展開は、積の形の式を和の形へ直すことです。因数分解はその逆で、和の形の式を積の形へ直します。公式を別々に暗記するのではなく、分配法則を行き来する二つの操作として理解すると、符号や係数の間違いを減らせます。
展開と因数分解は逆の操作
かっこを外して単項式の和に直すことを展開といいます。
一方、多項式をいくつかの式の積に直すことを因数分解といいます。積を作る一つ一つの式や数を因数といいます。
| 操作 | 変形の向き | 確認方法 |
|---|---|---|
| 展開 | 積の形 → 和の形 | 全ての項を掛け、同類項をまとめる |
| 因数分解 | 和の形 → 積の形 | 答えを展開して元の式へ戻るか確かめる |
分配法則で展開する
例1:単項式と多項式の積
3x(2x-5)を展開します。
=6x²-15x
答え:6x²-15x
かっこの中の全ての項に、外側の項を掛けます。負の項は、符号も含めて掛けます。
多項式どうしを展開する
(a+b)(c+d)では、前のかっこの各項を、後ろのかっこの各項へ掛けます。
=ac+ad+bc+bd
四つの積を書いた後、同類項があればまとめます。次の乗法公式は、この手順で生まれる項をまとめたものです。
四つの乗法公式
| 形 | 展開公式 | 見分け方 |
|---|---|---|
| 和の平方 | (a+b)²=a²+2ab+b² | 同じ二項式の和を2回掛ける |
| 差の平方 | (a-b)²=a²-2ab+b² | 同じ二項式の差を2回掛ける |
| 和と差の積 | (a+b)(a-b)=a²-b² | 同じ二項で符号だけが反対 |
| 共通する文字 | (x+a)(x+b)=x²+(a+b)x+ab | xが共通する二つの二項式 |
平方の公式を使う
例2:(x+4)²
=x²+2×x×4+4²
=x²+8x+16
答え:x²+8x+16
例3:(2x-3)²
=(2x)²-2×2x×3+3²
=4x²-12x+9
答え:4x²-12x+9
2x全体を平方するため、最初の項は2x²ではなく4x²です。
和と差の積を使う
例4:(3a+2)(3a-2)
答え:9a²-4
普通に四つの積を作ると、-6aと+6aが打ち消し合います。これが中央の項が消える理由です。
(x+a)(x+b)を使う
例5:(x+2)(x-5)
a=2、b=-5と考えます。和は-3、積は-10です。
=x²-3x-10
答え:x²-3x-10
因数分解では共通因数を先に探す
全ての項に共通する数や文字があれば、分配法則を逆向きに使ってくくります。
例6:6x²-9x
6x²と-9xの共通因数は3xです。
答え:3x(2x-3)
展開すると6x²-9xへ戻るので、検算できます。
因数分解の公式
| 多項式の形 | 因数分解 |
|---|---|
| a²+2ab+b² | (a+b)² |
| a²-2ab+b² | (a-b)² |
| a²-b² | (a+b)(a-b) |
| x²+(a+b)x+ab | (x+a)(x+b) |
因数分解では、展開公式の右辺から左辺を探します。答えを展開すれば、符号と定数項をすぐに検算できます。
平方と平方の差を因数分解する
例7:x²+10x+25
25=5²、10x=2×x×5なので、和の平方の形です。
例8:4x²-25
4x²=(2x)²、25=5²なので、平方の差です。
積と和から二数を探す
例9:x²-x-12
積が-12、和が-1になる二数を探します。3と-4なら、3×(-4)=-12、3+(-4)=-1です。
展開するとx²-4x+3x-12=x²-x-12です。
公式を選ぶ順序
- 共通因数:全ての項に共通する数や文字がないか確認する。
- 項の数:二項なら平方の差、三項なら平方完成型や積・和の型を疑う。
- 両端の平方:最初と最後が平方で、中央が±2abか確認する。
- 積と和:x²+px+qなら、積がq、和がpの二数を探す。
- 展開で検算:因数分解した答えを展開し、元の式と全項を照合する。
計算の工夫への利用
例10:99²を暗算する
99=100-1として、差の平方を使います。
=10000-200+1
=9801
よくある誤りと直し方
| 誤り | 直し方 |
|---|---|
| (a+b)²=a²+b² | 中央の2abを必ず入れる |
| (2x)²=2x² | 係数も平方して4x²にする |
| (a-b)²の最後を-b²にする | (-b)²は+b²、中央だけが負 |
| 共通因数を残したまま公式を探す | 全項の最大の共通因数を先にくくる |
| 積が合う二数だけで決める | 積と和の両方を確認する |
| 因数分解を途中で止める | 各因数がさらに因数分解できないか確かめる |
確認問題
- 2a(3a+4)を展開しましょう。
- (x-6)²を展開しましょう。
- (2y+5)²を展開しましょう。
- (5m+1)(5m-1)を展開しましょう。
- (x-7)(x+2)を展開しましょう。
- 8x²+12xを因数分解しましょう。
- x²-14x+49を因数分解しましょう。
- 9a²-16を因数分解しましょう。
- x²+2x-15を因数分解しましょう。
- 2x²+8x+8を完全に因数分解しましょう。
確認問題の解答と考え方
- 6a²+8aです。
- x²-12x+36です。
- 4y²+20y+25です。
- 25m²-1です。
- x²-5x-14です。
- 共通因数4xでくくり、4x(2x+3)です。
- (x-7)²です。
- (3a+4)(3a-4)です。
- 積が-15、和が2の5と-3を使い、(x+5)(x-3)です。
- まず2でくくり、2(x²+4x+4)=2(x+2)²です。
まとめ
- 展開は積から和、因数分解は和から積への変形。
- 乗法公式は分配法則をまとめたもので、因数分解公式はその逆向き。
- 平方の公式では中央の±2abを忘れない。
- 因数分解では、公式より先に共通因数を探す。
- x²+px+qでは、積がq、和がpの二数を探す。
- 因数分解の答えは展開し、元の式へ戻るか検算する。
学習範囲の根拠
本記事は、文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編」の第3学年「数と式」にある、単項式と多項式の乗法、多項式を単項式で割る除法、簡単な一次式の積の展開と因数分解を扱う内容に沿って構成しています。
保護者の方へ:見守りのポイント
公式名を言えるかより、展開した四つの積のどれが同類項になるか、因数分解した答えを展開して元へ戻せるかをご確認ください。符号ミスが続く場合は、式を急いで一行にせず、掛けた組を一つずつ書くと原因を特定できます。演習量を増やす前に、同じ誤りがどの段階で起きたかを分けることが大切です。
前後の単元と追加演習
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