数学Aの図形では、図にそう見えることではなく、定義・仮定・定理から言えることを積み重ねます。どの点が辺上か延長上か、比の順序はどちらかを、式の前に確認しましょう。
数学A「図形の性質」の全体像
中学校で学んだ三角形の合同と証明、相似な図形、円周角の定理、三平方の定理を土台に、三角形・円・作図・空間図形の性質を論理的に組み立てます。
長さや角を三角比で計算する内容は、数学Iの正弦定理・余弦定理で扱います。数学Aでは、座標や三角比を使わず、合同・相似・面積比などから図形そのものの関係を考える場面が中心です。
三角形ができる条件
正の3数 a, b, cが、面積をもつ三角形の3辺になるための必要十分条件は、どの1辺も他の2辺の和より短いことです。
一つの辺、例えば aだけを変えるなら、
とまとめられます。等号なら3点が一直線上に並ぶ退化した形で、通常の三角形には含めません。
例題1:整数の辺の候補
2辺が4, 7で、第3辺 xが正の整数であるとします。
答え:x=4, 5, 6, 7, 8, 9, 10の7通りです。
第三辺の範囲、整数条件、必要十分性の証明、辺と対角の大小は、三角形の成立条件の例題10問で詳しく確認できます。
辺の大小と向かい合う角
一つの三角形では、長い辺の向かいに大きい角があり、逆も成り立ちます。△ABCで辺a, b, cがそれぞれ角A, B, Cの向かいなら、
です。辺と対角の対応を崩さないよう、三角形の頂点と辺の記号を最初に固定します。
内角の二等分線の定理
△ABCで、Dを辺BC上の点とし、ADが∠Aを二等分するとき、
が成り立ちます。角の二等分線は、向かい側の辺を両隣の辺の比に分けます。逆も成り立つので、BD/DC=AB/ACならADは∠Aの二等分線です。
例題2:二等分線が辺を分ける比
AB=8, AC=12, BC=15で、ADが∠Aの二等分線とします。
BC=15を2:3に分けるので、BD=6, DC=9です。
外角の二等分線
∠Aの外角の二等分線が直線BCとEで交わるとき、Eは通常、辺BCの外側にあり、AB≠ACなら、正の長さについて、
が成り立ちます。AB=ACの二等辺三角形では、Aの外角の二等分線はBCと平行になり、有限の交点Eはありません。
内角・外角・定理の逆・面積比の証明・二等分線の長さは、角の二等分線の定理の例題10問で詳しく確認できます。
三角形の中心
| 中心 | 交わる3直線 | 等しくなる距離・比 | 位置 |
|---|---|---|---|
| 外心 | 3辺の垂直二等分線 | 3頂点までの距離 | 鋭角三角形は内、直角は斜辺の中点、鈍角は外 |
| 内心 | 3内角の二等分線 | 3辺までの垂直距離 | 常に内部 |
| 重心 | 3本の中線 | 各中線を頂点側から2:1 | 常に内部 |
| 垂心 | 3本の高さ | ― | 鋭角は内、直角は直角の頂点、鈍角は外 |
中線は頂点と向かい側の辺の中点を結ぶ線分、高さは頂点から向かい側の辺またはその延長へ下ろした垂線です。三角形の外角の二等分線を用いると、辺への距離が等しい傍心も定まります。
外心・内心・重心・垂心・傍心の作る直線、位置、半径、座標は、三角形の五心の例題10問で比較できます。
例題3:直角三角形の外心と内心
2辺6, 8、斜辺10の直角三角形を考えます。
外心は斜辺の中点なので、外接円半径は10/2=5です。内接円半径 rは、直角三角形では (6+8-10)/2=2です。
チェバの定理
△ABCの辺BC, CA, AB上に、それぞれP, Q, Rがあり、どの点も頂点とは異なるとします。3直線AP, BQ, CRが1点で交わるための必要十分条件は、
です。3点が辺の内部にある場合は、すべて正の長さで扱えます。点が延長上にある一般形では、有向線分を使う流儀と正の長さを使う流儀を混ぜないようにします。
定理の式は、交点をOとして各比を三角形の面積比へ直すと、分子と分母が順に打ち消し合うことから説明できます。逆も成り立つため、積が1なら3直線の共点を示せます。
例題4:共点になる比
BP:PC=2:3、CQ:QA=3:4で、AP, BQ, CRが1点で交わるとします。AR:RB=x:1とすると、
よって x=2です。AR:RB=2:1となります。
メネラウスの定理
△ABCの辺BC, CA, ABまたはその延長上に、それぞれD, E, Fがあり、頂点とは異なるとします。D, E, Fが一直線上にあるための必要十分条件は、正の長さを用いる標準的な表し方では、
です。チェバは「3本の線が1点に集まる」、メネラウスは「3点が1直線上に並ぶ」定理です。比の文字を三角形の周りに同じ向きで読めるように並べます。
例題5:一直線になる比
Dは辺BC上、Eは辺CA上、Fは直線AB上で辺ABの外にあり、D, E, Fは一直線上です。BD:DC=2:1、CE:EA=3:2とします。
答え:AF:FB=1:3です。
チェバとメネラウスの使い分け
| 確認したいこと | 使う定理 | 式の目印 |
|---|---|---|
| 頂点から引いた3直線が共点 | チェバ | BP/PC・CQ/QA・AR/RB=1 |
| 3辺または延長上の3点が共線 | メネラウス | BD/DC・CE/EA・AF/FB=1 |
どちらも比の積は1ですが、点と線の役割が違います。図だけで決めず、「共点」か「共線」かを文章で確認します。
比の順序、定理の逆、面積による証明、延長上の線分計算を詳しく練習する場合は、チェバの定理・メネラウスの定理の例題10問へ進んでください。
円に内接する四角形
四角形ABCDの4頂点が一つの円周上にあるとき、ABCDは円に内接するといいます。頂点を円周上の順に並べると、
です。内接四角形の一つの外角は、向かい合う内角に等しくなります。逆に、凸四角形の向かい合う角の和が180°なら、その四角形は一つの円に内接します。
例題6:内接四角形の角
円に内接する四角形ABCDで∠A=68°とします。
答え:∠C=112°です。
対角の和、外角、内接条件の逆、共円の証明、トレミーの定理は、円に内接する四角形の例題10問で詳しく確認できます。
円の接線と接弦定理
円の接点Tにおける接線は、半径OTに垂直です。また、円外の同じ点Pから引いた2本の接線の接点をT, Uとすると、PT=PUです。
4辺すべてが一つの円に接する場合の接線長、対辺和、面積は、円に外接する四角形の例題10問で詳しく確認できます。
接弦定理では、接点Aでの接線と弦ABが作る角は、弦ABに対する円周角に等しくなります。どちら側の角を扱うか、弦ABと同じ側の弧を見ないよう、対応する弧を確認します。逆も成り立ち、角が等しいことから接線であると示せます。
角の対応、接線の反対向き、証明、定理の逆、相似への利用は、接弦定理の例題10問で詳しく確認できます。
例題7:接線と弦の角
円の接点Aで、接線と弦ABが作る角が42°です。弦ABに対する、反対側の弧上の円周角∠ACBも、接弦定理より42°です。
方べきの定理
一つの点Pから円と交わる直線を引くと、交点までの距離の積は直線の向きによらず一定です。
| 点Pの位置・線 | 交点の順序 | 関係式 |
|---|---|---|
| 円内で2弦が交わる | A-P-B、C-P-D | PA・PB=PC・PD |
| 円外から2本の割線 | P-A-B、P-C-D | PA・PB=PC・PD |
| 円外から接線と割線 | 接点T、P-A-B | PT2=PA・PB |
円外の割線では、近い交点までの長さと遠い交点までの長さを掛けます。「円の外側の部分×円内の部分」ではありません。
円内・円外・接線の3パターン、相似による証明、定理の逆を詳しく練習する場合は、方べきの定理の公式と例題10問へ進んでください。
例題8:円内で交わる弦
弦ABとCDが円内のPで交わり、PA=3, PB=8, PC=4とします。
答え:PD=6です。
例題9:接線の長さ
円外のPから接線PTと割線P-A-Bを引き、PA=4, PB=9とします。
長さは正なので、PT=6です。
二つの円の位置関係
半径R≧r>0の二円について、中心間距離を dとします。
| 条件 | 位置関係 | 共有点の数 |
|---|---|---|
| d>R+r | 離れている | 0 |
| d=R+r | 外接 | 1 |
| R-r<d<R+r | 2点で交わる | 2 |
| d=R-r、R>r | 内接 | 1 |
| 0≦d<R-r | 一方が他方の内部 | 0 |
| d=0、R=r | 一致 | 無数 |
例題10:中心間距離で判定する
半径5と2、中心間距離7の二円では、5+2=7です。
答え:二円は外接し、共有点は1個です。
5つの位置関係、共有点と共通接線の本数、接点間の長さは二つの円の位置関係の例題10問で詳しく確認できます。
作図は「できた理由」まで説明する
作図では、目盛りのない定規とコンパスを使うことを基本とします。中学の基本作図にある垂直二等分線、角の二等分線、垂線を組み合わせます。
円外の点から接線を引く
- 円の中心Oと円外の点Pを結びます。
- 線分OPの中点Mを作図します。
- Mを中心とし、MOを半径とする円、つまり直径OPの円をかきます。
- 元の円との交点をT, Uとし、PT, PUを結びます。
∠OTPと∠OUPは直径OPに対する円周角なので90°です。したがってOT⊥PT、OU⊥PUとなり、PT, PUは接線です。Pが円外にあるとき交点は通常2個、円周上なら接線は1本、円内なら実在する接線はありません。
線分をm:nに内分する
- 線分ABの端Aから補助の半直線を引きます。
- その半直線上に、コンパスで等間隔の点を m+n個取ります。
- 最後の点とBを結びます。
- Aから m番目の点を通り、最後の点とBを結ぶ直線に平行な線を引き、ABとの交点をDとします。
平行線と線分の比より、AD:DB=m:nです。このように点の個数で作図するとき、m, nは正の整数とします。整数でない比を作る場合は、補助線上にその比となる二つの長さを取って平行線を利用します。
空間における直線と平面
空間図形では、平面上の図に重なって見えても、実際に交わるとは限りません。中学の空間図形を土台に、位置関係を分類します。
| 対象 | 主な位置関係 | 注意 |
|---|---|---|
| 異なる2直線 | 交わる、平行、ねじれの位置 | ねじれの位置は同一平面上にない |
| 直線と平面 | 1点で交わる、平行、直線が平面上 | 垂直は1点で交わる特別な場合 |
| 異なる2平面 | 1直線で交わる、平行 | 一致する場合は異なる2平面ではない |
ねじれの位置にある2直線のなす角は、一方の直線上の点を通り、他方に平行な直線を引いて、交わる2直線が作る角のうち0°以上90°以下の小さい方として定義します。
直線と平面が垂直になる条件
直線 lが平面α上の交わる2直線 m, nの両方に、その交点で垂直なら、l⊥αです。平面上の平行な2直線に垂直なだけでは、判定条件として不十分です。
l⊥αなら、lは交点を通るα上のすべての直線に垂直です。ただし、交点を通らない直線との「交わる角」をそのまま語らず、平行移動して考えます。
三垂線の定理
点Aから平面αへ下ろした垂線の足をHとします。α上の直線 lに、Hから下ろした垂線の足をMとすると、AM⊥lです。
Mを通りAHに平行な直線を kとします。AH⊥αなので k⊥lであり、仮定からHM⊥lです。平面AHM上でMを通る交わる2直線 k, HMの両方に lが垂直なので、lは平面AHMに垂直です。したがって、その平面上でMを通るAMにも垂直です。
例題11:空間の垂線を判定する
AH⊥平面α、HとMはα上、HM⊥l、Mは l上とします。
結論:三垂線の定理によりAM⊥lです。図の見た目ではなく、二段階の垂線を確認します。
斜線と射影、3つの形と証明、三角錐・四角錐での距離計算は三垂線の定理の例題10問で詳しく確認できます。
多面体とオイラーの多面体定理
穴のない凸多面体について、頂点数V、辺数E、面数Fの間に、
が成り立ちます。穴のある立体や自己交差する立体へ、条件を確認せずに使うことはできません。
正多面体は、すべての面が合同な正多角形で、各頂点に同じ数の面が同じ並びで集まる凸多面体です。5種類だけあります。
| 正多面体 | 面の形 | V | E | F |
|---|---|---|---|---|
| 正四面体 | 正三角形 | 4 | 6 | 4 |
| 正六面体 | 正方形 | 8 | 12 | 6 |
| 正八面体 | 正三角形 | 6 | 12 | 8 |
| 正十二面体 | 正五角形 | 20 | 30 | 12 |
| 正二十面体 | 正三角形 | 12 | 30 | 20 |
例えば立方体では8-12+6=2です。辺を各面ごとに数えると1本を2回数えるため、面の辺数の合計は2Eになります。
頂点・辺・面の求め方、角柱・角錐の一般式、切断、正多面体への応用はオイラーの多面体定理の例題10問で詳しく確認できます。
解法を選ぶ手順
| 目標 | 最初に見るもの | 候補となる定理 |
|---|---|---|
| 辺の長さ・比 | 角の二等分線、平行線、面積比 | 二等分線、相似 |
| 3直線の共点 | 各辺を分ける比 | チェバ |
| 3点の共線 | 辺・延長上の比 | メネラウス |
| 4点の共円 | 向かい合う角、同じ弧の円周角 | 内接四角形の逆 |
| 円の長さ | 交わる弦、割線、接線 | 方べき |
| 空間の垂直 | 交わる2直線への垂直 | 直線と平面、三垂線 |
| 多面体の個数 | 凸で穴がないか | V-E+F=2 |
よくある誤り
| 誤り | 直し方 |
|---|---|
| 図で等しく見える辺・角を使う | 仮定、定義、既知の定理から根拠を書く |
| 外心・内心・重心を混同する | 「頂点」「辺」「中線」のどれに等距離か確認する |
| チェバとメネラウスを式だけで選ぶ | 共点か共線かを先に読む |
| 延長上の点を辺上だと考える | 点の並びと正の長さ・有向線分の流儀を確認する |
| 方べきで外側部分どうしを掛ける | 円外では近い交点まで×遠い交点まで |
| 空間の図で交わって見えると判断する | 同一平面上か、ねじれの位置かを分類する |
| どの多面体にもオイラーの式を使う | 穴のない凸多面体か確認する |
確認問題
- 2辺が4, 7で、第3辺 xが正の整数のとき、三角形ができる xをすべて求めてください。
- AB=8, AC=12, BC=15で、ADが∠Aの二等分線です。BD, DCを求めてください。
- 3頂点までの距離が等しい点、3辺までの距離が等しい点、3中線を2:1に分ける点の名称を順に答えてください。
- BP:PC=2:3、CQ:QA=3:4で、AP, BQ, CRが共点です。AR:RBを求めてください。
- BD:DC=2:1、CE:EA=3:2で、D, E, Fが共線です。正の長さでAF:FBを求めてください。
- 円に内接する四角形ABCDで∠A=68°です。∠Cを求めてください。
- 円内で弦ABとCDがPで交わり、PA=3, PB=8, PC=4です。PDを求めてください。
- 円外のPから接線PTと割線P-A-Bを引き、PA=4, PB=9です。PTを求めてください。
- 半径5と2、中心間距離7の二円の位置関係と共有点数を答えてください。
- 円外の点Pと中心Oを直径とする円を補助円にすると、元の円との交点TでPTが接線になるのはなぜですか。
- 直線 lが平面α上で交わる2直線の両方に、その交点で垂直です。lとαの関係を答えてください。
- 穴のない凸多面体でV=12, F=8です。Eを求めてください。
確認問題1〜4の解答
- 3<x<11より、4, 5, 6, 7, 8, 9, 10です。
- BD:DC=2:3、BC=15より、BD=6, DC=9です。
- 順に外心、内心、重心です。
- (2/3)(3/4)(AR/RB)=1より、AR:RB=2:1です。
確認問題5〜8の解答
- 2・(3/2)・(AF/FB)=1より、AF:FB=1:3です。
- 向かい合う角の和は180°なので、112°です。
- 3・8=4・PDより、PD=6です。
- PT2=4・9=36で長さは正なので、PT=6です。
確認問題9〜12の解答
- 中心間距離が半径の和に等しいので、外接、共有点1個です。
- ∠OTPは直径OPに対する円周角で90°となり、OT⊥PTだからです。
- 直線と平面の垂直条件より、l⊥αです。
- 12-E+8=2より、E=18です。
まとめ
- 三角形の成立条件では等号を含めず、角の二等分線は向かい側の辺を隣辺比に分けます。
- 外心・内心・重心・垂心は、交わる直線と等しくなる距離で区別します。
- チェバは共点、メネラウスは共線を、比の積1で判定します。
- 内接四角形、接弦定理、方べきは、角が見ている弧と点の並びを確認します。
- 空間では同一平面上かを確認し、オイラーの式は穴のない凸多面体に使います。
よくある質問
チェバとメネラウスは、どの一言で見分けられますか。
3直線が一つの点に集まる「共点」ならチェバ、3点が一つの直線上に並ぶ「共線」ならメネラウスです。比の積が1という形だけで判断しないでください。
方べきでは、どの長さを掛けますか。
同じ直線上にある二つの交点までの距離を、点Pからそれぞれ測って掛けます。円外では「外側部分×円全体に届く長さ」です。接線なら接線長の二乗になります。
図形の証明で図を測ってもよいですか。
予想や確認には役立ちますが、証明の根拠にはできません。問題の仮定、定義、合同・相似、既に証明された定理を使い、どの条件から言えるかを書きます。
空間図形は、どの向きから見ればよいですか。
求めたい直線や平面を含む断面を探します。垂直を示すなら、平面上で交わる2直線への垂直や、三垂線の定理を使える配置を確認します。見取図の見た目だけで交点や直角を判断しません。
学習範囲の根拠
本記事は、文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編」の数学A「図形の性質」に示された、三角形・円の基本的な性質、チェバ・メネラウス、作図、空間図形を基準にしています。教科書によって定理の配列や発展内容の深さは異なります。
