中3数学:毎日の数学 / 数学単元ガイド

標本調査とは|母集団・無作為抽出・推定【中3数学】

標本調査は、調べたい全体から一部を偏りなく取り出し、その結果を基に全体の傾向を推定する調査です。母集団と標本を区別し、無作為抽出、標本の大きさ、推定の不確かさまで確認すると、調査結果を適切に読めるようになります。

全数調査と標本調査

調べたい集団のすべてを調べる方法を全数調査といいます。一方、全体の一部を調べ、その結果から全体の傾向を推定する方法を標本調査といいます。

調査 調べる範囲 向いている場面 注意点
全数調査 対象のすべて 対象が少ない、全員の情報が必要 時間・費用・労力が大きくなることがある
標本調査 全体から取り出した一部 対象が多い、すべてを調べると壊れる 抽出の偏りや偶然のばらつきがある

例えば、学級全員の希望進路を一人ずつ確認するなら全数調査が可能です。一方、工場で作った缶詰を開封して品質を調べる検査では、すべてを開けると商品として使えなくなるため、一部を取り出す標本調査が必要です。

標本調査は、全数調査より常に優れている方法ではありません。調査の目的、必要な正確さ、費用、時間、調べることで対象が壊れるかを考えて選びます。

母集団・標本・標本の大きさ

標本調査では、何を全体とし、何を一部として取り出したかを明確にします。

用語 意味
母集団 調べたい対象全体 ある中学校の3年生200人
標本 母集団から実際に取り出して調べる一部 選ばれた40人
標本の大きさ 標本に含まれる個体やデータの個数 40

「標本の大きさ」は、身長や面積のような物理的な大きさではなく、調べた個数です。40人を調べたなら、標本の大きさは40です。

例1:母集団と標本を区別する

ある市の中学3年生4,800人の通学時間を知るため、無作為に選んだ240人を調べました。

  • 母集団:その市の中学3年生4,800人
  • 標本:実際に調べた240人
  • 標本の大きさ:240

無作為抽出とは

母集団のどの要素も、同じように選ばれる可能性があるように標本を取り出すことを無作為抽出といいます。人の好みで選ばず、乱数さい、乱数表、表計算ソフトなどの乱数を利用します。

例えば、生徒1,000人に001から1000までの番号を付け、重複しない乱数を100個作り、その番号の生徒を選びます。乱数で同じ番号が再び出た場合は、標本に同じ人を二度入れない調査なら、その番号を除いて別の番号を選びます。

  1. 母集団の各要素に、重ならない番号を付けます。
  2. 必要な標本の大きさを決めます。
  3. 乱数を使って番号を選びます。
  4. 範囲外や重複の扱いを、調査前に決めた規則に従って処理します。
  5. 選ばれた対象を調べ、データを整理します。
「教室の前列だけ」「昼休みに図書室にいた人だけ」「自分のSNSを見て回答した人だけ」のような選び方では、母集団の一部の特徴が強く表れることがあります。人数が多くても、選び方に偏りがあれば母集団を適切に代表しません。

割合を使って母集団を推定する

無作為に抽出した標本で、ある性質をもつものの割合を求め、その割合が母集団でもおおよそ同じだと考えて個数を推定します。

標本での割合=該当する標本の個数÷標本の大きさ
母集団での個数の推定値=母集団の大きさ×標本での割合

例2:製品の不良品数を推定する

5,000個の製品から100個を無作為に取り出して調べると、不良品が4個ありました。

標本での不良品の割合=4÷100=0.04
不良品数の推定値=5,000×0.04=200

推定:5,000個のうち、不良品はおよそ200個と考えられます。

200個は確定した個数ではありません。「ちょうど200個ある」とは断定しません。

例3:アンケート結果から人数を推定する

生徒1,200人から無作為に150人を選び、ある行事への参加希望を尋ねると、90人が「参加したい」と答えました。

希望者の割合=90÷150=0.6
希望者数の推定値=1,200×0.6=720

推定:全校の希望者はおよそ720人と考えられます。

平均を使って合計を推定する

標本で求めた平均値を母集団の代表値とみなし、母集団の大きさを掛けて合計を推定することもできます。

母集団の合計の推定値=標本の平均×母集団の大きさ

例4:辞典の見出し語数を推定する

800ページの辞典から40ページを無作為に選び、1ページ当たりの見出し語数を調べると、平均は21.5語でした。

見出し語数の推定値=21.5×800=17,200

推定:辞典全体の見出し語はおよそ17,200語と考えられます。

索引や扉など、見出し語を載せないページを母集団に含めるかは、調査の目的に合わせて先に定義します。

標本を変えると結果も変わる

同じ母集団から同じ大きさの標本を無作為に取り出しても、選ばれる標本が変われば割合や平均は少しずつ変わります。これを標本に伴う偶然のばらつきとして捉えます。

例5:同じ調査を繰り返した結果

ある質問に「はい」と答えた割合が、標本を変えた3回の調査で48%、52%、50%でした。

結果は完全には一致しませんが、いずれも50%前後です。この結果からは、母集団でも「はい」の割合は半分程度と推定できます。ただし、母集団の正確な割合が50%だと確定したわけではありません。

他の条件が同じで無作為抽出が適切なら、一般に標本の大きさを大きくするほど、偶然による結果のばらつきは小さくなる傾向があります。

標本の大きさを増やしても、選び方の偏りは自動的には直りません。特定の時間帯の利用者だけを1万人調べても、その時間帯を利用しない人の意見は反映されにくいままです。

推定値の丸め方

母集団の個数を推定すると、小数になることがあります。個数は整数ですが、推定には誤差があるため、問題の指示に従って四捨五入し、「およそ」を付けます。

例6:推定値を整数にする

2,350人のうち、ある回答をする人の割合を標本から0.37と推定しました。

2,350×0.37=869.5

1人単位に四捨五入するなら、およそ870人です。869.5人という人がいるという意味ではなく、計算途中の推定値です。

調査結果を批判的に読む

ここでいう「批判的」は、結果を否定することではありません。どのように集めたデータから、どこまでの結論がいえるかを根拠に沿って点検することです。

確認する点 問いかけ
目的 何を知るための調査か
母集団 誰・何について結論を出したいのか
抽出方法 母集団から偏りなく選んでいるか
標本の大きさ 何人・何個を調べたか
回答状況 選ばれたうち何人が回答したか、未回答に偏りはないか
質問・測定 誘導的な質問や、測り方の違いがないか
表現 推定を確定した事実のように書いていないか

例7:偏りのあるアンケート

「市民の図書館利用」を調べるため、図書館の入口で500人に質問しました。

回答者はその日に図書館を訪れた人です。図書館を利用しない市民が標本に入りにくいため、この500人の結果を市民全体へそのまま広げるのは適切ではありません。標本が大きくても、抽出場所による偏りがあります。

例8:回答率も確認する

無作為に選んだ1,000人へ質問紙を送り、200人から回答を得ました。

最初の選び方が無作為でも、回答者と未回答者の特徴が異なる可能性があります。「標本の大きさは1,000」とだけ示すのではなく、実際の回答数200と回答率20%も確認する必要があります。

標本調査を行う手順

  1. 目的を決める:何を明らかにしたいかを具体的にします。
  2. 母集団を定める:誰・何について結論を出すかを決めます。
  3. 調べる項目を定義する:例えば「睡眠時間」が昨日の値か1週間の平均かを明確にします。
  4. 標本の大きさと抽出方法を決める:母集団から無作為に選べる方法を用意します。
  5. データを集めて整理する:度数、相対度数、平均、グラフなどを目的に応じて使います。
  6. 母集団を推定する:推定であることと、根拠にした標本の結果を示します。
  7. 方法と結論を振り返る:偏り、未回答、偶然のばらつき、別の解釈を検討します。

よくある誤りと直し方

誤り 直し方
母集団を「調べた人」とする 結論を出したい全体が母集団、実際に調べた一部が標本
標本の大きさを平均値と混同する 標本に含まれるデータの個数を答える
近くにいる人だけを選ぶ 番号と乱数など、選ぶ人の判断が入りにくい方法を使う
標本の割合をそのまま人数として答える 母集団の大きさを掛け、単位を確認する
推定値を正確な個数と断定する 「およそ」「推定される」と表現する
人数を増やせば偏りも消えると考える 標本の大きさと抽出方法を別々に点検する
無回答を無視する 回答率と、未回答者に共通する特徴の可能性を確認する

確認問題

  1. ある学年の生徒全員に希望進路を尋ねました。全数調査と標本調査のどちらですか。
  2. ある県の中学生60,000人から600人を選んで調べました。母集団、標本、標本の大きさを答えましょう。
  3. 1,000人から100人を無作為に選ぶ方法を一つ説明しましょう。
  4. 3,000人から無作為に200人を選ぶと、112人がある案に賛成しました。賛成者は全体でおよそ何人と推定されますか。
  5. 12,000個の製品から400個を無作為に調べると、不良品が8個ありました。不良品は全体でおよそ何個と推定されますか。
  6. 900ページの資料から25ページを無作為に選ぶと、1ページ当たりの項目数は平均18.4個でした。全体の項目数を推定しましょう。
  7. 学校の読書量を調べるため、図書委員だけに質問しました。この方法の問題点を説明しましょう。
  8. 同じ母集団から適切に無作為抽出するなら、標本の大きさ20と200では、一般にどちらが偶然のばらつきを小さくしやすいですか。
  9. 標本を変えた3回の調査で、ある回答の割合が48%、52%、50%でした。母集団についてどのように表現するのが適切ですか。
  10. 無作為に選んだ1,000人へ質問紙を送り、200人が回答しました。結果を読むとき、標本の選び方以外に何を確認すべきですか。
確認問題の解答と考え方
  1. 対象の生徒全員を調べているので、全数調査です。
  2. 母集団は県の中学生60,000人、標本は選ばれた600人、標本の大きさは600です。
  3. 例として、全員に001から1000までの番号を付け、重複しない100個の乱数に対応する人を選びます。
  4. 標本での割合は112÷200=0.56です。3,000×0.56=1,680より、およそ1,680人です。
  5. 8÷400=0.02、12,000×0.02=240より、およそ240個です。
  6. 18.4×900=16,560より、およそ16,560個です。
  7. 図書委員は読書への関心が比較的高い可能性があり、全校生徒を偏りなく代表する標本とは限りません。
  8. 一般には、標本の大きさ200の方が偶然のばらつきを小さくしやすいです。抽出方法が適切であることが前提です。
  9. 母集団でもその回答の割合は50%前後と推定される、と表現します。正確に50%と断定はできません。
  10. 実際の回答数と回答率20%、未回答者に偏りがある可能性、質問文などを確認します。

まとめ

  • 全数調査は対象のすべて、標本調査は母集団から取り出した一部を調べる。
  • 母集団は結論を出したい全体、標本は実際に調べる一部、標本の大きさはその個数。
  • 無作為抽出では、母集団の各要素が同じように選ばれる可能性をもつようにする。
  • 標本の割合や平均を使って母集団を推定するが、推定値は確定値ではない。
  • 標本を大きくすると偶然のばらつきは一般に小さくなるが、選び方の偏りは直らない。
  • 母集団、抽出方法、標本の大きさ、回答率、質問、結論の表現を批判的に点検する。

学習範囲の根拠

本記事は、文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編」の第3学年「データの活用」にある、標本調査の必要性と意味、無作為抽出、方法や結果の批判的考察、母集団の傾向の推定と判断に沿って構成しています。

前後の単元

前に学ぶ四分位数と箱ひげ図で、複数の標本のばらつきを比較する方法を確認できます。

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次に学ぶ次は中3数学の総復習です。数と式・関数・図形・データを横断する問題で、高校入試と高校数学への土台を整えます。

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