箱ひげ図は、データを小さい順に並べたときの最小値、第1四分位数、中央値、第3四分位数、最大値を一つの図にまとめたものです。平均値だけでは見えにくい、データの中心、散らばり、偏りを複数の集団で比べられます。
箱ひげ図を作る五つの値
箱ひげ図には、次の五つの値を使います。まとめて五数要約と呼ぶこともあります。
| 値 | 記号 | 意味 |
|---|---|---|
| 最小値 | ― | 最も小さい値 |
| 第1四分位数 | Q1 | 小さい側の半分の中央値 |
| 中央値(第2四分位数) | Q2 | データ全体の中央の値 |
| 第3四分位数 | Q3 | 大きい側の半分の中央値 |
| 最大値 | ― | 最も大きい値 |
箱はQ1からQ3まで、箱の中の線は中央値Q2、左右のひげの端は最小値と最大値を表します。
四分位数を求める手順
- データを小さい順に並べる。
- 全体の中央値Q2を求める。
- データを小さい側と大きい側に分ける。個数が奇数なら、全体の中央値はどちらの組にも入れません。
- 小さい側の中央値をQ1、大きい側の中央値をQ3とする。
- 最小値、Q1、Q2、Q3、最大値の順を確認する。
データが奇数個のとき
例1:9個のデータ
次の9個は、すでに小さい順に並んでいます。
中央の5番目が8なので、Q2=8です。中央値8を除き、小さい側と大きい側に分けます。
| 小さい側 | 中央値 | 大きい側 |
|---|---|---|
| 2、4、5、7 | 8 | 9、10、12、15 |
小さい側の中央値は4と5の平均、大きい側の中央値は10と12の平均です。
Q2=8
Q3=(10+12)/2=11
五数要約:最小値2、Q1=4.5、Q2=8、Q3=11、最大値15
データが偶数個のとき
例2:8個のデータ
次の8個のデータを考えます。
中央にある4番目の7と5番目の9の平均がQ2です。小さい側4個と大きい側4個に分けます。
Q2=(7+9)/2=8
Q3=(11+13)/2=12
五数要約:最小値3、Q1=5、Q2=8、Q3=12、最大値16
偶数個では、全体を同じ個数の二組に分けられます。それぞれの組の中央値を求めればQ1、Q3になります。
四分位範囲と範囲
四分位範囲は、中央付近にある約半数のデータが広がる区間の長さです。
範囲は、全データの最大値から最小値を引いた値です。
例3:例1の散らばり
例1では、Q1=4.5、Q3=11、最小値2、最大値15でした。
範囲=15-2=13
答え:四分位範囲6.5、範囲13
範囲は最小値と最大値だけで決まり、端の一つの値に影響されやすい指標です。四分位範囲は中央付近の散らばりを表すため、極端に小さい値や大きい値の影響を受けにくい特徴があります。
箱ひげ図のかき方
- データの値を表す数直線をかき、目盛りの間隔を等しくする。
- 最小値、Q1、Q2、Q3、最大値の位置に印を付ける。
- Q1からQ3まで箱をかき、Q2の位置に箱を区切る線をかく。
- 箱から最小値と最大値まで線を伸ばし、端に短い線をかく。
例4:例1の箱ひげ図を言葉で表す
- 左のひげの端:最小値2
- 箱の左端:Q1=4.5
- 箱の中の線:中央値Q2=8
- 箱の右端:Q3=11
- 右のひげの端:最大値15
実際には、2、4.5、8、11、15を同じ尺度の数直線上に置きます。
複数の箱ひげ図を比較する
同じ尺度の数直線上に箱ひげ図を並べると、複数の集団の中心と散らばりを比較できます。
| 見る場所 | 分かること | 注意 |
|---|---|---|
| 中央値の位置 | データの中心の違い | 平均値とは限らない |
| 箱の長さ | 四分位範囲、中央付近の散らばり | 短いほど中央の約半数が狭い区間に集まる |
| ひげを含む全体の長さ | 範囲、全体の散らばり | 最小値・最大値の影響を受ける |
| 箱内の区間やひげの長さ | 値の間隔の偏り | 長さは人数ではなく値の間隔を表す |
例5:中央値が同じ二つのデータ
AとBは、どちらも8個のデータです。
| 集団 | データ | 五数要約 | 四分位範囲 |
|---|---|---|---|
| A | 2、4、6、8、10、12、14、16 | 2、5、9、13、16 | 13-5=8 |
| B | 6、7、8、8、10、10、11、12 | 6、7.5、9、10.5、12 | 10.5-7.5=3 |
中央値はどちらも9ですが、Bの箱はAより短く、中央付近のデータがより狭い範囲に集まっています。
箱ひげ図から読み取れないこと
箱ひげ図は分布を要約するため、元のデータの細部は失われます。次のことは、箱ひげ図だけでは通常分かりません。
- 個々のデータの正確な値
- 同じ値が何個ずつあるか
- 平均値
- 二つの区間に含まれる正確な人数
よくある誤りと直し方
| 誤り | 直し方 |
|---|---|
| データを並べずに四分位数を探す | 必ず小さい順に並べてから中央を決める |
| 奇数個で全体の中央値を両方の組に入れる | 中学校の求め方では、全体の中央値を除いて上下に分ける |
| 偶数個の中央値を中央二数のどちらかにする | 中央二数の平均を取る |
| 四分位範囲を最大値-最小値とする | Q3-Q1が四分位範囲、最大値-最小値は範囲 |
| 箱が長いほど人数が多いと考える | 長さは値の散らばりであり、人数を直接表さない |
| 中央値が大きい集団は全員の値が大きいとする | 箱やひげが重なる可能性があり、個々の大小までは断定しない |
確認問題
- 1、3、5、7、9、11、13のQ1、Q2、Q3を求めましょう。
- 2、4、6、8、10、12、14、16のQ1、Q2、Q3を求めましょう。
- 問題2の四分位範囲と範囲を求めましょう。
- 4、6、6、8、9、12、15、18、20の五数要約を求めましょう。
- 最小値3、Q1=6、Q2=8、Q3=12、最大値17の箱ひげ図で、箱の長さと全体の範囲を求めましょう。
- 二つの集団で中央値は同じですが、一方の箱が短いとき、中央付近の散らばりについて何がいえますか。
- 箱の左半分が右半分より長いとき、「左半分の人数が多い」といえますか。理由も答えましょう。
- 箱ひげ図だけから平均値を正確に求められるか答えましょう。
確認問題の解答と考え方
- Q2=7です。7を除いた小さい側1、3、5の中央値がQ1=3、大きい側9、11、13の中央値がQ3=11です。
- Q2=(8+10)/2=9、Q1=(4+6)/2=5、Q3=(12+14)/2=13です。
- 四分位範囲は13-5=8、範囲は16-2=14です。
- Q2=9です。9を除くと小さい側は4、6、6、8でQ1=6、大きい側は12、15、18、20でQ3=16.5です。最小値4、Q1=6、Q2=9、Q3=16.5、最大値20です。
- 箱の長さは12-6=6、範囲は17-3=14です。
- 箱が短い集団のほうが四分位範囲が小さく、中央付近の約半数のデータがより狭い範囲に集まっています。
- いえません。箱の区間の長さは値の間隔を表し、人数を直接表すものではありません。
- 通常は求められません。箱ひげ図には最小値、Q1、中央値、Q3、最大値は示されますが、個々の値や合計は示されないからです。
まとめ
- 四分位数は、並べたデータを四つの部分に分ける位置の値。
- Q2は全体の中央値、Q1は小さい側、Q3は大きい側の中央値。
- 奇数個では全体の中央値を除いて、小さい側と大きい側に分ける。
- 四分位範囲はQ3-Q1、範囲は最大値-最小値。
- 箱ひげ図では、箱の長さが中央付近の散らばり、ひげを含む長さが全体の範囲を表す。
- 箱ひげ図だけでは、個々の値、正確な人数、平均値は分からない。
中央値の計算を具体問題で確認する
学習範囲の根拠
本記事は、文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編」の第2学年「データの活用」にある、四分位範囲や箱ひげ図を用いて複数の集団のデータの分布の傾向を比較して読み取る学習内容に沿って構成しています。
