- 実数 \(x\) に対して \(x^2\) を対応させる
- 実数 \(y\) に対して、\(x^2 = y\) を満たす \(x\) を対応させる
- 整数 \(n\) に対して、\(n\) の正の約数の個数を対応させる
数強塾オリジナル無料講座『数学の原理』第17章
第3部のはじまりです。「関数」という言葉を、あなたはどう説明しますか。「\(y = 2x+1\) みたいな式」——それは関数の書き方であって、関数そのものではありません。関数の正体は「対応」です。この見方に切り替えると、入試最難関の逆像法・通過領域が、次章から一気に見えるようになります。
関数とは、式ではなく「対応」である
藤原です。第17章です。
中学校で「関数」を習ったとき、こう教わったはずです。「\(x\) の値を決めると \(y\) の値がただ1つ決まるとき、\(y\) は \(x\) の関数である」。
この定義、実はとても正確です。式の形は、どこにも出てきていないことに注目してください。
関数とは、あるものを入れると、何かがただ1つ出てくる「箱」である。
入れるもの全体を定義域、出てくるもの全体を値域という。
数学では、この「対応」のことを写像と呼ぶ。
「ただ1つ」というのが命です。同じものを入れたのに、出てくるものが日によって違ったら、それは関数ではありません。
身近な例で考えてみましょう。
- 関数である例:「生徒 → その生徒の出席番号」。生徒を1人決めれば、番号は1つに決まる。
- 関数でない例:「出席番号 → その番号の生徒が持っている本」。何冊も持っているかもしれないので、1つに決まらない。
この「入れると1つ出てくる」という感覚が、関数の本体です。式はその対応を書き表す手段にすぎません。
グラフとは、対応を絵にしたもの
では、グラフとは何でしょうか。
関数 \(f\) が「\(x\) を入れると \(f(x)\) が出る」対応だとすると、定義域を \(D\) として、グラフとは次の集合のことです。
\[\{\, (x,\ y) \mid x \in D, \ y = f(x) \,\}\]
つまり「入れたもの」と「出てきたもの」のペアを、全部平面にプロットしたものがグラフです。
ここから、有名な判定法が出てきます。
【縦線判定】 ある図形が関数のグラフであるための必要十分条件は、
どの縦線とも、共有点が1個以下であること。
なぜか。縦線 \(x = a\) との共有点が2個以上あったら、「\(a\) を入れたのに2つ出てきた」ことになり、関数の定義に反するからです。
だから、円 \(x^2+y^2=1\) は関数のグラフではありません(\(x=0\) の縦線と2点で交わる)。でも上半分 \(y = \sqrt{1-x^2}\) だけなら関数です。「ルートを取ると正のほうだけ」という約束の意味が、ここで分かります。
2つの向き──「順像」と「逆像」
ここからが、この章の核心です。
関数は「入れる → 出る」という向きを持っています。だから、問いかけにも2つの向きがあります。
【順像の問い】 \(x\) が \(D\) を動くとき、\(f(x)\) はどんな値を取るか?
→ 入力を動かして、出力の集まりを調べる(値域を求める)
【逆像の問い】 \(f(x) = k\) となる \(x\) は存在するか?
→ 出力を1つ固定して、そこに来る入力があるか調べる
この2つ、実はまったく同じことを聞いています。
\(k\) が値域に入っている ⟺ \(f(x) = k\) を満たす \(x\) が \(D\) の中に存在する
左は順像の言葉、右は逆像の言葉。同じ事実の言い換えです。
そして、入試では圧倒的に右の言い方のほうが強い。なぜなら、右は第3章でやった「存在する」の問題に翻訳されており、私たちはもう「存在する=真理集合が空でない」という道具を持っているからです。
実例で、2つの向きを比べる
例題 \(x\) が実数全体を動くとき、\(y = \dfrac{x}{x^2+1}\) の値域を求めよ。
順像でやる(入力を動かす)
微分して増減を調べる、というのが定石です。でも計算がやや面倒ですし、そもそも微分を習っていないと使えません。
逆像でやる(出力を固定する)
「\(k\) が値域に入る」とは「\(\dfrac{x}{x^2+1} = k\) を満たす実数 \(x\) が存在する」ということ。分母は \(x^2+1 \ge 1 \gt 0\) なので、払っても同値です(第5章)。
\[x = k(x^2+1)\]
\[kx^2 – x + k = 0\]
この方程式が実数解を持つような \(k\) を求めればよい。ここで \(k\) が \(0\) かどうかで場合分けします(\(k=0\) だと2次方程式でなくなるため)。
(i) \(k = 0\) のとき:\(-x = 0\) より \(x=0\)。実数解があるので \(k=0\) は値域に入る。
(ii) \(k \ne 0\) のとき:2次方程式なので、判別式が0以上であればよい。
\[D = 1 – 4k^2 \ge 0\]
\[k^2 \le \frac{1}{4}\]
\[-\frac{1}{2} \le k \le \frac{1}{2}\]
(i)(ii) を合わせて
\[-\frac{1}{2} \le k \le \frac{1}{2}\]
答え:\(-\dfrac{1}{2} \le y \le \dfrac{1}{2}\)
微分を一切使わずに、値域が出ました。「値域を求める」を「実数解が存在する条件」に翻訳したのが効いています。これが次章でやる逆像法の原型です。
この解法での最大の落とし穴が、(i) の場合分けです。「2次方程式だから判別式」と機械的にやると、\(k=0\) のとき2次でなくなることを見落とします。「2次方程式」と言うためには、最高次の係数が0でないことが必要。これは毎回確認してください。
合成と逆──対応をつなぐ、対応をひっくり返す
対応として見ると、次の2つの操作が自然に理解できます。
合成関数 \(g \circ f\)
「\(f\) の箱に入れて、出てきたものを \(g\) の箱に入れる」。ただ2つの箱をつないだだけです。
\[(g \circ f)(x) = g(f(x))\]
注意点は順序。\(g \circ f\) は「先に \(f\)」です。書く順番と実行の順番が逆なので、慣れるまで混乱します。
もう1つの注意点は定義域。\(f(x)\) が \(g\) の定義域に入っていないと、\(g\) の箱に入れられません。たとえば \(f(x) = x – 3\)、\(g(x) = \sqrt{x}\) なら、\(g(f(x)) = \sqrt{x-3}\) は \(x \ge 3\) でしか定義されません。
逆関数 \(f^{-1}\)
「出てきたものから、入れたものを当てる」。矢印を逆向きにする操作です。
ただし、いつでもできるわけではありません。矢印を逆にしたときに「ただ1つ」が保たれる必要があります。
逆関数が存在する ⟺ 異なる入力からは、必ず異なる出力が出る
(これを1対1(単射)といいます)
たとえば \(f(x) = x^2\) を実数全体で考えると、\(f(2) = f(-2) = 4\)。「4が出た」と聞いても、入れたのが \(2\) か \(-2\) か分かりません。だから逆関数が作れない。
そこで定義域を \(x \ge 0\) に制限すると、1対1になって逆関数 \(\sqrt{x}\) が作れます。「\(\sqrt{\ }\) の定義域が \(x \ge 0\)、値も \(0\) 以上」というルールの理由が、ここにあります。
そして、逆関数のグラフについて有名な事実があります。
\(y = f^{-1}(x)\) のグラフは、\(y = f(x)\) のグラフを直線 \(y=x\) について折り返したもの。
理由は簡単です。\(y = f(x)\) 上の点 \((a,\ b)\) は「\(a\) を入れたら \(b\) が出た」を意味します。逆関数では「\(b\) を入れたら \(a\) が出る」なので、点 \((b,\ a)\)。座標を入れ替えるのは、\(y=x\) についての対称移動そのものです。
【原理】この章の芯
① 関数とは式ではなく「対応」。入れると1つ出てくる箱。
② グラフは対応を絵にしたもの。縦線と2回交われば関数ではない。
③ 「値域を求める」=「\(f(x)=k\) を満たす \(x\) が存在する \(k\) を求める」。
④ 合成は箱をつなぐこと。定義域の確認を忘れない。
⑤ 逆関数が作れるのは、対応が1対1のときだけ。グラフは \(y=x\) 対称。
オリジナル問題で確かめる
問題1(関数かどうか)
次の対応は関数といえるか。理由も述べよ。
- 実数 \(x\) に対して \(x^2\) を対応させる
- 実数 \(y\) に対して、\(x^2 = y\) を満たす \(x\) を対応させる
- 整数 \(n\) に対して、\(n\) の正の約数の個数を対応させる
問題2(定義域と値域)
次の関数の定義域と値域を求めよ。
- \(f(x) = \sqrt{x-2}\)
- \(f(x) = \dfrac{1}{x-1}\)
- \(f(x) = x^2 – 4x + 1\)(定義域は実数全体)
問題3(逆像で値域を求める・基本)
\(x\) が実数全体を動くとき、\(y = \dfrac{2x}{x^2+1}\) の値域を求めよ。
問題4(逆像で値域を求める・分数関数)
\(x\) が実数全体を動くとき、\(y = \dfrac{x^2+1}{x^2+x+1}\) の値域を求めよ。
問題5(合成関数)
\(f(x) = 2x + 1\)、\(g(x) = x^2\) とする。
- \((g \circ f)(x)\) を求めよ。
- \((f \circ g)(x)\) を求めよ。
- \((g \circ f)(x) = (f \circ g)(x)\) となる \(x\) をすべて求めよ。
問題6(合成と定義域)
\(f(x) = x – 3\)、\(g(x) = \sqrt{x}\) とする。\((g \circ f)(x)\) と \((f \circ g)(x)\) について、それぞれ式と定義域を求めよ。
問題7(逆関数)
次の関数の逆関数を求めよ。定義域も明示すること。
- \(f(x) = 3x – 2\)
- \(f(x) = x^2\)(定義域 \(x \ge 0\))
- \(f(x) = \dfrac{2x+1}{x-1}\)(定義域 \(x \ne 1\))
問題8(逆関数の性質)
関数 \(f(x) = x^3 + x\)(定義域は実数全体)について、次を示せ。
- \(f\) は1対1である(すなわち逆関数をもつ)。
- \(y = f(x)\) と \(y = f^{-1}(x)\) のグラフの共有点は、直線 \(y = x\) 上にしかないことを示せ。
問題9(値域と存在条件・入試の入口)
実数 \(a\) に対し、方程式 \(x^2 – ax + a = 0\) が実数解を持つとする。このとき、その解のうち少なくとも1つが \(0 \le x \le 2\) の範囲にあるような \(a\) の範囲を求めよ。
解答と解説
問題1の解答
- 関数である。\(x\) を1つ決めれば \(x^2\) は1つに決まる。
- 関数でない。たとえば \(y=4\) に対して \(x = 2\) と \(x=-2\) の2つが対応してしまう。さらに \(y = -1\) に対しては1つも対応しない(実数の範囲では)。「1つに決まる」が2重に破れています。
- 関数である。約数の個数は必ず1つの整数に決まる(ただし \(n \ne 0\) とする必要があります。\(0\) の約数は無限個あるので)。
(3) のように、式で書けなくても関数です。「約数の個数」は簡単な式では書けませんが、対応としては立派な関数。関数=式、という思い込みを捨てるのが、この章の目的です。
問題2の解答
(1) ルートの中は0以上なので定義域は \(x \ge 2\)。値域は、\(x-2\) が \(0\) 以上のすべての値を取るので \(y \ge 0\)。
(2) 分母が0でないので定義域は \(x \ne 1\)。値域は \(y \ne 0\)(分子が1なので、値が0になることはない)。
(3) 定義域は実数全体。平方完成すると \(f(x) = (x-2)^2 – 3\) なので値域は \(y \ge -3\)。
(2) で「値域は実数全体」と答えてしまう人が多い。\(\dfrac{1}{x-1}\) は決して0にならないのがポイントです。値域も、定義域と同じくらい丁寧に考えてください。
問題3の解答
\(k\) が値域に入る条件は、\(\dfrac{2x}{x^2+1} = k\) を満たす実数 \(x\) が存在すること。分母は常に正なので払えて
\[kx^2 – 2x + k = 0\]
(i) \(k=0\):\(-2x = 0\) より \(x=0\)。実数解があるので \(k=0\) は値域に入る。
(ii) \(k \ne 0\):2次方程式なので判別式で判定します。
\[\frac{D}{4} = 1 – k^2 \ge 0\]
\[-1 \le k \le 1\]
(i)(ii) を合わせて
答え:\(-1 \le y \le 1\)
検算:\(x=1\) のとき \(y = \dfrac{2}{2} = 1\)。たしかに最大値1を取ります。\(x=-1\) のとき \(y=-1\)。合っています。
問題4の解答
まず分母を確認します。\(x^2+x+1 = \left(x+\dfrac12\right)^2 + \dfrac34 \gt 0\) なので、いつでも払えます。
\(\dfrac{x^2+1}{x^2+x+1} = k\) より
\[x^2 + 1 = k(x^2+x+1)\]
\[(1-k)x^2 – kx + (1-k) = 0\]
(i) \(k=1\) のとき:\(-x = 0\) より \(x=0\)。実数解があるので \(k=1\) は値域に入る。
(ii) \(k \ne 1\) のとき:2次方程式なので
\[D = k^2 – 4(1-k)^2 \ge 0\]
これは \(A^2 – B^2\) の形なので因数分解します。
\[\{k – 2(1-k)\}\{k + 2(1-k)\} \ge 0\]
\[(3k-2)(2-k) \ge 0\]
両辺に \(-1\) を掛けて \((3k-2)(k-2) \le 0\)。よって
\[\frac{2}{3} \le k \le 2\]
\(k \ne 1\) の条件は、(i) で \(k=1\) が入ることを確認済みなので、合わせると
答え:\(\dfrac{2}{3} \le y \le 2\)
検算:\(x=0\) のとき \(y = \dfrac{1}{1} = 1\)。範囲内です。\(x=1\) のとき \(y = \dfrac{2}{3}\)。ちょうど下限です。\(x=-1\) のとき \(y = \dfrac{2}{1} = 2\)。ちょうど上限。両端が実現できているので、答えは正しそうです。
問題5の解答
(1) \((g \circ f)(x) = g(f(x)) = g(2x+1) = (2x+1)^2 = 4x^2+4x+1\)
(2) \((f \circ g)(x) = f(g(x)) = f(x^2) = 2x^2 + 1\)
(3) 等しいとすると
\[4x^2+4x+1 = 2x^2+1\]
\[2x^2 + 4x = 0\]
\[2x(x+2) = 0\]
答え:\(x = 0,\ -2\)
(1) と (2) が違うことに注目してください。合成の順序を変えると、別の関数になります。掛け算とは違って交換法則が成り立たない。ここは必ず順序を確認してください。
問題6の解答
\((g \circ f)(x)\):先に \(f\) なので \(f(x) = x-3\)。これを \(g\) に入れて \(\sqrt{x-3}\)。
定義域は、\(g\) の定義域が \(x \ge 0\) なので、\(f(x) = x-3 \ge 0\)、つまり \(x \ge 3\)。
\((f \circ g)(x)\):先に \(g\) なので \(\sqrt{x}\)。これを \(f\) に入れて \(\sqrt{x} – 3\)。
定義域は、\(g\) が定義されるための \(x \ge 0\)。
合成関数の定義域は、必ず「先にやるほう」から順に条件を積み上げてください。式だけ見て「ルートの中が0以上」と機械的にやると、合成の順序を間違えます。
問題7の解答
逆関数を求める手順は、①\(y = f(x)\) とおく ②\(x\) について解く ③\(x\) と \(y\) を入れ替える、です。
(1) \(y = 3x-2\) より \(x = \dfrac{y+2}{3}\)。入れ替えて
\[f^{-1}(x) = \frac{x+2}{3}\]
定義域は実数全体。
(2) \(y = x^2\)(\(x \ge 0\))より \(x = \sqrt{y}\)(\(x \ge 0\) なので正のほうを取ります)。入れ替えて
\[f^{-1}(x) = \sqrt{x}\]
定義域は、もとの関数の値域だったので \(x \ge 0\)。
(3) \(y = \dfrac{2x+1}{x-1}\) より \(y(x-1) = 2x+1\)。
\[yx – y = 2x + 1\]
\[(y-2)x = y + 1\]
\(y \ne 2\) のとき \(x = \dfrac{y+1}{y-2}\)。入れ替えて
\[f^{-1}(x) = \frac{x+1}{x-2}\]
定義域は \(x \ne 2\)。
ここで「もとの関数の値域が \(y \ne 2\) だった」ことが確認できます。実際 \(\dfrac{2x+1}{x-1} = \dfrac{2(x-1)+3}{x-1} = 2 + \dfrac{3}{x-1}\) なので、値は決して2になりません。逆関数の定義域=もとの関数の値域、という関係が、ここでも成り立っています。
問題8の解答
(1) \(a \ne b\) のとき \(f(a) \ne f(b)\) を示します。
\[f(a) – f(b) = (a^3 – b^3) + (a-b) = (a-b)(a^2+ab+b^2) + (a-b)\]
\[= (a-b)(a^2+ab+b^2+1)\]
ここで、後ろのカッコの中を平方完成します。
\[a^2 + ab + b^2 + 1 = \left(a + \frac{b}{2}\right)^2 + \frac{3}{4}b^2 + 1 \gt 0\]
(2乗が2つと正の数の和なので、必ず正。)
したがって \(a \ne b\) なら \(a – b \ne 0\) で、後ろのカッコも0でないので \(f(a) – f(b) \ne 0\)。よって \(f\) は1対1であり、逆関数をもつ。(証明終)
(2) まず、\(y=f(x)\) と \(y=f^{-1}(x)\) のグラフは \(y=x\) について対称であることに注意します。
共有点 \((p,\ q)\) があったとします。この点は \(y=f(x)\) 上にあるので \(q = f(p)\)。また \(y=f^{-1}(x)\) 上にもあるので \(q = f^{-1}(p)\)、すなわち \(p = f(q)\)。
ここで、もし \(p \ne q\) だったとしましょう。\(f\) は1対1で、しかも \(f(x) = x^3+x\) は単調増加です((1) の計算で \(a \gt b\) なら \(f(a) \gt f(b)\) が分かります)。
- \(p \lt q\) なら、\(f\) が増加なので \(f(p) \lt f(q)\)、つまり \(q \lt p\)。矛盾。
- \(p \gt q\) なら、同様に \(q \gt p\)。矛盾。
どちらも矛盾するので \(p = q\)。よって共有点は直線 \(y=x\) 上にしかない。(証明終)
この事実は入試で頻出です。「\(y=f(x)\) と \(y=f^{-1}(x)\) の交点を求めよ」と言われたら、\(f\) が単調増加なら \(f(x) = x\) を解けばよい。ただし単調減少の場合は \(y=x\) 上にない交点もありうるので、この論法がそのまま使えるのは増加のときだけです。ここは要注意です。
問題9の解答
「解の少なくとも1つが範囲内」という条件は、場合分けが煩雑になりがちです。ここでは逆像の発想で処理してみましょう。
\(x^2 – ax + a = 0\) を \(a\) について解きます(\(a\) が1次なので解けます)。
\[x^2 = a(x – 1)\]
(i) \(x = 1\) のとき:左辺は \(1\)、右辺は \(0\) なので成り立ちません。よって \(x = 1\) は解になりえません。
(ii) \(x \ne 1\) のとき:
\[a = \frac{x^2}{x-1}\]
つまり「\(0 \le x \le 2\) かつ \(x \ne 1\) を満たす \(x\) に対して、\(a = \dfrac{x^2}{x-1}\) が取りうる値の範囲」が答えです。これは値域の問題になりました。
\(g(x) = \dfrac{x^2}{x-1}\) とおいて、\(0 \le x \lt 1\) と \(1 \lt x \le 2\) に分けて調べます。
\(0 \le x \lt 1\) のとき:分子 \(x^2 \ge 0\)、分母 \(x-1 \lt 0\) なので \(g(x) \le 0\)。\(x=0\) で \(g=0\)、\(x \to 1\) に近づけると分母が0に近づき \(g \to -\infty\)。実際、この区間で \(g\) は連続で、値は \(0\) から下に限りなく小さくなります。よってこの範囲での値域は \(g(x) \le 0\)。
\(1 \lt x \le 2\) のとき:\(t = x-1\) とおくと \(0 \lt t \le 1\) で
\[g = \frac{(t+1)^2}{t} = t + 2 + \frac{1}{t}\]
\(t \gt 0\) なので相加相乗平均より \(t + \dfrac{1}{t} \ge 2\)(等号は \(t=1\))。よって \(g \ge 4\)。
\(t=1\)(すなわち \(x=2\))で \(g=4\)、\(t\) を0に近づけると \(g \to +\infty\)。したがってこの範囲での値域は \(g \ge 4\)。
2つを合わせて
答え:\(a \le 0\) または \(a \ge 4\)
検算:\(a = 4\) のとき \(x^2-4x+4 = (x-2)^2 = 0\) より \(x=2\)。たしかに範囲内です。\(a=0\) のとき \(x^2 = 0\) より \(x=0\)。これも範囲内。\(a=2\) のとき \(x^2-2x+2=0\) は判別式 \(4-8 \lt 0\) で実数解なし。たしかに不適です。
この「\(a\) について解いて、値域の問題にすり替える」のが、次章でやる逆像法そのものです。場合分けの海に沈むか、値域1本で終わらせるか。この差は大きい。次章で本格的にやります。
よくある誤解
誤解1:関数=式だと思っている
関数は対応です。式で書けなくても関数はあります(約数の個数など)。
誤解2:合成関数の順序を取り違える
\(g \circ f\) は「先に \(f\)」です。書く順と実行順が逆なので注意。
誤解3:分母を払ってできた式を、無条件に2次方程式として扱う
最高次の係数が0になる場合を場合分けしないと、その値を取りこぼします。
誤解4:\(y=f(x)\) と \(y=f^{-1}(x)\) の交点は必ず \(y=x\) 上にあると思う
\(f\) が単調増加のときだけです。減少の場合は例外が起こりえます。
よくある質問
Q. 「写像」という言葉は答案で使っていいですか?
使っても問題ありませんが、高校範囲では「関数」で十分です。この講座で「写像」という言葉を出したのは、「対応」という見方を強調したかったからです。大学で本格的に学ぶときに、この感覚が効いてきます。
Q. 値域を求めるとき、微分と逆像法はどちらがいいですか?
分数関数(分母分子が2次以下)なら逆像法が圧倒的に速いです。それ以外は微分が確実。判断基準は「分母を払ったときに2次方程式になるか」。なれば逆像法、ならなければ微分です。
Q. 逆関数の定義域を書き忘れがちです。
「逆関数の定義域=もとの関数の値域」と覚えてください。これで書き忘れが防げます。式を求めたら、必ず「もとの値域は何だったか」を1秒考える習慣をつけてください。
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関数を「対応」として見る目ができました。次の第18章は、この講座のクライマックスの1つ、逆像法です。「動く文字が2つあって手が出ない」という入試問題を、1文字ずつ順番に処理するという一本の方針で片づけます。難関大の合否を分けるのは、ここです。
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要点辞典この単元の公式・定石・つまずきやすい所は 数学IIIの要点辞典:関数 にまとめてあります。

