データの分布を調べる目的は、表やグラフを作ることだけではありません。値がどこに集まり、どの程度散らばっているかを読み取り、根拠を示して判断することが目的です。この記事では、20人のデータを一つずつ整理しながら、度数分布表・ヒストグラム・相対度数をつなげて理解します。
データの分布とは
データの分布とは、集めた値がどのあたりに、どのくらい集まっているかという全体の様子です。同じ平均値でも、値が平均付近に集まる場合と、広く散らばる場合があります。そのため、一つの代表値だけでなく、分布の形や散らばりも確かめます。
この記事で使うデータ
20人がある課題を終えるまでにかかった時間を、短い順に並べたものとします。単位は分です。
データの個数は20個、最小値は12分、最大値は58分です。最大値と最小値の差を範囲といいます。
階級・階級の幅・階級値・度数
多数のデータを一定の区間に分けると、全体の傾向を捉えやすくなります。
| 用語 | 意味 | この記事での例 |
|---|---|---|
| 階級 | データを整理するための区間 | 20分以上30分未満 |
| 階級の幅 | 階級の上端と下端の差 | 30-20=10分 |
| 階級値 | 階級の中央の値 | (20+30)÷2=25分 |
| 度数 | その階級に入るデータの個数 | 20分以上30分未満は6人 |
「20分以上30分未満」には20分は入りますが、30分は入りません。30分は次の「30分以上40分未満」に入れます。境界の値を二重に数えたり、数え忘れたりしないための決まりです。
度数分布表の作り方
- データの個数、最小値、最大値を確認する。今回は20個、12分から58分までです。
- 階級と階級の幅を決める。今回は10分以上20分未満から始め、幅を10分にそろえます。
- 各データを一つの階級へ入れる。境界では「以上・未満」を確認します。
- 各階級の度数を数える。最後に度数の合計がデータの個数20と一致するか検算します。
| 課題時間の階級(分) | 階級値(分) | 度数(人) | 相対度数 |
|---|---|---|---|
| 10以上20未満 | 15 | 2 | 0.10 |
| 20以上30未満 | 25 | 6 | 0.30 |
| 30以上40未満 | 35 | 6 | 0.30 |
| 40以上50未満 | 45 | 4 | 0.20 |
| 50以上60未満 | 55 | 2 | 0.10 |
| 合計 | ― | 20 | 1.00 |
ヒストグラムとは
ヒストグラムは、横軸に階級、縦軸に度数などを取り、データの分布を柱で表すグラフです。数値の連続した区間を表すため、同じ幅の階級では柱を隙間なく並べます。
横軸:課題時間(分)、縦軸:度数(人)。横軸の「10~20」は10分以上20分未満を表します。
ヒストグラムから読み取れること
- 度数が最も大きい階級は、20分以上30分未満と30分以上40分未満の二つで、それぞれ6人です。
- 20分以上40分未満には6+6=12人いて、全体の12/20=0.60、つまり60%です。
- 40分以上60分未満には4+2=6人いて、全体の30%です。
- 中央付近の20分以上40分未満に多く、両端の階級は少ない分布です。
棒グラフとの違い
| 比較 | ヒストグラム | 棒グラフ |
|---|---|---|
| 主な目的 | 数量データの分布を見る | 種類ごとの大きさを比べる |
| 横軸 | 連続した数値の区間 | 教科、商品などの種類 |
| 柱の間 | 通常は隙間なく並べる | 種類の区切りとして隙間を空ける |
| 並べ替え | 数値の順序を変えない | 目的に応じて並べ替える場合がある |
相対度数とは
相対度数は、全体に対する各階級の度数の割合です。
例1:相対度数を求める
問題:20分以上30分未満の度数は6人、全体は20人です。この階級の相対度数を求めましょう。
答え:相対度数は0.30です。百分率では30%です。
相対度数は、人数の異なる集団を同じ基準で比較するときに役立ちます。
例2:人数の異なる2組を比べる
問題:30分以上40分未満の生徒が、A組では20人中6人、B組では40人中10人でした。どちらの割合が大きいでしょうか。
B組:10÷40=0.25
答え:度数はB組の方が大きいものの、相対度数はA組の方が大きいです。
表やグラフから正しく判断する
統計では、数値を計算した後の説明が重要です。次の順序で考えると、根拠のある文章になります。
- 問いを決める。何を知りたいのか、比較したいのかを明確にする。
- 使う数値を示す。度数、相対度数、範囲などを具体的に挙げる。
- 分布の特徴を述べる。集中している階級、散らばり、端の値などを見る。
- 言える範囲で結論を述べる。データの集め方や人数、階級の取り方にも注意する。
例3:分布の傾向を説明する
問い:課題時間はどの範囲に集中しているといえるでしょうか。
説明例:20分以上40分未満の度数は12人で、相対度数は12÷20=0.60です。全体の60%がこの範囲に入るため、課題時間は20分以上40分未満に比較的集中しているといえます。
ヒストグラムだけでは分からないこと
度数分布表やヒストグラムでは、同じ階級に入る個々の値をまとめます。そのため、元の20人それぞれの正確な時間や、正確な平均値をヒストグラムだけから復元することはできません。「30分以上40分未満に6人いる」とはいえますが、その6人の値を特定することはできません。
よくある間違い
1. 境界の値を二つの階級へ入れる
「20以上30未満」では20は入り、30は入りません。「以上」と「未満」を必ず確認します。
2. 相対度数を度数÷階級値で求める
相対度数の分母は、全階級の度数の合計です。階級値ではありません。
3. 度数だけで人数の異なる集団を比べる
集団の人数が違うときは、度数を全体の人数で割った相対度数で比べます。
4. グラフの見た目だけで断定する
縦軸の目盛りや階級の幅、データの個数、収集方法を確認し、具体的な数値を根拠にします。
確認問題
- この記事のデータの範囲を求めてください。
- 「40分以上50分未満」の階級値と度数を求めてください。
- 「50分以上60分未満」の相対度数を求めてください。
- 20分以上50分未満の人数と、全体に対する割合を求めてください。
- 同じ階級に入る生徒が、C組では25人中8人、D組では40人中12人でした。相対度数が大きいのはどちらですか。
- 「20分以上40分未満に全体の半数より多くが入る」といえるか、数値を根拠に説明してください。
解答と解説を開く
- 58-12=46より、範囲は46分です。
- 階級値は(40+50)÷2=45分、度数は4人です。
- 2÷20=0.10です。百分率では10%です。
- 6+6+4=16人です。16÷20=0.80より、全体の80%です。
- C組は8÷25=0.32、D組は12÷40=0.30です。相対度数が大きいのはC組です。
- 20分以上40分未満は6+6=12人で、相対度数は12÷20=0.60です。0.60は0.50より大きいため、全体の半数より多くが入るといえます。
まとめ
- 範囲は最大値-最小値で、データ全体の散らばりの一面を表す。
- 階級はデータを区切る区間、度数はその階級に入るデータの個数。
- ヒストグラムは、数量データの分布を隙間なく並ぶ柱で表す。
- 相対度数は、その階級の度数÷度数の合計で求める。
- 表やグラフを作るだけでなく、数値を根拠に傾向を読み取り、条件も含めて判断する。
平均値・中央値の具体問題
学習範囲の根拠
この記事は、文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編」の第1学年「データの分布」を基準に構成しています。同解説が重視する、ヒストグラムや相対度数の意味を理解し、分布の傾向を読み取り、批判的に考察して判断する学習を反映しています。正式な内容は、文部科学省の解説PDFで確認できます。
