整数問題では、数を素因数の積で見る方法と、割った余りで分類する方法が中心です。公式の前に、0・1・負の数を含む定義と、割り算の条件を確かめましょう。
整数と自然数
整数は、…,-3,-2,-1,0,1,2,3,…のように、負の整数・0・正の整数を合わせた数です。本記事では自然数を1,2,3,…とします。自然数に0を含める流儀もあるため、問題では定義を確認してください。
負の数の計算に不安がある場合は、先に中1「正の数・負の数」を確認しましょう。
割り算の原理
整数 aと正の整数 mに対して、
を満たす整数 qと rがただ一組存在します。qを商、rを余りといいます。余りを0以上 m未満に固定することで、負の整数でも商と余りが一意になります。
例題1:負の整数の商と余り
-23を7で割った商と余りを求めます。
答え:商は-4、余りは5です。-23=7・(-3)-2とも書けますが、-2は標準的な余りの条件を満たしません。
約数と倍数
0でない整数 dについて、整数 nが n=dk(kは整数)と書けるとき、dは nの約数、nは dの倍数です。「dが nを割り切る」を d|nと書きます。
- 1と-1は、すべての整数の約数です。
- 0は、すべての0でない整数の倍数です。
- 0で割ることは定義しません。本記事では約数 dも0でないものとします。
高校の「正の約数を求める」問題では、負の約数を数えません。単に「整数の約数」と書かれているときは、問題文の約束を確認します。
素数と素因数分解
素数は、正の約数が1と自分自身だけである2以上の整数です。1は素数ではありません。2は唯一の偶数の素数です。
2以上の整数は、素数の積として、因数の順序を除いてただ一通りに表せます。これを素因数分解の一意性といいます。
この一意性があるため、約数、最大公約数、最小公倍数を素数ごとの指数で比較できます。式の因数分解とは目的が異なるので、必要に応じて中3「展開と因数分解」も区別して確認してください。
倍数の判定法
| 割る数 | 判定法 | 理由の手掛かり |
|---|---|---|
| 2 | 一の位が偶数 | 10が2の倍数 |
| 3 | 各桁の和が3の倍数 | 10≡1(mod 3) |
| 4 | 下2桁が4の倍数 | 100が4の倍数 |
| 5 | 一の位が0または5 | 10が5の倍数 |
| 9 | 各桁の和が9の倍数 | 10≡1(mod 9) |
| 11 | 桁を交互に足し引きした数が11の倍数 | 10≡-1(mod 11) |
例えば53856は各桁の和が5+3+8+5+6=27なので、3と9の倍数です。下2桁56は4の倍数なので、53856も4の倍数です。
正の約数の個数
異なる素数 p1, …, pkと正の整数 a1, …, akを用いて、
と素因数分解できるとします。正の約数では、各素数の指数を0から aiまで選べるため、個数は
です。正の整数1の素因数分解は空の積と考え、正の約数は1だけなので1個です。
正の約数の総和
各素数の指数を選んでできる約数をすべて足すと、
となります。積を展開すると、各正の約数がちょうど一度ずつ現れます。
例題2:756の正の約数
756=22・33・7なので、正の約数の個数は、
正の約数の総和は、
答え:24個、総和2240です。
最大公約数と最小公倍数
正の整数 a, bに共通する正の約数のうち最大のものを最大公約数gcd(a, b)、共通する正の倍数のうち最小のものを最小公倍数lcm(a, b)といいます。
素因数分解では、最大公約数は各指数の小さい方、最小公倍数は大きい方を取ります。正の整数について、
が成り立ちます。一方が0の場合を含める流儀ではlcm(a, 0)=0としますが、本記事の公式はまず正の整数で扱います。
例題3:素因数の指数を比べる
72=23・32、120=23・3・5です。
lcm(72,120)=23・32・5=360
確かに24・360=72・120=8640です。
互いに素
gcd(a, b)=1のとき、aと bは互いに素です。「どちらも素数」という意味ではありません。例えば8と15はどちらも合成数ですが、互いに素です。
二つずつの最大公約数が1であるどの二つも互いに素と、全体の最大公約数が1であることも区別します。6, 10, 15は3数全体の最大公約数が1ですが、どの二つも互いに素ではありません。
ユークリッドの互除法
正の整数 a>bを bで割り、a=bq+rとします。このとき、
です。a, bの公約数は r=a-bqも割り、逆に b, rの公約数は a=bq+rも割るため、公約数の集合が同じです。
余りは毎回小さくなり、最後は0になります。余りが0になったときの割る数、つまり手順に現れる最後の0でない数が最大公約数です。
例題4:1071と1029の最大公約数
1029=42・24+21
42=21・2+0
答え:gcd(1071,1029)=21です。
ベズーの等式
0でない整数 a, bについて、g=gcd(a, b)とすると、
を満たす整数 x, yが存在します。互除法の式を後ろから代入して戻すと、具体的な一組を求められます。
例題5:47と18で1を表す
互除法を逆向きにたどると、
となります。実際に235-234=1です。したがって x=5, y=-13は47x+18y=1の一組の整数解です。
一次不定方程式
整数係数の方程式 ax+by=cを、整数 x, yについて解きます。g=gcd(a, b)とすると、整数解が存在するための必要十分条件は、
です。a, bを同時に0とはしません。一組の解 (x0, y0) が見つかれば、すべての整数解は、
解の存在条件、互除法の逆算、一般解、正・非負整数解を10問で練習するなら一次不定方程式の解き方へ進んでください。
例題6:84x+30y=6
gcd(84,30)=6で、6は右辺6を割るため整数解があります。6で割ると14x+5y=1です。
x=-1, y=3は-14+15=1を満たします。したがって、
がすべての整数解です。
合同式:余りを式で扱う
整数 a, bと正の整数 mについて、m|(a-b)のとき、aと bは mを法として合同といい、
と書きます。これは aと bを mで割った余りが同じという意味です。合同式は整数の余りを整理する便利な発展的表現で、教科書によって扱いの深さが異なります。
合同式でできる計算
a≡b(mod m)、c≡d(mod m)なら、加法・減法・乗法について、
が成り立ち、非負整数乗もできます。一方、等式のようにいつでも割り算・約分できるわけではありません。
例題7:大きな累乗の余り
7100を5で割った余りを求めます。
7100≡(24)25≡1(mod 5)
答え:余りは1です。
一次合同式
ax≡b(mod m)に整数解があるための必要十分条件は、gcd(a, m)が bを割り切ることです。
例題8:14x≡8(mod 30)
gcd(14,30)=2で、2|8なので解があります。2で整理すると、
7・13≡1(mod 15)なので、両辺に13を掛けて x≡52≡7(mod 15)です。
法30で表せば、x≡7, 22(mod 30)の二つの剰余類です。
位取り記数法とn進法
10進法の325は、3・102+2・10+5を表します。一般に、n≧2を底とするn進法では、0から n-1までの数字を使い、各桁を nの累乗の係数として読みます。
先頭の数字は0でなく、各桁aiは0≦ai<nです。10以上の底では、10以上の桁をA, Bなどで表すことがあります。
整数・小数の双方向変換と2進数の加減乗算はn進法と2進法の変換の例題10問で練習できます。
例題9:10進法から2進法へ
45=32+8+4+1=25+23+22+20なので、
逆に各桁へ2の累乗を掛けて足せば、10進法へ戻せます。
有限小数と循環小数
整数 a, b(b>0)の分数 a/bを既約分数にします。10進法で有限小数になるための必要十分条件は、分母の素因数が2と5だけであることです。
これは分母がある10の累乗10k=2k5kを割り切れる条件です。有理数は有限小数、または同じ並びが繰り返される循環小数になります。
例題10:分母から小数表示を判定する
7/40では40=23・5なので有限小数となり、7/40=0.175です。
5/12では12=22・3に3が含まれるため、有限小数ではなく、5/12=0.41666…と循環します。
整数と人間の活動
位取り記数法では0が「その位に量がない」ことを示す重要な記号として働きます。時刻や角度に60進法の名残があり、コンピュータ内部では0と1による2進法が使われます。
ユークリッドの互除法は、二つの長さを共通の単位で測る活動と結び付けて考えられ、現在も高速な最大公約数アルゴリズムとして使われます。整数の学習では、計算法だけでなく「なぜその表現や手順が必要になったか」を考えることも大切です。
用語と道具がそろったら、次は「解き方の型」へ
このページは整数の性質の知識編です。入試の整数問題で最初の一手を選べるようになるには、解き方を型で持っておく必要があります。数強塾では、整数問題の方針は「積の形にする・余りで分類する・不等式で絞る」の3つだけという立場で体系化しました。
解法を選ぶ手順
| 問題の構造 | 最初の方針 | 確認事項 |
|---|---|---|
| 約数・倍数・個数・総和 | 素因数分解 | 1、正負、0を含めるか |
| 最大公約数 | 素因数分解または互除法 | 大きな数なら余りを繰り返す |
| ax+by=cの整数解 | gcd(a,b)を求める | gcd(a,b)がcを割るか |
| 大きな累乗の余り | 合同式で周期を探す | 法と指数、周期の開始位置 |
| n進法 | 底の累乗で展開 | 各桁が0以上n未満か |
| 有限小数かの判定 | 既約分数にして分母を分解 | 約分を先にしたか |
よくある誤り
| 誤り | 正しい確認 |
|---|---|
| 1を素数に含める | 素数は2以上で、正の約数が二つ |
| 負の数の余りを負にする | 通常は0≦r<mに直す |
| 約数の個数で指数をそのまま掛ける | 0乗も選べるため各指数に1を足す |
| 3数のgcdが1ならどの二つも互いに素と考える | 各ペアのgcdを調べる |
| 不定方程式で一組だけ答える | 整数tを使ってすべての解を表す |
| 合同式を自由に割る | 割る数と法が互いに素か等を確認する |
| 有限小数の判定を約分前に行う | 既約分数の分母を調べる |
確認問題
- -37を5で割った商と余りを、0≦余り<5として求めてください。
- 756の正の約数の個数と総和を求めてください。
- 84と126の最大公約数・最小公倍数を求めてください。
- 1, 2, 91のうち、素数をすべて選んでください。
- 662と414の最大公約数を互除法で求めてください。
- 35x+22y=1を満たす整数解を一組求めてください。
- 18x+30y=7に整数解があるか判定してください。
- 3100を8で割った余りを求めてください。
- 5x≡3(mod 7)を解いてください。
- (101101)2を10進法で表してください。
- 73を2進法で表してください。
- 21/140と5/12が10進法で有限小数になるか、それぞれ判定してください。
確認問題1〜4の解答
- -37=5・(-8)+3なので、商-8、余り3です。
- 756=22・33・7より、個数は3・4・2=24個、総和は7・40・8=2240です。
- 84=22・3・7、126=2・32・7より、gcd=42、lcm=252です。
- 2だけです。1は素数でなく、91=7・13です。
確認問題5〜8の解答
- 662=414+248、414=248+166、248=166+82、166=82・2+2、82=2・41より、2です。
- 1=-5・35+8・22なので、例えば(x, y)=(-5, 8)です。
- gcd(18,30)=6ですが6は7を割り切らないので、整数解はありません。
- 32≡1(mod 8)より、3100≡150≡1です。余りは1です。
確認問題9〜12の解答
- 5・3≡1(mod 7)なので、両辺に3を掛け、x≡2(mod 7)です。
- 32+8+4+1=45です。
- 73=64+8+1なので、(1001001)2です。
- 21/140=3/20で分母20=22・5なので有限小数です。5/12は既約で分母に3を含むので循環小数です。
まとめ
- 割り算では a=mq+r、0≦r<mを固定します。
- 約数・倍数は素因数の指数、最大公約数は互除法で整理できます。
- ax+by=cに整数解があるのはgcd(a, b)|cのときです。
- 合同式では加減乗と非負整数乗ができますが、割り算には条件があります。
- n進法は底の累乗で読み、有限小数は既約分母の素因数で判定します。
よくある質問
0や1は素数ですか。
どちらも素数ではありません。素数は2以上の整数で、正の約数が1と自分自身の二つだけである数です。1を素数に含めないことで、素因数分解の一意性が保たれます。
互除法はなぜ最大公約数を変えないのですか。
a=bq+rなら、aとbの公約数はr=a-bqも割り、bとrの公約数はa=bq+rも割ります。公約数の集合が同じなので、最大公約数も同じです。
合同式ではなぜ自由に割れないのですか。
法と共通因数をもつ数を掛けると、異なる剰余類が同じ結果へつぶれることがあるためです。掛けた数と法が互いに素なら逆数に相当する数があり、安全に消去できます。
整数の性質は現行の数学Aでどのように扱われますか。
現行課程では「数学と人間の活動」の中で、記数法、ユークリッドの互除法、数える・測る活動などと結び付けて扱われます。教科書により題材の選択や発展内容の深さは異なります。
学習範囲の根拠
本記事は、文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編」の数学A「数学と人間の活動」に示された、数量と人間の活動、記数法、ユークリッドの互除法、公約数、一次不定方程式などの例を基準にしています。合同式、約数の総和、一次合同式は理解を広げる発展内容として区別しました。

