データの分析は、計算そのものは難しくありません。分散も標準偏差も相関係数も、決まった手順どおりに数を入れるだけです。
それなのに差がつくのは、次の3つが理由です。
① 計算量が多くて、途中でミスする。これは変量の変換で解決します。1002、1005、1008… のような大きな数でも、(x−1008)÷3 と変換すれば −2、−1、0、1、2 になる。1桁の計算だけで分散が出せます。
② 「相関がある」を「原因である」と読んでしまう。アイスの売上とプールの利用者には強い相関があります。でもアイスが売れたからプールに人が来るのではない。気温という共通の原因があるだけです。
③ 仮説検定で、何を仮定して何を否定したのか分からなくなる。これは用語の問題です。否定したい主張のほうを仮に正しいとおく(帰無仮説)。そのうえで「めったに起こらないことが起きた」と言えれば、その仮定を捨てる。この向きさえ押さえれば、あとは確率の計算だけです。
全20問・各5点の100点満点、目安は70分です。計算のある問題は、必ず2通りの方法で検算してください。分散なら「定義どおり」と「2乗の平均−平均の2乗」。2つが合えば、まず間違いありません。
この回の範囲 ① データの代表値 ② 四分位範囲と外れ値 ③ 分散と標準偏差 ④ 変量の変換 ⑤ 相関係数と散布図 ⑥ 仮説検定の考え方(体系数学3 論理・確率編 第3章の全5節)
目安 70分/100点満点/全20題。答えを写して終わりにしないで、必ず「使う道具」の行を自分の言葉で言い直してください。
先に確認する道具
道具1 分散は2通りで出して照合する
分散=偏差(値−平均)の2乗の平均。標準偏差=分散の正の平方根。
計算のしかたが2つあります。
- 定義どおり:偏差を出して、2乗して、平均する
- 公式:(2乗の平均)−(平均の2乗)
どちらでも同じ値になります。だから2通りで計算して照合するのが、最も確実な検算です。
たとえば 2、4、5、7、12 なら
- 平均は6。偏差は −4、−2、−1、1、6。2乗して 16、4、1、1、36。和は58。58÷5=11.6
- 2乗の平均は (4+16+25+49+144)÷5=238÷5=47.6。平均の2乗は36。47.6−36=11.6
知っておくべき性質が2つ。
- 偏差の和は必ず0(検算に使える)
- 分散は決して負にならない。0になるのは全部同じ値のときだけ
道具2 変量の変換──計算を楽にする最強の道具
x を u = (x − a) ÷ b と変換したとき、平均と分散は次のように変わります。
大事なのはこの一行です。
足し算(a)は分散に効かない。かけ算(b)は2乗で効く。
なぜか。分散は偏差だけで決まるからです。全部のデータに5を足すと、平均も5増えるので偏差は変わりません。だから分散も変わらない。一方、全部を3倍すると偏差も3倍になり、2乗して9倍になります。
使い方。1002、1005、1008、1011、1014 の分散を求めるとき、そのまま計算すると4桁の2乗が5回。
u=(x−1008)÷3 と変換すると −2、−1、0、1、2。u の分散は2。よって x の分散は 3²×2=18。
1桁の計算だけで済みました。入試で計算量の多いデータが出たら、まずこれを疑ってください。
道具3 相関係数は −1 以上 1 以下
2つの変量 x、y について
- 共分散=(x の偏差)×(y の偏差)の平均
- 相関係数 r=共分散(x の標準偏差)×(y の標準偏差)
相関係数には必ず −1 ≦ r ≦ 1 が成り立ちます。
- r = 1:すべての点が右上がりの直線上(完全な正の相関)
- r = −1:すべての点が右下がりの直線上
- r ≒ 0:直線的な関係がほとんど無い
相関係数の大事な性質があります。
単位を変えても値が変わらない。y を10倍しても、100を足しても、相関係数は同じ。(共分散は変わりますが、標準偏差も同じだけ変わるので割ると打ち消し合います。)
だから相関係数に単位はありません。cm で測っても m で測っても同じ値です。これが「相関の強さを比べる」ときに使える理由です。
道具4 相関があっても、因果があるとは限らない
アイスの売上とプールの利用者を1年ぶん調べると、強い正の相関が出ます。でも、アイスが売れたからプールに人が来るわけではありません。
下の図のように、気温という共通の原因が両方を動かしているだけです。これを見かけの相関(擬似相関)といいます。
見分け方があります。共通の原因を固定してみる。
気温が同じ日だけを取り出して、その中でアイスとプールの相関を見る。そこで相関が消えれば、見かけの相関だったと分かります。
実際、気温30度の日ばかりを集めれば、アイスが多く売れた日にプールが空いていることもあり、相関は消えるか、むしろ負になります。
「相関がある」から言えるのは、「一緒に動いている」ということだけ。どちらが原因かも、そもそも原因があるかも、相関係数からは分かりません。
道具5 仮説検定は「否定したいほうを仮定する」
コインを20回投げたら表が16回出た。このコインは公正だろうか。
手順は決まっています。
- 否定したい主張を、仮に正しいとおく。ここでは「コインは公正(表の確率12)」。これを帰無仮説という。
- 主張したいほうを対立仮説という。ここでは「表が出やすい」。
- 帰無仮説のもとで、観測されたこと以上に極端なことが起こる確率を計算する。
- その確率が基準(有意水準、ふつう5%)より小さければ、「めったに起こらないことが起きた」ことになるので帰無仮説を捨てる(棄却する)。
20回中16回以上表が出る確率は、公正なコインなら約0.6%。5%より小さいので、「公正である」という仮定を捨てます。
注意が2つ。
- 「16回ちょうど」ではなく「16回以上」で計算する。「これ以上に極端なこと」を全部足す。
- 棄却できなかったときは「公正だと分かった」ではなく「公正でないとは言えない」。証明したわけではない。
第1節 代表値・四分位範囲・外れ値(第1問〜第4問)
中2の「データの活用」の続きです。高校では外れ値の基準がはっきり決まります。
第1問5点
次のデータについて、平均値・中央値・最頻値を求めよ。
4、6、6、7、9、10、12
使う道具道具1
合計は 4+6+6+7+9+10+12=54。
平均値は 547(約7.71)。
データは7個(奇数)なので、中央値は4番目の 7。
最も多く現れるのは 6(2回)なので、最頻値は 6。
平均7.71 > 中央値7 となっている。大きいほうに12があるため、平均が引き上げられている。
よくある誤答平均値を 547 と分数のまま答えてよい。「7.714…」と割り切れないときに無理に小数にすると誤差が入る。このあと分散を計算するなら、分数のまま持っておくほうが正確である。
答え 平均値 547(約7.71)/中央値 7/最頻値 6
第2問5点
次のデータについて、四分位数と四分位範囲を求めよ。
12、15、18、20、22、25、28、31、35
使う道具道具1
データは9個(奇数)。中央値は5番目の 22。
中央値を除いて下組と上組に分ける。
下組は 12、15、18、20 の4個。Q₁=(15+18)÷2=16.5。
上組は 25、28、31、35 の4個。Q₃=(28+31)÷2=29.5。
四分位範囲は 29.5−16.5=13。
範囲は 35−12=23。四分位範囲13は範囲23より小さい。
よくある誤答奇数個のとき、中央値をどちらの組にも入れない。これは中2で習った定義と同じ。入れてしまうと Q₁ と Q₃ が両方ずれる。下組4個・中央値1個・上組4個と個数を数えてから進むこと。
答え Q₁=16.5、Q₂=22、Q₃=29.5/四分位範囲 13
第3問5点
次のデータについて、外れ値を求めよ。ただし、外れ値は「Q₁−1.5×(四分位範囲)より小さい値」または「Q₃+1.5×(四分位範囲)より大きい値」とする。
10、12、13、14、15、16、17、18、45
使う道具道具1
9個なので中央値は5番目の 15。
下組 10、12、13、14 より Q₁=(12+13)÷2=12.5。
上組 16、17、18、45 より Q₃=(17+18)÷2=17.5。
四分位範囲は 17.5−12.5=5。
1.5×5=7.5 なので、基準は
下:12.5−7.5=5、上:17.5+7.5=25。
5より小さい値は無い。25より大きいのは 45 だけ。
よって外れ値は 45。
よくある誤答外れ値の基準はQ₁、Q₃ から測るのであって、平均や中央値からではない。また 1.5 倍するのは四分位範囲であって範囲ではない。この定義は高校で初めて出てくるので、式の形をそのまま覚えること。
答え 外れ値は 45
第4問5点
次のデータについて、四分位数を求め、分布の形(左右対称か、どちらに裾が長いか)を説明せよ。
2、3、3、4、4、4、5、5、6、9、14
使う道具道具1
11個なので中央値は6番目の 4。
下組は 2、3、3、4、4 の5個。Q₁=3番目の 3。
上組は 5、5、6、9、14 の5個。Q₃=3番目の 6。
分布の形
中央値から Q₁ までが 4−3=1、Q₃ までが 6−4=2。
上側のほうが広い。
最大値までの距離は 14−6=8、最小値までは 3−2=1。右のひげが極端に長い。
よって右に裾が長い分布。
実際、平均は 5911(約5.36)で中央値4より大きい。
よくある誤答「平均 > 中央値」なら右に裾が長い、「平均 < 中央値」なら左に裾が長い。これは覚えておくと速いが、四分位数の位置でも同じことが言える。2つの見方が一致するかを確かめると確実になる。
答え Q₁=3、Q₂=4、Q₃=6/右に裾が長い分布
第2節 分散と標準偏差(第5問〜第10問)
2通りの計算で必ず照合してください。偏差の和が0になることも、毎回の検算に使えます。
第5問5点
次のデータについて、平均値と分散を求めよ。分散は2通りの方法で計算し、一致することを確かめよ。
2、4、5、7、12
使う道具道具1
平均は (2+4+5+7+12)÷5=30÷5=6。
方法1:定義どおり
偏差は −4、−2、−1、1、6。(和は0。検算になる。)
2乗して 16、4、1、1、36。和は58。
分散は 58÷5=11.6。
方法2:(2乗の平均)−(平均の2乗)
2乗の和は 4+16+25+49+144=238。
2乗の平均は 238÷5=47.6。
47.6 − 6²=47.6 − 36=11.6。
2通りが一致した。
よくある誤答偏差の和が0にならなければ、その時点で計算ミス。ここで気づけば、以降の計算が無駄にならない。また方法2で「平均の2乗」と「2乗の平均」を取り違えない。36(平均6の2乗)と47.6(2乗の平均)は別物。
答え 平均値 6/分散 11.6(2通りとも一致)
第6問5点
次のデータについて、分散と標準偏差を求めよ。
3、5、7、9、11
使う道具道具1
平均は (3+5+7+9+11)÷5=35÷5=7。
偏差は −4、−2、0、2、4。和は0。
2乗して 16、4、0、4、16。和は40。
分散は 40÷5=8。
標準偏差は √8=2√2(約2.83)。
確かめ。2乗の平均は (9+25+49+81+121)÷5=285÷5=57。57 − 49=8。一致する。
よくある誤答標準偏差を √8 のままにせず、2√2 まで簡単にする。また、標準偏差はもとのデータと同じ単位をもつ。(分散は単位が2乗になるので、「点」のデータなら分散の単位は「点²」。だから比較には標準偏差を使うことが多い。)
答え 分散 8/標準偏差 2√2(約2.83)
第7問5点
5人のテストの得点がすべて5点だった。(1) 分散を求めよ。(2) 分散が0になるのはどのようなときか答えよ。(3) 分散が負になることはあるか、理由とともに答えよ。
使う道具道具1
(1) 平均は5。偏差はすべて 0。
2乗しても0なので、分散は 0。
(2) すべてのデータが同じ値のときだけ。
1つでも違えば、その偏差が0でなくなり、2乗すると正になるので分散は正になる。
(3) ない。
理由:分散は偏差の2乗の平均である。2乗はすべて0以上なので、その平均も0以上。
よって分散が負になることはない。
よくある誤答(3)の理由を「経験的にそうだから」で済ませない。「2乗は0以上」という根拠を書くこと。なお、計算して負になったらその時点で計算ミスが確定する。これは強力な検算になる。
答え (1) 0/(2) すべてのデータが同じ値のとき/(3) ない。偏差の2乗の平均だから必ず0以上
第8問5点
2つのグループの得点は次のとおりである。
A:48、50、52、50、50
B:30、50、70、40、60
平均と分散をそれぞれ求め、2つのグループの違いを説明せよ。
使う道具道具1
A:合計250、平均50。
偏差は −2、0、2、0、0。2乗和は 4+0+4=8。分散は 8÷5=1.6。標準偏差は約1.26。
B:合計250、平均50。
偏差は −20、0、20、−10、10。2乗和は 400+0+400+100+100=1000。分散は 1000÷5=200。標準偏差は約14.14。
違い
平均はどちらも50で同じ。
しかし分散はAが1.6、Bが200で125倍も違う。
Aは全員が50点付近に集まっており、Bは30点から70点まで大きくばらついている。
よくある誤答平均だけで2つのデータを比べない。この問題のように、平均が同じでも中身がまるで違うことがある。「平均点は同じでした」という報告は、ほとんど何も言っていない。散らばりを添えて初めて意味を持つ。
答え 平均はどちらも50/分散はA が1.6、B が200。Bのほうが散らばりがはるかに大きい
第9問5点
次の度数分布表について、平均値と分散を求めよ。
値2が3個、値4が5個、値6が8個、値8が4個
使う道具道具1
度数の合計は 3+5+8+4=20。
(値×度数)の合計は2×3 + 4×5 + 6×8 + 8×4=6+20+48+32=106。
平均は 106÷20=5.3。
分散は、偏差の2乗に度数をかけて足し、度数の合計でわる。
偏差は −3.3、−1.3、0.7、2.7。
2乗×度数は10.89×3 + 1.69×5 + 0.49×8 + 7.29×4
=32.67 + 8.45 + 3.92 + 29.16=74.2。
分散は 74.2÷20=3.71。
よくある誤答度数分布表では、偏差の2乗に度数をかけるのを忘れない。値の種類は4つでも、データは20個ある。最後にわるのは20であって4ではない。不安なら、実際に20個のデータに展開してから計算してもよい。(答えは同じになる。)
答え 平均値 5.3/分散 3.71
第10問5点
5個のデータの平均が10、2乗の和が540であるとき、分散を求めよ。また、この求め方が使える理由を説明せよ。
使う道具道具1
2乗の平均は 540÷5=108。
平均の2乗は 10²=100。
分散は 108 − 100=8。
理由
分散=(2乗の平均)−(平均の2乗)という公式があるから。
この公式のおかげで、個々のデータが分からなくても、「2乗の和」と「平均」さえ分かれば分散が出せる。
(定義どおり計算するには、個々の値と偏差が必要になってしまう。)
よくある誤答個々のデータが与えられていない問題では、この公式しか使えない。「データが分からないから解けない」と手が止まらないよう、公式のほうも必ず使えるようにしておくこと。入試ではこの形がよく出る。
答え 分散 8/(2乗の平均)−(平均の2乗)の公式が使えるため
第3節 変量の変換(第11問〜第15問)
この節が、計算量を減らす鍵です。「足し算は分散に効かない、かけ算は2乗で効く」を体に入れてください。
第11問5点
データ 10、12、15、18、20 について、すべてに5を加えた新しいデータを考える。(1) 新しいデータの平均を求めよ。(2) 新しいデータの分散は、もとの分散と比べてどうなるか。理由とともに答えよ。
使う道具道具2
(1) もとの平均は (10+12+15+18+20)÷5=75÷5=15。
全部に5を足すので、平均も5増えて 20。
(2) 変わらない。
理由:もとの偏差は −5、−3、0、3、5。
新しいデータは 15、17、20、23、25 で、平均は20。偏差は −5、−3、0、3、5 でまったく同じ。
分散は偏差だけで決まるので、変わらない。
(実際、どちらも 68÷5=13.6。)
よくある誤答「平均が変われば分散も変わる」と思い込まない。分散が見ているのは平均からのずれだけ。データ全体を平行移動しても、ずれの大きさは変わらないので分散は不変である。数直線の上で、全体を右にずらすイメージを持つとよい。
答え (1) 20/(2) 変わらない(偏差が変わらないため)
第12問5点
データ 2、4、6、8、10 について、すべてを3倍した新しいデータを考える。(1) 新しいデータの平均と分散を求めよ。(2) 分散が何倍になったかを答え、その理由を説明せよ。
使う道具道具2
(1) もとの平均は 30÷5=6。3倍して 18。
もとの偏差は −4、−2、0、2、4。2乗和は 16+4+0+4+16=40。もとの分散は 40÷5=8。
新しいデータは 6、12、18、24、30。平均18。
偏差は −12、−6、0、6、12。2乗和は 144+36+0+36+144=360。分散は 360÷5=72。
(2) 72 ÷ 8 = 9倍。
理由:偏差が3倍になり、それを2乗するので 3²=9倍になる。
よくある誤答分散は3倍ではなく9倍。ここが最も多い誤りである。「3倍したから分散も3倍」と考えてしまう。分散は偏差の2乗だから、倍率も2乗で効く。(標準偏差なら、2乗を外すのでちょうど3倍になる。)
答え (1) 平均18、分散72/(2) 9倍。偏差が3倍になり、それを2乗するため
第13問5点
データ x が 52、56、60、64、68 である。u = x−604 と変換する。(1) u のデータを求め、u の平均と分散を求めよ。(2) (1)を使って、x の平均と分散を求めよ。
使う道具道具2
(1) u = x−604 を各データに適用する。
(52−60)÷4=−2、(56−60)÷4=−1、(60−60)÷4=0、(64−60)÷4=1、(68−60)÷4=2。
u は −2、−1、0、1、2。
u の平均は 0÷5=0。
u の偏差は −2、−1、0、1、2 で、2乗和は 4+1+0+1+4=10。u の分散は 10÷5=2。
(2) x = 4u + 60 なので
x の平均 = 4×0 + 60 = 60。
x の分散 = 4²×2 = 32。
確かめ。x の偏差は −8、−4、0、4、8。2乗和は 64+16+0+16+64=160。160÷5=32。一致する。
よくある誤答(2)で分散を 4×2=8 としない。4の2乗をかけるので 16×2=32。平均は「4倍して60を足す」だが、分散は「16倍するだけ(60は無関係)」。平均と分散で、a と b の効き方が違うことをはっきり区別すること。
答え (1) u=−2、−1、0、1、2/平均0、分散2/(2) x の平均60、分散32
第14問5点
データ 1002、1005、1008、1011、1014 の平均と分散を、変量の変換を使って求めよ。
使う道具道具2
そのまま計算すると4桁の2乗が5回で大変。
u = x−10083 と変換する。
(1002−1008)÷3=−2、(1005−1008)÷3=−1、(1008−1008)÷3=0、(1011−1008)÷3=1、(1014−1008)÷3=2。
u は −2、−1、0、1、2。
u の平均は 0、u の分散は 2。
x = 3u + 1008 なので
x の平均 = 3×0 + 1008 = 1008。
x の分散 = 3²×2 = 18。
1桁の計算だけで済んだ。
よくある誤答a はデータの真ん中あたり、b はデータの間隔を選ぶと、u が −2、−1、0、1、2 のようにきれいになる。(この選び方に決まりはない。a=1000、b=1 でも答えは同じ。ただし u が 2、5、8、11、14 になり、計算が少し重くなる。)u ができるだけ小さくなるように選ぶのがコツ。
答え 平均 1008/分散 18
第15問5点
データ 4、6、8、10、12 について、z = x − (平均)標準偏差 と変換する(標準化)。(1) z のデータを求めよ。(2) z の平均と分散を求めよ。(3) この変換が便利な理由を説明せよ。
使う道具道具2
平均は 40÷5=8。偏差は −4、−2、0、2、4。2乗和は 40、分散は8、標準偏差は 2√2。
(1) z = x−82√2 なので
−42√2、−22√2、0、22√2、42√2
= −√2、−√22、0、√22、√2。
(2) 平均は 0(偏差の和が0だから)。
分散は 1(2√2)²×8 = 88 = 1。
(3) どんなデータも平均0・分散1にそろうので、単位や大きさの違うデータどうしを比べられる。
(たとえば、数学の点数と身長のどちらが「集団の中で目立つか」を比べられる。)
よくある誤答(2)の分散を「そのまま8」としない。標準偏差で割っているので、分散はその2乗=8で割られる。8÷8=1。このように、標準化すると分散は必ず1になる。「必ず1」は検算に使える。
答え (1) −√2、−√22、0、√22、√2/(2) 平均0、分散1/(3) 単位の違うデータどうしを比べられる
第4節 相関と仮説検定(第16問〜第20問)
相関係数の意味と限界、そして仮説検定の考え方です。用語の向きを取り違えないように。
第16問5点
次の2つの変量について、共分散と相関係数を求めよ。
x:1、2、3、4、5
y:2、4、5、4、10
使う道具道具3
x の平均は 15÷5=3、y の平均は 25÷5=5。
x の偏差は −2、−1、0、1、2。
y の偏差は −3、−1、0、−1、5。
共分散は偏差の積の平均。
積は 6、1、0、−1、10。和は16。
共分散は 16÷5=3.2。
x の分散は (4+1+0+1+4)÷5=2。標準偏差は √2。
y の分散は (9+1+0+1+25)÷5=365。標準偏差は 6√5。
相関係数は 3.2√2 × 6/√5=約0.84。
正の相関がある。
よくある誤答共分散を計算するとき、偏差の積は符号を含めて足す。この問題では −1 が1つある。絶対値で足すと 6+1+0+1+10=18 となり、答えがずれる。x の偏差と y の偏差の符号が逆の点は、相関を弱める向きに働く。
答え 共分散 3.2/相関係数 約0.84
第17問5点
x:1、2、3、4、5 に対して、y が次のとき相関係数を求めよ。
(1) y = 3、5、7、9、11
(2) y = 11、9、7、5、3
また、y をすべて10倍したら相関係数はどうなるか答えよ。
使う道具道具3
(1) y = 2x+1 の関係にあり、すべての点が1本の直線上にある。
傾きが正なので相関係数は 1。
(2) y = −2x+13 で、傾きが負の直線上。
相関係数は −1。
y を10倍したとき
共分散は10倍になるが、y の標準偏差も10倍になる。
割ると打ち消し合うので、相関係数は変わらない。
((1)なら1のまま、(2)なら−1のまま。)
よくある誤答相関係数は−1 以上 1 以下で、その外に出ることはない。計算して1.2などが出たら、必ずどこかが誤っている。また「相関係数が1に近い=傾きが大きい」ではない。相関係数が表すのは直線にどれだけ近いかであって、傾きの大きさではない。
答え (1) 1/(2) −1/10倍しても相関係数は変わらない
第18問5点
ある地域で1年間調べたところ、アイスクリームの売上とプールの利用者数に強い正の相関(相関係数0.98)が見られた。(1) 「アイスが売れるとプールの利用者が増える」と結論してよいか、理由とともに答えよ。(2) この相関を確かめるには、どのような調べ方をすればよいか。
使う道具道具4
(1) 結論してよくない。
理由:気温という共通の原因が考えられる。
気温が高い日はアイスも売れるし、プールにも人が来る。両者は一緒に動いているだけで、一方が他方の原因ではない。
これを見かけの相関という。
(2) 気温を固定して調べる。
たとえば「気温30度の日」だけを集めて、その中でアイスの売上とプールの利用者の相関を見る。
そこで相関が消えれば、見かけの相関だったと分かる。
(実際、気温を固定すると相関はほとんど消え、場合によっては負になる。暑い日にアイスをたくさん食べた人はプールに行かなかった、ということもあるため。)
よくある誤答相関係数がどれだけ大きくても、因果関係の証拠にはならない。0.98 でも 0.999 でも同じである。相関係数が言えるのは「2つが直線的に一緒に動いている」ことだけ。原因を知りたければ、他の条件をそろえて比べる必要がある。
答え (1) よくない。気温という共通の原因による見かけの相関だから/(2) 気温を固定して(同じ気温の日だけで)相関を調べる
第19問5点
あるコインを20回投げたところ、表が16回出た。このコインは表が出やすいと言えるか、有意水準5%で仮説検定せよ。(20回中16回以上表が出る確率は約0.0059である。)
使う道具道具5
仮説を立てる。
帰無仮説:このコインは公正である(表の出る確率は12)。
対立仮説:このコインは表が出やすい。
確率を求める。
帰無仮説が正しいとすると、20回中16回以上表が出る確率は約 0.0059(0.59%)。
判断する。
0.0059 < 0.05(有意水準5%)。
めったに起こらないことが起きたことになるので、帰無仮説を棄却する。
よってこのコインは表が出やすいと言える。
よくある誤答確率は「16回ちょうど」ではなく「16回以上」で計算する。「これ以上に極端なこと」を全部足すのが決まりである。(16回ちょうどの確率だけなら約0.0046で、17回以上の分が抜けてしまう。)また、否定したいほう(公正である)を帰無仮説に置くという向きを取り違えない。
答え 帰無仮説「公正である」を棄却できる。表が出やすいと言える
第20問5点
ある薬について、10人に投与したところ9人に効果があった。「効果があるかないかは半々(確率12)」という仮説を有意水準5%で検定せよ。(10回中9回以上成功する確率は 111024 である。また8回以上なら 561024。)
また、もし効果があったのが8人だったら結論はどうなるか。
使う道具道具5
帰無仮説:効果があるかないかは半々(確率12)。
対立仮説:この薬には効果がある。
9人のとき
10人中9人以上に効果が出る確率は111024=約0.0107(1.07%)。
0.0107 < 0.05 なので帰無仮説を棄却。
効果があると言える。
8人のとき
確率は 561024=約0.0547(5.47%)。
0.0547 > 0.05 なので棄却できない。
ただしこれは「効果が無いと分かった」のではなく、「効果があるとは言い切れない」という意味である。
よくある誤答棄却できなかったときの言い方に注意する。「効果が無い」ではなく「効果があるとは言えない」。仮説検定は、帰無仮説を否定することしかできない。肯定(証明)はできない。また、9人と8人で結論が逆になることからも分かるように、5%という基準は人が決めたものである。基準を変えれば結論も変わりうる。
答え 9人なら棄却でき「効果がある」と言える/8人なら棄却できず「効果があるとは言えない」
解き終えた人へ
採点の目安です。80点以上なら、この章は仕上がっています。大学入学共通テストでは、この単元は必ず出題されます。しかも計算より読み取りと判断が問われるので、第4節(相関と仮説検定)が得点源になります。
60〜75点のときは、落とした問題が第3節(変量の変換)に集まっていないかを見てください。集まっていれば、覚えることは1行だけです。
足し算は分散に効かない。かけ算は2乗で効く。
第12問と第13問だけを解き直せば、10分で戻ります。
55点以下のときは、第2節に戻ります。とくに分散を2通りで計算することを習慣にしてください。「定義どおり」と「2乗の平均−平均の2乗」。2つが合わなければ、その場で計算ミスに気づけます。検算のしかたを持っていることが、この単元の実力です。
最後に、この章でいちばん大事なことをもう一度。
相関があっても、因果があるとは限らない。
これは数学の話であると同時に、ニュースや広告を読むときにそのまま役立つ考え方です。「Aをする人はBになりやすい」という記事を見たら、共通の原因が無いかを疑ってください。それができるようになることが、この単元を学ぶ本当の意味だと思います。
次にやると効くページ
- 体系数学 全単元つまずき診断辞典(43単元) ── どこで切れているのか分からないときは、誤答から原因を逆引きできます
- 数I データの分析(基本)特訓道場(20題) ── 分散・標準偏差・相関係数の計算をもっと積みたいとき
- 体系数学2 代数編 第5章 データの活用 章末テスト ── 中2版。四分位数と箱ひげ図から復習したいとき
- 数B 統計的な推測 特訓道場(20題) ── この章の続き。正規分布と信頼区間へ進みます
- 体系数学3 論理・確率編 第4章 式と証明 章末テスト ── 同じ巻の次の章。証明の書き方を固めたいとき
- データの分析|分散・標準偏差・相関係数の解説 ── 用語の意味からもう一度読みたいとき
- 数学I・A の要点辞典 ── この章の公式・定石を短くまとめたページ
- 無料学習プリント・映像授業 ── 単元別のプリントを無料で公開しています
体系数学3 論理・確率編 章末テスト 全5章
数I・数A・数II・数Bで使う1冊ぶんを、章ごとに20題・100点でそろえました。順番どおりでなくてかまいません。今つまずいている章から取ってください。
- 第1章 集合と命題 ── 必要十分条件・対偶と背理法・個数定理
- 第2章 場合の数と確率 ── 順列と組合せ・確率の基本性質・条件付き確率
- 第3章 データの分析 ── 分散と標準偏差・変量の変換・相関係数・仮説検定(いま読んでいるページ)
- 第4章 式と証明 ── 恒等式・等式と不等式の証明・相加相乗
- 第5章 整数の性質 ── 約数と倍数・ユークリッドの互除法・不定方程式
ほかの巻は体系数学1 代数編(全5章)へ。単元から逆引きしたいときは体系数学 全単元つまずき診断辞典から誤答の形で原因をたどれます。
要点辞典この単元の公式・定石・つまずきやすい所は 数学I・Aの要点辞典:データの分析 にまとめてあります。
📕 体系数学3 論理・確率編 第3章の関連ページ
この章は「つまずき解説」と「章末テスト」の2ページで対になっています。解説で原因を押さえてからテストで確認すると、どこが抜けていたのかがはっきりします。
この章のつまずき解説データの分析全30章の並びと、どの章がどこでつまずくのかは体系数学の危険単元マップ、誤答から原因を逆引きするときは体系数学 全単元つまずき診断辞典から。
