数強塾オリジナル無料講座『数学の原理』第21章
第3部の最終章です。「2つの多項式が、いくつかの点で同じ値を取るなら、実は完全に同じ式だった」——これを一致の定理といいます。第4章で使った「係数比較」の根拠が、ここにあります。そして応用として、「接する」とは何かに決着をつけます。「接する=重解」という覚え方の、正しい部分と危ない部分を切り分けましょう。
2点で一致する1次式は、完全に一致する
藤原です。第21章です。
当たり前のことから始めます。2点を通る直線は、ただ1本しかありません。小学校で習いましたね。
これを式で言い直すと、こうなります。
2つの1次以下の式が、異なる2点で同じ値を取るなら、それらは同じ式である
同じことを2次式でやると、どうなるでしょう。3点を通る2次以下の式は、ただ1つに決まる。前章の問題4で、実際にそれを確かめました( の値から余りがただ1つに決まった)。
一般化すると、これです。
【一致の定理】
2つの 次以下の多項式が、相異なる 個の値で同じ値を取るなら、
その2つは完全に同じ多項式である(すべての で一致する)。
なぜそうなるのか──「根の個数」で説明できる
証明は、とてもきれいです。
2つの多項式を とし、どちらも 次以下とします。差を取って とおくと、 も 次以下です。
仮定より、相異なる 個の値 で と が一致するので
つまり は相異なる 個の根をもっています。
ここで、次の事実を使います。
0でない 次多項式の根は、多くても 個
(理由:因数定理より、根が1つ見つかるごとに1次の因数がくくり出せます。だから根が 個あれば 次以上になってしまい、 次以下という条件に反します。)
したがって は「 次以下なのに根が 個」。これが可能なのは が恒等的に0のときだけです。
よって 。(証明終)
第4章で「すべての で ならば 」を、3点代入で示しました。あのとき「十分性を確認せよ」と言いましたね。一致の定理を知っていれば、3点で一致した時点で恒等的に一致すると言い切れます。係数比較という技の、正式な根拠がこれです。
「接する」とは何か
ここからが応用です。
「2つのグラフが接する」という言葉を、あなたはどう定義しますか。「くっついているけど交わらない」……これでは数学になりません。正確にはこうです。
2曲線 と が で接する
⟺ かつ
(同じ点を通り、その点での傾きも同じ)
「点が共有されている」だけでは交わっているだけ。傾きまで一致して、初めて「接する」です。
そして、この条件を式の言葉に翻訳すると、驚くほどきれいになります。
とおくと、条件は
かつ
ここで前章の話が効きます。 なら と書けます(因数定理)。これを微分すると
を代入すると 。これが0ということは、、つまり もまた を因数にもつ。したがって
で接する ⟺ が を因数にもつ
これが「接する=重解」の正体です。「重解」という言葉ではなく、「 で割り切れる」と理解してください。こちらのほうが正確で、応用が利きます。
「接する=重解」の、危ない部分
ここは注意が必要です。
2次関数と直線の場合、「共有点の 座標が重解 ⟺ 接する」は正しく成り立ちます。だから多くの人が「接する=判別式が0」と覚えています。
ところが、3次以上になると話が変わります。
例 と ( 軸)を考えます。
差を取ると 。これは を3重解としてもちます。 を因数にもつので、定義より接しています。
でも、グラフを描いてみてください。 は原点で 軸を突き抜けます。「接する」のに「交差する」。日常語の感覚とはズレますね。
逆向きの注意もあります。「共有点の方程式が重解をもつ」からといって、必ず接するとは限りません。
たとえば と を考えると、差は 。 は2重解なので接しますが、 は単解なのでただ交わっているだけです。
「重解かどうか」は共有点ごとに判定するものであって、方程式全体の判別式で一括判定できるのは2次のときだけ、と覚えてください。
接線の方程式も、この形から出る
曲線 上の点 における接線を求めましょう。
接線は直線なので と書けます(点 を通る傾き の直線)。接する条件は「傾きが一致」なので
【接線の方程式】
公式として覚えている人が多いと思いますが、「その点を通る」+「傾きが 」を式にしただけです。忘れても作れます。
おまけ:積の微分は、なぜあの形なのか
ここで、微分の基本公式を1つ、意味から導いておきます。第22章への橋渡しです。
なぜ足し算の形になるのか。長方形の面積で考えると、一目で分かります。
縦 、横 の長方形の面積が です。ここで を少し( だけ)増やすと、縦も横も少し伸びます。増えた面積は
- 横に伸びた分の帯:(縦 )×( の増加分)
- 縦に伸びた分の帯:( の増加分)×(横 )
- 角の小さい長方形:(増加分)×(増加分)
3つ目は「小さいもの同士の積」なので、 で割って とすると消えます。残る2つが、そのまま です。
じつは第9章でやった差分でも同じ形が出ます。
を変形すると 。微分とそっくりですね。差分と微分が双子だという第9章の話が、ここでも生きています。
【原理】この章の芯
① 次以下の多項式は、 個の点での値で完全に決まる(一致の定理)。
② 証明は「差を取ると、次数より多い根をもつ」だけ。
③ 接するとは「同じ点を通り、傾きも同じ」。
④ 式では「 が を因数にもつ」。
⑤ 「接する=判別式0」が使えるのは2次のときだけ。3次以上は因数の重複度で判定する。
オリジナル問題で確かめる
問題1(一致の定理の直接利用)
2次以下の多項式 が 、、 を満たすとき、 を求めよ。
問題2(恒等式)
すべての実数 について
が成り立つとき、定数 を求めよ。
問題3(接線)
曲線 上の点 における接線の方程式を求めよ。
問題4(接する条件・2次と直線)
放物線 と直線 が接するような定数 の値を、次の2通りの方法で求めよ。
- 判別式を用いる方法
- 「同じ点を通り傾きも一致する」という定義を用いる方法
問題5(接する条件・2曲線)
2つの曲線 と が接するような定数 の値をすべて求めよ。
問題6(因数の重複度で判定する)
曲線 と直線 の共有点をすべて求め、それぞれについて「接している」か「交わっている」かを判定せよ。
問題7(曲線外の点から引く接線)
点 から曲線 に引いた接線の方程式を求めよ。
問題8(一致の定理の応用)
3次以下の多項式 が、 を満たすとする。このとき は恒等的に であることを示せ。
問題9(接する条件と割り算)
3次関数 のグラフが、直線 と点 で接するとき、定数 の値を求めよ。また、この曲線と直線の共有点をすべて求めよ。
解答と解説
問題1の解答
2次以下なので とおけます。3点の値が与えられているので、一致の定理よりただ1つに決まるはずです。
- →
- → →
辺々引いて 、よって 。
答え:
検算: ○ ○ ○
問題2の解答
恒等式なので、都合のよい値を代入します。因数が0になる値を選ぶのがコツです(第4章と同じ)。
- :左辺は 。右辺は 。よって
- :左辺は 。右辺は 。よって
- :左辺は 。右辺は 。よって
十分性の確認:両辺とも2次以下の多項式で、相異なる3点 で一致しました。一致の定理により、恒等的に一致します。
答え:
第4章では「展開して確かめる」という力技で十分性を確認しました。一致の定理を知っていれば、確認が1行で済みます。これが定理を学ぶご利益です。
問題3の解答
とすると 。
なので、接線の傾きは 。点 を通るので
答え:
検算: で、たしかに点 は曲線上にあります ○
問題4の解答
(1) 判別式
より 。接するのは重解のとき(2次なので判別式で判定できます)。
よって 。
(2) 定義から
接点の 座標を とします。
- 同じ点を通る:
- 傾きが一致:
第2式を第1式に代入すると 、つまり 、。
よって 。同じ答えです。
(2) の方法は接点の座標まで同時に分かるのが利点です。 のとき接点 、 のとき接点 。接点を聞かれる問題では、最初から (2) で解くほうが速いです。
問題5の解答
接点の 座標を とおきます。
- 同じ点を通る:
- 傾きが一致:
第2式より 、つまり または 。
- :第1式より
- : より
答え:
検算: のとき より 。 は2重解なので接している ○
のとき より 。 が解なので 。 が2重解なので接している ○
問題6の解答
共有点は 、つまり
したがって共有点の 座標は と 。共有点は と です。
差の式 は、 も も因数にもっています。したがって
答え: でも でも、曲線と直線は接している
実際、 なので、最小値は 。直線 は最小値の高さにある水平線なので、2か所で下から支えているという絵になります。納得できますね。
問題7の解答
接点を文字でおくのが鉄則です。「点 は曲線上にない」ので、接点はどこか別の場所にあります。
接点を とおくと、 より接線の傾きは 。接線の方程式は
これが点 を通るので
実数解は 。よって接線は
答え:
検算:接点は 。 に を入れると ○ を入れると ○
「曲線外の点から接線を引く」問題では、必ず接点を とおいてください。「通る点」を先に使おうとすると、詰まります。接点を主役にするのが、この型の唯一のコツです。
問題8の解答
は3次以下の多項式で、 という相異なる4個の値で になります。
ここで、恒等的に である多項式 を考えると、 も3次以下で、この4点で と一致しています。
一致の定理( のとき、 個の点で一致すれば同じ)より、。(証明終)
直接示すこともできます。因数定理より は をすべて因数にもつので、 が0でなければ4次以上。これは3次以下という条件に反します。よって は恒等的に0です。
どちらの説明も、根っこは同じ「根の個数は次数を超えられない」です。
問題9の解答
接する条件を、定義どおり2本書きます。 として
- 点 を通る: →
- 傾きが一致: →
よって 、。
共有点を求めます。 より
ここで、「接する」ことが分かっているので で割り切れるはずです。実際に割ると
よって (2重解)と 。
のとき 。
答え:。共有点は (接点)と
「接すると分かっていれば、 で割り切れる」という予測が、因数分解を一瞬にします。3次方程式の解を探す手間が省ける。接する条件と割り算が、ここでつながりました。
また、この結果は「3次曲線と直線が接するとき、もう1つ別の共有点をもつことが多い」ことも示しています。接しているのに交わっている点が別にある。「接する」と「交わらない」は別の話だという、この章の主題そのものです。
よくある誤解
誤解1:接する=交わらない
違います。 と 軸は原点で接していますが、突き抜けています。接する=傾きまで一致する、が定義です。
誤解2:3次以上でも「判別式=0」で接する条件が出ると思う
3次以上に判別式は(高校範囲では)ありません。接点を とおいて2本の式を立てるのが正解です。
誤解3:曲線外の点から接線を引くとき、その点を接点だと思う
接点は別の場所にあります。必ず とおいてください。
誤解4:恒等式で係数を決めたあと、十分性を確認しない
一致の定理を根拠として挙げれば1行で済みます。「両辺とも 次以下で、相異なる 点で一致するから恒等的に等しい」。
よくある質問
Q. 接する条件は、判別式と「傾き一致」のどちらで解くべきですか?
2次と直線なら判別式が速い。それ以外は「傾き一致」の2本立てです。また、接点の座標まで聞かれているなら、最初から「傾き一致」で解くほうが手数が減ります。
Q. 一致の定理は、答案で名前を出して使っていいですか?
使って構いませんが、「両辺は2次以下の多項式であり、相異なる3点で一致するから恒等的に等しい」と中身まで書いたほうが確実です。名前だけだと、採点者に伝わらないリスクがあります。
Q. 「重解」という言葉は使わないほうがいいですか?
使って構いません。ただし「 で割り切れる」と言い換えられることを理解しておいてください。3次以上では、この言い換えのほうが正確に使えます。
第3部、おつかれさまでした
関数を「対応」として捉え直し、逆像法で動く文字を制し、軌跡と通過領域を同じ問題として扱い、式の構造を割り算で見て、接するの意味を突き止めました。
残るは第4部、微分と積分です。第22章では微分の直観、第23章では積分の直観を扱い、最後の第24章で、この講座で手に入れたすべての道具を「最大最小」という1つのテーマに集約します。あと3章です。
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▶ 第22章:微分の直観──変化率・接線・増減はひとつの話
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