英語の試験を受けず、数学を使って受験できる大学入試はあります。ただし、「当日に英語がない」と「英語の受験や資格提出が一切いらない」は同じではありません。
例えば、東京電機大学工学部第二部の2027年度一般選抜は、数学1科目で受験する方式です。一方、同大学の英語外部試験利用方式は、当日の英語試験がなくても、基準を満たす英語スコアの提出が必要です。東京電機大学・2027年度入学者選抜要項(冊子p.12・20・29)
この記事では、英語の条件、残る試験科目、数学で必要な得点の順に整理します。英語が苦手なことだけで進路を狭めず、今ある数学力をどの方式で生かせるかを考えていきましょう。
資料確認日:2026年9月4日。対象は2027年4月入学に向けた選抜です。大学の公式案内・科目表に基づく例も含みます。出願時は当年度の正式募集要項と、その後の変更通知を必ず確認してください。
2027年度に英語なしで受験できる方式の判定基準
大学を探す前に、自分が避けたいのは「英語の当日試験」なのか、「英語資格の取得も含めた受験準備」なのかを分けます。ここが曖昧だと、大学名は見つかっても出願条件を満たせません。
英語の負担を4つに分類する
| 分類 | どういう方式か | 最初に確認すること |
|---|---|---|
| 英語の受験・スコア提出が必須ではない | 選んだ方式では、大学独自の英語試験・共通テスト英語・英語外部資格を求めない | 他教科、小論文、面接、書類などの要件 |
| 当日の英語はないが、英語資格が必要 | 外部試験の成績を出願条件や得点換算に使う | 必要スコア、対象技能、受験時期、証明書 |
| 個別英語はないが、共通テスト英語が必要 | 大学の二次試験には英語がなくても、共通テストの成績を使う | 英語の受験必須条件と最終配点 |
| 科目選択によって英語を外せる | 数学などを選択すると、英語を受験しない組み合わせが成立する | 選択できる科目と、全科目受験義務の有無 |
4つ目は科目の選び方です。英語を選ばずに出願でき、資格提出も不要なら、英語の負担としては1つ目に当たります。「高得点の1科目で判定」と書かれていても、複数科目の受験が義務なら、受験科目は減りません。
また、ここでいう英語不要は入試の試験・スコア提出条件の話です。高校の卒業に必要な学習、調査書の提出、入学後の外国語科目まで不要になるという意味ではありません。
数強塾の判断軸は、英語を外した後の負担
英語を使わない代わりに、数学III、理科、小論文、面接の準備が必要になることがあります。「英語がなくなった分だけ簡単」と考えず、次の3点を紙に書き出してください。
- 残る試験のうち、今の学力で得点できるもの
- 入試までに新しく学ぶ必要がある単元や技能
- 出願資格のために、試験勉強とは別に準備するもの
この3点が見えると、英語を減らす選択が自分にとって現実的かを判断できます。
数学を使えて英語の個別試験がない大学・学部一覧
以下は、2027年度の公式資料で試験構成を確認できた例です。同じ大学でも、ここに記した学部・方式以外へ条件を広げてはいけません。
英語科目を選ばずに受ける候補
| 大学・対象方式 | 当日の試験構成 | 数学の位置づけ | 資料の確認状況 |
|---|---|---|---|
| 東京電機大学・工学部第二部〔夜間部〕の電気電子工学科・機械工学科・情報通信工学科、一般選抜 | 数学1科目 | 100点・90分。数学IIIを含まない | 2027年度の正式要項。共通テスト・英語スコア提出はこの方式の要件ではない |
| 立命館大学・理工学部、後期分割方式2教科型〔理科・数学〕 | 理科+数学 | 各100点。数学IIIを含む | 2027年度公式入試ガイドで確認。正式要項で再確認が必要 |
| 慶應義塾大学・総合政策学部/環境情報学部、一般選抜で「数学」を選択 | 数学+小論文 | 数学200点、小論文200点 | 2027年度公式科目表で確認。出願条件は正式要項で最終確認が必要 |
出典:東京電機大学・正式要項p.5・20・28–29、立命館大学・2027年度ガイドp.46–47、慶應義塾大学・2027年度試験教科・科目・配点p.2。立命館・慶應については、この表だけで出願条件の確認が完了したとは扱いません。立命館の2027年度一般選抜要項は11月公開予定です。立命館大学・要項公開案内
当日の英語はなくても、英語資格が必要な候補
| 大学・対象方式 | 当日の試験構成 | 英語について残る条件 |
|---|---|---|
| 津田塾大学・学芸学部数学科/情報科学科、A方式〔英語外部試験利用型〕 | 数学 | 指定の英語外部試験スコアが必要。情報科学科には資格スコアによる加点もある |
| 東京電機大学・システムデザイン工学部/未来科学部/工学部/理工学部、一般選抜前期〔英語外部試験利用〕 | 数学+学科・学系指定の理科または国語 | 指定の英語スコアが出願条件。数学だけで受験する方式ではない |
出典:津田塾大学・2027年度A方式英語外部試験利用型、東京電機大学・正式要項p.12・29。津田塾の2027年度正式要項は、公式案内では2026年11月中の公開予定です。津田塾大学・一般選抜案内
例えば津田塾の出願基準は、英検の2級以上の試験で4技能CSE2.0スコア1950以上、またはTEAP225以上です。数学科は数学200点で英語資格による加点なし、情報科学科は数学180点に上位資格スコアによる10点または20点の加点があります。原則、出願締切日から2年以内の受験が対象で、英検は二次試験の受験日で確認します。津田塾大学・出願条件と配点
東京電機では、英検なら準2級以上の試験で4技能を受検し、CSE1728以上が条件です。級の合否は問いません。対象は2024年4月以降に受検・認定されたものですが、TEAPは2025年4月以降です。他の対象試験・基準値も含め、津田塾の条件と取り違えないでください。東京電機大学・英語外部試験基準値
津田塾は女子大学です。出願対象と必要手続も確認してください。性自認による女性の受験資格・申出については、大学が別途案内しています。津田塾大学・受験資格の案内
英語資格をすでに持っている人には、後者も比較対象になります。一方、スコアを持っていない人は、取得と証明書発行が出願に間に合うかを先に確かめましょう。「当日の英語がない」という情報だけでは、受験可能性は判断できません。
数学1科目・数学+理科・数学+国語の方式別に比較
大学名で候補を集めたら、数学以外に何が残るかで整理し直します。ここでは小論文型も独立させます。小論文を国語の学力試験と同じ対策でよいと考えないためです。
| 試験の型 | 数学以外に準備するもの | 向き不向きを確かめる方法 |
|---|---|---|
| 数学1科目 | 出願資格・書類。方式によって英語資格など | 過去問を時間内に解き、得点の安定性を見る |
| 数学+理科 | 指定された物理・化学・生物等 | 数学の得点だけでなく、理科の失点をどこまで補えるかを計算 |
| 数学+国語 | 現代文、古文・漢文の有無など | 大学・学科別の範囲を確認し、実際の問題で計る |
| 数学+小論文 | 資料の読み取り、論点整理、論証・表現 | 制限時間内に答案を書き、根拠と結論の対応を点検 |
東京電機大学の英語外部試験利用方式では、学科によって国語を選べる場合と選べない場合があります。必ず対象学科の科目欄で確認してください。「大学全体で数学+国語が使える」という読み方はできません。東京電機大学・正式要項p.12
「数学IIIなし」だけでは範囲を比較できない
数学IIIの有無に加えて、数学Bの統計的な推測、数学Cのベクトル・複素数平面なども確認します。履修していない単元が一つあれば、それは対策期間に追加されます。
慶應SFCでも、2027年度科目表では総合政策学部の数学はI・II・A・B、環境情報学部で「数学」を単独選択する場合はIII・Cも含みます。どちらも数学Bには統計的な推測が含まれます。環境情報学部で「情報および数学」を選ぶ場合は、数学III・Cが範囲から外れますが、情報I・IIの対策が必要です。2学部、そして選択科目の組み合わせを同じ対策で括らないことが大切です。慶應義塾大学・2027年度科目表
東京電機大学工学部第二部は数学I・A・II、Bの数列、Cのベクトルが範囲です。一方、立命館理工の後期分割方式と津田塾の数学科・情報科学科A方式外部英語利用は、数学IIIに加えてCのベクトル・平面上の曲線と複素数平面まで含みます。立命館理工の理科は物理・化学から選択しますが、物理科学科は物理必須です。東京電機大学・正式要項p.20、立命館大学・理工学部科目表、津田塾大学・A方式科目表
数学配点率は「満点同士」で計算する
数学配点率=数学の満点÷合否判定に使う総満点です。数学100点・理科100点なら50%。数学200点・他の評価100点なら約66.7%です。
ただし、配点率が高いほど自動的に有利になるわけではありません。問題が難しく得点が伸びない場合、配点の高さを生かせないからです。数学配点率と、時間を計った過去問得点率をセットで見ましょう。資格による加点や得点換算がある場合は、それも含めて計算します。
英語なし入試の偏差値・倍率・募集人数で注意すること
科目数が少ないことは、対策範囲が絞れることを意味します。しかし、合格しやすさまで同じ方向に動くとは限りません。比較するのは「その大学の偏差値」ではなく、学部・学科・方式が一致したデータです。
1科目型と3科目型の偏差値を、そのまま並べない
比較には同じ提供元・同じ年度・同じ判定基準の資料を使います。科目構成や受験者層が違う数値を足して平均し、「大学の難しさ」を一つの点数にまとめることは避けましょう。
また、2026年9月の時点で、2027年度一般選抜の実際の倍率や合格最低点はまだ分かりません。出願候補を考えるための予想難易度と、入試終了後の結果は別の情報です。本記事では未実施入試の結果を作って掲載しません。
倍率は分母と募集枠を確認する
自分で実質倍率を計算するなら「受験者数÷合格者数」と定義をそろえます。志願者数を分子に使った倍率とは分けてください。例えば、受験者40人・合格者10人の4倍と、受験者240人・合格者120人の2倍は、倍率だけを比べても受験者の学力までは分かりません。この数字は説明用の仮定です。
過去3年分を集める場合も、科目変更や定員変更のある年は注記を付けます。前年の高倍率だけで候補から外したり、低倍率だけで安全校にしたりしないことが大切です。
高得点採用と受験必須を混同しない
数学の得点だけが特別に評価される制度でも、別科目を受験しなければ判定対象外になることがあります。資料を読む順序は「合否判定の方法」だけでなく、「試験時間割」「欠席時の扱い」「出願条件」まで一組です。目立つ入試名称より、欄外の条件が受験の可否を決める場合があります。
例えば東京電機大学の前期・英語外部試験利用では、数学満点選抜でも指定2科目の受験が必要です。また、通常の前期一般選抜などを同日に併願する場合は、引き続き英語の受験も必要です。数学1科目で受ける工学部第二部の一般選抜とは別の制度として読みましょう。東京電機大学・正式要項p.12
英語を使わない志望校選びと数学の目標点の決め方
最後は、候補校を増やす作業から、自分の答案に戻ります。次の順序で考えると、大学名の比較だけで終わりません。
目標総点から、数学に必要な点を逆算する
下の表は、計算方法を示す仮定のモデルです。特定大学の合格最低点でも、合格予測でもありません。各科目を単純に加算し、得点調整や別の足切りがないと仮定しています。
| 仮定の入試 | 学習計画上の目標 | 数学以外の想定点 | 必要な数学点・許容失点 |
|---|---|---|---|
| 数学100点+理科100点 | 合計150点 | 理科60点 | 数学90点。失点は10点まで |
| 数学200点+小論文200点 | 合計280点 | 小論文110点 | 数学170点。失点は30点まで |
1行目で数学を80点と見込むなら、理科は70点必要です。英語を外した後の入試では、苦手な理科を数学だけで補う計画が成立するかを、このように数字で確かめます。小論文の自己採点は特に不確かなので、想定点を高く置きすぎないようにしてください。
実際の大学で公開最低点を参考にする場合は、年度・配点・方式が一致していることが前提です。得点調整後の最低点から素点を機械的に逆算することはできません。科目別の最低基準や段階選抜がある方式も、単純な足し算では判断できません。
失点を単元と原因に分ける
数学の過去問を解いた後は、間違いを「知識不足」「方針が立たない」「計算ミス」「時間不足」「記述不足」に分けます。そのうえで、配点が公開されている範囲では、落とした点を単元別に記録してください。非公表の小問配点は大学公表値のように作らず、独自の仮配点ならその旨を明記します。
目標まで10点足りない場合、未習単元を一から増やすべきか、毎回落とす計算問題を取り戻すべきかは、答案を見ると判断しやすくなります。平均点だけでなく、初見で時間を計って解いた複数回の最低点にも注目しましょう。同じ問題の解き直し得点は、初見得点と分けて記録します。
出願前の最終チェック
- 英語の当日試験・共通テスト・資格提出を、それぞれ確認したか
- 数学の未履修範囲、指定理科、小論文等の対策時間を見積もったか
- 一つの試験日の失敗で全候補を失わないか
- 学ぶ分野、昼間・夜間の授業、通学・生活条件が希望に合うか
- 入学後の外国語学習も含め、学びたい内容を確認したか
英語を使わない入試は、進路を考えるための一つの選択肢です。大切なのは、英語がないこと自体ではなく、その方式の条件を満たし、残る試験で必要な点を取れることです。
候補を具体的に絞る段階では、数学1科目で受験できる大学の方式別比較と、数学+理科の2科目で受験できる大学を読み分けてください。英語の試験を外す以外の選択肢として、数学の配点が高い私立大学も比較できます。
数学の現状を把握するには、まず数強塾の過去問解説・数学問題集も活用して、答案と時間配分を見直してみてください。大学受験に向けた数学指導を検討している方は、志望学部、履修済み範囲、直近の答案の状況を整理して、数強塾の案内・お問い合わせをご覧ください。出願条件について不明点が残る場合は、大学の入試担当窓口へ直接確認しましょう。
執筆:藤原進之介(数強塾)
