数強塾オリジナル無料講座『数学の原理』第24章(最終章)
最後のテーマは「最大最小」です。この単元を最後に置いたのには理由があります。最大最小は、この講座で扱ったすべての道具が合流する場所だからです。条件、範囲、同値変形、動く文字、微分。全部使います。ここまで読んだあなたなら、もう解けます。
最大最小とは、結局「値域の端」を求めること
藤原です。最終章です。
まず、最大最小の正体をはっきりさせておきます。第17章でやりました。
最大値・最小値とは、値域の右端・左端のこと。
だから「最大最小を求めよ」は「値域を求めよ」とほぼ同じ問いである。
そして値域を求める道具は、この講座でいくつも手に入れました。問題を見て、どの道具を出すかを選べればいい。その選び方を、この章で整理します。
方針を、1枚の地図にする
【ステップ0】動く文字が何個あるかを数える
1個のとき
→ グラフを描く(2次なら平方完成、3次以上なら微分)
→ 範囲が切られていたら、端点も必ず候補に入れる(第22章)
2個以上のとき
→ ① 条件式で文字を消す(第7章)。消した文字の範囲を追いかける
→ ② 消せないなら1文字ずつ動かす(第18章の順像法)
→ ③ または値を とおいて存在条件を書く(第18章の逆像法)
特別な形が見えたら
→ 対称式なら で置き換え(実数条件を忘れずに・第7章)
→ 正の数の和と積が絡むなら相加相乗平均
→ 文字定数が分離できるなら定数分離(第18章)
→ 対称性があるなら、調べる範囲を半分に減らす(第2章)
この地図さえあれば、迷子になりません。迷ったら「動く文字は何個か」から数え直す。それが原点です。
道具1:文字を消す──ただし範囲を持ち歩く
例題1 実数 が 、、 を満たすとき、 の最大値を求めよ。
文字が2個、条件式が1本。1個消せます。
を代入すると
ここで範囲を追いかけます。 はそのまま。 は 、つまり 。よって
あとは2次関数の最大値です。
頂点 は範囲の中にあるので、最大値は 。このとき 。
答え:最大値 ( のとき)
「文字を消したら、消した文字が持っていた条件を、残った文字の条件に翻訳する」。これを飛ばすと、範囲の外で最大値を取ってしまう事故が起きます。第7章・第19章でも同じことを言いました。この講座で最も繰り返した注意点です。
道具2:相加相乗平均──使える条件を必ず確認する
【相加平均と相乗平均の関係】 のとき
等号が成り立つのは のとき。
証明は簡単です。差を取ると
また「(実数)² ≥ 0」でした。第7章で言ったとおり、不等式の出発点はいつもここです。
使いどころは「積が一定」のときです。
例題2 のとき、 の最小値を求めよ。
2つの項の積は で一定。相加相乗の出番です。
等号成立は 、つまり 、 より 。
答え:最小値 ( のとき)
相加相乗を使うときの3つの確認事項
① 両方とも正か(負だと使えません)
② 積が定数になっているか( が残ったら意味がない)
③ 等号が実際に成立するか(成立しないなら、それは最小値ではありません)
とくに③が命です。「 だから最小値4」は、等号が取れて初めて正しい。取れない場合は別の方法(微分など)に切り替えてください。
道具3:対称式──実数条件を必ず添える
例題3 実数 が を満たすとき、 の最大値を求めよ。
対称式なので 、 とおきます。 なので条件は
すなわち
求めたい式は
1文字になりました。あとは の範囲です。
ここで実数条件(第7章)です。 が実数であるためには
この範囲で の最大値を求めます。平方完成すると
下に凸で軸は 。範囲の中で軸からいちばん遠い端が最大なので、(軸からの距離 )と (距離 )を比べて、 のとき最大。
答え:最大値
このとき 、 なので、 は 、つまり の解。 です。たしかに を満たしています。
道具4:1文字ずつ動かす(順像法)
例題4 、 のとき、 の最大値を求めよ。
2文字で、条件式がないので消せません。1文字ずつ動かします。
予選: を止めて を動かす。 について整理すると
下に凸で軸は 。 より軸は の範囲を動きます。
最大値は軸から遠いほうの端で取ります。区間 の中点は なので
- 軸 (つまり )のとき: が遠い。
- のとき:軸は で中点と一致。両端とも同じ値で
決勝: を動かす。。
これは なので、 では で最大となり、値は 。
答え:最大値 ( のとき)
検算: を代入すると ○ 念のため他の角も見ると、 で 、 で 、 で 。たしかに が最大です。
【原理】この章の芯、そしてこの講座の芯
① 最大最小とは、値域の端を求めること。
② まず「動く文字は何個か」を数える。
③ 文字を消したら、範囲を必ず翻訳して持ち歩く。
④ 消せないなら、1文字ずつ動かす(順像法)か、 とおいて存在条件(逆像法)。
⑤ 相加相乗は「正・積一定・等号成立」の3点確認。
⑥ 対称式に置き換えたら、実数条件を必ず添える。
オリジナル問題で確かめる
問題1(1文字・範囲つき)
関数 の における最大値と最小値を求めよ。
問題2(文字を消す)
実数 が 、、 を満たすとき、 の最大値と最小値を求めよ。
問題3(相加相乗平均)
次の最小値を求めよ。
- のとき、
- のとき、
問題4(相加相乗が使えない例)
のとき、 の最小値を求めよ。相加相乗平均をそのまま使うと誤りになる理由も説明せよ。
問題5(対称式と実数条件)
実数 が を満たすとき、 の最小値を求めよ。
問題6(逆像法で値域)
が実数全体を動くとき、 の最大値と最小値を求めよ。
問題7(3次関数・範囲つき)
関数 の における最大値と最小値を求めよ。
問題8(2文字・順像法)
、 のとき、 の最大値と最小値を求めよ。
問題9(総合・図形)
周の長さが の長方形のうち、対角線の長さが最小になるものを求めよ。またそのときの対角線の長さを求めよ。
解答と解説
問題1の解答
上に凸、軸 。これは範囲 の中にあります。
- 最大:軸で取るので
- 最小:軸から遠い端。 は距離2、 は距離1。よって で
答え:最大値 ()、最小値 ()
上に凸のとき、最小は「軸から遠い端」。この判断を機械的にできるようにしておくと、場合分けが速くなります。
問題2の解答
を代入します。範囲は と から
軸 は範囲の中。
- 最大: で (このとき )
- 最小:端点を比べて 、。どちらも
答え:最大値 、最小値
問題3の解答
(1) 、 で、積は で一定。
等号は 、つまり 、 より 。成立します。
答え:最小値 ()
(2) このままでは積が一定になりません。 を作るのがコツです。
より 。積は で一定なので
したがって全体は 以上。等号は より 、 から 、。
答え:最小値 ()
「分母と同じカタマリを作る」のが、相加相乗を使うための定番の一手です。 と分解する。この発想を持っておいてください。
問題4の解答
まず、誤った解答を見ます。
「 なので相加相乗より 。よって最小値は 」
これは誤りです。等号成立は 、つまり のときですが、 という条件があるので は取れません。等号が成立しない以上、 は最小値ではありません。
正しい解答: を微分します。
では なので 。つまり単調増加です。
したがって最小は左端 で
答え:最小値 ( のとき)
これが相加相乗で最も多い失点です。「不等式が成り立つ」ことと「その値が最小値である」ことは別。等号成立の が、定義域に入っているかを必ず確認してください。入っていなければ、微分などに切り替えます。
問題5の解答
、 とおくと
これを最小にするには を最大にすればよい。
実数条件より 、つまり から 。
よって の最大値は で、そのとき
答え:最小値 ( のとき)
検算: なら ○ 試しに (和は2)なら ○
実数条件を書かなければ「 はいくらでも大きくできる」ことになり、最小値が存在しないという誤答になります。第7章の注意が、そのまま生きています。
問題6の解答
分母は なので、いつでも払えます。 とおくと
(i) のとき: より 。実数解があるので は値域に入る。
(ii) のとき:2次方程式なので
解の公式より 。したがって
(i) の もこの範囲に入っています( なので下限は約 )。
答え:最大値 、最小値
第17章・第18章でやった逆像法そのものです。分数関数の最大最小は、微分より逆像法のほうが速いことが多いと覚えておいてください。
問題7の解答
より で極大、 で極小。どちらも範囲 の中にあります。
候補の値を全部計算します(端点も忘れずに)。
- (極大)
- (極小)
答え:最大値 ( と )、最小値 ( と )
最大値も最小値も、2か所ずつで実現しています。「〜のとき」を全部書くのを忘れないでください。
問題8の解答
予選: を止めて を動かす。
より 。つまり傾きは常に負なので、場合分け不要です。
- 最大: のとき
- 最小: のとき
決勝: を動かす。
- 最大の候補 は、 で のとき最大。値は
- 最小の候補 は、 のとき最小。値は
答え:最大値 ()、最小値 ()
検算: で 、 で 、 で 、 で ○
問題9の解答
長方形の縦を 、横を とすると、周の長さから
、 です。対角線の長さは三平方の定理より 。
ルートの中を最小にすればよい(ルートは単調増加なので)。第7章の対称式を使います。
これを最小にするには を最大にすればよい。和が一定なので、相加相乗平均より
等号は のとき。これは を満たすので成立します。
したがって の最小値は 。対角線の長さの最小値は
答え:1辺 の正方形のとき最小で、対角線の長さは
検算:。試しに なら対角線は で、たしかに大きい ○
「周が一定なら、正方形のとき対角線が最短(=面積は最大)」。直感とも合いますね。
この問題では、三平方の定理・対称式・相加相乗平均・等号成立の確認という4つの道具を続けて使いました。入試問題とは、こういうものです。1つの道具で終わることは、ほとんどありません。
よくある誤解
誤解1:文字を消したら、範囲も消えると思う
消えません。残った文字の条件に翻訳されて生き残ります。
誤解2:相加相乗で等号成立を確認しない
等号が取れなければ、その値は最小値ではありません。問題4がその例です。
誤解3:極大値をそのまま最大値にする
範囲が切られていたら端点も候補です(第22章)。
誤解4:対称式で実数条件を書かない
は自由に動けません。 を必ず添えてください。
よくある質問
Q. 最大最小の問題で、方針が浮かばないときは?
「動く文字は何個か」を数えることから始めてください。そこから地図をたどれば、選択肢は自然に絞られます。それでも詰まったら、具体的な数値をいくつか代入してみる。答えの見当がつくと、方針も見えてきます。
Q. 「最大値をもたない」ということはありますか?
あります。たとえば での は、いくらでも に近づけますが にはなりません。この場合最大値は存在しないのが正解です。端点が範囲に含まれるかどうかを、常に確認してください。
Q. この講座を読み終えたあと、何をすればいいですか?
問題集に戻ってください。この講座は「なぜそうするのか」を担当しています。手を動かして定着させるのは問題集の役割です。
そのとき、解けなかった問題について「どの原理を使えばよかったのか」を、この講座の言葉で説明できるかを試してみてください。説明できれば本物です。
全24章、おつかれさまでした
ここまで読み切ったあなたに、最後に伝えたいことがあります。
この講座で扱った内容を、改めて並べてみます。
- 条件は集合であり、「ならば」は包含である(第1章)
- 「すべて」は最小値、「ある」は最大値、そして存在条件(第3章・第18章)
- 同値変形とは、真理集合を変えないこと(第5〜7章)
- Σは引き算であり、積分もまた引き算である(第9章・第23章)
- 数えるとは、1対1の対応をつけること(第12章)
- 関数とは対応であり、値域は存在条件に翻訳できる(第17〜19章)
- 置き換えたら、置き換えた文字の範囲を必ず調べる(第7章・第18章・第24章)
バラバラの単元に見えていたものが、実はほんの数個の原理の言い換えでしかなかった。それが伝わっていれば、この講座は成功です。
数学ができる人は、公式をたくさん覚えている人ではありません。少ない原理を、深く理解している人です。だから初めて見る問題でも、手が動く。
私自身、もともと数学が得意ではありませんでした。公式を覚えては忘れ、応用問題で崩れていた側の人間です。変わったのは、「なぜそうなるのか」を1つずつ潰し始めてからでした。あなたにも、必ず同じことが起きます。
ここからは、問題集で手を動かしてください。そして詰まったら、いつでもこの講座に戻ってきてください。全24章、いつでも無料で読めます。
最後まで読んでくれて、本当にありがとうございました。
数強塾代表 藤原進之介
もっと深く学びたい人へ
この講座は独学で読み切れるように書きましたが、それでも「自分の答案が合っているか分からない」「自分に足りないのはどの原理か判断できない」という壁は必ず来ます。そこは、人に見てもらうのがいちばん速い。
数強塾は、プロ講師のみによる完全1対1のオンライン数学専門塾です。全国の中高一貫校生を中心に、累計3,500名以上を指導してきました。体験授業(有料・3,000円税込)では、実際に1対1で授業を受けたうえで、いまの学力と課題を診断します。
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