選んで赤:
  • B を選んで赤:

赤玉が出る事象を とします。この2つは排反なので足して

(2) 箱 A を選ぶ事象を とすると、求めるのは

答え:(1)  (2)

「赤玉が出た」という結果から、「どちらの箱だったか」という原因を推測しています。だから原因の確率と呼ばれます。もともと箱 A が選ばれる確率は でしたが、赤玉という情報を得たことで に上がりました。赤玉は箱 A に多いので、赤が出たら A だった可能性が高まる。直感とも合っています。

問題7の解答

(1)  として

答え:(約

(2) 「2回以上」の余事象は「0回または1回」です。

  • 0回:
  • 1回:

(偶然この2つが等しくなりました。)よって

答え:(約

問題8の解答

(1) 排反なら なので

(2) 独立なら なので

(3) ありえません。排反なら 、独立なら 。矛盾します。

(1) と (2) で答えが違うことを、しっかり味わってください。「排反」と「独立」は、確率の値そのものを変えます。問題文にどちらが書いてあるかを、必ず確認してください。

問題9の解答

3人は独立なので、掛け算でつなげます。

(1)

(2) 余事象は「3人とも不正解」。それぞれの不正解の確率は なので

(3) 誰が正解するかで3通りに場合分け(排反)。

  • A だけ:
  • B だけ:
  • C だけ:

答え:(1)  (2)  (3)

検算しましょう。正解者数が 0, 1, 2, 3 人の確率を全部足すと1になるはずです。0人は 、1人は 、3人は 。したがって2人は より 。実際に計算すると、A・B が正解で C が不正解は 、A・C は 、B・C は 。合計 ぴったり合いました。

よくある誤解

誤解1: を同じだと思う
まったく違います。検査の問題がその典型で、社会的にも重大な誤りにつながります。

誤解2:排反なら独立だと思う
逆です。排反は「一方が起これば他方は起こらない」=情報が最大限役に立つ状態で、独立とは正反対です。

誤解3:独立かどうかを直感で決める
問題2の (1)(2) のように、少し条件が変わるだけで独立性は変わります。必ず を確認してください。

誤解4:反復試行で を掛け忘れる
「どの回が成功だったか」の並び方の分だけ、場合があります。掛け忘れると答えが小さくなります。

よくある質問

Q. 条件付き確率の問題を解くコツはありますか?

人数の表を書くのがいちばん確実です。「全体1万人」として、条件ごとに人数を書き込む。分数のまま計算するより、はるかに間違えにくくなります。検査の問題は、この方法なら小学生でも解けます。

Q. 「独立」は問題文に書いてありますか?

たいてい書いてあります(「独立に」「無作為に」「それぞれ別々に」など)。書いていない場合は、状況から判断します。玉を戻せば独立、戻さなければ独立ではない。これが典型的な判断ポイントです。

Q. ベイズの定理は覚えるべきですか?

覚えなくて構いません。 さえあれば、その場で作れます。分母の を「B が起こる全部の道すじの和」として計算する、それだけです。

次の章へ

第2部の最後、第16章は二項定理です。 の展開係数がなぜ になるのか。それは「展開するときに何が起きているか」を数えているだけです。そして、この章の反復試行の式と二項定理が同じ形をしている理由も分かります。

第14章:「確率」のいちばん大切なこと──「同様に確からしい」を疑う
第16章:二項定理は「展開して数えているだけ」
『数学の原理』全24章の目次に戻る

オンライン数学専門塾 数強塾|プロ講師のみ・完全1対1指導・中高一貫校対応

数強塾オンラインのご案内

体験授業に申し込む入塾受け入れ状況(残席)数学つまずき診断(無料)体験授業の事前案内保護者の方へ高1・高2の方へ医学部志望の方へ保護者様からの声料金・指導システム指導事例・合格実績大学受験 合格実績(集計ルール開示)数強塾グループの理念学校別の数学対策数学の勉強法(記事一覧)数強塾プレミアム(映像授業)獣医学部専門コース鉄緑会・SAPIX等との併用サポート過去問解説・数学問題集情報Ⅰ・情報Ⅱ専門「情報ラボ」情報の過去問アーカイブ(無料PDF)解法テクニック事典(公式・裏ワザ)入試数学の定石(解き方の型・全27章)2026年 夏期講習会2026年 冬期講習会代表・藤原進之介について