三角比は、角度と辺の比を結び付ける道具です。直角三角形でsin・cos・tanを定義し、有名角、鈍角への拡張、相互関係、長さや角度の計算へ進みます。
学ぶ前に確認したいこと
三角比の根拠には、相似と三平方の定理を使います。必要なら相似な図形と三平方の定理を復習してください。平方根の整理は数学I「数と式」につながります。
三角比とは
三角比とは、直角三角形の辺の長さの比を角度に対応させたものです。同じ鋭角をもつ直角三角形は相似なので、大きさが違っても対応する辺の比は同じです。このため、角度 θだけで三つの比が決まります。
直角三角形で、注目する鋭角を θ(0°<θ<90°)とします。
- 斜辺:直角の向かいにある、最も長い辺
- 対辺:角 θの向かいにある辺
- 隣辺:角 θに接する二辺のうち、斜辺ではない辺
| 名称 | 定義 | 分母 |
|---|---|---|
| sin θ(サイン) | 対辺/斜辺 | 斜辺 |
| cos θ(コサイン) | 隣辺/斜辺 | 斜辺 |
| tan θ(タンジェント) | 対辺/隣辺 | 隣辺 |
例題1:3辺から三角比を求める
斜辺5、角 θの対辺3、隣辺4の直角三角形を考えます。
cos θ=4/5
tan θ=3/4
確かめ:32+42=52で、直角三角形の辺として整合します。
三角比から辺の長さを求める
求めたい辺と分かっている辺の両方を含む比を選びます。斜辺と対辺ならsin、斜辺と隣辺ならcos、対辺と隣辺ならtanです。
例題2:斜辺と角から対辺を求める
斜辺が10、鋭角が30°の直角三角形で、30°の対辺を xとします。
1/2=x/10
x=5
答え:対辺は5です。
例題3:対辺と角から隣辺を求める
鋭角が45°、その対辺が6の直角三角形で、隣辺を xとします。
1=6/x
x=6
答え:隣辺は6です。
有名角の三角比
30°・60°は、1辺2の正三角形を半分にした直角三角形から導けます。辺の比は、30°の対辺:60°の対辺:斜辺=1:√3:2です。45°は、二辺が1の直角二等辺三角形から、辺の比1:1:√2を使います。
| θ | sin θ | cos θ | tan θ |
|---|---|---|---|
| 0° | 0 | 1 | 0 |
| 30° | 1/2 | √3/2 | √3/3 |
| 45° | √2/2 | √2/2 | 1 |
| 60° | √3/2 | 1/2 | √3 |
| 90° | 1 | 0 | 定義されない |
直角三角形による定義は鋭角に対するものです。0°と90°の値は、後で扱う座標による拡張から定めます。tan 90°は sin 90°/cos 90°=1/0となり、0で割れないため定義されません。
0°から180°までの三角比
座標平面で原点を中心とする半径1の円を考え、正の x軸から反時計回りに θだけ進んだ円周上の点を P(x, y)とします。
sin θ=y
tan θ=y/x=sin θ/cos θ (cos θ≠0)
この定義により、0°≦θ≦180°まで扱えます。90°では点(0, 1)になるため、cos 90°=0で、tan 90°は定義されません。
| θの範囲 | sin θ | cos θ | tan θ |
|---|---|---|---|
| θ=0° | 0 | 1 | 0 |
| 0°<θ<90° | 正 | 正 | 正 |
| θ=90° | 1 | 0 | 定義されない |
| 90°<θ<180° | 正 | 負 | 負 |
| θ=180° | 0 | -1 | 0 |
180°-θの三角比
0°<θ<90°のとき、180°-θは鈍角です。円の左側では x座標だけが負になるため、
cos(180°-θ)=-cos θ
tan(180°-θ)=-tan θ
例題4:120°の三角比
120°=180°-60°なので、
cos 120°=-cos 60°=-1/2
tan 120°=-tan 60°=-√3
sinは正、cosとtanは負で、鈍角の符号とも一致します。
三角比の相互関係
半径1の円上では x2+y2=1なので、sinとcosの間に次の関係があります。
また、cos θ≠0、つまり0°≦θ≦180°では θ≠90°のとき、
1+tan2 θ=1/cos2 θ
二つ目の式は、sin2 θ+cos2 θ=1の両辺をcos2 θで割ると導けます。cos θ=0では割れないため、条件を省略できません。
例題5:cosと角の範囲からsin・tanを求める
90°<θ<180°、cos θ=-3/5のとき、sin θとtan θを求めます。
この範囲でsinは正なので、sin θ=4/5です。
答え:sin θ=4/5、tan θ=-4/3
三角比から角度を求める
0°≦θ≦180°では、同じsinの値をもつ鋭角と鈍角があることに注意します。cosは0°から180°まで単調に1から-1へ減るため、この範囲で同じcosの値をもつ角は一つです。
例題6:sin θ=1/2を満たす角
0°≦θ≦180°で考えます。sin 30°=1/2であり、
答え:θ=30°, 150°
高さや距離への利用
水平な地面と視線が作る角を仰角、水平線より下を見る角を俯角といいます。現実の問題では、観測者の目の高さを最後に足す必要があるか確認します。
例題7:建物の高さを求める
建物から水平距離10 mの地点で、地面から建物の頂点までの仰角が30°でした。観測点の高さを0 mとみなすとき、建物の高さ hを求めます。
√3/3=h/10
h=10√3/3
答え:10√3/3 mです。もし目の高さ1.5 mから測ったなら、建物全体の高さは10√3/3+1.5 mです。
よくある誤り
- 対辺と隣辺を図の上下だけで決める:注目する角を基準に決めます。
- tanも斜辺を使うと思う:tan θ=対辺/隣辺で、斜辺は使いません。
- tan 90°=0とする:分母のcos 90°が0なので、tan 90°は定義されません。
- 鈍角でもcosを正にする:90°<θ<180°ではcosとtanは負です。
- 二乗から符号を一つに決める:角の範囲を見て正負を選びます。
- 相互関係の条件を省く:tanを含む式ではcos θ≠0が必要です。
- sinの値から角を一つだけ答える:0°から180°では鋭角と鈍角の二つがあり得ます。
- 高さの問題で目の高さを忘れる:図で、どの高さを三角比で求めたか確認します。
確認問題
- 斜辺13、角 θの対辺5、隣辺12の直角三角形で、三つの三角比を求めてください。
- 斜辺8、鋭角60°の直角三角形で、60°の対辺を求めてください。
- sin 30°、cos 45°、tan 60°を求めてください。
- sin 90°、cos 90°、tan 90°を答えてください。
- sin 150°、cos 150°、tan 150°を求めてください。
- 0°<θ<90°、sin θ=3/5のとき、cos θとtan θを求めてください。
- 90°<θ<180°、sin θ=5/13のとき、cos θとtan θを求めてください。
- 0°≦θ≦180°で、cos θ=-1/2となる θを求めてください。
- 0°≦θ≦180°で、tan θ=1となる θを求めてください。
- 水平距離12 mの地点から頂点への仰角が45°で、目の高さが1.6 mのとき、建物の高さを求めてください。
確認問題の解答
- sin θ=5/13、cos θ=12/13、tan θ=5/12です。
- 8 sin 60°=8・√3/2より、4√3です。
- sin 30°=1/2、cos 45°=√2/2、tan 60°=√3です。
- sin 90°=1、cos 90°=0、tan 90°は定義されません。
- 150°=180°-30°より、sin 150°=1/2、cos 150°=-√3/2、tan 150°=-√3/3です。
- cosは正なのでcos θ=4/5。したがって、tan θ=3/4です。
- cosは負なのでcos θ=-12/13。したがって、tan θ=-5/12です。
- cos(180°-60°)=-cos 60°より、θ=120°です。
- tanは鋭角で正、鈍角で負なので、θ=45°です。90°では定義されません。
- 目から上の高さは12 tan 45°=12 mです。目の高さを足し、13.6 mです。
まとめ
- 直角三角形では、sin=対辺/斜辺、cos=隣辺/斜辺、tan=対辺/隣辺。
- 0°と90°を含む値は座標による拡張で定まり、tan 90°は定義されません。
- 90°<θ<180°では、sinは正、cosとtanは負。
- sin2 θ+cos2 θ=1。tanを含む式はcos θ≠0が条件。
- 長さや角度を求めるときは、分かっている辺と求めたい辺を含む比を選ぶ。
よくある質問
sin・cos・tanは辺の長さですか。
長さそのものではなく、辺の長さの比です。同じ角度をもつ直角三角形は相似なので、拡大・縮小しても三角比は変わりません。
tan 90°を定義できないのはなぜですか。
tan θ=sin θ/cos θで、cos 90°=0だからです。0で割る計算は定義できないため、tan 90°も定義されません。
有名角の値は暗記するしかありませんか。
30°・60°は正三角形の半分、45°は直角二等辺三角形から復元できます。表を覚えるだけでなく、辺の比1:√3:2と1:1:√2を図から導けるようにすると安全です。
学習範囲の根拠
本記事は、文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編」の数学I「図形と計量」に示された、鋭角の三角比、三角比の相互関係、三角比の0°から180°までの拡張、図形の計量への活用を基準にしています。正弦定理・余弦定理は次の独立記事で扱います。
前後の単元
要点辞典この単元の公式・定石・つまずきやすい所は 数学I・Aの要点辞典:図形と計量 にまとめてあります。

