数強塾オリジナル無料講座『数学の原理』第23章
「面積を求めるのに、なぜ微分の逆をするのか」。冷静に考えると、これは相当不思議な話です。面積と微分に、何の関係があるのでしょうか。この章でその橋を架けます。そして、第9章でやった「Σは引き算」が、そのまま積分の話だったことが見えてきます。
面積は「細かく切って足す」しかない
藤原です。第23章です。
曲線の下の面積を求めたい。長方形や三角形なら公式がありますが、曲線で囲まれた形には公式がありません。
どうするか。細かい長方形に切って、足す。これしかありません。
区間 を 等分して、それぞれの区間で高さを の値にとった細長い長方形を作ります。幅を とすると、面積の近似値は
そして を大きくして、長方形をどんどん細くしていく。その極限が定積分です。
記号を見てください。 は「S」を縦に伸ばした形で、Sum(和)の頭文字です。 は「限りなく細くした幅 」。積分記号そのものが「細かく切って足す」と言っているのです。
なぜ、これが「微分の逆」になるのか
ここが本題です。面積を、なぜ原始関数の差で求められるのか。
面積を関数だと思うのがコツです。左端 を固定して、右端を にします。
これは「 から までの面積」を表す関数です。 が右に動けば面積が増える。 の関数になっているわけです。
では、この を微分すると何になるでしょうか。
微分は「 を少し( だけ)増やしたときの、増加分を で割ったもの」でした。 を だけ増やすと、面積は幅 、高さ くらいの細長い長方形の分だけ増えます。
両辺を で割って とすると
【微分積分の基本定理】
「面積を表す関数」を微分すると、もとの関数に戻る。
これで橋が架かりました。 は の原始関数のひとつです。だから、 を の任意の原始関数とすると (定数差)と書けて、 から 。よって
面積が、原始関数の差で求まる理由がこれです。「微分の逆をやれ」と丸暗記していたものの、正体は「面積関数を微分すると元に戻る」という一点でした。
第9章と、まったく同じ形をしている
ここで、第9章を思い出してください。あのとき、こう書きました。
のとき
そして今回は
のとき
まったく同じ形です。整理すると、こういう対応になっています。
| 数列(とびとび) | 関数(つながっている) | |
| 小さく見る | 差分 | 微分 |
| 集めて足す | シグマ | 積分 |
| 基本定理 |
差分とΣ、微分と積分。この4つは1つの正方形をなしている。
とびとびの世界と、つながった世界。同じ話を2通りの言葉で語っていただけなのです。
第9章で「Σは引き算です」と言ったとき、意味が分からなかったかもしれません。いまなら分かるはずです。積分だって引き算です。 ですから。
面積を求めるときの、ただ1つのルール
実戦の話をします。面積を求める問題は、結局これだけです。
(面積)= ∫(上にある関数 − 下にある関数)
なぜ 軸が出てこないのか。それは「 軸より上の面積」が、たまたま「 と の差」だっただけだからです。本質は「上 − 下」。
だから 軸より下にある部分でも、慌てる必要はありません。 が下、 が上なので 。マイナスを付けるだけです。
そして、グラフが交差している場合は、交点で区間を切って、上下が入れ替わるごとに別々に計算します。
よく使う「6分の1公式」も、自分で作れる
放物線と直線で囲まれた面積には、有名な公式があります。
これも導けます。 と置き換えると、 として
置き換えて、素直に積分するだけでした。
放物線 と直線が で交わるとき、差の関数は の形になります(2次の係数が で、 を根にもつので)。だから囲まれた面積は
この公式のご利益は、交点の座標を求めなくてよいことです。 は解と係数の関係から で出せるので、汚い交点でも計算できます。第7章の対称式が、こんなところで効きます。
【原理】この章の芯
① 積分は「細かく切って足す」。記号 は Sum の S。
② 面積を関数と見て微分すると、もとの関数に戻る(基本定理)。
③ だから面積は原始関数の差 で求まる。
④ 差分とΣ、微分と積分は同じ構造。とびとびか、つながっているかの違いだけ。
⑤ 面積は「上 − 下」。交点で区間を切る。
オリジナル問題で確かめる
問題1(定積分の計算)
次の定積分を計算せよ。
問題2(基本定理の確認)
とするとき、 を2通りの方法で求め、一致することを確かめよ。
問題3(面積・上−下)
放物線 と直線 で囲まれた図形の面積を求めよ。
問題4( 軸より下の部分)
曲線 と 軸で囲まれた図形の面積を求めよ。
問題5(6分の1公式を使う)
放物線 と直線 で囲まれた図形の面積を求めよ。
問題6(上下が入れ替わる)
曲線 と 軸で囲まれた図形の面積をすべて合わせた値を求めよ。
問題7(絶対値を含む積分)
定積分 を計算せよ。
問題8(積分方程式)
関数 が、すべての実数 について
を満たすとき、 を求めよ。
問題9(Σと積分の対応)
第9章で を導いた。これと を比べて、気づいたことを述べよ。
解答と解説
問題1の解答
(1)
(2)
答え:(1) (2)
問題2の解答
方法1(基本定理をそのまま使う):。
方法2(実際に積分してから微分する):
これを微分すると 。一致しました。
方法2で定数 が出てきましたが、微分すると消えます。下端 をどこに変えても は変わらないということです。基本定理が「下端によらない」ことも、ここで確認できます。
問題3の解答
まず交点を求めます。 より
よって 。この間では直線が上、放物線が下です(たとえば で直線 、放物線 )。
答え:
6分の1公式でも確かめられます。差の関数は 、つまり 、。
一致しました。公式のほうが圧倒的に速いですね。
問題4の解答
より、 軸との交点は 。この間では放物線は 軸より下にあります。
したがって面積は「上( 軸、つまり )− 下(放物線)」の積分。
答え:
6分の1公式でも同じです。差の関数は なので ○
面積は必ず0以上です。 と負の値が出たら、それは「積分の値」であって「面積」ではありません。符号が負になったら、上下を取り違えていないか確認してください。
問題5の解答
交点を求めます。 より
これは因数分解できませんが、6分の1公式なら交点を求めなくても計算できます。
解を とすると、解と係数の関係より 、。したがって
差の関数「(放物線)−(直線)」は なので、2次の係数は 。よって
答え:
交点が無理数でも、第7章の対称式を使えば計算できました。この講座で学んだ道具が、こうして合流します。
問題6の解答
より、 軸との交点は 。
符号を調べます。
- :、、 なので積は正(曲線が上)
- :、、 なので積は負(曲線が下)
上下が入れ替わるので、区間を分けて計算します。
それぞれ計算します。
2つ目は符号を反転して 。したがって
答え:
ここで を計算してはいけません。値は になってしまいます( は奇関数なので)。上と下が打ち消し合うからです。
面積を求めるときは、必ず交点で区間を切る。これがこの単元の最大の失点ポイントです。
問題7の解答
絶対値は場合分けして外すのが基本です(第6章)。
- :
- :
区間を分けて計算します。
答え:
検算: のグラフは V 字。 で、左側は底辺1・高さ1の三角形(面積 )、右側は底辺2・高さ2の三角形(面積 )。合わせて ○ 図で確かめられる問題は、必ず図で確かめてください。
問題8の解答
ポイントは「 は定数である」ことです。積分区間が数字で固定されているので、計算すれば1つの数になります。
そこで
とおくと、条件は 。
これを の定義式に代入します。
ここで であることに注意してください( は定数なので、幅1の長方形の面積です)。
したがって 、つまり 。これは矛盾です。つまり、そのような は存在しません。
答え:条件を満たす は存在しない
意地悪な問題に見えますが、「解なし」も立派な答えです(第5章でもやりました)。
試しに問題を に変えてみると、 より 、。このときは と解が求まります。係数の違いで、解けたり解けなかったりするのが面白いところです。
問題9の解答
2つを並べてみます。
気づくこと:どちらも「3で割る」形をしている。
右辺を見比べると、 と が対応しています。 が大きいとき なので、この2つはほぼ同じ値です。
これは偶然ではありません。第9章で見たとおり、「連続する 個の積」は、数列の世界における の役割を果たしています。
- 関数の世界: を積分すると (次数が1上がって3で割る)
- 数列の世界: を「和」すると 型(因子が1つ増えて3で割る)
答え:連続積の和は、多項式の積分とまったく同じ構造をしている
差分・Σ・微分・積分が1つの正方形をなす、というこの章の主張が、具体的な式でも確認できました。とびとびの世界と、つながった世界。数学は同じ話を2通りの言葉で語っています。
よくある誤解
誤解1:積分の値=面積だと思う
曲線が 軸より下にあると、積分の値は負になります。面積は必ず0以上。「上 − 下」で計算してください。
誤解2:上下が入れ替わるのに、一気に積分する
打ち消し合って0になったりします。交点で必ず区間を切る。
誤解3: を の関数だと思う
これは定数です。積分区間に文字が入っていない限り、値は1つの数です。
誤解4:6分の1公式を、放物線と放物線でも同じ形で使う
差の関数の2次の係数が変わるので、 の部分に注意が必要です。「差の関数を因数分解した形」から係数を読むのが安全です。
よくある質問
Q. 6分の1公式は答案で使っていいですか?
使って構いません。ただし結果だけを書くのではなく、「差の関数は の形なので」と一言添えると安全です。心配なら、途中の積分計算を1行だけ書いておけば完璧です。
Q. 積分定数 はいつ書くのですか?
不定積分のときだけです。定積分では で消えるので書きません。「」(区間なし)なら が要る、と覚えてください。
Q. 区分求積法は必要ですか?
理系では必要です( の形)。この章で扱った「細かく切って足す」の考え方そのものなので、意味さえ分かっていれば公式は導けます。文系範囲では出ませんが、積分の意味を理解するうえで知っておく価値があります。
次の章へ
いよいよ最終章です。第24章では、この講座で手に入れたすべての道具を「最大最小」という1つのテーマに集約します。1文字の場合、範囲がある場合、2文字以上の場合、条件がついている場合。どの問題も、結局は同じ1本の方針に乗っていることを見て、この講座を締めくくります。
◀ 第22章:微分の直観──変化率・接線・増減はひとつの話
▶ 第24章:最大最小のすべて──文字を減らす・範囲を出す・同値で追う
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