三平方の定理は、直角三角形の3辺を結ぶ関係です。直角をはさむ2辺をa、b、斜辺をcとすると、a2+b2=c2です。直角と斜辺を正しく見分け、平面や空間の長さへ活用しましょう。
三平方の定理とは
直角三角形で、直角をはさむ2辺の長さをa、b、直角の向かい側にある斜辺の長さをcとします。このとき、次の関係が成り立ちます。
これが三平方の定理です。ピタゴラスの定理とも呼ばれます。斜辺cは直角の向かい側にあり、直角三角形の3辺のうち最も長い辺です。
| 辺 | 位置 | 式での役割 |
|---|---|---|
| a、b | 直角をはさむ2辺 | それぞれの平方を足す |
| c | 直角の向かい側にある斜辺 | 斜辺の平方になる |
面積で見る定理の意味
各辺を1辺とする正方形を考えると、三平方の定理は面積の関係を表します。辺a上の正方形の面積はa2、辺b上はb2、斜辺c上はc2です。
=斜辺上の正方形の面積
例えば、直角をはさむ2辺が3cmと4cmなら、それぞれの正方形の面積は9cm2と16cm2です。和は25cm2なので、斜辺上の正方形の1辺、すなわち斜辺は5cmです。
三平方の定理の証明
直角をはさむ2辺がa、b、斜辺がcの合同な直角三角形を4枚用意し、1辺が(a+b)の大きな正方形の四隅に並べます。中央には、4辺がすべてcの四角形ができます。
直角三角形の二つの鋭角の和は90°なので、中央の四角形の各角も90°です。したがって、中央は1辺cの正方形です。
大きな正方形の面積を、二通りに表します。
4枚の三角形と中央の正方形:4×(ab/2)+c2
二つは同じ面積なので、
a2+2ab+b2=2ab+c2
a2+b2=c2
よって、三平方の定理が成り立ちます。図形の面積と式の展開が、同じ関係を別の方法で表している証明です。
斜辺を求める
直角をはさむ2辺a、bが分かっているときは、平方を足してから、長さなので正の平方根を取ります。
例1:直角をはさむ2辺が6cmと8cm
斜辺をccmとします。
c=10
答え:10cm
確かめ:62+82=100=102です。
斜辺以外の辺を求める
斜辺cと一方の辺aが分かっているときは、斜辺の平方から分かっている辺の平方を引きます。
b=√(c2-a2)
例2:斜辺が13cm、他の一辺が5cm
求める辺をbcmとします。
b2=169-25=144
b=12
答え:12cm
確かめ:52+122=25+144=169=132です。
答えが平方根になる場合
平方して整数になる長さだけが答えになるとは限りません。根号を使うと、丸めずに正確な長さを表せます。
例3:直角をはさむ2辺がともに1cm
c=√2
答え:√2cm
√2≈1.414ですが、近似値を求める指定がなければ√2cmが正確な答えです。
例えば√72は、そのままにせず、平方数36を根号の外へ出します。
平方根の計算で、根号を簡単にする方法を確認できます。
三平方の定理の逆
3辺の長さが分かっている三角形で、最も長い辺をc、他の2辺をa、bとします。
が成り立つなら、その三角形は、辺cを斜辺とする直角三角形です。これが三平方の定理の逆です。
理由を確かめます。直角をはさむ2辺がa、bの直角三角形を別に作ると、その斜辺をdとしてd2=a2+b2=c2です。長さは正なのでd=cとなり、二つの三角形は3辺がそれぞれ等しく合同です。したがって、もとの三角形にも90°の角があります。
例4:7cm、24cm、25cmの三角形
最も長い辺は25cmです。
252=625
二つが等しいので、三平方の定理の逆から、この三角形は直角三角形です。25cmの辺が斜辺です。
覚えておくと便利な辺の比
次のように、3辺が整数になる直角三角形があります。これらはピタゴラス数の例です。
| 直角をはさむ2辺 | 斜辺 | 平方の確認 |
|---|---|---|
| 3、4 | 5 | 9+16=25 |
| 5、12 | 13 | 25+144=169 |
| 7、24 | 25 | 49+576=625 |
| 8、15 | 17 | 64+225=289 |
3:4:5を2倍した6:8:10、3倍した9:12:15も同じ形の直角三角形です。比を知っていると計算を確かめやすくなりますが、条件を確認せずに当てはめるのではなく、三平方の定理で関係を説明できることが大切です。
平面図形への活用
図の中に直角三角形を見つける、または補助線を引いて作ると、直接測りにくい長さを求められます。
例5:長方形の対角線
縦6cm、横8cmの長方形の対角線をdcmとします。対角線で分けると、縦と横を直角をはさむ2辺とする直角三角形ができます。
d=10
答え:10cm
例6:正三角形の高さ
1辺10cmの正三角形で、一つの頂点から向かい側の辺へ垂線を下ろします。正三角形は二等辺三角形なので、この垂線は底辺を5cmずつに分けます。高さをhcmとします。
h2=75
h=5√3
答え:5√3cm
確かめ:(5√3)2+52=75+25=100です。
座標平面の2点間の距離
点A(x1, y1)と点B(x2, y2)の横方向の長さは|x2-x1|、縦方向の長さは|y2-y1|です。この2辺を直角をはさむ辺と考えます。
例7:点A(1, 2)と点B(7, 10)の距離
横の差は7-1=6、縦の差は10-2=8です。
答え:10
差の向きを逆にしても、平方するので距離は同じです。ただし、「座標の差」そのものと「長さ」を区別し、長さは負にならないことを確認します。
空間図形への活用
空間では、一度に3方向を式へ入れたように見えても、実際には三平方の定理を二回使います。直方体の縦をa、横をb、高さをcとすると、まず底面の対角線を求め、次にその対角線と高さでできる直角三角形を考えます。
空間対角線dの平方=a2+b2+c2
例8:3cm、4cm、12cmの直方体の空間対角線
底面の対角線は、32+42=25より5cmです。空間対角線をdcmとすると、
d=13
答え:13cm
確かめ:32+42+122=169=132です。
例9:円錐の母線
底面の半径が5cm、高さが12cmの直円錐で、頂点と底面の中心と底面の円周上の一点を結ぶと、直角をはさむ2辺が5cmと12cmの直角三角形ができます。母線をlcmとします。
l=13
答え:13cm
問題を解く手順
- 直角を確認する:直角の印、長方形、垂線、円の直径など、根拠を探します。
- 斜辺を確認する:直角の向かい側にある最も長い辺をcとします。
- 分かる長さを式へ入れる:a2+b2=c2に対応させます。
- 平方を計算する:斜辺なら足し、他の辺なら斜辺の平方から引きます。
- 正の平方根を取る:根号を簡単にし、単位を付けます。
- 確かめる:斜辺が最も長いか、元の式に戻して成り立つかを確認します。
よくある誤りと直し方
| 誤り | 直し方 |
|---|---|
| どの三角形にも公式を使う | 直角が条件として示されているか確認する |
| 斜めに見える辺を斜辺とする | 直角の向かい側の辺を選ぶ |
| a+b=cとする | 辺ではなく、各辺の平方の関係であることを確認する |
| 他の辺を求めるときも平方を足す | b2=c2-a2と移項する |
| √72を36√2とする | √36=6なので、√72=6√2 |
| 長さに負の解も含める | 辺の長さには正の平方根を採用する |
| 逆で最も長い辺を確認しない | 最大の辺をcとして、他の2辺の平方和と比べる |
| 空間対角線を底面の対角線と混同する | 底面で一回、底面対角線と高さでもう一回使う |
確認問題
- 直角をはさむ2辺が9cmと12cmの直角三角形の斜辺を求めましょう。
- 斜辺が17cm、他の一辺が8cmの直角三角形で、残りの一辺を求めましょう。
- 直角をはさむ2辺がともに6cmの直角三角形の斜辺を、根号を簡単にして求めましょう。
- 3辺が5cm、12cm、13cmの三角形は直角三角形ですか。根拠も答えましょう。
- 3辺が6cm、7cm、10cmの三角形は直角三角形ですか。
- 縦5cm、横12cmの長方形の対角線を求めましょう。
- 1辺6cmの正三角形の高さを求めましょう。
- 1辺7cmの正方形の対角線を求めましょう。
- 点P(-2, 1)と点Q(4, 9)の距離を求めましょう。
- 縦6cm、横8cm、高さ24cmの直方体の空間対角線を求めましょう。
確認問題の解答と考え方
- √(92+122)=√225=15より、15cmです。
- √(172-82)=√225=15より、15cmです。
- √(62+62)=√72=6√2より、6√2cmです。
- 52+122=25+144=169=132なので、三平方の定理の逆から直角三角形です。
- 最長辺は10cmですが、62+72=85、102=100で等しくないので、直角三角形ではありません。
- √(52+122)=√169=13より、13cmです。
- 高さで底辺が3cmずつに分かれるので、√(62-32)=√27=3√3より、3√3cmです。
- √(72+72)=√98=7√2より、7√2cmです。
- 横の差は6、縦の差は8なので、√(62+82)=10より、距離は10です。
- √(62+82+242)=√676=26より、26cmです。
まとめ
- 直角三角形では、直角をはさむ2辺をa、b、斜辺をcとして、a2+b2=c2。
- 斜辺は直角の向かい側にあり、3辺のうち最も長い。
- 斜辺は平方を足し、他の辺は斜辺の平方から分かっている辺の平方を引く。
- 長さには正の平方根を採用し、近似の指定がなければ根号で正確に表す。
- 最長辺をcとして平方の関係が成り立てば、定理の逆から直角三角形と分かる。
- 平面・座標・空間でも、根拠のある直角三角形を見つけることが出発点。
学習範囲の根拠
本記事は、文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編」の第3学年「図形」にある、三平方の定理の意味、証明できること、定理を見いだすこと、具体的な場面で活用することに沿って構成しています。
保護者の方へ:見守りのポイント
計算以前に、「なぜここに直角三角形があるのか」と「どの辺が斜辺か」を言葉で説明してもらうと、公式の取り違えが減ります。答えが根号になっても誤りとは限りません。斜辺が最も長いこと、元の平方の式に戻して成り立つことを一緒に確かめれば、正確さを自分で判断する習慣につながります。
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