このページは、数学の「論理」と「証明の書き方」を1ページにまとめた要点辞典です。単元というより、すべての単元の答案に効く土台を扱います。
計算は合っているのに点が来ない。方針は正しいのに減点される。その原因のほとんどは、論理の書き方です。「必要条件で絞っただけで終わっている」「場合分けに漏れがある」「⇒ と ⇔ を区別していない」——こうした穴は、数学I・Aから数学IIIまで、どの単元でも同じ形で現れます。
このページでは、その穴を8つの型に整理して、ひとつずつ潰していきます。最後の第8章では、「この答案のどこが誤りか」を実際に探してもらいます。
このページの使い方
頭から通読しても、気になる章だけ開いても構いません。ただし第2章(必要条件・十分条件)と第6章(同値変形)は、記述式の答案を書くすべての人に読んでほしい部分です。
各章の最後に例題があります。解答を見る前に、まず自分で考えてみてください。「どこが穴になりうるか」に気づけたかどうかが、答案が書けるかどうかの分かれ目です。
免責と、このページの作り方について
このページは学習の助けとして書かれたまとめです。正確さを保証するものではありません。最終的な判断は、必ず教科書・学校の先生・信頼できる問題集で確認してください。このページを読んだことで生じた不利益について、数強塾は責任を負いません。
掲載している解説・および出典を明記していない例題は、すべて数強塾が新規に書き下ろしたものです。市販の参考書・問題集から解説や問題文を転載したものは含まれていません。大学入試で実際に出題された問題を扱う場合は、出題大学と年度を明記し、解答・解説は数強塾が独自に書いています。
目次
- 命題と条件 ── 真偽の決め方/条件を集合で見る/否定とド・モルガン
- 必要条件・十分条件 ── 矢印の向き/集合の包含関係/必要十分の示し方
- 「すべて」と「ある」 ── 全称と存在/否定のしかた/最大最小への言いかえ
- 逆・裏・対偶 ── 真偽の対応/対偶を使う証明
- 背理法 ── 「〜でない」を示す型/無理数の証明/評価して示す
- 同値変形と「必要条件で絞る」 ── ⇒ と ⇔ の使い分け/十分性の確認
- 数学的帰納法 ── 基本形/整除性/不等式/2つ前まで使う形
- 答案の論理チェック ── よくある4つの穴を、実際の答案から探す
この辞典と一緒に使うページ
- 数学I・Aの要点辞典(全9単元) 第4章「集合と命題」がこのページの入口にあたります。
- 数学II・B・Cの要点辞典(全12単元) 「置きかえたら範囲」の話は、論理の問題でもあります。
- 数学IIIの要点辞典(全7単元) 定義域の管理は、そのまま論理の管理です。
- 入試数学の定石(全27章) 分野を横断する「解き方の型」を整理したページです。
- 数学の要点辞典まとめ(中1〜数学III 全7ページ) 単元名から直接その章へ飛べる逆引き表があります。
- 高校数学辞典(単元別のオリジナル問題) 読んだ内容を、その場で問題で試せます。
- 大学入試の過去問 全問解説 実際の記述式答案の書き方を確かめられます。
第1章 命題と条件
命題とは、正しいか正しくないかが決まる文のことです。「3は素数である」は命題(真)ですが、「3は大きい数だ」は命題ではありません。基準がないので真偽が決まらないからです。
数学の答案が読み手に伝わるのは、すべての文が真偽の決まる形で書かれているからです。この章は、その最小単位の話になります。
ここが怪しければ先に:集合と命題(数学I・A) / この先つながる:必要条件・十分条件・「すべて」と「ある」 / この単元の解法パターン:集合と論理 全12型
使う道具
| 道具 | 形 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 命題 | 真偽が決まる文 | 「大きい」「難しい」は命題でない |
| 条件 | x | 文字を含み、値によって真偽が変わる |
| 命題「p ならば q」 | p ⇒ q | p が真で q が偽のときだけ偽 |
| 反例 | p を満たすが q を満たさない例 | 1つ挙げれば偽が確定 |
| 条件と集合 | p ⇒ q が真 ⇔ P ⊂ Q | 包含関係で見る |
| 否定 | 「p でない」を p̄ と書く | ≥ の否定は < |
| ド・モルガンの法則 | 「p かつ q」の否定 =「p̄ または q̄」 | かつ と または が入れかわる |
| 「p または q」の否定 =「p̄ かつ q̄」 | 同上 |
定石
「p ならば q」の真偽は、集合の包含関係で判定する
条件 p を満たすものの集合を P、q を満たすものの集合を Q とすると
p ⇒ q が真 ⇔ P ⊂ Q
言葉にすれば「p を満たすものは、もれなく q も満たす」。図でいえば、小さい丸が大きい丸にすっぽり入っている状態です。
偽を示すには、反例をひとつ挙げる
真を示すには全部について確かめる必要がありますが、偽を示すには1つで足ります。この非対称性が、証明の戦略を決めます。「〜が成り立つことを示せ」なら証明、「〜が成り立つとは限らないことを示せ」なら反例——問題文の言い回しで、やることが変わります。
否定は「ド・モルガン」で機械的に作る
| もとの条件 | その否定 |
|---|---|
| x > 0 | x ≤ 0 |
| x = 2 | x ≠ 2 |
| x > 0 かつ y > 0 | x ≤ 0 または y ≤ 0 |
| x = 0 または y = 0 | x ≠ 0 かつ y ≠ 0 |
| 少なくとも一方が無理数 | ともに有理数 |
| すべてが正 | 少なくとも1つは0以下 |
「かつ」と「または」が必ず入れかわるのがポイントです。ここを間違えると、背理法や対偶の証明が最初から崩れます。
つまずきポイント
① 「かつ」の否定を「かつ」のまま書く。「x > 0 かつ y > 0」の否定は「x ≤ 0 かつ y ≤ 0」ではありません。「または」に変わります。片方だけ0以下でも、元の条件は崩れているからです。
② > の否定を < にする。x > 0 の否定は x ≤ 0 です。等号が入るのを忘れないでください。
③ 「p が偽のとき、p ⇒ q はどうなるか」を考えていない。約束として、p が偽なら p ⇒ q は真です(そもそも p を満たすものがないので、反例が作れない)。「x2 < 0 ならば x = 5」は真、という一見おかしな例がこれにあたります。
④ 反例を1つも挙げずに「偽である」と書く。偽の主張には必ず具体的な反例を添えてください。「成り立たない場合がある」だけでは証明になりません。
⑤ 「命題」と「条件」を区別しない。「x > 2」は真偽が決まらないので条件です。「すべての実数 x について x > 2」となってはじめて命題(この場合は偽)になります。
例題
例題1-1(命題の真偽と反例) 次の命題の真偽を調べ、偽ならば反例を挙げてください。
(1) 実数 x について「x > 2 ならば x2 > 4」
(2) 実数 x について「x2 > 4 ならば x > 2」
(1) x > 2 なら両辺とも正なので、2乗しても大小は保たれ x2 > 4。真。
(2) x = −3 とすると x2 = 9 > 4 ですが x = −3 < 2。偽(反例 x = −3)。
集合で見ると:P = {x | x > 2}、Q = {x | x2 > 4} = {x | x < −2 または x > 2}。
P ⊂ Q なので (1) は真。逆に Q は P より広い(負の部分を含む)ので Q ⊄ P、よって (2) は偽。反例は「Q にあって P にない部分」から拾えばよい——x < −2 の範囲から選べば必ず反例になります。
ここが大事:反例は「勘で探す」ものではありません。集合の差の部分を見れば、どこから拾えばよいかが決まります。
例題1-2(否定を作る) 次の条件の否定を書いてください。
(1) x > 0 かつ y > 0 (2) x = 1 または x = 2 (3) 0 ≤ x < 3
(1) ド・モルガンで「かつ」→「または」、それぞれ否定して
x ≤ 0 または y ≤ 0
(2) 「または」→「かつ」
x ≠ 1 かつ x ≠ 2
(3) 0 ≤ x < 3 は「x ≥ 0 かつ x < 3」という「かつ」の形です。だから否定は
x < 0 または x ≥ 3
(3)が落とし穴:不等式が2つ並んでいる形は、見た目には1つの条件でも中身は「かつ」です。だから否定すると「または」になり、2つの範囲に分かれます。ここを「x < 0 かつ x ≥ 3」と書くと、そんな数は存在しないので条件が空になってしまいます。
確認のしかた:数直線を描いて、もとの条件を塗り、その外側が否定と確かめてください。(3)なら、塗った区間の左右両方が残ります。「残りが2つに分かれるなら、否定は『または』」——図で確認すれば間違えません。
例題1-3(言葉の条件の否定) 次の条件の否定を書いてください。
(1) 実数 a, b について「a, b の少なくとも一方は無理数である」
(2) 整数 m, n について「m, n はともに偶数である」
(1) 「少なくとも一方が無理数」は「a が無理数 または b が無理数」。否定は「かつ」に変わって
a, b はともに有理数である
(2) 「ともに偶数」は「m が偶数 かつ n が偶数」。否定は
m, n の少なくとも一方は奇数である
言い回しの対応表
| もとの言い方 | その否定 |
|---|---|
| 少なくとも一方は A | ともに A でない |
| ともに A | 少なくとも一方は A でない |
| すべて A | 少なくとも1つは A でない |
| 1つも A でない | 少なくとも1つは A |
なぜここが重要か:背理法(第5章)では「否定を仮定する」ところから始めます。否定を作り間違えると、証明全体が別のものになってしまいます。この対応表は、背理法の入口です。
例題1-4(集合の包含で判定する) 実数 x について、条件 p:|x − 1| < 2、条件 q:−2 < x < 4 とします。命題「p ⇒ q」と「q ⇒ p」の真偽を調べてください。
手順1:条件を範囲に直す。
|x − 1| < 2 ⇔ −2 < x − 1 < 2 ⇔ −1 < x < 3
よって P = {x | −1 < x < 3}、Q = {x | −2 < x < 4}。
手順2:包含関係を見る。数直線に書くと、P は Q にすっぽり入っています。
P ⊂ Q なので p ⇒ q は真
Q ⊄ P なので q ⇒ p は偽(反例:x = 3.5 は q を満たすが p を満たさない)
答え:p ⇒ q は真、q ⇒ p は偽
絶対値の外し方:|A| < k(k > 0)は −k < A < k。これは「0からの距離が k 未満」という意味そのものです。数学I・Aの絶対値の話が、そのまま論理の判定に使われています。
この判定法の価値:命題の真偽を「感覚」で決めないこと。集合に直して包含関係を見れば、必ず答えが出ます。次章の必要条件・十分条件も、まったく同じ道具で判定できます。
例題1-5(「p ならば q」が真になる範囲) 実数 x について、次の命題が真となる定数 a の範囲を求めてください。
(1) 「|x − 1| < 2 ならば x < a」
(2) 「x ≥ a ならば x > 1」
考え方:条件を集合に置きかえると、「p ならば q」が真 ⇔ P ⊆ Q(p を満たすものが、すべて q も満たす)。数直線に2つの範囲を描いて、片方がもう片方にすっぽり入る条件を読む——ここまで来れば、あとは端点の扱いだけです。
(1) |x − 1| < 2 は −1 < x < 3。これが x < a に含まれるので
3 ≤ a
(2) x ≥ a が x > 1 に含まれるので
a > 1
答え:(1) a ≥ 3 (2) a > 1
確認:端点で必ず試すこと。ここが (1) と (2) で分かれた理由です。
(1) で a = 3 とすると、p は −1 < x < 3、q は x < 3。x = 3 はそもそも p を満たさないので反例になりません。だから a = 3 を含めてよい。
(2) で a = 1 とすると、x = 1 は p(x ≥ 1)を満たすのに q(x > 1)を満たしません。これが反例なので a = 1 は除きます。
不等号に等号が付くかどうかは、覚えるものではなく、境目の1点を代入すれば毎回決まります。「p を満たしていて q を満たさない x があるか」——この1問だけを自分に聞けば、迷いません。
なお a をうんと大きくしても (1) は真のままです。包含は「ぴったり一致」ではなく「入っていればよい」ので、範囲に上限が出ないこともあります。
この章のチェックリスト
| 確認すること | できていないと起きること |
|---|---|
| 条件を集合(範囲)に直したか | 真偽を感覚で決めてしまう |
| 否定で「かつ/または」を入れかえたか | 背理法・対偶が崩れる |
| 否定に等号を入れたか | 境界を落とす |
| 偽の主張に反例を添えたか | 証明になっていない |
| 不等式2つは「かつ」だと見たか | 否定が1つの範囲になってしまう |
| 数直線で確かめたか | 思い込みに気づけない |
もっと解きたい方へ 👉 集合と命題の特訓道場(20題と全解説)
第2章 必要条件・十分条件
言葉が紛らわしいので、多くの人がここで止まります。しかしやることは矢印の向きを見るだけです。
p ⇒ q が真のとき
p は q であるための十分条件(矢印の出る側が十分)
q は p であるための必要条件(矢印の入る側が必要)
覚え方:矢印は「十分」から「必要」へ飛ぶ。十 → 必 と書いて覚えても構いません。
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使う道具
| 道具 | 形 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 十分条件 | p ⇒ q が真のとき、p は q の十分条件 | 矢印の出る側 |
| 必要条件 | p ⇒ q が真のとき、q は p の必要条件 | 矢印の入る側 |
| 必要十分条件 | p ⇔ q(両方向とも真) | 同値 |
| 集合で見る | P ⊂ Q ⇔ p は q の十分条件 | 狭いほうが十分 |
| 必要十分を示す | (⇒) と (⇐) を別々に示す | 片方だけでは不足 |
| 同値変形で示す | p ⇔ A ⇔ B ⇔ q | 1本でつなげる |
定石
「狭いほうが十分、広いほうが必要」
集合で見ると一発です。P ⊂ Q のとき、狭い P のほうが十分条件、広い Q のほうが必要条件。
日常の言葉で確かめる:「東京都民である」⇒「日本国民である」。
・東京都民であれば日本国民であるのに十分(東京都民でありさえすれば、日本国民だと言える)
・日本国民であることは東京都民であるために必要(日本国民でなければ、東京都民ではありえない)
集合としては「東京都民 ⊂ 日本国民」。狭いほうが十分——確かに合っています。
必要十分条件は、必ず両方向を示す
書き方の型
(⇒ の証明)p を仮定して q を導く
(⇐ の証明)q を仮定して p を導く
以上より p ⇔ q
あるいは同値変形を1本の鎖でつなぐ方法もあります。ただしその場合、すべての矢印が両向きであることを確認してください。1か所でも片道なら、証明になりません。
「十分だが必要でない」を示すには、逆の反例を挙げる
p ⇒ q は真だが q ⇒ p は偽、という状態です。後半には必ず反例が要ります。
つまずきポイント
① 必要と十分を逆にする。これが最頻出です。矢印の出る側が十分、入る側が必要。日常語の「必要」に引きずられないよう、毎回矢印を書いてください。
② 「〜であるための」の主語を取り違える。「A は B であるための◯◯条件」という文では、A が主語、B が目標です。A ⇒ B が真なら A は十分条件。問題文の A と B を、まず矢印の図に置きかえてください。
③ 必要十分を、片方だけ示して終わる。「⇒ を示したから同値」は誤りです。逆も示すか、同値変形で1本につなぐかのどちらかが必要です。
④ 同値変形のつもりで、片道の変形を混ぜる。2乗する、両辺に文字を掛ける——これらは一般に片道です。同値だと言うには条件が要ります(第6章)。
⑤ 「必要条件」を「必ず要る条件」とだけ覚える。間違ってはいませんが、判定には使えません。集合の包含で見るのがいちばん確実です。
例題
例題2-1(判定の基本) 実数 x について、「x = 2」は「x2 = 4」であるための何条件ですか。
手順1:矢印を両方向とも調べる。
x = 2 ⇒ x2 = 4 → 真(代入すれば 4 = 4)
x2 = 4 ⇒ x = 2 → 偽(反例:x = −2)
手順2:向きから判定する。矢印が出ているのは x = 2 の側なので
「x = 2」は「x2 = 4」であるための十分条件だが必要条件ではない
集合で確認:P = {2}、Q = {2, −2}。P ⊂ Q で P のほうが狭いので、狭いほうが十分——合っています。
答え:十分条件であるが、必要条件ではない
例題2-2(図形で判定) 四角形について、「正方形である」は「ひし形である」であるための何条件ですか。また「対角線が直交する」は「ひし形である」であるための何条件ですか。
(1) 正方形とひし形
正方形 ⇒ ひし形 → 真(正方形は4辺が等しいのでひし形の条件を満たす)
ひし形 ⇒ 正方形 → 偽(反例:角が90°でないひし形)
よって「正方形である」は「ひし形である」であるための十分条件だが必要条件ではない。
(2) 対角線が直交することとひし形
ひし形 ⇒ 対角線が直交 → 真
対角線が直交 ⇒ ひし形 → 偽(反例:たこ形〈凧形〉は対角線が直交するがひし形とは限らない)
よって「対角線が直交する」は「ひし形である」であるための必要条件だが十分条件ではない。
集合の入れ子で整理する:
{正方形} ⊂ {ひし形} ⊂ {対角線が直交する四角形}
内側が十分、外側が必要。3つ以上並んだときも、この順序さえ書ければ、どの組み合わせを聞かれても答えられます。「入れ子の図を1回描く」のが最短ルートです。
例題2-3(必要十分条件の証明) 実数 a, b について、次が必要十分条件であることを証明してください。
「a + b > 0 かつ ab > 0」 ⇔ 「a > 0 かつ b > 0」
(⇐ の証明) a > 0 かつ b > 0 と仮定します。
正の数どうしの和は正なので a + b > 0。
正の数どうしの積は正なので ab > 0。
よって右辺から左辺が導けました。
(⇒ の証明) a + b > 0 かつ ab > 0 と仮定します。
ab > 0 より、a と b は同符号(どちらも0ではない)。
もし両方とも負なら a + b < 0 となり、仮定 a + b > 0 に反します。
よって両方とも正、すなわち a > 0 かつ b > 0。
以上より、両者は必要十分条件です。(証明終わり)
確認:(a, b) = (1, 3) は両方満たす。(−1, −3) は ab = 3 > 0 だが a+b = −4 < 0 なので左辺も右辺も満たさない。(3, −1) は a+b = 2 > 0 だが ab = −3 < 0 で、こちらも両方満たさない。すべての場合で左右の真偽が一致しています。
この形が入試で問われる理由:これは2次方程式の2解がともに正である条件そのものです。解と係数の関係から α + β と αβ はすぐ出るので、解を求めずに符号が判定できます(判別式で実数解であることを別に確認する必要はあります)。
例題2-4(同値変形で示す) 実数 x について、「|x| < 1」は「x2 < 1」であるための何条件ですか。
同値変形で一気に示します。両辺とも0以上なので、2乗しても大小関係が変わりません。
|x| < 1 ⇔ |x|2 < 12 ⇔ x2 < 1
(|x|2 = x2 であることを使いました)
答え:必要十分条件(同値)
なぜここでは2乗が同値なのか:一般に「2乗する」は片道の変形です。しかし両辺がともに0以上のときに限り、同値になります。ここでは |x| ≥ 0 と 1 > 0 なので条件を満たしています。「2乗は同値か」を毎回確認する——これが第6章の中心的なテーマです。
確認:x = 0.5 なら |x| = 0.5 < 1、x2 = 0.25 < 1。両方成立。x = −2 なら |x| = 2、x2 = 4。両方不成立。x = −0.5 なら両方成立。負の数でも一致することが確認できます。
例題2-5(どちらでもない場合) 実数 x、y について、「xy > 0」は「x + y > 0」であるための何条件ですか。
考え方:必要条件・十分条件の問題は、いつも両向きを1つずつ調べるだけです。ここではどちらの向きも成り立たない——つまり「必要条件でも十分条件でもない」が答えになります。この場合に大事なのは、反例を2つ挙げること。1つでは片方しか否定できません。
① xy > 0 ⇒ x + y > 0 は成り立つか
x = −1、y = −1 とすると xy = 1 > 0 ですが x + y = −2 < 0。反例があるので偽。
(両方とも負でも積は正になる、というのがここの落とし穴です)
② x + y > 0 ⇒ xy > 0 は成り立つか
x = 3、y = −1 とすると x + y = 2 > 0 ですが xy = −3 < 0。反例があるので偽。
答え:必要条件でも十分条件でもない
確認:答案では「①の反例」と「②の反例」を両方書いて、はじめて「どちらでもない」と言えます。片方だけ書いて「どちらでもない」と結論すると、そこで減点されます。
ちなみに「x > 0 かつ y > 0」なら、xy > 0 も x + y > 0 も両方いえます。条件を1つ強めるだけで関係が変わるので、問題文がどちらを聞いているかを毎回読み直してください。「何条件か」を答える前に、必ず矢印を2本書いて、それぞれに○か反例を書き込む——この手順にしておくと、向きの取り違えが起きません。
この章のチェックリスト
| 確認すること | できていないと起きること |
|---|---|
| 矢印を両方向とも調べたか | 必要十分の判定を誤る |
| 矢印の出る側が十分だと確認したか | 必要と十分を逆にする |
| 集合の入れ子を描いたか | 3つ以上の関係で混乱する |
| 必要十分は両方向を示したか | 証明が半分しかない |
| 同値変形の各段が両向きか確認したか | 片道の変形を混ぜてしまう |
| 「〜でない」側に反例を挙げたか | 主張の根拠がない |
もっと解きたい方へ 👉 必要条件・十分条件の特訓道場(20題と全解説)
第3章 「すべて」と「ある」
数学の主張は、ほとんどが「すべての〜について」か「ある〜が存在して」のどちらかの形をしています。この2つは否定すると入れかわり、しかも最大最小の話に言いかえられます。
この章を押さえると、「すべての x で成り立つ条件を求めよ」という頻出問題が、機械的に処理できるようになります。
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使う道具
| 道具 | 形 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 全称(すべて) | すべての x について p(x) | 1つでも反例があれば偽 |
| 存在(ある) | ある x が存在して p(x) | 1つ示せば真 |
| 全称の否定 | 「すべてで p」の否定 =「ある x で p でない」 | 入れかわる |
| 存在の否定 | 「ある x で p」の否定 =「すべてで p でない」 | 入れかわる |
| 全称 → 最小値 | すべての x で f(x) > 0 ⇔ f の最小値 > 0 | 最小値がとれるとき |
| 存在 → 最大値 | ある x で f(x) > 0 ⇔ f の最大値 > 0 | 同上 |
| 2変数の全称 | すべての x, y で f(x) ≥ g(y) ⇔ f の最小 ≥ g の最大 | x と y が独立のとき |
| 2次式の全称 | すべての x で ax2+bx+c > 0 ⇔ a > 0 かつ D < 0 | a = 0 |
| 「すべて」と「ある」の順序 | 「すべての x に、ある y」 ≠ 「ある y が、すべての x に」 | 入れかえると意味が変わる |
定石
「すべて」は最小値、「ある」は最大値に言いかえる
すべての x で f(x) > 0 ⇔ f の最小値 > 0
ある x で f(x) > 0 ⇔ f の最大値 > 0
言われてみれば当たり前です。「いちばん低いところが0より上」なら、どこも0より上。「いちばん高いところが0より上」なら、少なくとも1か所は0より上。
ただし最小値・最大値が存在しないときは、極限(下限・上限)で考える必要があります。この場合は等号の扱いが変わるので注意してください。
否定するたびに「すべて」と「ある」が入れかわる
| もとの主張 | その否定 |
|---|---|
| すべての x で f(x) > 0 | ある x で f(x) ≤ 0 |
| ある x で f(x) = 0 | すべての x で f(x) ≠ 0 |
| すべての生徒が合格した | ある生徒は合格しなかった |
| ある生徒が満点をとった | すべての生徒が満点でなかった |
「すべて」の否定は「すべて」ではありません。ここは日常語の感覚と食い違うので、意識して覚えてください。
2次式なら、判別式で処理する
「すべての実数 x で ax2 + bx + c > 0」は、a > 0(下に凸)かつ D < 0(x 軸と交わらない)。ただしa = 0 の場合を別に確認してください(1次式になるので、必ずどこかで負になります。ただし b = 0, c > 0 なら定数で成立)。
つまずきポイント
① 「すべて」の否定を「すべて〜でない」にする。正しくは「ある〜が〜でない」。「すべての生徒が合格した」の否定は「すべての生徒が不合格だった」ではなく、「合格しなかった生徒が少なくとも1人いる」です。
② 「すべての x, y で f(x) ≥ g(x)」と「f の最小 ≥ g の最大」を同じだと思う。これは違います。同じ x どうしを比べているのか、独立に動く2つの文字を比べているのかで、条件がまったく変わります。例題3-4で詳しく扱います。
③ 2次式の全称条件で a = 0 を落とす。係数に文字が入っているときは、2次でない場合を必ず別に調べてください。
④ 「ある」の証明で、存在を示さず条件だけ書く。「ある x が存在する」を示すには、具体的に1つ作るのがいちばん確実です。作れないなら、最大値や中間値の定理で存在を保証します。
⑤ 最大最小が存在しない場合を考えない。f(x) = 1/x(x > 0)に最小値はありません。「限りなく近づくが届かない」ときは、等号の扱いが変わります。
例題3-5(「すべて」と「ある」の順序) 実数 x、y について、次の2つの命題の真偽を調べてください。
(1) すべての x に対して、ある y が存在して x + y = 0 となる。
(2) ある y が存在して、すべての x に対して x + y = 0 となる。
考え方:使われている語は同じで、並んでいる順序だけが違います。ところがこの順序で意味は変わります。後ろに書かれたものは、前に書かれたものを見てから選べる——ここを押さえると、2つの違いがはっきりします。
(1) は「x を1つ決めるたびに、それに合う y を選んでよい」。
(2) は「y を先に1つ決め、その1つですべての x をまかなう」。
(1) x がどんな値でも y = −x とすれば x + y = 0。x を決めたあとに y を選べるので、これで足ります。よって真。
(2) y を1つ固定します。すると x + y = 0 が成り立つのは x = −y のときだけ。
たとえば x = −y + 1 を入れると x + y = 1 ≠ 0 となり、成り立ちません。どんな y を選んでも反例が作れるので偽。
答え:(1) 真 (2) 偽
確認:反例の作り方が、(1) と (2) で違うことに注意してください。(1) を否定するには「ある x があって、どの y でもだめ」を示す必要があり、x を1つ挙げるだけでは足りません。(2) を否定するには「どの y についても、それをだめにする x がある」を示せばよく、上のように y の式で x を書けば済みます。
答案では、「〜を任意にとる」「〜を1つ固定する」と書き分けるだけで、どちらの順序で読んでいるかが伝わります。第1章の否定の作り方と合わせて、順序を保ったまま否定できるかどうかが分かれ目です。
例題
例題3-1(真偽と否定) 次の命題の真偽を調べ、その否定を書いてください。
(1) すべての実数 x について x2 ≥ 0
(2) ある実数 x について x2 + 1 = 0
(1) 実数の2乗は必ず0以上なので真。
否定:ある実数 x について x2 < 0(これは偽)
(2) x2 ≥ 0 なので x2 + 1 ≥ 1 > 0。0になることはないので偽。
否定:すべての実数 x について x2 + 1 ≠ 0(これは真)
確かめ方の対応:もとの命題と、その否定の真偽は必ず逆になります。(1)が真なら否定は偽、(2)が偽なら否定は真。これが一致していなければ、否定の作り方を間違えています。否定を書いたら、必ずこの対応を確認してください。
例題3-2(すべてで成り立つ条件) すべての実数 x について x2 + ax + 1 > 0 が成り立つような定数 a の範囲を求めてください。
手順1:最小値の条件に言いかえる。「すべての x で正」は「最小値が正」。
手順2:2次関数として処理する。x2 の係数は 1 > 0 なので下に凸。したがってx 軸と交わらなければよいので、判別式が負。
D = a2 − 4 < 0 → (a − 2)(a + 2) < 0 → −2 < a < 2
答え:−2 < a < 2
確認:a = 1.9 のとき最小値は 1 − 1.92/4 = 1 − 0.9025 = 0.0975 > 0 ✓。a = 2.1 のとき 1 − 1.1025 = −0.1025 < 0 なので、どこかで負になります ✓。境界のすぐ内と外で確かめるのが確実な検算です。
係数が文字だったら:もし問題が「ax2 + bx + 1 > 0」なら、a = 0 の場合を別に調べる必要があります。ここでは x2 の係数が 1 で固定なので、その心配はありません。係数に文字があるかどうかを、最初に確認する習慣をつけてください。
例題3-3(あるxで成り立つ条件) ある実数 x について x2 + ax + 1 < 0 となるような定数 a の範囲を求めてください。
手順1:否定の関係を利用する。この条件は、例題3-2の条件「すべての x で ≥ 0」の否定にあたります。
手順2:直接考える。「ある x で負になる」は「最小値が負」。下に凸なので、x 軸と2点で交わることと同じです。
D = a2 − 4 > 0 → a < −2 または a > 2
答え:a < −2 または a > 2
例題3-2との関係を確認する:
・すべての x で > 0 → −2 < a < 2
・ある x で < 0 → a < −2 または a > 2
・境界の a = ±2 → 重解をもち、x2 + ax + 1 = (x ± 1)2 ≥ 0。負にはならないが、0にはなるので、どちらの条件にも入りません。
この a = ±2 の扱いが山場です。「すべてで > 0」の否定は「あるところで ≤ 0」であって、「あるところで < 0」ではありません。等号の1文字で、境界が含まれるかどうかが変わります。否定を作るときは、不等号の等号部分にいちばん注意してください。
例題3-4(「すべて」が2つあるとき) 0 ≤ x ≤ 2 において f(x) = x2 + 1、g(x) = 2x とします。次の2つの主張の違いを説明してください。
(A) すべての x(0 ≤ x ≤ 2)について f(x) ≥ g(x)
(B) すべての x, y(0 ≤ x ≤ 2、0 ≤ y ≤ 2)について f(x) ≥ g(y)
(A)の判定:同じ x どうしを比べます。
f(x) − g(x) = x2 − 2x + 1 = (x − 1)2 ≥ 0
どんな x でも0以上なので、(A)は真。
(B)の判定:x と y は独立に動きます。だから「f のいちばん低いところ」と「g のいちばん高いところ」を比べます。
f の最小値:f(0) = 1(0 ≤ x ≤ 2 では x = 0 のとき)
g の最大値:g(2) = 4
1 ≥ 4 は成り立たないので、(B)は偽。実際 x = 0, y = 2 とすると f(0) = 1 < 4 = g(2) で反例になります。
答え:(A)は真、(B)は偽。同じ「すべて」でも、比べる相手が連動しているか独立かで結論が変わります。
使い分けの整理
| 主張の形 | 言いかえ |
|---|---|
| すべての x で f(x) ≥ g(x) | f(x) − g(x) の最小値 ≥ 0 |
| すべての x, y で f(x) ≥ g(y) | f の最小 ≥ g の最大 |
| ある x で f(x) ≥ g(x) | f(x) − g(x) の最大値 ≥ 0 |
| ある x、すべての y で f(x) ≥ g(y) | f の最大 ≥ g の最大 |
これは入試の頻出テーマです。問題文に文字が2つ出てきたら、「連動しているか、独立か」を最初に確認してください。ここを取り違えると、正しい計算をしても答えが合いません。
この章のチェックリスト
| 確認すること | できていないと起きること |
|---|---|
| 「すべて」を最小値に言いかえたか | 手が止まる |
| 「ある」を最大値に言いかえたか | 同上 |
| 否定で「すべて/ある」を入れかえたか | まったく別の主張になる |
| 否定の等号を正しく反転したか | 境界を落とす/余分に含む |
| 文字が連動か独立かを確認したか | 比べる相手を取り違える |
| 最大最小が存在するか確認したか | 等号の扱いを誤る |
もっと解きたい方へ 👉 無料講座『数学の原理』第3章「すべて」と「ある」──全称と存在
第4章 逆・裏・対偶
命題「p ⇒ q」から作れる3つの命題です。覚えるべきことは、もとの命題と対偶は真偽が一致する——これだけです。
そして、この一致が証明の道具になります。「直接示しにくいなら、対偶を示せばよい」——それが対偶を学ぶ理由です。
ここが怪しければ先に:必要条件・十分条件 / この先つながる:背理法 / この単元の解法パターン:集合と論理 全12型
使う道具
| 道具 | 形 | 使いどころ |
|---|---|---|
| もとの命題 | p ⇒ q | |
| 逆 | q ⇒ p | 真偽は一致しない |
| 裏 | p̄ ⇒ q̄ | 真偽は一致しない |
| 対偶 | q̄ ⇒ p̄ | 真偽が必ず一致する |
| 逆と裏の関係 | 互いに対偶なので真偽が一致する | 片方調べればよい |
| 対偶証明法 | 対偶を示せば、もとの命題も示せる | n |
| 「かつ・または」を含む命題の対偶 | 「A ならば B または C」の対偶は「B でない かつ C でない ならば A でない」 | 否定でかつ・またはが入れかわる |
定石
4つの命題の関係を、1枚の図で持つ
p ⇒ q と q̄ ⇒ p̄(対偶) …… 真偽が一致
q ⇒ p(逆) と p̄ ⇒ q̄(裏) …… 真偽が一致
つまり4つは2組に分かれます。だから調べるのは2つだけで足ります。もとの命題と、その逆。この2つがわかれば、対偶と裏は自動的に決まります。
「〜でない」が結論に来たら、対偶を疑う
否定の形は扱いにくいので、対偶をとって肯定の形に変えます。
| 示したい命題 | 対偶(こちらのほうが扱いやすい) |
|---|---|
| n2 が偶数 ⇒ n が偶数 | n が奇数 ⇒ n2 が奇数 |
| a + b が無理数 ⇒ a, b の少なくとも一方が無理数 | a, b がともに有理数 ⇒ a + b は有理数 |
| ab が奇数 ⇒ a も b も奇数 | a か b が偶数 ⇒ ab は偶数 |
どの例も、対偶にすると「具体的な形に置ける」のがポイントです。奇数なら 2k+1、有理数なら 整数/整数 と書けるので、そこから計算が始まります。
反例をつくるときは「逆」から探す
「この命題の逆は成り立つか」と聞かれたら、もとの命題で P ⊂ Q だった部分の「Q にあって P にない領域」を探せば、必ず反例が見つかります。
つまずきポイント
① 逆を示して「証明できた」とする。これは典型的な誤りです。p ⇒ q を示したいのに q ⇒ p を示しても、何も証明していません。矢印の向きを、書き始める前に確認してください。
② 対偶を作るときに、否定を間違える。「a, b がともに有理数」の否定は「a, b がともに無理数」ではなく「少なくとも一方が無理数」。第1章のド・モルガンが、ここで効いてきます。
③ 対偶を作るときに、矢印を逆にし忘れる。対偶は「否定して、しかも向きを入れかえる」の2手です。片方だけだと裏になってしまい、真偽が一致しません。
④ もとの命題と裏の真偽が一致すると思う。一致するのは対偶だけです。裏は逆と一致します。
⑤ 「必ずしも〜でない」と「〜でない」を混同する。「p ⇒ q は成り立たない」は「p ⇒ q̄」ではありません。「反例が1つある」というだけです。
例題
例題4-1(逆・裏・対偶を作る) 命題「実数 x について、x > 2 ならば x2 > 4」について、逆・裏・対偶を書き、それぞれの真偽を答えてください。
もとの命題:x > 2 ⇒ x2 > 4 …… 真(例題1-1)
逆:x2 > 4 ⇒ x > 2 …… 偽(反例 x = −3)
裏:x ≤ 2 ⇒ x2 ≤ 4 …… 偽(反例 x = −3:−3 ≤ 2 だが 9 > 4)
対偶:x2 ≤ 4 ⇒ x ≤ 2 …… 真
対応の確認:もとの命題(真)と対偶(真)が一致、逆(偽)と裏(偽)が一致。この対応が崩れていたら、どこかで否定か矢印の向きを間違えています。作ったあとの検算として必ず使ってください。
否定の作り方に注意:x > 2 の否定は x ≤ 2(等号が入る)、x2 > 4 の否定は x2 ≤ 4。等号を落とすと、境界の x = 2 や x = ±2 が宙に浮きます。
例題4-2(対偶による証明) 整数 n について、「n2 が偶数ならば n は偶数である」ことを証明してください。
方針:直接示そうとすると、n2 = 2m から n の形を導く必要があり、扱いにくい。対偶をとります。
対偶:「n が奇数ならば n2 は奇数である」
対偶の証明 n を奇数とすると、整数 k を用いて n = 2k + 1 と表せます。
n2 = (2k + 1)2 = 4k2 + 4k + 1 = 2(2k2 + 2k) + 1
2k2 + 2k は整数なので、n2 は2で割ると1余る数、すなわち奇数です。
対偶が真なので、もとの命題も真です。(証明終わり)
確認:n = 1, 3, 5, 7 のとき n2 = 1, 9, 25, 49。すべて奇数 ✓
なぜ対偶が扱いやすいのか:「奇数である」は 2k+1 と具体的に書けますが、「n2 が偶数」からは n の形が直接出てきません。「具体的な形に置けるほうを仮定にする」——これが対偶を選ぶ判断基準です。
この命題の使い道:√2 が無理数であることの証明(第5章)で、この結果をそのまま使います。補題として先に用意しておくのが定跡です。
例題4-3(言葉の命題を対偶で示す) 実数 a, b について、「a + b が無理数ならば、a, b の少なくとも一方は無理数である」ことを証明してください。
方針:「少なくとも一方が〜」は扱いにくい形です。対偶をとると「ともに〜」になり、具体的に置けます。
対偶:「a, b がともに有理数ならば、a + b は有理数である」
対偶の証明 a, b をともに有理数とすると、整数 p, q, r, s(q ≠ 0, s ≠ 0)を用いて
a = p/q、b = r/s
と表せます。このとき
a + b = p/q + r/s = (ps + rq)/(qs)
ps + rq と qs はともに整数で、qs ≠ 0。よって a + b は整数どうしの分数、つまり有理数です。
対偶が真なので、もとの命題も真です。(証明終わり)
否定の作り方をもう一度:
・「a, b の少なくとも一方は無理数」の否定 → 「a, b はともに有理数」
・「a + b は無理数」の否定 → 「a + b は有理数」
そして矢印の向きを入れかえる。この2手で対偶ができます。
この命題の意味:逆は成り立ちません。a = √2、b = −√2 はどちらも無理数ですが、a + b = 0 は有理数です。「無理数どうしを足しても無理数とは限らない」——この反例は覚えておく価値があります。
例題4-4(逆・裏・対偶の使い分け) 次の答案には誤りがあります。どこが誤りか指摘してください。
[問題]整数 n について「n が3の倍数ならば n2 は3の倍数である」ことを証明せよ。
[誤った答案]
n2 が3の倍数であるとすると、n2 = 3m と書ける。
3は素数なので n は3の倍数である。
よって示された。
誤りの指摘:この答案は「n2 が3の倍数 ⇒ n が3の倍数」を示しています。これはもとの命題の逆です。逆を示しても、もとの命題を示したことにはなりません。
正しい証明 n が3の倍数であるとすると、整数 k を用いて n = 3k と表せます。
n2 = (3k)2 = 9k2 = 3(3k2)
3k2 は整数なので、n2 は3の倍数です。(証明終わり)
ここから学ぶこと:書き始める前に、「何を仮定して、何を導くのか」を1行で書く習慣をつけてください。「n が3の倍数であるとすると」——この一言があるだけで、向きの取り違えは防げます。
ちなみに逆も真です:この場合、逆「n2 が3の倍数 ⇒ n が3の倍数」も実は真です(3が素数だから)。しかし「逆も真だから、逆を示せばよい」わけではありません。逆が真であることは、別に証明が要る事実です。問われた向きを示す——これが答案の原則です。
例題4-5(「かつ・または」を含む命題の対偶) 実数 x、y について、命題「x + y ≥ 2 ならば、x ≥ 1 または y ≥ 1」を考えます。(1) この命題の対偶を書いてください。(2) 対偶を使って、この命題が真であることを示してください。
考え方:結論に「または」が入っている命題は、直接示そうとすると「どちらを示せばいいのか」で手が止まります。対偶をとると、この「または」が「かつ」に変わって、条件が2本そろった形になります。そうなれば足すだけで済む——ここが、この型で対偶を選ぶ理由です。
(1) 結論の否定は、第1章のド・モルガンの法則から
「x ≥ 1 または y ≥ 1」の否定 → 「x < 1 かつ y < 1」
仮定の否定は「x + y < 2」。矢印を入れかえて
対偶:x < 1 かつ y < 1 ならば x + y < 2
(2) x < 1、y < 1 とすると、辺々を足して
x + y < 1 + 1 = 2
よって対偶は真。対偶が真ならもとの命題も真なので、示されました。
答え:(1) 「x < 1 かつ y < 1 ならば x + y < 2」 (2) 上のとおり真
確認:いちばん多い間違いは、「または」をそのまま残して「x < 1 または y < 1 ならば x + y < 2」を対偶だと思うことです。これはもとの命題と同値ではありません。実際 x = 1/2、y = 3 とすると、x < 1 は成り立つのに x + y = 7/2 で 2 以上。この形は偽です。もとの命題は真なのに対偶が偽になったら、対偶の作り方を間違えています。
対偶を作る手順は2つだけ。①仮定と結論を入れかえる ②それぞれを否定する。②のときに、「かつ」と「または」も必ず入れかわる——ここを飛ばさないでください。
なお、この命題を直接示すこともできます。「x < 1 かつ y < 1 なら x + y < 2 になってしまう」と背理法で言えばよく、対偶による証明と背理法は、じつは同じことを別の言い方でやっています(第5章)。
この章のチェックリスト
| 確認すること | できていないと起きること |
|---|---|
| 問われた矢印の向きを確認したか | 逆を証明してしまう |
| 対偶で「否定」と「向き」の両方を直したか | 裏になってしまう |
| 否定でド・モルガンを使ったか | 対偶が別の命題になる |
| もとと対偶の真偽が一致しているか | 作り間違いに気づけない |
| 具体的に置けるほうを仮定にしたか | 証明が進まない |
| 「〜とすると」を最初に書いたか | 向きが曖昧な答案になる |
もっと解きたい方へ 👉 集合と命題 必要条件・十分条件・対偶を図で理解(無料問題PDF)
第5章 背理法
「そうでないと仮定すると、矛盾が起きる。だからそうである」——これが背理法です。
使いどころははっきりしています。「〜でない」「〜は存在しない」「〜は有限個でない」のように、結論が否定形のとき。直接示すのが難しい主張ほど、背理法が効きます。
ここが怪しければ先に:逆・裏・対偶・「すべて」と「ある」 / この先つながる:整数の性質(数学I・A)・数学的帰納法 / この単元の解法パターン:集合と論理 全12型
使う道具
| 道具 | 形 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 背理法 | 結論の否定を仮定して矛盾を導く | 結論が否定形のとき |
| 書き出しの型 | 「〜でないと仮定する」 | ここを書かないと始まらない |
| 矛盾の作り方 | 既知の事実と食い違う結論を出す | 整数の性質・大小関係など |
| 有理数の表し方 | 互いに素な整数 p, q(q ≠ 0)で p/q | 「既約」を仮定するのが定石 |
| 無限の証明 | 「有限個しかない」と仮定して新しいものを作る | 素数が無限にあること |
| 評価して示す | 比べやすい量ではさむ | π > 3.05 |
定石
背理法の答案は、3行の骨格をもつ
① 「〜でないと仮定する」(結論の否定を、正確に書く)
② そこから計算・推論を進める
③ 「これは〜に矛盾する」→「よって〜である」
①で否定を作り間違えると、以降がすべて無駄になります。第1章のド・モルガンが、ここで効きます。
「無理数である」の証明は、既約分数を仮定する
√2 が無理数であることを示すなら、「有理数だと仮定して、互いに素な整数 p, q で √2 = p/q と書ける」とします。「互いに素」を仮定しておくと、あとで「両方とも偶数」という矛盾が作れます。
「無限にある」の証明は、有限個だと仮定して新しいものを作る
素数が無限にあることの証明が典型です。「素数は有限個しかない」と仮定して、そのどれでも割り切れない新しい数を作る——これで矛盾が生まれます。
大小を示すときは、比べやすい量ではさむ
π > 3.05 のような主張は、π を直接計算しても示せません。「円周より短いことが確実な図形」の長さを計算して、それが 3.05 より大きければ済みます。直接扱えない量を、扱える量ではさむ——これが評価の考え方です。
つまずきポイント
① 結論の否定を書き間違える。「a, b の少なくとも一方は無理数」を否定するなら「ともに有理数」。「ともに無理数」ではありません。
② 仮定と矛盾したのか、既知の事実と矛盾したのかを書かない。「矛盾する」だけでは不十分です。何と矛盾したのかを明示してください。
③ 背理法である必要がないのに使う。直接示せるなら、そのほうが読みやすい答案になります。「否定形の結論」「存在しない」「無限にある」のときだけ使う、と決めておくと迷いません。
④ 「互いに素」を仮定し忘れる。√2 = p/q と置くだけでは矛盾が作れません。「これ以上約分できない形」だと約束しておくことで、「両方偶数」が矛盾になります。
⑤ 評価で使う不等式の向きを取り違える。「内接する図形の周は円周より短い」のか「長い」のか。図を描いて確かめてから使ってください。向きが逆だと、示したいことと反対の結論が出ます。
例題
例題5-1(√2 が無理数であること) √2 が無理数であることを証明してください。
証明 √2 が有理数であると仮定します。
すると、互いに素な正の整数 p, q を用いて
√2 = p/q
と表せます。(「互いに素」=これ以上約分できない、と仮定しておきます)
両辺を2乗して分母を払うと
2q2 = p2
左辺は2の倍数なので p2 は偶数。例題4-2で示したとおり、p2 が偶数なら p も偶数です。
そこで p = 2r(r は整数)と書くと
2q2 = (2r)2 = 4r2 → q2 = 2r2
今度は q2 が偶数なので、同じ理由で q も偶数。
すると p と q がともに偶数、つまり2という共通の約数をもつことになり、「互いに素」という仮定に矛盾します。
よって √2 は有理数ではない、すなわち無理数です。(証明終わり)
この証明の骨組み:
① 否定(有理数)を仮定 ② 互いに素という条件を付けて置く ③ 計算を進めて「両方偶数」を導く ④ ②と矛盾
②が急所です。「互いに素」を書いておかなければ、「両方偶数」は矛盾になりません(約分すればよいだけなので)。矛盾を作るための仕掛けを、最初に置いておく——背理法の設計はここにあります。
同じ型で示せるもの:√3、√5、√6 なども同じ手順です。ただし √3 の場合は「p2 が3の倍数なら p も3の倍数」という補題を、別に用意する必要があります。
例題5-2(素数が無限にあること) 素数が無限に存在することを証明してください。
証明 素数が有限個しかないと仮定します。
そのすべてを p1, p2, …, pn とします(これで全部です)。
ここで、次の数を考えます。
N = p1 × p2 × … × pn + 1
N は2以上の整数なので、必ず何らかの素因数をもちます。その1つを p とします。
仮定より、p は p1, …, pn のどれかです。ところが N をその p で割ると1余ります(積の部分は割り切れ、+1 が残るため)。つまり p は N を割り切りません。
これは p が N の素因数であることに矛盾します。
よって素数は無限に存在します。(証明終わり)
小さい例で確かめる:2 × 3 × 5 + 1 = 31(素数)。2 × 3 × 5 × 7 × 11 × 13 + 1 = 30031 = 59 × 509。N 自身が素数とは限りませんが、その素因数は必ずリストの外にあります(59も509もリストにない)。「N が素数だ」と書くと誤り——ここは答案でよく間違えるところです。
この型が使える場面:「無限にある」を示すには、有限だと仮定して、リストの外にあるものを1つ作る。どんな有限のリストにも入らないものが作れるなら、有限では足りなかったということです。
例題5-3(有理数と無理数の関係) a, b を有理数とするとき、a + b√2 = 0 ならば a = b = 0 であることを証明してください。
証明 b ≠ 0 であると仮定します。
このとき a + b√2 = 0 の両辺を b で割って移項すると
√2 = −a/b
右辺は有理数どうしの商なので有理数です(b ≠ 0 なので割れます)。
しかし √2 は無理数(例題5-1)なので、これは矛盾です。
よって b = 0。これを元の式に代入すると a = 0。
したがって a = b = 0 です。(証明終わり)
この結果の使い道:「√2 の係数どうし、有理数どうしを比較してよい」という根拠になります。たとえば a + b√2 = 3 + 5√2(a, b は有理数)なら、移項して (a−3) + (b−5)√2 = 0。この結果から a = 3, b = 5 が言えます。
なぜ証明が必要なのか:「係数を比較すればいい」は当たり前に見えますが、それが許される理由は √2 が無理数だからです。もし √4 = 2 のように有理数なら、a + b·2 = 0 は a = −2, b = 1 でも成り立ち、係数比較はできません。使ってよい場面かどうかを確かめる——それが論理の役割です。
例題5-4(有名問題・評価して示す) 円周率 π が 3.05 より大きいことを証明してください。(2003年 東京大学)
この問題が有名な理由:π = 3.14159… と知っていても、それは証明ではありません。「自分の手で下から評価する」ことが問われています。
方針:半径1の円に内接する正十二角形を考えます。折れ線は、それが結ぶ弧より短い。だから
(正十二角形の周)<(円周)= 2π
左辺を計算して、それが 2 × 3.05 = 6.1 より大きいことを示せば完了です。
証明 半径1の円に内接する正十二角形を考えます。中心角は 360° ÷ 12 = 30° なので、1辺の長さは二等辺三角形(等辺1、頂角30°)の底辺にあたり、2 sin15° です。
よって周の長さは 24 sin15°。半角の公式から
sin215° = (1 − cos30°)/2 = (1 − √3/2)/2 = (2 − √3)/4
sin15° = √(2 − √3)/2
したがって
(正十二角形の周)= 24 × √(2 − √3)/2 = 12√(2 − √3)
ここを下から評価します。1.7332 = 3.003289 > 3 なので √3 < 1.733。よって
2 − √3 > 2 − 1.733 = 0.267
また 0.51672 = 0.26697889 < 0.267 なので √(2 − √3) > 0.5167。したがって
(正十二角形の周)= 12√(2 − √3) > 12 × 0.5167 = 6.2004
一方、折れ線は弧より短いので
(正十二角形の周)< (円周)= 2π
よって
2π > 6.2004 → π > 3.1002 > 3.05
したがって π > 3.05 です。(証明終わり)
確認:実際に計算すると 12√(2 − √3) = 12 × 0.517638… = 6.2117… なので π > 3.1058。真の値 3.14159… と矛盾しません。評価はゆるめでよく、目標の 3.05 を超えていれば十分です。
正六角形ではなぜ足りないのか:正六角形なら周は 6(1辺が半径と等しい)。すると 2π > 6、つまり π > 3 しか言えません。3.05 を超えるには、もっと円に近い図形が要る——だから正十二角形を選びます。「どこまで細かくすれば足りるか」を先に見積もるのが、この問題の本当の山場です。
持ち帰るべき型:直接計算できない量は、計算できる量ではさむ。下から評価したいなら「必ずそれより小さいもの」を、上から評価したいなら「必ずそれより大きいもの」を作る。この考え方は、数学IIIの定積分の評価でもそのまま使います。
例題5-5(「少なくとも1つ」の証明) 実数 a、b、c について、a + b + c > 3 ならば、a、b、c のうち少なくとも1つは 1 より大きいことを証明してください。
考え方:「少なくとも1つは〜」を直接示そうとすると、どれを選べばよいか決められません。どれが 1 より大きいのかは、a、b、c の値によって変わるからです。
ところが否定すると形が一気に扱いやすくなります。「少なくとも1つは 1 より大きい」の否定は「すべて 1 以下」——場合分けのない、はっきりした条件です。この形が出たら背理法が効きます。
証明
結論を否定して、a ≤ 1 かつ b ≤ 1 かつ c ≤ 1 と仮定する。
このとき、辺々を加えて
a + b + c ≤ 1 + 1 + 1 = 3
これは仮定 a + b + c > 3 に矛盾する。
よって、a、b、c のうち少なくとも1つは 1 より大きい。 (証明終)
答え:上のとおり
確認:この証明の要は否定の作り方だけです。「少なくとも1つは P」の否定は「すべて P でない」。ここを「少なくとも1つは P でない」としてしまうと、まったく別の主張になり証明が進みません。
矛盾がどこで出たかも書き切ります。ここでは仮定 a + b + c > 3 と矛盾したのであって、既知の事実と矛盾したのではありません。「何と矛盾したのか」を明示するのが背理法の答案の作法です。
なお等号が成り立つのは a = b = c = 1 のときで、このとき和はちょうど 3。不等号が「>」だから矛盾する——境目を確かめておくと、条件が「≥ 3」に変わったときに結論が変わることにも気づけます。
この章のチェックリスト
| 確認すること | できていないと起きること |
|---|---|
| 結論の否定を正確に書いたか | 別の主張を証明してしまう |
| 「〜と仮定する」から書き始めたか | 背理法だと伝わらない |
| 何と矛盾したかを明示したか | 証明が完結しない |
| 「互いに素」など仕掛けを置いたか | 矛盾が作れない |
| 評価する不等式の向きを図で確認したか | 逆の結論が出る |
| 評価が目標を超えているか計算したか | あと一歩足りない |
もっと解きたい方へ 👉 背理法と無限降下法(解が存在しないをどう示すか)
第6章 同値変形と「必要条件で絞る」
この章が、記述式で最も差がつくところです。
方程式や不等式を解く作業は、「同じ意味の式に書きかえていく」ことです。ところが、書きかえのなかには意味が変わってしまうものがあります。2乗する、両辺に文字を掛ける、特定の値を代入する——これらは片道の変形です。
片道であることに気づかずに進むと、存在しない解が混ざるか、あるはずの解が消える。この章では、その見分け方と直し方を扱います。
ここが怪しければ先に:必要条件・十分条件 / この先つながる:答案の論理チェック / この単元の解法パターン:集合と論理 全12型 / この単元を1日1枚で:毎日の数学 1枚
使う道具
| 道具 | 形 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 同値変形 | A ⇔ B | 解の集合が変わらない |
| 片道の変形 | A ⇒ B | 解が増える可能性 |
| 2乗 | A = B ⇒ A2 = B2 | 逆は成り立たない |
| 2乗が同値になる条件 | A ≥ 0 かつ B ≥ 0 のとき A = B ⇔ A2 = B2 | 符号をそろえれば同値 |
| 両辺に掛ける | c ≠ 0 なら同値、c = 0 なら片道 | 文字を掛けるときは場合分け |
| 代入 | 特定の値を入れる | 必要条件しか出ない |
| 十分性の確認 | 求めた値を元の条件に戻す | 絞ったら必ず戻す |
| 解の検算 | 元の式に代入して成立を見る | 片道の変形をしたら必須 |
| 絶対値の同値変形 | |A| = B ⇔ (A = B または A = −B) かつ B ≥ 0 |A| < B ⇔ −B < A < B |
右辺の符号の条件を落とさない |
定石
「片道の変形」を3つ覚えておく
① 2乗する −1 = 1 は偽ですが、2乗すると 1 = 1 で真になります。符号の情報が消えるので、解が増えます。
② 両辺に文字を掛ける x = 1 の両辺に x を掛けると x2 = x。これは x = 0 も解にもちます。0を掛けるとすべてが成り立ってしまうためです。
③ 特定の値を代入する 「すべての x で成り立つ」から x = 1 のときを取り出しても、それは必要条件にすぎません。
片道で進んだら、必ず「戻して確かめる」
片道の変形を使ったら、出てきた解が本物かどうか、元の式に代入して確認します。これを飛ばすと、偽の解が答案に残ります。
「必要条件で絞って、十分性を確認する」の型
手順
① 都合のよい値を代入して、候補を絞る(=必要条件)
② 絞った値のもとで、本当にすべての場合で成り立つかを確かめる(=十分性)
③ ①と②が両方言えて、はじめて答え
①だけで終わっている答案は非常に多い。「逆に、このとき確かに成り立つ」の一文を書けるかどうかで、点が変わります。
答案では「⇒」と「⇔」を書き分ける
同値だとわかっているところは ⇔、片道のところは ⇒。記号を書き分けるだけで、どこで確認が必要かが自分でもわかります。
つまずきポイント
① 2乗したあと、検算しない。無理方程式・絶対値つき方程式で、偽の解を答えてしまう最大の原因です。
② 両辺を文字で割る。x2 = x の両辺を x で割って x = 1 とすると、x = 0 という解が消えます。文字で割るなら、0の場合を必ず別に調べてください。
③ 代入して求めた値を、そのまま答えにする。代入は必要条件を出す道具です。「逆に、このとき成り立つことを確認する」まで書いて完結します。
④ 「⇔」を安易に使う。本当に両向きか、1つずつ確認してください。自信がないところは ⇒ で書いて、最後にまとめて十分性を確認するほうが安全です。
⑤ 場合分けの範囲が重なる/抜ける。絶対値を外すときの境目などで、すべての場合を尽くしているかを確認してください。重なっても構いませんが、抜けは致命的です。
例題
例題6-1(2乗は片道) 方程式 √(x + 2) = x を、同値性に注意して解いてください。
まず、同値な条件に書き直します。
左辺が定義されるためには x + 2 ≥ 0。
左辺は0以上なので、右辺も0以上でなければならず x ≥ 0。
両辺とも0以上とわかったので、ここではじめて2乗が同値になります。
√(x+2) = x ⇔ x ≥ 0 かつ x + 2 = x2
後半を解くと
x2 − x − 2 = 0 → (x − 2)(x + 1) = 0 → x = 2, −1
x ≥ 0 より x = 2。
答え:x = 2
条件を先に書かなかったら:x = 2, −1 の両方を答えてしまいます。x = −1 は左辺 √1 = 1、右辺 −1 で成り立ちません。2乗が符号の情報を消した結果、偽の解が生まれたのです。
2つの書き方:
(a) 先に条件を書く → 同値変形のまま進める(上の解法)
(b) 2乗してから検算する → ⇒ で進めて、最後に代入して確かめる
どちらでも構いませんが、(a)のほうが答案として明快です。とくに解が複数出るときは、(a)なら自動的に絞られます。
例題6-2(必要条件で絞って、十分性を確認する) 定数 a, b について、すべての実数 x で
a(x + 1)2 + b(x − 1)2 = 5x2 + 2x + 5
が成り立つとき、a, b の値を求めてください。
手順1:都合のよい値を代入して絞る(必要条件)。
x = 1 を代入すると、右の (x−1)2 が消えます。
a × 4 = 5 + 2 + 5 = 12 → a = 3
x = −1 を代入すると、左の (x+1)2 が消えます。
b × 4 = 5 − 2 + 5 = 8 → b = 2
ここまでで言えたのは「もし成り立つなら a = 3, b = 2 でなければならない」ということだけです。2つの値で確かめただけなので、すべての x で成り立つ保証はまだありません。
手順2:十分性を確認する。a = 3, b = 2 のとき、左辺を実際に展開します。
3(x+1)2 + 2(x−1)2 = 3(x2+2x+1) + 2(x2−2x+1)
= 3x2 + 6x + 3 + 2x2 − 4x + 2 = 5x2 + 2x + 5
確かに右辺と一致しました。よってすべての実数 x で成り立ちます。
答え:a = 3, b = 2
手順2を書かないとどうなるか:この問題では結果的に正しいのですが、「2点で合ったから全部で合う」は論理的に成り立ちません。もし右辺が3次式だったら、2点で合わせても一致しません。「逆に、このとき確かに成り立つ」の一文が、答案を完結させます。
別解(係数比較):最初から展開して (a+b)x2 + (2a−2b)x + (a+b) = 5x2 + 2x + 5。恒等式なので係数を比較して a + b = 5、2a − 2b = 2。解いて a = 3, b = 2。この方法なら最初から同値変形なので、十分性の確認は不要です(係数比較は同値だから)。代入法は速いが確認が要る、係数比較は手間だが確認が要らない——使い分けてください。
例題6-3(両辺に文字を掛ける・割る) 次の答案の誤りを指摘し、正しく解いてください。
[問題]方程式 x2 = x を解け。
[誤った答案]
両辺を x で割ると x = 1。
よって x = 1。
誤りの指摘:x で割るには x ≠ 0 が必要です。この答案は x = 0 の場合を調べておらず、解 x = 0 を落としています。
正しい解答(方法1:移項して因数分解)
x2 − x = 0 → x(x − 1) = 0 → x = 0, 1
正しい解答(方法2:場合分け)
・x = 0 のとき:0 = 0 で成立。よって解。
・x ≠ 0 のとき:両辺を x で割って x = 1。
合わせて x = 0, 1。
答え:x = 0, 1
覚えておくべきこと:方程式で「割る」は原則として避け、「移項して因数分解」にする。割ると解が消え、掛けると解が増えます。因数分解なら、どちらも起きません。
逆のパターン:1/x = 1/2 の両辺に x を掛けて 1 = x/2、つまり x = 2。この場合は、もともと x ≠ 0 が前提(分母だから)なので問題ありません。「掛ける・割る文字が0になりうるか」を毎回確認してください。
例題6-4(場合分けの網羅性) 不等式 |x − 1| < 2 を解き、場合分けが正しく尽くされているか確認してください。
方法1:絶対値の意味から一気に
|x − 1| < 2 ⇔ −2 < x − 1 < 2 ⇔ −1 < x < 3
方法2:場合分けして
・x ≥ 1 のとき:|x−1| = x−1 なので x − 1 < 2、すなわち x < 3。この場合の条件と合わせて 1 ≤ x < 3
・x < 1 のとき:|x−1| = −(x−1) = 1−x なので 1 − x < 2、すなわち x > −1。合わせて −1 < x < 1
2つを合わせて −1 < x < 3。方法1と一致しました。
答え:−1 < x < 3
網羅性の確認:場合分けは「x ≥ 1」と「x < 1」の2つで、すべての実数を尽くしています(重なりもありません)。境目の x = 1 は前者に入れました。どちらに入れても構いませんが、必ずどちらかに入れる——これが網羅性です。
よくある誤り:「x > 1」と「x < 1」で分けると、x = 1 がどこにも入りません。実際 x = 1 は |0| = 0 < 2 で解なので、これを落とすと答えが −1 < x < 1 と 1 < x < 3 になってしまいます。境目を必ずどちらかに入れる。数学I・Aの絶対値から数学IIIの積分まで、ずっと同じ注意です。
2つの方法で一致させる意味:異なる道筋で同じ答えが出れば、まず間違いありません。時間があるときは、必ず2通りで確かめてください。
例題6-5(絶対値の同値変形) (1) 方程式 |x − 1| = 2x − 3 を解いてください。(2) 不等式 |x − 1| < 2x − 3 を解いてください。
考え方:絶対値は「場合分けして外す」以外に、同値な式に言いかえる道があります。
|A| = B ⇔ (A = B または A = −B) かつ B ≥ 0
|A| < B ⇔ −B < A < B
上の B ≥ 0 を落とすと、左辺は0以上なのに右辺が負、という組を拾ってしまいます。この章の道具のうち、いちばん落としやすい条件です。
(1) x − 1 = 2x − 3 より x = 2。このとき右辺は 2 × 2 − 3 = 1 ≥ 0 なので適する。
x − 1 = −(2x − 3) より 3x = 4、x = 4/3。このとき右辺は 8/3 − 3 = −1/3 < 0 なので適しません。
(2) −(2x − 3) < x − 1 < 2x − 3 に直します。
左側:−2x + 3 < x − 1 → 3x > 4 → x > 4/3
右側:x − 1 < 2x − 3 → x > 2
両方を満たすのは x > 2。
答え:(1) x = 2 (2) x > 2
確認:(1) で x = 4/3 を入れてみると、左辺は |4/3 − 1| = 1/3、右辺は −1/3。符号が違うので等しくなりようがありません。2乗して解いたときに紛れこむのと同じ種類の余分な解です。
(2) の −B < A < B という形には B > 0 が自動的に含まれています(−B < B が必要なので)。だから不等式のほうは右辺の符号の条件を別に書かなくてよい——ここが等式との違いです。
境目の x = 2 では両辺とも 1 で等しくなり、< は成り立ちません。等号を含むかどうかは、境目に代入すれば確かめられます。
この章のチェックリスト
| 確認すること | できていないと起きること |
|---|---|
| 2乗する前に符号条件を書いたか | 偽の解が混ざる |
| 文字で割る前に0の場合を調べたか | 解が消える |
| 代入で絞ったあと十分性を確認したか | 証明が半分で終わる |
| ⇒ と ⇔ を書き分けたか | どこで確認が要るか見失う |
| 場合分けが全体を尽くしているか | 境目の解を落とす |
| 元の式に代入して検算したか | 片道変形の副作用に気づけない |
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第7章 数学的帰納法
「すべての自然数について成り立つ」を示すための方法です。自然数は無限にあるので、1つずつ確かめることはできません。そこでドミノ倒しの仕組みを使います。
[I] 1枚目が倒れる(n = 1 で成り立つ)
[II] どの1枚が倒れても、次の1枚が倒れる(n = k で成り立てば n = k+1 でも成り立つ)
この2つが言えれば、並んだドミノは全部倒れます。無限個を、2つの確認で片づける——これが帰納法の発想です。
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使う道具
| 道具 | 形 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 基本形 | [I] n = 1 で成立 [II] n = k ⇒ n = k+1 | すべての自然数で示す |
| 出発点をずらす | n ≥ 5 なら [I] は n = 5 から | 問題文の範囲に合わせる |
| 等式の証明 | 仮定の式を代入して変形 | いちばん基本 |
| 整除性の証明 | n = k のとき ◯の倍数と仮定 | 差を作って倍数を示す |
| 不等式の証明 | 仮定で下(上)から評価して、さらに進める | 途中でもう一段の不等式が要る |
| 2つ前まで使う形 | n = k, k+1 を仮定して n = k+2 を示す | an+2 |
| 仮定の明示 | 「仮定より」と書く | ここが評価される |
| 予想してから証明する | n = 1, 2, 3, … を並べて一般項を予想 → 帰納法で確かめる | 漸化式で定まる数列 |
定石
答案の骨格は、いつも同じ
[I] n = 1 のとき(左辺)=(右辺)を確かめる
[II] n = k のとき成り立つと仮定する(式を(*)などと名前を付ける)
n = k + 1 の式を書き、(*)を使って変形する
n に k+1 を入れた形と一致することを示す
[I][II] より、すべての自然数 n で成り立つ
「どこで仮定を使ったか」を必ず示す
仮定を一度も使っていない証明は、帰納法になっていません。「仮定より」「(*)を用いて」と書き、使った場所をはっきりさせてください。採点者が見るのはそこです。
整除性は「差を作る」
n = k+1 の式から n = k の式を引くと、仮定で「倍数」とわかっている部分が分離できます。あとは残りが倍数であることを示せば完了です。
式でいえば f(k+1) = f(k) + (残り) の形にして、f(k) は仮定より倍数、(残り)も倍数と2つに分けます。
不等式は「仮定で評価してから、もう一段」
仮定を使って途中まで進めても、目標にはまだ届かないことが多い。そこからもう一つ不等式を作るのが不等式の帰納法の山場です。この「もう一段」の部分を、独立した不等式として先に確認しておくと書きやすくなります。
つまずきポイント
① 仮定を使わない。n = k+1 の式を最初から計算し直しているなら、それは帰納法ではありません。必ず n = k の式を経由してください。
② [I] の出発点を n = 1 に固定する。「n ≥ 5 のとき」という問題なら、[I] は n = 5 で確かめます。問題文の範囲に合わせてください。
③ 「n = k のとき成り立つ」を「すべての n で成り立つ」と読む。[II]で仮定しているのは1つの k についてだけです。「成り立つと仮定してよいのか」と迷う人が多いのですが、これは「もし倒れたなら、次も倒れる」を確認しているだけで、循環論法ではありません。
④ 2つ前まで使う形で、[I] を1つしか確かめない。an+2 = 3an+1 − 2an のように2つ前を使う漸化式なら、[I] は n = 1 と n = 2 の両方が必要です(ドミノを2枚倒しておかないと連鎖が始まりません)。
⑤ 結論の一文を書かない。「[I][II] より、すべての自然数 n について成り立つ」で締めてください。ここまで書いて証明が完結します。
例題
例題7-1(等式の証明) すべての自然数 n について
1 + 3 + 5 + … + (2n − 1) = n2
が成り立つことを、数学的帰納法で証明してください。
[I] n = 1 のとき
左辺 = 1、右辺 = 12 = 1。成り立ちます。
[II] n = k のとき成り立つと仮定する
1 + 3 + … + (2k − 1) = k2 …(*)
n = k + 1 のときの左辺は、n = k の左辺に 2(k+1) − 1 = 2k + 1 を足したものです。
1 + 3 + … + (2k − 1) + (2k + 1)
= k2 + (2k + 1) (ここで(*)を使いました)
= k2 + 2k + 1 = (k + 1)2
これは右辺の n に k+1 を入れた形と一致します。よって n = k+1 でも成り立ちます。
[I][II] より、すべての自然数 n について成り立ちます。(証明終わり)
確認:n = 4 なら 1 + 3 + 5 + 7 = 16 = 42 ✓
意味を図で見る:この等式は「奇数を順に足すと正方形の面積になる」という意味です。1 個の正方形に、L字型に 3 個足すと 2 × 2、さらにL字型に 5 個足すと 3 × 3——帰納法の [II] が、まさにこの「L字を1つ足す」操作にあたります。
例題7-2(整除性の証明) すべての自然数 n について、n3 + 5n は6の倍数であることを証明してください。
[I] n = 1 のとき
1 + 5 = 6。6の倍数です。
[II] n = k のとき成り立つと仮定する
k3 + 5k = 6m(m は整数) …(*)
n = k + 1 のときを計算します。
(k+1)3 + 5(k+1) = k3 + 3k2 + 3k + 1 + 5k + 5
= (k3 + 5k) + 3k2 + 3k + 6
(*)を使って、最初のかっこを 6m に置きかえます。
= 6m + 3k(k + 1) + 6
ここで k(k+1) は連続する2つの整数の積なので、必ず偶数です。だから 3k(k+1) は 3 × 偶数 = 6 の倍数。
よって全体は「6の倍数 + 6の倍数 + 6」となり、6の倍数です。
[I][II] より、すべての自然数 n について n3 + 5n は6の倍数です。(証明終わり)
確認:n = 1, 2, 3, 4 で 6, 18, 42, 84。すべて6で割り切れます ✓
山場は「k(k+1) は偶数」:これは連続する2整数のうち、必ず一方は偶数だからです。この小さな事実を知っているかどうかで、この問題が解けるかが決まります。整数の性質で習った道具が、帰納法の中で効いています。
差を作る形:f(k+1) − f(k) = 3k2 + 3k + 6 と先に差だけ計算してもよい。差が6の倍数で、出発点も6の倍数なら、全部6の倍数です。整除性の帰納法は、この「差を見る」形で書くと短くなります。
例題7-3(不等式の証明) n ≥ 5 であるすべての自然数 n について 2n > n2 が成り立つことを証明してください。
[I] n = 5 のとき(出発点は1ではなく5です)
25 = 32、52 = 25。32 > 25 なので成り立ちます。
[II] n = k(k ≥ 5)のとき成り立つと仮定する
2k > k2 …(*)
n = k + 1 のとき
2k+1 = 2 · 2k > 2k2 ((*)を使いました)
ここでもう一段の不等式が必要です。2k2 > (k+1)2 を示します。
2k2 − (k+1)2 = 2k2 − k2 − 2k − 1 = k2 − 2k − 1 = (k − 1)2 − 2
k ≥ 5 なので (k−1)2 ≥ 16 > 2。したがって 2k2 − (k+1)2 > 0、すなわち 2k2 > (k+1)2。
2つをつなげて
2k+1 > 2k2 > (k+1)2
よって n = k+1 でも成り立ちます。
[I][II] より、n ≥ 5 のすべての自然数で成り立ちます。(証明終わり)
確認:n = 5, 6, 7 で 32 > 25、64 > 36、128 > 49 ✓。なお n = 4 では 16 = 16 で等号、n = 3 では 8 < 9 で不成立。だから出発点が5なのです。
不等式の帰納法の型:
① 仮定で 2k+1 > 2k2 まで進む
② 「そこから目標まで」の不等式 2k2 > (k+1)2 を別に示す
③ 2つをつなぐ
②を独立した小問だと思って先に片づけると、答案がすっきりします。
例題7-4(2つ前まで使う形) a1 = 1、a2 = 3、an+2 = 3an+1 − 2an で定まる数列について、すべての自然数 n で an = 2n − 1 であることを証明してください。
[I] n = 1, 2 のとき(2つ前を使う漸化式なので、出発点は2つ必要です)
n = 1:21 − 1 = 1 = a1 ✓
n = 2:22 − 1 = 3 = a2 ✓
[II] n = k と n = k + 1 のとき成り立つと仮定する
ak = 2k − 1 かつ ak+1 = 2k+1 − 1 …(*)
漸化式に代入すると
ak+2 = 3ak+1 − 2ak = 3(2k+1 − 1) − 2(2k − 1) ((*)を使いました)
= 3 · 2k+1 − 3 − 2k+1 + 2
= 2 · 2k+1 − 1 = 2k+2 − 1
これは n = k+2 のときの形と一致します。
[I][II] より、すべての自然数 n で an = 2n − 1 です。(証明終わり)
確認:漸化式から a3 = 3 × 3 − 2 × 1 = 7 = 23 − 1 ✓、a4 = 3 × 7 − 2 × 3 = 15 = 24 − 1 ✓
なぜ [I] が2つ必要か:a3 を出すには a1 と a2 の両方が要ります。ドミノでいえば、2枚並べて押さないと連鎖が始まらない——そういう仕組みです。[I] を1つしか書かないと、そこで証明が成立しません。
いくつ必要かの見分け方:漸化式が「いくつ前まで使っているか」を数えてください。an+2 が an+1 と an を使うなら2つ、3つ前まで使うなら3つです。
例題7-5(予想してから帰納法で示す) a1 = 1、an+1 = an / (1 + an) で定まる数列について、一般項 an を求めてください。
考え方:漸化式をそのまま解く道もありますが、まず小さい番号をいくつか書き出して形を予想し、それを帰納法で確かめるという進み方があります。予想が当たっていれば、証明そのものは短く済みます。「思いついた形が正しいか」を保証する役目を、帰納法が引き受けてくれる、と考えるとよいところです。
a1 = 1、a2 = 1/(1 + 1) = 1/2、a3 = (1/2)/(3/2) = 1/3、a4 = (1/3)/(4/3) = 1/4
→ an = 1/n と予想できます。
[I] n = 1 のとき a1 = 1 = 1/1 で成り立ちます。
[II] n = k のとき ak = 1/k が成り立つと仮定します。このとき
ak+1 = ak/(1 + ak) = (1/k) / (1 + 1/k) = (1/k) / {(k + 1)/k} = 1/(k + 1)
となり、n = k + 1 のときも成り立ちます。
[I][II]より、すべての自然数 n について an = 1/n。
答え:an = 1/n
確認:[II]で仮定 ak = 1/k を実際に使っているかを見てください。使わずに書けてしまったなら、それは帰納法になっていません。ここでは ak を 1/k に置きかえた瞬間に仮定を使っています。
予想は3〜4項では足りないことがあります。a5 = 1/5、a6 = 1/6 まで確かめておくと安心です。ただしいくつ確かめても、それだけでは証明になりません。並べて予想するのは形を見つけるためで、正しさは[I][II]が支えています。
この問題は逆数をとって 1/an+1 = 1/an + 1(等差数列)と見ることもできます。2通りで同じ答えになるかを確かめると、検算になります。
この章のチェックリスト
| 確認すること | できていないと起きること |
|---|---|
| [I] の出発点は問題文と合っているか | 成り立たない範囲まで主張する |
| [I] は必要な数だけ確かめたか | 連鎖が始まらない |
| 仮定を実際に使ったか | 帰納法になっていない |
| 「仮定より」と明示したか | 評価されない |
| 不等式で「もう一段」を示したか | 目標まで届かない |
| 結論の一文を書いたか | 証明が完結しない |
もっと解きたい方へ 👉 漸化式と数学的帰納法の特訓道場(20題と全解説)
第8章 答案の論理チェック
最後の章では、実際の答案から誤りを探してもらいます。ここまでの7章で扱った型が、どんな形で答案に現れるのか——それを確かめる章です。
どの答案も、計算そのものは合っています。それでも点が来ない。なぜかを考えてみてください。
ここが怪しければ先に:同値変形と「必要条件で絞る」・必要条件・十分条件 / この先:ここが到達点です / この単元の解法パターン:式と証明 全16型
使う道具
| よくある穴 | 直し方 | 関連する章 |
|---|---|---|
| A2 = B2 | A = ±B | 第6章 |
| 文字で割る | 0の場合を別に調べる | 第6章 |
| √(x2) を x とする | |x| | 第1章 |
| 相加相乗で等号を確認しない | 等号成立の値が定義域内か見る | 第3章 |
| 代入で絞って終わる | 十分性を確認する | 第6章 |
| 逆を証明する | 問われた向きを確認する | 第4章 |
| 場合分けに抜けがある | 境目をどちらかに入れる | 第6章 |
| 「すべて」の否定を誤る | 「ある〜が〜でない」にする | 第3章 |
定石
答案を書き終えたら、この順にチェックする
① 問われた向きを証明したか(p ⇒ q か q ⇒ p か)
② 片道の変形(2乗・割る・代入)を使ったなら、検算したか
③ 場合分けは全体を尽くしているか、境目はどちらに入れたか
④ 条件(定義域・真数条件・置きかえた文字の範囲)を書いたか
⑤ 等号が成り立つのはどこか、書いたか
⑥ 結論の一文で締めたか
この6項目は、単元を問わず全部の答案に効きます。試験の見直し時間には、計算をやり直すよりこの6項目を確認するほうが効率がよいことが多いです。
つまずきポイント
① 計算だけ見直して、論理を見直さない。計算ミスは自分で気づきやすいのですが、論理の穴は「気づかないから穴になっている」のです。だからチェックリストで機械的に確認します。
② 「答えが合っているから正しい」と思う。記述式では途中の論理も採点対象です。答えが合っていても、途中に片道の変形が確認なしで入っていれば減点されます。
③ 「わかっているから書かなくていい」と省く。答案は読み手に伝えるための文章です。自分がわかっていても、書いていなければ伝わりません。とくに条件と等号成立は、書かなければ点になりません。
④ 図やグラフを描かずに進める。場合分けの網羅性や上下関係は、図があれば一目で確認できます。答案に描かなくても、手元では必ず描いてください。
例題
例題8-1(2乗の落とし穴) 次の答案の誤りを指摘し、正しい答えを求めてください。
[問題]方程式 (x − 3)2 = (2x + 1)2 を解け。
[誤った答案]
両辺の平方根をとって x − 3 = 2x + 1。
よって x = −4。
誤りの指摘:A2 = B2 から言えるのは A = B だけではなく、A = B または A = −B です。この答案はもう一方の解を落としています。
正しい解答
(x−3)2 = (2x+1)2 ⇔ x − 3 = 2x + 1 または x − 3 = −(2x + 1)
前者から x = −4。後者から x − 3 = −2x − 1、3x = 2、x = 2/3。
答え:x = −4, 2/3
確認:x = −4 なら左辺 49、右辺 49 ✓。x = 2/3 なら左辺 (−7/3)2 = 49/9、右辺 (7/3)2 = 49/9 ✓
別解(移項して因数分解):(x−3)2 − (2x+1)2 = 0 を A2 − B2 = (A+B)(A−B) の形で因数分解すると
{(x−3) + (2x+1)}{(x−3) − (2x+1)} = (3x − 2)(−x − 4) = 0
よって x = 2/3, −4。因数分解なら解が消えることも増えることもありません。第6章で書いたとおり、「割る」より「因数分解」が安全です。
例題8-2(根号の外し方) 次の答案の誤りを指摘してください。
[問題]a = −3 のとき、√(a2) の値を求めよ。
[誤った答案]
√(a2) = a なので、√(a2) = −3。
誤りの指摘:√ は0以上の値を返す記号です。だから √(a2) = a ではなく
√(a2) = |a|
正しい解答:√(a2) = |a| = |−3| = 3
答え:3
確認:a2 = 9 なので √9 = 3。負にはなりません ✓
この誤りが効いてくる場面:数学IIIの曲線の長さ、置換積分、三角関数の相互関係で頻出します。たとえば √(1 − sin2θ) = |cos θ| であって、cos θ とは限りません。θ の範囲を確認して、cos θ ≥ 0 だとわかってはじめて絶対値が外せます。
覚え方:√ を書いた瞬間、その値は0以上。中身が何であっても、出てくる値は必ず0以上です。
例題8-3(相加相乗の等号) 次の答案の誤りを指摘し、正しい答えを求めてください。
[問題]x ≥ 3 のとき、x + 4/x の最小値を求めよ。
[誤った答案]
x > 0 なので、相加平均・相乗平均の関係より
x + 4/x ≥ 2√(x · 4/x) = 2√4 = 4
よって最小値は 4。
誤りの指摘:等号が成立する値が、定義域の中にあるか確認していません。等号が成り立つのは x = 4/x、すなわち x = 2 のときですが、x = 2 は定義域 x ≥ 3 の外です。だから 4 という値には届きません。
正しい解答 f(x) = x + 4/x とおきます。
f′(x) = 1 − 4/x2 = (x2 − 4)/x2
x ≥ 3 では x2 − 4 ≥ 5 > 0 なので f′(x) > 0、つまり単調増加。したがって最小値は左端の x = 3 でとります。
f(3) = 3 + 4/3 = 13/3
答え:x = 3 のとき最小値 13/3(約 4.33)
確認:f(3) = 4.33、f(4) = 5、f(5) = 5.8。確かに x = 3 が最小で、4 より大きいことがわかります。
この誤りの本質:相加平均・相乗平均の関係が示すのは「これ以上小さくならない」という下限であって、その値に届くとは限りません。不等式が成り立つことと、それが最大最小であることは別——第3章で書いた「すべて/ある」の話と同じ構造です。
チェックの手順:相加相乗を使ったら、必ず① 等号が成り立つ値を求める ② その値が定義域内かを確認する。この2行を書けば、この誤りは起きません。
例題8-4(総合チェック) 次の答案には2か所の誤りがあります。両方指摘してください。
[問題]すべての実数 x について ax2 + 2x + a > 0 が成り立つような定数 a の範囲を求めよ。
[誤った答案]
判別式を考えて D/4 = 1 − a2 < 0。
よって a < −1 または a > 1。
誤り①:a = 0 の場合を調べていない。a = 0 なら式は 2x > 0 となり、2次式ではなく1次式です。x が負のときに成り立たないので、a = 0 は不適——しかし、それを確かめる記述が必要です。
誤り②:下に凸であることを確認していない。判別式が負でも、上に凸(a < 0)なら、グラフ全体が x 軸より下にあり、条件を満たしません。a > 0 が必要です。
正しい解答
(i) a = 0 のとき:2x > 0 は x ≤ 0 で成り立たないので不適。
(ii) a ≠ 0 のとき:2次関数なので、すべての x で正になる条件は
a > 0(下に凸)かつ D/4 = 1 − a2 < 0
1 − a2 < 0 より a < −1 または a > 1。a > 0 と合わせて a > 1。
答え:a > 1
確認:a = 2 なら 2x2 + 2x + 2 = 2(x + 1/2)2 + 3/2 > 0 ✓。a = −2 なら x = 0 のとき −2 < 0 で不適 ✓。a = 1 なら x2 + 2x + 1 = (x+1)2 ≥ 0 で、x = −1 のとき 0 になるので「> 0」を満たさず不適 ✓
この問題が教えてくれること:「係数に文字があるなら、その文字が0の場合を疑う」と「判別式だけでは足りない。凸の向きも要る」。どちらも場合分けの網羅性の話です。境界の a = 1 を実際に確かめるところまでやると、等号を含めるかどうかも確定します。
例題8-5(文字で割る) 次の答案の誤りを指摘し、正しい答えを求めてください。
[問題]方程式 x3 = 4x を解け。
[誤った答案]
両辺を x で割って x2 = 4。
よって x = ±2。
誤りの指摘:x で割った時点で、x = 0 の場合が消えています。割り算ができるのは 0 でないものだけなので、割る前に「x ≠ 0 のとき」と断り、x = 0 の場合を別に調べる必要があります。この問題では x = 0 も 0 = 0 で成り立つので、解が1つ落ちています。
正しい解答
x3 − 4x = 0
x(x2 − 4) = 0
x(x − 2)(x + 2) = 0
x = 0, 2, −2
答え:誤りは「x = 0 の場合を調べずに x で割ったこと」。正しい解は x = 0, 2, −2
確認:移項して「=0」にしてから因数分解すると、この落とし穴は最初から起きません。「割る」より「積の形にする」——方程式では、こちらを先に考えるほうが安全です。
同じ誤りは、式変形の途中でも起きます。(x − 1)x = (x − 1) × 3 から両辺を x − 1 で割って x = 3 とすると、x = 1 が落ちます(x = 1 のときは両辺とも 0 で成り立ちます)。正しくは (x − 1)(x − 3) = 0 から x = 1, 3。
証明の答案でも同じで、ac = bc から a = b と書けるのは c ≠ 0 のときだけです。「割る」と書いた瞬間に、割る相手が 0 でないことを断れているか——これを自分に確かめる習慣にしてください。
この章のチェックリスト
| 確認すること | できていないと起きること |
|---|---|
| A2 = B2 から ± を出したか | 解を半分落とす |
| √(a2) を |a| としたか | 負の値を答えてしまう |
| 相加相乗で等号成立を確認したか | 届かない値を最小と書く |
| 係数の文字が0の場合を調べたか | 場合分けに抜けが出る |
| 凸の向きと判別式の両方を書いたか | 条件が足りない |
| 境界の値を実際に代入して確かめたか | 等号を含め違える |
もっと解きたい方へ 👉 大学入試の過去問 全問解説 ── このチェックリストを、実際の記述式答案に当ててみてください。
最後に:減点されない答案のための3つの習慣
8章を見てきました。扱った内容は違って見えますが、減点の原因はほとんど3つに集約されます。最後にそれを整理しておきます。
習慣1 書き始める前に「何を仮定して、何を導くか」を1行で書く
証明の向きを取り違える誤り(第4章の例題4-4)は、この1行があるだけで防げます。
・「n が3の倍数であるとすると」
・「√2 が有理数であると仮定すると」
・「n = k のとき成り立つと仮定すると」
・「(⇒ の証明)p を仮定して q を導く」
どれも当たり前に見えますが、この一言を書かない答案は、読み手にとって向きが不明です。そして書き手自身も、途中で向きを見失います。最初の1行が、答案全体の骨格になります。
習慣2 「片道の変形」を使ったら、必ず戻して確かめる
この範囲で最も多い失点は、計算ミスではなく変形の副作用です。
| やった操作 | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| 2乗する | 解が増える | 符号条件を先に書くか、検算する |
| 文字で割る | 解が消える | 0の場合を別に調べる/因数分解する |
| 文字を掛ける | 解が増える | 掛けた文字が0の場合を除く |
| 特定の値を代入する | 必要条件しか出ない | 十分性を確認する |
| 根号を外す | 符号が失われる | √(a2) = |a| |
| 不等式を評価する | 下限に届くとは限らない | 等号成立を確認する |
どれも1行書くだけです。逆に、書かなければ計算がすべて合っていても答えが違ってしまいます。
習慣3 場合分けは「全体を尽くしているか」を数直線で確かめる
抜けのある場合分けは、本人には見えません。だから図で確かめます。
・境目の値はどちらかに必ず入れる(重なるのは構わない、抜けが致命的)
・係数に文字があるなら、その文字が0の場合を疑う
・2次の条件なら、凸の向きと判別式の両方が要る
・「すべて/ある」を否定したら、等号が反転する
この確認の習慣は、成績が上がる速さそのものに直結します。自分で穴を見つけられる人は、模試の返却を待たずに修正できるからです。
論理を身につけるために、次にやること
このページを読み終えたら、自分が最近書いた答案を1つ選んで、第8章のチェックリストで見直してみてください。「条件を書いていない」「等号成立を確認していない」——ほぼ確実に、どこかが見つかります。
それが、あなたが次に伸びる場所です。
論理以外の失点も点検するなら:答案の減点辞典(6部25型)。置きかえの範囲・絶対値・解の配置・等号成立・置換積分の区間など、全単元の失点を原因別に25型そろえた索引です。本ページは、そのうち論理の型を深く扱う本体にあたります。
よくある質問
必要条件と十分条件が、どうしても覚えられません
言葉で覚えようとするから難しいのです。矢印を書いて、集合の入れ子を描いてください。P ⊂ Q のとき、狭いほうの P が十分条件、広いほうの Q が必要条件。「東京都民 ⊂ 日本国民」で確かめれば、どちらがどちらか一瞬で決まります。第2章に詳しく書きました。
背理法と対偶証明は、どう使い分けますか
結論が「〜でない」の形なら背理法、仮定と結論の両方を否定したほうが具体的に置けるなら対偶です。たとえば「√2 は無理数」は「有理数でない」なので背理法。「n2 が偶数ならば n は偶数」は、対偶にすると「n が奇数」=「2k+1 と置ける」となって扱いやすいので対偶。「具体的な形に置けるほうを仮定にする」が判断基準です。
「必要条件で絞ってから十分性を確認する」が、なぜ必要なのですか
代入して求めた値は「もし成り立つなら、この値でなければならない」ということしか示していないからです。実際にすべての場合で成り立つ保証は、まだありません。たとえば2点で値が一致しても、3次式なら全体では一致しません。「逆に、このとき確かに成り立つ」の一文を書いて、はじめて証明が完結します。第6章の例題6-2で実演しています。
数学的帰納法で「成り立つと仮定する」のは、ずるくないですか
よくある疑問です。ずるくありません。[II]で確かめているのは「もし n = k で成り立つなら、n = k+1 でも成り立つ」という条件つきの主張だけです。「成り立つ」と言い切っているわけではありません。そのうえで[I]が「n = 1 では確かに成り立つ」を示すので、連鎖が始まります。ドミノを2枚の確認で全部倒す仕組みだと考えてください。
記述式で、どこまで書けばよいのかわかりません
目安は「同じ学年の友人が読んで、途中で止まらないか」です。飛ばしてよいのは計算の細部だけで、論理の接続(なぜそう言えるのか)は省略しないのが原則。とくに条件(定義域・真数条件・置きかえた文字の範囲)と等号成立は、短くても必ず書いてください。第8章のチェックリストで確認できます。
計算は合っているのに点が来ません。何を直せばいいですか
第8章のチェックリスト6項目を、実際の答案に当ててみてください。① 問われた向き ② 片道の変形の検算 ③ 場合分けの網羅 ④ 条件の明記 ⑤ 等号成立 ⑥ 結論の一文。この6つのどれかが抜けているはずです。試験の見直し時間は、計算をやり直すより、この6項目を確認するほうが効率がよいことが多いです。
このページの例題は、どこかの問題集から取ったものですか
いいえ。解説・および出典を明記していない例題は、すべて数強塾が新規に書き下ろしたものです。市販の参考書や問題集から解説や問題文を転載したものは含まれていません。数値も、こちらで設定して検算したうえで掲載しています。大学入試で実際に出題された問題を扱った箇所(第5章の例題5-4)は、出題大学と年度を明記し、解答・解説は数強塾が独自に書いています。
ほかの範囲の辞典はありますか
あります。数学I・Aの要点辞典(全9単元)、数学II・B・Cの要点辞典(全12単元)、数学IIIの要点辞典(全7単元) を公開しています。また、分野を横断する解き方の型は 入試数学の定石(全27章) にまとめてあります。
「すべての x で成り立つ」と「ある x で成り立つ」は何が違いますか
示すべきことも、否定の形も変わります。「すべて」は1つでも反例があれば偽、「ある」は1つ見つければ真。否定すると入れかわり、「すべての x で P」の否定は「ある x で P でない」になります。2次不等式が「すべての実数で成り立つ」条件では、2次の係数が 0 の場合を落としやすい点にも注意してください。第3章「すべて」と「ある」で扱っています。
答案で「⇒」と「⇔」は、どう書き分ければいいですか
戻る道があるかどうかで決めます。両方向が言えるときだけ ⇔、片方向しか言えないときは ⇒ です。2乗する・文字で割るといった変形は片道なので、⇔ で書くと誤りになります。迷ったら ⇒ で書き、最後に十分性を確認するほうが安全です。第6章 同値変形に、片道になる変形を一覧にしてあります。
数強塾からのご案内
数強塾は、数学を専門にしたオンライン個別指導塾です。中学生・高校生を対象に、一人ひとりの理解の状態に合わせて指導しています。
論理の穴は、自分では気づけないから穴になっています。答案を人に読んでもらって「ここは何を仮定しているの?」と聞かれる経験は、独学ではなかなか得られません。記述式で点が伸び悩んでいるなら、一度ご相談ください。
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数強塾オリジナル 追加演習4題——「よくある穴」の表に、例題のない3行がある
第8章の「よくある穴」の表には8行あります。例題8-1〜8-5は、そのうち5行を扱っています。
残っているのはこの3行です。
代入で絞って終わる → 十分性を確認する(第6章)
逆を証明する → 問われた向きを確認する(第4章)
「すべて」の否定を誤る → 「ある〜が〜でない」にする(第3章)
残った3行には共通点があります。例題8-1〜8-5が扱ったのは式変形の穴(2乗・根号・割り算・場合分け)でしたが、この3行は論理そのものの穴です。この辞典が本来いちばん扱うべき種類の穴が、例題から漏れています。3行に1問ずつ、最後に3つが同時に出る答案を1問、合わせて4題を置きます。
追加第1問(表5行目:代入で絞って終わる)
[問題]すべての実数 について が成り立つとき、定数 を求めよ。
誤った答案
を代入して 。
を代入して 、よって 。
を代入して 、よって 。
これらを解いて 。
誤りの指摘
値そのものは合っています。足りないのは、この3つの値が答えである根拠です。
代入で分かったのは「 の3つで成り立つならば でなければならない」ということ、つまり必要条件だけです。問われているのは「すべての実数 で成り立つ」ことなので、 のときに実際に恒等式になることを確かめる一行が要ります。
正しい答案(十分性の確認まで)
上の3式から 。このとき左辺は
となり、たしかにすべての で右辺と一致する。よって 。
第6章の「必要条件で絞る」は2段構えの型です。絞る(必要条件)→ 確かめる(十分性)。前半だけで止めると、答えが合っていても論理が閉じていません。代入は速く候補を出すための手であって、それ自体は証明ではない——ここが表の5行目の意味です(なぜ方程式と恒等式は区別しなければならないのか)。
検算
代入に使っていない値で確かめます。:左辺 、右辺 。○
:左辺 、右辺 。○ 代入で絞ったあとの確認は、絞るのに使わなかった値でやると意味があります。使った値で確かめても、当たり前に合ってしまいます。
追加第2問(表6行目:逆を証明する)
[問題]実数 について、「 ならば または 」を証明せよ。
誤った答案
または とする。
のとき 。同様に のときも和は大きくなるので 。よって示された。
誤りの指摘
この答案が示したのは 「 または 」——問われた命題の逆です。
しかも、この逆は偽です。反例:。 は成り立ちますが、 で より大きくありません。偽の命題を「証明」してしまっていることになります。
正しい答案(対偶を使う)
結論が「または」の形なので、そのままでは扱いにくい。対偶を取ります(第4章)。結論の否定は、ド・モルガンで「かつ」に変わります(第1章)。
これは辺々を足すだけで示せます。 と より 。
対偶が真なので、もとの命題も真。
「または」が結論に来たら対偶を疑う——これは第4章と第1章が合流する場所です。そして逆が偽であることを確かめておくと、自分が逆を証明していないかの検算になります。もし逆が真なら(必要十分なら)、逆を証明しても結果的に正しい主張にはなりますが、問われた向きではないので答案としては不十分です。
検算
もとの命題を、いくつかの点で確かめます。 となる組をとって、結論が成り立つかを見ます。
:和 。 ○ :和 。 ○ :和 。 ○
3つ目は が負ですが、 のほうが を超えているので「または」は成り立っています。○ 「または」は片方が成り立てばよい——ここを「両方」と読むと、反例を探しに行ってしまいます。
追加第3問(表8行目:「すべて」の否定を誤る)
[問題]「すべての実数 について 」が成り立たないような定数 の範囲を求めよ。
誤った答案
「成り立たない」ので、否定は「すべての実数 について 」。
ところが は下に凸なので、すべての で 以下になることはない。よってそのような は存在しない。
誤りの指摘
否定のしかたが違います。第3章のとおり、「すべて」の否定は「ある」です。
だから正しい否定は「ある実数 が存在して 」。誤った答案は「すべて」を「すべて」のまま残し、不等号だけひっくり返しています。
正しい答案
「ある で 」となるのは、下に凸の放物線が 軸に接するか交わるとき、つまり
否定を「すべて」のまま残すと、もっと強い(成り立ちにくい)主張になってしまいます。「すべての で 以下」は確かにありえませんが、聞かれていたのは「1つでも 以下になる があるか」でした。全称と存在は、否定で入れかわります(存在命題の扱い|「ある」と「すべて」は順番で意味が変わる)。
検算
をいくつか試します。
: で、 のとき 。 をみたす が存在。○(範囲に含まれる)
: で 。○
: でつねに正。存在しない。○(範囲外)
: なのでつねに正。○(範囲外)
境界の が範囲に入ることも確かめられました(接する場合は なので をみたす)。○
追加第4問(3つが同時に出る答案)
[問題]すべての実数 について が成り立つような定数 の範囲を求めよ。
誤った答案
否定を考える。「ある で 」となるのは のとき。
より または 。
よって求める範囲は または 。
誤りの指摘
否定のしかたは正しい(追加第3問の教訓が生きています)。誤りは最後の一行です。
求めたのは「成り立たない」 の範囲であって、問われているのは「成り立つ」 の範囲。否定して解いたら、最後に否定を戻さなければいけません。答えはその補集合です。
正しい答案(否定を使わない道)
そもそも否定を経由しなくても解けます。「すべての で正」=「下に凸の放物線が 軸と共有点をもたない」なので
の係数が (正)で固定されているので、凸の向きの場合分けは不要です。
否定を使うなら、必ず最後に戻す。使わずに済むなら使わない。この問題では直接 と書けたので、否定を経由する必要がありませんでした。「成り立たない範囲」を求めて満足してしまうのは、第3章と第6章の穴が重なった形です。答案を書き終えたら、第8章のチェックリスト①「問われた向きを証明したか」を当ててください。
検算
境界の内と外を試します。式の最小値は (頂点の 座標)です。
:。最小値 。○(範囲内)
:最小値 。○(範囲内)
:。 で となり「」をみたさない。境界は含まない。○
:。 で 。○(範囲外)
:。 で 。○(範囲外)
誤った答案の答え( または )で を試すと成り立たない——境界の外を1つ入れるだけで、向きの取りちがえは分かります。
表の残り3行と、その直し方
| 表の行 | 関連する章 | 直し方 | |
|---|---|---|---|
| 追加第1問 | 代入で絞って終わる | 第6章 | 絞る(必要条件)→確かめる(十分性)の2段構え |
| 追加第2問 | 逆を証明する | 第4章 | 結論が「または」なら対偶。逆が偽なら即座に分かる |
| 追加第3問 | 「すべて」の否定を誤る | 第3章 | 「すべて〜」の否定は「ある〜が〜でない」。不等号も逆 |
| 追加第4問 | 3つが同時に | 第3・6章 | 否定して解いたら、最後に否定を戻す |
例題8-1〜8-5が扱ったのは、2乗・根号・割り算・場合分けという式の穴でした。この4題が扱ったのは論理の穴で、共通点は「計算はどこも間違っていない」ことです。第8章の冒頭に「どの答案も、計算そのものは合っています」とありますが、論理の穴のほうが、その傾向がさらに強いと言えます。
この4題で確認したこと
- 代入で絞るのは必要条件まで。十分性を確かめる一行で論理が閉じる(追加第1問)。
- 確認は絞るのに使わなかった値でやる。使った値では当たり前に合ってしまう。
- 結論が「または」なら対偶。ド・モルガンで「かつ」に変われば、足すだけで済むことが多い(追加第2問)。
- 逆が偽かどうかを確かめると、逆を証明していないかの検算になる。
- 「すべて」の否定は「ある〜が〜でない」。「すべて」のまま不等号だけ変えると、別の(もっと強い)主張になる(追加第3問)。
- 否定して解いたら、最後に否定を戻す。使わずに済むなら、はじめから使わない(追加第4問)。
- 4問とも境界の外を1つ入れるだけで誤りが露見します。第8章のチェックリスト①と③は、この1手で同時に確認できます。
この4題で使った章の詳しいページは、必要条件・十分条件の特訓道場(「どちらでもない」の追加演習つき)、同値変形と必要十分|2乗・分母払い・logで戻れなくなる場所、存在命題の扱い|「ある」と「すべて」は順番で意味が変わる にあります。
道具の「なぜ」は、なぜ反例は1個で命題を否定できるのか、なぜ必要条件と十分条件を矢印で考えられるのか、なぜ背理法で証明できるのか、なぜ数学的帰納法で無限個の命題を証明できるのか、なぜ方程式と恒等式は区別しなければならないのか にまとめてあります。
判別式まわりは 二次方程式とは(解と係数の関係の追加演習つき)と 不等式とは( の二次不等式の追加演習つき)、解の位置は 解の配置の原理 へ。
単元別の辞典は 数学I・A、数学II・B・C、数学III(いずれも追加演習つき)、分野横断の型は 入試数学の定石(全27章) にあります。

