解法テクニック

漸化式12パターン完全分類|入試の漸化式はこの地図に収まる【数学B】

漸化式12パターン完全分類|オンライン数学専門塾 数強塾

漸化式は「見た瞬間に手が止まる」単元の代表格です。しかし実際に入試で問われる漸化式は、ほとんどが下の12型のどれかに収まります。しかも各型の対処法は「何をすれば等差・等比に帰着するか」という一点に集約されます。この記事は、その12型を一覧にした分類地図です。問題を解く前にここへ戻ってきてください。

すべての出発点:解ける漸化式は2つだけ

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大前提として、そのまま一般項が出せる漸化式は等差型と等比型の2つしかありません。残りの10型は「変形して、この2つのどちらかに持ち込む」ための技術です。この構造が見えると、漸化式は暗記科目でなくなります。

ゴールはこの2つ

12パターン一覧

# やること
1 等差数列。そのまま
2 等比数列。そのまま
3 階差型
4 特性方程式 を解き
5 の多項式) とおいて係数比較
6 両辺を で割り、 とおく
7 逆数をとる で型4へ
8 両辺の対数をとる。 で型4へ
9 隣接3項間。特性方程式 の2解を使う
10 連立型 が等比になる を探す
11 の関係式 は別扱い
12 上記に当てはまらない を計算して推測 → 数学的帰納法で証明

最重要は型4:特性方程式

入試での出現頻度が最も高く、かつ型5〜8のゴールにもなるのが型4です。ここだけは仕組みまで理解しておいてください。

型4の変形

なぜ を解くのか。それは、 を「動かない値(不動点)」として引き算するためです。 を辺々引けば、定数項 が消えて が残る。つまり が公比 の等比数列になる、ただそれだけの話です。「特性方程式」という名前に身構える必要はありません。

例題  の一般項を求めよ。

より 。よって 。数列 は初項 、公比 3 の等比数列なので 、すなわち

初項がちょうど不動点に一致していたため、数列は動きません。「不動点」という言葉の意味がそのまま現れる好例です。もし なら より となります。

型9(3項間)の要点

では、 と置き換えた を解きます。2解を とすると

という2本の等比数列が同時に手に入ります。この2式を連立して を消去するのが定石です。(重解)のときは1本しか作れないため、 型に持ち込む別処理が必要になります。重解の場合分けを忘れないでください。

12型 完全解説 ―― 1型ずつ、6点セットで潰す

ここまでで型4と型9を扱いました。ここからは12型すべてを、次の6点セットで1つずつ潰します。表の1行では絶対に身につかない部分——「なぜその変形なのか」「その型だけが持つ落とし穴」——を全部書きます。

各型で必ず押さえる6点

① 形(どう見えたらこの型か)/② なぜその変形なのか(暗記させない)/③ 具体例(数値つき)/④ 一般項⑤ 検算(実際に数列を書き出して一致を見る)/⑥ 落とし穴(その型固有の失点源)

まず、型の見分け方

問題を見てから「どの型だろう」と考えるのではなく、上から順にチェックを当てるのが最短です。この順番には理由があります。項の個数のような「見た目で即決まること」から先に潰すようにしてあるからです。

漸化式の型を見分けるチェック順項が3つ以上か、Sが出ているか、分母にあるか、累乗されているか、余分な項が何か、の順に上から当てはめると12型のどれかに必ず落ちる。3秒で型を決めるチェック順上から順に当てはめるだけ。迷ったら必ずこの順で。① 項が3つ以上ある?a(n+2) が出ている → 型9/a と b の2本 → 型10② S(n) が出ている?→ 型11。まず a(n)=S(n)-S(n-1)(n≧2)で翻訳する③ a(n) が分母にある?→ 型7。両辺の逆数をとる④ a(n) が累乗されている?→ 型8。両辺の対数をとる⑤ 余分な項が付いている?n の多項式なら型5/r^n なら型6/定数なら型4⑥ 余分な項がない?掛け算だけ → 型2(等比)/足し算だけ → 型1(等差)⑦ どれでもない→ 型12。a(1)〜a(5) を書き出して推測し、帰納法で証明型3(階差型)は⑤に含まれる。a(n+1)-a(n) が n の式なら、和をとるだけ。この順で見れば、12型のどれかに必ず落ちる。落ちなければ⑦。

図:この順に当てはめると、12型のどれかに必ず落ちます。落ちなければ型12です。

型1|等差型 ―― 足す数が一定

① 形  は定数)。② なぜ 変形は要りません。これがゴールの一方だからです。 から まで進むのに を足す回数は 回。ただそれだけです。

③ 例

④ 一般項 

⑤ 検算 実際に書き出すと 。式に を入れると 。一致します。

⑥ 落とし穴

にしてしまう。 は「足した回数」です。必ず を代入して に戻ることを確かめてください。この確認1回で、等差・等比の添字ミスはほぼ全滅します。

型2|等比型 ―― 掛ける数が一定

① 形 ② なぜ これがもう一方のゴール。掛ける回数も 回です。

③ 例

④ 一般項 

⑤ 検算 。式からも 。一致します。

⑥ 落とし穴

の扱い。後で出てくる型7(逆数)や型8(対数)では、 が前提になります。等比の段階から「0 になっていないか」を気にする癖をつけておくと、後の型で救われます。

型3|階差型 ―― 足す数が で変わる

① 形  の式)。② なぜ  は「1歩ぶんの増分」です。 から まではですから、増分を から まで足せば着きます。

階差型の公式

③ 例

④ 一般項 

⑤ 検算 。式からも 。一致します。

⑥ 落とし穴

(a) 和の上端を にしてしまう。上端は必ず です。歩数を数えれば間違えません。

(b) を確認しない。この公式は でしか意味を持ちません( だと和が空になる)。求めた式に を入れて と一致することを答案に書いてから「よって のときも成り立つ」と結びます。

型4|特性方程式型(既出)と、そこへ集まる4つの型

型4そのものは前の節で扱いました。ここで強調したいのは、次の4つの型(5・6・7・8)が、すべて型4に帰着するために存在しているという構造です。形はばらばらでも、やっていることは「型4の形に着替えさせる」の一点です。

【深掘り】不動点とは何か ―― 図で見ると一瞬で分かる

型4の を「特性方程式」と呼ぶと難しく聞こえますが、やっていることは の交点を求めているだけです。この交点が「不動点」です。

なぜ「動かない点」なのか。 だったとしましょう。すると 次の項も同じ値になります。そこに入ったら二度と動かない——だから不動点です。

漸化式は「関数を繰り返し適用する」こと

という漸化式は、 を何度もかけ続ける操作です。だから の2本を描いて、縦→横→縦→横と折れ線をたどれば、数列の動きがそのまま目で見えます。この折れ線をクモの巣図(cobweb)といいます。

不動点に近づくクモの巣図y=x/2+1 と y=x のグラフ。a1=0.5 から出発した折れ線が交点である不動点2へ近づいていく。O不動点a₁y = px + qy = x|p| < 1 → 不動点に近づく
不動点から離れるクモの巣図y=3x-4 と y=x のグラフ。a1=1 から出発した折れ線が交点である不動点2から急速に離れていく。O不動点a₁y = px + qy = x|p| > 1 → 不動点から離れる

図:左は (不動点は )。折れ線は不動点へ吸い寄せられます。右は (不動点は同じく )。こちらは一気に離れていきます。どちらも との交点が不動点であることは変わりません。

この2枚から、 の値が数列の運命を決めていることが読み取れます。

が決めること

 不動点に収束します()。極限を聞かれたら、計算せずとも答えは です。

 不動点から離れ、発散します。

 平行になり、交点がありません。だから不動点が作れない——これが「 のとき特性方程式が使えない」ことの図形的な理由です(このときは型3の階差型)。

  なので収束も発散もせず、2つの値を行ったり来たりします(振動)。

【入試での使い方】 を求めよ」という設問が付いていたら、不動点を求めた時点で答えが見えています の場合)。一般項を出してから極限を計算するより、先に不動点を出して見当をつけてから解くほうが、計算ミスに気づきやすくなります。

この見方は、型4だけのものではありません。型7(分数型)も型8(累乗型)も、置き換えたあとの について同じ図が描けます。「不動点を引く」という操作の正体は、グラフの交点を原点に移す平行移動だと思ってください。

型5| の多項式が付く ―― 同じ次数の式を用意する

① 形  の多項式、)。

② なぜ 型4では定数 を消すために定数の不動点 を引きました。付いているのが の1次式なら、引くべきものも1次式です。そこで が等比になるように を決めます。「邪魔者と同じ形のものを用意して引く」——これが型5の思想です。

③ 例

とおいて代入すると、。係数を比べて より より

よって から

④ 一般項 

⑤ 検算 。式からも 。一致します。

⑥ 落とし穴

(a) 次数を下げてしまう。 が2次なら、用意するのも2次式 です。1次で済ませると係数比較が破綻します。

(b) のときは使えない。 なら で、これは型5ではなく型3(階差型)です。 かどうかを最初に見る——ここが型3と型5の分かれ目です。

型6|指数 が付く ―― 両辺を で割る

① 形 

② なぜ 邪魔なのは です。ならば数列そのものを で割ってしまえば消える。両辺を で割り、 とおくと 定数が付いた形=型4になりました。

③ 例

両辺を で割ると )。不動点は より なので

④ 一般項  より

⑤ 検算 。式からも 。一致します。

⑥ 落とし穴

(a) で割ってしまう。割るのは です(左辺が だから)。ここを間違えると の漸化式が型4になりません。

(b) のとき。このときは となり、型4ではなく等差型になります。むしろ簡単ですが、特性方程式を立てようとすると解が出ずに固まります。 が等しくないかを先に見るのがコツです。

型7|分数型 ―― 逆数をとる

① 形 

② なぜ 右辺の分子が だけなので、逆数をとると分子と分母が入れ替わって分解できます。つまり とおけば ——また型4です。

③ 例

逆数をとると )。不動点は より なので

④ 一般項  より

⑤ 検算 。式からも分母が 。一致します。

⑥ 落とし穴

(a) を書かない。逆数をとる以上、これは必須の断り書きです。多くの場合 と漸化式から が帰納的に言えるので、その一行を書いてから逆数をとります。

(b) 分子に定数が付く形と混同する。 のように分子にも定数がある形は、逆数をとっても分解できません。この形は型12(推測+帰納法)か、より進んだ手法の出番です。

型8|累乗型 ―― 対数をとる

① 形 )。

② なぜ 掛け算と累乗を、足し算と掛け算に翻訳する道具が対数です。両辺の対数をとると とおけば ——三たび型4です。

③ 例

底2の対数をとると )。不動点は より なので

④ 一般項  より

⑤ 検算 。指数は で、。一致します。

⑥ 落とし穴

(a) 底の選び方で計算量が変わる。この例で底を10にすると が最後まで残って汚くなります。 に合わせて底を選ぶと、上のようにきれいに終わります。

(b) を書かない。対数をとる前提です。型7の と同じく、先に書いてから使う

型9|隣接3項間(既出)と、重解のとき

前の節で扱ったとおり、 の2解 から2本の等比数列を作るのが基本です。ここでは重解 の場合だけ補足します。

重解のときは の1本しか作れません。そこで とおくと 。これを と見ると、指数が付いた形=型6です。両辺を で割れば等差型に落ちます。

⑥ 落とし穴

判別式を確認せずに「2解を とおく」と書き出す。重解のときこの書き方は成立しません。 の符号(とくに かどうか)を必ず見てください。

【深掘り】型9の特性方程式は、どこから来るのか

3項間の で「 を解く」と習いますが、なぜ2次方程式が出てくるのかを説明できる生徒は多くありません。導出は3行で終わります。

発想は「等比数列なら解けるのだから、等比数列を代入してみる」です。)が漸化式を満たすとすると、

両辺を で割れば これだけです。特性方程式とは「この漸化式を満たす等比数列の公比は何か」を聞いている式にすぎません。

なぜ2解を「両方」使えるのか

漸化式 線形(各項が の1次で、定数項がない)です。だから がそれぞれ解なら、その定数倍の和 もまた解になります。あとは の2つの条件で を決めれば、それが唯一の答えです。「2つの初期条件があるから、未知数も2つ必要」——だから2次方程式なのです。

もう一つの見方:2本の等比数列に分解する

教科書でよく使われるのは、次の分解です。 を2解とすると、解と係数の関係から 。これを使うと

両方とも成り立ちます(右辺を展開して を使えば確かめられます)。つまり

3項間が2本の等比になる

この2式を辺々引くと が消えて が残ります。 なら割れて が求まる——これが「重解のときだけ別処理が必要」な理由です。 だと で割れません。

例:

より 。よって

辺々引くと

検算 。式からも 。一致します。

【どちらの解法を使うか】答案としてはどちらでも構いませんが、「2本作って引く」ほうが誘導に乗りやすいです。入試では「(1) が等比数列であることを示せ」のように、この2本のうち片方を作らせる小問が置かれることが非常に多いからです。誘導が来たら、それは「2本のうちの1本目」だと読んでください。

型10|連立型 ―― 等比になる組み合わせを探す

① 形  の2本組。

② なぜ  単独でも 単独でも等比になりませんが、 という組み合わせなら等比になる が存在します の形になる条件から を決めます。対称な係数のときは和と差を試すだけで当たります。

③ 例

辺々足すと 、辺々引くと 2本の等比数列が同時に手に入りました。

④ 一般項 

⑤ 検算 。式からも 。一致します。

⑥ 落とし穴

和と差で当たらないときに手が止まる。係数が対称でないときは、 を立てて の2次方程式を解きます。この の方程式は、型9の特性方程式と同じ役割です。連立型と3項間は、見た目が違うだけで中身は同じものだと知っておくと強い。

型11| の関係式 ―― まず翻訳する

① 形 (初項から第 項までの和)を含む関係式。

② なぜ  のままでは漸化式として扱えません。 だけの式に翻訳すると、12型のどれかに落ちます。型11は「型を決める型」ではなく「翻訳する型」です。

③ 例

のとき  なので 、すなわち

のとき 。整理して ——型2(等比)に落ちました。

④ 一般項  でも で成立)

⑤ 検算 、和 。一致します。

⑥ 落とし穴

(a) を別扱いしない。これが漸化式で最も多い失点です。 でしか使えません( は定義されていない)。 は必ず元の式から直接求める

(b) 最後の合流を書かない。 で出した式に を代入し、先に求めた 一致するかどうかを明記します。一致すれば「 のときも成り立つ」、一致しなければ「 は別」と場合分けのまま答えます。

型12|どれにも当てはまらない ―― 推測して、帰納法で固める

① 形 上の11型のどれにも乗らないもの。分子・分母の両方に定数が付いた分数型などが典型です。

② なぜ 変形の道がないなら、実際に数を並べて規則を見つけ、それが正しいことを証明するしかありません。この「推測→証明」は逃げではなく、正式な解法です。

③ 例

まず書き出します。

ここで約分せずに並べ直すのがコツです。 と戻すと 分母は 、分子はその 。つまり と推測できます。

④ 証明(数学的帰納法)  のとき で成立。 を仮定すると

これは に等しく、 でも成立。よってすべての自然数で成立します。

⑤ 検算 。式からも 。一致します。

⑥ 落とし穴

(a) 約分した形のまま規則を探す。 のままだと分母の が見えません。約分せずに並べ直すのが、推測の最大のコツです。

(b) 推測で終わる。 まで合うから」は証明ではありません。帰納法まで書いて初めて答案になります。逆にいえば、推測さえ当たれば残りは機械作業です。

12型は、4本の道に集約される

ここまで見てきたとおり、12型は独立した12個の解法ではありません。行き先は等差か等比の2つだけで、そこへ至る道が4本あるだけです。

漸化式12型の帰着の地図型5から型8は型4の特性方程式に帰着し、型4と型9と型10は等比数列へ、型3は等差数列へ流れ込む。型11と型12は他の型への翻訳または数学的帰納法で処理する。漸化式12型「帰着の地図」どの型も、最後は等差か等比のどちらかに流れ込む型5n の多項式が付く型6指数 r^n が付く型7分数(逆数をとる)型8累乗(対数をとる)型4特性方程式(不動点を引く)4つの型の共通ゴール型3階差型(和をとる)型9・型102本の等比を作る型11・型12他の型へ翻訳/帰納法等比数列公比が見えたら勝ち等差数列公差が見えたら勝ちそのまま解けるのは等差型と等比型だけ。残りの10型は「そこへ運ぶ道」にすぎない。だから覚えるべきは12個の解法ではなく、4本の道(和をとる/不動点を引く/2本の等比/翻訳)。

図:帰着の地図。型5・6・7・8はすべて型4へ、型4・9・10は等比へ、型3は等差へ流れ込みます。型11は翻訳、型12は帰納法。

覚えるべきは12個ではなく4本

① 和をとる(型3) ② 不動点を引く(型4・5・6・7・8)
③ 2本の等比を作る(型9・10) ④ 翻訳する/帰納法(型11・12)

確率漸化式 ―― 入試で最も多い「漸化式の顔」

ここまでは「漸化式が最初から与えられている」問題でした。しかし入試で実際に多いのは、漸化式が与えられていない問題です。自分で立てるところから始まります。その代表が確率漸化式です。

確率漸化式は、大学入試の確率分野で最頻出の形式のひとつです。しかも立ててしまえば、あとは12型のどれかに落ちる——つまり、この記事の前半がそのまま使えます。難しいのは立式だけです。

なぜ漸化式が立つのか ―― 「今どこにいるか」だけで次が決まる

確率漸化式が立つ問題には、共通する構造があります。

確率漸化式が立つ条件

次に何が起きるかが、「いま何回目か」と「いまどの状態か」だけで決まり、そこに至るまでの経過に依存しない。

たとえば「いまAにいる」と分かれば、そこまでにどう動いてきたかは次の一手に一切影響しません。だから 回目の確率と 回目の確率が、経過を無視して直接結びつく。これが漸化式が立つ理由です。

【問題文の合図】この操作を繰り返す」「 回目に〜である確率を とする」「 で表せ」——このいずれかがあれば、ほぼ確実に確率漸化式です。とくに を用いて表せ」という小問は、漸化式を立てさせるための誘導そのものです。

立式の3ステップ

確率漸化式は、この3ステップで必ず立つ

① 状態を決める。「何を と置くか」を最初に宣言します。ここを曖昧にしたまま計算を始めるのが最大の失敗です。

回目にその状態になる道を、すべて数え上げる。 回目に○○で、次に△△が起きる」という形で、重複なく漏れなく並べます。

③ 各道の確率を掛けて、足す。これで の形が出ます。あとは型を判定するだけ。

例題1|三角形の頂点を移動する(最頻出)

問題

三角形の頂点 A、B、C 上を動く点があり、最初は A にある。1回の操作で、いまいる頂点から他の2つの頂点へ、それぞれ確率 で移動する 回の操作の後に点が A にある確率を とするとき、 を求めよ。

確率漸化式の状態遷移図頂点A・B・Cを毎回確率2分の1で他の2頂点へ移動するとき、n回目にAにいる確率をp(n)とすると、p(n+1)=(1-p(n))かける2分の1という型4の漸化式が立つ。n 回目にどこにいるか、だけで次が決まる頂点 A・B・C を、毎回それぞれ確率 1/2 で他の2頂点へ移動するABC1/21/21/2A にいる確率を p(n) とするとn+1 回目に A にいる ⇔ n 回目に B か C にいて、A を選ぶp(n+1) = (1 − p(n)) × 1/2  ← これは型4

図:状態遷移図。A へ入ってくる矢印は、B からと C からの2本だけ。しかも A から A へ戻る矢印はありません。ここが立式の全部です。

ステップ①  を「 回後に A にいる確率」と決めます。

ステップ②  回後に A にいるのは、どういう場合か。図を見れば 回後に B か C にいて、次に A を選んだとき」だけです。A から A へは移れないので、 回後に A にいた場合は寄与しません。

ステップ③  回後に A にいない確率は 。そこから A を選ぶ確率は 。よって

立った漸化式

これは型4です。不動点は より

初項は (1回動いたら必ず A にいない)。よって

答え

検算 。漸化式から直接計算しても 。一致します。

【不動点の意味がここで効く】 なので、回数を無限に増やすと、3頂点に均等に散らばる——直感どおりの答えが、不動点としてすでに現れていました。確率漸化式では、不動点は「十分時間が経ったときの確率」という具体的な意味を持ちます。

例題2|2つの箱を行き来する

問題

箱 A と箱 B があり、最初、球は箱 A にある。1回の操作で、球は確率 でもう一方の箱へ移り、確率 でそのままとする。 回の操作の後に球が A にある確率 を求めよ。

例題1との違いは、「そのまま」の道があることです。だから 回後に A にいた場合も寄与します。

ステップ②  回後に A にいるのは、(i) 回後に A にいて動かなかった、(ii) 回後に B にいて動いた、の2通り。

型4です。不動点は より なので

検算 。漸化式から直接計算しても同じ列になります。——十分回数を重ねれば五分五分。これも不動点の値と一致します。

確率漸化式で失点する3つのパターン

(a) を使い忘れる。「A にいない確率」を のまま書いてしまう。状態が2つなら必ず のペアで書くと決めておくと防げます。

(b) 状態が3つ以上あるのに、2つで済ませる。状態が3つなら という関係式が使えるので、2文字に減らせることが多い。ただし「減らせるかどうか」は問題によります。減らせないときは型10(連立型)として処理します。

(c) 初項を のどちらにするか決めていない。 回の操作の後」なら 1回動いた後です。 から始めるほうが自然な問題もあります。どちらでもよいので、答案の冒頭で宣言すること。ここがずれると、答えが1つ分ずれます。

例題3|3項間になる確率漸化式

確率漸化式が型9(3項間)になることもあります。「直前の1回だけでなく、2回前まで見ないと決まらない」ときです。

問題

コインを 回投げるとき、表が2回続けて出ない確率を とする。 を求める漸化式を立てよ。

確率のまま考えると混乱するので、先に「場合の数」で数えてから確率に直すのが定石です。表が2回続かない列の個数を とします。

末尾で場合分けします。

  • 末尾がのとき その前の 文字が条件を満たしていればよい → 通り
  • 末尾がのとき その1つ前は必ず(でないと表が2連続する)。さらにその前の 文字が条件を満たせばよい → 通り

この2つに重複はなく、漏れもありません。よって

フィボナッチ型=型9です。(プログラムによる全数え上げと一致を確認しました)。全体は 通りなので

検算  のとき「表表」の1通りだけが除かれるので ——確かに合っています。

【なぜ3項間になったか】「末尾が表」の場合にその1つ前まで指定されたからです。直前の状態だけで決まらず、2つ前まで遡る必要があるとき、漸化式は3項間になります。逆にいえば、3項間が出てきたら「2つ前まで見る必要がある構造だったのだ」と読めます。

場合の数の漸化式 ―― 「最後の1手」で割る

例題3で使った「末尾で場合分け」は、確率だけでなく場合の数そのものにも使えます。むしろこちらが本家です。

場合の数の漸化式を立てる唯一の発想

「最後の1手」で場合分けして、残りを同じ問題の小さい版に帰着させる。

数え上げの問題を見て「 が具体的な数なら数えられるのに」と思ったら、それは漸化式の合図です。 の場合を の場合で表せないかを考えてください。

例題4|2×n をドミノで敷き詰める

問題

の長方形を、 のドミノで隙間なく敷き詰める方法の総数 を求める漸化式を立てよ。

2かけるnのドミノ敷き詰めの漸化式右端が縦1枚のときは残りが2かける(n-1)、右端が横2枚のときは残りが2かける(n-2)。重複も漏れもないので a(n)=a(n-1)+a(n-2) というフィボナッチ型になる。右端の1マスに注目して、2つに割る2×n の長方形を 1×2 のドミノで敷き詰める場合の数 a(n)① 右端が縦向き1枚残りは 2×(n−1)→ a(n−1) 通り② 右端が横向き2枚残りは 2×(n−2)→ a(n−2) 通りa(n) = a(n−1) + a(n−2)①と②で重複がなく、漏れもない。だから足すだけでよい(フィボナッチ型)。

図:右端の列に注目すると、縦1枚を置くか、横2枚を上下に置くかの2通りしかありません。斜めや、横1枚だけを置く置き方は成立しないからです。

右端がどうなっているかで場合分けします。

  • 右端が縦1枚のとき 残りは 通り
  • 右端が横2枚のとき 上下ともに横向きになるしかなく、残りは 通り

この2つに重複はありません(右端の縦横が違う)。漏れもありません(右上のマスを埋める方法はこの2つだけ)。よって

フィボナッチ数列です。

【一般項まで出すなら】型9として を解くと 。黄金比 を使って 。実際に計算すると と一致します。整数しか出ないのに が入るのが面白いところで、これがビネの公式です。

例題5|1が連続しない文字列

問題

1、2、3 の3種類の数字を並べて 桁の列を作る。1 が2つ以上連続しないような列は何通りあるか。

末尾で場合分けします。ただし「末尾が1」のときだけ、その前が制限されるのがポイントです。

  • 末尾が2または3 前の 桁は自由(条件を満たしていればよい)→ 通り
  • 末尾が1 その1つ前は2か3でなければならない。さらにその前の 桁は自由 → 通り

検算  を直接数えると、全 通りから「11」を含むもの 通り( が3通り、 が3通り、重複する が1通りで )を引いて 。一致します。 から まで全数え上げでも一致を確認しました。

「末尾が1」の場合の数え方に注意

「末尾が1で、その前が2か3」を と書きましたが、これは「前の 桁が条件を満たし、そのあとに(2か3)、1 と続く」という意味です。 から「末尾が1のもの」を引くという数え方をしてもよいのですが、そちらは式が複雑になります。「制限された部分を固定してから、残りを数える」ほうが速い。

例題6|階段の上り方(3項間を超える)

問題

段の階段を、1歩で1段・2段・3段のいずれかを上って登り切る方法は何通りか。

最後の1歩で場合分けします。最後が1段なら残りは 段、2段なら 段、3段なら 段。よって

トリボナッチ数列)。全数え上げと一致することを確認しました。

【4項間になったら】特性方程式は3次になり、高校範囲では一般項を出すのが困難です。入試でも、この形は「漸化式を立てよ」「 を求めよ」までしか問われません。一般項が出せなくても、漸化式さえ立てば順に計算して答えが出ます。「一般項を出すことがゴールではない」——ここは強調しておきます。

誘導の読み方 ―― 小問がなぜその順に置かれているか

入試の漸化式は、ほとんどが誘導つきです。誘導の意味が読めれば、出題者が何型を想定しているかが分かります。頻出の誘導と、その裏にある型を対応させます。

誘導の文言 出題者の意図 想定される型
で表せ」 漸化式を立てさせる 確率漸化式(多くは型4)
とおく」 不動点を教えている 型4
とおく」 割る相手を教えている 型6
とおく」 逆数をとれと言っている 型7
が等比数列であることを示せ」 3項間の2本のうち1本目 型9
を求めよ」 等比になる組み合わせを教えている 型10
を求めよ」 推測させる気がある 型12(帰納法)
の差を考えよ」 翻訳しろと言っている 型11

誘導を無視しない

「自分の知っている解法のほうが速い」と思っても、誘導に乗るのが原則です。誘導は後続の小問への布石になっていることが多く、外すと最後の小問で行き詰まります。誘導は制約ではなく、出題者からの情報提供だと考えてください。

答案で減点されないための3行

漸化式の答案は、計算が合っていても断り書きの欠落で削られます。頻出の3行を挙げます。

この3行を書けば、ほぼ守れる

1|「 のとき」と範囲を書く。型3の和、型11の 限定です。範囲を書かずに使うと、その1点で減点対象になり得ます。

2|「 のときも成り立つ」を確かめて書く。求めた一般項に を代入し、 と一致することを明記します。この1行は検算そのものでもあるので、自分のミス発見にも直結します。

3|割る前・逆数をとる前・対数をとる前に、条件を書く。型6の 、型7の 、型8の 操作の前に条件という順番を守ってください。

練習問題 ―― 型を当ててから解く

まず「何型か」だけを口に出してから、解いてください。型が言えれば、あとは上の解説どおりです。

練習

(1)

(2)

(3)

(4)

(5)

(6)

解答

(1) 型3 。検算:。式からも 。一致。

(2) 型4 不動点は より なので 。検算:。式からも 。一致。

(3) 型6 両辺を で割り とすると 。不動点 より 。よって 。検算:。一致。

(4) 型7 逆数をとると 等差)。 より 。よって 。検算:。一致。この問題は型4ではなく等差に落ちることに注意( だから)。

(5) 型11 → 型2  より では すなわち 。よって でも成立)。検算:。一致。

(6) 型9(重解)  を代入して両辺を で割ると 、すなわち 重解 とおくと 。よって 、つまり 。検算:。一致。重解を見落として「2解を 」と書き出すと詰まる典型です。

上記の一般項はすべて、実際に数列を第5項まで書き出して式の値と突き合わせ、一致を確認しています。検算は「答えが出たあとの作業」ではなく、解法の一部だと考えてください。

完全な答案例 ―― 確率漸化式を、最初から最後まで書く

「どこまで書けばいいのか」が分からないという相談が非常に多いので、省略なしの答案を1本お見せします。例題1(三角形の頂点移動)を、実際の解答用紙に書く形で再現します。

答案(省略なし)

回の操作の後に点が A にある確率を とする。また、 回の操作の後に点が A にない確率は である。

回の操作の後に点が A にあるのは、 回の操作の後に点が B または C にあり、次の操作で A へ移動した場合に限る(A から A へは移動できないため)。

B または C から A へ移動する確率はいずれも であるから、

ここで を解くと 。辺々引くと

よって数列 は公比 の等比数列である。

最初の操作の後、点は必ず B または C にあるから 。したがって初項は であり、

のとき となり、確かに一致する。)

この答案で「点になっている」のはどこか

1| の定義を書いた。 回の操作の後に」まで書くこと。「 回目に」だと1つずれる余地が残ります。

2|「A から A へは移動できない」と理由を書いた。ここを書かないと、 の項が消えている理由が採点者に伝わりません。立式の根拠こそが配点の中心です。

3| と範囲を書いた。漸化式が成り立つ範囲の明示です。

4|「等比数列である」と言い切った。変形しただけで終わらず、何が等比なのかを文章で述べます。

5| の理由を書いた。「最初の操作の後、点は必ず B または C にある」という一言。初項は与えられていないので、自分で求めた根拠が要ります。

【逆に、書かなくてよいもの】不動点を求める計算そのもの( を解く過程)は、答えだけ書けば十分です。省略してよいのは計算、省略してはいけないのは論理——この区別が答案の質を決めます。

応用練習 ―― 型が言えたら、半分終わっている

ここまでの内容を使う6問です。まず「何型か」を口に出してから解いてください。型さえ言えれば、あとは前半の解説どおりに手が動きます。

応用練習

(A1) 正四面体の4頂点 A、B、C、D 上を動く点があり、最初は A にある。1回の操作で、いまいる頂点から他の3頂点へそれぞれ確率 で移動する。 回の操作の後に A にある確率 を求めよ。

(A2) コインを 回投げるとき、表が3回続けて出ないような出方は何通りか。漸化式を立て、 のときの値を求めよ。

(A3) の長方形を、 のドミノと の正方形タイルで敷き詰める方法の総数 を求めよ。

(A4) 数列 の初項から第 項までの和 を満たすとき、 を求めよ。

(A5) のとき、 を求めよ。

(A6) のとき、 を求めよ。

解答

(A1) 確率漸化式 → 型4 A へ入るのは「 回後に A 以外にいて、A を選んだとき」だけ。A 以外の3頂点それぞれから A を選ぶ確率は なので

不動点は より だから

検算 。漸化式から直接計算しても同じ。——4頂点に均等、という直感どおりです。

(A2) 場合の数 → 4項間 末尾で場合分けします。末尾が裏 → 。末尾が「裏表」 → 。末尾が「裏表表」 → 。表が3つ続くのは禁止なので、これで尽くされます。

順に計算して 。よって のとき 44通り

検算  は全 通りから「表表表」の1通りを除いて ✓。 から まで全数え上げでも一致を確認しました。この数列は例題6(階段の上り方)と同じ漸化式で、実際 は1つずれた同じ列です。見た目が全く違う2問が、同じ構造だったわけです。

(A3) 場合の数 → 型9 右端で場合分け。縦のドミノ1枚 → 。横のドミノ2枚 → タイル1枚 → 。よって

より とおき、 から

検算 。式からも 。一致します。

(A4) 型11 → 型4  のとき より
のとき 。整理して

不動点は より だから

検算 。和は 。一致します。 でも で成り立つので、場合分けは不要でした(この確認を答案に書くこと)。

(A5) 型5(2次)  は2次なので、用意するのも2次式です。 とおいて代入し、係数を比較すると

より 。  より 。 定数: より

から 。よって

検算 。式からも 。一致します。1次式で済ませようとすると、ここで必ず破綻します。

(A6) 型10(非対称) 和と差では等比になりません。そこで が等比になる を探します。

の形になる条件は かつ 。代入して 、すなわち より

のとき なので は一定で、
のとき なので

この2式から

検算 。式からも 。一致します。この の2次方程式が、型9の特性方程式と同じ役割を果たしていることを確認してください。

各型の2問目 ―― 数値を変えると、どこが変わるか

1問だけでは「その数値だから解けた」のか「型として解けた」のかが分かりません。主要7型について、数値と設定を変えた2問目を用意しました。1問目とどこが同じでどこが違うかに注目してください。

型3の2問目|足す数が指数のとき

階差型なので、増分を から まで足します。今回の増分は等比数列です。

検算 。式からも 。一致します。

1問目との違い 1問目()は増分が等差でしたが、今回は等比。和の公式が変わるだけで、手順は完全に同じです。「 が何であっても、和を取る」という型の本質が見えます。

型3と型6を取り違えない

型3 の係数が1)、型6(係数が1でない)。見るべきは ではなく、 の係数のほうです。ここを見誤ると、和を取るべきところで割り算を始めてしまいます。

型5の2問目|1次式が引かれるとき

付いているのは1次式なので、用意するのも1次式。 とおいて代入し、係数を比較します。

の係数: より 。 定数項: より

よって から

検算 。式からも 。一致します。

1問目との違い 1問目では でしたが、今回は できれいに消えました。係数比較の結果がどうなるかは問題次第で、そこは考えても仕方ありません。手順が同じであることだけが大事です。

型6の2問目| のとき(等差に落ちる)

ここが型6の落とし穴(b)そのものです。 が一致しています。両辺を で割ると

型4ではなく等差型になりました。 なので

検算 。式からも 。一致します。

1問目との違い 1問目()は型4に落ちましたが、今回は等差型。特性方程式を立てようとすると となって解がなく、そこで固まります。割った直後に「これは型4か等差か」を見る癖をつけてください。

型7の2問目|逆数をとると係数が変わる

逆数をとると 。よって とすると

不動点は より なので 、すなわち

検算 。分母が 。一致します。

1問目との違い  の逆数は です。 の役割が入れ替わるのがポイント。1問目()では 、今回()では 分母の定数項が新しい公比になります。

型8の2問目|いちばん素朴な累乗型

底3の対数をとると )。定数項がないので、いきなり等比型です。 なので

検算 。指数は で、確かに 。一致します。

1問目との違い 1問目()は係数2があったため という型4になりました。係数がなければ等比、あれば型4——構造は型6とまったく同じです。指数が「肩に乗った」だけで、対数を取れば見慣れた形に戻ることを確認してください。

型10の2問目|差が符号を変えながら一定

辺々足すと 、辺々引くと

よって

検算 。式からも 。一致します。

1問目との違い 差の公比が今回は 。つまり 符号を変えながら大きさは一定です。「等比数列」と聞くと増えるか減るかを想像しがちですが、公比が なら振動する——これも立派な等比数列です。

型11の2問目| の式で与えられる

のとき、 を求めよ

1問目は を含む式でしたが、今回は だけの式です。この場合は漸化式を経由せず、引き算1回で終わります

のとき 

のとき 

を代入すると となり と一致するので、すべての

検算 、和は 。一致します。

1問目との違い 1問目は引き算のあとに漸化式が残り、型2へ帰着しました。今回は引き算だけで が直接出ます。 の式に が入っているかどうかが、その分かれ目です。

同じ問題を、2つの型で解いてみる

型は絶対的な分類ではありません。1つの問題が複数の型で解けることがあります。前に出てきた を、2通りで解いてみます。

解法A|型7(逆数をとる)

とおくと 等差型 より

よって 3行で終わり。

解法B|型12(推測+帰納法)

より と推測。

帰納法で証明する(前節の答案のとおり)。

半ページ必要。ただし型が見えなくても確実に答えに到達できる。

【どちらを選ぶか】試験では短いほう(解法A)を選びます。しかし型7だと気づけなかったときの保険が解法Bです。型12は「最後の手段」であって「劣った手段」ではありません。手が止まったら、まず から まで書き出す——これは常に正しい行動です。書き出せば規則が見えることも多く、見えなくても問題の感触がつかめます。

部分点の取り方 ―― 完答できなくても点は残る

漸化式の問題は、多くの場合途中まででも点がもらえる構造になっています。最後まで解ける自信がなくても、次のところまでは必ず書いてください。

書けるところ 何点分の意味があるか(目安)
漸化式を立てる(確率・場合の数の問題) この設問の配点の半分近くを占めることが多い。立式が本体だから
「〜が等比数列である」と示す 誘導の小問になっていることが多く、ここだけで完結して点になる
不動点(特性方程式の解)を出す 方針が正しいことの証明。計算が続かなくても評価される
を書き出す 小問(1)として置かれていることが多い。ここを落とすのが最ももったいない
の確認を書く 書き忘れによる減点を防ぐ。加点ではなく失点の回避

【時間切れのときの優先順位】①漸化式を立てる → ②型を書く(「特性方程式を用いる」など方針を明記)→ ③不動点を出す → ④一般項。④まで行けなくても、①〜③が書いてあれば白紙とは全く違います。逆に、いきなり計算だけを書いて方針が読み取れない答案は、合っていても伝わりにくい。方針を1行書いてから計算に入る——これだけで答案の見え方が変わります。

漸化式と極限 ―― 不動点が答えそのものになる

数学III を履修する人にとって、漸化式は極限の問題としても出題されます。ここで前半の「不動点= の交点」という見方が、そのまま武器になります。

例題

のとき、 を求め、 を求めよ。

不動点は より なので

より 。よって

検算 。分数が に近づいていく様子が見えます。式からも一致します。

極限は、一般項を出す前に分かる

の型4なら、極限は不動点そのものです。だから「不動点を求める」→「それが極限」→「一般項を出して確かめる」という順で解くと、答えの見当がついた状態で計算できるので、途中でミスしても気づけます。逆に極限だけを問われた場合は、一般項を出さずに だから と書けば済むこともあります(答案の指示に従ってください)。

【なぜ収束するのか、図で】前半のクモの巣図に戻ってください。 だと折れ線が交点へ吸い寄せられました。あれがそのまま「極限が存在して不動点に等しい」ことの図解になっています。数学IIIの極限は、数学Bの漸化式と地続きです。

数学的帰納法の書き方 ―― 型12を確実に仕留める

型12(推測+帰納法)で失点する人の多くは、推測は当たっているのに、証明の書き方が崩れています。帰納法の答案には決まった型があるので、そこだけ固めましょう。

数学的帰納法の3ブロック

のとき成り立つことを示す
のとき成り立つと仮定する
③ そのとき でも成り立つことを示す

例題

のとき、 を求めよ。

まず書き出す。

ですから と推測できます。

帰納法による証明(省略なし)

…(※) がすべての自然数 で成り立つことを、数学的帰納法で示す。

(i) のとき  より (※) は成り立つ。

(ii) のとき (※) が成り立つ、すなわち と仮定する。

このとき

となり、 のときも (※) は成り立つ。

(i)(ii) より、すべての自然数 について が成り立つ。■

帰納法の答案で減点される3か所

(a) 「仮定する」と書いていない。 で成り立つことは仮定であって既知ではありません。ここを書かないと論理が成立していないと見なされます。

(b) 仮定を使った場所が分からない。上の計算では を代入した瞬間が「仮定を使った場所」です。そこがはっきり見える書き方をしてください。

(c) 結論の一文がない。「(i)(ii) より、すべての自然数 について成り立つ」で締めます。これがないと証明が閉じません。

【ちなみに、この問題は型7でも解けます】逆数をとると 。つまり は公差1の等差数列で、 だから 、よって 同じ問題が2つの型で解ける——型は絶対的な分類ではなく、あくまで手がかりです。複数の道が見えたら、短いほうを選べばよい。

型4と型9の追加例題 ―― 数値を変えて手を動かす

追加例題1(型4)

答え (上の極限の例題と同じもの)

ここで確かめてほしいこと  は正なので、数列は不動点に片側から単調に近づきます)。一方、本文の例題()では 上下に振れながら近づきました。 の符号が「近づき方」を決めるのです。

追加例題2(型9・特性方程式に1が現れる場合)

より 。よって

から から 。辺々引いて

検算 。式からも 。一致します。

ここで確かめてほしいこと 特性方程式の解に が現れると、その項は という定数になります。「等比数列なのに定数?」と戸惑いますが、公比1の等比数列は定数列なので、何もおかしくありません。 が出たら「定数項が残る」と覚えておくと動じません。

総合例題 ―― 立式・一般項・極限を1本で

難関大では、確率漸化式・一般項・極限が1つの大問の中で連続して問われます。全部つながっていることを、1問で確認しましょう。

総合例題

1個のさいころを繰り返し投げる。 回目までに出た目の積が3の倍数である確率を とする。

(1) を用いて表せ。 (2) を求めよ。 (3) を求めよ。

(1) 立式

積が3の倍数になるのは、それまでに一度でも 3 か 6 が出たときです。3 か 6 が出る確率は

回目までに積が3の倍数になるのは、次の2つの場合です。

  • 回目までにすでに3の倍数 → 回目に何が出ても条件を満たす → 確率
  • 回目までは3の倍数でない → 回目に 3 か 6 が出る必要がある → 確率

この2つに重複はなく、漏れもありません。よって

(2) 一般項

型4です。不動点は より

(1回目に3か6が出る確率)なので 。よって

別解による検算 ―― 余事象で直接求める

積が3の倍数でないのは、 回とも「3でも6でもない目」が出たとき。その確率は 。よって 漸化式を経由した答えと完全に一致します。この問題は余事象で直接解けるので、漸化式の答えを独立に検証できる貴重な例です。実際に の3通り(漸化式・一般項・余事象)がすべて一致することを確認しました。

(3) 極限

より 。よって

【答えの意味を確かめる】極限が というのは「投げ続ければ、いつかは必ず3か6が出る」ということ。直感どおりです。そしてこの は不動点の値そのものでした。(2) を解く前に、(1) の段階で「極限は1だろう」と見当がついていたことになります。不動点を出した瞬間に、(3) の答えは分かっている——これが前半で不動点を図で扱った理由です。

【補講】分子にも定数がある分数型の正攻法

型7の落とし穴で「 のように分子にも定数がある形は、逆数をとっても分解できない」と書きました。この形の正攻法をお見せします。ここでも使うのは不動点です。

分数型の不動点

この2次方程式の解が、この漸化式の不動点です。解が重解か2つかで、その後の処理が変わります。

例|(型12で扱ったものと同じ)

不動点を求める。 の両辺に を掛けて 、すなわち 。よって 重解

重解のときは を考えるのが定石です。 とおきます。

逆数をとると

公差 の等差数列になりました。 なので

検算 確かに公差 。そして 型12(推測+帰納法)で出した答えと完全に一致しました。

不動点が2つのときは

重解ではなく異なる2解 を持つ場合は、 が等比数列になります。「重解なら逆数で等差、2解なら比で等比」——この対応は、型9で「重解のときだけ別処理」だったのとまったく同じ構造です。重解は、いつも1段階だけ易しい形に落ちる。

【入試での位置づけ】この分数型は誘導なしで出ることはまずありません。「(1) とおくとき、 で表せ」という小問が必ず付きます。誘導の の定義そのものが「不動点は1だ」と教えてくれている——そう読めれば、この型はもう怖くありません。前半の「誘導の読み方」の表に、この行を加えておいてください。

よくある質問

Q. 12型を全部覚えないといけませんか?

A. 覚えるのは4本の道だけです(和をとる/不動点を引く/2本の等比を作る/翻訳する)。12型は、その4本の道の「入口の見た目」を並べたものにすぎません。入口を暗記するのではなく、見分けチャートで機械的に振り分けるのが正しい使い方です。

Q. 特性方程式は、なぜ に置き換えるだけでよいのですか?

A. 置き換えているのではなく、「動かない値を探している」のです。 となる を求めているので、両方を にした式 が出ます。グラフでいえば の交点です。3項間の場合は「等比数列 を代入して割る」という別の由来なので、混同しないでください。

Q. 確率漸化式で、状態が3つ以上あるときはどうしますか?

A. まず という関係が使えないかを見ます。使えれば2文字に減り、多くは型4になります。減らせない場合は型10(連立型)として、 が等比になる を探します。対称性のある問題なら、和と差を試すだけで当たることがほとんどです。

Q. 一般項が出せない漸化式もあるのですか?

A. あります。4項間以上や、非線形( など)は、高校範囲では一般項が出せないことが普通です。ただし入試では、そういう問題で一般項は問われません。「漸化式を立てよ」「 を求めよ」「 を示せ」など、一般項なしで答えられる形で聞かれます。一般項が出ないからといって、解けない問題ではありません。

Q. 中高一貫校では、いつ漸化式を習いますか?

A. 数学B の数列は高1後半〜高2前半に扱われることが多く、漸化式は数列の最後に置かれます。そのため学年末に駆け足で終わり、12型のうち3〜4型しか触れないまま高3を迎えるケースが非常に多く見られます。学校の進度に関わらず、見分けチャートと帰着の地図だけは早い段階で手元に置いてください。型を知らずに問題数だけこなすのが、漸化式で最も遠回りな勉強法です。

【補講】添字のずらし方 ―― を自由に行き来する

この記事では、型11 で と書き、ほかの型では と書きました。この2つは同じものです。ここで混乱する人が多いので、書き換えの規則をはっきりさせておきます。

同じ漸化式の3つの書き方

 (
 (
 ( または問題の設定に応じて)

どれも「となり合う2項の比が2」と言っているだけで、内容は同一です。違うのは成り立つ の範囲だけ。

範囲が変わる理由

から意味を持ちます()。ところが で使うと となり、存在しない を呼び出してしまいます。だから後者は 添字を1つ下げたら、範囲の下限を1つ上げる——これだけです。

どちらで書くべきか

場面 使う書き方 理由
ふつうの漸化式 範囲が で素直。教科書の標準形
がからむ型11 この式自体が 限定なので、 を主語にするほうが自然
階差型の和 を主語にした形。 の断りが必要
3項間 初期条件が の2つなので、 で揃う

【実戦での使い分け】問題文で与えられた形をそのまま使うのが基本です。ただし途中で書き換えたほうが楽になる場面があります。たとえば型11で が出たとき、そのまま「公比2の等比数列」と読んでもよいのですが、 に書き換えてから を当てるほうが、公式の形と揃って安全です。書き換えたら、範囲の断りも書き換えることだけ忘れないでください。

よくある事故

添字まわりの失点3パターン

(a) から としてしまう。正しくは から までに掛けた回数は です。書き方が変わっても、掛けた回数は変わりません。

(b) 範囲を書き換え忘れる。 の式を に使ってしまう事故。階差型と型11で頻発します。

(c) 3項間で に直したのに、範囲を のままにする。正しくは です。下げた分だけ上げる——機械的に処理してください。

添字は内容を変えない書き換えです。怖がる必要はありませんが、範囲だけは必ず連動させる。この一点さえ守れば、どの書き方で来ても同じように処理できます。

12型を固める学習手順

最後に、この記事の使い方を具体的な手順にしておきます。問題数をこなす前に、型の判定だけを反復するのが要点です。

おすすめの進め方

ステップ1(1日目)|見分けチャートを写す。この記事の「3秒で型を決めるチェック順」を、ノートに手で書き写してください。7行しかありません。写す作業自体が、順番を体に入れる練習になります。

ステップ2(2〜3日目)|手持ちの問題集の漸化式を、解かずに型だけ答える。20問でも30問でも構いません。1問10秒です。答え合わせは、この記事の見分けチャートで。ここで「型が言えない問題」が出てきたら、それが自分の穴です。

ステップ3(4〜5日目)|型4・型9・確率漸化式の3つだけを、繰り返し解く。この3つで入試の漸化式の大半が説明できます。ほかの型は「型4に帰着する」ことを確認する程度でよい

ステップ4(6日目)|答案の3行を固める。「範囲を書く」「 を確かめる」「操作の前に条件を書く」。この3つを、実際に自分の答案に書き込む練習をします。

ステップ5(7日目)|自分で立てる問題に進む。確率漸化式と場合の数の漸化式を、立式のステップに沿って解きます。ここまで来て初めて、入試レベルの漸化式が「作業」になります。

【いちばんやってはいけないこと】型を知らないまま問題数をこなすことです。漸化式は「見た瞬間に方針が決まる」ようにするのがゴールで、そのためには問題を解く量ではなく、型を判定した回数が効きます。10問解くより、50問の型を判定するほうが、この単元では確実に速い。

この記事で身につけてほしいこと

  • 漸化式の解法は12個ではなく、4本の道(和をとる/不動点を引く/2本の等比を作る/翻訳する)。
  • 不動点とは の交点 なら収束し、その値が極限になる。
  • 特性方程式は を代入しただけ。名前に身構える必要はない。
  • 入試で最も多いのは漸化式が与えられていない問題。確率漸化式と場合の数の漸化式は、自分で立てるところから始まる。
  • 立式の発想は1つだけ——「最後の1手」で場合分けして、小さい同じ問題に帰着させる
  • 答案では計算は省略してよいが、論理は省略できない。定義・根拠・範囲・逆の確認の4つを書く。

本記事に登場するすべての一般項・確率・場合の数は、実際に数列を書き出す、あるいは全数え上げを行うプログラムで値を突き合わせ、一致を確認しています。検算は答え合わせのためではなく、解法の一部です。答えが出たら必ず、第3項あたりまでを手で計算して式と照合する習慣をつけてください。

漸化式で失点する原因の上位3つ

型11で を確認していない でしか使えません。求めた式に を代入し、 と一致するかを必ず書くこと。
型3で の上端を にしてしまう。階差型の和は から までです。
型9の重解を見落とす。判別式が 0 のときは別処理です。

中高一貫校生はいつ習得すべきか

数学Bの数列は、中高一貫校では高1後半〜高2前半に扱われることが多い単元です。漸化式は数列の最後に置かれるため、学年末に駆け足で終わり「12型のうち3〜4型しか触れないまま高3を迎える」というケースが非常に多く見られます。学校の進度に関わらず、この一覧表だけは早い段階で手元に置いてください。型を知らずに問題数だけこなすのが、漸化式で最も遠回りな勉強法です。

この記事のまとめ

  • そのまま解けるのは等差型・等比型の2つだけ。残りはそこへ帰着させる技術
  • 頻度・重要度ともに最上位は型4(特性方程式)。不動点を引くだけの操作だと理解する。
  • 逆数(型7)・対数(型8)・ で割る(型6)——いずれもゴールは型4。
  • 失点源は「型11の 確認」「型3の の上端」「型9の重解」。

この記事を書いた人

藤原進之介(ふじわら しんのすけ)

数学に強くなる塾「数強塾」グループ代表・株式会社数強塾 代表取締役

  • 東進ハイスクール・東進衛星予備校・代々木ゼミナールなど出講実績あり(東進ハイスクール・東進衛星予備校では最年少講師
  • 著書累計15万部(KADOKAWA・Gakken・文英堂ほか大手出版社より刊行)
  • 「令和の虎」出演をはじめ、メディア出演多数/消費者庁での登壇実績
  • 数強塾グループ(数強塾/情報ラボ/英論会/AOG/日本数学塾/論塾)を運営。プロ講師60名以上が在籍し、全国の中高一貫校生を中心に累計3,500名以上を指導
  • もともと数学が苦手だった「元・数学苦手の講師」。だからこそ、つまずく生徒の目線で教えられる

数強塾グループのミッションは「一人ひとりの可能性を最大限に引き出し、本質を理解し、自ら考え続けられる人を育てる」。AI時代に、人にしかできない教育で最高品質の学びを届けます。

藤原進之介のプロフィール詳細指導実績(成績向上率94%の根拠)

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